説明

シリコーン系接着構造体および電動パワーステアリング装置

【課題】シリコーン系接着剤における基本課題である硬化阻害の許容値を明確にすることで、管理方法製造工程を改良して、大型車の電動パワーステアリング装置に要求されるような高い接着せん断強度を広い温度範囲で満たすともに、冷熱サイクル後にも接着せん断強度を維持することができるシリコーン系接着組成物、及び該接着剤組成物でモータ部品を接着した接着構造体を提供する。
【解決手段】永久磁石とモータ軸の接着にシリコーン系接着剤を使用して、接着面のチッソ、イオウ、リン元素量が0.1μmol/cm2以下で、接合剤層の厚さが0.1mm以上で、接着せん断強度が6MPa以上のシリコーン系接着構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電動パワーステアリング装置に使用されるモータの製造において、永久磁石(例えば、ネオジム磁石)と金属部品(モータ軸)とを接着したシリコーン系接着構造体及びかかる接着構造体を有する電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のパワーステアリング装置は燃料費効率のために、直流ブラシレスモータの補助による操舵を行う電動式パワーステアリング装置が主に小型車に搭載されている。しかし、大型車においては、小型車用の電動パワーステアリング装置をそのまま適応することは困難である。大型車の電動パワーステアリング装置は、高出力を得るために、永久磁石を大型化しなければならず、小型車の電動パワーステアリング装置で用いられた又はその他の従来の1液型エポキシ系接着剤では大型の永久磁石を十分に固定できない。すなわち、使用条件により、熱膨張係数の異なる被着体間に生じる熱応力(残留応力)の増加による、見かけの接着強さの低下、または耐冷熱サイクル性や耐湿性の不足による著しい接着せん断強度の低下により、永久磁石がモータ軸から剥がれる危険性があるからである。そのため、大型車の電動パワーステアリング装置用のモータではモータ軸と永久磁石の固定には接着と機械的固定の併用が不可避であった。
【0003】
接着と機械的固定を回避するためにエポキシ系接着剤の改良がなされている。(特許文献1)
一方、耐熱性のよいシリコーン系接着剤が用いられる場合もあるが、接着せん断強度の不足や、硬化阻害といった品質上の管理が重要であり、種々のシリコーン材料の改良がなされている。(特許文献2)
【0004】
【特許文献1】特開2005−15563
【特許文献2】特公平5−7427
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動パワーステアリング装置の部品、特にモータを構成する永久磁石とモータ軸の接着部には高い耐熱性や耐久性が要求される。そのため、永久磁石の接着には接着せん断強度に課題があるエポキシ系接着剤に代わり、シリコーン系接着剤の要求が大きい。しかしながら、シリコーン系接着剤においては硬化阻害という課題がある。
本発明の目的は、シリコーン系接着剤における基本課題である硬化阻害の許容値を明確にすることで、管理方法製造工程を改良して、シリコーン接着組成物を大型車の電動パワーステアリング装置に要求されるような高い接着せん断強度を広い温度範囲で満たすともに、冷熱サイクル後にも接着せん断強度を維持することができるシリコーン系接着組成物を提供することである。また、本発明は、このような接着剤組成物でモータ部品を接着した接着構造体及びかかる接着構造体を有する電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明はモータ軸と、このモータ軸に比較して、線膨張係数が異なる材料で形成された永久磁石とシリコーン系接着剤で固定する接着構造体において、モータ軸と永久磁石の接着にシリコーン接着剤を使用して、接着面のチッソ、イオウ、リン元素量が0.1μmol/cm以下のシリコーン系接着構造体である(請求項1)ことを要旨とする。
【0007】
これにより、接着面の硬化阻害成分であるチッソ、リン、イオウ元素量を0.1μmol/cm以下に管理することで、シリコーン系接着組成物の硬化阻害が起こらず、電動パワーステアリング装置のモータ軸と永久磁石の必要な接着せん断強度ができ、広い温度範囲で耐久性の良い接着構造体ができる。
【0008】
また、接合剤層の厚さが0.1mm以上で接着せん断強度が6MPa以上のシリコーン接着構造体である(請求項2)。
【0009】
この場合、接合剤層の厚さが0.1mm以上のため、残留応力が小さくなり6MPa以上の接着せん断強度を有するため長期間に亘って接着はがれを起こさないため、耐久性のよい接着構造体ができる
【0010】
さらに、接着剤としてシリコーン剤は過酸化物触媒を付加して、白金触媒との併用硬化機構を有する接着構造体である(請求項3)。
【0011】
この場合、シリコーン剤は接着工程での接合剤層の厚さの変化が起こりにくく、また、白金触媒の補助触媒として過酸化物触媒を添加しているため、硬化阻害が起こりにくく、接着せん断強度の低下が起きにくいため耐久性のよい接着構造体ができる。
【0012】
また、モータによる操舵補助を行う電動パワーステアリング装置であって、前記モータは請求項1〜3の何れか記載のシリコーン系接着構造体を有することを特徴とする電動パワーステアリング装置である(請求項4)。
【0013】
この場合、シリコーン系接着構造体の使用により耐久性の優れた電動パワーステアリング装置が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、汚染物質による硬化阻害が起こりにくく、120℃の高温でも安定した接着せん断強度の高いシリコーン系接着構造体が得られ、そのため、それを使用することにより、耐久性の優れた電動パワーステアリング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電動パワーステアリング装置の全体図である。
【図2】電動パワーステアリング装置の要部拡大図である。
【図3】汚染物質の元素量と接着せん断強度の関係を示す図である。
【図4】汚染物質による硬化反応率と接着せん断強度の関係を示す図である。
【図5】接合剤層の厚さと接着せん断応力の関係を示す計算結果の図である。
【図6】接着せん断強度と高温クリープ寿命の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0016】
11 電動パワーステアリング装置
12 第1ラックハウジング
13 第2ラックハウジング
14 モータハウジング
16 ラック軸
18 モータ軸
20 第2ベアリング(軸受)
21 第1ベアリング(軸受)
26 ボールねじナット
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
モータの永久磁石の接着構造体において、モータ磁石とモータ軸の接着面はチッソ、イオウ、リンの元素量が0.1μmol/cm以下であり、接合材層は厚さが0.1mm以上が良品条件である。その厚さが0.1mm未満であれば、接着組成物の残留応力が大きくなり、繰り返しの温度変化で疲労により、接着はがれが発生する危険がある。また、上記接合剤層の接着せん断強度は6MPa以上が良品条件である。接着せん断強度が6MPa以下の場合には、上記接合剤層が残留応力によってクリープを生じ、接着せん断強度が低下するとともに、接合材層の厚さが減少して、接着面の発生応力が大きくなり、接着はがれを発生して耐久性が低下するおそれがある。
【0018】
上記接合剤層の厚みは、例えばモータ磁石のロータを軸直角方向に切断し、その断面における接合材層を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察することにより測定できる。また、上記接合剤層の接着せん断強度は、接合剤層に対して、せん断方向に応力を加え、せん断時の応力を引張試験機を用いて測定することにより求めることができる。
【0019】
本発明の電動パワーステアリング装置のための接着構造体は、モータ磁石とモータ軸の接着面にシリコーン系接着剤を塗布し、硬化させることにより形成することができる。上記シリコーン系接着剤としては、公知のシリコーン系の接着剤を使用することができる。具体的には、シリコーン系接着剤は、シリコーンゴム組成物として、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基を少なくとも2つ含有するジオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを含有する接着剤を用いることができる。
【0020】
シリコーン系接着剤には、硬化時の白金族金属系触媒としては、例えば白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体を用いることができるが、その他、HPtCl・nHO、HPtCl・nHO、NaHPtCl・HO、KPtCl・nHO、PtCl・nHO、PtCl、NaHPtCl・nHO(但し、式中、nは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス、白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの、ロジウムーオレフィンコンプレックス、クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒)、塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックスなどを含有する。
【0021】
また、上記シリコーン系接着剤は、上記白金族金属触媒の他にさらに有機過酸化物を含有することが好ましい。この場合には、接着剤の硬化がより一層進行し易くなる。有機過酸化物は、酸素によって硬化阻害を受ける恐れがあるが、上記のように、有機過酸化物と白金族金属触媒とを併用することにより、空気との界面については、白金族金属触媒の働きにより硬化を進行させ、内部にては、有機過酸化物の働きによって硬化を進行させることができる。そのため、上記接合剤層の接着せん断強度をより、向上させることができる。
【0022】
また、上記有機過酸化物は、樹脂成分をラジカル反応により架橋させる触媒として、機能する。具体的には、例えば、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、アルキルパーエステル、パーカーボネート等がある。より具体的には、例えばジー第3ブチルペルオキシド、ジクミルペルイキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、1、3−ビスベンゼン、1、1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等を用いることができる。
【0023】
以下において、本発明のシリコーン系接着剤組成物を適応することができる電動パワーステアリング装置について説明する。図1は電動パワーステアリング装置の全体図である。電動パワーステアリング装置11は、中空円筒状の第1ラックハウジング12と中空円筒状の第2ラックハウジング13と、前記両ラックハウジング12,13に同軸的に結合された中空円筒状のモータハウジング14とが、図示しない車体のボディに、第1ラックハウジング12に形成された取付部15を介して、ねじ止めされて支持されている。
【0024】
第1ラックハウジング12と第2ラックハウジング13とモータハウジング14とから構成された筒状体内には、回転不能かつ軸線方向に移動可能にラック軸16が内蔵されており、ラック軸16の両端部に連結される図示しないタイロッドを介して左右の前輪が連結される。そのラック軸16は、第1ラックハウジング12に設けれたピニオン軸17を介して図示しないステアリングホイールに連結されている。ラック軸16とピニオン軸17との間には、ラックアンドピニオン機構の噛み合い部(図示しない)が形成されている。なお、モータハウジング14は電動パワーステアリング装置のラックハウジングとしても機能している。
【0025】
次に図1の要部を拡大した図2を用いて説明する。モータハウジング14の内周には巻線が施されたステータ19が嵌合され、ラック軸16の軸線方向の中間部には中空円筒状にモータ軸18が同軸的にラック軸16の外側に遊嵌されている。
【0026】
モータ軸18は、その一端側(ピニオン軸17側)に勘合段部18cが形成され、同嵌合段部18cが軸受としての第1ベアリング21を介してモータハウジング14と、第1ラックハウジング12に対して支持されている。前記第1ベアリング21は、モータハウジング14の端部内周面及び第1ラックハウジング12端部内周面をそれぞれ周回するように形成された第1嵌合段部14aと嵌合段部12aとに対して内嵌固定されている。
【0027】
また、第1ベアリング21は、モータ軸18の端部に螺合された第1ロックナット22にて締め付けられることにより、軸線方向に押圧されてモータ軸18に対して固定されている。同モータ軸18には永久磁石27が本発明に係るシリコーン系接着剤により外接して固定されている。
【0028】
前記モータハウジング14は、端部に設けられた第1当接部14cにて、第1ラックハウジング12は、端部に設けられた当接部12bにて互いに当接されており、当接部12bを挿通した固定ねじ24を第1当接部14cに螺着することにより、両者は固定ねじ24により互いに締付けられて連結されている。前記第1当接部14cと当接部12bとの合わせ面には、薄肉状のパッキン23が介装されている。同パッキン23により、モータハウジング14と第1ラックハウジング12との嵌合部から内部への水、油等の液体の侵入を防止している。この構成によりモータハウジング14と第1ラックハウジング12と第1ベアリング21とは1箇所で嵌合される。さらに、モータハウジング14と第1ラックハウジング12とに内嵌された第1ベアリング21を介して、モータ軸18の軸線方向の動きが規制されることとなる。
【0029】
モータ軸18の他端側(ピニオン軸17側と反対側)は、中間部分よりも拡径された中空円筒状のナット保持部18aが一体に形成されている。また、モータハウジング14の他端側内周面には、周回する第2内嵌段部14bが形成されている。そして、モータ軸18は、ナット保持部18aが第2嵌合段部14bに内嵌固定された軸受としての第2ベアリング20に内勘されることにより自身の軸心の回りで回動自在に支持されている。第2ベアリング20は、モータハウジング14の第2嵌合段部14bと第2ラックハウジング13の端部13aとの間で軸線方向に動くことが可能な構成となっている。
【0030】
第2ラックハウジング13の端部13aは、モータハウジング14に対して内嵌されるとともに、端部13a外周面から張出し形成された当接部13bがモータハウジング14の第2当接部14d端面に当接されている。そして、当接部13bを挿通した固定ねじ25を第2当接部14dに螺着することにより、モータハウジング14と第2ラックハウジング13とは固定ねじ25により互いに締め付けられて連結されている。
【0031】
モータハウジング14に内嵌された端部13aの外周面には周回溝13dが形成され、同周回溝13d内には、Oリング29が嵌着されている。そして、同Oリング29により、モータハウジング14と第2ラックハウジング13との嵌合部から内部への水、油等の液体の侵入を防止している。
【0032】
また、モータハウジング14とモータ軸18とは、第1ベアリング21と第2ベアリング20により、同軸度が精度良く構成されている。以上の構成により、モータ軸18の両端はモータハウジング14の両端に設けた第1ベアリング21と第2ベアリング20とにより支持される。
【0033】
モータ軸18のナット保持部18a内にはボールねじナット26が同軸的に内嵌されている。このボールねじナット26は、ナット保持部18a内に第2ロックナット28が内嵌状態で螺入することにより、抜け止め固定されている。
【0034】
ラック軸16の外周面には軸線方向の所定範囲に螺旋状のボールねじ溝16aが設けられている。また、ボールねじナット26の内周面には螺旋状のボールねじ溝26aが設けれ、ボールねじ溝16aとボールねじ溝26aとの間には、図示しない多数のボールが転動可能に受容されている。このように、ラック軸16のボールねじ溝16aとボールねじナット26とによりボールねじ構造を備えたボールねじ機構が形成されている。そして、このボールねじ機構によりモータ軸18の正逆回転の回転トルクをラック軸16の軸線方向の往復動のアシスト力に変換することにより、ピニオン軸17に連結されたステアリングホイールの操舵力を軽減するようになっている。
【0035】
本発明のシリコーン系接着組成物は、上記のように、電動パワーステアリング装置のモータ軸18と永久磁石27との接着に用いることができる。本発明のシリコーン系接着組成物を磁石及び/又はモータ軸にヘラ、シリンジ自動塗布器などにより塗布し、120〜150℃の温度で30〜120分間、硬化させることにより接着される。
【0036】
以上モータ軸18とラック軸16とを同軸的に配置したタイプのラックアシスト式電動パワーステアリング装置について記載したが、モータ軸とラック軸とを非同軸的に配置したタイプのラックアシスト式電動パワーステアリング装置、コラムアシスト式、ピニオンアシスト式、ダイレクトドライブ式電動パワーステアリング装置のような他の形式の電動パワーステアリング装置の永久磁石とモータ軸との接着においても本発明のシリコーン系接着組成物を用いることができる。さらに、本発明で言う電動パワーステアリング装置には、ステアリングホイールの切れ角と車輪(左右の前輪)の切れ角との関係を諸条件に応じて変更するように電動モータを駆動する伝達比可変機構を備えた型式のステアリング装置をも含むものとし、この伝達比可変機構の電動モータにも本発明を適用可能である。
【0037】
実施例1
以下において、本発明のシリコーン系接着組成物を実施例に基づいて説明する。
シリコーン系接着組成物は接着面の洗浄工程で洗浄剤に含まれている汚染物質(チッソ、イオウ、リンを含有する)により硬化阻害を起こすことが知られており、汚染物質のモノイソプロパノールアミンCHCH(OH)CHNH2、ジエタノールアミン(CHCHOH)NHトリエタノールアミン(CHCHOH)ドデカンチオールCH(CH11SH各種成分を添加してその影響を確認した。その結果を図3、4に示す。汚染物質の測定は紫外蛍光分析装置を使用する。また、接着せん断強度測定試料はダブルラップシェアー試験片(材質:JIS SPCC)を用いて、表1の条件で実施した。硬化反応は付加反応率の指標で未反応量を定量して求めている。
【0038】
図3より、チッソ、イオウ、リンの汚染物質の元素量と接着せん断強度が比例しており、それは、各種汚染物質の種類や量ではなく元素量が影響することが判明した。すなわち、接着せん断強度は接着面の汚染物質である元素量が0.1μmol/cm以下の接着せん断強度が6MPa以上であれば図4に示すようにほぼ硬化反応が完了するため一定値以下にすることが必要と判明した。従って、接着表面の汚染物質を測定すれば接着せん断強度が予測推定できるため、接着面のチッソ、イオウ、リンの元素量を規定量以下に管理すれば必要な接着せん断強度を所要量以上に管理出来る。
【表1】

【0039】
実施例2
図5に残留応力(せん断応力)と接合剤層の厚さの関係を示し、図6に接着せん断強度とクリープ寿命の関係を示す。
接合剤層の厚さが0.1mm以下であれば、残留応力が大きくなり、耐久性に悪影響がでてくる。したがって接合剤層の厚さは0.1mm以上が好ましく、一方、図6に示すように接着せん断強度が6MPaより小さいと高温耐久時のクリープが大きくなり、強度が低下する。したがって、6MPa以上の接着せん断強度にすれば、最も接着せん断強度の変化が小さく耐久性がよい構成となることが判明した。
【0040】
実施例3
表2に洗浄方法の違い、および接着剤違いによる試料の接着せん断強度を示す。
また、接着面の汚染物質の除去には洗浄方法が重要であり、表2に示すようにアルカリイオン水および超音波洗浄により、飛躍的に向上することがわかった。
さらに、実施例1に示すようにシリコーン系接着剤の中でも、過酸化物架橋の材料を包含すると接着性が各段に向上することが判明し、汚染物質に対して有利であることが明確になった。

【表2】

【0041】
アルカリイオン水を用いた超音波洗浄方法であれば、硬化阻害物質を更に削減できる。また、過酸化物架橋剤を含有すれば更に効果的であることが判明した。計測法から汚染物質の元素量で整理すると比例関係にあることが判明したので、接着面の汚染物質の元素量を管理することで、必要接着せん断強度を維持できる。
従って、シリコーン系接着剤は、接着前の接着面の汚染物質を管理して、0.1μmol/cm以下にして、接合剤層の厚さを0.1mm以上で接着せん断強度が6MPaにすることで耐久性の良い接着組成物構造体ができ、耐久性の優れた電動パワーステアリング装置が出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸と、このモータ軸に比較して、線膨張係数が異なる材料で形成された永久磁石とシリコーン系接着剤で固定する接着構造体において、モータ軸と永久磁石の接着にシリコーン系接着剤を使用して、接着面のチッソ、イオウ、リン元素量が0.1μmol/cm2以下であることを特徴とするシリコーン系接着構造体。
【請求項2】
接合剤層の厚さが0.1mm以上で接着せん断強度が6MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載のシリコーン系接着構造体。
【請求項3】
シリコーン系接着剤としてシリコーン剤は過酸化物架橋剤と白金系触媒とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のシリコーン系接着構造体。
【請求項4】
モータによる操舵補助を行う電動パワーステアリング装置であって、前記モータは請求項1〜3の何れか記載のシリコーン系接着構造体を有することを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−148326(P2011−148326A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8958(P2010−8958)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】