説明

シリルエステルコポリマー組成物

【課題】低いレベルの揮発性有機化合物を含み、防汚用コーティング組成物として用いることができるシリルエステルコポリマー及びシリルエステルコポリマー溶液を提供する。
【解決手段】20,000未満の重量平均分子量を有するシリルエステルコポリマーを含み、少なくとも55重量%の固形分及び25℃において20ポイズ未満の粘度を有するシリルエステルコポリマー溶液。さらに、シリルエステルコポリマーを含むコーティング組成物、及びそのようなコーティング組成物から製造された、硬化されたコーティングを有する構造物及び基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリルエステルコポリマー及び水生の微生物に対する殺生物性の性質を有する
成分を含むシリルエステルコポリマー溶液及び防汚用コーティング組成物に関する。
【0002】
人工の構造物、例えば船体、ブイ、掘削プラットフォーム、石油生産用リグ、及び水中に
浸されるパイプ、は水性の生物、例えば緑及び褐色藻類、フジツボ、イガイなどによる付
着を受けやすい。そのような構造物は、一般的に金属製であるが、他の構造材料例えばコ
ンクリート又は木材をもまた含み得る。この付着は、船体にとって有害である。なぜなら
付着は水中での移動の間の摩擦抵抗を増加させ、その結果は減少された速度及び増加され
た燃料コストであるからである。静的な構造物、例えば掘削プラットフォーム及び石油生
産用リグの脚、にとって有害である。なぜなら第一に、汚れの分厚い層の波及び潮流に対
する抵抗は、予測し得ない及び潜在的に危険な力を構造物に生じさせ、第二に、汚れは、
欠陥、例えば応力亀裂及び腐食について構造物を検査することを困難にするからである。
汚れは、パイプ、例えば冷却水の取入れ口及び排出口において有害である。なぜなら、有
効断面積が汚れにより狭められ、その結果、流速が低下するからである。
【0003】
例えば船舶の船体上のトップコートとして防汚用塗料を使用して、一般的に、海洋生物の
ための殺生物剤の放出により、海洋生物、例えばフジツボ及び藻類の付着及び成長を阻害
することは公知である。
【0004】
慣用的に、防汚用塗料は、該塗料からしみだした殺生物性顔料と相対的に不活性なバイン
ダーを含んでいた。使用されてきたバインダーの中にはビニル樹脂及びロジンがある。ビ
ニル樹脂は、海水に不溶であり、それらを基礎とする塗料は高い顔料濃度を使用し、その
結果、しみだしを保証する顔料粒子間の接触を有する。ロジンは堅く脆い樹脂であり、海
水には非常に少し、溶解する。ロジンを基礎とする防汚用塗料は、可溶性マトリックス又
は腐食性塗料と呼ばれてきた。殺生物性顔料は、使用中にロジンバインダーのマトリック
スから非常に徐々に染みだし、ロジンの骨格マトリックスを残し、それは船体の表面から
洗い流され、塗料塗膜内の深くから殺生物性顔料がしみ出すことを許す。
【背景技術】
【0005】
近年の多くの成功した防汚用塗料は、ポリマー状バインダーを基礎とする「自己研磨型コ
ポリマー」塗料であり、該バインダーに殺生物性のトリオルガノスズ部位が化学的に結合
され、そこから殺生物部位が海水により徐々に加水分解される。そのようなバインダー系
において、直鎖型ポリマーユニットの側鎖は第一段階において海水との反応により分解さ
れ、残っているポリマー枠組みは、その結果、水溶性又は水に分散可能になる。第二ステ
ップにおいて、船体の塗料層の表面における水溶性又は水分散可能な枠組みは、洗い流さ
れる、又は腐食される。そのような塗料系は、例えばイギリス国特許出願公開第1457
590号に記載されている。
【0006】
代替の自己研磨型防汚塗料系は、シリルエステルコポリマーを基礎として開発されてきた
。シリルエステルコポリマー及びこれらのコポリマーを含む防汚組成物は、例えば国際特
許出願国際公開第00/77102号、米国特許第4,593055号、及び米国特許第
5,436,284号に記載されている。通常、シリルエステルコポリマー溶液が製造さ
れ、続いてそれが、コーティング組成物の成分の1つとして続いて使用される。
【0007】
欧州特許出願公開第1127902号は、防汚組成物のためのバインダーを開示する。該
バインダーは、有機溶媒中で付加重合により製造されることができるシリルエステルコポ
リマーを含む。製造されたコポリマーの分子量は高く、即ち36,600〜59,000
の間である。
【0008】
欧州特許出願公開第1127925号は、2つのタイプのポリマーを含む防汚組成物を開
示する。1つのタイプはシリルエステルコポリマーである。実施例で製造されたシリルエ
ステルコポリマーは、37,600の分子量を有する。
【0009】
欧州特許出願公開第0775733号は、塩化パラフィン及び1,000〜150,00
0の範囲内の重量平均分子量を有するシリルエステルコポリマーを含む防汚コーティング
組成物を記載する。溶液におけるシリルエステルコポリマーの粘度は、50重量%キシレ
ン溶液中、25℃において30〜1,000センチポイズであることができる。実施例に
おいて、シリルエステルコポリマー溶液は50重量%未満の固形分で製造された。これら
の溶液から製造されたコーティング組成物は、高い量の揮発性分を含む。低い揮発性分を
含むコーティング組成物は開示されていないし、示唆されていない。
【0010】
欧州特許出願公開第0802243号は、1,000〜150,000の範囲内の重量平
均分子量を有するシリルエステルコポリマーを含む防汚コーティング組成物について記載
する。シリルエステルコポリマーの溶液の固形分は5〜90重量%であり得ることが述べ
られている。しかし実施例において、製造されたコポリマー溶液は50重量%の揮発性溶
媒含有量を含み、これらの溶液から製造されたコーティング組成物は高い量の揮発性分を
含む。この書類において、どのようにして、ハイソリッドコポリマー溶液が得られること
ができるかが開示されていない。そのようなハイソリッド溶液においてコポリマーの分子
量の可能な範囲、又は好ましい範囲の提示もまたない。さらに、そのようなハイソリッド
コポリマー溶液が、防汚コーティング組成物を製造するために使用される場合、どのよう
な特性を有するべきか開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高い量の揮発性有機化合物を含むコーティング組成物の欠点は、大量のこれらの物質が、
蒸発されなければならないことであり、一方、揮発性有機含有量(VOC)レベルは、最
近多くの国で法律により規制されている。例えばアメリカ合衆国では、連邦規則は、揮発
性有機危険大気汚染物質(一般的にVOCと同義語)の含有量を防汚コーティングの場合
、1リットル当たり400グラム未満に制限している。従って、より低いレベルの揮発性
有機化合物を含み、好ましくは1リットル当たり400グラム未満のVOCを有する防汚
コーティングに対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
防汚コーティングの施与の最も一般的な手段は、エアレススプレー、ブラシ、又はローラ
ーである。シリルエステルコポリマーを含み、エアレススプレー、ブラシ、ローラー又は
他の一般的な施与手段により施与されることができ、1リットル当たり400グラム未満
のVOCを有する自己研磨防汚コーティング組成物を製造するために、少なくとも55重
量%の固形分及び25℃において20ポイズ、好ましくは10ポイズ未満の粘度を有する
シリルエステルコポリマー溶液を使用することが必要であり、そうでなければコーティン
グの粘度は高すぎて、満足できる施与特性を可能にすることができない、又は追加の溶媒
が施与の時点において追加されなければならず、その結果VOC限度を超えてしまう可能
性があることを我々は見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
組成物のVOCレベルはASTM標準3960−2を併用してEPA参照方法24(EP
A reference method)に従って測定されることができる、又はAST
M標準D5201−01に従って計算されることができる。両方の方法は通常類似の結果
を導く。コポリマー溶液、又は本発明に従うコーティング組成物の粘度について値が与え
られたとき、ASTM標準D4287−00に従って、コーン及びプレート粘度計を用い
て測定された高剪断粘度が参照される。
【0014】
コーティング組成物に対する上述された要求以外に、得られる船舶用の防汚コーティング
は特に、コーティングが交互に湿ったり乾燥したりするところの船の部分、例えば喫水線
に施与されたとき、高い統合性を有するべきである、即ちほとんどクラッキングを示さず
、良好な接着性を示すべきである。コーティングは、十分に堅くなければならず、即ち柔
らかくなく、又は粘着性があってはいけないが、脆くてもいけない。さらに、コーティン
グは、コーティングはいわゆるコールドフロー、又は塑性変形(plastic deformation)
をほとんど示すべきではない、言い換えるとフィルムは船が水中で動いたとき、波状に揺
れるべきではない。さらに、コーティング組成物は、十分に短い乾燥時間を示す必要があ
る。
【0015】
本発明は特に、シリルエステルコポリマー溶液、シリルエステルコポリマーを含むコーテ
ィング組成物、及びそのようなコーティング組成物から製造された硬化されたコーティン
グを有する基材及び構造物に関する。重量平均分子量、多分散度、ガラス転移温度、及び
シリルエステルコポリマーの側鎖の量を調節することが、コポリマー溶液の性質、コーテ
ィング組成物の性質、及びコーティングの性質に影響を及ぼすことが見出された。
【0016】
本発明の場合、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定さ
れ、ポリスチレン標準に対して計算された重量平均分子量に換算して与えられる。多分散
度(D)は、分子量分布ともまた呼ばれることもあるが、ポリマーの数平均分子量(Mn
)に対する重量平均分子量(Mw)の比として定義される(D=Mw/Mn)。多分散度
は、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)、及び参照表準としてポリスチレンを用い
てGPCにより測定されることができる。
【0017】
本発明は、少なくとも55重量%、好ましくは少なくとも60重量%、さらにより好まし
くは少なくとも65重量%の固形分、及び25℃において20ポイズ未満、好ましくは1
0ポイズ未満、さらにより好ましくは5ポイズ未満の粘度を有するシリルエステルコポリ
マー溶液に関する。好ましくは該溶液の固形分は、80重量%以下である。組成物の固形
分は、ASTM標準1644を用いて測定されることができる、又はASTM標準D52
01−01に従って計算されることができる。
【0018】
溶液中のシリルエステルコポリマーは、好ましくは1,500より上、よりさらに好まし
くは2,000より上の重量平均分子量を有し、該重量平均分子量は20,000未満、
さらにより好ましくは15,000未満である。
【0019】
コポリマーは、好ましくは1.1より大きい多分散度を有し、該多分散度は、好ましくは
3.0未満、さらにより好ましくは2.8未満である。溶液中のシリルエステルコポリマ
ーは、好ましくは5℃より高い、さらにより好ましくは10℃より高いガラス転移温度を
有し、好ましくは該ガラス転移温度は、90℃より低く、さらにより好ましくは60℃よ
り低い。
【0020】
該コポリマーの好ましくは10重量%より多く、さらにより好ましくは30重量%より多
く、そして非常に好ましくは40重量%より多くが、シリルエステル官能性を有する側鎖
を有するビルディングブロックからなる。該コポリマーの好ましくは70重量%未満、さ
らにより好ましくは60重量%未満がシリルエステル官能性を有する側鎖を有するビルデ
ィングブロックからなる。
【0021】
本発明はさらに、1リットル当たり400グラム未満のVOC及び25℃において20ポ
イズ未満、好ましくは10ポイズ未満、さらにより好ましくは5ポイズ未満の粘度を有す
る、安定な防汚コーティング組成物に関する。
好ましくは、該防汚組成物は以下:
好ましくは1,500、さらにより好ましくは2,000より大きい重量平均分子量であ
って、好ましくは20,000、さらにより好ましくは15,000未満である重量平均
分子量;1.1より大きく好ましくは3.0未満、さらにより好ましくは2.8未満であ
り多分散度;好ましくは5℃より上であり、さらにより好ましくは10℃より上であり、
好ましくは90℃未満、さらにより好ましくは60℃未満であるガラス転移温度を有する
シリルエステルコポリマーであって、該シリルエステルコポリマーの好ましくは10重量
%より上、さらにより好ましくは30重量%より上、非常に好ましくは40重量%より上
、そして好ましくは70重量%未満、さらにより好ましくは60重量%未満がシリルエス
テル官能性を有する側鎖からなるシリルエステルコポリマー、及び
水生生物に対して殺生物性を有する成分
を含む。
本発明に従うコーティング組成物から製造されたフィルムは、良好な統合性及び低いコー
ルドフローを示す。
【0022】
コーティング組成物の製造の間にシリルエステルコポリマー溶液は、コーティング組成物
の合計重量に基づいて、好ましくは1〜60重量%、より好ましくは5〜50重量%、さ
らにより好ましくは15〜45重量%の量で添加される。
【0023】
コーティング組成物において、水生生物に対して殺生物性を有する成分は、コーティング
組成物の合計重量に基づいて0.1〜70重量%、より好ましくは1〜60重量%、さら
により好ましくは2〜55重量%の量で、好ましくは存在する。
【0024】
シリルエステルコポリマー溶液、及び本発明に従うコーティング組成物中に存在するシリ
ルエステルコポリマーは、下記式(I)
【0025】
【化1】

の少なくとも1の末端基有する少なくとも1の側鎖を含むコポリマーであり、ここでnは
0又は1〜50の整数であり、R1,R2、R3、R4、及びR5は、場合により置換さ
れていてもよいC1〜20−アルキル、場合により置換されていてもよいC1〜20−ア
ルコキシ、場合により置換されていてもよいアリール、及び場合により置換されていても
よいアリールオキシからそれぞれ独立して選択される。好ましくは、シリルエステルコポ
リマー中の少なくとも1のR1〜R5基は、メチル、イソプロピル、n−ブチル、イソブ
チル、又はフェニルである。より好ましくはnは0であり、R3,R4,及びR5は同じ
であるか又は異なり、イソプロピル、n−ブチル又はイソブチルを表す。
【0026】
本発明の文脈において、用語C1〜20−アルキルは、1〜20の炭素原子を有する直鎖
、分岐、及び環状炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブ
チル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘ
キシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、
ヘキサデシル、オクタデシル、及びイコシルを表す。用語、置換されたC1〜20−アル
コキシは、C1〜20−アルキルオキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソ
プロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペ
ントキシ、ヘキソキシ、シクロヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノノキシ、デコキ
シ、ウンデコキシ、ドデコキシ、テトラデコキシ、ヘキサデコキシ、オクタデコキシ、及
びオコソキシを意味する。用語アリールは、芳香族炭素環状環若しくは環系、例えばフェ
ニル、ナフチル、ビフェニル、及びキシリルを意味すると理解されるべきである。用語「
場合により置換されていてもよい」とは、問題の置換基が1回以上、好ましくは1〜5回
、置換基で置換されていてもよいことを示すために使用される。これらの置換基は、例え
ばヒドロキシ、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルカルボニルオキシ、カルボキシ
、アルコキシカルボニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、オキソ、アルキルカルボニル
、アリール、アミノ、アルキルアミノ、カルバモイル、アルキルアミノカルボニル、アミ
ノアルキルアミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルア
ミン、シアノ、グアニジノ、カルバミド、アルカノイルオキシ、スルホノ、アルキルスル
ホニルオキシ、ニトロ、スルファニル、アルキルチオ、及びハロゲンであり得る。
【0027】
上記式(I)の少なくとも1の末端基を有する少なくとも1の側鎖を含むシリルエステル
コポリマーは例えば、1以上のビニル重合化可能なモノマーを1以上のオレフィン性二重
結合及び1以上の上記末端基(I)を含む1以上のモノマーと共重合化させることにより
得られることができる。
【0028】
1以上のオレフィン性二重結合及び1以上の上記末端基(I)を含む1以上のモノマーと
共重合化され得る適切なビニル重合化可能なモノマーの例は、(メタ)アクリレートエス
テル、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2
−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及びメトキシ
エチルメタクリレート;マレイン酸エステル、例えばジメチルマレエート及びジエチルマ
レエート;フマール酸エステル、例えばジメチルフマレート及びジエチルフマレート;ス
チレン、ビニルトルエン、α−メチル−スチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン
、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、アクリル酸、イソボルニルメタク
リレート、マレイン酸、及びそれらの混合物を含む。好ましくはメチル(メタ)アクリレ
ート若しくはエチル(メタ)アクリレートと別のビニル重合化可能なモノマーとの混合物
が使用される。疎水性及び親水性(メタ)アクリレートの混合物を使用することにより、
コーティングの研磨速度を調節することが可能である。場合により、親水性コモノマー、
例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート又はより高級なポリエチレンオキサイド誘導
体、例えばエトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレー
ト、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノアルキル
エーテル(メタ)アクリレート、例えばポリオキシエチレン(n=8)グリコールモノメ
チルエーテルメタクリレート、又はN−ビニルピロリドンが含まれる。
【0029】
1以上のオレフィン性二重結合及び1以上のビニル重合化可能なモノマーと共重合化され
ることのできる、1以上の上記末端基(I)を含む適切なモノマーの例は、n=0である
1以上の末端基(I)を含み、式(II)により表され得るモノマーを含む:
【0030】
【化2】

ここでR3,R4,及びR5は上で定義された通りであり、Xは(メタ)アクリロイルオ
キシ基、マレイノイルオキシ基、又はフマロイルオキシ基である。
【0031】
モノマー(II)の製造は、例えば、欧州特許出願公開第0297505号に記載された
方法に従って、又は欧州特許出願公開第1273589号、及びそこに引用された参考文
献に記載された方法に従って行われ得る。適切な(メタ
)アクリル酸から誘導されたモノマーの例は、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、
トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−プロピルシリル(メタ)アクリレー
ト、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ブチルシリル(メタ)ア
クリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−tert−ブチルシリ
ル(メタ)アクリレート、トリ−n−アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ヘ
キシルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−オクチルシリル(メタ)アクリレート、
トリ−n−ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレ
ート、トリ−p−メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メ
タ)アクリレート、ジメチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、ジメチルシクロヘキ
シル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n−ブチル−
ジメチルシリル(メタ)アクリレート、t−ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート
、ジイソプロピル−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、n−オクチルジ−n−ブチ
ルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル−ステアリルシリル(メタ)アクリレー
ト、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t−ブチル−ジフェニルシ
リル(メタ)アクリレート、及びラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレートを含む
。好ましくは、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート,トリ−n−ブチルシリル
(メタ)アクリレート、又はトリイソブチルシリル(メタ)アクリレートがシリルエステ
ルコポリマー組成物の製造において使用される。
【0032】
上で述べたように、シリルエステルコポリマーの性質を調節することにより、コポリマー
溶液の性質、コーティング組成物の性質、及びコーティングの性質が影響されることがで
きる。さらに、たくさんの性質に対して見出された好まれる範囲が列挙された。
【0033】
一般的に、反応温度は、コポリマーの分子量に影響を及ぼす。分子量は、使用される開始
剤の量及び/又は追加的に若しくは二者択一的にもまた連鎖移動剤、例えばチオールを添
加することにより調節され得る。開始剤のタイプは、多分散度の程度に影響を及ぼす。例
えば、多分散度は、アゾ開始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリル又はアゾビス−メチ
ルブチロニトリルを選択することより下げられ得る。二者択一的又は追加的に、その中で
反応が起きるところの溶媒は、コポリマーの分子量及びその多分散度を調節するために調
節されることができる。シリルエステルコポリマー溶液及びコーティング組成物の粘度は
、コポリマーの分子量を調節することにより、及び/又はその多分散度を調節することに
より、及び/又は固形分を調節することにより調節されることができる。
【0034】
未反応の、未転化のモノマーの量はできるだけ低くあるべきである。これは、未反応のモ
ノマーはポリマーの溶媒として作用し得、コーティング組成物のVOCに貢献するからで
ある。コポリマー溶液及びコーティング組成物の粘度は、好ましくはモノマーの代わりに
溶媒で調節される、なぜならほとんどの溶媒はモノマーより廉価だからである。追加的に
、モノマーへの暴露は、モノマーと関連する健康及び安全への懸念のために最小限に保た
れるべきである。さらにコーティング組成物中の遊離モノマーは、最終的なフィルムの特
性に負の効果を有しえる。モノマーは、可塑剤としてもまた作用し得、及び/又はその親
水性のため、水をフィルムに入らせる。反応の転化の割合は、ブースト開始剤(boost in
itiator)の添加により増加され得るが、これは、本発明に従ってコポリマー溶液を製造
する方法において強制的ではないが、好ましくはブースト開始剤が使用され、より好まし
くはアゾ開始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリル又はアゾビスメチルブチロニトリル
がブースト開始剤として使用される。
【0035】
本発明に従うコーティング組成物中に存在する、水生生物に対する殺生物性を有する成分
は、殺生物性を有する顔料若しくは顔料の混合物であることができる。適する殺生物剤の
例は、無機の殺生物剤、例えば酸化銅、銅チオシアネート、銅ブロンズ、炭酸銅、塩化銅
、銅ニッケル合金;有機金属の殺生物剤、例えばジンクピリチオン(2−ピリジンチオー
ル−1−オキサイドの亜鉛塩),銅ピリチオン、ビス(N−シクロヘキシル−ジアゼニウ
ムジオキシ)銅,亜鉛エチレン−ビス(ジチオカルバメート)(即ちジネブ)、及び亜鉛
塩で錯体化されたマンガンエチレン−ビス(ジチオカルバメート)(即ちマンコゼブ);
及び有機殺生物剤、即ちホルムアルデヒド、ドデシルグアニジンモノ塩酸、チアベンダゾ
ール、N−トリハロメチルチオフタルイミド、トリハロメチルチオスルファミド、N−ア
リールマレイミド、2−メチルチオ−4−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s
−トリアジン、3−ベンゾ[b]チエニル−5,6−ジヒドロ−1,4,2−オキサチア
ジン4−オキサイド、4,5−ジクロロ−2−(n―オクチル)−3(2H)−イソチア
ゾロン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、3−ヨード−2−プロピニ
ルブチルカルバメート、ピリジントリフェニルボラン、5位、及び場合により1位におい
て置換されている2−トリハロゲノメチル−3−ハロゲノ−4−シアノピロール誘導体、
例えば2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチル
ピロール、及びフラノン、例えば3−ブチル−5−(ジブロモメチリデン)−2(5H)
−フラノン、及びそれらの混合物である。
【0036】
シリルエステルコポリマー及び水生生物に対して殺生物性を有する成分に加えて、本発明
に従う防汚コーティング組成物は、場合により別の樹脂若しくは他の樹脂の混合物、及び
/又は1以上の非殺生物性の顔料及び/又は添加剤、例えば1以上の増粘剤又はチキソト
ロープ性の剤、1以上の湿潤剤、フィラー、液体キャリアー、例えば有機溶媒、有機非溶
媒、又は水等を含んでいてもよい。
【0037】
本発明に従う防汚コーティング組成物中のシリルエステルコポリマーに加えて使用される
ことができる樹脂の例は、トリオルガノシリルエステル基及びトリオルガノスズ基を含ま
ないが、海水中で反応性のあるポリマー、海水中において少し可溶である若しくは水に敏
感である物質、及び海水中に不溶である物質を含む。
【0038】
トリオルガノシリルエステル基及びトリオルガノスズ基を含まないが、海水中で反応性の
ある、適切なポリマー例として、いくつかの樹脂が挙げられ得る。例えば適切なポリマー
の例は、酸官能性のフィルム形成性ポリマーであって、その酸基が4級アンモニウム基若
しくは4級ホスホニウム基によりブロックされているところの。これは例えば国際特許出
願国際公開第02/02698号に記載されている。あるいは海水に反応性のあるポリマ
ーが、ポリマーの骨格に結合された4級アンモニウム基及び/又は4級ホスホニウム基を
含むフィルム形成性ポリマーであり得る。これらの4級アンモニウム基及び/又は4級ホ
スホニウム基は中和されており、あるいは言い換えると、対イオンによりブロック又はキ
ャップされている。該対イオンは、少なくとも6の炭素原子を含む脂肪族、芳香族、又は
アルカリール炭化水素基を有する酸のアニオン性残基からなる。そのような系は例えば欧
州特許出願公開第02255612.0号に記載されている。
【0039】
適する、海水と反応するポリマーのさらなる例は、酸官能性のフィルム形成性ポリマーで
あって、その酸基は、加水分解して若しくは解離して、海水に可溶であるポリマーを残す
ことができる基によりブロックされているところのポリマーであり、ブロックする基は、
国際特許出願国際公開第00/43460号に記載されているように、1価の有機残基に
結合された2価の金属原子、ヒドロキシル基に結合された2価の金属原子、及び有機溶媒
に可溶なポリマーのアミン塩を形成するモノアミン基から選択される。例えばそのような
海水と反応する、酸基を有するフィルム形成性ポリマーであって、その酸基がブロックさ
れているポリマーは、下記式の少なくとも1の末端基を有する少なくとも1の側鎖を有す
るポリマーであり得る:
【0040】
【化3】

ここでXは
【0041】
【化4】


を表し、Mは、亜鉛、銅、及びテリウムから選択された金属である;Xは1〜2の整数で
ある;Rは
【0042】
【化5】


から選択された有機基を表す;及び
R1は、欧州特許出願公開第204456号に記載されたような1価の有機基である。
そのような加水分解可能なポリマーは、好ましくはXが
【0043】
【化6】

を表し、Mは銅であり、Rは
【0044】
【化7】

を表すアクリルポリマーである。X−[O−M−R]の代わりに−COOHを有する親
のアクリルポリマーは、好ましくは25〜350mgKOH/gの酸価を有する。最も好
ましくは、加水分解可能なポリマーは、0.3〜20重量%の銅含有量を有し、R1は高
沸点の有機一塩基酸の残基である。そのような加水分解可能なポリマーは欧州特許出願公
開第0204456号及び欧州特許出願公開第0342276号に開示された方法により
製造されることができる。銅を含有するフィルム形成性ポリマーは、好ましくはアクリル
若しくはメタクリルエステルを含むコポリマーであって、そのアルコール残基は嵩高い炭
化水素基、即ちソフトセグメント、例えば4以上の炭素原子を有する分岐状アルキルエス
テル、又は6以上の原子を有するシクロアルキルエステルを含むコポリマー、場合により
末端のアルキルエーテル基を有していてもよいポリアルキレングリコールモノアクリレー
ト若しくはモノメタクリレート、又は欧州特許出願公開第0779304号に記載されて
いる2−ヒドロキシエチルアクリレート若しくはメタクリレートとカプロラクトンとの付
加物を含む。
【0045】
あるいは、そのような海水と反応する、ブロックされている酸官能性フィルム形成性ポリ
マーは、カルボン酸官能性ポリマーであり得る。例えば、それは、イギリス国特許出願公
開第2,311,070号に記載されているような、アクリル酸若しくはメタクリル酸と
1以上のアルキルアクリレート若しくはメタクリレートとのコポリマーであってその酸基
の少なくとも一部が式−COO−M−OHの基に転化されており、ここでMは、2価の金
属例えば銅、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、又は鉄であるところのコポリマーであっ
てもよい。
【0046】
そのような海水と反応する、ブロックされている酸官能性フィルム形成性ポリマーの別の
例はアミンの塩であるポリマーである。好ましくは、8〜25の炭素原子を有する少なく
とも1の脂肪族炭化水素基を含むアミン及び欧州特許出願公開第0529693号に記載
されているような酸官能性フィルム形成性ポリマーの塩であり、酸官能性ポリマーは、好
ましくはオレフィン性カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル、ホスホン酸、又は酸ホス
フェートエステルと少なくとも1のオレフィン性不飽和コモノマーとのコポリマーであり
、不飽和カルボン酸は例えばアクリル酸若しくはメタクリル酸であり、不飽和スルホン酸
は例えば2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)であり、フィ
ルム形成性ポリマーは好ましくは国際特許出願国際公開第99/37723号に記載され
た有機環状エステルのユニットを含むアミンスルホネートコポリマーである。
【0047】
海水中において少し可溶である、又は水に敏感である適切なポリマー若しくは樹脂の例と
して、以下の化合物:ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、アルキド
樹脂、変性アルキド樹脂、ポリウレタン、飽和ポリエステル樹脂、ポリ−N−ビニルピロ
リドン、及びロジン物質、が挙げられ得る。そのようなロジン物質は、好ましくはロジン
、特にウッドロジン若しくはトールロジン又はガムロジンである。ロジンの主な化学成分
は、アビエチン酸である。ロジンは、市販されているいかなるグレードでもあることがで
き、好ましくはWW(無色透明)のロジンとして販売されているものである。又はロジン
物質はロジン誘導体であることができ、例えばマレイン化若しくはフマール化されたロジ
ン、水素化されたロジン、ホルミル化されたロジン又は重合化されたロジン、又はロジン
金属塩、例えばロジン酸カルシウム、ロジン酸マグネシウム、ロジン酸銅、又はロジン酸
亜鉛であることができる。
【0048】
海水中に不溶である、適切なポリマー若しくは樹脂の例として、以下の化合物:変性アル
キド樹脂、エポキシポリマー、エポキシエステル、エポキシウレタン、ポリウレタン、あ
まに油、ひまし油、大豆油、及びそのようなオイルの誘導体、が挙げられ得る。適する海
水に不溶なポリマー若しくは樹脂の他の例は:ビニルエーテルポリマー、例えばポリ(ビ
ニルアルキルエーテル)、例えばポリビニルイソブチルエーテル、又はビニルアルキルエ
ーテルと酢酸ビニル若しくは塩化ビニルとのコポリマー、アクリレートエステルポリマー
例えばアルキル基に好ましくは1〜6の炭素原子を含み、コモノマー、例えばアクリルニ
トリル又はスチレンを含み得る、1以上のアルキルアクリレート若しくはメタクリレート
のホモポリマー若しくはコポリマー、及び酢酸ビニルポリマー、例えば酢酸ポリビニル又
は酢酸ビニル塩化ビニルコポリマーである。あるいは、海水に不溶であるポリマー若しく
はロジンは、ポリアミン、好ましくは可塑化させる効果を有するポリアミド、例えば脂肪
酸ダイマーのポリアミド、又は「Santiciser」の商標で販売されているポリア
ミドであることができる。
【0049】
シリルエステルコポリマー及び水生生物に対して殺生物性の性質を有する成分に加えて、
コーティング組成物が別の樹脂若しくは別の樹脂の混合物を含むならば、この/これらの
別の樹脂はコーティング組成物の樹脂の合計量の99重量%までを形成することができる
。好ましくは該別の樹脂はロジン物質であり、コーティング組成物中の合計樹脂の20重
量%までを形成して、高品質の自己研磨型コーティングを得る。あるいは、好ましくは該
別の樹脂はロジン物質であって、コーティング組成物の合計樹脂の50〜80重量%を形
成して、いわゆる制御された消耗型コーティング(depletion coating)又はハイブリッ
ドコーティングを得る。
【0050】
別の実施態様において、別の樹脂はロジン物質及び海水に不溶な樹脂の混合物である。そ
の場合、ロジン物質はコーティング組成物の樹脂の合計量の20〜80重量%又は20〜
95重量%を形成する。ロジン物質は、コーティング組成物の樹脂の合計量の好ましくは
少なくとも25、より好ましくは少なくとも50、最も好ましくは少なくとも55重量%
を形成する。シリルエステルは非ロジン樹脂の合計重量の好ましくは少なくとも30重量
%、最も好ましくは少なくとも50重量%、80〜90重量%までを形成し、海水に不溶
な樹脂が残りである。
【0051】
シリルエステルコポリマー及び水生生物にとって殺生物性の性質を有する成分を含む組成
物に添加されることができる非殺生物性顔料の例は、少し海水に可溶である非殺生物剤、
例えば酸化亜鉛及び硫酸バリウム、及び海水に不溶である非殺生物剤、例えばフィラー及
び着色するための顔料、例えば二酸化チタン、酸化第二鉄、フタロシアニン化合物、及び
アゾ顔料である。
【0052】
シリルエステルコポリマー及び水生生物にとって殺生物性を有する成分を含む組成物に添
加されることのできる添加剤の例は、強化剤、安定化剤、チキソトロープ又は増粘剤、可
塑剤、及び液状キャリアーである。
【0053】
適切な強化剤は、ファイバー、例えばカーバイドファイバー、シリコン含有ファイバー、
金属ファイバー、炭素ファイバー、スルフィドファイバー、ホスフェートファイバー、ポ
リアミドファイバー、芳香族ポリヒドラジドファイバー、芳香族ポリエステルファイバー
、セルロースファイバー、ラバーファイバー、アクリルファイバー、塩化ポリビニルファ
イバー、及びポリエチレンファイバーである。好ましくはファイバーは、25〜2,00
0ミクロンの平均長及び1〜50ミクロンの平均太さを有し、少なくとも5の平均長:平
均太さの比を有する。適する安定化剤の例は、水分スキャベンジャー、ゼオライト、脂肪
族又は芳香族アミン、例えばデヒドロアビエチルアミン、テトラエチルオルトシリケート
、及びトリエチルオルトフォルメートである。適切なチキソトロープ又は増粘剤の例はシ
リカ、ベントン、及びポリアミドワックスである。
【0054】
適切な可塑剤の例は、フタレートエステル、例えばジブチルフタレート、ブチルベンジル
フタレート又はジオクチルフタレート、ホスフェートトリエステル、例えばトリクレシル
又はトリス(イソプロピル)フェニルホスフェート、又は塩化パラフィン、及びスルホン
アミド例えばN−置換トルエンスルホンアミドである。適切な液状キャリアの例は有機溶
媒、有機非溶媒及び水である。適切な有機溶媒の例は、芳香族炭化水素、例えばキシレン
、トルエン、又はトリメチルベンゼン、アルコール例えばn−ブタノール、エーテルアル
コール例えばブトキシエタノール若しくはメトキシプロパノール、エステル例えば酢酸ブ
チル又は酢酸イソアミル、エーテルエステル例えば酢酸エトキシエチル又は酢酸メトキシ
プロピル、ケトン例えばメチルイソブチルケトン若しくはメチルイソアミルケトン、脂肪
族炭化水素、例えばホワイトスピリット、又はこれらの溶媒の2以上の混合物である。コ
ーティング組成物中のフィルム形成性成分のために、有機性の非溶媒中にコーティングを
分散させることが可能である。あるいは、コーティングは水を基礎とすることができる;
例えばコーティングは水性分散物に基づくことができる。
【0055】
本発明は、以下の実施例を参照して説明される。これらは、本発明を説明することを意図
されるものであり、いかなる様式においても本発明の範囲を制限するものと解釈されるべ
きではない。
【実施例】
【0056】
コポリマー溶液及び本発明に従うコーティング組成物が製造され、比較例がおこなわれた

【0057】
以下の省略形が使用される:
TBSMA トリブチルシリルメタクリレート
TiPSA トリイソプロピルシリルアクリレート
MMA メチルメタクリレート
NVP N−ビニルピロリドン
MEA メトキシエチルアクリレート
TBPEH 第三級ブチルペルオキシエチルヘキサノエート
AIBN アゾビス−イソブチロニトリル
AMBN アゾビス−メチルブチロニトリル
【0058】
高剪断粘度は、ポイズで表される。固形分は重量百分率で表される。数平均分子量(Mn
)及び重量平均分子量(Mw)がポリスチレンに対して相対的に与えられる。
【0059】
理論固形分(重量百分率、又は非揮発分の体積百分率)が、ASTM標準D5201−0
1に従って各組成物に対して配合物から計算された。実際の固形分(重量%)は、AST
M標準1644に従って測定された。
【0060】
理論VOCレベル(1リットル当たりのグラム数)は、ASTM標準D5201−01に
従って各組成物について配合から計算された。測定されたVOCレベル(1リットル当た
りのグラム数)は、ASTM標準D3960‐02を併用してEPA参照方法24に従っ
て測定された。
【0061】
コポリマー溶液
比較例1a及び1b
欧州特許出願公開第1127902号の実施例10が繰り返されて比較コポリマー溶液1
a(CSol 1a)を製造し、別の試料について実施例が部分的に追跡され、比較コポ
リマー溶液1bを得た。組成物の成分は表1に示される。
【0062】
【表1】

【0063】
欧州特許出願公開第1127902号の実施例10の手順に従って、モノマー、開始剤、
溶媒(キシレン)のプレミックスが所定の割合で製造され、さらなる量の溶媒(キシレン
)が、攪拌機、還流コンデンサー、窒素導入口、及びプレミックスフィード口を装備され
、温度制御された反応容器に充填された。反応容器は加熱され90℃において保たれ、窒
素雰囲気下で3時間に渡って一定の速度でプレミックスが充填された。さらに30分後、
ブースト開始剤として、TBPEHの5回の後添加が45分間隔で添加された。さらなる
15分の後、反応容器の温度は1時間の間に120℃に上げられ、それから冷却された。
【0064】
生成物の試料は、欧州特許出願公開第1127902号の実施例10に記載されたように
キシレンで比例して希釈されて、比較のコポリマー溶液1a(CSol 1a)を与えた
。更なる試料は希釈されなかった;これは比較コポリマー溶液1b(CSol 1b)を
与えた。得られたコポリマー溶液の性質は表2に示される。
【0065】
【表2】

【0066】
この実施例は、ハイソリッド溶液を得るために溶媒の量を減らすことは正にコポリマー溶
液の粘度に非常に大きい影響を及ぼし得ることを示す。
【0067】
実施例2
比較例1a及び1bにおいて使用されたのと同じタイプ及び量のモノマーを使用してコポ
リマー溶液2(Sol2)が製造された。コポリマー溶液2は、本発明に従う溶液である
。組成物の成分は表3に示される。
【0068】
【表3】

【0069】
モノマー、開始剤、及び溶媒(キシレン)のプレミックスが所定の割合で製造され、更な
る量の溶媒(キシレン)が、攪拌機、還流コンデンサー、窒素導入口、及びプレミックス
フィード口を装備され、温度制御された反応容器に充填された。反応容器は加熱され10
0℃において保たれ、窒素雰囲気下で3時間に渡って一定の速度でプレミックスが充填さ
れた。さらに30分後、ブースト開始剤として、AIBNの2回の後添加がキシレンのス
ラリーとして45分間隔で添加された。反応容器の温度は更なる1時間の間に100℃に
保たれ、それから冷却された。得られるコポリマー溶液の性質は、表4に示される。
【0070】
【表4】

【0071】
実施例1bに比較して、コポリマー溶液2は、より高い固形分、より低い粘度、より低い
重量平均分子量、及びより低い多分散度を有する。さらに、理論固形分及び測定された固
形分の間の小さな差から明らかであるように、より多いモノマーが転化された。
【0072】
実施例3a〜3d
新しい一組のモノマーを使用して、本発明に従う4つのコポリマー溶液が製造された。組
成物の成分は表5a及び5bに示される。
【0073】
【表5a】

【0074】
【表5b】

【0075】
実施例2の製造に対して記載された一般的手続が追従され、コポリマー溶液3a〜3dを
与えた。得られたコポリマー溶液の性質は表6に示される。
【0076】
【表6】

【0077】
比較例4a及び4b
比較のコポリマー溶液4aを製造するために、欧州特許出願公開第0775733号の実
施例S−1〜S−6の製造の説明に従って、欧州特許出願公開第1127925号に記載
されたようにポリマーPA4の製造が繰り返された。より少ない溶媒を使用して別の実験
が行われ、その結果CSol4bを与えた。組成物の成分は表7に与えられる。
【0078】
【表7】

【0079】
欧州特許出願公開第1127925号に記載されたポリマーPA4の製造説明に従って、
すなわち、欧州特許出願公開第0775733号に記載されたように、モノマー、及び開
始剤のプレミックスが所定の割合で製造され、更なる量の溶媒(キシレン)が、攪拌機、
還流コンデンサー、窒素導入口、及びプレミックスフィード口を装備され、温度制御され
た反応容器に充填された。反応容器は加熱され90℃において保たれ、窒素雰囲気下で、
4時間に渡って一定の速度でプレミックスが反応容器に充填された。反応容器は90℃に
おいて4時間保たれ、それから冷却された。欧州特許出願公開第1127925号に記載
されたポリマーPA4の製造の説明に従って、すなわち欧州特許出願公開第077573
3号に記載されたように、ブースト開始剤は添加されなかった。
【0080】
比較コポリマー溶液4a(CSol 4a)が、CSol 4bの製造において使用され
たより多い量の溶媒を使用して製造された。得られたコポリマー溶液の性質は表8に示さ
れる。
【0081】
【表8】

【0082】
両方の試料の転化率は低いが、それは製造においてブースト開始剤が使用されなかった事
実による可能性がある。
【0083】
コーティング組成物
上述のコポリマー溶液のあるものを使用して、コーティング組成物が製造された。これら
のコーティング組成物はコーティングされた基材を製造するために使用され、該基材はそ
の性質について試験された。
【0084】
硬度試験
500ミクロンのギャップ幅を有するバーアプリケーターを用いて脱グリース化されたガ
ラスパネル(約15cm×10cm)の上にコーティング組成物を注型成形することによ
り、試験コーティングフィルムが製造された。コーティングフィルムは、試験の前に環境
条件下で3日間乾燥された。次にコーティングの硬度は、ISO1522に記載されたケ
ーニッヒの振り子式減衰法により測定された。硬度は、6°から3°に減衰する振り子の
振れの数として定量化された。
【0085】
機械的性能(耐クラック性)試験
既に市販の耐腐食性のコーティング(Intertuf 203、Internatio
nal Coatings社製)でコーティングされたスチール又はアルミニウムのパネ
ル(15.2cm×10.2cm)の上に、塗料をバーアプリケーター(500ミクロン
のギャップ幅)で注型成形することにより試験片が製造された。パネルは、環境条件下で
少なくとも3日間乾燥された。次にパネルは、23℃において24時間天然の海水中に含
浸された。その後、パネルは海水から取り出されて、8時間乾燥するに任された。その後
、パネルは23℃において16時間天然の海水中で含浸され、取り出され、8時間乾燥さ
れた。このサイクルが4回繰り返された。湿潤−乾燥循環のあと、コーティングの機械的
性能、特に耐クラック性が以下のパネル評価方式に従って評価された。
【0086】
パネルの評価
5: クラッキング、又は他の目に見える欠陥なし
4: 毛髪クラック、裸眼で丁度見えるもの
3: 穏やかなクラッキング
2: 中程度のクラッキング
1: ひどいクラッキング
0: 著しいクラッキング
【0087】
比較例5
比較のコーティング組成物(CCoat5)が、高速分散化装置を用いて成分を混合する
ことにより製造された。CCoat5の成分は表9に示され、組成物及びこの組成物で製
造されたコーティング層の性質は表10に示される。
【0088】
【表9】

【0089】
【表10】

【0090】
この実施例は、400g/リットルのVOC及び20ポイズ未満の粘度を有するハイソリ
ッド塗料は、比較コポリマー溶液1bからは容易に製造されることができないことを示す

【0091】
実施例6
本発明に従うコーティング組成物(Coat6)が、高速分散化装置を用いて成分を混合
することにより製造された。Coat6の成分は表11に示され、組成物及びこの組成物
で製造されたコーティング層の性質は表12に示される。
【0092】
【表11】

【0093】
【表12】

【0094】
この実施例は、400g/リットルのVOC及び20ポイズ未満の粘度を有するハイソリ
ッド塗料は、コポリマー溶液2から、容易に製造されることができることを示す。
【0095】
実施例7
本発明に従うコーティング組成物(Coat7)が、高速分散化装置を用いて成分を混合
することにより製造された。Coat7の成分は表13に示され、組成物及びこの組成物
で製造されたコーティング層の性質は表14に示される。
【0096】
【表13】

【0097】
【表14】

【0098】
比較例8
市販のシリルエステルコポリマーの防汚塗料、Jotun Paints社製のSea
Quantum Plus (CCoat8)の性質が、比較のために測定された。CC
oat8及びこの組成物を用いて製造されたコーティング層の性質が表15に示される。
【0099】
【表15】

【0100】
この実施例は、市販のシリルエステルコポリマー防汚塗料CCoat8の機械的性質(硬
度及び耐クラック性)は、Coat6及びCoat7の性質と類似していることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも55重量%の固形分及び25℃において20ポイズ未満の粘度を有するシリル
エステルコポリマー溶液であって、1,500〜20,000の間の重量平均分子量を有
するシリルエステルコポリマーを含むシリルエステルコポリマー溶液。
【請求項2】
溶液の固形分が80重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のシリルエステ
ルコポリマー溶液。
【請求項3】
20,000未満の重量平均分子量、3.0未満の多分散度、90℃未満のガラス転移温
度を有するシリルエステルコポリマーであって、該シリルエステルコポリマーの70重量
%未満がシリルエステル官能性を有する側鎖からなるシリルエステルコポリマーを含むこ
とを特徴とする、請求項1に記載のシリルエステルコポリマー溶液。
【請求項4】
シリルエステルコポリマーが、下記式の少なくとも1の末端基を有する少なくとも1の側
鎖を含むコポリマーであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリ
ルエステルコポリマー溶液、

ここで、nは0又は1〜50の整数であり、R1,R2、R3、R4、及びR5は、場合
により置換されていてもよいC1〜20−アルキル、場合により置換されていてもよいC
1〜20−アルコキシ、場合により置換されていてもよいアリール、及び場合により置換
されていてもよいアリールオキシからなる群からそれぞれ独立して選択される。
【請求項5】
n=0であり、かつR3,R4、及びR5は同じであるか又は異なり、メチル、イソプロ
ピル、n−ブチル、イソブチル、又はフェニルを表すことを特徴とする、請求項4に記載
のシリルエステルコポリマー溶液。
【請求項6】
1リットル当たり400グラム未満のVOC及び25℃において20ポイズ未満の粘度を
有し、シリルエステルコポリマー及び水生生物に対して殺生物性を有する成分を含む防汚
コーティング組成物。
【請求項7】
シリルエステルコポリマーが20,000未満の重量平均分子量、3.0未満の多分散度
、90℃未満のガラス転移温度を有するシリルエステルコポリマーであり、該シリルエス
テルコポリマーの70重量%未満がシリルエステル官能性を有する側鎖からなることを特
徴とする、請求項6に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項8】
シリルエステルコポリマーが、下記式の少なくとも1の末端基を有する少なくとも1の側
鎖を含むコポリマーであることを特徴とする、請求項6又は7のいずれか1項に記載の防
汚コーティング組成物、

ここで、nは0又は1〜50の整数であり、R1,R2、R3、R4、及びR5は、場合
により置換されていてもよいC1〜20−アルキル、場合により置換されていてもよいC
1〜20−アルコキシ、場合により置換されていてもよいアリール、及び場合により置換
されていてもよいアリールオキシからなる群からそれぞれ独立して選択される。
【請求項9】
n=0であり、かつR3、R4、及びR5は同じであるか又は異なり、メチル、イソプロ
ピル、n−ブチル、イソブチル、又はフェニルを表すことを特徴とする、請求項8に記載
の防汚コーティング組成物。
【請求項10】
トリオルガノシリルエステル基及びトリオルガノスズ基を含まないが海水中で反応性のあ
る化合物、海水中において少し可溶である又は水に敏感である物質、及び海水中に不溶で
ある物質からなる群から選択された1以上のポリマー又は樹脂を、組成物がさらに含むこ
とを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項11】
組成物が、海水中において少し可溶である又は水に敏感である物質としてロジン物質を含
むことを特徴とする、請求項10に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれか1項に記載の防汚コーティング組成物でコーティングされた基
材又は構造物。

【公開番号】特開2011−157551(P2011−157551A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41782(P2011−41782)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【分割の表示】特願2006−518110(P2006−518110)の分割
【原出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】