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シリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法
説明

シリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法

【課題】煩雑な製造工程を経る必要があるシリル化されたH型ゼオライトの製造において、簡便な製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】シリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法であって、CHA型構造を有する非H型ゼオライトを、酸性水溶液存在下、シリル化剤と反応させることを特徴とする、シリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
具体的には、水熱合成で得られた非H型のゼオライトを、濃度を調製した酸を含む水溶液を反応溶媒としてシリル化処理を行うことで、構造の崩壊を起こすことなくシリル化されたH型ゼオライトを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロピレンを製造する方法としてはナフサのスチームクラッキング法や減圧軽油の流動接触分解法が一般的に実施されている。しかしスチームクラッキング法ではプロピレンの他にエチレンも大量に生産される上に、プロピレンとエチレンの製造割合を大きく変えることは難しいため、プロピレンとエチレンの需給バランスの変化に対応することは困難であった。そこでエチレンを原料として高い収率でプロピレンを製造する技術が望まれていた。
【0003】
特許文献1には、シリル化されたCHA型ゼオライトを触媒として用い、エチレンを前記触媒と接触させることにより、プロピレンを高い選択率で得られることが提示されている。しかし、ゼオライトのシリル化に際しては、下記のような問題点があった。
ゼオライトを製造する際に、一般的に行なわれる水熱合成反応では、通常、原料を溶解させるためにアルカリ水溶液(以下、単にアルカリということがある)を 用いる。その
ため水熱合成反応後に、得られた生成物を焼成し、ゼオライトを得た時点では、ゼオライトは、アルカリ水溶液由来の金属、(例えばアルカリ金属やアルカリ土類金属等)を、Tサイトのカウンターカチオンに有している。アルミノシリケートの製造時を例に取ると、原料のケイ素原子源を溶解するために、アルカリとしてアルカリ金属を含むもの(例えば水酸化ナトリウム水溶液)を用いた場合、得られるアルミノシリケート中のアルミニウム原子は、用いたアルカリ由来のアルカリ金属をカウンターカチオンとして有する(以下、アルカリ金属型のゼオライトということがある)。
【0004】
前記のアルカリ金属型のゼオライトをシリル化して酸触媒として利用するためには、シリル化処理を実施する前に、イオン交換をして、カウンターカチオンのアルカリ金属を、プロトンに変換する必要がある。
カウンターカチオンを、アルカリ金属からプロトンにイオン交換し、H型(プロトン型ともいうことがある)に変換する方法としては、酸を作用させる方法が想定される。
【0005】
ゼオライトに酸を作用させる方法として、特許文献2では、ゼオライトの結晶格子の欠陥を埋めるための処理方法として、硝酸水溶液を含んだ溶液で処理している。また特許文献3には、ゼオライトの層間距離を広げるため、硝酸水溶液を含んだ溶液で処理している。
しかし、一般的にゼオライトに酸を作用させた場合、Tサイトに入ったアルミニウム等の金属の脱離が起こり、程度によってはその結果構造の崩壊が起こる場合がある。金属の脱離、または構造崩壊が起こった場合、通常はゼオライトの機能、例えば触媒性能や吸着特性が悪化する。そのため、酸を作用させてイオン交換を行なうことは通常行なわない。特許文献2、3の例についても、酸の存在によってアルミニウムが骨格から脱離している(以下、脱Alということがある)可能性が考えられる。そしていずれの場合も構造規定剤を内包する状態でシリル化処理を行っているため、構造が安定に保たれているため、酸処理による構造の崩壊はみられていない。
【0006】
ゼオライトは、特に構造規定剤を内包していない場合には、アルミニウム等の金属が、ゼオライト骨格から脱離することにより、構造の規則性の低下、または構造崩壊を起こすことがある。CHA型ゼオライトにおいても酸で処理することでXRD測定によって得られるパターンにおいて、ピーク強度の減少が見られており、構造規則性が低下していると
考えられる(比較例2、3参照)。
【0007】
そのため、通常H型へのイオン交換は、まずアンモニウム塩でイオン交換し、一旦アンモニウム型に変換したあとで、これを焼成することによってアンモニウムイオンを除去することで行なうのが一般的であり、アルカリ金属型等の非H型のゼオライトから、シリル化されたH型ゼオライトを直接製造する方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/128664号
【特許文献2】特開2008−063195号公報
【特許文献3】特開2008−162846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、シリル化されたH型ゼオライトの製造において、非H型ゼオライトから直接、シリル化し、かつ構造的に安定にゼオライトを得ることができる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は鋭意検討の結果、水熱合成で得られた非H型のゼオライトを、酸を含む水溶液を反応溶媒としてシリル化処理を行ったところ、イオン交換とシリル化が同時に行なわれ、構造の崩壊を起こすことなくシリル化されたH型ゼオライトが得られた。そして、得られたゼオライトにエチレンを接触させプロピレンを製造したところ、プロピレン選択率が上昇し、H型の状態からシリル化したものを使用した場合と同等の結果が得られることを
見出した。
【0011】
すなわち本発明の要旨は、以下に存する。
(1)シリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法であって、CHA型構造を有する非H型ゼオライトを、酸性水溶液存在下、シリル化剤と反応させることを特徴とする、シリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
(2)前記非H型ゼオライトの窒素吸着等温線からBJH法によって得られる細孔径分布において細孔径100Å以上200Å以下の範囲の全細孔容積が、10×10―3ml/g以上である、上記(1)に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
【0012】
(3)前記非H型ゼオライトが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオンのいずれかで置換されたものであることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
(4)前記非H型ゼオライトが、アルミノシリケートである上記(1)〜(3)のいずれか1に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
【0013】
(5)前記酸性水溶液中の酸の濃度が、0.01M以上5M以下、上記(1)〜(4)のいずれか1に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
(6)前記酸性水溶液が硫酸である、上記(1)〜(5)のいずれか1に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
(7)前記非H型ゼオライトのSiO/M比(Mは3価の金属)が、5以上、50以下である、上記(1)〜(6)のいずれか1に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
【0014】
(8)上記(1)〜(7)のいずれか1に記載の製造方法で得られたシリル化されたH
型ゼオライトを触媒として、エチレンを原料としてプロピレンを製造することを特徴とするプロピレンの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、シリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトを製造する際に、水熱合成後のゼオライト(非H型ゼオライト)から直接、かつゼオライトが構造的に安定に製造できる。この方法により、製造工程の煩雑さを解消できる上に、焼成工程も不要となるため、製造工程の大幅な短縮に加え、製造時のエネルギーコストの大幅な削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】比較例3で用いたゼオライトFのXRDパターン(図1(a))と、比較例3で得られたゼオライトGのXRDパターン(図1(b))である。
【図2】参考例1で用いたゼオライトDのXRDパターン(図2(a))と、参考例1で得られたゼオライトHのXRDパターン(図2(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の形態に限定されるものではない。
本発明のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法は、CHA型構造を有する非H型ゼオライトを、酸性水溶液存在下、シリル化剤と反応させることを特徴とする。
【0018】
以下、本発明における構成成分について説明する。
(1)CHA型構造を有するゼオライト
先ず、本発明の方法で製造されるCHA型構造を有するゼオライト(以下これを、「CHA型ゼオライト」ということがある。)の物理化学的性質について説明する。
本発明において、CHA構造とは、International Zeolite Association(以下これを
、「IZA」と略称することがある。)が定めるゼオライトの構造を規定するコードでCHA構造のものを示す。これは、天然に産出するチャバサイト(chabazite)と同等の結
晶構造を有するゼオライトである。
【0019】
CHA型構造を有するゼオライトは、3.8×3.8Åの径を有する酸素8員環からなる3次元細孔を有することを特徴とする構造をとり、その構造はX線回折データにより特徴付けられる。また、そのフレームワーク密度は14.5T/1000Åである。ここで、フレームワーク密度とは、ゼオライトの1000Åあたりの酸素以外の骨格を構成する元素の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。なおフレームワーク密度とゼオライトとの構造の関係はAtlas of Zeolite Framework Types, 6th revised edition, 2007に示されている。
【0020】
本発明におけるCHA型ゼオライトは、通常Siと3価の金属Mの複合酸化物で構成される。金属Mとしては、例えばアルミニウム、ガリウム、鉄、ホウ素、チタン、ジルコニウム、スズ等が挙げられる。これらのうちアルミニウム、ガリウム、ホウ素が好ましく用いられ、より好ましくはアルミニウムであり、ケイ素とアルミニウムで構成されるアルミノシリケートや、さらにリンを含むシリコアルミノフォスフェートが、本発明のCHA型ゼオライトとして好ましく、アルミノシリケートがより好ましい。
【0021】
アルミニウムを含んだものは適度に強い酸強度を持ち、また酸量も幅を持って合成することができ、触媒としての利用では適用できる幅が広くなる。またアルミニウムはクラー
ク数が大きく、豊富に存在する元素であり、安価であるため好ましい。
通常、上記の金属Mの原子源化合物(以下、M原子源ということがある)を、後述する水熱反応における反応混合物に、Si原子源とともに添加することで、結晶化後に骨格にとりこまれる。
【0022】
CHA型ゼオライト中の構成原子の比率は、特に限定されるものではないが、CHA型ゼオライト中に含まれるM23(Mは3価の金属)に対するSiO2のモル比(SiO2/M23)で表した場合、通常5以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上である。また上限は、通常300以下、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。
【0023】
なお、上記CHA型ゼオライト中のM23に対するSiO2のモル比は、生成したゼオ
ライト中のSi原子源がすべてSiO2として含まれ、M原子源がすべてM23として含
まれると仮定して求める値である。
このモル比は、後述する水熱合成における反応混合物中のSi原子源とM原子源の比によって決まるものである。上記のSiO2/M23モル比を持つものを、本明細書におい
て、高シリカゼオライトということがある。高シリカゼオライトは、高度な耐酸性と高い水熱安定性を有する。
【0024】
通常、ゼオライトは、酸性条件や水熱条件下に曝されると骨格を構成する金属がゼオライト骨格から脱離し、脱離する金属が多い場合には骨格が崩壊してしまうことがある。しかし、骨格中の金属原子の量が少ない高シリカゼオライトでは、金属原子が脱離しにくく、脱離した場合にも骨格崩壊に至りにくい。
本発明では酸性溶媒中でシリル化することから、この点で金属量が前記上限超過の場合には、骨格が崩壊する可能性がある。
【0025】
また、高シリカゼオライトは、疎水性となるので、吸着剤として用いた際には、炭化水素等の疎水性の分子の吸着が起こりやすくなる。また触媒として用いた際には、疎水性分子が細孔内に入りやすくなるために、疎水性分子の反応が進行しやすくなる。
ゼオライトの骨格構造内に3価の金属Mが入った際、電荷バランスを補償するために通常、ゼオライトの骨格中に、金属原子に対するカウンターカチオンが存在する。具体的な金属原子のカウンターカチオン種としては、特に限定されるものではないが、ナトリウムやカリウム等;のアルカリ金属カチオン、マグネシウム、カルシウム、バリウム等;のアルカリ土類金属カチオン、アンモニウムイオン、あるいはプロトン等が挙げられる。
上記カウンターカチオンが、プロトンであるものを、以下「H型」といい、それ以外のものを総称して「非H型」という。
【0026】
「H型」として好ましくは、後述するシリル化の際に、ゼオライトのカチオンサイトの当量以上に酸を作用させたものであり、より好ましくは、カウンターカチオンがすべてプロトンであるものである。
「非H型」として好ましくは、ゼオライト骨格中にアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムイオンをカウンターカチオンとして有するものであり、より好ましくは、アルカリ金属カチオン、アンモニウムイオン、さらに好ましくはナトリウムカチオン、カリウムカチオン、アンモニウムイオンをカウンターカチオンとして有するものである。(なお、これらを以下で「ナトリウム型」「カリウム型」「アンモニウム型」ということがある。)
後述する水熱反応により、通常は「非H型」のゼオライトが得られる。本発明は、「非H型」のゼオライトを、シリル化して、シリル化された「H型」のゼオライトを得る。
【0027】
本発明におけるCHA型ゼオライトの粒子径は、特に限定されるものではないが、以下
に記載の測定方法でBJH法により得られる細孔径分布の100Å以上200Å以下の範囲の全細孔容積が、通常10×10−3ml/g以上であり、好ましくは20×10−3ml/g以上であり、更に好ましくは30×10−3ml/g以上である。上限は特になく通常100×10−3ml/g以下である。この値は粒界に起因するものと考えられ、この値が大きいものは粒子径が小さく、小さいものは粒子径が大きいと考えられる。この値が前記下限未満では、粒子径が大きいために、触媒や吸着材として用いた場合に、基質が細孔の内部まで十分に進入せず、ゼオライトの利用率が低下すると考えられ、触媒として反応した際に重量あたりの活性が低下する。また重量あたりの外表面積が小さいために、シリル化が過度に進行して、細孔を閉塞してしまう可能性が考えられる。前記上限超過の場合には粒子径が細かいためにシリル化後のゼオライトと水溶液との分離が困難になることが考えられる。
細孔径の測定方法は特に限定されるものではないが、通常は窒素を吸着ガスとし、液体窒素温度での相対圧で吸着時および脱着時の平衡吸着量を測定することで窒素吸着等温線を測定し、得られた等温線からBJH法にて累積細孔容積を算出する。詳細は実施例にて述べる。
【0028】
<シリル化されたゼオライト>
本発明により得られる、シリル化されたH型のCHA型ゼオライトは、前記非H型ゼオ
ライトをシリル化して得られる。
CHA型ゼオライトの骨格構造、粒子径には変化はなく、基本的にシリル化前と同じである。
【0029】
本発明で得られるシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの外表面酸量は、特に限定されるものではないが、通常0.6mmol/g以下であり、好ましくは0.3mmol/g以下である。前記上限超過では、前記ゼオライトを触媒として用いた場合に、触媒の外表面で形状選択的でない反応が起こり、副生成物の増大を招く傾向がある。
本発明におけるゼオライトの全体の酸量(以下、単に全体酸量ということがある。)とは、ゼオライトの全体の酸量であり、具体的には外表面および細孔内部の酸量の総和をいう。
【0030】
ゼオライトの全体の酸量は、ゼオライトの酸点に選択的に吸着させることができ、且つ細孔内部にも入ることができる物質を、ゼオライトに吸着させ、その吸着量を定量することにより測定することができる。前記の物質は、特に限定されるものではないが、具体的には、アンモニアを用いることができる。
全体酸量は、特に限定されるものではないが、通常4.8mmol/g以下であり、好ましくは2.8mmol/g以下である。また、通常0.15mmol/g以上であり、好ましくは0.30mmol/g以上である。前記上限超過では、前記ゼオライトを炭化水素転化反応の触媒として用いた場合に、コーク付着による失活が速くなる、金属が骨格から抜けやすくなる、酸点当たりの酸強度が弱くなるといった傾向があり、前記下限未満では、酸量が少ないため、触媒としての活性が低下する傾向がある。
【0031】
(2)CHA型ゼオライトの製造方法
本発明のゼオライトの製造方法は、非H型ゼオライトを製造し、その非H型ゼオライトを、酸性水溶液存在下でシリル化してH型ゼオライトを得る。まず非H型ゼオライトの製造方法について述べる。
【0032】
<非H型ゼオライトの製造方法>
本発明における、CHA型構造を有する非H型ゼオライトは、通常、特定の組成に調整された、Si原子源、M原子源、アルカリ水溶液を含む反応混合物を用いた水熱合成により製造することができる。前記反応混合物中には、各種の構造規定剤を添加してもよく、
また 種結晶を添加してもよい。ここで「反応混合物」とは、水熱合成に供するための原
料混合物を意味する。
【0033】
前記反応混合物を、必要に応じて種結晶と共に、反応容器中に密閉して加熱し、ゼオライトを結晶化させる。結晶化したゼオライトには、通常反応混合物中のアルカリ源がカウンターカチオンとなり、非H型ゼオライトとなる。構造規定剤を添加した場合には構造規定剤がカウンターカチオンとして一部存在することがある。
前記Si原子源としては、特に限定されるものではないが、例えば、無定形シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウム、無定形アルミのシリケートゲル、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン等が挙げられる。またSi元素源は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
前記M原子源としては、特に限定されないが、前記3価の金属の水酸化物、酸化物、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩などの各種の金属塩、または金属シリケートゲルなどが用いられる。
例えばM原子がアルミニウム原子の場合、具体的には水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、無定形アルミノシリケートゲル等が挙げられる。なお、M原子源としては、上記1種のみの原子源を用いてもよく、2種以上の原子源を混合して用いてもよい。
【0035】
アルカリ水溶液に用いられるアルカリ源は、特に限定されないが、通常、金属を含有する(以下、アルカリ由来金属という)。アルカリ由来金属としては、通常、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が挙げられ、好ましくは溶解性の高さからアルカリ金属である。
アルカリ金属源としては、例えば、LiOH、NaOH、KOH、CsOH等のアルカリ金属水酸化物が挙げられる。また、アルカリ土類金属源としては、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)等のアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられる。
【0036】
<構造規定剤>
本発明におけるCHA型構造を有するゼオライトの製造においては、必要に応じ反応混合物に構造規定剤を添加して水熱合成を行なうことができる。構造規定剤としては、反応混合物からCHA型ゼオライトの結晶化を促進しうるものであれば特に限定されないが、例えば、N,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムカチオン、N,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウムカチオン、3−キヌクリジナールから誘導されるカチオン、2−exo−アミノノルボルネンから誘導されるカチオン等の脂環式アミンから誘導されるカチオン、N,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウムカチオン等が挙げられ、高シリカゼオライトの結晶化を促進する点で、N,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムカチオン、N,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウムカチオンが好ましい。N,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムカチオンで好ましいのはN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムカチオンであり、N,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウムカチオンで好ましいのはN,N,N−ベンジルトリメチルアンモニウムカチオンである。これらの構造規定剤は、1種類のみ使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
構造規定剤を使用した場合、結晶化が促進される面で有利である。またアルミニウム原子に対するケイ素原子の割合が高くなり、耐酸性、水熱合成反応における安定性が向上したアルミノシリケートを結晶化させることができる点で好ましい。
構造規定剤を使用する場合、構造規定剤とSi原子源の割合は、特に限定されるものではないが、Si原子に対する構造規定剤のモル比として、通常0.001以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、また上限は、通常1以下、好まし
くは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。構造規定剤が、ゼオライト構造のCHAケージ4つに1つの割合で入る程度の量が存在すれば、結晶化が容易になる。
【0038】
前記下限未満では、CHA型ゼオライトの結晶化が促進されないことがあり、前記上限超過では結晶化は容易になるが、生成物の水熱安定性、耐酸性が低下する場合がある。
一方構造規定剤を使用しない場合、コスト面、または水熱合成後の廃液処理の手間が軽減する面で有利である。
【0039】
<種結晶>
本発明におけるCHA型ゼオライトの製造においては、必要に応じ反応混合物に種結晶を添加して水熱合成を行なうことができる。
前記CHA型ゼオライトの製造において使用する種結晶は、結晶化を促進するものであれば種類は問わないが、効率よく結晶化させるためにはCHA型ゼオライト、中でもCHA型アルミノシリケートが好ましい。
種結晶の粒子径は小さいほうが望ましく、必要に応じて粉砕して用いても良い。種結晶の粒子径は、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、また、通常5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下である。ここで、種結晶の粒子径とは1次粒子の値であり、最小直径の値である。
【0040】
種結晶は、適当な溶媒、例えば水に分散させて反応混合物に添加してもよいし、分散させずに添加してもよい。
反応混合物に添加する種結晶の量は特に限定されないが、前述の反応混合物中のSi元素源に対する種結晶の添加量として、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、また、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。
【0041】
種結晶の添加量が前記下限未満では、CHA構造を指向する前躯体が減ることになるので、CHA構造が得られ難くなる。種結晶の添加量が前記上限超過では、生成物の中に含まれる種結晶の割合が増えることで、反応混合物から新たに製造されるCHAが減ることとなり、生産性が低くなる。
【0042】
<水熱合成条件>
前記水熱合成に用いる反応容器は、それ自体既知の水熱合成に用い得るものであれば特に限定されず、オートクレーブなどの耐熱耐圧容器であればよい。
前記水熱合成における反応温度(加熱温度)は特に限定されず、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上であり、また上限は、通常200℃以下、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下である。前記の温度域が、反応混合物を結晶化させる上で好適である。反応温度が低すぎると、CHA型アルミノシリケートが結晶化しないことがある。また、反応温度が高すぎると、CHA型とは異なるタイプのアルミノシリケートが生成することがある。
【0043】
結晶化時の圧力は特に限定されず、密閉容器中に入れた反応混合物を上記温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分であるが、必要に応じて、窒素などの不活性ガスを加えてもよい。
水熱合成後のゼオライトは、反応ゲル中に含まれるアルカリ由来金属イオンが、ゼオライトのカウンターカチオンとして存在するため、通常、アルカリ金属型、アルカリ土類金属型、好ましくはナトリウム型、カリウム型で得られる。
【0044】
またゼオライトが結晶化した後に、種々の方法でゼオライトに金属を担持することもできる。担持する金属源としては例えば、銅、鉄、コバルト、クロム、白金などが挙げられ
る。またこれらの金属源は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
<シリル化>
本発明で得られるCHA型構造を有するH型ゼオライトは、CHA型構造を有する非H型ゼオライトを、酸性水溶液存在下でシリル化剤と反応させ、シリル化を行なうことによって得られる。以下、シリル化工程について述べる。
本発明で得られるCHA型ゼオライトは、通常ゼオライトの外表面をシリル化して得る。ゼオライトの外表面をシリル化することにより、ゼオライト外表面の酸量を低下させることができる。また本発明においては同時に非H型から、H型へのイオン交換も起こる。
【0046】
本発明における酸性水溶液中でのシリル化においては、上記のカウンターカチオンが、一部もしくは大部分がシリル化中にプロトンにイオン交換される。プロトン型にイオン交換されるため、シリル化処理後はプロトン型へのイオン交換を実施しなくても、酸触媒として利用が可能になる。
【0047】
シリル化剤としては特に限定されるものではないが、アルコキシシランとしては具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の4級のアルコキシシラン;トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン等の3級のアルコキシシラン;ジメトキジメチルシシラン、ジエトキシジメチルシラン等の2級アルコキシシラン;メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン等の1級のアルコキシシラン;等、が挙げられる。またクロロシランとしては具体的にはテトラクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン等が使用できる。これらのうちシリル化層を積み重ねるという観点において好ましいのは、アルコキシシランではテトラエトキシシランであり、クロロシランではテトラクロロシランである。シリル化層を単層としたい場合にはアルコキシシランではメトキシトリメチルシラン、クロロシランではトリメチルクロロシランが用いられる。
【0048】
本発明の製造方法において、シリル化は酸性水溶液中で行なう。前記酸性水溶液に用いる酸の種類としては、特に限定されるものではないが、硫酸、硝酸、塩酸、りん酸などの無機酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸、シュウ酸、マロン酸などのジカルボン酸などが使用できる。これらのうち好ましいのは無機酸では硫酸、カルボン酸では酢酸、ジカルボン酸ではシュウ酸である。
【0049】
前記酸性水溶液中の酸の濃度としては、特に限定されるものではないが、通常0.01M以上、好ましくは0.05M以上、より好ましくは0.1M以上であり、通常5M以下であり、好ましくは2M以下であり、より好ましくは1M以下である。酸の濃度が、前記下限未満では、シリル化反応の進行が遅くなるため、処理時間が長くなり、またイオン交換も十分に進行しない場合がある。酸濃度が前記上限超過の場合には骨格を形成する金属が抜け易くなり、場合によっては構造が崩壊してしまう場合がある。
【0050】
前記酸性水溶液中のシリル化剤の濃度としては、特に限定されるものではないが、通常0.01重量%以上で、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上である。また通常25重量%以下であり、好ましくはは20重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。シリル化剤濃度が前記下限未満では、シリル化の進行が遅くなるため、処理時間が長くなる場合があり、濃度が前記上限超過では、シリル化剤同士の縮合が起こりやすくなる傾向がある。
【0051】
ゼオライトに対するシリル化剤の量は特に限定されないが、ゼオライト1モルに対して通常0.001モル以上で、好ましくは0.005モル以上、より好ましくは0.01モル以上である。また通常0.3モル以下であり、好ましくは0.2モル以下であり、より
好ましくは0.1モル以下である。シリル化剤の量が前記下限未満ではシリル化が十分でなく、シリル化の効果が小さくなることがあり、前記上限超過では、シリル化剤が積層して細孔を塞いでしまうことがある。
【0052】
ゼオライトに対する酸性水溶液の量としては、特に制限されるものではないが、ゼオライト1gに対して、酸性水溶液の総量で通常3g以上、好ましくは5g以上、より好ましくは10g以上であり、また通常100g以下、好ましくは80g以下、より好ましくは50g以下である。ゼオライトに対する酸性水溶液の総量が前記下限未満では、溶液の攪拌がされにくくなる傾向があり、一方前記上限超過では、生産性が低くなる場合がある。
【0053】
シリル化温度は、特に限定されるものではないが、常圧においては通常室温から100℃で行われ、さらにシリル化温度を上げるために、耐圧容器内で100℃以上で行うことも可能である。好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上であり、更に好ましくは90℃以上である。また通常200℃以下であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは120℃以下である。温度が前記下限値未満では、シリル化の進行が遅く、またH型へのイオン交換も進行が遅くなる。一方、温度が前記上限超過では、ゼオライト骨格に欠陥が生成してしまい、また骨格中の金属が抜け易くなる場合がある。
【0054】
シリル化反応時の反応圧力は、特に限定されるものではないが、通常大気圧から0.9MPa以下である。好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上であり、また上限は好ましくは0.7MPa以下でありより好ましくは0.5MPa以下で
ある。圧力が前記下限値未満ではシリル化の進行が遅く、またイオン交換も進行が遅くなる傾向がある。一方、圧力が前記上限超過では、ゼオライト骨格に欠陥が生成する場合や、また骨格中の金属が抜け易くなる傾向がある。圧力の調整は温度を調整して水溶液の蒸気圧を変えてもよいし外部からガスを入れて印加してもよい。
【0055】
(3)CHA型を有するH型ゼオライトを用いた触媒
本発明で得られたCHA型構造を有するH型ゼオライトを、触媒として反応に用いる場合は、そのまま触媒として反応に用いても良いし、反応に不活性な物質やバインダーを用いて、造粒・成型して、或いはこれらを混合して反応に用いても良い。なお成型により、前記外表面酸量を全体酸量に対して低下させることも可能である。なお、本発明において得られるゼオライトを触媒として用いる場合、通常はゼオライトが触媒の活性成分となることから、触媒中のゼオライトを指して「触媒活性成分」ということがある。
【0056】
前記反応に不活性な物質やバインダーとしては、アルミナまたはアルミナゾル、シリカ、シリカゾル、石英、およびそれらの混合物等が挙げられる。成型による酸量低下の方法としては、例えば、バインダーとゼオライト表面の酸点を結合させる等の方法が挙げられる。
【0057】
尚、アルミナ等の、酸点を有するバインダーを使用した場合には、前記外表面酸量および全体酸量の測定方法では、ゼオライトの酸量と共にバインダーの酸量も含んだ合計値として測定される。その場合はバインダーの酸量を別法により求め、その値を差し引くことによってバインダー酸量を含まない外表面酸量および全体酸量を求めることが可能である。前記バインダーの酸量を求める方法は特に限定されないが、例えば、27Al−NMRにおいてゼオライト酸点に由来する4配位Alのピーク強度からゼオライト全体酸量を求め、アンモニア昇温脱離法によって求まるゼオライト全体酸量とバインダー酸量の合計値から差し引く方法などが挙げられる。
【0058】
(4)CHA型構造を有する非H型ゼオライトを用いたプロピレンの製造方法
<得られた触媒を用いたプロピレンの製造方法>
次に得られたシリル化されたH型ゼオライトを触媒としてエチレンを触媒と接触させることにより反応させ(以下、エチレン転化反応ということがある)、プロピレンを製造する方法について説明する。(以下、本発明におけるプロピレンの製造方法という。)
【0059】
(a)反応方法
<反応原料>
原料となるエチレンは特に限定されるものではない。例えば、石油供給源から接触分解法または蒸気分解法等により製造されるエチレン、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてフィッシャートロプシュ合成を行うことにより得られるエチレン、エタンの脱水素または酸化脱水素で得られたものプロピレンのメタセシス反応およびホモロゲーション反応により得られるエチレン、MTO(Methanol to Olefin)反応によって得られるエチレン、エタノールの脱水反応から得られるエチレン、メタンの酸化カップリングで得られるエチレン等、公知の各種方法により得られるエチレンを任意に用いることができる。このとき各種製造方法に起因するエチレン以外の化合物を任意に混合した状態のものをそのまま用いてもよいし、精製したエチレンを用いてもよいが、好ましくは精製したエチレンである。
【0060】
尚、ゼオライト内に存在する酸点により、エタノールは容易に脱水されてエチレンに変換される。そのため、反応器に原料としてエタノールを直接導入しても本発明に記載の反応を行うことができる。
また、本発明におけるプロピレンの製造方法でプロピレンを製造する際、反応器出口ガスに含まれるオレフィンをリサイクルしてもよい。
【0061】
リサイクルするオレフィンとしては、通常エチレンだが、その他のオレフィンをリサイクルしても良い。原料となるオレフィンは低級オレフィンが好ましく、分岐鎖オレフィンはその分子の大きさからゼオライト細孔内への進入が困難であるため好ましくない。オレフィンとしては好ましくはエチレン、直鎖ブテンであり、最も好ましくはエチレンである。
【0062】
<反応器>
本発明のプロピレンの製造方法においては、通常エチレンを、反応器中で触媒と接触させ、プロピレンを製造することが好ましい。用いる反応器の形態に特に制限はないが、通常連続式の固定床反応器や流動床反応器が選ばれる。好ましくは流動床反応器である。
なお、流動床反応器に前述の触媒を充填する際、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ等の、反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に制限はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
【0063】
<希釈剤>
前記反応器内には、エチレンの他に、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水、パラフィン類、メタン等の炭化水素類、芳香族化合物類、および、それらの混合物など、反応に不活性な気体を存在させることができるが、この中でも水(水蒸気)が共存しているのが好ましい。
【0064】
(b)反応条件
<基質濃度>
前記反応器に供給する全供給成分中のエチレンの濃度(即ち、基質濃度)に関して特に制限はないが、通常エチレンは全供給成分中、90モル%以下である。好ましくは70モ
ル%以下である。また通常5モル%以上である。基質濃度が前記上限超過では、芳香族化合物やパラフィン類の生成が顕著になり、プロピレンの選択率が低下する傾向がある。基質濃度が前記下限未満では、反応速度が遅くなるため、多量の触媒が必要となり、反応器が大きくなりすぎる傾向がある。
従って、このような基質濃度となるように、必要に応じて以下に記載する希釈剤でエチレンを希釈することが好ましい。
【0065】
<空間速度>
ここで言う空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料であるエチレンの流量(重量/時間)である。ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成型に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。
【0066】
空間速度は、特に制限されるものではないが、0.01Hr−1から500Hr−1の間が好ましく、0.1Hr−1から100Hr−1の間がさらに好ましい。空間速度が高すぎると反応器出口ガス中のエチレンが多くなり、プロピレン収率が低くなるため好ましくない。また、空間速度が低すぎると、パラフィン類等の好ましくない副生成物が生成し、プロピレン選択率が低下するため好ましくない。
【0067】
<反応温度>
反応温度は、エチレンが触媒と接触してプロピレンが製造されれば特に制限されるものではないが、通常約200℃以上、好ましくは300℃以上であり、通常700℃以下、好ましくは600℃以下である。反応温度が前記下限未満では、反応速度が低く、未反応原料が多く残る傾向となり、さらにプロピレンの収率も低下する傾向がある。一方で反応温度が前記上限超過ではプロピレンの収率が著しく低下する場合がある。
【0068】
<反応圧力>
反応圧力は特に制限されるものではないが、通常2MPa(絶対圧、以下同様)以下、好ましくは1MPa以下であり、より好ましくは0.7MPa以下である。また、通常1kPa以上、好ましくは50kPa以上である。反応圧力が前記上限超過ではパラフィン類等の好ましくない副生成物の生成量が増え、プロピレンの選択率が低下する傾向がある。反応圧力が前記下限未満では反応速度が遅くなる傾向がある。
【0069】
<触媒の再生>
反応に供した触媒は再生して使用することができる。具体的にはエチレン転化率が低下した触媒は、各種公知の触媒の再生方法を使用して再生することができる。(例えば特開2011−78962号公報に記載の方法)
再生方法は特に限定されるものではないが、具体的には例えば空気、窒素、水蒸気、水素等を用いて再生することができ、水素を用いて再生することが好ましい。
【0070】
<転化率>
本発明においては、転化率は特に制限されるものではないが、通常エチレンの転化率が20%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、また通常95%以下、好ましくは90%以下となるような条件で反応を行うことが好ましい。
この転化率が前記下限値未満では、未反応のエチレンが多く、プロピレン収率が低いため好ましくないことがある。一方、前記上限値以上では、パラフィン類等の望ましくない副生成物が増え、プロピレン選択率が低下するため好ましくないことがある。
【0071】
流動床反応器で反応を行う場合には、触媒の反応器内の滞留時間と再生器内での滞留時間を調整することにより、好ましい転化率で運転することができる。
なお、転化率は次の式により算出される値である。
エチレン転化率(%)=〔[反応器入口エチレン(mol/hr)−反応器出口エチレン(mol/hr)]/反応器入口エチレン(mol/hr)〕×100
【0072】
<選択率>
本明細における選択率とは、以下の各式により算出される値である。下記の各式において、プロピレン、ブテン、C+、パラフィンまたは芳香族化合物由来カーボン(mol)とは、各成分を構成する炭素原子のモル数を意味する。尚、パラフィンは炭素数1から3のパラフィンの合計、芳香族化合物はベンゼン、トルエン、キシレンの合計、C+は前記芳香族化合物を除いたC以上の炭化水素の合計値である。
【0073】
プロピレン選択率(%)=〔反応器出口プロピレン由来カーボン(mol/hr)/
[反応器出口総カーボン(mol/hr)−反応器出口エチ
レン由来カーボン(mol/hr)]〕×100
ブテン選択率(%)=〔反応器出口ブテン由来カーボン(mol/hr)/[反応器出
口総カーボン(mol/hr)−反応器出口エチレン由来カー
ボン(mol/hr)]〕×100
+選択率(%)=〔反応器出口C+由来カーボン(mol/hr)/[反応器出
総カーボン(mol/hr)−反応器出口エチレン由来カーボ
ン(mol/hr)]〕×100
パラフィン選択率(%)=〔反応器出口パラフィン由来カーボン(mol/hr)/
[反応器出口総カーボン(mol/hr)−反応器出口エチ
レン由来カーボン(mol/hr)]〕×100
芳香族化合物選択率(%)=〔反応器出口芳香族化合物由来カーボン(mol/hr)
/[反応器出口総カーボン(mol/hr)−反応器出口
エチレン由来カーボン(mol/hr)]〕×100
なお本明細における収率とは、前記エチレン転化率と、生成した各成分の選択率の積により求められ、具体的にプロピレン収率は、次の式で表される値である。
プロピレン収率(%)=エチレン転化率(%)×プロピレン選択率(%)/100
【0074】
(c)反応生成物
反応器出口ガス(反応器流出物)としては、反応生成物であるプロピレン、未反応のエチレン、副生成物および希釈剤を含む混合ガスが得られる。該混合ガス中のプロピレン濃度は通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上であり、通常95重量%以下、好ましくは80重量%以下である。
【0075】
この混合ガス中には通常エチレンが含まれるが、この混合ガス中のエチレンはその少なくとも一部を反応器にリサイクルして反応原料として再利用することが好ましい。
なお、副生成物としては炭素数が4以上のオレフィン類およびパラフィン類が挙げられる。
本発明におけるプロピレンの製造方法によって得られたプロピレンを重合することによりポリプロピレンを製造することができる。重合の方法は特に限定されないが、得られたプロピレンを直接重合系の原料として導入して使用することができる。また、その他のプロピレン誘導品の原料としても利用できる。例えばアンモニア酸化によりアクリロニトリル、選択酸化によりアクロレイン、アクリル酸及びアクリル酸エステル、オキソ反応によりノルマルブチルアルコール、2−エチルヘキサノール等のオキソアルコール、選択酸化によりプロピレンオキサイド及びプロピレングリコール等が製造できる。またワッカー反応によりアセトンが製造でき、更にアセトンよりメチルイソブチルケトンを製造できる。アセトンからはまたアセトンシアンヒドリンが製造でき、これは最終的にメチルメタクリレ−トに転換される。プロピレン水和によりイソプロピルアルコ-ルも製造できる。また
プロピレンをベンゼンと反応することにより製造したキュメンを原料にフェノール、ビス
フェノールA、またはポリカーボネ−ト樹脂が製造できる。
【実施例】
【0076】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<細孔分布測定方法>
細孔分布の測定は、ユアサアイオニクス社製 NOVA1200を用いて測定した。10mg程度のゼオライトを200℃で1時間、真空条件下で前処理し吸着物の脱離を行った後に、窒素ガスを吸着ガスとして等温線測定を行った。液体窒素温度での相対圧で吸着時および脱着時に平衡吸着量を測定することで吸着等温線を取得した。吸着量測定時の相対圧力領域は0.02から0.99であり、その間を0.02から0.1刻みで相対圧力を変化させる。吸着量の変化が大きい領域では相対圧の変化量を小さくして測定する。
得られた等温線からBJH法にて累積細孔容積を算出した。なおBJH法とは、相対圧と、水蒸気の吸着等温線の関係から細孔分布を求める測定法の一つである。
【0077】
<XRD測定>
XRD測定は以下の条件に基づき行った。
・装置名:オランダPANalytical社製X’PertPro MPD
・測定条件 X線出力(CuKα):45kV、40mA
走査軸:θ/2θ
走査範囲(2θ):5.0−70.0°
測定モード:Continuous
読込幅:0.05°
計数時間:99.7sec
自動可変スリット(Automatic−DS):1mm(照射幅)
横発散マスク:10mm(照射幅)
【0078】
(合成例1)
25重量%のN,N,N-トリメチル-1-アダマンタンアンモニウムハイドロキサイド水溶液
(N,N,n-trimethyl-1-adamantammonium hydroxide)水溶液を47.3gと水酸化ナトリ
ウム4.5gと水408gを混合し、これに水酸化アルミニウム(酸化アルミニウム換算で50〜57重量%換算)4.3gを加え攪拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカを33.6g加えて十分攪拌した。
【0079】
さらに加えたフュームドシリカの重量に対して2重量%のCHA型ゼオライトを種結晶として加えてさらに攪拌した。得られたゲルをオートクレーブに仕込み、攪拌条件下で160℃、42時間加熱した。生成物をろ過、水洗した後、100℃で乾燥させた。
乾燥後に、空気雰囲気下、580℃まで6時間で昇温し、その後580℃で6時間保つことによって、焼成し、ナトリウム型のゼオライトAを得た。
【0080】
前記で得られたナトリウム型ゼオライトAを用いて、更にH型のゼオライトを製造した。
ゼオライトAを、1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を行った後、ろ過を行い、さらに1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間加熱しイオン交換を行った。その後、再びろ過を行い、100℃で乾燥した後、空気雰囲気下、500℃まで6時間で昇温し、その後6時間保持することでH型のゼオライトBを得た。
【0081】
(合成例2)
25重量%のN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムハイドロキサイド水溶液(N,N,n-trimethyl-1-adamantammonium hydroxide)水溶液を5.9kgと水酸
化ナトリウム0.56gと水51kgを混合し、これに水酸化アルミニウム(酸化アルミニウム換算で50〜57重量%換算)を0.53kgを加え攪拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカを4.2kg加えて十分攪拌した。
【0082】
さらに加えたフュームドシリカの重量に対して2重量%のCHA型ゼオライトを種結晶として加えてさらに攪拌した。得られたゲルをオートクレーブに仕込み、攪拌条件下で160℃、48時間加熱した。生成物を遠心分離、水洗した後、100℃で乾燥させた。
乾燥後に、空気雰囲気下、580度で焼成し、ナトリウム型のゼオライトを得た。このゼオライトをゼオライトCとした。
【0083】
上記で得られたゼオライトはCHA型のナトリウム型のアルミノシリケートであり、SiO/Al比は16(モル比)である。
得られたナトリウム型ゼオライトCを用いて、さらにH型ゼオライトを製造した。
ゼオライトCを1Mの硝酸アンモニウム水溶液を用いて、80℃で1時間加熱し、イオン交換を行った。イオン交換後、ろ過を行い、さらに1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を行った。その後、再びろ過を行い、100℃で乾燥した後、空気雰囲気下、500℃まで6時間で昇温し、その後6時間保持することでH型のゼオライトDを得た。
【0084】
(合成例3)
25重量%のN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムハイドロキサイド水溶液(N,N,n-trimethyl-1-adamantammonium hydroxide)水溶液を47.3gと水酸
化ナトリウム4.5gと水408gを混合し、これに水酸化アルミニウム(酸化アルミニウム換算で50〜57重量%換算)7.2gを加え攪拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカを33.6g加えて十分攪拌した。
【0085】
さらに加えたフュームドシリカの重量に対して2重量%のCHA型ゼオライトを種結晶として加えてさらに攪拌した。得られたゲルをオートクレーブに仕込み、攪拌条件下で160℃、42時間加熱した。生成物をろ過、水洗した後、100℃で乾燥させた。
乾燥後に、空気雰囲気下、580度で焼成し、ナトリウム型のゼオライトEを得た。
上記で得られたゼオライトはCHA型のナトリウム型のアルミノシリケートであり、SiO/Al比は14(モル比)である。
【0086】
得られたナトリウム型ゼオライトEを用いて、更にH型ゼオライトを製造した。
前記ゼオライトEを1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を行った後、ろ過を行い、さらに1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を行った。その後、再びろ過を行い、100℃で乾燥した後、空気雰囲気下、500℃まで6時間で昇温し、その後6時間保つことでH型のゼオライトFを得た。
【0087】
(実施例1)
合成例1で得られたゼオライトAに対して、硫酸溶液中でシリル化を行った。ゼオライトA0.5gに対して溶媒の0.1M硫酸を25g、シリル化剤のテトラエトキシシラン(以下、TEOSと略すことがある。)を0.15g加えて、オートクレーブに仕込み、100℃で20時間加熱処理した。処理後、ろ過によって固液分離し、得られたゼオライトを100℃で乾燥した。こうして得られた触媒を触媒1とした。
【0088】
得られた触媒1を用いてエチレンの転化反応を行った。常圧固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英製反応管に触媒100mgと石英砂400mgの混合物を充填した。エチレン30体積%、窒素70体積%の混合ガスをエチレンの重量空間速度が0.36Hr−1になるように反応器に供給し、400℃、0.1MPaで反応を行った。反応開始
後ガスクロマトグラフィで生成物の分析を行った。またゼオライトの細孔容量を、前記測定方法に基づいて測定した。結果を表1に示す。反応成績については反応開始後3.0時間後のデータを示した。
【0089】
(実施例2)
処理時間を6時間に短縮した以外は実施例1に記載の触媒の調整方法と同様にシリル化、ろ過、乾燥を行った。こうして得られた触媒を触媒2とした。
触媒2を用いて、実施例1と同条件でエチレン転化反応を行なった。結果を表1に示す。反応成績については、実施例1で得られたエチレンの転化率と同等の転化率が得られた時点で比較するため、反応開始後3.2時間後のデータを示した。
【0090】
(実施例3)
硫酸量、テトラエトキシシラン量を半分にした以外は実施例1に記載の触媒の調整方法と同様にシリル化、ろ過、乾燥を行った。こうして得られた触媒を触媒3とした。
触媒3を用いて、実施例1と同条件でエチレン転化反応を行なった。結果を表1に示す。反応成績については、実施例1で得られたエチレンの転化率と同等の転化率が得られた時点で比較するため、反応開始後3.4時間後のデータを示した。
【0091】
(比較例1)
ゼオライトAをゼオライトBに変更した以外は実施例1に記載の調整方法と同様にシリル化、ろ過、乾燥を行った。こうして得られた触媒を触媒4とした。
触媒4を用いて、実施例1と同条件でエチレン転化反応を行なった。結果を表1に示す。反応成績については、実施例1で得られたエチレンの転化率と同等の転化率が得られた時点で比較するため、反応開始後3.0時間後のデータを示した。
【0092】
(比較例2)
ゼオライトBに対して硫酸処理を行った。ゼオライトB 0.5gに対して0.1M硫酸を25g加えて、オートクレーブに仕込み、100℃で20時間加熱処理した。処理後、ろ過によって固液分離し、得られたゼオライトを100℃で乾燥した。こうして得られた触媒を触媒5とした。
【0093】
触媒5を用いて、実施例1と同条件でエチレン転化反応を行なった。結果を表1に示す。反応成績については、実施例1で得られたエチレンの転化率と同等の転化率が得られた時点で比較するため、反応開始後4.0時間後のデータを示した。
【0094】
(実施例4)
合成例2で得られたゼオライトCに対して、硫酸溶液中でシリル化を行った。ゼオライトC、1gに対して溶媒の1M硫酸を50g、シリル化剤のテトラエトキシシランを0.3g加えて、オートクレーブに仕込み、100℃で20時間加熱処理した。処理後、ろ過によって固液分離し、得られたゼオライトを100℃で乾燥した。こうして得られた触媒を触媒6とした。
【0095】
触媒6を用いてエチレンの転化反応を行った。常圧固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英製反応管に触媒100mgと石英砂400mgの混合物を充填した。エチレン30体積%、窒素70体積%の混合ガスをエチレンの重量空間速度が0.36Hr−1になるように反応器に供給し、400℃、0.1MPaで反応を行った。反応開始後2.1時間後にガスクロマトグラフィで生成物の分析を行った。またゼオライトの細孔容量を、前記測定方法に基づいて測定した。結果を表1に示す。
【0096】
(実施例5)
硫酸濃度を0.5Mとした以外は実施例4と同様にシリル化、ろ過、乾燥を行った。こうして得られた触媒を触媒7とした。
触媒7を用いて、実施例4と同条件でエチレン転化反応を行なった。反応開始後2.1時間後にガスクロマトグラフィで生成物の分析を行った。結果を表1に示す。
【0097】
(実施例6)
硫酸濃度を0.25Mとした以外は実施例4と同様にシリル化、ろ過、乾燥を行った。こうして得られた触媒を触媒8とした。
触媒8を用いて、実施例5と同条件でエチレン転化反応を行なった。反応開始後2.1時間後にガスクロマトグラフィで生成物の分析を行った。結果を表1に示す。
【0098】
(実施例7)
合成例3で得られたゼオライトCに対して、硫酸溶液中でシリル化を行った。ゼオライトC 0.5gに対して溶媒の0.1M硫酸を25g、シリル化剤のテトラエトキシシラ
ンを0.15g加えて、オートクレーブに仕込み、100℃で20時間加熱処理した。処理後、ろ過によって固液分離し、得られたゼオライトを100℃で乾燥した。こうして得られた触媒を触媒9とした。
【0099】
触媒9を用いて、実施例4と同条件でエチレン転化反応を行なった。反応開始後1.4時間後にガスクロマトグラフィで生成物の分析を行った。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
表1記載の実施例1〜3から、ナトリウム(Na)型であるゼオライトAを硫酸存在下でシリル化処理した触媒1〜3で、エチレンを基質にプロピレンを製造する反応を行うと、高い選択率が得られた。実施例1〜3は硫酸中でシリル化処理することにより、イオン交換反応と外表面のシリル化が一連の反応で起こるため、目的とする外表面がシリル化された触媒が得られたと考えられる。外表面をシリル化処理することによって被毒したために、形状選択性の発揮されない、外表面の反応が抑制され、プロピレンよりも大きな生成
物の生成量が低下し、プロピレン選択率が向上したものと考えられる。
【0102】
実施例1〜3と、比較例1との比較から、一旦H型ゼオライトを製造した後にシリル化処理をしたものと同様の成績であり、本発明の製造方法により、H型への変換工程であるイオン交換および焼成を減ることなく、同等の性能の触媒が得られることが分かる。これにより、H型への変換工程にかかる時間およびエネルギーが削減できることが分かる。
また、実施例4〜6から、ナトリウム(Na)型であるゼオライトCを硫酸存在下でシリル化処理する際に、幅広い酸濃度でシリル化処理の効果が得られることが確認された。シリル化処理することで、シリル化処理をしないゼオライトに比べ、実施例1〜3と同様に高いプロピレン選択率が得られた。
さらに、実施例7から、細孔容積の小さいゼオライトCにおいても硫酸存在下でシリル化処理することができることが示された。
【0103】
<構造保持性の確認>
次に硫酸シリル化の構造の保持性についての例を示す。
(比較例3)
H型ゼオライトFに対して硫酸処理を行った。ゼオライトF 1gに対して0.1M硫酸を50g加えて、オートクレーブに仕込み、100℃で20時間加熱処理した。処理後、ろ過によって固液分離し、得られたゼオライトを100℃で乾燥した。こうして得られたゼオライトをゼオライトGとし、ゼオライトFと合わせて前記の方法でXRD測定を行った。
【0104】
XRD測定結果を元に、2θ=29°のピーク強度を、処理前後で比較することにより、ゼオライトの構造破壊の程度を確認した。その結果を表2に示す。またそれぞれのXRDパターンを、図1に示した。
なおNa型とH型の間では、XRD測定の結果に差異はなく、またNa型をイオン交換してH型に変換した際もXRD測定の結果に差異はないため、添加する酸濃度を合わせるため、一旦H型にしたものを用いて酸がゼオライトに与える影響を確認した。
【0105】
(参考例1)
H型ゼオライトDに対して、硫酸溶液中でシリル化を行った。ゼオライトD 0.5g
に対して溶媒の0.1M硫酸を25g、シリル化剤のテトラエトキシシランを0.15g加えて、オートクレーブに仕込み、100℃で20時間加熱処理した。処理後、ろ過によって固液分離し、得られたゼオライトを100℃で乾燥した。こうして得られたゼオライトをゼオライトHとし、ゼオライトDと合わせてXRD測定を行った。
【0106】
XRDの測定結果から、比較例3と同様の方法により、ゼオライトの構造破壊の程度を確認した。結果を表2に示した。またそれぞれのXRDパターンを図2に示した。
【0107】
【表2】

【0108】
比較例3から、2θ=29°のピーク強度が硫酸処理後に64%に低下したことがわかる。ここから、ゼオライトを酸性条件におくと、構造崩壊を招くことがわかる。
一方、参考例1からは、H型のゼオライトを本発明のシリル化方法によってシリル化した場合でも、ゼオライトの構造が維持されていることがわかった。一般的には、同じ酸の量で同じ重量のゼオライトを処理した場合、H型を処理する方がより過酷な条件で処理す
ることになり壊れやすい傾向にあるが、構造は維持されていた。
【0109】
比較例2から、H型であるゼオライトBを硫酸処理した触媒5で同反応を行うと、プロピレン選択率が低下したことがわかる。これは硫酸処理により、ゼオライトの構造破壊が起こり、触媒としての性能が低下したためと考えられる。比較例2と実施例1〜3の比較によって、シリル化剤が共存すれば、構造破壊は起こらず、かつナトリウム(Na)型から直接、シリル化されたH型に変換できたことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明により、シリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトを簡便な方法で製造する方法を提供できる。またこの方法を用いて得られたH型ゼオライトを用いて、エチレンからプロピレンを製造することにより、効率よくプロピレンを製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法であって、
CHA型構造を有する非H型ゼオライトを、酸性水溶液存在下、シリル化剤と反応させることを特徴とする、シリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
【請求項2】
前記非H型ゼオライトの窒素吸着等温線からBJH法によって得られる細孔径分布において細孔径100Å以上200Å以下の範囲の全細孔容積が、10×10―3ml/g以上である、請求項1に記載のシリル化されたCHA構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
【請求項3】
前記非H型ゼオライトが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオンのいずれかで置換されたものであることを特徴とする、請求項1または2に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
【請求項4】
前記非H型ゼオライトが、アルミノシリケートである請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
【請求項5】
前記酸性水溶液中の酸の濃度が、0.01M以上5M以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
【請求項6】
前記酸性水溶液が硫酸である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
【請求項7】
前記非H型ゼオライトのSiO/M比が、5以上、50以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリル化されたCHA型構造を有するH型ゼオライトの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法で得られたシリル化されたH型ゼオライトを触媒として、エチレンを原料としてプロピレンを製造することを特徴とするプロピレンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−63865(P2013−63865A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202223(P2011−202223)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】