説明

シリビンマルトシドを用いたコラーゲンゲル収縮剤

【課題】コラーゲンおよび線維芽細胞を含むコラーゲンゲルを収縮させるコラーゲンゲル収縮剤、AGE生成抑制剤及び又は糖化抑制剤の提供。
【解決手段】高濃度グルコース状況下においても、他のシリビン化合物と比較して特にコラーゲンを収縮する機能が顕著に向上することが認められた下記式(1)のシリビンマルトシドであるコラーゲンゲル収縮剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンゲル収縮剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、真皮組織モデルとして、コラーゲンゲルが、検体評価に利用されている。前記コラーゲンゲルは、コラーゲン液に線維芽細胞を懸濁し、前記線維芽細胞の培養条件下でゲル化させたものである。前記線維芽細胞は、前記コラーゲンゲル内で三次元的に培養され、その形状は、単層培養と異なり、生体内と類似の二極化した紡錘状となる。また、前記コラーゲンは、ゲル化によりコラーゲン繊維が再配列し、真皮組織に似た構造となる。前記コラーゲンゲルは、in vivo試験との相関性が高く、また、再現性が高いことから、細胞毒性試験、in vitro眼刺激性試験に用いられ、近年は、皮膚の弾力性、たるみ、ハリ、しわ改善評価モデル(例えば、特許文献1)や、創傷治癒促進(例えば、特許文献2)または創収縮の評価モデル(例えば、特許文献3)としても、用いられている。
【0003】
本発明者は、コラーゲンおよび線維芽細胞を含むコラーゲンゲルを収縮させる、コラーゲンゲル収縮剤の鋭意開発を行っており、先にリンゴ抽出物に、コラーゲンゲル収縮作用があることを知見し、リンゴ抽出物を有効成分とするコラーゲンゲル収縮剤に関する特許出願(特許文献4)を行い、リンゴ抽出物とコラーゲントリペプチドを併用することにより、コラーゲンゲル収縮作用が増強されることを見出し特許出願(特許文献5)を行い、更に、シリマリンを併用した3成分において、コラーゲンおよび線維芽細胞を含むコラーゲンゲルを格段に収縮させることを知見し、コラーゲンゲル収縮剤に関する特許出願(特許文献6)を行っている。
【0004】
ところで、シリビンは古来より肝臓の治療をはじめその抗酸化力の強さから、様々な疾病の予防・改善作用が知られており、皮膚老化抑制効果を訴求した美容液へ製品応用されている。
【0005】
しかしながら、化粧料に利用できる溶媒へのシリビンの溶解性(水溶性および油溶性)は非常に悪く、化粧料素材として利用しにくいという欠点があり、製剤化が非常に困難である。またこの溶解性の悪さに起因して、皮膚への浸透性も悪いことも確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−176208号公報
【特許文献2】特開2001−064196号公報
【特許文献3】特開2004−35526号公報
【特許文献4】特願2009−83818号
【特許文献5】特願2009−180406号
【特許文献6】特願2010−17884号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、コラーゲン及び繊維芽細胞を含むコラーゲンゲルを収縮させるシリビン系化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、シリビン系化合物の中でも、特にシリビンマルトシドがコラーゲン収縮能に優れていることを知見し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下に示すコラーゲンゲル収縮剤に関するものである。
【0009】
(1)シリビン配糖体を有効成分とする、コラーゲンおよび線維芽細胞を含むコラーゲンゲルを収縮させるコラーゲンゲル収縮剤、AGE生成抑制剤及び又は糖化抑制剤。
(2)シリビン配糖体が、シリビンマルトシドである(1)に記載のコラーゲンゲル収縮剤、AGE生成抑制剤及び又は糖化抑制剤
【発明の効果】
【0010】
本発明のコラーゲンゲル収縮剤は、コラーゲンおよび線維芽細胞を含むコラーゲンゲルを収縮させることができる。シリビン系化合物の中でも、シリビンマルトシドは他のシリビン化合物と比較して特にコラーゲンを収縮する機能が顕著に向上することが認められた。また、シリビンマルトシドは、高濃度グルコース状況下においても、コラーゲンゲルを収縮する機能が顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】正常グルコース濃度条件でのシリビンマルトシドのコラーゲンゲル収縮能を示すグラフ。
【図2】高濃度グルコース条件でのシリビンマルトシドのコラーゲンゲル収縮能を示すグラフ。
【図3】参考試験におけるコラーゲンゲル面積を示すグラフ。
【図4】参考試験におけるAGE蛍光量を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のコラーゲンゲル収縮剤は、シリビンマルトシドであることを特徴とし、コラーゲンおよび繊維芽細胞を含むコラーゲンゲルを収縮させることができるものである。コラーゲンゲルの収縮とは、例えば、ゲルの大きさが小さくなることをいう。コラーゲンゲルの大きさの指標としては、特に制限されないが、例えば、コラーゲンゲルの直径、表面積、体積などが挙げられる。以下、本発明について詳しく説明する。
【0013】
<コラーゲンゲル>
本発明において用いられるコラーゲンゲルは、収縮可能な形状であれば良く、ゲル状以外に、例えば、固形状であっても良い。
コラーゲンゲルに含まれるコラーゲンの種類は、特に制限されず、例えば、I型、II型、III型、IV型、V型コラーゲンなどが挙げられ、好ましくは、I型コラーゲンである。また、コラーゲンは、例えば、コラーゲンを加工処理したものであっても良い。加工処理としては、特に制限されないが、例えば、熱処理、酵素処理などが挙げられる。熱処理したコラーゲンとしては、例えば、ゼラチンなどが挙げられ、酵素処理したコラーゲンとしては、例えば、アテロコラーゲン、コラーゲンペプチドなどが挙げられる。コラーゲンゲル中の前記コラーゲン濃度は、特に制限されず、例えば、形状などに応じて、適宜設定可能である。
コラーゲンゲルにおいて、線維芽細胞の由来組織は、特に制限されず、例えば、皮膚、肺、心臓などが挙げられ、好ましくは、皮膚である。線維芽細胞の由来種は、特に制限されず、例えば、ヒト、ブタ、ウシ、ウサギ、ラット、マウスなどがあげられ、好ましくは、ヒトである。コラーゲンゲル中の線維芽細胞の細胞密度は、特に制限されず、適宜設定可能である。
コラーゲンゲルは、例えば、コラーゲンおよび線維芽細胞以外のその他成分を含んでも良い。その他成分としては、特に制限されず、例えば、培養液、血清などが挙げられる。
【0014】
<シリビン>
本発明で用いられるシリビン配糖体は、シリビンを原料に合成されたものである。原料となるシリビン(Silybin;CAS No.22888−70−6)は、キク科マリアアザミ(学名シリバム・マリアナムSilibum marianum Gaertn、別名オオアザミ、オオヒレアザミ、ミルクアザミ;CAS No.84604−20−6)から抽出されるフラボノリグナンの一種である。マリアアザミから抽出されるフラボノリグナンはシリマリン(Silymarin;CAS No.65666−07−1)の総称で呼ばれ、シリビン以外に、シリジアニン(Silydianin;CAS No.29782−68−1)、シリクリスチン(Silychristin;CAS No.33889−69−9)、イソシリビン(Isosilybin;CAS No.72581−71−6)などが含まれている。
シリビンはシリマリンからクロマトグラフィーを用いて単離することが可能であるが、市販の試薬を用いることも可能である。
【0015】
<シリビン配糖体>
シリビン配糖体は、文献(Kren V. et al., J.Chem.Soc.,Perkin Trans 1,2467−2474(1997))に従って、ルイス酸を触媒として、シリビンにアセチル基で水酸基を保護した糖を結合し、脱アセチル化することにより調製できる。この反応系ではシリマリンの第一級アルコールの水酸基に糖が選択的にグリコシド結合する。
シリビンに、ルイス酸を触媒として、パーアセチルマルトースを反応させてグリコシド結合を生成し、脱アセチル化することにより、式(1)のシリビンマルトシドが得られる。
【0016】
【化1】

【実施例】
【0017】
以下に、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0018】
〔試験に用いる材料〕
[材料]
(1)アテロコラーゲン(商品名:AteloCell、アテロコラーゲン(牛真皮 由来)5mg/ml
(2)DMEM(粉末)(商品名:ダルベッコ変法イーグル培地(2)、日水)
(3)DMEM(液体)(商品名;Gibco)
[評価検体]
(a)シリビンマルトシド
(b)シリビン(Sigma)
(c)シリマリンS(日光ケミカルズ、マリアアザミのアセトン抽出物)
(d)SILYBIN PHOSPHOLIPIDS(Indena S.P.A)
(e)Extrasome CP−7(日油、コラーゲンゲル収縮能のポジコン)
【0019】
[シリビン配糖体(シリビンマルトシド)の合成]
βマルトースもしくはβラクトースの配糖体化をHelferichの方法に従ってシリビン配糖体を合成した。
シリビン(3.0 g、 6.2 mol、東京化成工業社製)とオクタ-O-アセチル-D-マルトース(6.3 g、 9.2mol、和光純薬社製)とを180 mlのジクロロメタン−アセトニトリル(1:1、v/v、関東化学社製)の溶媒中で、三ふっ化ほう素ジメチルエーテル錯体(1.14ml、 12.4 mmol、Merck Chemicals社製)を窒素存在下、室温で 19時間攪拌反応させた。反応終了後、氷冷しながら飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(関東化学社製)を加え、150mlジクロロメタン(関東化学社製)で2回抽出処理し、無水硫酸ナトリウム(関東化学社製)処理後に抽出溶媒をエバポレーターにて除去した。
トリエチルアミン−メタノール−水(1:8:1、関東化学社製)を35℃30時間反応させたのち、エバポレーターにより溶媒を除去した。BONDESIL-C18(Varian)を用いて精製を行い、シリビンマルトシド(1.0 g, 収率20%)を得た。
【0020】
[試験方法1]
(1)正常濃度グルコース条件でのコラーゲンゲル収縮能試験
予め継代培養した皮膚線維芽細胞(新生児由来)を細胞懸濁液(6×10cells/ml 溶媒10%FBS含有DMEM)として調整した。氷冷中でアテロコラーゲン(5mg/ml)4ml、3倍濃度DMEM2ml、FBS(牛血清)0.67ml、10%FBS含有DMEM 3.34ml及び細胞懸濁液2mlを混合し、平底12ウェルプレートに1mlずつ添加した。37℃5%COインキューベーターで培養し、5時間後にアテロコラーゲンが再線維化することでゲル化することを認めた。
添加から6時間後に滅菌したスパチュラの柄を用いてゲルをウェルプレートから剥がした後、評価検体を任意の濃度に調整した10%FBS含有DMEM溶液1ml(0.1%DMSO含有)を添加して、再び37℃5%COインキューベーターで7日間培養した。
培養液は1日おきに評価検体を任意の濃度に溶解させた10%FBS含有DMEM溶液1mlを培地交換した。培養終了後、培養液を完全に除去しPBSで洗浄後、10%中性ホルマリン溶液(Wako)で24時間浸潤しゲルを固定した。
その後、1%(w/v)Triton−X溶液に置換して、ゲル直径の計測を行った。
【0021】
[試験方法2]
(2)高濃度グルコース条件でのコラーゲンゲル収縮能試験
生体組織においては、組織中のタンパク質やアミノ酸が糖化するメイラード反応が生じている。メイラード反応の進行は、皮膚組織においては皮膚の老化(弾性低下)を招き、血管壁組織においては動脈硬化を招くといわれている。また、メイラード反応における反応生成物は、糖尿病の合併症の発症・進展に対して大きな影響を与えるものでもある。
【0022】
生体内メイラード反応については、タンパク質やアミノ酸が酸化を受けて最終生成物が生成される反応経路(糖酸化)、およびタンパク質やアミノ酸が糖化することにより、中間生成物を経た後に最終生成物が生成される反応経路があることが判明してきている。前者の反応経路の例としては、タンパク質(主にアルギニン残基)が糖(主にペントース)により酸化され、最終生成物としてペントシジンが生成される反応経路がある。一方、後者の反応経路の例としては、タンパク質(主にリジン残基)が糖(主にヘキソース)と非酵素的に反応し、糖化タンパク、3−デオキシグルコソンを経て、最終生成物が生成される反応経路がある。後者の反応経路における最終生成物は、低率ではあるがペントシジンが副生する。
【0023】
そのため、コラーゲンゲル収縮剤には、通常の糖濃度条件下ではなく、糖濃度が高い条件下においても収縮能を示すことが望まれる。
【0024】
また、in vitro試験系においては、市販のDMEM培地はD−Glc濃度が5.55mM(1g/L)に対し、高濃度グルコース条件下でのD−Glc濃度は205.5mM(37g/L)と約37倍高濃度のグルコースで培養する条件となる。コラーゲンゲルの培養液に多量にグルコース(ペントース)が存在する事でコラーゲンゲル中のコラーゲンや線維芽細胞を構成する各種タンパク質、牛血清(FBS)中の各種タンパク質が糖化の反応の基質になり得る。特にコラーゲンが糖修飾を受けることでゲル収縮力が劣化すると考えられている。そのため、本発明においては、以下の高糖濃度条件下において検体の評価を行った。
【0025】
予め継代培養した皮膚線維芽細胞(新生児由来)を細胞懸濁液(6×10cells/ml 溶媒10%FBS含有DMEM)として調整した。氷冷中でアテロコラーゲン(5mg/ml)4ml、3倍濃度DMEM(D−Glc1.2M含有)2ml、FBS(牛血清)0.67ml、10%FBS含有DMEM 3.34ml及び細胞懸濁液2mlを混合し、平底12ウェルプレートに1mlずつ添加した。37℃5%COインキューベーターで培養し、5時間後にアテロコラーゲンが再線維化することでゲル化することを認めた。
添加から6時間後に滅菌したスパチュラの柄を用いてゲルをウェルプレートから剥がした後、評価検体を任意の濃度に調整した10%FBS含有DMEM溶液1ml(0.1%DMSO含有)を添加して、再び37℃5%COインキューベーターで7日間培養した。
培養液は1日おきに評価検体を任意の濃度に溶解させた10%FBS含有DMEM溶液1mlを培地交換した。培養終了後、培養液を完全に除去しPBSで洗浄後、10%中性ホルマリン溶液(Wako)で24時間浸潤しゲルを固定した。
その後、1%(w/v)Triton−X溶液に置換して、ゲル直径の計測を行った。
【0026】
[データ処理]
ゲルの形状はウェルプレートと同様に真円状になることを利用してゲル面積を算出した。上記処理方法によって調整したゲルを2方向について直径を計測し、2直線の平均値を算出した。そのゲル直径の平均値からゲル半径が算出され、ゲル面積は次の式で算出することができる。

ゲル面積=(ゲル半径 cm)×(ゲル半径 cm)×円周率
【0027】
各検体のコラーゲンゲル収縮能は、コラーゲンゲルの収縮率(%)を指標とした。用いた線維芽細胞の継代数やPDL(細胞集団倍加数)、培養液組成の諸条件の微妙な違いでコラーゲンゲル面積の絶対量が微妙に変化するので、検体の評価と並行して検体未処理のコントロール群を設定してそれぞれのゲル面積を計測後、下に示す計算式からコラーゲンゲル収縮率(%)を算出した。

コラーゲンゲル収縮率(%)=100×{(検体未処理のゲル面積)−(検体処理時 のゲル面積)}/(検体未処理のゲル面積)

【0028】
一つのデータについてn=3ウェルで評価し、平均±標準偏差(mean±S.D.)でグラフ表記した。正常コラーゲンゲル条件でのコラーゲンゲル収縮については各濃度における収縮率(%)の平均値から50%収縮濃度(μg/ml)を算出し、より低濃度の50%収縮濃度(μg/ml)であれば収縮率が優れていると判断した。
【0029】
[参考試験]
実施例に先立ち、正常グルコース濃度コラーゲンゲル収縮と高グルコース濃度コラーゲンゲル収縮能の違いの確認を行った。
[試験方法]
市販のDMEM培地はD-Glc濃度が5.55mM(1g/L)に対し、高濃度グルコース条件下でのD-Glc濃度は205.5mM(37g/L)と約37倍高濃度のグルコースで培養する条件とする。
コラーゲンゲルの培養液に多量にグルコース(ペントース)が存在する事でコラーゲンゲル中のコラーゲンや線維芽細胞を構成する各種タンパク質、牛血清(FBS)中の各種タンパク質が糖化の反応の基質になる。
【0030】
(1)正常グルコース濃度コラーゲンゲル収縮と高グルコース濃度コラーゲンゲル収縮の外観とゲル面積を比較した。糖化コラーゲンゲルの条件ではゲル面積が正常グルコース条件でのコラーゲンゲルに比べて24%面積が増しており、収縮力が低下した。(図3参照)
【0031】
(2)凍結乾燥後のコラーゲンゲルを6N塩酸で加水分解し、糖化生成物由来の蛍光物質を蛍光分析(Ex370nm, Em440nm)で測定した。
37℃で7日間インキュベートしたコラーゲンゲル[ハイドロゲル状]を真空凍結乾燥した。このコラーゲンゲルは固形状に変化するので、乾燥重量を測定する事が可能であった。各コラーゲンゲルの重量を測定し、スクリューキャップ付パイレックス(登録商標)試験管に各コラーゲンゲルを詰め、6N塩酸5mlで110℃で24h加水分解した。加水分解物の塩酸を真空エバポレーターで除去し、3.3mlメタノール(蛍光分析用)に再溶解して蛍光分析(Ex370nm, Em440nm)で測定した。蛍光分析はHitachi F−2000を用いた。AGE蛍光量(μg/mgゲル加水分解物)は硫酸キニーネ溶液換算で算出した。
糖化コラーゲンゲルの加水分解物中には約7倍近い糖化生成物由来の蛍光物質が存在しており、糖化反応が進行していた。よって、高濃度グルコース条件下でコラーゲンゲルを培養すると、ゲルのタンパク質成分に糖化/変性が生じ、ゲル収縮力の低下を招くと考えられる。また、シリビン関連素材やCP−7といった、ゲル収縮を発揮した0.006%添加条件由来のゲル加水分解物中のAGEは抑制されていた。図4参照。
【実施例1】
【0032】
[正常濃度グルコース条件でのコラーゲンゲル収縮能]
評価検体を以下の濃度となるように調整し、上記[試験方法](1)に記載された手順でコラーゲンゲル収縮能を調べた。濃度の単位は、全てμg/mlである。
(a)シリビンマルトシド (50、16.7、10、5.6、3.3)
(b)シリビン (50、16.7、10、3.3)
(c)シリマリンS (66、33、10)
(d)SILYBIN PHOSPHOLIPIDS (66、50、33、10)
(e)Extrasome CP−7 (426、142、37、12)
【0033】
図1は各評価検体を添加した際のゲル収縮率を表わしている。いずれの検体もほぼ濃度依存的にゲル収縮能を発揮した。図1の結果から、ゲルを50%収縮するのに必要な評価検体の濃度を求めた。その値を下記表1に示す。表1が示す通り、シリビンマルトシド、シリビン、SILYBIN PHOSPHOLIPIDS 、シリマリンS、Extrasome CP−7の順でゲル収縮能に優れていることが分かった。特に、シリビンマルトシドは、添加濃度及び添加モル割合が少なくても、効率的にゲルを収縮できることが分かった。
【0034】
【表1】

【実施例2】
【0035】
[高濃度グルコース条件でのコラーゲンゲル収縮能]
評価検体を以下の濃度となるように調整し、上記[試験方法](2)に記載された手順でコラーゲンゲル収縮能を調べた。濃度の単位は、全てμg/mlである。
(a)シリビンマルトシド (400、200、66、22)
(b)シリビン (200、66、22)
(c)シリマリンS (200、66)
(d)SILYBIN PHOSPHOLIPIDS (200、66)
(e)Extrasome CP−7 (200、66、22)
【0036】
図2は各評価検体を添加した際のゲル収縮率を表わしている。
下記表2は、同一添加濃度(200μg/ml)でのゲル収縮率を表わしており、シリビンマルトシド、SILYBIN PHOSPHOLIPIDS、Extrasome CP−7、シリビン、シリマリンSの順でゲル収縮能を発揮した。
この結果より、シリビンマルトシドは高グルコース負荷によるコラーゲンゲル中のコラーゲンが糖化反応を経てゲル収縮力が劣化する条件下でも著しいゲル収縮力を発揮したことから、シリビンマルトシドに優れた糖化抑制効果があることが見出された。
【0037】
【表2】

【0038】
シリビンマルトシドは評価したすべての濃度でゲル収縮能が認められたが、シリビン、シリマリンSは、評価検体の濃度が200μg/mlの場合、ゲル収縮率がマイナス、つまり、ゲルが収縮せずに逆に拡散した。これは高グルコース条件でのゲル収縮能において、シリビンやシリマリンのフラボノリグナン骨格のアグリコンが高濃度で存在することで、ゲル拡散に作用したと考えられる。シリビンを修飾したシリビンマルトシドやSILYBIN PHOSPHOLIPIDSは濃度依存的にゲル収縮能を発揮したこととシリビンやマリアアザミのアセトン抽出物であるシリマリンSも低濃度ではゲル収縮能を発揮したので、シリビン骨格化合物全般についてゲル収縮能があると思われる。
【0039】
以上、実施例1、実施例2の結果から、(1)正常濃度グルコース条件、(2)高濃度グルコース条件、の何れも、シリビン骨格化合物のゲル収縮能を評価したところ、どちらの条件においてもシリビンマルトシドがシリビン骨格を有する検体の中で最も優れたゲル収縮能を発揮した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリビン配糖体を有効成分とする、コラーゲンおよび線維芽細胞を含むコラーゲンゲルを収縮させるコラーゲンゲル収縮剤、AGE生成抑制剤及び又は糖化抑制剤。
【請求項2】
シリビン配糖体が、シリビンマルトシドである請求項1に記載のコラーゲンゲル収縮剤、AGE生成抑制剤及び又は糖化抑制剤


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−82147(P2012−82147A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227763(P2010−227763)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】