説明

シリルエステル内部供与体を含むプロ触媒組成物および方法

本開示は、ポリマー製造用のプロ触媒中の内部電子供与体として適する、シリルエステルおよびシリルジオールエステルを提供する。プロ触媒前駆体および、シリルエステルまたはシリルジオールエステルである内部電子供与体から形成されるプロ触媒組成物が開示される。該プロ触媒組成物は、チーグラー・ナッタ(Zieler−Natta)触媒組成物を形成するために、補助触媒、および任意選択により外部電子供与体および/または活性制限剤と共に利用可能である。本触媒組成物は、高い触媒活性を示し、また幅広い分子量分布、好ましい曲げ弾性率、および高いアイソタクチック性を有するオレフィン系ポリマーを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年11月25日出願の米国特許出願第61/117,820号の優先権を主張し、その全内容を参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
本開示は、シリルエステル、およびシリルエステルの触媒組成物への組込み、および前記触媒組成物を用いてオレフィン系ポリマーを製造する方法に関する。
【0003】
オレフィン系ポリマーに対する世界的な需要が、かかるポリマーに関する用途がより多様化し、またより高度化するに従い、継続的に高まっている。オレフィン系ポリマーを製造する組成物として、チーグラー・ナッタ触媒組成物が知られている。チーグラー・ナッタ触媒組成物は、典型的にはハロゲン化遷移金属(すなわち、チタン、クロム、バナジウム)、有機アルミニウム化合物などの補助触媒、および任意選択により外部電子供与体を含むプロ触媒を含む。チーグラー・ナッタ触媒が触媒するオレフィン系ポリマーは、典型的には分子量分布範囲が狭い。オレフィン系ポリマーについて新しい用途が永続的に生み出されていることを鑑みれば、当技術分野では、改善した、多様な特性を有するオレフィン系ポリマーに対するニーズが認められる。幅広い分子量分布を有するオレフィン系ポリマーを製造するためのチーグラー・ナッタ触媒組成物が望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、シリルエステル化合物、および触媒組成物中での同化合物の利用に関する。本開示のシリルエステル含有触媒組成物は高い活性を示し、幅広い分子量分布を有し、さらに高いアイソタクチック性を維持しつつ、曲げ弾性率が改善したオレフィン系ポリマーを形成する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、シリルエステルが提供される。該シリルエステルは構造(I)を有する:
【0006】
【化1】

【0007】
式中、mおよびnはそれぞれ1から5の整数である。記号mおよびnはそれぞれ、それと同数の炭素原子を有するヒドロカルビルを表す。R〜Rは、同一または異なり、それぞれ、水素、1から20個の炭素原子を有する置換されたヒドロカルビル基、1から20個の炭素原子を有する置換されていないヒドロカルビル基、およびこれらの組合せから選択される。Xは、O、S、N、および/またはP原子(複数可)を含む電子供与基である。
【0008】
一実施形態では、Rはベンゼン環を含む基である。ベンゼン環を含む基は、任意選択により1つまたは複数の以下の基で置換され得る:C1〜20アルキル基、C1〜20アルコキシ基、C1〜20アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、およびこれらの任意の組合せ。
【0009】
一実施形態では、シリルジオールエステルが提供される。該シリルジオールエステルは下記構造(II)を有する:
【0010】
【化2】

【0011】
式中、R〜Rは同一または異なり、それぞれ、水素、炭素原子を1から20個有する置換されたヒドロカルビル基、炭素原子を1から20個有する置換されていないヒドロカルビル基、およびこれらの組合せから選択される。
【0012】
一実施形態では、RおよびRのうちの1つまたは両方は、ベンゼンを含む基である。
【0013】
一実施形態では、該シリルジオールエステルは次のような構造(III)を有する:
【0014】
【化3】

【0015】
式中、R〜Rは水素であり、RおよびRは同一または異なり、それぞれ、水素、およびC〜Cのアルキル基から選択される。さらなる実施形態では、RおよびRは、それぞれ、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、およびこれらの組合せから選択される。
【0016】
一実施形態では、該シリルジオールエステルは構造(III)を有し、式中、R〜Rはそれぞれ、水素、およびC〜Cのアルキル基から選択される。さらなる実施形態では、RおよびRはそれぞれ、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、およびこれらの組合せから選択され、またR〜Rはメチルである。別の実施形態では、RおよびRのそれぞれは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、およびこれらの組合せから選択され、RおよびRはメチルであり、ならびにRおよびRは水素である。
【0017】
本開示は、シリルジオールエステルを生成する方法を提供する。一実施形態では、シリルジオールエステルを生成する方法には、カルボン酸塩を下記構造(IV)のジアルキルシランと反応させるステップが含まれる。
【0018】
【化4】

【0019】
式中、AおよびAは同一または異なり、それぞれ、炭素原子を1から20個有するハロヒドロカルビル基である。RおよびRは同一または異なり、それぞれ、水素、および炭素原子を1から20個有するヒドロカルビル基から選択される。
【0020】
該方法には、さらにシリルジオールエステルを形成するステップが含まれる。一実施形態では、該方法には、下記構造(III)のシリルジオールエステルを形成するステップが含まれる。
【0021】
【化5】

【0022】
置換基R〜Rは、上記構造(III)について開示された任意の置換基であり得る。
【0023】
一実施形態では、プロ触媒組成物を作製する方法が提供される。同方法には、シリルエステル、プロ触媒前駆体、およびハロゲン化剤を反応させるステップが含まれる。この反応は反応混合物内で生ずる。この方法には、プロ触媒組成物を形成するステップがさらに含まれる。このプロ触媒組成物には、マグネシウム部分、チタン部分、および内部電子供与体(internal electron donor)が組み合わされたものが含まれる。該内部電子供与体には、シリルエステルが含まれる。
【0024】
一実施形態では、プロ触媒組成物を作製するための別の方法が提供される。この方法には、2,2−ジメチル−1,3−プロピレングリコールジベンゾエート、ベンゾエートを含むマグネシウム前駆体、およびハロゲン化剤を反応させるステップが含まれる。この反応は反応混合物内で生ずる。この方法には、マグネシウム部分、チタン部分、および内部電子供与体が組み合わされたものを含むプロ触媒組成物を形成するステップが含まれる。内部電子供与体として、エチルベンゾエート、および2,2−ジメチル−1,3−プロピレングリコールジベンゾエートが挙げられる。
【0025】
一実施形態では、プロ触媒組成物が提供される。このプロ触媒組成物には、マグネシウム部分、チタン部分、および内部電子供与体が組み合わされたものが含まれる。該内部電子供与体には、シリルエステルが含まれる。シリルエステルは、構造(I)、(II)、または(III)を有し得る。
【0026】
一実施形態では、触媒組成物が提供される。該触媒組成物にはシリルエステルが含まれる。触媒組成物には補助触媒も含まれる。該触媒組成物は、任意選択により外部電子供与体および/または活性制限剤を含み得る。
【0027】
一実施形態では、オレフィン系ポリマーを製造する方法が提供される。該方法には、重合反応条件下で少なくとも1つのオレフィンを触媒組成物と接触させるステップが含まれる。該触媒組成物はシリルエステルを含む。該方法にはオレフィン系ポリマーを形成するステップも含まれる。
【0028】
本開示の利点として、改良されたプロ触媒組成物の提供が挙げられる。
【0029】
本開示の利点として、改良された触媒組成物の提供が挙げられる。
【0030】
本開示の利点として、内部電子供与体として用いるのに適するシリルエステルの提供が挙げられる。
【0031】
本開示の利点として、内部電子供与体として用いるのに適するシリルジオールエステルの提供が挙げられる。
【0032】
本開示の利点として、特性が改善したオレフィン系ポリマーを生成する、シリルエステルおよび/またはシリルジオールエステルを有するプロ触媒組成物の提供が挙げられる。
【0033】
本開示の利点として、幅広い分子量分布を有し、および/または曲げ弾性率が改善した、および/または高アイソタクチック性のオレフィン系ポリマーを生成する、シリルエステルおよび/またはシリルジオールエステルを有する触媒組成物の提供が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
一実施形態では、本開示は、下記の構造(I)を有するシリルエステル化合物に関する。
【0035】
【化6】

【0036】
文字mおよびnはそれぞれ1から5の整数であり、mおよびnは同一または異なるが、mおよびnはそれぞれ各炭素鎖中の炭素原子数を表している。C炭素鎖および/またはC炭素鎖内の各追加の炭素は1つまたは複数のR’で表される置換基(複数可)を含み得ると理解される。R’で表される置換基(複数可)は、水素であっても、また1〜20個の炭素原子を有する置換された/置換されていないヒドロカルビル基であってもよい。
【0037】
置換基R、R、R、R、R、R、およびRは同一であっても、また異なってもよい。R〜Rは、水素、炭素原子を1〜20個有する置換されたヒドロカルビル基、炭素原子を1〜20個有する置換されていないヒドロカルビル基、およびこれらの組合せから選択される。本明細書で用いる場合、用語「ヒドロカルビル」および「炭化水素」とは、水素原子および炭素原子のみを含む置換基を指し、分枝状もしくは非分枝状の、飽和もしくは不飽和の、環式の、多環式の、または非環式の種、およびこれらの組合せを含む。ヒドロカルビル基の非限定的な例として、アルキル−、シクロアルキル−、アルケニル−、アルカジエニル−、シクロアルケニル−、シクロアルカジエニル−、アリール−、アラルキル−、アルキルアリールおよびアルキニル基が挙げられる。
【0038】
本明細書で用いる場合、用語「置換されたヒドロカルビル」、および用語「置換された炭化水素」とは、それぞれ1つまたは複数の非ヒドロカルビル置換基により置換されたヒドロカルビル基を指す。非ヒドロカルビル置換基の非限定的な例として、ヘテロ原子が挙げられる。本明細書で用いる場合、「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の原子を指す。ヘテロ原子は、周期律表の第IV、V、VI、およびVII族の非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の非限定的な例として、F、Cl、Br、N、O、P、B、S、およびSiが挙げられる。本明細書で用いる場合、用語「ハロヒドロカルビル」は、1つまたは複数のハロゲン原子で置換されたヒドロカルビルを指す。
【0039】
構造(I)の記号「X」は、電子供与基を表す。用語「電子供与基」とは、金属原子(複数可)に1つまたは複数の電子対を供与する能力を有する官能基を指す。好適な電子供与基の非限定的な例として、−C(=O)OR、−O(O=)CR、−(O=)CNHR、−(O=)CNRR’、−NH(O=)CR、−NR’(O=)CR、−C(=O)R、−OR、−NHR、−NR’R、−SR、−OP(OR’)(OR)、−S(=O)R、−S(=O)R、−OS(=O)(OR)、およびこれらの組合せが挙げられる。電子供与基XのRおよびR’は、炭素原子を1〜20個有する置換された、または置換されていないヒドロカルビル基であり得る。
【0040】
上記の各電子供与基の構造は、下記の表1に示されている。
【0041】
【表1】

【0042】
一実施形態では、該シリルエステルは、ベンゼン環を含む基であるRを含む。本明細書で用いる場合、「ベンゼン環を含む基」とは、1つまたは複数のベンゼン環を含む成分である。好適なベンゼン環を含む基の非限定的な例として、フェニル基などの単ベンゼン基、およびナフチル基などの複数のベンゼン基および/または縮合したベンゼン基が挙げられる。ベンゼン環を含む基は、任意選択により1つまたは複数の以下の基で置換され得る:C1〜20アルキル基(複数可)、C1〜20アルコキシ基(複数可)、C1〜20アルコキシカルボニル基(複数可)、ハロゲン原子(複数可)、およびこれらの任意の組合せ。
【0043】
一実施形態では、該シリルエステルはフェニル基であるRを含む。RおよびRは同一または異なり、RおよびRは、それぞれ水素、C1〜6のアルキル基、およびこれらの組合せから選択される。C1〜6のアルキル基の非限定的な例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、i−ブチル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、およびn−へキシル基が挙げられる。
【0044】
一実施形態では、該シリルエステルはフェニル基であるRを含み、R〜Rは水素であり、RおよびRは同一または異なり、それぞれ、水素、C1〜6のアルキル基、およびこれらの組合せから選択される。
【0045】
一実施形態では、本開示はシリルジオールエステルを提供する。該シリルジオールエステルは構造(II)を有する:
【0046】
【化7】

式中、R〜Rは同一または異なる。R〜Rはそれぞれ、水素、炭素原子を1〜20個有する置換されたヒドロカルビル基、炭素原子を1〜20個有する置換されていないヒドロカルビル基、およびこれらの組合せから選択される。
【0047】
一実施形態では、RおよびRは、同一であってもまた異なってもよい。RおよびRはそれぞれ、ベンゼン環を含む基から選択される。該ベンゼン環を含む基は、任意選択により1つまたは複数の以下の基で置換され得る:C1〜20アルキル基(複数可)、C1〜20アルコキシ基(複数可)、C1〜20アルコキシカルボニル基(複数可)、ハロゲン原子(複数可)、およびこれらの任意の組合せ。
【0048】
一実施形態では、RおよびRは同一であっても、また異なってもよい。RおよびRはそれぞれ、水素、C1〜6のアルキル基、およびこれらの組合せから選択される。
【0049】
一実施形態では、RおよびRは、それぞれフェニル基である。R〜Rは同一または異なり、それぞれ、水素、C1〜6のアルキル基、およびこれらの組合せから選択される。
【0050】
一実施形態では、該シリルジオールエステルは下記の構造(III)を有する:
【0051】
【化8】

式中、R〜Rは同一または異なり、それぞれ、水素、C1〜6のアルキル基、およびこれらの組合せから選択される。
【0052】
一実施形態では、構造(III)のシリルジオールエステルは、同一または異なり、それぞれ、水素、またはC1〜6のアルキル基から選択されるRおよびRを含む。R〜Rのそれぞれは水素である。
【0053】
一実施形態では、構造(III)のシリルジオールエステルは、同一または異なるRおよびRを含む。RおよびRは、それぞれ、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、およびこれらの組合せから選択される。R〜Rのそれぞれは水素である。
【0054】
一実施形態では、構造(III)のシリルジオールエステルは、同一または異なるRおよびRを含む。RおよびRは、それぞれ、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、およびこれらの組合せから選択される。R〜Rのそれぞれはメチルである。
【0055】
一実施形態では、構造(III)のシリルジオールエステルは、同一または異なるRおよびRを含む。RおよびRは、それぞれ、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、およびこれらの組合せから選択される。RおよびRはそれぞれメチルである。RおよびRはそれぞれ水素である。
【0056】
該シリルジオールエステルの非限定的な例を下記の表2に掲載する。
【0057】
【表2】

【0058】
一実施形態では、シリルジオールエステルを生成する方法が提供される。該方法には、カルボン酸塩を、下記のような構造(IV)のジアルキルシランと反応させるステップが含まれる。
【0059】
【化9】

【0060】
式中、AおよびAは同一または異なり、それぞれ、炭素原子を1から20個有するハロヒドロカルビル基である。AおよびAは同一または異なり、それぞれ、水素、および炭素原子を1から20個有するヒドロカルビル基から選択される。
【0061】
カルボン酸塩と構造(IV)のジアルキルシランとが反応すると、シリルジオールエステルが形成される。該カルボン酸塩は、カルボン酸ナトリウム、またはカルボン酸カリウムであり得る。一実施形態では、該カルボン酸塩は安息香酸カリウムである。
【0062】
一実施形態では、該方法には下記構造(III)のシリルジオールエステルを形成するステップが含まれる:
【0063】
【化10】

【0064】
式中、R〜Rは水素であり、RおよびRは同一または異なり、それぞれ、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、およびこれらの組合せから選択される。本方法により形成されるシリルジオールエステルの非限定的な例は、表2に掲載されている。
【0065】
上記シリルエステルおよびシリルジオールエステル化合物の利点は、それらが、特性が改善したオレフィン系ポリマーを生成させるように、プロ触媒組成物および/または触媒組成物内に組み込み可能であることにある。
【0066】
該シリルエステルは、本明細書に開示する2つ以上の実施形態を含み得る。
【0067】
一実施形態では、プロ触媒組成物を生成する方法が提供される。この方法には、シリルエステル、プロ触媒前駆体、およびハロゲン化剤を反応させるステップが含まれる。該反応は反応混合物内で生じ得る。該方法には、プロ触媒組成物を形成するステップが含まれる。該プロ触媒組成物には、マグネシウム部分、チタン部分、および内部電子供与体が含まれる。該内部電子供与体には、シリルエステルが含まれる。
【0068】
該プロ触媒前駆体は、(i)マグネシウム;(ii)周期律表第IV〜VIII族に属する元素の遷移金属化合物;(iii)ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、および/または(i)および/または(ii)のアルコキシド;ならびに(iv)(i)、(ii)、および(iii)の組合せを含み得る。好適なプロ触媒前駆体の非限定的な例として、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、およびマグネシウム、マンガン、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウムのアルコキシド、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0069】
プロ触媒前駆体を作製するための様々な方法は、当技術分野で公知である。かかる方法は、特に米国特許出願第6,825,146号、同第5,034,361号、同第5,082,907号、同第5,151,399号、同第5,229,342号、同第5,106,806号、同第5,146,028号、同第5,066,737号、同第5,077,357号、同第4,442,276号、同第4,540,679号、同第4,547,476号、同第4,460,701号、同第4,816,433号、同第4,829,037号、同第4,927,797号、同第4,990,479号、同第5,066,738号、同第5,028,671号、同第5,153,158号、同第5,247,031号、同第5,247,032号、およびこれ以外のいずれかに記載されている。一実施形態では、プロ触媒前駆体の作製には、混合されたマグネシウムアルコキシドとチタンアルコキシドのハロゲン化を含み、また特定の低分子量の、所望の形態を有する組成物を形成するのに役立つ「クリッピング剤」と呼ばれる1つまたは複数の化合物の使用が含まれ得る。好適なクリッピング剤の非限定的な例として、トリアルキルボレート、特にトリエチルボレート、フェノール化合物、特にクレゾール、およびシラン類が挙げられる。
【0070】
一実施形態では、該プロ触媒前駆体はマグネシウム部分からなる化合物(MagMo)、マグネシウムとチタンが混合した化合物(MagTi)、またはベンゾエートを含む塩化マグネシウム化合物(BenMag)である。一実施形態では、プロ触媒前駆体はマグネシウム部分(「MagMo」)前駆体である。MagMo前駆体は、唯一の金属成分としてマグネシウムを含む。「MagMo前駆体」は、マグネシウム部分を含む。好適なマグネシウム部分の非限定的な例として、無水塩化マグネシウム、および/またはそのアルコール付加物、マグネシウムアルコキシドまたはアリールオキシド、混合型マグネシウムアルコキシハロゲン化物、および/またはカルボキシル化されたマグネシウムジアルコキシドまたはアリールオキシドが挙げられる。一実施形態では、MagMo前駆体はマグネシウムジ−(C1〜4)アルコキシドである。さらなる実施形態では、MagMo前駆体はジエトキシマグネシウムである。
【0071】
一実施形態では、該プロ触媒前駆体は混合型マグネシウム/チタン化合物(「MagTi」)である。「MagTi前駆体」は、式MgTi(ORを有し、式中、Rは1から14個の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素ラジカル、またはCOR’であり、R’は1から14個の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素ラジカルである;各OR基は同一または異なり;Xは独立に塩素、臭素、またはヨウ素であり、好ましくは塩素である;dは0.5から56、または2から4である;fは2から116、または5から15である;およびgは0.5から116、または1から3である。該前駆体は、その作製に用いられた反応混合物からアルコールを除去する制御沈殿を行うことにより作製される。一実施形態では、反応媒体は、芳香族の液体、特に塩素化芳香族化合物、最も特別にはクロロベンゼンと、アルカノール、特にエタノールとの混合物を含む。好適なハロゲン化剤として、四臭化チタン、四塩化チタンまたは三塩化チタン、特に四塩化チタンが挙げられる。ハロゲン化に用いられた溶液からアルカノールを除去すると固体の前駆体が析出し、これは特に望ましい形状および表面積を有する。さらに、得られた前駆体は粒子サイズが特に均一である。
【0072】
一実施形態では、該プロ触媒前駆体はベンゾエートを含有する塩化マグネシウム物質(「BenMag」)である。本明細書で用いる場合、「ベンゾエートを含有する塩化マグネシウム」(「BenMag」)は、ベンゾエート内部電子供与体を含むプロ触媒(すなわち、ハロゲン化プロ触媒前駆体)であり得る。該BenMag物質はハロゲン化チタンなどのチタン部分も含み得る。ベンゾエート内部電子供与体は不安定であり、プロ触媒合成中に他の電子供与体に置換され得る。好適なベンゾエート基の非限定的な例として、エチルベンゾエート、メチルベンゾエート、エチルp−メトキシベンゾエート、メチルp−エトキシベンゾエート、エチルp−エトキシベンゾエート、エチルp−クロロベンゾエートが挙げられる。一実施形態では、ベンゾエート基はエチルベンゾエートである。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、驚くべきことに、思いもよらず、BenMagプロ触媒前駆体は、固体のプロ触媒組成物を作製する際に、本プロ触媒組成物(複数可)を構成するシリルエステルの分解を阻止する、またはそうでなければ防止することが判明した。好適なBenMagプロ触媒前駆体の非限定的な例として、The Dow Chemical Company,Midland、Michiganより入手可能な商品名SHAC(商標)103、およびSHAC(商標)310の触媒が挙げられる。
【0073】
本プロ触媒組成物には、内部電子供与体も含まれる。本明細書で用いる場合、「内部電子供与体」とは、生成したプロ触媒組成物中に存在する1つまたは複数の金属に対して電子対を供与する、プロ触媒形成中に添加される化合物である。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、該内部電子供与体は活性部位の形成を制御する際にこれを助け、これにより触媒の立体選択性を高めると考えられている。該内部電子供与体は、すでに開示した構造(I)〜(III)のシリルエステルおよび/またはシリルジオールエステルのうちの任意の1つまたは複数である。
【0074】
一実施形態では、内部電子供与体に対するマグネシウムのモル比(マグネシウム対内部電子供与体)は、約100:1から約1:1、または約30:1から約2:1、または約15:1から約3:1である。
【0075】
一実施形態では、該プロ触媒前駆体はハロゲン化により固体のプロ触媒に変換される。ハロゲン化には、該内部電子供与体の存在下でプロ触媒前駆体をハロゲン化剤と接触させるステップが含まれる。かかる成分は反応混合物を形成する。ハロゲン化は、プロ触媒前駆体中に存在するマグネシウム部分をハロゲン化マグネシウム支持体に変換し、同支持体上にはチタン部分(ハロゲン化チタンなど)が堆積している。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、ハロゲン化の際に、内部電子供与体は、(1)マグネシウム系支持体上のチタンの位置を制御する、(2)マグネシウム部分およびチタン部分をそれぞれそのハロゲン化物に変換するのを容易にする、および(3)変換中にハロゲン化マグネシウム支持体の結晶サイズを制御すると考えられている。したがって、内部電子供与体を導入すれば、立体選択性を有するプロ触媒組成物が生成する。
【0076】
一実施形態では、ハロゲン化剤は式Ti(ORを有するハロゲン化チタンであり、式中RおよびXは上記定義と同様であり、fは0から3の整数である;hは1から4の整数である;そしてf+hは4である。一実施形態では、ハロゲン化剤はTiClである。さらなる実施形態では、ハロゲン化は塩素化された、または塩素化されていない芳香族の液体、例えばジクロロベンゼン、o−クロロトルエン、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、またはキシレンなどを含む反応混合物内で行われる。さらに別の実施形態では、ハロゲン化は、TiClなどのハロゲン化剤を40から60容量パーセントで含むハロゲン化剤および塩素化された芳香族の液体からなる混合物を使用して行われる。
【0077】
一実施形態では、反応混合物はハロゲン化の際に加熱される。プロ触媒前駆体およびハロゲン化剤は、0℃から60℃、または20℃から30℃の温度で初めに接触させ、そして0.1から10.0℃/分、または1.0から5.0℃/分の速度で加熱が開始される。内部電子供与体は、ハロゲン化剤とプロ触媒前駆体との最初の接触期間の後に後ほど添加することもできる。ハロゲン化の温度は、60℃から150℃(またはこれらの間の任意の値もしくは部分範囲)、または90℃から120℃である。ハロゲン化は、5から60分、または10から50分の間、実質的に内部電子供与体が存在しない状態で継続可能である。
【0078】
プロ触媒前駆体、ハロゲン化剤、および内部電子供与体が接触する方式は変化し得る。一実施形態では、プロ触媒前駆体は、ハロゲン化剤と塩素化された芳香族化合物とを含む混合物と最初に接触する。得られた混合物は攪拌され、望む場合には加熱され得る。次に、内部電子供与体は、該前駆体を単離または回収せずに同一の反応混合物に添加される。上記方法は、自動化された方法制御手段により制御して様々な成分を添加しながら単一の反応装置内で実施され得る。
【0079】
プロ触媒前駆体と内部電子供与体との接触時間は、少なくとも25℃、または少なくとも50℃、または少なくとも60℃の温度から最高150℃、または最高120℃、または最高115℃、または最高110℃の温度において、少なくとも10分、または少なくとも15分、または少なくとも20分、または少なくとも1時間である。
【0080】
ハロゲン化手順は、1回、2回、3回、または望むだけより多い回数繰り返すことができる。一実施形態では、得られた固体物質は、反応混合物から回収され、同一の(または異なる)内部電子供与体成分が不存在の(または存在する)状態で、塩素化された芳香族化合物中のハロゲン化剤混合物と,1回または複数回、少なくとも約10分、または少なくとも約15分、または少なくとも約20分、および最長約1時間、または最長約45分間、または最長約30分間、少なくとも約25℃、または少なくとも約50℃、または少なくとも約60℃から、最高約150℃、または最高約120℃、または最高約115℃の温度で接触する。
【0081】
上記ハロゲン化手順を実施した後、得られた固体のプロ触媒組成物は最終プロセスで用いられた反応媒体から、例えばろ過により分離されて湿気を帯びたフィルターケーキを生成する。湿気を帯びたフィルターケーキは、次に未反応のTiClを除去するために液体の希釈剤ですすがれ、または洗浄され得るが、また望む場合には残留液を除去するために乾燥され得る。一般に、得られた固体のプロ触媒組成物は「洗浄液」で1回または複数回洗浄されるが、同洗浄液は脂肪族炭化水素、例えばイソペンタン、イソオクタン、イソヘキサン、ヘキサン、ペンタン、またはオクタンなどの液体の炭化水素である。固体のプロ触媒組成物は、次に分離され得るが、さらに保管または使用するために、特に鉱物油などの比較的重い炭化水素中で乾燥され、またはスラリー化され得る。
【0082】
一実施形態では、得られた固体のプロ触媒組成物は、総固体重量を基準に、チタン含量として約0.1重量パーセントから約6.0重量パーセントを、または約1.0重量パーセントから約4.5重量パーセント、または約1.5重量パーセントから約3.5重量パーセントを有する。一実施形態では、内部電子供与体が、マグネシウムに対する内部電子供与体(内部電子供与体対マグネシウム)として約0.005:1から約1:1、または約0.01:1から約0.4:1のモル比でプロ触媒組成物中に存在し得る。重量パーセントはプロ触媒組成物の総重量を基準としている。
【0083】
一実施形態では、プロ触媒組成物は、固体のプロ触媒組成物を単離する前または後に、1つまたは複数の下記手順によりさらに処理され得る。固体のプロ触媒組成物は、望むならばさらなる量のハロゲン化チタン化合物と接触(ハロゲン化)し得るが、該組成物はメタセシス条件下で酸塩化物、例えば二塩化フタロイルまたは塩化ベンゾイルなどと交換可能であり、またこれは、すすぎ、洗浄、加熱処理、または熟成の対象となり得る。上記追加の手順は任意の順番で組み合わせ可能であり、または別々に実施可能であり、またはまったくそうでない場合もあり得る。
【0084】
いずれの特定の理論にも束縛されるのを望むものではないが、(1)あらかじめ形成されたプロ触媒組成物をハロゲン化チタン化合物、特にハロハイドロカーボン希釈剤中の前記組成物の溶液と接触させることによりさらにハロゲン化を行うと、および/または(2)あらかじめ形成されたプロ触媒組成物をハロハイドロカーボンまたは炭化水素を用いて、上昇した温度(100〜150℃)でさらに洗浄すると、おそらくは上記希釈剤中に可溶性のある種の不活性金属化合物が除去されることにより、プロ触媒組成物に望ましい改変をもたらすと考えられている。したがって、一実施形態では、プロ触媒は、ハロゲン化剤、例えばハロゲン化チタンとハロハイドロカーボン希釈剤との混合物、例えばTiClとクロロベンゼンと、単離または回収する前に1回または複数回接触する。別の実施形態では、プロ触媒は100から150℃の間の温度でクロロベンゼンまたはo−クロロトルエンを用いて単離または回収する前に1回または複数回洗浄する。
【0085】
一実施形態では、別のプロ触媒組成物を作製する方法が提供される。この方法には、2,2−ジメチル−1,3−プロピレングリコールジベンゾエート、ベンゾエートを含む塩化マグネシウムプロ触媒前駆体(BenMag)、およびハロゲン化剤を反応させるステップが含まれる。該反応は反応混合物内で生ずる。該方法には、プロ触媒組成物を形成するステップが含まれる。プロ触媒組成物の形成は、これまでに開示したハロゲン化の方法により生じ得る。該プロ触媒組成物には、マグネシウム部分、チタン部分、および内部電子供与体が組み合わされたものが含まれる。該内部電子供与体には、エチルベンゾエート、および2,2−ジメチル−1,3−プロピレングリコールジベンゾエートが含まれる。
【0086】
プロ触媒組成物を作製する方法は、いずれも本明細書に開示する2つ以上の実施形態を含み得る。
【0087】
一実施形態では、マグネシウム部分、チタン部分、および内部電子供与体の組合せを含むプロ触媒組成物が提供される。内部電子供与体には、シリルエステルが含まれる。プロ触媒組成物は、上記ハロゲン化手順の方法により作製されるが、同手順はプロ触媒前駆体および内部電子供与体成分を、内部電子供与体が組み込まれた、マグネシウム部分とチタン部分とが組み合わされたものに変換する。該内部電子供与体は、本明細書に開示する任意のシリルエステルであり得る。プロ触媒組成物が形成される元となるプロ触媒前駆体は、マグネシウム部分前駆体、混合されたマグネシウム/チタン前駆体、またはベンゾエートを含む塩化マグネシウム前駆体であり得る。
【0088】
一実施形態では、マグネシウム部分はハロゲン化マグネシウムである。別の実施形態では、ハロゲン化マグネシウムは塩化マグネシウム、または塩化マグネシウムのアルコール付加物である。
【0089】
一実施形態では、チタン部分は塩化チタンである。別の実施形態では、ハロゲン化チタンは四塩化チタンである。
【0090】
一実施形態では、プロ触媒組成物は、塩化マグネシウム、塩化チタン、および内部電子供与体を組み合せたものである。別の実施形態では、プロ触媒組成物には、塩化チタンが堆積している塩化マグネシウム支持体が含まれ、同支持体には内部電子供与体が組み込まれている。
【0091】
一実施形態では、プロ触媒組成物は、約0.1重量%から約20重量%のシリルエステルを含む。重量パーセントはプロ触媒組成物の総重量を基準としている。
【0092】
一実施形態では、プロ触媒組成物の内部電子供与体は、構造(I)を有するシリルエステルである:
【0093】
【化11】

【0094】
式中、mおよびnは同一または異なり、mおよびnは、それぞれ1から5の整数であり、その同じ数だけ炭素原子を有するヒドロカルビルを表している。R〜Rは、同一または異なり、それぞれ、水素、1から20個の炭素原子を有する置換されたヒドロカルビル基、1から20個の炭素原子を有する置換されていないヒドロカルビル基、およびこれらの組合せから選択される。Xは、構造(I)についてこれまでに開示した電子供与基である。内部電子供与体は、これまでに開示した構造(I)の1つまたは複数の実施形態を含み得る。
【0095】
一実施形態では、Rはベンゼン環を含む基から選択される。ベンゼン環を含む基は、任意選択により1つまたは複数の以下の基で置換され得る:C1〜20アルキル基(複数可)、C1〜20アルコキシ基(複数可)、C1〜20アルコキシカルボニル基(複数可)、ハロゲン原子(複数可)、およびこれらの任意の組合せ。
【0096】
一実施形態では、触媒組成物は下記の構造(II)を有する内部電子供与体を含む:
【0097】
【化12】

【0098】
式中、R〜Rは同一または異なる。R〜Rのそれぞれは、上記構造(II)について前記した置換基から選択される。一実施形態では、RおよびRは同一または異なる。RおよびRはそれぞれ、ベンゼン環を含む基から選択されるが、かかるベンゼン環を含む基は、任意選択により1つまたは複数の以下の基で置換され得る:C1〜20アルキル基、C1〜20アルコキシ基、C1〜20アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、およびこれらの任意の組合せ。内部電子供与体は、これまでに開示した構造(II)の1つまたは複数の実施形態を含み得る。
【0099】
一実施形態では、プロ触媒組成物は下記のような構造(III)を有する内部電子供与体を含む:
【0100】
【化13】

【0101】
式中、R〜Rは同一または異なり、それぞれ、上記構造(III)について前記した置換基から選択される。内部電子供与体は、すでに開示した構造(III)の1つまたは複数の実施形態を含み得る。
【0102】
一実施形態では、R〜Rはそれぞれ水素であり、RおよびRは同一または異なり、それぞれ、水素、C〜Cのアルキル基、およびこれらの組合せから選択される。さらなる実施形態では、RおよびRはそれぞれ、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、およびこれらの組合せから選択される。
【0103】
一実施形態では、構造(III)のシリルジオールエステルは、同一または異なるRおよびRを含む。RおよびRはそれぞれ、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、およびこれらの組合せから選択される。R〜Rのそれぞれはメチルである。
【0104】
一実施形態では、構造(III)のシリルジオールエステルは、同一または異なるRおよびRを含む。RおよびRはそれぞれ、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、およびこれらの組合せから選択される。RおよびRはそれぞれメチルである。RおよびRはそれぞれ水素である。
【0105】
一実施形態では、プロ触媒組成物は、ビス(ベンゾイルオキシ)ジメチルシラン、ビス(ベンゾイルオキシ)ジエチルシラン、ビス(ベンゾイルオキシ)エチルメチルシラン、ビス(ベンゾイルオキシ)イソブチルメチルシラン、およびこれらの組合せから選択される内部電子供与体を含む。
【0106】
プロ触媒組成物は、本明細書に開示する2つまたはそれ以上の実施形態を含み得る。
【0107】
一実施形態では、触媒組成物が提供される。本明細書で用いる場合、「触媒組成物」とは、重合条件下でオレフィンと接触するとオレフィン系ポリマーを形成する組成物である。触媒組成物には、プロ触媒組成物、および補助触媒が含まれる。プロ触媒組成物は、シリルエステルを含む。該シリルエステルは、本明細書に開示する任意のシリルエステルまたはシリルジオールエステルであり得る。触媒組成物は、本明細書に開示する任意のプロ触媒組成物を含み得る。触媒組成物は、任意選択により外部電子供与体および/または活性制限剤を含み得る。
【0108】
触媒組成物は補助触媒を含む。本明細書で用いる場合、「補助触媒」とは、プロ触媒組成物を活性な重合触媒に変換する能力を有する物質である。補助触媒には、アルミニウム、リチウム、亜鉛、スズ、カドミウム、ベリリウム、マグネシウムのヒドリド、アルキル、またはアリール、およびこれらの組合せが含まれ得る。一実施形態では、補助触媒は式RAlとして表されるヒドロカルビルアルミニウム補助触媒であり、式中各Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヒドリドラジカルであり、少なくとも1つのRはヒドロカルビルラジカルであり、2つまたは3つのRラジカルは、ヘテロ環式構造を形成する環式ラジカルに関与することができ、各Rは同一であってもまた異なってもよく、各Rはヒドロカルビルラジカルであって、これは1から20個の炭素原子、好ましくは1から10個の炭素原子を有する。さらなる実施形態では、各アルキルラジカルは、直鎖状であっても、また分枝状であってもよく、かかるヒドロカルビルラジカルは、混合型ラジカルであり得、すなわち該ラジカルはアルキル、アリール、および/またはシクロアルキル基を含み得る。好適なラジカルの非限定的な例として、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、5,5−ジメチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、イソデシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、フェニル、フェネチル、メトキシフェニル、ベンジル、トリル、キシリル、ナフチル、メチルナプチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、またはシクロオクチルが挙げられる。
【0109】
好適なヒドロカルビルアルミニウム化合物の非限定的な例として、下記のものが挙げられる:トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジヘキシルアルミニウムヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、ヘキシルアルミニウムジヒドリド、ジ−イソブチルヘキシルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、トリドデシルアルミニウム、トリベンジルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリナフチルアルミニウム、またはトリトリルアルミニウム。一実施形態では、補助触媒は、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、ジ−イソブチルアルミニウムヒドリド、またはジヘキシルアルミニウムヒドリドから選択される。
【0110】
一実施形態では、補助触媒は式RAlX3−nで表されるヒドロカルビルアルミニウム化合物であり、式中n=1または2、Rはアルキル、およびXはハロゲン化物またはアルコキシドである。好適な化合物の非限定的な例として、下記のものが挙げられる:メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、テトラエチルジアルミノキサン、テトライソブチルジアルミノキサン、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、またはジメチルアルミニウムクロリド。
【0111】
一実施形態では、補助触媒はトリエチルアルミニウムである。チタンに対するアルミニウムのモル比(アルミニウム対チタン)は、約5:1から約500:1、または約10:1から約200:1、または約15:1から約150:1、または約20:1から約100:1である。別の実施形態では、チタンに対するアルミニウムのモル比は、約45:1である。
【0112】
一実施形態では、触媒組成物は外部電子供与体を含む。本明細書で用いる場合、「外部電子供与体」とは、プロ触媒の形成とは独立に添加される化合物であり、金属原子に対して電子対を供与する能力を有する少なくとも1つの官能基を含む。いかなる特定の理論にも縛られないが、外部電子供与体は触媒の立体選択性を高めると考えられている(すなわち、フォルマントポリマー中のキシレン可溶性物質を低減する)。
【0113】
一実施形態では、外部電子供与体は下記の1つまたは複数から選択される:アルコキシシラン、アミン、エーテル、カルボキシレート、ケトン、アミド、カルバメート、ホスフィン、ホスフェート、ホスファイト、スルホネート、スルホン、および/またはスルホキシド。
【0114】
一実施形態では、外部電子供与体はアルコキシシランである。該アルコキシシランは一般式:SiR(OR’)4−m(I)を有し、式中独立にそれぞれ存在するRは水素、または1つまたは複数の第14、15、16、または17族ヘテロ原子を含む1つまたは複数の置換基で任意選択により置換されたヒドロカルビル、またはアミノ基であり、前記Rは水素とハロゲンは数えないで最大20個の原子を含み、R’はC1〜20アルキル基であり、mは0、1、2または3である。一実施形態では、RはC6〜12アルキルアリール、またはアラルキル、C3〜12のシクロアルキル、C1〜12のアルキル、C3〜12の分枝したアルキル、またはC3〜12の環式または非環式アミノ基、R’はC1〜4のアルキル、およびmは1または2である。好適なシラン組成物の非限定的な例として、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、エチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、シクロペンチルピロリジノジメトキシシラン、ビス(ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、またはジメチルジメトキシシランが挙げられる。一実施形態では、該シラン組成物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン(MChDMS)、またはn−プロピルトリメトキシシラン(NPTMS)、およびこれらの任意の組合せである。
【0115】
一実施形態では、外部電子供与体はジシクロペンチルジメトキシシランである。別の実施形態では、外部電子供与体はn−プロピルトリメトキシシランである。
【0116】
一実施形態では、外部電子供与体は少なくとも2つのアルコキシシランの混合物であり得る。さらなる実施形態では、該混合物はジシクロペンチルジメトキシシランおよび下記の1つまたは複数であり得る:メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、およびこれらの組合せ。
【0117】
一実施形態では、外部電子供与体は下記の1つまたは複数から選択される:ベンゾエート、スクシネート、および/またはジオールエステル。一実施形態では、外部供与体は2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである。別の実施形態では、外部電子供与体はジエーテルである。
【0118】
一実施形態では、触媒組成物は活性制限剤(ALA)を含む。本明細書で用いる場合、「活性制限剤」(ALA)は、上昇した温度(すなわち約85℃を超える温度)での触媒活性を抑制する物質である。ALAは重合反応装置が制御不能になるのを阻止する、またはそうでなけれな防止し、重合方法の持続性を保証する。一般に、チーグラー・ナッタ触媒の活性は、反応装置の温度が上昇すると増大する。また、チーグラー・ナッタ触媒は、一般に生成するポリマーの軟化点温度付近でも高い活性を維持する。発熱重合反応によって生み出された熱は、ポリマー粒子が凝集体を形成する原因となり得、最終的に、ポリマー生成方法の持続性を阻害し得る。ALAは上昇した温度で触媒活性を低減し、これにより反応装置が制御不能になるのを防止し、粒子が凝集体を形成するのを低減(または阻止)し、そして重合方法の持続性を保証する。
【0119】
活性制限剤は、カルボン酸エステル、ジエーテル、ジオールエステル、ポリ(アルケングリコール)、およびこれらの組合せであり得る。カルボン酸エステルは、脂肪族または芳香族のモノまたはポリカルボン酸エステルであり得る。好適なモノカルボン酸エステルの非限定的な例として、エチルおよびメチルベンゾエート、エチルp−メトキシベンゾエート、メチルp−エトキシベンゾエート、エチルp−エトキシベンゾエート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアセテート、エチルp−クロロベンゾエート、ヘキシルp−アミノベンゾエート、イソプロピルナフタレート、n−アミルトルエート、エチルシクロヘキサノエート、およびプロピルピバレートが挙げられる。
【0120】
好適なポリカルボン酸エステルの非限定的な例として、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ−n−プロピルフタレート、ジイソプロピルフタレート、ジ−n−ブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジ−tert−ブチルフタレート、ジイソアミルフタレート、ジ−tert−アミルフタレート、ジネオペンチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、およびジ−2−エチルデシルフタレートが挙げられる。
【0121】
脂肪族カルボン酸エステルは、C〜C30脂肪酸エステルであり得、モノ−またはポリ−(2つ以上)エステルであり得、直鎖であっても、また分枝状であってもよく、飽和であっても、また不飽和であってもよく、およびこれらの任意の組合せであり得る。またC〜C30脂肪族エステルは、1つまたは複数の第14、15、または16族のヘテロ原子を含む置換基で置換することも可能である。好適なC〜C30脂肪酸エステルの非限定的な例として、脂肪族C4〜30モノカルボン酸のC1〜20アルキルエステル、脂肪族C8〜20モノカルボン酸のC1〜20アルキルエステル、脂肪族C4〜20モノカルボン酸およびジカルボン酸のC1〜4のアリルモノエステルおよびジエステル、脂肪族C8〜20モノカルボン酸およびジカルボン酸のC1〜4アルキルエステル、ならびにC2〜100(ポリ)グリコールまたはC2〜100(ポリ)グリコールエーテルのC4〜20モノカルボキシレートまたはポリカルボキシレート誘導体が挙げられる。さらなる実施形態では、C〜C30脂肪酸エステルは、ミリステート、セバケート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノアセテートまたはジアセテート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノミリステートまたはジミリステート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノラウレートまたはジラウレート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノオレートまたはジオレート、グリセリルトリ(アセテート)、C2〜40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリエステル、およびこれらの混合物であり得る。さらなる実施形態では、C〜C30脂肪族エステルは、イソプロピルミリステートまたはジ−n−ブチルセバケートである。
【0122】
一実施形態では、活性制限剤はジエーテルを含む。ジエーテルは、下記の構造(V)で表されるジアルキルエーテルであり得る:
【0123】
【化14】

【0124】
式中、RおよびRは、独立にそれぞれ、最大20個の炭素原子を有するアルキル、アリール、アラルキル基であり、それらは任意選択により第14、15、16、または17族ヘテロ原子を含んでもよく、またRおよびRは水素原子であり得る。また、RおよびRは、連結してシクロペンタジエンまたはフルオレンなどの環式構造も形成し得る。ジアルキルエーテルは、直鎖状であっても、また分枝状であってもよく、次に示す1つまたは複数の基を含み得る:1〜18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアリファティック、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキルラジカル、および水素。
【0125】
一実施形態では、活性制限剤は下記構造(VI)を有するコハク酸エステル組成物を含む:
【0126】
【化15】

【0127】
式中、RおよびR’は同一であっても、また異なってもよいが、Rおよび/またはR’は次の基の1つまたは複数を含む:任意選択によりヘテロ原子を含む直鎖状または分枝状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基。1つまたは複数の環式構造は、2位の炭素原子および3位の炭素原子のうちの1つまたは両方を介して形成され得る。
【0128】
一実施形態では、活性制限剤は、下記構造(VII)で表されるジオールエステルを含む:
【0129】
【化16】

【0130】
式中、nは1から5の整数である。RおよびRは、同一であっても、また異なってもよく、それぞれ、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、アリル、フェニル、またはハロフェニル基から選択され得る。R、R、R、R、R、およびRは同一であっても、また異なってもよく、それぞれ水素、ハロゲン、1から20個の炭素原子を有する置換された、または置換されていないヒドロカルビルから選択され得る。R〜R基は、任意選択により炭素、水素またはその両方と置き換わる1つまたは複数のヘテロ原子を含み得、該ヘテロ原子は、窒素、酸素、イオウ、シリコン、リン、およびハロゲンから選択される。任意のR〜R基は、連結して環式構造を形成し得る。RおよびRは同一であっても、また異なってもよく、フェニル環の2−、3−、4−、5−、および6−位のいずれかの炭素原子と結合可能である。
【0131】
一実施形態では、外部電子供与体および活性制限剤は、反応装置内に別々に添加可能である。別の実施形態では、外部電子供与体および活性制限剤は、前もって共に混合され、しかる後に反応装置内に混合物として添加可能である。該混合物では、2つ以上の外部電子供与体、または2つ以上の活性制限剤が利用可能である。一実施形態では、該混合物はジシクロペンチルジメトキシシランおよびイソプロピルミリステート、ジシクロペンチルジメトキシシランおよびポリ(エチレングリコール)ラウレート、ジシクロペンチルジメトキシシランおよびイソプロピルミリステートおよびポリ(エチレングリコール)ジオレート、メチルシクロヘキシルジメトキシシランおよびイソプロピルミリステート、n−プロピルトリメトキシシランおよびイソプロピルミリステート、ジメチルジメトキシシランおよびメチルシクロヘキシルジメトキシシランおよびイソプロピルミリステート、ジシクロペンチルジメトキシシランおよびn−プロピルトリエトキシシランおよびイソプロピルミリステート、およびジシクロペンチルジメトキシシランおよびテトラエトキシシランおよびイソプロピルミリステート、およびこれらの組合せである。
【0132】
一実施形態では、触媒組成物は、任意の上記活性制限剤と組み合わされた任意の上記外部電子供与体を含む。
【0133】
本触媒組成物は、本明細書に開示する2つ以上の実施形態を含み得る。
【0134】
一実施形態では、オレフィン系ポリマーを作製するための方法が提供される。該方法には、少なくとも1つのオレフィンを重合条件下で触媒組成物と接触させるステップが含まれる。該触媒組成物には、シリルエステルが含まれる。該シリルエステルは、本明細書に開示する任意のシリルエステルであり得る。方法はさらに、オレフィン系ポリマーを形成するステップを含む。
【0135】
一実施形態では、触媒組成物はプロ触媒組成物と補助触媒とを含む。プロ触媒組成物は、本明細書に開示する任意のプロ触媒組成物であり得る。同様に、補助触媒は本明細書に開示する任意の補助触媒であり得る。触媒組成物は、既に開示した外部電子供与体および/または活性制限剤を含み得る。
【0136】
一実施形態では、オレフィン系ポリマーは、プロピレン系オレフィン、エチレン系オレフィン、およびこれらの組合せであり得る。一実施形態では、オレフィン系ポリマーはプロピレン系ポリマーである。
【0137】
1つまたは複数のオレフィンモノマーは、触媒と反応し、ポリマー(またはポリマー粒子の流動床)を形成するように重合反応装置内に導入可能である。好適なオレフィンモノマーの非限定的な例として、エチレン、プロピレン、C4〜20α−オレフィン、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−へプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等;C4〜20ジ−オレフィン、例えば1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ノルボルナジエン、5−エチルイデン−2−ノルボルネン(ENB)、およびジシクロペンタジエン;スチレン、o−、m−、およびp−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレンを含むC8〜40ビニル芳香族化合物;およびクロロスチレン、およびフルオロスチレンなどのハロゲンで置換されたC8〜40ビニル芳香族化合物が挙げられる。
【0138】
本明細書で用いる場合、「重合条件」とは、重合反応装置内の温度と圧力のパラメータであり、所望のポリマーを形成するように、触媒組成物とオレフィンとの間で生ずる重合化を促進するのに適するものである。重合化プロセスは、1つまたは2つ以上の重合反応装置内で稼働する、気相、スラリー、またはバルク重合化プロセスであり得る。
【0139】
一実施形態では、重合化は気相重合法により生ずる。本明細書で用いる場合、「気相重合」とは、触媒存在下で、流動媒体により流動化状態に維持されたポリマー粒子の流動床を経由する上行流動媒体の通過であり、該流動媒体は1つまたは複数のモノマーを含む。「流動化」、「流動化された」、または「流動化する」とは、気体−固体接触プロセスであり、同プロセスでは上昇気流により細かく分割された粒子の床が吹き上げられ、混合される。流動化は、粒子床の間隙を通過した流体の上行流が、微粒子の重量を上回る圧力差および摩擦抵抗増加量に達したときに、微粒子床の中で生ずる。したがって、「流動床」とは、流動媒体の流れによって流動状態にある懸濁した複数のポリマー粒子である。「流動媒体」とは、1つまたは複数のオレフィンガスであり、任意選択によりキャリアガス(HまたはN)、および任意選択により気相反応装置を経由して上昇する液体(炭化水素など)である。
【0140】
代表的な気相重合反応装置(または気相反応装置)には、容器(すなわち、反応装置)、流動床、定着プレート、出口、入口の配管、コンプレッサー、サイクルガス冷却器または熱交換器、および生成物排出システムが含まれる。容器には反応ゾーンおよび速度抑制ゾーンが含まれ、それぞれは定着プレート上に位置する。床は反応ゾーン内に位置する。一実施形態では、流動媒体には、プロピレンガス、および少なくとも1つのその他のガス、例えば、オレフィンおよび/または水素または窒素などのキャリアガスが含まれる。
【0141】
一実施形態では、接触は触媒組成物を重合反応装置内に供給し、オレフィンを重合反応装置内に導入する方法により生ずる。一実施形態では、該方法には、オレフィンを補助触媒と接触させるステップが含まれる。補助触媒は、プロ触媒組成物を重合反応装置内に導入する前に、プロ触媒組成物と混合(事前混合)可能である。別の実施形態では、補助触媒はプロ触媒組成物とは独立に重合反応装置内に添加される。補助触媒の重合反応装置内への独立した導入は、プロ触媒組成物の供給と同時、または実質的に同時に起こり得る。
【0142】
一実施形態では、該方法には外部電子供与体(および任意選択により活性制限剤)をプロ触媒組成物と混合するステップが含まれる。外部電位供与体は補助触媒と錯体化され得、また触媒組成物およびオレフィンの間で接触が生ずる前にプロ触媒組成物と混合(事前混合)され得る。別の実施形態では、外部電子供与体および/または活性制限剤は、重合反応装置内に独立に添加可能である。一実施形態では、外部電子供与体はジシクロペンチルジメトキシシランまたはn−プロピルトリメトキシシランである。
【0143】
別の実施形態では、触媒組成物はジシクロペンチルジメトキシシランまたはn−プロピルトリメトキシシラン、およびイソプロピルミリステートなどの活性制限剤を含む。
【0144】
一実施形態では、ポリプロピレンホモポリマーは、第1の反応装置内で生成される。第1の反応装置の内容物は、次に第2の反応装置に移され、同装置内にはエチレンが導入される。その結果、プロピレン−エチレンコポリマーが第2の反応装置内に生成する。
【0145】
一実施形態では、ポリプロピレンホモポリマーが、第1の反応装置内にプロピレン、および任意の本プロ触媒組成物、補助触媒、外部電子供与体、および活性制限剤を導入することにより形成される。ポリプロピレンホモポリマーは、エチレン(および任意選択によりプロピレン)および任意選択により外部電子供与体および/または任意選択により活性制限剤と共に、第2の反応装置内に導入される。外部電子供与体および活性制限剤は、第1の反応装置で用いられた各成分と同一であっても、また異なってもよい。こうして、プロピレン−エチレンコポリマー(インパクトコポリマーなど)が、第2の反応装置内に生成する。
【0146】
一実施形態では、オレフィンはプロピレンである。該方法には、約0.01g/10分から約800g/10分、または約0.1g/10分から約200g/10分、または約0.5g/10分から約150g/10分のメルトフローレート(MFR)を有するプロピレン系ポリマーを形成するステップが含まれる。さらなる実施形態では、プロピレン系ポリマーはポリプロピレンのホモポリマーである。
【0147】
一実施形態では、オレフィンはプロピレンである。該方法には、キシレン可溶性物質の含有量が約0.5%から約10%、または約1%から約8%、または約1%から約4%であるプロピレン系ポリマーを形成するステップが含まれる。さらなる実施形態では、プロピレン系ポリマーはポリプロピレンのホモポリマーである。
【0148】
一実施形態では、オレフィンはプロピレンである。該方法には、多分散指数(PDI)が約4から約20、または約4から約20、または約5から約10、または約6から約8であるプロピレン系ポリマーを形成するステップが含まれる。さらなる実施形態では、プロピレン系ポリマーはポリプロピレンのホモポリマーである。
【0149】
一実施形態では、オレフィンはプロピレンである。該方法には、曲げ弾性率が約200kpsiから約400kpsi、約220kpsiから約390kpsi、または約230kpsiから約350kpsi、または約240kpsiから約320kpsiであるプロピレン系ポリマーを形成するステップが含まれる。さらなる実施形態では、プロピレン系ポリマーはポリプロピレンのホモポリマーである。
【0150】
オレフィン系ポリマーを製造するための本発明の方法は、本明細書に開示する2つ以上の実施形態を含み得る。
【0151】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、シリルエステルおよび/またはシリルジオールエステルの内部電子供与体を含む本触媒組成物は、類似のプロ触媒前駆体と従来型の内部電子供与体を含むプロ触媒組成物と比較した時に、より幅広い分子量分布を有するオレフィン系ポリマーを生成すると考えられている。例えば、本触媒組成物は、フタレート内部電子供与体を有する類似の触媒から作製されたプロピレン系ポリマーと比較した時に、より幅広いPDI、およびより大きな曲げ弾性率を有するプロピレン系ポリマーを生成する。
【0152】
定義
本明細書中において、元素の周期律表と呼ぶ場合、そのすべては、CRC Press Inc.が2003年に出版し、版権を有する元素の周期律表を指す。また、「族」(単数)または「族」(複数)と呼ぶ場合は、いずれも族に番号付けするためのIUPAC方式を用いたかかる元素の周期表に記載される族である。反対の記載、文脈からの示唆、または当技術分野の慣行に該当しない限り、すべての部分およびパーセントは重量基準である。米国特許法における運用を目的として、本出願で参照される特許、特許出願、または公報の内容は、特に、合成技法の開示、定義(本明細書に規定するいずれの定義とも矛盾しない範囲において)、および当技術分野の一般知識の観点から、いずれも参照によりそのまま本明細書に組み込まれる(または、その同等の米国版も同様に参照により組み込まれる)。
【0153】
用語「含む」およびその派生語は、さらなる成分、ステップ、または手順のいずれもが、本明細書において開示されていようがいまいが、それらの存在を除外しようとするものではない。曖昧さを避けるために、用語「含む」の使用を通じて、本明細書で主張されるすべての組成物は、否定する記載がない限り、あらゆる追加の添加剤、アジュバンド、またはポリマー化合物であろうがなかろうが化合物を含み得る。一方、用語「〜から本質的になる」では、実施可能性に不可欠ではないものを除き、その他のあらゆる成分、ステップ、手順はそれに続く記載範囲から除外される。また、用語「〜からなる」は、具体的に規定または掲載されていないあらゆる成分、ステップ、または手順を除外する。用語「または」は、別途明記しない限り、記載されている要素は個別に参照の対象となるほか、任意の組合せも参照の対象となる。
【0154】
本明細書で引用する数値範囲には、任意の低い値と任意の高い値との間に少なくとも2ユニットの間隔があいている場合には、1ユニットずつ増加しながら低い値から高い値まですべての値が含まれる。例えば、成分量、または組成特性または物理特性の数値、例えば混合成分量、軟化温度、メルトインデックスなどが、1と100との間であると記載する場合、すべての個々の値、例えば1、2、3など、およびすべての部分的な範囲、例えば1から20、55から70、197から100などは、この規定においては明確に列挙対象となることが意図されている。1よりも小さい値の場合、1ユニットは、場合に応じて0.0001、0.001、0.01、または0.1と考えられる。これらは特別に意図したものの例に過ぎず、最も低い値と最も高い値との間の列挙された数値のすべての可能な組合せも、本出願において明白に記載されているとみなされる。要するに、本明細書で引用する任意の数値範囲には、記載範囲内の任意の数値または部分的な範囲が含まれる。本明細書では議論したような数値範囲が引用されたが、メルトインデックス、メルトフローレート、およびその他の特性も参照されたい。
【0155】
本明細書で用いる場合、用語「ブレンド」または「ポリマーブレンド」は、2種類以上のポリマーのブレンド品である。かかるブレンド品は混和性であってもなくてもよい(分子レベルにおいて分離した相でない)。かかるブレンド品は分相状態であってもなくてもよい。かかるブレンド品は、透過電子顕微鏡法、光散乱法、X線散乱法、および当技術分野公知のその他の方法により確認される1つまたは複数のドメイン構造を含んでも含まなくてもよい。
【0156】
本明細書で用いる場合、用語「組成物」には、組成物を含む物質の混合物の他、組成物を構成する物質から形成される反応生成物および分解生成物が含まれる。
【0157】
用語「ポリマー」は、同一種類または異なる種類のモノマーを重合させることにより作製される巨大分子化合物である。「ポリマー」には、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、インターポリマーなどが含まれる。用語「インターポリマー」とは、少なくとも2種類のモノマーまたはコポリマーの重合化により作製されるポリマーを意味する。これには、コポリマー(通常、異なる2種類のモノマーまたはコモノマーから作製されるポリマーを指す)、ターポリマー(通常、異なる3種類のモノマーまたはコモノマーから作製されるポリマーを指す)、テトラポリマー(通常、異なる4種類のモノマーまたはコモノマーから作製されるポリマーを指す)などが含まれるが、但し、これらに限定されない。
【0158】
本明細書で用いる場合、用語「インターポリマー」とは、少なくとも異なる2種類のモノマーの重合化により作製されるポリマーを意味する。したがって、一般用語のインターポリマーには、コポリマーが含まれ、通常、異なる2種類のモノマーから作製されるポリマー、および異なる3種類以上のモノマーから作製されるポリマーを指す場合に用いられる。
【0159】
用語「オレフィン−系ポリマー」は、オレフィン、例えばエチレンまたはプロピレンが(重合化した状態で)、ポリマーの総重量を基準として主要な重量パーセントを占めるポリマーである。オレフィン系ポリマーの非限定的な例には、エチレン系ポリマーおよびプロピレン系ポリマーが含まれる。
【0160】
本明細書で用いる場合、用語「エチレン系ポリマー」は、主要な重量パーセントを占める重合化したエチレンモノマー(重合可能なモノマーの総重量を基準として)を含み、また任意選択により少なくとも1種類の重合したコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0161】
本明細書で用いる場合、用語「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」とは、主要な重量パーセントを占める重合化したエチレンモノマー(重合可能なモノマーの総量を基準として)、および少なくとも1つの重合したα−オレフィンを含むインターポリマーを指す。
【0162】
本明細書で用いる場合、用語「プロピレン系ポリマー」は、主要な重量パーセントを占める重合化したプロピレンモノマー(重合可能なモノマーの総量を基準として)、および任意選択により少なくとも1つの重合したコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0163】
本明細書で用いる場合、用語「アルキル」は、分枝した、または分枝していない、飽和した、または飽和していない非環式炭化水素ラジカルを意味する。好適なアルキルラジカルの非限定的な例として、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、2−プロペニル(またはアリル)、ビニル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル(または2−メチルプロピル)などが挙げられる。アルキルは1個および20個の炭素原子を有する。
【0164】
本明細書で用いる場合、用語「置換されたアルキル」とは、上記アルキルにおいて、該アルキルの任意の炭素に結合している1つまたは複数の水素原子が別の基、例えばハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィド、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロ、およびこれらの組合せにより置換されたアルキルを指す。好適な置換されたアルキルとして、例えばベンジル、トリフルオロメチルなどが挙げられる。
【0165】
本明細書で用いる場合、用語「アリール」は、単芳香族環または縮合した、共有的に結合した、またはメチレン部分もしくはエチレン部分などの一般的な基と結合した多芳香族環であり得る芳香族置換体を指す。芳香族の環(複数可)として、特にフェニル、ナフチル、アントラセニル、およびビフェニルを挙げることができる。アリールは6個から20個の炭素原子を有する。
【0166】
試験方法
曲げ弾性率は、ASTM D790−00に基づき決定される。
【0167】
メルトフローレートは、ASTM D 1238−01試験法に基づき、プロピレン系ポリマーの場合、230℃で2.16kgの重量で測定される。
【0168】
キシレン可溶性物質(XS)は、米国特許第5,539,309号に記載されているH NMR法を用いて測定されるが、同特許の全内容を本明細書において参照により組み込む。
【0169】
多分散指数(PDI)は、AR−G2流量計により測定されるが、同流量計はZeichner GR、Patel PD(1981年)「A comprehensive Study of Polypropylene Melt Rheology」、Proc.of the 2nd World Congress of Chemical Eng.、Montreal、Canadaに基づく方法を用いたTA Instrumentsが製造する応力制御型動的分光器である。温度を180℃±0.1℃に制御するのにETCオーブンが用いられる。試料が酸素や湿度によって分解しないように維持するために、オーブン内部をパージするのに窒素を用いる。1組の直径25mmのコーンとプレート試料ホルダーを用いる。試料を圧縮成形して50mm×100mm×2mmのプラークにする。次に試料を19mm角にカットし、底部プレート中央部に配置する。上側コーンの形状は、(1)コーン角:5:42:40(度:分:秒);(2)直径:25mm;(3)切断ギャップ:149ミクロンである。底部プレートの形状は25mmシリンダーである。
試験手順:
・コーンおよびプレート試料ホルダーを、ETCオーブン内で180℃、2時間加熱する。次にギャップを窒素ガス雰囲気下でゼロにする。
・コーンを2.5mmまで上昇させ、試料を底部プレートの最上部に配置する。
・2分間の時間測定を開始する。
・上側コーンを速やかに下降させ、規定力であることに注意しながら試料上部に軽く乗せる。
・2分後、上側コーンを下降させることにより、試料を165ミクロンのギャップに詰め込む。
・規定力を確認する。規定力が<0.05ニュートンまで低下したら、過剰の試料をコーンのエッジおよびプレート試料ホルダーからスパチュラで取り除く。
・上側コーンを149ミクロンの切断ギャップまで再び下降させる。
・発振周波数掃引試験を下記条件下で実施する。
i 180℃で5分間遅延して試験する。
ii 周波数:628.3r/sから0.1r/s。
iii データ取得率:5ポイント/周波数10
iv ストレイン:10%
・試験が完了したら、交差弾性率(Gc)をTA Instrumentsが提供するRheology Advantage Data Analysisプログラムにより検出する。
・PDI=100,000÷Gc(Pa単位)
【0170】
例示目的であり限定目的ではなく、本開示の実施例を提示する。
【実施例1】
【0171】
I.シリルジオールエステルの合成
ビス(クロロメチル)ジアルキルシランの一般的な手順:
還流冷却器および滴下漏斗が取り付けられた容量500mlの3つ口フラスコに、50mmolのビス(クロロメチル)メチルクロロシラン(ジエチル誘導体の場合にはビス(クロロメチル)ジクロロシラン)、および無水エーテル、200mlを加える。エーテルに溶解した50mmol(ジエチル誘導体の場合には120mmol)の塩化/臭化アルキルマグネシウムを、攪拌しながらフラスコに添加する。該溶液を30分間攪拌し、加熱して還流する。反応の進行をGCで監視する。反応が完了したら、該混合物を室温まで冷却し、次いで該フラスコを氷水浴に浸漬し、水で反応を止める。分離後、水層をエーテルで3回抽出する。まとめられたエーテル抽出物を、ブラインで1回洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水する。ろ過後に、ろ液を濃縮し、また残渣物を減圧条件下で蒸留すると無色の油が生成する。かかる調製物の収率は、通常約85%である。H NMR(500MHz Bruker)スペクトルデータを下記の表3に示す。
【0172】
【表3】

【0173】
ビス(クロロメチル)ジメチルシランは、Gelest,Inc.、Morrisville、PAより購入した。
【0174】
容量500mlの3つ口丸底フラスコに、25mmolのジクロロジメチルシラン、50mmol gのブロモクロロメタン、および無水THF、150mlを加える。該フラスコをドライアイス/アセトン浴で−78℃まで冷却する。この溶液に、ヘキサンに溶解した2.5Mブチルリチウム溶液、20mlを20分かけて滴下する。添加が完了したら、該混合物を上記温度でさらに20分間攪拌し、次いで1時間かけて室温まで加温する。飽和NHCl溶液で該混合物を急冷する。分離後、水層をエーテルで抽出し(3×50ml)、まとめられたエーテル抽出物を、ブラインで1回洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水する。ろ過後に、ろ液を濃縮する。残渣物を減圧条件下で蒸留すると無色の油が生成する。収率は約70%である。
【0175】
ビス(ベンゾイルオキシメチル)ジアルキルシランの一般的な手順:
容量1000mlの丸底フラスコに、0.04molのビス(クロロメチル)ジアルキルシラン、安息香酸カリウム、12.8g(0.08mol)、および無水DMF、400mlを加える。該混合物を激しく攪拌しながら、100℃まで加熱する。6から8時間後、該混合物を室温まで冷却し、次いで氷冷水、400mlを注入する。該混合物をエーテルで抽出する(3×200ml)。まとめられたエーテル抽出物を、ブラインで1回(50ml)洗浄し、硫酸ナトリウム、50gで脱水する。ろ過後に、ろ液を濃縮し、Kugelrohrを用いて減圧条件下で蒸留する、またはフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製すると無色の油が生成する。H NMRスペクトルデータを表4に示す。上記調製物の収率は、通常約80%である。
【0176】
【表4】

【実施例2】
【0177】
II.プロ触媒組成物
プロ触媒前駆体を、表5に示す重量に従い、機械式攪拌装置および底部ろ過機能を備えたフラスコ内に加える。TiClおよびクロロベンゼンの混合溶媒(容量で1/1)、60mlを該フラスコ内に投入し、次いで2.52mmolの内部電子供与体を添加する。該混合物を所望の反応温度まで加熱し(表6に示す)、そして該液体をろ過する前に、同一の温度で60分間、250rpmで攪拌しながら保つ。混合溶媒60mlを再度添加し、同一の所望の温度で60分間、攪拌しながら反応を維持した後、ろ過する。この方法を1回繰り返す。イソオクタン70mlを用いて得られた固体を周囲温度で洗浄する。ろ過して溶媒を除去した後、該固体をN気流で乾燥する。
【0178】
【表5】

【0179】
MagTi−1(MagTi)は、MgTi(OEt)Clの組成を有する混合型のMg/Ti前駆体である。ME(MagMo)は、マグネシウムエトキシドを表す。米国特許第6,825,146号の実施例2に基づき作製されるSHAC(商標)310は、ベンゾエートを含むプロ触媒(MagTiプロ触媒前駆体およびエチルベンゾエート内部電子供与体から作製されるBenMagプロ触媒前駆体)であり、上記特許の全内容を本明細書において参照により組み込む。化合物0074−45−1は、N流通下、約90℃でEtOHを部分的に除去した後に得られるMgClのEtOH付加物である。得られた各プロ触媒組成物のTi含有量を表6に掲載する。
【0180】
【表6】

【実施例3】
【0181】
III.重合化
重合化は、1−ガロンオートクレーブ内において液体プロピレン中で実施される。条件調節後、反応装置に1375gのプロピレンおよび目標量の水素を加え、62℃にする。外部電子供与体(DCPDMSまたはNPTMS)を、イソオクタン中の0.27−Mトリエチルアルミニウム溶液、鉱物油中の5.0重量%触媒スラリー(下記表のデータに記載の通り)に添加し、重合反応を開始するために反応装置に注入する前に周囲温度で20分間事前混合する。事前に混合された触媒成分を、高圧触媒注入ポンプを用いてイソオクタンと共に反応装置に素早く流し込む。発熱後、温度は67℃に管理される。全重合反応時間は1時間である。触媒性能および得られたポリマー特性を表7〜10に示す。
【0182】
【表7】

【0183】
表7のデータは、シリルジオールエステルIED1を用いて作製されたプロ触媒は、DiBPを内部電子供与体として含むプロ触媒から生成したプロピレン系ポリマーと比較した時に、これよりも顕著に拡大したPDIを有するプロピレン系ポリマーを生成することを示している。
【0184】
【表8】

【0185】
表7および表8のデータを比較すると、ベンゾエートを含む塩化マグネシウム(BenMag)前駆体を用いることにより、シリルジオールエステル(IED1)または単純なジオールエステル(DE)内部供与体の両者について、幅広いPDIを維持しつつ、触媒の活性および立体選択性が向上することが明らかとなる。さらに、DiBP系触媒と比較してIED1およびDE内部供与体の両者に関して、PDIおよび曲げ弾性率の両方において、顕著な改善が見られる。
【0186】
【表9】

【0187】
表9のデータは、シリルジオールエステルの構造を変化させることにより、触媒の性能およびポリマー特性についてDiBP系触媒との相違性を維持しつつ、触媒の活性および立体選択性が改変し得ることを示している。
【0188】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および説明に限定するものではなく、下記特許請求の範囲の範囲内であれば、実施形態の部分、および異なる実施形態の要素の組合せを含め、かかる実施形態の設計変更も含むように特に意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造
【化17】

[式中、
mは、同数の炭素原子を有するヒドロカルビルを表す1から5の整数であり、nは同数の炭素原子を有するヒドロカルビルを表す1から5の整数であり、
〜Rは、同一または異なり、それぞれ、水素、1から20個の炭素原子を有する置換されたヒドロカルビル基、1から20個の炭素原子を有する置換されていないヒドロカルビル基、およびこれらの組合せからなる群から選択され、
Xは、電子供与基である]
のシリルエステル。
【請求項2】
Xが、−C(=O)OR、−O(O=)CR、−(O=)CNHR、−(O=)CNRR’、−NH(O=)CR、−NR’(O=)CR、−C(=O)R、−OR、−NHR、−NR’R、−SR、−OP(OR’)(OR)、−OP(=O)(OR’)(OR)、−S(=O)R、−S(=O)R、−OS(=O)(OR)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のシリルエステル。
【請求項3】
前記シリルエステルが、構造
【化18】

[式中、R〜Rは水素であり、RおよびRは同一または異なり、それぞれ、水素、およびC〜Cのアルキル基からなる群から選択される]
を有する、請求項1に記載のシリルエステル。
【請求項4】
およびRは同一または異なり、それぞれ、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載のシリルエステル。
【請求項5】
およびRは同一であり、メチルおよびエチルからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか1項に記載のシリルエステル。
【請求項6】
がメチルであり、Rがエチルおよびイソブチルからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか1項に記載のシリルエステル。
【請求項7】
マグネシウム部分、チタン部分、および請求項1から6のいずれか1項に記載のシリルエステルを含む内部電子供与体の組合せを含むプロ触媒組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のプロ触媒組成物、および
補助触媒
を含む触媒組成物。
【請求項9】
外部電子供与体、活性制限剤、およびこれらの組合せからなる群から選択されるメンバーを含む、請求項8に記載の触媒組成物。
【請求項10】
オレフィン系ポリマーを製造する方法であって、
重合条件下で少なくとも1つのオレフィンをシリルエステルを含む触媒組成物と接触させるステップと、
オレフィン系ポリマーを形成するステップと
を含む方法。

【公表番号】特表2012−509890(P2012−509890A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537674(P2011−537674)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/065471
【国際公開番号】WO2010/065361
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】