説明

シリコーン樹脂組成物およびその使用方法、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂含有構造体、ならびに光半導体素子封止体

【課題】透明性を維持することができ、かつ耐硫化性に優れたシリコーン樹脂組成物およびその使用方法、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂含有構造体、ならびに光半導体素子封止体の提供。
【解決手段】シリコーン樹脂組成物は、(A)成分:ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するポリシロキサンと、(B)成分:ケイ素原子に結合した水素基を少なくとも2個有するポリシロキサン架橋剤と、(C)成分:ヒドロシリル化反応触媒と、(D)成分:亜鉛化合物と、を含み、前記(D)成分を前記(A)成分および前記(B)成分の合計100質量部に対して0.1〜5質量部含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン樹脂組成物およびその使用方法、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂含有構造体、ならびに光半導体素子封止体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光半導体を封止するための組成物には樹脂としてエポキシ樹脂を使用することが提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、エポキシ樹脂を含有する組成物から得られる封止体は白色LED素子からの発熱によって色が黄変するなどの問題があった。
また、2個のシラノール基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素原子に結合した加水分解可能な基を1分子中に2個以上有するシラン化合物等と、有機ジルコニウム化合物とを含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が提案されている(例えば、特許文献2、3)。
また、2個のシラノール基を有するジオルガノポリシロキサン等と、アルコキシ基を3個以上有するシラン等とに縮合触媒を混合し加熱することが提案されている(例えば、特許文献4、5)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−228249号公報
【特許文献2】特開2001−200161号公報
【特許文献3】特開平2−196860号公報
【特許文献4】特開2007−224089号公報
【特許文献5】特開2006−206700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シリコーン系樹脂の場合、エポキシ樹脂と比較して気体透過性が高く、空気が通過しやすいため、空気中の硫化水素によって光半導体パッケージの銀メッキが経時で変色しやすく、その結果、輝度が低下する傾向がある。
また、シリコーン系樹脂では、耐硫化性を高めるため樹脂を硬くすることが一般的に行われているが、その場合、硬化収縮やそれによるLEDパッケージからのハガレやワイヤーの断線のおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、シリコーン樹脂組成物に亜鉛化合物を添加することによって、耐硫化性を発現させて銀の変色を抑えることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、透明性を維持することができ、かつ耐硫化性に優れたシリコーン樹脂組成物およびその使用方法、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂含有構造体、ならびに光半導体素子封止体を提供する。
また、本発明者らは、シリコーン樹脂組成物に亜鉛化合物を添加すると高温下での長期信頼性の低下が見られる場合があることを明らかにし、さらに、所定の成分を添加することで高温下での長期信頼性が優れることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記1〜14を提供する。
1.(A)成分:ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するポリシロキサンと、
(B)成分:ケイ素原子に結合した水素基を少なくとも2個有するポリシロキサン架橋剤と、
(C)成分:ヒドロシリル化反応触媒と、
(D)成分:亜鉛化合物と、を含み、
前記(D)成分を前記(A)成分および前記(B)成分の合計100質量部に対して0.1〜5質量部含有する、シリコーン樹脂組成物。
【0007】
2.シラノール基を有するケイ素化合物を実質的に含まない、上記1に記載のシリコーン樹脂組成物。なお、本発明において、「シラノール基を有するケイ素化合物を実質的に含まない」とは、本発明のシリコーン樹脂組成物において、シラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)を有するケイ素化合物の含有量が0.1質量%未満であることをいう。
3.前記(D)成分が亜鉛を含有する錯体および/または金属塩である、上記1または2に記載のシリコーン樹脂組成物。
4.前記アルケニル基が、ビニル基または(メタ)アクリロイル基である、上記1〜3のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物。
5.光半導体素子封止用に使用される、上記1〜4のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物。
6.銀の存在下で使用される、上記1〜5のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物。
7.さらに、(E)成分:ホウ素化合物および/または(F)成分:リン酸エステルを含む、上記1〜6のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物。
8.さらに、ビス(アルコキシ)アルカンおよび/またはイソシアヌレート誘導体を含む、上記1〜7のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物。
9.上記1〜8のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物であって、
第11族の金属を用いて得られる金属層の上に前記シリコーン樹脂組成物を厚さ1mmに付与し硬化させて、前記金属層とシリコーン樹脂層とを有する積層体とし、
前記積層体を560ppmの硫化水素ガス中に23℃の条件下で置く耐硫化試験を行い、前記耐硫化試験の前および前記耐硫化試験開始から24時間後における、前記積層体の分光反射率を分光反射率計を用いて測定し、前記分光反射率を式[分光反射率維持率=(耐硫化試験後の分光反射率/耐硫化試験前の分光反射率)×100]に当てはめ算出される分光反射率維持率が80%以上である、シリコーン樹脂組成物。
10.上記1〜9のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させることによって得られる、シリコーン樹脂。
11.上記10記載のシリコーン樹脂と、銀を含む部材とを含む、シリコーン樹脂含有構造体。
12.LEDチップが上記10に記載のシリコーン樹脂で封止されている光半導体素子封止体。
13.銀を含む部材をさらに含む、上記12記載の光半導体素子封止体。
14.銀の存在下で上記1〜8のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させる工程を含む、シリコーン樹脂組成物の使用方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシリコーン樹脂組成物が(D)成分である亜鉛化合物を前記(A)成分および前記(B)成分の合計100質量部に対して0.1〜5質量部含有することにより、該組成物を用いて、シリコーン系樹脂硬化物でも耐硫化性を付与でき、透明性を維持でき、かつ耐硫化性に優れた光半導体封止体を製造することができる。
本発明のシリコーン樹脂および光半導体封止体は、上記組成物を用いて形成されたものであるため、クラックが生じにくく、かつ耐硫化性および透明性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す上面図である。
【図2】図2は、図1に示す光半導体封止体のA−A断面を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の光半導体封止体を用いたLED表示器の一例を模式的に示す図である。
【図6】図6は、図5に示すLED表示器を用いたLED表示装置のブロック図である。
【図7】図7は、実施例において本発明の組成物を硬化させるために使用した型の断面を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のシリコーン樹脂組成物およびその使用方法、シリコーン樹脂、シリコーン樹脂含有構造体、ならびに光半導体素子封止体について詳細に説明する。
1.シリコーン樹脂組成物
本発明のシリコーン樹脂組成物は、
(A)成分:ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するポリシロキサンと、
(B)成分:ケイ素原子に結合した水素基を少なくとも2個有するポリシロキサン架橋剤と、
(C)成分:ヒドロシリル化反応触媒と、
(D)成分:亜鉛化合物と、を含み、
(D)成分を(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して0.1〜5質量部含有する。
【0011】
1.1.(A)成分
(A)成分は、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有し、主鎖としてポリシロキサン構造を有するオルガノポリシロキサンであれば特に制限されない。
【0012】
(A)成分は、本発明のシリコーン樹脂組成物の主剤(ベースポリマー)である。(A)成分は、靭性、伸びに優れるという観点から、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するのが好ましく、より好ましくは2〜20個、さらに好ましくは2〜10個程度有する。
また、(A)成分は、組成物の粘度が低いという観点から、1分子中に1個のビニル基および/またはヒドロシリル基を有するポリシロキサンであっても良い。
【0013】
アルケニル基はケイ素原子と有機基を介して結合することができる。有機基は特に制限されず、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。
【0014】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基のような炭素数2〜8の不飽和炭化水素基;(メタ)アクリロイル基が挙げられる。なかでも、硬化性に優れるという観点から、アルケニル基は、ビニル基または(メタ)アクリロイル基であるのが好ましく、ビニル基がより好ましい。
なお、本発明において(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基およびメタクリロイル基のうちのいずれか一方または両方であることを意味する。
【0015】
アルケニル基の結合位置としては、例えば、ポリシロキサンの分子鎖末端および分子鎖側鎖のうちのいずれか一方または両方が挙げられる。また、アルケニル基は、ポリシロキサンの分子鎖の片方の末端または両方の末端に結合することができる。
【0016】
(A)成分において、アルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。また、(A)成分であるポリシロキサンはヒドロシリル基を有していてもよい。
なかでも、耐熱性に優れるという観点から、メチル基、フェニル基であることが好ましい。
【0017】
(A)成分は、その主鎖としては、例えば、オルガノポリシロキサンが挙げられる。具体的には、ポリジメチルシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンが挙げられる。なかでも、耐熱性、耐光性に優れるという観点から、ポリジメチルシロキサンが好ましい。なお、本発明において、耐光性とはLEDからの発光に対する耐久性(例えば、変色、焼けが生じにくいこと。)をいう。
【0018】
(A)成分は分子構造について特に制限されない。例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状等が挙げられる。直鎖状であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
(A)成分はその分子構造として、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
(A)成分として、ビニル基含有ポリシロキサンおよび/またはヒドロシリル基含有ポリシロキサンを用いる場合、(A)成分の構造中にアルキレン基およびまたはフェニレン骨格を有しても良い。
また、(A)成分の分子末端は、シラノール基(ケイ素原子結合水酸基)、アルコキシシリル基で停止しているか、トリメチルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基またはビニル基で封鎖することができる。
【0019】
(A)成分としては、例えば、下記式(I)で表されるものが挙げられる。
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、R、R、Rはそれぞれ独立にアルケニル基であり、Rはそれぞれ独立にアルケニル基以外の一価の炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基であり、Rはそれぞれ独立に有機基であり、a+b+nは2以上であり、a、bは0〜3の整数であり、m、nは0以上の整数である。)
【0022】
ポリシロキサンがアルケニル基として不飽和炭化水素基を有するポリシロキサンである場合、硬化性により優れている。
ポリシロキサンがアルケニル基として不飽和炭化水素基を有するポリシロキサンとしては、例えば、式:(RSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:(RSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:(RSiO2/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:(RSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:(RSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:(RSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:(RSiO2/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:(RSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:RSiO3/2で示されるシロキサン単位もしくは式:RSiO3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体が挙げられる。
ポリシロキサンがアルケニル基として不飽和炭化水素基を有するポリシロキサンである場合、ポリシロキサンの構造中にアルキレン基およびまたはフェニレン骨格を有しても良い。
【0023】
ここで、上記式中のRはアルケニル基以外の一価炭化水素基である。
アルケニル基以外の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
また、上記式中のRは不飽和炭化水素基である。不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基が挙げられる。
【0024】
(A)成分がアルケニル基としてビニル基を有する場合、硬化性により優れている。なお、アルケニル基としてビニル基を有するポリシロキサンを以下「ビニル基含有ポリシロキサン」ということがある。
【0025】
(A)成分がアルケニル基として(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサンである場合、硬化性により優れている。なお、アルケニル基として(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサンを以下「(メタ)アクリロイル基含有ポリシロキサン」ということがある。
【0026】
(メタ)アクリロイル基含有ポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(II)で示されるものが挙げられる。
SiO(4−a−b)/2 (II)
(式中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜10のアルキル基またはアリール基を示し、RはCH=CR−CO−O−(CH−で表される(メタ)アクリロキシアルキル基(CH=CR−CO−O−(CH−中の、Rは水素原子またはメチル基であり、cは2〜6の整数であり、2、3または4であるのが好ましい。)を示し、aは0.8〜2.4であり、1〜1.8であるのが好ましく、bは0.1〜1.2であり、0.2〜1であるのが好ましく、0.4〜1であるのがより好ましく、a+bは2〜2.5であり、2〜2.2であるのが好ましい。)
【0027】
式中、Rのアルキル基、アリール基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0028】
(A)成分の分子量(重量平均分子量)は、硬化性により優れており、靭性、伸び、作業性に優れるという観点から、500〜100,000であるのが好ましく、1,000〜100,000であるのが好ましく、5,000〜50,000であるのがさらに好ましい。なお、本願明細書において、重量平均分子量は、GCP(ゲル透過カラムクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算値である。
【0029】
(A)成分の23℃における粘度は、得られるシリコーン樹脂の物理的特性が良好であり、シリコーン樹脂組成物の取扱作業性が良好であることから、5〜10,000mPa・sが好ましく、10〜1,000mPa・sであるのがより好ましい。なお、本発明において粘度はE型粘度計によって23℃の条件下において測定されたものである。
【0030】
(A)成分はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。(A)成分はその製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0031】
1.2.(B)成分
(B)成分であるポリシロキサン架橋剤は、1分子中にケイ素原子に結合した水素基(即ち、SiH基)を少なくとも2個有し、主鎖としてポリシロキサン構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば特に制限されない。
【0032】
(B)成分は1分子中にケイ素原子に結合した水素基を、2〜300個程度を有するのが好ましく、より好ましくは3個以上(例えば3〜150個程度)を有する。(B)成分の分子構造としては例えば、直鎖状、分岐状、環状、三次元網状構造が挙げられる。
【0033】
(B)成分において、ケイ素原子に結合した水素基の結合位置としては、例えば、ポリシロキサンの分子鎖末端および分子鎖側鎖のうちのいずれか一方または両方が挙げられる。また、ケイ素原子に結合した水素基は、ポリシロキサンの分子鎖の片方の末端または両方の末端に結合することができる。
【0034】
(B)成分としては、例えば、下記平均組成式(III)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
SiO(4−a−b)/2 (III)
(式中、Rは独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換または置換の1価炭化水素基であり、aおよびbは、0<a<2、0.8≦b≦2かつ0.8<a+b≦3となる数であり、好ましくは0.05≦a≦1、0.9≦b≦2かつ1.0≦a+b≦2.7となる数である。また、一分子中のケイ素原子の数は、2〜300個であり、3〜200個が好ましい。)
【0035】
式中、Rの脂肪族不飽和結合を含有しない非置換または置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
なかでも、耐熱性、耐光性に優れるという観点から、メチル基等の炭素原子数1〜3の低級アルキル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0036】
(B)成分としては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等;(RHSiO1/2単位とSiO4/2単位からなり、任意に(RSiO1/2単位、(RSiO2/2単位、RHSiO2/2単位、(H)SiO3/2単位またはRSiO3/2単位を含み得るシリコーンレジン(但し、式中、Rは前記の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換または置換の1価炭化水素基と同じである。)などのほか、これらの例示化合物においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基等の他のアルキル基やフェニル基、ヒドロシリル基で置換したものなどが挙げられる。
【0037】
また、下記式:
【0038】
【化2】

【0039】
(但し、式中、Rは上述のRの脂肪族不飽和結合を含有しない非置換または置換の1価炭化水素基と同じであり、cは0または1以上の整数であり、dは1以上の整数である。)
で表されるものが挙げられる。
(B)成分はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
(B)成分は、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。具体的には、例えば、下記一般式:RSiHClおよび(RSiHCl(式中、Rは前記の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換または置換の1価炭化水素基と同じである。)から選ばれる少なくとも1種のクロロシランを共加水分解し、或いは該クロロシランと下記一般式:(RSiClおよび(RSiCl(式中、Rは前記の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換または置換の1価炭化水素基と同じである。)から選ばれる少なくとも1種のクロロシランを組み合わせて共加水分解して得ることができる。また、(B)成分として、共加水分解して得られたポリシロキサンを平衡化したものを使用することができる。
【0041】
(B)成分は、硬化後のゴム物性(靭性、伸び)に優れるという観点から、(A)成分中のアルケニル基1モル当たり、(B)成分が有する、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)が、0.1〜5モルとなる量で使用されるのが好ましく、より好ましくは0.5〜2.5モル、さらに好ましくは1.0〜2.0モルとなる量で使用される。
SiH基量が0.1モル以上である場合、硬化が十分で、強度のあるゴム硬化物(シリコーン樹脂)が得られる。
SiH基量が5モル以下である場合、硬化物が脆くなることがなく等、強度のあるゴム硬化物が得られる。
【0042】
本発明において、(A)成分および(B)成分は、(A)成分および(B)成分の混合物として使用することができる。
【0043】
1.3.(C)成分
(C)成分であるヒドロシリル化反応触媒(ポリシロキサン触媒)は、(A)成分が有するアルケニル基と、(B)成分が有する、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)との付加反応を促進するための触媒である。本発明のシリコーン樹脂組成物は(C)成分を含むことにより、硬化性に優れている。
【0044】
(C)成分は、特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。具体例としては、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;HPtCl・nHO、HPtCl・nHO、NaHPtCl・nHO、KHPtCl・nHO、NaPtCl・nHO、KPtCl・nHO、PtCl・nHO、PtCl、NaHPtCl・nHO(但し、式中、nは0〜6の整数であり、好ましくは0または6である)等の塩化白金、塩化白金酸および塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照);塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照);白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィンコンプレックス;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸または塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックスなどの白金族金属系触媒が挙げられる。
【0045】
(C)成分は、触媒量の範囲で使用することができる。優れた硬化性を発揮できる観点から、(A)成分および(B)成分の合計量に対する白金族金属の質量換算で、0.1〜500ppm(好ましくは10〜100ppm)とすることができる。
【0046】
1.4.(D)成分
(D)成分である亜鉛化合物は、亜鉛を含有する化合物であり、例えば、亜鉛を含有する錯体および/または金属塩である。本発明の組成物が(D)成分である亜鉛化合物を(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して0.1〜5質量部含有することにより、該亜鉛化合物が硫黄と結合することで、硬化物に耐硫化性を付与することができる。これにより、銀の変色(腐食)を防止して、透明性を保持することができる。また、本発明の組成物を用いて得られる硬化物は、樹脂を硬くしなくても十分耐硫化性がある。このため、前記硬化物は、クラックが生じにくいシリコーン樹脂であることができる。このため、硬化物が光半導体封止体として用いられる場合、該封止体に含まれるワイヤーの断線を防止することができる。
(D)成分である亜鉛を含有する錯体および金属塩としては、例えば、亜鉛ビスアセチルアセトネート、亜鉛ビス2−エチルヘキサノエート、亜鉛(メタ)アクリレート、亜鉛ネオデカネート等のカルボン酸塩に代表される有機亜鉛化合物、亜鉛華、スズ酸亜鉛などの亜鉛酸化物に代表される無機亜鉛化合物が挙げられる。
例えば、本発明の組成物を用いて形成される硬化物が透明性を要求されるものである場合、(D)成分は、(D)成分を樹脂中に添加した場合の樹脂の透過率が例えば、波長400nmの光の透過率が70%以上である亜鉛化合物であるのが好ましい。
【0047】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、熱による着色を抑制し、透明性および耐硫化性を確実に発現させることができる観点から、(D)成分を(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して0.1〜1質量部含有することが好ましく、0.1〜0.5質量部であるのがより好ましく、0.12〜0.5質量部であるのがさらに好ましい。ここで、(D)成分が(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して5質量部を超えると、熱による着色が生じやすくなり、透明性が低下する場合があり、一方、0.1質量部未満であると、耐硫化性が十分発現しない場合がある。
(D)成分は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
(D)成分の製造方法としては、例えば、酸化亜鉛および/または炭酸亜鉛1モルに対して、無機酸および/または有機酸を1.5モル以上3モル未満反応させる方法が挙げられる。
このとき、無機酸としては、例えば、リン酸が挙げられ、有機酸としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリル酸、2−エチルヘキサン酸、(メタ)アクリル酸、ネオデカン酸等が挙げられる。
【0049】
1.5.(E)成分
本発明のシリコーン樹脂組成物は、(E)成分:ホウ素化合物を含有することで高温下での長期信頼性に優れる。
【0050】
(E)成分としては、ホウ素を含有する化合物であるホウ素化合物であれば特に限定されず、例えば、ホウ素錯体、ホウ酸エステルが挙げられる。
【0051】
ホウ素錯体とは、ホウ素原子を有する錯体のことをいい、例えば、三フッ化ホウ素錯体が挙げられる。
三フッ化ホウ素錯体とは、三フッ化ホウ素と、水、アルコール、カルボン酸、酸無水物、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒドなどの化合物とから形成された錯体のことをいう。
三フッ化ホウ素錯体を形成するアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−デカノールなどの炭素数1〜10の第1級アルコール;i−プロパノール、sec−ブタノールなどの炭素数3〜10の第2級アルコール;等が挙げられる。カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、コハク酸などの炭素数2〜10の脂肪族カルボン酸;安息香酸、フタル酸などの芳香族カルボン酸;等が挙げられる。酸無水物としては、例えば、上記カルボン酸の無水物が挙げられる。エステルとしては、例えば、上記カルボン酸のメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルなどの炭素数1〜6のアルキルエステルが挙げられる。エーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等が挙げられる。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。アルデヒドとしては、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
このような三フッ化ホウ素錯体としては、例えば、三フッ化ホウ素エーテル錯体であるのが好ましく、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラートであるのがより好ましい。
【0052】
ホウ酸エステルとは、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸などのホウ酸と、ヒドロキシ基(−OH)を有する化合物との縮合反応により得られる化合物のことをいう。
ホウ酸エステルとしては、例えば、下記式(e1)〜(e5)のいずれかで表される化合物が挙げられる。
【0053】
【化3】

【0054】
式(e1)〜(e5)中、Rは、独立して、水素原子、アルキル基、アリル基、アリール基、シリル基、または、ホスフィン基を示し、R′は、独立して、2価の炭化水素基を示す。
【0055】
式(e1)〜(e5)中のRが示すアルキル基としては、炭素数1〜18のアルキル基であるのが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0056】
式(e1)〜(e5)中のRが示すアリル基は、2−プロペニル基(−CH2CH=CH2)である。
【0057】
式(e1)〜(e5)中のRが示すアリール基としては、炭素数1〜18のアリール基であるのが好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基等が挙げられる。
【0058】
式(e1)〜(e5)中のRが示すシリル基としては、例えば、無置換シリル基;メチルシリル基などのモノアルキルシリル基;ジメチルシリル基などのジアルキルシリル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、トリブチルシリル基などのトリアルキルシリル基;メトキシジメチルシリル基などのアルコキシジアルキルシリル基;ジメトキシメチルシリル基などのジアルコキシアルキルシリル基;トリメトキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;等が挙げられる。
【0059】
式(e1)〜(e5)中のRが示すホスフィン基としては、例えば、ジメチルホスフィン基、ジフェニルホスフィン基、ジトリルホスフィン基、ジナフチルホスフィン基等が挙げられる。
【0060】
式(e1)〜(e5)中のR′が示す2価の炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜20の2価の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜20のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ヘプタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0061】
式(e1)〜(e5)で表される(E)成分としては、例えば、下記式(e6)で表される2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、下記式(e7)で表されるトリス(トリメチルシリル)ボラート、下記式(e8)で表される2,4,6−トリメトキシボロキシン、下記式(e9)で表されるビス(ピナコレート)ジボロン等が挙げられる。
【0062】
【化4】

【0063】
これらのうち、高温下での長期信頼性がより優れるという理由から、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、トリス(トリメチルシリル)ボラート、2,4,6−トリメトキシボロキシン、ビス(ピナコレート)ジボロンであるのが好ましい。
(E)成分は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
(E)成分の量は、高温下での長期信頼性がより優れるという理由から、上述した(A)成分100質量部に対して、0.01〜5質量部であるのが好ましく、0.1〜3質量部であるのがより好ましい。
【0065】
1.6.(F)成分
本発明のシリコーン樹脂組成物は、(F)成分:リン酸エステルを含有することで高温下での長期信頼性に優れる。
【0066】
リン酸エステルとしては、例えば、下記式(f2)で表されるものが挙げられる。
O=P−(OR (f2)
式(f2)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基またはシリル基を示し、上述した式(f1)中のRが示す炭素数1〜18のアルキル基、アリール基またはシリル基と同義である。
式(f2)中のRとしては、(A)成分に対する相溶性に優れるという理由から、炭素数1〜18のアルキル基であるのが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であるのがより好ましい。
【0067】
リン酸エステルとしては、例えば、プロピルリン酸エステル、ブチルリン酸エステル、ヘキシルリン酸エステルなどのモノエステル;ジプロピルリン酸エステル、ジブチルリン酸エステル、ジヘキシルリン酸エステルなどのジエステル;リン酸トリエチル、トリプロピルリン酸エステル、トリブチルリン酸エステル、トリヘキシルリン酸エステル、リン酸トリス(トリメチルシリル)などのトリエステル;ポリエチレンオキシドドデシルエーテルリン酸エステルなどのポリエチレンオキシドアルキルエーテルリン酸エステル;等が挙げられる。
これらのうち、高温下での長期信頼性がより優れるという理由から、トリエステルであるのが好ましく、リン酸トリエチル、リン酸トリス(トリメチルシリル)であるのがより好ましい。
【0068】
(F)成分としては、ヒドロシリル化反応を阻害しにくいという理由から、リン原子に直接非共有電子対を持たない正リン酸エステルであるのが好ましい。
(F)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
(F)成分の量(上述した(E)成分を併用する場合は、(E)成分および(F)成分の合計量)は、高温下での長期信頼性がより優れるという理由から、上述した(A)成分100質量部に対して、0.01〜5質量部であるのが好ましく、0.1〜3質量部であるのがより好ましい。
【0070】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分、ならびに、(E)成分および/または(F)成分以外に、本発明の目的や効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、無機フィラー、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤、分散剤、帯電防止剤、重合禁止剤、消泡剤、硬化促進剤、溶剤、無機蛍光体、老化防止剤、ラジカル禁止剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン老化防止剤、増粘剤、可塑剤、放射線遮断剤、核剤、カップリング剤、導電性付与剤、リン系過酸化物分解剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤、接着付与剤、接着助剤が挙げられる。各種添加剤は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
接着付与剤または接着助剤としては、例えば、公知のエポキシ系シランカップリング剤、ビス(アルコキシ)アルカン、イソシアヌレート誘導体等が挙げられ、なかでも、ビス(アルコキシ)アルカンおよび/またはイソシアヌレート誘導体であるのが好ましい。
ビス(アルコキシ)アルカンとしては、例えば、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナンおよび1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカンからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましく、1,6−ビス(トリメトキシシリル)へキサンがより好ましい。
イソシアヌレート誘導体としては、下記式で表されるものであるのが好ましい。
【0071】
【化5】

【0072】
上記式中、Rは、それぞれ独立に、有機基または脂肪族不飽和結合を有する一価の炭化水素基を示し、エポキシ基、グリシドキシ基、アルコキシシリル基、(メタ)アクリロイル基などの置換基を有していてもよい。
上記式中のRが示す有機基としては、特に制限されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ハロゲン化アルキル基;等が挙げられる。
また、上記式中のRが示す脂肪族不飽和結合を有する一価の炭化水素基としては、特に制限されず、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基などの炭素数2〜8の不飽和炭化水素基が挙げられる。
上記式で表されるイソシアヌレート誘導体としては、例えば、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
これらの接着付与剤または接着助剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
無機フィラーとしては、特に限定されず、光学特性を低下させない微粒子状のものが挙げられる。具体的には例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ、疎水性超微粉シリカ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムが挙げられる。
【0074】
無機蛍光体としては、例えば、LEDに広く利用されている、イットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系蛍光体、ZnS系蛍光体、YS系蛍光体、赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体が挙げられる。
【0075】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、その製造について特に制限されない。例えば、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分と、所望により(E)成分および/または(F)成分と、必要に応じて使用することができるヒドロシリル化反応触媒、添加剤とを混合することによって製造することができる。また、本発明のシリコーン樹脂組成物は、1液型または2液型とすることが可能である。
【0076】
本発明のシリコーン樹脂組成物を2液型とする場合、(B)成分および(C)成分を含有する第1液と、(A)成分および(D)成分を含有する第2液とに分けて製造することができる。(E)成分および/または(F)成分、ならびに、添加剤は第1液および第2液のうちの一方または両方に加えることができる。
【0077】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、可使時間の長さが適切なものとなるという観点から、(B)成分以外の成分を含む液と(B)成分とを混合してから23℃の条件下での24時間後の粘度が、5〜10,000mPa・sであるのが好ましく、5〜5,000mPa・sであるのがより好ましい。
なお、本発明において、本発明のシリコーン樹脂組成物を混合して23℃の条件下に置き、混合から24時間後の組成物について、その粘度の測定は、E型粘度計を用い、23℃、湿度55%の条件下で行われるものとする。
【0078】
本発明のシリコーン樹脂組成物の使用方法としては、例えば、基材(例えば、光半導体素子)に本発明の組成物を塗布し硬化させることが挙げられる。
本発明のシリコーン樹脂組成物を塗布、硬化する方法は特に制限されない。例えば、ディスペンサーを使用する方法、ポッティング法、スクリーン印刷、トランスファー成形、インジェクション成形が挙げられる。
【0079】
本発明のシリコーン樹脂組成物は加熱によって硬化することができる。
本発明のシリコーン樹脂組成物を加熱して硬化させる際の加熱温度は、通常100℃以上であり、硬化性により優れるという観点から、120℃以上であるのが好ましく、120〜200℃であるのがより好ましく、120〜180℃であるのがさらに好ましい。
【0080】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、その用途について特に制限されない。例えば、電子材料用の封止材組成物、建築用シーリング材組成物、自動車用シーリング材組成物、接着剤組成物が挙げられる。
電子材料としては、例えば、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材;光半導体素子;半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子;コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子が挙げられる。
【0081】
また、本発明のシリコーン樹脂組成物は、例えば、ディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の用途において使用することができる。
【0082】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、貯蔵安定性という観点から、シラノール基を有するケイ素化合物を実質的に含まないものであることができる。
また、本発明のシリコーン樹脂組成物は、銀の存在下で使用することができる。銀の存在下で本発明のシリコーン樹脂組成物を硬化させてシリコーン樹脂を製造することにより、銀の変色(腐食)を防止でき、得られるシリコーン樹脂の透明性を保持することができる。
【0083】
また、本発明においては、以下のとおり、分光反射率維持率を算出することができる。
まず、第11族の金属(例えば、銀)を用いて得られる金属層の上に本発明のシリコーン樹脂組成物を厚さ1mmに付与し硬化させて、上記金属層とシリコーン樹脂層とを有する積層体とする。
次に、上記積層体を560ppmの硫化水素ガス中に23℃の条件下で置く耐硫化試験を行い、上記耐硫化試験の前および上記耐硫化試験開始から24時間後における、上記積層体の分光反射率を分光反射率計を用いて測定する。
そして、上記分光反射率を式[分光反射率維持率=(耐硫化試験後の分光反射率/耐硫化試験前の分光反射率)×100]に当てはめ算出する。
本発明においては、耐硫化性の観点から、分光反射率維持率が80%以上であるのが好ましい。
【0084】
2.シリコーン樹脂
本発明のシリコーン樹脂は、本発明のシリコーン樹脂組成物を硬化させて得られる。本発明のシリコーン樹脂組成物を使用することによって、例えば、耐硫化性に優れたシリコーン樹脂を得ることができる。
【0085】
硬化について以下に説明する。本発明のシリコーン樹脂は、本発明のシリコーン樹脂組成物を加熱によって硬化させることにより得ることができる。
【0086】
シリコーン樹脂組成物を加熱によって硬化させる場合、硬化性に優れ、硬化時間、可使時間を適切な長さとすることができ、発泡するのを抑制でき、シリコーン樹脂のクラックを抑制でき、シリコーン樹脂の平滑性、成形性、物性に優れるという観点から、シリコーン樹脂組成物を、120〜180℃(好ましくは150℃)で20時間(好ましくは12時間)以内に硬化させる方法が好ましい。
【0087】
本発明のシリコーン樹脂は、LEDチップの封止材として使用することができる。LEDチップは、その発光色について特に制限されない。例えば、青色、赤色、黄色、緑色、白色が挙げられる。LEDチップは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0088】
3.光半導体素子封止体
本発明の光半導体素子封止体について以下に説明する。本発明の光半導体素子封止体は、LEDチップが本発明のシリコーン樹脂で封止されているものである。
【0089】
本発明の光半導体素子封止体に使用されるシリコーン樹脂は、本発明のシリコーン樹脂であれば特に制限されない。
本発明の光半導体素子封止体において、シリコーン樹脂組成物として本発明のシリコーン樹脂組成物を使用することによって、得られる光半導体素子封止体は、耐硫化性に優れ、かつ、ゴム弾性および可撓性に優れている。
【0090】
また、本発明の光半導体素子封止体に使用されるLEDチップはその発光色について特に制限されない。例えば、本発明のシリコーン樹脂組成物にイットリウム・アルミニウム・ガーネットのような蛍光物質を含有させたもので青色LEDチップをコーティングし、白色LEDとすることができる。
また、赤色、緑色および青色のLEDチップを用いて発光色を白色とする場合、例えば、それぞれのLEDチップを本発明のシリコーン樹脂組成物で封止してこれら3色のLEDチップの封止体を使用すること、または3色のLEDチップをまとめて本発明のシリコーン樹脂組成物で封止し1個の光源とすることができる。
LEDチップの大きさ、形状は特に制限されない。
LEDチップの種類は、特に制限されず、例えば、ハイパワーLED、高輝度LED、汎用輝度LED、白色LED、青色LEDが挙げられる。
【0091】
本発明の光半導体素子封止体に使用される光半導体素子としてはLEDのほかに、例えば、有機電界発光素子(有機EL)、レーザーダイオード、LEDアレイが挙げられる。
本発明の光半導体素子封止体に使用される光半導体素子としては、例えば、光半導体素子がダイボンディングによってリードフレーム等の基板に接着され、チップボンディング、ワイヤーボンディング、ワイヤレスボンディング等によって基板等と接続された状態のものを使用することができる。
本発明の光半導体素子封止体に使用される硬化物は、光半導体素子を封止していればよい。本発明の光半導体素子封止体としては、例えば、硬化物が直接光半導体素子を封止している場合、砲弾型とする場合、表面実装型とする場合、複数の光半導体素子封止体の間を充填している場合が挙げられる。
【0092】
本発明の光半導体素子封止体の製造方法としては、LEDチップに本発明のシリコーン樹脂組成物を塗布する塗布工程と、前記シリコーン樹脂組成物が塗布されたLEDチップを加熱して前記シリコーン樹脂組成物を硬化させて硬化物とするとともに、前記亜鉛化合物を前記硬化物の表面にブリードアウトさせる硬化工程とを有するものが挙げられる。
【0093】
塗布工程において、LEDチップに本発明のシリコーン樹脂組成物を塗布し、前記シリコーン樹脂組成物が塗布されたLEDチップを得る。塗布工程において使用される、LEDチップは上記と同義である。塗布の方法は特に制限されない。例えば、ポッティング法、トランスファー成形、インジェクション成形、スクリーン印刷法が挙げられる。
【0094】
次に、硬化工程において、前記シリコーン樹脂組成物が塗布されたLEDチップを加熱して前記シリコーン樹脂組成物を硬化させて硬化物を得る。ここで、前記シリコーン樹脂組成物を加熱する温度は、本発明のシリコーン樹脂を製造する工程で示したものと同義である。
【0095】
本発明の光半導体素子封止体について添付の図面を用いて以下に説明する。なお本発明の光半導体素子封止体は添付の図面に限定されない。
図1は本発明の光半導体素子封止体の一例を模式的に示す上面図であり、図2は図1に示す光半導体素子封止体のA−A断面を模式的に示す断面図である。
図1において、600は本発明の光半導体素子封止体であり、光半導体素子封止体600は、LEDチップ601と、LEDチップ601を封止するシリコーン樹脂603とを備える。本発明の組成物はシリコーン樹脂603に使用することができる。なお、図6においてリード、ワイヤー、基板609は省略されている。
図2において、LEDチップ601は基板609に例えば接着剤、はんだ(図示せず)によってボンディングされている。基板としては例えばセラミックス、多層セラミックス、多層プリント、リードフレームが挙げられる。なお、図2においてワイヤーは省略されている。また、基板609の上には、銀を含む部材として銀膜602が設けられている。銀膜602は例えばめっきにより基板602上に成膜される。図2に示される光半導体素子封止体では、銀膜602がシリコーン樹脂602と接触している例を示したが、シリコーン樹脂602と接触していなくてもよい。例えば、銀膜602の上に設けられた他の層(図示せず)の上にシリコーン樹脂が配置されていてもよい。
また、図2におけるTは、シリコーン樹脂603の厚さを示す。すなわち、Tは、LEDチップ601の表面上の任意の点605から、点605が属する面607に対して鉛直の方向にシリコーン樹脂603の厚さを測定したときの値である。
本発明の光半導体素子封止体は、透明性を確保し、密閉性に優れるという観点から、その厚さ(図2におけるT)が0.1mm以上であるのが好ましく、0.5〜1mmであるのがより好ましい。
【0096】
本発明の光半導体素子封止体の一例として白色LEDを使用する場合について添付の図面を用いて以下に説明する。図3は、本発明の光半導体素子封止体を模式的に示す断面図である。図4は、本発明の光半導体素子封止体を模式的に示す断面図である。なお、本発明の光半導体素子封止体は添付の図面に限定されない。
【0097】
図3において、白色LED200は、基板210の上にセラミックのパッケージ204を有する。パッケージ204には、内部に一段下がったキャビティー(図示せず。)が設けられている。キャビティー内には、青色LEDチップ203とシリコーン樹脂202とが配置されている。シリコーン樹脂202は、本発明のシリコーン樹脂組成物を硬化させたものであり、蛍光物質としてセリウムを付活したイットリウム・アルミニウム・ガーネットを含有することができる。
青色LEDチップ203は、基板210上にマウント部材201で固定されている。青色LEDチップ203の各電極(図示せず。)とパッケージ204に設けられた外部電極209とは導電性ワイヤー207によってワイヤーボンディングさせている。
パッケージ204のキャビティー(図示せず。)において、斜線部206まで本発明のシリコーン樹脂組成物で充填してもよい。斜線部206まで本発明のシリコーン樹脂組成物で充填する場合、シリコーン樹脂202は斜線部206を合わせたものとなる。図3に示すように、シリコーン樹脂202は1層でLEDチップを封止することができる。
【0098】
図4において、白色LED300は、ランプ機能を有するシリコーン樹脂306の内部に基板310、青色LEDチップ303およびインナーリード305を有する。基板310には、頭部に一段下がったキャビティー(図示せず。)が設けられている。キャビティー内には、青色LEDチップ303とシリコーン樹脂302とが配置されている。シリコーン樹脂302は、本発明のシリコーン樹脂組成物を硬化させたものであり、蛍光物質としてセリウムを付活したイットリウム・アルミニウム・ガーネットを含有することができる。また、シリコーン樹脂306を本発明のシリコーン樹脂組成物を用いて形成することができる。
青色LEDチップ303は、基板310上にマウント部材301で固定されている。青色LEDチップ303の各電極(図示せず。)と基板310およびインナーリード305とはそれぞれ導電性ワイヤー307によってワイヤーボンディングさせている。
【0099】
なお、図3、図4においてLEDチップを青色LEDチップとして説明したが、キャビティー内に赤色、緑色および青色の3色のLEDチップを配置することができる。シリコーン樹脂202、302の部分を本発明のシリコーン樹脂組成物を用いて例えばポッティング法によって封止し、光半導体素子封止体とすることができる。
【0100】
本発明の光半導体素子封止体は、シリコーン樹脂として本発明のシリコーン樹脂(本発明のシリコーン樹脂の原料は本発明のシリコーン樹脂組成物である。)を使用する以外は、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。また、本発明の光半導体素子封止体を製造する際の加熱温度は、本発明のシリコーン樹脂組成物を硬化させる際の加熱温度と同様とするのが、優れた硬化性を発揮できるという観点から好ましい。
【0101】
本発明の光半導体素子封止体をLED表示器に利用する場合について添付の図面を用いて説明する。図5は、本発明の光半導体素子封止体を用いたLED表示器の一例を模式的に示す図である。図6は、図5に示すLED表示器を用いたLED表示装置のブロック図である。なお、本発明の光半導体素子封止体が使用されるLED表示器、LED表示装置は添付の図面に限定されない。
【0102】
図5において、LED表示器400は、白色LED401を筐体404の内部にマトリックス状に配置し、白色LED401を充填剤406で固定し、筐体404の一部に遮光部材405を配置して構成されている。本発明のシリコーン樹脂組成物は充填剤406として使用することができる。
【0103】
図6において、LED表示装置500は、白色LED封止体を用いるLED表示器501を具備する。LED表示器501は、駆動回路である点灯回路などと電気的に接続される。駆動回路からの出力パルスによって種々の画像が表示可能なディスプレイ等とすることができる。駆動回路としては、入力される表示データを一時的に記憶させるRAM(Random、Access、Memory)504と、RAM504に記憶されるデータから個々の白色LEDを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算する階調制御回路(CPU)503と、階調制御回路(CPU)503の出力信号でスイッチングされて、白色LEDを点灯させるドライバー502とを備える。階調制御回路(CPU)503は、RAM504に記憶されるデータから白色LEDの点灯時間を演算してパルス信号を出力する。なお、本発明の光半導体素子封止体はカラー表示できる、LED表示器やLED表示装置に使用することができる。
【0104】
本発明の光半導体素子封止体の用途としては、例えば、自動車用ランプ(ヘッドランプ、テールランプ、方向ランプ等)、家庭用照明器具、工業用照明器具、舞台用照明器具、ディスプレイ、信号、プロジェクターが挙げられる。
【0105】
4.実施例
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0106】
4.1.評価
以下に示すように、透過率、耐熱着色安定性、耐硫化性、硬化状態、密着性および高温下での長期信頼性について評価した。結果を第1表に示す。
【0107】
4.1.1.透過率評価試験
透過率評価試験において、下記のようにして得られたシリコーン樹脂組成物を150℃の条件下で12時間硬化させて得られた初期硬化物、および耐熱試験(初期硬化物をさらに150℃の条件下で10日間加熱する試験。)後の硬化物(いずれも厚さが2mm。)についてそれぞれ、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製)を用いて波長400nmにおける透過率を測定した。また、耐熱試験後の透過率の初期の透過率に対する保持率を下記計算式によって求めた。
透過率保持率(%)=(耐熱試験後の透過率)/(初期の透過率)×100
【0108】
4.1.2.耐熱着色安定性評価試験
下記のようにして得られたシリコーン樹脂組成物を150℃の条件下で4時間硬化させて得られた初期硬化物、および耐熱試験(初期硬化物を150℃の条件下で10日間加熱する試験。)後の硬化物(いずれも厚さが2mm。)について、耐熱試験後の硬化物が、初期硬化物と比較して黄変したかどうかを目視で観察した。
【0109】
4.1.3.耐硫化性
硬化サンプル作製:銀メッキ上に各実施例および比較例のシリコーン樹脂組成物を厚さ1mm程度になるよう塗布し、150℃で3時間加熱して硬化させて、積層体(「硬化サンプル」ともいう)を作製した。
耐硫化試験:10Lのデシケーターの底に粉状に粉砕した硫化鉄を10g程度(塩酸0.5mmolに対して大過剰)を置き、この硫化鉄の上方に、硫化鉄に接触しないように目皿(貫通孔を有する)をデシケーター内に取り付け、この目皿の上に硬化サンプルを置いた。次に、大過剰の硫化鉄に0.5mmolの塩酸を滴下することにより、0.25mmolの硫化水素(濃度の理論値:560ppm)を発生させた(反応式:FeS+2HCl→FeCl+HS)。
次に、下記のとおり、分光反射率の測定を行い、分光反射率維持率を算出した。
分光反射率の測定:前記耐硫化試験の前および前記耐硫化試験開始(硫化水素の発生開始)から24時間後における、前記積層体の分光反射率を分光反射率計(ウシオ電機社製のURE−30)を用いて475nmの条件で測定した。
評価方法:得られた、耐硫化試験後の分光反射率および耐硫化試験前の分光反射率を式[分光反射率維持率=(耐硫化試験後の分光反射率/耐硫化試験前の分光反射率)×100]に当てはめて分光反射率維持率を算出した。
第1表において、算出された分光反射率維持率が80%以上である場合には耐硫化性に優れるものとして「○」と評価し、80%未満である場合には耐硫化性に劣るものとして「×」と評価した。
さらに、1時間ごとに目視により銀の変色を確認した。第1表において、目視により変色が確認されなかったものを「○」、目視により変色が確認されたものを「×」とした。
【0110】
4.1.4.密着性
下記のようにして得られたシリコーン樹脂組成物を、LED用パッケージ(エノモト社製)に流し込み、150℃、3時間の条件で硬化させて、評価用サンプルを得た。
次に、得られた評価用サンプルについて、目視にて硬化物の剥離の有無を確認し、剥離が確認されなかった場合には、スパチュラを用いて硬化物の密着性を評価した。
目視にて硬化物の剥離が確認されなかった場合には、密着性にやや優れるものとして「△」と評価し、さらにスパチュラを用いても硬化物が容易に剥離しなかった場合には、密着性に優れるものとして「○」と評価し、スパチュラを用いて剥離させた際に硬化物が凝集破壊を伴った場合には密着性により優れるものとして「◎」と評価した。
これに対して、目視にて硬化物の剥離が確認された場合またはスパチュラを用いることで硬化物が容易に剥離した場合には、密着性に劣るものとして「×」と評価した。
【0111】
4.1.5.高温下での長期信頼性
下記のようにして得られたシリコーン樹脂組成物を、LED用パッケージ(エノモト社製)に流し込み、150℃、3時間の条件で硬化させて、評価用サンプルを得た。次に、得られた評価用サンプルを、150℃の条件下に500時間暴露し、その後、目視にて硬化物のクラックや剥離の有無を確認し、剥離が確認されなかった場合には、スパチュラを用いて硬化物の密着性を評価した。
目視にてクラックや剥離が確認されなかった場合には、高温下での長期信頼性にやや優れるものとして「△」と評価し、さらにスパチュラを用いても硬化物が容易に剥離しなかった場合には、高温下での長期信頼性に優れるものとして「○」と評価し、スパチュラを用いて剥離させた際に硬化物が凝集破壊を伴った場合には高温下での長期信頼性により優れるものとして「◎」と評価した。
これに対して、目視にてクラックや剥離が確認された場合には、高温下での長期信頼性に劣るものとして「×」と評価した。
【0112】
4.2.サンプルの作製(透過率、耐熱着色安定性および硬化状態の評価用)
サンプルの作製について添付の図面を用いて以下に説明する。
図7は、実施例において本発明のシリコーン樹脂組成物を硬化させるために使用した型を模式的に表す断面図である。
図7において、型8は、ガラス3(ガラス3の大きさは、縦10cm、横10cm、厚さ4mm)の上にPETフィルム5が配置され、PETフィルム5の上にシリコンモールドのスペーサー1(縦5cm、横5cm、高さ2mm)を配置されているものである。
型8を用いてスペーサー1の内部6に組成物6を流し込み、次のとおりサンプルの硬化を行った。
【0113】
組成物6が充填された型8を電気オーブンに入れて、上記の評価の条件で加熱して組成物6を硬化させ、厚さ2mmの硬化物6(初期硬化物)を製造した。得られた硬化物6を透過率、耐熱着色安定性および硬化状態の評価用のサンプルとして用いた。
【0114】
4.3.シリコーン樹脂組成物の製造
下記第1表に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で真空かくはん機を用いて均一に混合しシリコーン樹脂組成物を製造した。
第1表の実施例1〜8の組成物は(D)成分を含有する。実施例9〜21の組成物は、(E)成分および/または(F)成分を含有する。一方、第1表の比較例1〜6および9の組成物は(D)成分を含有しない。また、第1表の比較例7および8の組成物は、(D)成分の含有量が(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲外である。比較例1は(D)成分を含有しない以外は、実施例1と同様の成分を含有し、比較例2〜6は、(D)成分の代わりにそれぞれアルミ化合物、マグネシウム化合物、鉄化合物、コバルト化合物またはマンガン化合物を含有する。比較例9はエポキシ樹脂を用いた例である。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

【0118】
【表4】

【0119】
第1表に示されている各成分は、以下のとおりである。
・(A)(B)(C)混合物:主剤であるビニルポリシロキサン((A)成分)と、架橋剤であるハイドロジェンポリシロキサン((B)成分)との混合液(A液)と、ビニルポリシロキサン((B)成分)とヒドロシリル化反応触媒((C)成分)との混合液(B液:CAT−RG)との混合物(商品名KE106、CATRAG信越化学工業社製)
・(A)ポリシロキサン2:両末端ビニル基封鎖ジメチルポリシロキサン(商品名:DMS−V31、Gelest社製)
・(B)ポリシロキサン架橋剤2:ハイドロジェンポリシロキサン(商品名:KF−9901、信越化学社製)
・(C)ヒドロシリル化反応触媒2:白金―シクロビニルメチルシロキサン錯体(商品名:SIP6832.2、Gelest社製)
・エポキシ樹脂:ビスフェノールAジグリシジルエーテルエポキシ液状樹脂(商品名:EP4100、東都化成製)
・(D)亜鉛化合物1:亜鉛ビスアセチルアセトネート、関東化学製
・(D)亜鉛化合物2:亜鉛ビス2エチルヘキサノエート、ホープ製薬製
・アルミ化合物:エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート(商品名:AL−CH,川研ファインケミカル社製)
・マグネシウム化合物:マグネシウムビス(2−エチルヘキサノエート)(商品名:ニッカオクチックスマグネシウム、日本化学産業社製)
・鉄化合物:鉄(III)アセチルアセトナート(Gelest社製)
・コバルト化合物:コバルト(III)アセチルアセトナート(マツモト交商社製)
・マンガン化合物:マンガン(III)アセチルアセトナート(東京化成工業社製)
・カチオン重合触媒:BF・EtO(BFエチルエテラート錯体、東京化成工業社製)
・接着付与剤1:エポキシシランオリゴマー(商品名:X−41−1053、信越化学工業社製)
・接着付与剤2:1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(商品名:Z−6830、東レ・ダウコーニング社製)
・接着付与剤3:トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(商品名:X−12−965、信越化学工業社製)
【0120】
・(E)ホウ素化合物1:2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(東京化成工業社製)
・(E)ホウ素化合物2:トリス(トリメチルシリル)ボラート(東京化成工業社製)
・(E)ホウ素化合物3:2,4,6−トリメトキシボロキシン(東京化成工業社製)
・(E)ホウ素化合物4:ビス(ピナコレート)ジボロン(東京化成工業社製)
・(E)ホウ素化合物5:三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(東京化成工業社製)
・(F)リン酸エステル1:リン酸トリエチル(東京化成工業)
・(F)リン酸エステル2:リン酸トリス(トリメチルシリル)(Gelest社製)
【0121】
4.4.結果
第1表に示す結果から明らかなように、(D)成分を含有しないか、または、(D)成分の含有量が(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して0.1質量部未満である比較例1および8の組成物を用いて得られた硬化物は耐硫化性に劣った。また、(D)成分の含有量が(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して5質量部を超える比較例7の組成物を用いて得られた硬化物は白濁した。さらに、(D)成分の代わりにそれぞれアルミ化合物またはマグネシウム化合物を用いた比較例2および3の組成物を用いて得られた硬化物は耐硫化性に劣り、また、(D)成分の代わりにそれぞれ鉄化合物、コバルト化合物またはマンガン化合物を用いた比較例4〜6の組成物を用いて得られた硬化物は着色しており、封止材としては不適である(各化合物自身が着色している)。また、エポキシ樹脂を含有する比較例9の組成物を用いて得られた硬化物は着色し透過率に劣った。
これに対して、実施例1〜7の組成物を用いて得られた硬化物は、耐硫化性に優れるうえ、透過率および透過率保持率が高いことから透明性を保持することができ、混合後の増粘が低く、かつ貯蔵安定性に優れていることが理解できる。
【0122】
また、第1表に示す結果から、(E)成分および/または(F)成分を含有する実施例9〜21は、(E)成分および/または(F)成分を含有しない実施例1〜8と比較して、高温下での長期信頼性に優れることが分かった。
【符号の説明】
【0123】
1 スペーサー
3 ガラス
5 PETフィルム
6 シリコーン樹脂組成物(硬化後シリコーン樹脂6、硬化物6となる)
8 型
10 表面 12 裏面
14 被膜 16 境界
18 シリコーン樹脂部分
200、300 白色LED 201、301 マウント部材
202、302 シリコーン樹脂 203、303 青色LEDチップ
204 パッケージ 206 斜線部
306 シリコーン樹脂 207、307 導電性ワイヤー
209 外部電極 210、310 基板
305 インナーリード 400、501 LED表示器
401 白色LED 404 筐体
405 遮光部材 406 充填剤
500 LED表示装置 501 LED表示器
502 ドライバー
503 階調制御手段(CPU)
504 画像データ記憶手段(RAM)
600 本発明の光半導体素子封止体
601 LEDチップ
602 銀膜
603 シリコーン樹脂
605 点
607 点605が属する面
609 基板
611 斜線部
T シリコーン樹脂603の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するポリシロキサンと、
(B)成分:ケイ素原子に結合した水素基を少なくとも2個有するポリシロキサン架橋剤と、
(C)成分:ヒドロシリル化反応触媒と、
(D)成分:亜鉛化合物と、
を含み、
前記(D)成分を前記(A)成分および前記(B)成分の合計100質量部に対して0.1〜5質量部含有する、シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
シラノール基を有するケイ素化合物を実質的に含まない、請求項1に記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)成分が亜鉛を含有する錯体および/または金属塩である、請求項1または2に記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
前記アルケニル基が、ビニル基または(メタ)アクリロイル基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
光半導体素子封止用に使用される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項6】
銀の存在下で使用される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、(E)成分:ホウ素化合物および/または(F)成分:リン酸エステルを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、ビス(アルコキシ)アルカンおよび/またはイソシアヌレート誘導体を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂組成物であって、
第11族の金属を用いて得られる金属層の上に前記シリコーン樹脂組成物を厚さ1mmに付与し硬化させて、前記金属層とシリコーン樹脂層とを有する積層体とし、
前記積層体を560ppmの硫化水素ガス中に23℃の条件下で置く耐硫化試験を行い、前記耐硫化試験の前および前記耐硫化試験開始から24時間後における、前記積層体の分光反射率を分光反射率計を用いて測定し、前記分光反射率を式[分光反射率維持率=(耐硫化試験後の分光反射率/耐硫化試験前の分光反射率)×100]に当てはめ算出される分光反射率維持率が80%以上である、シリコーン樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させることによって得られる、シリコーン樹脂。
【請求項11】
請求項10記載のシリコーン樹脂と、銀を含む部材とを含む、シリコーン樹脂含有構造体。
【請求項12】
LEDチップが請求項10に記載のシリコーン樹脂で封止されている光半導体素子封止体。
【請求項13】
銀を含む部材をさらに含む、請求項12記載の光半導体素子封止体。
【請求項14】
銀の存在下で請求項1〜8のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させる工程を含む、シリコーン樹脂組成物の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−178983(P2011−178983A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239781(P2010−239781)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】