説明

シリル基を有するヒドロキシル化合物をベースとするエマルジョン

本発明は、シリル基を有するヒドロキシル化合物を含むエマルジョン、その製造および使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリル基を有するヒドロキシル化合物を含むエマルジョン、ならびに前記エマルジョンの製造および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の意味で用いられる、シリル基を有するヒドロキシル化合物は、独国特許出願第10 2008 000360.3号(本明細書の優先日の時点で未公開)の明細書に記載の方法にしたがって、複金属シアン化物触媒上でエポキシ官能性シランをアルコキシ化することによって製造可能な全ての反応生成物を意味し;特に、これらの化合物は、シロキサン基も有し得る。これらの生成物は、以後、式1のシリルポリエーテルと呼ばれる。本発明の趣旨でのシリル基は、異なるまたは同一の有機またはオキシ有機(oxyorganic)基によって特徴付けられる。
【化1】

【0003】
末端反応性アルコキシシリル基を有するプレポリマー系、例えば、アルコキシシラン末端の、湿気硬化型一液ポリウレタンが、工業および建築の分野ならびに自動車産業における、塗料、さらには弾性封止剤および接着剤の製造によく使用されている。このようなプレポリマーの市販の例は、カネカ製のMSポリマー、またはWacker製のGeniosilsである。したがって、シラン重縮合によって架橋するアルコキシシラン官能性ポリウレタンが十分に確立されている。この主題の概説論文は、例えば、「Adhesives Age」4/1995の30ページ以降(Ta-Min Feng、B.A. Waldman著)に見られる。
【0004】
これらの種の末端アルコキシシラン官能化ポリウレタンは、米国特許第3,627,722号または同第3,632,557号にしたがって、例えば、ポリエーテルポリオールを過剰のポリイソシアネートと反応させてNCO含有プレポリマーを生じさせ、次にそれを今度はアミノ官能性アルコキシシランとさらに反応させることによって、製造され得る。得られるアルコキシシラン官能性プレポリマーは、尿素基およびウレタン基を高濃度で含有し、これは生成物の部分への高い粘度をもたらす。有機主鎖は、ポリエーテルに加えて、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルエステル、エチレン−オレフィンコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマーまたはポリオレフィンから構成され得る。この種のプレポリマーは、欧州特許第0 372 561号、国際公開第00/37533号または米国特許第6,207,766号を含む参照文献に記載されている。しかしながら、さらに、国際公開第96/34030号を含む参照文献に記載される、主鎖が全体的にまたは少なくとも部分的にオルガノシロキサンからなる広い範囲の系もある。記載されているプレポリマーの全ての欠点は、α,ω位のみがシリル基で終端したプレポリマーの官能基(functionalization)の密度が低いことである。
【0005】
この欠点は、独国特許出願第10 2008 000360.3号の未公開の明細書に記載される、シリル基を有する新しいヒドロキシル化合物の使用、あるいは複金属シアン化物(DMC)触媒上でエポキシド官能性アルコキシシランをアルコキシ化することによって得られる、アルコキシシリル基を有するポリエーテルアルコールの使用によって克服することができる。独国特許出願第10 2008 044373.5号の未公開の明細書に記載される、アルコキシシリル基を有するポリエーテルシロキサンは、同様に、複金属シアン化物触媒によって製造され得る。この2つの明細書の全体が、本開示の一部および主題として本明細書に援用される。ポリエーテル鎖のオキシアルキレン単位の配列内のアルコキシシラン官能基だけでなく、それらの末端に新しい複数のアルコキシシラン官能基も有し得るこれらの新しいポリエーテル(シロキサン)構造により、所望に応じて、すなわち、特定の性能目標に合わせて、標的プレポリマー中のアンカー基の密度を調節することが可能になる。さらに、これらの構造は、さらなる官能化に利用可能な、遊離したままのヒドロキシル基を含有する。
【0006】
プレポリマーが水不溶性である場合、揮発性有機溶媒を用いてプレポリマーの粘度を低下させることができる。このような溶媒は、多くの場合、VOC(揮発性有機化合物)という略語によって呼ばれる。多くの有機溶媒では、健康に対する悪影響が見つかっているか、あるいは少なくとも考えられている。その結果、VOC放散の低減を目的として、環境および健康を保護するための一連の法規制が公表されている。1999年の欧州VOC指令が、例えば、VOC放散を低減するための法定用件を規定している(指令1999/13/ECおよび2004/42/EC)。
【0007】
有機溶媒の代替として、1つの選択肢は、水性エマルジョンの形態の水不溶性プレポリマーを使用することである。水の使用は、環境に優しい。実用の観点から、水の使用は、実際、有機溶媒の使用より好ましい。その理由は、硬化の前に材料を塗布する際の、除去、考えられる修正または補充を、水を用いて、および/または水性界面活性剤溶液を用いて行うことができるためである。しかしながら、記載されているプレポリマーは、構造に起因する加水分解不安定性の性質を有する。したがって、水性エマルジョンの形態のプレポリマーは使用しにくい。乳化では、乳化剤と呼ばれるものおよびせん断力を用いて物質が水中で乳化される。この種のエマルジョンの粘度およびレオロジープロファイルは、主に、連続した水相のレオロジーによって決定される。塗布の面積に応じて、極低い粘度のエマルジョンから高い粘度のペーストまで、レオロジープロファイルを添加剤によって変えることができる。
【0008】
一般的に言えば、両親媒性の分子および粒子の両方が、乳化剤として考えられる。粒子によって安定化されるエマルジョンは、「ピッカリング」エマルジョンとも呼ばれる(S.U.Pickering:「Emulsions」、J. Chem. Soc. 1907, vol. 91, pp.2001-2021)。このような乳化剤は、水−プレポリマー界面に添加することで、エマルジョン液滴の凝集、ひいてはエマルジョンの分解を防ぐ。プレポリマー自体が両親媒性を有している場合、さらなる乳化剤を添加する必要がない場合があり得る。その場合、当業者は、系を自己乳化系と呼ぶ。
【0009】
したがって、本発明の目的は、独国特許出願第10 2008 000360.3号および独国特許出願第10 2008 044373.5号の明細書に記載されるシリル含有プレポリマーから、水中で安定した耐加水分解性のエマルジョンを製造することである。
【0010】
シリル化されたプレポリマーのエマルジョンは、多くの明細書の主題である。独国特許出願第2558653号の明細書において、Changが、シリル基を有する自己乳化ポリウレタンのエマルジョン、および表面のコーティングのためのそれらの使用を記載している。ポリウレタンは、ポリオールと過剰のポリイソシアネートとの反応によって製造される。第2の工程において、過剰のイソシアネートが、反応性シランと部分的に反応される。このポリマーをせん断しながら水に導入すると安定したエマルジョンが得られる。米国特許第4,376,149号の明細書において、Martinが、シリル化されたポリエーテルとOH−シロキサンとの乳化された混合物、および織物の塗料におけるそれらの使用も記載している。清水および吉田が、日本特許出願第1318066号の明細書において、コロイド状シリカをさらに含有し得るシリル化されたポリエーテルの水性エマルジョンを記載している。シリル化されたポリエーテルは、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルを、環状または芳香族ジアミンによってトリアルコキシシリルグリシジルエーテルと連結させることによって製造される。Klauck、Maier、およびBerthauerが、独国特許出願第4215648号の明細書において、陽イオン変性アルコキシシラン末端ポリウレタンの溶液またはエマルジョンをベースとする保存に安定した接触接着剤を記載している。独国特許出願第19955825号の明細書において、Majolo、Klauck、Klein、Ernst、Schilling、およびLothが、少なくとも60%のポリマー質量分率を有するシリル官能化ポリマーのエマルジョンを記載している。同様に、1つはシリル基を有し、1つはシリル基を有さない少なくとも2種の異なるポリマーの混合物のエマルジョンが記載されている。記載されているシリル官能化ポリマーのエマルジョンは、乳化されていないポリマーと比較して向上した保存期間を示すことが主張されている。Altesらは、米国特許第6,713,558号および同第6,831,128号の明細書において、シリル化されたエラストマーの水で希釈可能なエマルジョンおよびそれらの製造を記載している。エマルジョンは、5μm未満の液滴径で、少なくとも75%の質量エラストマー分率を有する。Hattemer、Unger、Ferencz、Bachon、Bathelt、およびSchmidtが、国際公開第2006/122684号の明細書において、α−シリル末端プレポリマーのエマルジョンならびにそれらの製造および使用を記載している。Wu、You、およびHuangが、国際公開第2007/072189号の明細書において、シリル基を有するプレポリマーのエマルジョンを記載している。このエマルジョンは、ナノシリカの添加によって安定化される。従来の乳化剤の添加は、任意であり、場合によってはエマルジョンの安定性をさらに向上させると言われている。国際公開第2008/090458号の明細書において、Wu、You、およびHuangが、シリル基を有するプレポリマーのエマルジョンを記載している。このエマルジョンは、モノマーシランの添加によって安定化される。また、ナノシリカおよび従来の乳化剤の添加は両方とも任意であり、場合によってはエマルジョンの安定性をさらに向上させると言われている。好適な乳化剤の選択、および特定の用途に適した安定したエマルジョンの製造は、決してささいなことではなく、当業者にとっても大きな難題である。特に、シリル基を含有するプレポリマーの加水分解不安定性は、安定したエマルジョン系の予測可能性に対する懸念の原因である。
【発明の概要】
【0011】
独国特許出願第10 2008 000360.3号および独国特許出願第10 2008 044373.5号の明細書に記載のプレポリマーの想定される構造に関連する加水分解感受性にかかわらず、今般、プレポリマーが安定したエマルジョンに転化可能であることが意外にも発見された。
【0012】
したがって、本発明は、独国特許出願第10 2008 000360.3号の明細書に記載されるような、シリル基を有するヒドロキシル化合物、および/または独国特許出願第10 2008 044373.5号の明細書に記載されるような、シリル官能化ポリエーテルシロキサン(アルコキシシリル官能性シリコーンポリエーテルまたはアルコキシシリル官能性ポリエーテル−シロキサンコポリマーとも呼ばれる)のいずれかをベースとする安定した耐加水分解性水性エマルジョンを提供する。
【0013】
したがって、本発明の主題は、少なくとも1つの非末端シリル官能基、好ましくは2つ以上の非末端シリル官能基、より好ましくは2つ以上の非末端シリル官能基と同時に少なくとも1つの末端シリル官能基も分子中に有するシリル官能化ポリエーテルを含む安定した耐加水分解性水性エマルジョンである。より特定すれば、それらは、エポキシド基に対して反応性である、1つの鎖の末端につき2つ以上のアルコキシシリル官能基を含有する。
【0014】
エマルジョンは、室温で1ヶ月間保存した後が好ましいが、室温で少なくとも1週間保存した後、肉眼で見える分解の兆候を示さない場合、エマルジョンは安定と称される。本明細書において、エマルジョンの分解は、エマルジョンが肉眼で見える油相と水相とに分離することと定義される。室温で1ヶ月間保存した後、室温で少なくとも1週間保存した後、エマルジョン中の遊離アルコールの量が、10重量%以下の乳化されたアルコキシ基の解離に相当する場合、エマルジョンは加水分解に対して安定と称される。
【0015】
水および/またはポリエーテル(シロキサン)の最適質量分率は、用途に応じて決まる。特定の使用分野に向けたポリエーテル(シロキサン)の最適質量分率を見つけることは当業者に委ねられる。しかしながら、当業者にとって、このようなエマルジョンにおける水の好ましい分率が、10重量%〜97重量%、より好ましくは20重量%〜90重量%、より特定すれば30重量%超であることは周知の考えである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】式(1)の化合物を示す。
【図2】式(3a)の化合物を示す。
【図3】式(5a)の化合物を示す。
【図4】実施例2のエマルジョンの流動曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
独国特許出願第10 2008 000360.3号の明細書に記載のシリル官能化ポリエーテルは、アルコキシシリル基で置換された鎖からなり、これらの鎖は、反応成分の開環を伴う反応によってポリマー鎖に挿入されるフラグメントに対応する、式(1)のフラグメントd〜jを選択することによって、特に高度に官能化され、このため様々な種類の応用分野に合わせて調整することができる。
【化2】

式中、
aは、1〜3の整数、好ましくは3であり、
bは、0〜2、好ましくは0〜1の整数、より好ましくは0であり、
aおよびbの合計は3であり、
cは、0〜22、好ましくは0〜6の整数、より好ましくは1または3であり、
dは、1〜1000、好ましくは1より大きく100以下、より好ましくは1より大きく20以下、より特定すれば1より大きく10以下、または10より大きく100以下の整数であり、
eは、0〜10000、好ましくは0〜1000、より好ましくは0〜300、より特定すれば0〜100の整数であり、
fは、0〜1000、好ましくは0〜100、より好ましくは0〜50、より特定すれば0〜30の整数であり、
gは、0〜1000、好ましくは0〜200、より好ましくは0〜100、より特定すれば0〜70の整数であり、
h、i、およびjは、0〜500、好ましくは0〜300、より好ましくは0〜200、より特定すれば0〜100の整数であり、
ただし、指数d〜jを有するフラグメントは、互いに自由に順序を変えることができ、すなわち、ポリエーテル鎖内の配列において互いに交換可能であり、
nは、2〜8の整数であり、
Rは、直鎖状または分枝状の、飽和、単価不飽和または多価不飽和の、1〜20個、より特定すれば1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、あるいは1〜20個の炭素原子を有するハロアルキル基から選択される1つ以上の同一または異なる基を示す。Rは、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、およびsec−ブチル基、より特定すればエチルまたはメチル基に対応し、
は、好ましくは酸素原子を介して結合される、飽和または不飽和の、場合により分枝状の基であるか、あるいはアルコキシ、アリールアルコキシまたはアルキルアリールアルコキシ基の種類のポリエーテル基を示し、ここで、炭素鎖は、酸素原子によって介在されていてもよく、あるいはRは、場合により単縮合または多縮合した芳香族アリールオキシ基であるか、あるいはケイ素含有化合物、より特定すればシロキサン基またはポリ(シロキサン)基であり、アルキル基および/またはアリール基および/またはポリエーテルで置換されていてもよく、
またはR、さらにまたRまたはRは、同一にかあるいは互いに独立して、H、あるいは飽和または場合により単価不飽和または多価不飽和の、さらに場合により置換された、場合により一価または多価の、炭化水素基であり、基RまたはRについては、それらが一価の炭化水素基である場合がある。
炭化水素基は、フラグメントYを介して脂環式に架橋されていてもよく;Yは存在しなくてもよく、あるいは1つまたは2つのメチレン単位を有するメチレン架橋であってもよく、Yが存在しない場合、RまたはRは、互いに独立して、1〜20個、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の基であり、より好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはブチル、ビニル、アリル基またはフェニル基である。好ましくは、2つの基RまたはRのうちの少なくとも1つが水素である。R−Rは、−CHCHCHCH−基であってもよく、したがってYは−(CHCH−)−基である。炭化水素基RおよびRは同様にさらに置換されてもよく、ハロゲン、ヒドロキシル基またはグリシジルオキシプロピル基などの官能基を有していてもよく、
は、1〜24個の炭素原子の直鎖状または分枝状のアルキル基、あるいは場合により同様にアルキル基を有していてもよい芳香族または脂環式基に対応し、
およびRは、互いに独立して、代替的に水素であるかあるいはアルキル、アルコキシ、アリールまたはアラルキル基であって、これらの基は、開環重合によって共重合して、アルコキシシラン基を含有する架橋性ポリエーテルエステルを提供し、
、R10、R11、およびR12は、互いに独立して、代替的に水素であるかあるいはアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールまたはアラルキル基である。炭化水素基は、フラグメントZを介して脂環式または芳香族式に架橋されてもよく、Zが、二価のアルキレンまたはアルケニレン基のいずれかであってもよい。
【0018】
指数d〜jのフラグメントだけでなく、置換基Rの、場合により存在するポリオキシアルキレン鎖の様々なモノマー単位は、互いにブロック状の構成を有していてもよく、あるいは統計的分布にしたがっていてもよい。したがって、本明細書に示される式中で再現される指数、および示される指数の値の範囲は、実際に存在する構造および/またはその混合物の、起こり得る統計的分布の平均値として理解されるべきである。これは、例えば式(1)などの、それ自体が正確に再現される構造式にも当てはまる。
【0019】
29Si NMRおよびGPC分析によって示されるように、プロセスに関連して鎖の末端のOH基が存在すると、DMC触媒による製造の際だけでなく、例えば、下流の手順工程においてもケイ素原子へのエステル交換反応の可能性が伴う。このような反応において、正式には(formally)、酸素原子を介してケイ素に結合するアルキル基Rは、長鎖変性アルコキシシリルポリマー基で置換される。二峰性および多峰性のGPC曲線は、アルコキシ化生成物が、式(1)に示されるようなエステル交換反応を行っていない化学種だけでなく、2倍、場合によっては3倍、またはさらには多数倍のモル質量を有する化学種も含むことを実証する。したがって、式(1)は、複雑な実際の化学物質の簡略化された表現に過ぎない。
【0020】
したがって、OR基の一部が、シリルポリエーテル基で置換されていてもよいため、組成物は、式(1)の指数(a)および(b)の合計が平均して3未満である化合物も含む。したがって、組成物は、ケイ素原子上で、R−OHが脱離し、式(1)のさらなる分子の反応性OH基と縮合反応することによって形成される化学種を含む。この反応は、例えば、ケイ素上の全てのRO基が式(1)のさらなる分子で置換されてしまうまで、複数回行ってもよい。これらの化合物の典型的な29Si NMRスペクトルにおける1つより多いシグナルの存在は、異なる置換パターンを有するシリル基の存在を明確に示す。したがって、指数a〜jについて報告される値および好ましい範囲はまた、個別にとらえることのできない様々な化学種にわたる単なる平均値として理解されるべきである。
【0021】
当業者が認識しているように、アルコキシシリル基の架橋または硬化が、2段階の化学手順で起こり、ここで、第1の工程で、水の存在下で(大気中の水分も十分であり得る場合)、ケイ素に結合されるアルコキシ基が、対応するアルコールの形態で脱離され、SiOH基が形成される。次に、SiOH基は、自己縮合の場合、互いに縮合してSi−O−Si架橋を形成し、ポリマー材料を形成する。あるいは、SiOH官能性中間体は、反応性基を有する基材、例えば、OH官能基を有する酸化物の(oxidic)および/またはケイ酸塩の(silicatic)表面(例えば、ムライト、酸化アルミニウムあるいは酸化マグネシウム)と特に有効に反応し、当該基材における優れた化学固定をもたらす。硬化速度は、触媒を添加するかまたは温度を変えることによって、様々に影響され得る。
【0022】
2つ以上のアルコキシシリル官能基を有する硬化性シリルポリエーテル1の使用が好ましく、エマルジョン組成物の1つの末端ヒドロキシル基につき平均して2つ以上のこのようなシリル基を有するものが非常に好ましい。
【0023】
使用されるのが好ましい独国特許出願第10 2008 044373.5号のポリエーテルシロキサンは、コポリマー構造中に少なくとも1つのアルコキシシリル基を有する。本発明にしたがって使用可能な式(1)のアルコキシシリル変性ポリエーテルは、シリル基で変性されたエポキシドと、多種多様な様々な分野(provence)のいずれかに由来する出発物質アルコールとのアルコキシ化によって得られる。
【0024】
使用可能なエポキシド構造の製造および種類は、欧州特許出願番号第09152883.6号(本明細書の優先日の時点で未公開)の欧州特許出願に包括的に記載されている。欧州特許出願第09152883.6号および対応する優先権出願である独国特許出願第10 2008 00360.3号(本明細書の優先日の時点で未公開)の明細書および特許請求の範囲の内容の全体が、本開示の一部とみなされる。
【0025】
シリルポリエーテル1は、ポリオキシアルキレン鎖中において、末端だけでなく、分離された形態か、積み重なったブロック状の形態か、あるいはランダムに分散した形態で、アルコキシシリル基(加水分解により架橋可能なアルコキシシリル官能基を含む)を有するポリオキシアルキレン化合物の中から選択されるという、合成における自由を与える。この種の式(1)のシリルポリエーテル1の特徴は、構造およびモル質量に関して、それらが明確にかつ再現性良く製造可能なことである。モノマー単位の配列は、広い制限内で変えることができる。エポキシドモノマーが、ポリマー鎖に、ランダムにまたは任意のブロック状の配列で組み込まれ得る。反応成分の開環を伴う反応によって得られるポリマー鎖に挿入されるフラグメントは、環状無水物さらにまた二酸化炭素がポリエーテル構造中にランダムに挿入されて存在する(言い換えると同種のブロックではない)という制限の下で、それらの配列中で互いに自由に順序を変えることができる。
【0026】
用いられるシリルポリエーテル1が、ケイ素原子上に、2つ以上の高度に官能化されたポリアルキレンエーテルフラグメントが結合されたものを含む場合、存在する高度に官能化された化合物は、ポリエーテル鎖(式R−H(2)の出発物質アルコールからそれぞれ誘導され、かつその配列内に、反応成分の開環を伴う反応によって得られるポリマー鎖に挿入される自由に順序を変えることができるフラグメントを含む)が、−CH−O−(CH−Si−(CH−O−CH−架橋を介して互いに連結される化合物である。これらの構造は、非常に複雑な、高度に官能化された構造である。本明細書においてはまた、官能基を所望の応用分野向けに特別に調節することができる。得られるポリマー構造の分枝度および複雑度は、シリルモノマーのエポキシ官能基の増加に伴い増加する。出発化合物として使用可能な、アルコキシ、アリールアルコキシまたはアルキルアリールアルコキシ基を有するポリエーテル基の鎖長は任意である。ポリエーテル、アルコキシ、アリールアルコキシまたはアルキルアリールアルコキシ基は、好ましくは1〜1500個の炭素原子、より好ましくは2〜300個の炭素原子、より特定すれば2〜100個の炭素原子を含有する。
【0027】
一代替例において、基Rは、DMC触媒によるアルコキシ化に用いられる出発物質アルコールR−H(2)に由来し;式(2)の化合物としては、例えば、アリルアルコール、ブタノール、オクタノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジ−、トリ−、およびポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジ−およびポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、セルロース糖、リグニンあるいは天然物質をベースとするさらなるヒドロキシル含有化合物が挙げられ得る。あるいは、シロキサン部分が、Rとしてシリルポリエーテルに導入される場合、例えば、α,ω−ジヒドロキシポリシロキサン、水素シロキサンまたはヒドロキシル官能性ポリエーテルシロキサンが、出発化合物として用いられる。
【0028】
上述した定義の範囲内で、開環を伴う反応によって得られるポリマー鎖に挿入されるフラグメントは、ポリエーテル構造単位の鎖中だけでなく、形成され、かつ−CH−O−(CH−Si−(CH−O−CH−架橋を介して互いに結合される複数のポリエーテル構造単位上におけるランダムな分布で、ブロック状またはランダムな分布で現れ得る。したがって、プロセス生成物の構造的変形の多様性から、明確な式の記述は可能でない。
【0029】
指数d〜jを有するフラグメント、および置換基Rの場合により存在するポリオキシアルキレン鎖の両方の様々なモノマー単位は、互いにブロック状の構成を有していてもよく、あるいは統計的分布にしたがっていてもよい。したがって、本明細書に示される式中で再現される指数、および示される指数の値の範囲は、実際に存在する構造および/またはその混合物の起こり得る統計的分布の平均値として理解されるべきである。これは、例えば式(1)などの、それ自体が正確に示される構造式にも当てはまる。
【0030】
3−グリシジルオキシアルキルトリアルコキシシランまたは3−グリシジルオキシアルキルジアルコキシアルキルシランがモノマーとして用いられるのが特に非常に好ましい。
【0031】
エポキシド官能性アルコキシシランおよび用いられる任意のさらなるモノマー、さらにまた場合により二酸化炭素に応じて、アルコキシシリル変性ポリエーテルアルコール(1)、さらにまた任意の構造を有するそれらの混合物を製造することができる。
【0032】
したがって、(ポリ−)シロキサン基が、Rとして分子中に導入される場合、アルコキシシリル官能性ポリエーテルシロキサンが、本発明にしたがって用いられる。
【0033】
これらのアルコキシシリル官能性ポリエーテルシロキサンおよびそれらの混合物は、独国特許出願第2008 0044373.5号に詳述されるような2つの異なる方法によって製造することができる:
1)複金属シアン化物触媒上での、エポキシ官能性アルコキシシランによるシリコーンポリエーテルコポリマーまたはポリシロキサンのアルコキシ化
および/または
2)DMC触媒上での、対応する不飽和出発化合物のアルコキシ化によって予め得られる不飽和のアルコキシシリル含有ポリエーテルと、エポキシ官能性アルコキシシランとのヒドロシリル化結合。
【0034】
独国特許出願第10 2008 044373.5号の明細書に記載されるシリル官能化ポリエーテルシロキサンは、式(3)の化合物およびそれらの混合物であり、
【化3】

式中、
Xは、酸素、窒素、リンまたは硫黄などのヘテロ原子を場合により含有していてもよい、1〜20個のC原子を有する、直鎖状、環状または分枝状の、脂肪族または芳香族の、飽和または不飽和の炭化水素基であるが、好ましくはメチル基であり、
は、代替的にX、XまたはXであり、
は、アルコキシシリル基を有し、かつ場合によりエステル変性またはカーボネート変性される、式(3a)のOH官能性ポリオキシアルキレン基であり、
【化4】

は、式(3b)の末端エーテル化ポリオキシアルキレン基であり、
【化5】

式中、
13は、代替的に、1〜18個のC原子を有するアルキル基、好ましくはメチルであり、
またはR13は、単官能性カルボン酸で末端エステル化される式(3c)のポリオキシアルキレン基であり、
【化6】

式中、
14は、1〜30個の炭素原子を有する、飽和または単価不飽和または多価不飽和の、直鎖状または分枝状のいずれかの、脂肪族または芳香族炭化水素基であり、同様にOH基を有していてもよく、好ましくはメチル基であり、
は、Xまたは式(3d)のフラグメントのいずれかに対応し、
【化7】

式中、
k、kおよびkは、互いに独立して、0〜500、好ましくは10〜200、より特定すれば15〜100の整数であり、
、l、l、l、l、およびlは、互いに独立して、0〜60、好ましくは0〜30、より特定すれば0〜25の整数であり、
oは、0〜10、好ましくは0〜3の整数であり、
ただし、
、l、およびlの合計が0である場合、Xは少なくとも1度はXに等しく、
がX以外である場合、l、l、およびlの合計は少なくとも1であり、
ここで、
aは、1〜3の整数、好ましくは3であり、
bは、0〜2、好ましくは0〜1の整数、より好ましくは0であり、
aおよびbの合計は3であり、
cは、0〜22、好ましくは0〜6の整数、より好ましくは1または3であり、
は、0〜24、好ましくは0〜12、より好ましくは0〜8、非常に好ましくは0〜4の整数であり、
dは、1より大きく1000以下、好ましくは1より大きく100以下、より好ましくは1より大きく20以下、より特定すれば1より大きく10以下、または10より大きく100以下の整数であり、
eは、0〜10000、好ましくは0〜1000、より好ましくは0〜300、より特定すれば0〜100の整数であり、
nは、2〜8の整数であり、
f、g、h、i、およびjは各々、0〜500、好ましくは0〜300、より好ましくは0〜200、より特定すれば0〜100の整数であり、
ただし、指数d〜jを有するフラグメントは、互いに自由に順序を変えることができ、すなわち、ポリエーテル鎖内の配列において互いに交換可能であり、指数d〜jを有するフラグメントの様々なモノマー単位は、互いにブロック状の構成を有するか、あるいは統計的分布にしたがうことが可能であり、
ただし、指数k、k、k、l、l、l、l、l、l、およびoを有するフラグメントは、互いに自由に順序を変えることができ、すなわち、シロキサン鎖内で互いに交換可能であり、代替的に、統計的分布でまたはブロック状の配列で存在してもよい。
Rは、直鎖状または分枝状の、飽和、単価不飽和または多価不飽和の、1〜20個、より特定すれば1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、あるいは1〜20個の炭素原子を有するハロアルキル基から選択される1つ以上の同一または異なる基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチルまたはsec−ブチル基を示す。
またはR、およびRまたはRは、同一かまたは互いに独立して、H、あるいは飽和または場合により単価不飽和または多価不飽和の、さらに場合により置換された、場合により一価または多価の、炭化水素基であり、基RまたはRについては、それらが一価の炭化水素基である場合がある。
炭化水素基は、フラグメントYを介して脂環式に架橋されていてもよく;Yが存在しなくてもよく、あるいは1つまたは2つのメチレン単位を有するメチレン架橋であってもよく;Yが0である場合、RまたはRは、互いに独立して、1〜20個、好ましくは1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の基であり、より好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはブチル、ビニル、アリル基またはフェニル基である。好ましくは、少なくともRまたはRの2つの基のうちの少なくとも1つが水素である。炭化水素基RおよびRは同様にさらに置換されてもよく、ハロゲン、ヒドロキシル基またはグリシジルオキシプロピル基などの官能基を有していてもよい。
は、芳香族基または脂環式基に結合されてもよい、1〜18個の炭素原子の直鎖状または分枝状のアルキル基である。
およびRは、互いに独立して、代替的に水素であるかあるいはアルキル、アルコキシ、アリールまたはアラルキル基である。
、R10、R11、およびR12は、互いに独立して、代替的に水素であるかあるいはアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールまたはアラルキル基であり、炭化水素基は、フラグメントZを介して脂環式または芳香族式に架橋可能であり、Zは二価のアルキレンまたはアルケニレン基を示すことが可能である。
【0035】
式(3)で表されるポリエーテルシロキサンは、遊離した過剰のポリエーテルまたは転位生成物などの、手順の付随物として場合により存在し得る副生成物を含む。
【0036】
連結しシロキサン鎖および/またはポリエーテル鎖内の様々なモノマー単位は、互いに、代替的にブロック状の構成またはランダムな構成を有していてもよい。本明細書に示される式中で再現される指数、および示される指数の値の範囲は、実際に分離された構造および/またはその混合物の起こり得る統計的分布の平均値として理解されるべきである。これは、それ自体が正確に示される構造式にも当てはまる。式(3)のアルコキシシリル官能基を有するポリエーテルシロキサンは、通常、櫛形の分枝を有するコポリマーであり、このコポリマーでは、ポリエーテル鎖が、それぞれSiC結合を介してポリシロキサン骨格に結合する。
【0037】
同様に、アルコキシシリル基を備えたポリエーテル鎖が、Si−O−C結合を介してシロキサン構造に結合される、式(5)の直鎖状ポリエーテル−シロキサン−ポリエーテルトリブロックコポリマーが本発明にしたがって使用可能であり、
【化8】

式中、
R’は、1つ以上の同一または異なる、直鎖状または分枝状の、飽和、単価不飽和または多価不飽和の、1〜20個、より特定すれば1〜10個の炭素原子を有するアルキル基に対応し、
mは、0〜5000、好ましくは2〜5000、より好ましくは5〜4000、より特定すれば9〜3000の整数であり、
は、式(5a)のポリエーテルフラグメントに対応し、
【化9】

置換基R、R〜R12、基YおよびZ、ならびに指数a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、およびnは、式(3a)の化合物について上述した定義に対応する。
【0038】
本発明は、式(1)、(3)および/または(5)の化合物が、それぞれ単独でまたは互いの任意の所望の混合物として使用されるエマルジョンをさらに提供する。
【0039】
式(3)〜(3d)および(5)さらにまた(5a)で再現される指数、および示される指数の値の範囲は、実際に存在する構造および/またはその混合物の起こり得る統計的分布の平均値として理解されるべきである。
【0040】
本発明のプレポリマーエマルジョン用に企図される従来の乳化剤は、基本的に全ての陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、および両性の乳化剤さらにまた乳化剤の混合物を含む。
【0041】
陰イオン性乳化剤または陰イオン性乳化剤の混合物は、アルキルサルフェート、アリールスルホネート、脂肪族アルコールサルフェート、アルキルスルホネート、パラフィンスルホネート、アルキルエーテルサルフェート、アルキルポリグリコールエーテルサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフチルスルホネート、アルキルフェニルエーテルサルフェート、アルキルホスフェート、リン酸モノ−、ジ−、およびトリエステル、アルキルエーテルホスフェート、エトキシ化脂肪族アルコールリン酸エステル、アルキルフェニルエーテルホスフェート、ホスホン酸エステル、スルホコハク酸ジエステル、スルホコハク酸モノエステル、エトキシ化スルホコハク酸モノエステル、スルホスクシンアミド、α−オレフィンスルホネート、アルキルカルボキシレート、アルキルエーテルカルボキシレート、アルキルポリグリコールカルボキシレート、脂肪酸イセチオネート、脂肪酸メチルタウリド(methyltauride)、脂肪酸サルコシド(sarcoside)、アリールスルホネート、ナフタレンスルホネート、アルキルグリセリルエーテルスルホネート、硫酸化油、ポリアクリレートおよび/またはα−スルホ脂肪酸エステルを含む群から選択され得る。陰イオン性乳化剤は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、モノエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウムまたは対イオンとして他の有機基で置換されたアンモニウム陽イオンを含んでいてもよい。
【0042】
好ましい陰イオン性乳化剤は、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、ラウリル硫酸ナトリウム、およびラウリルエーテル硫酸ナトリウムである。
【0043】
1種または複数の陽イオン性乳化剤は、第一級アミンおよび第二級アミンだけでなく第三級アミンおよびその塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、トリアルキルメチルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、アルコキシ化アルキルアンモニウム塩、エステルクアット、ジアミドアミンクアット、アルキルオキシアルキルクアット、第四級アルキルホスホニウム塩、第三級アルキルスルホニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩、アルキルオキサゾリニウム塩、アルキルピリジウム塩またはN,N−ジアルキルモルホリニウム塩を含む群から選択され得る。陽イオン性乳化剤は、例えば、塩化物、臭化物、硫酸メチル、サルフェートなどを対イオンとして含んでいてもよい。
【0044】
1種または複数の非イオン性乳化剤は、アルコール、脂肪酸、アルコールエトキシレート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−アルキルエーテル、アミンアルコキシレート、脂肪族アルコールポリグリコールエーテル、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪酸エトキシレート、脂肪酸ポリグリコールエステル、グリセリドモノアルコキシレート、アルカノールアミド、脂肪酸アルキロールアミド、エトキシ化アルカノールアミド、エトキシ化エステル、例としてヒマシ油エトキシレート、脂肪酸アルキロールアミドエトキシレート、エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックコポリマー、アルキルフェノールエトキシレート、アルキルグルコシド、多官能性アルコールによる脂肪族カルボン酸の部分エステル、例えばソルビタンエステルとして、グリセロールエステルまたはポリグリセロールエステル、多官能性アルコールによる脂肪族カルボン酸の、エトキシ化部分エステル、例えばエトキシ化ソルビタンエステルとして、エトキシ化グリセロールエステルまたはエトキシ化ポリグリセロールエステル、ポリエトキシ化ポリスチレンフェニルエーテル、アルカノールアミンによる脂肪族カルボン酸のアミド、アルカノールアミンによる脂肪族カルボン酸のエトキシ化アミドおよび/またはポリアルコキシ化オルガノポリシロキサンを含む群から選択され得る。
【0045】
好ましい非イオン性乳化剤は、ヒマシ油エトキシレート、イソトリデシルアルコールポリグリコールエーテル、ソルビタンエステル、エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックコポリマー、ステアリルアルコールエトキシレート、およびステアリン酸エトキシレートである。
【0046】
さらなる好ましい乳化剤は、独国特許出願第10 2008 000360.3号(本明細書の優先日の時点で未公開)の明細書に記載の教示にしたがって製造可能な、アルコキシシリル基を有するエチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックコポリマーである。
【0047】
1種または複数の両性乳化剤は、アンホアセテート、アンホジアセテート、グリシネート、アンホプロピオネート、アンホジプロピオネート、ヒドロキシスルタイン、アミンオキシド、スルホベタインおよび/またはベタインを含む群から選択され得る。
【0048】
好ましい両性乳化剤は、ベタインおよびアミンオキシドである。
【0049】
本発明のエマルジョンの水相は、本発明のエマルジョンをベースとする塗料の(機械的)特性を改質するための親水性充填剤を含んでいてもよい。用いられる充填剤の表面が、少なくとも1つの官能基を有する場合が有利であり得る。この場合、エマルジョンの乾燥または分解の後、本発明にしたがって使用可能なプレポリマーの反応性官能基と、粒子表面上の官能基との間で化学反応が起こるという結果を伴う。このような充填剤の例は、ヒュームドシリカおよび沈殿シリカ、無機酸化物ならびに酸化アルミニウム、二酸化チタン、および二酸化ジルコニウムなどの混合酸化物、ガラスおよび石英、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムなどの水酸化物、珪灰石、雲母、カオリン、およびタルクなどのケイ酸塩、炭酸カルシウムおよび他の炭酸塩、銅、亜鉛、およびニッケルなどの金属、および金属合金、窒化ホウ素などの窒化物、炭化ケイ素などの炭化物、黒鉛、およびカーボンブラックである。このような充填剤のさらなる例は、例えば、セルロース、リグニン、酸化ポリエチレンまたは硬化エポキシ樹脂をベースとするものなどの有機粒子である。粉末の形態または水性分散体の形態のいずれかの充填剤は、エマルジョンの製造の間またはその後に、攪拌しながら組み込まれ得る。このような分散体の市販の例は、Aerodisp(Evonik Degussa)、Ludox(W.R.Grace)、Dispercoll(Bayer Materials Science)またはKlebosol(Clariant)である。
【0050】
水相は、本発明のエマルジョンのレオロジー特性を改質するための添加剤をさらに含んでいてもよい。このような添加剤の好ましい例は、ポリウレタン増粘剤、キサンタンガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、およびポリエチレンイミンである。
【0051】
縮合反応を補助し、および/または速めるために、本発明のエマルジョンは、触媒を含んでいてもよい。応用の分野および物理的特性に応じて、触媒は、水相またはプレポリマーのいずれかにおいて溶液または分散体中で使用され得る。触媒が水不溶性であるかまたは水不溶性触媒含有溶液の形態を取っている場合、触媒または触媒含有溶液は、別個の分散体、エマルジョンまたはマイクロエマルジョンとして、さらにまた別個の固体または液体として本発明のエマルジョンに添加され得る。触媒が水溶性触媒であるかまたは水性触媒含有溶液の形態を取っている場合、触媒または触媒含有溶液は、場合により対応する乳化剤を用いて、プレポリマー相に組み込むことができる。アルコキシシリル基を有する本発明のポリエーテル(シロキサン)を硬化するための触媒として、従来技術から当業者に知られている、公知のポリウレタン化、アロファネート化(allophanatization)またはビウレット化触媒を使用することができる。これらには、例えば、亜鉛塩、オクチル酸亜鉛、アセチルアセトン酸亜鉛、および2−エチルカプロン酸亜鉛、あるいはN,N,N−トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウムヒドロキシド、N,N,N−トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム2−エチルヘキサノエートまたはコリン2−エチルヘキサノエートなどのテトラアルキルアンモニウム化合物などの化合物が含まれる。オクチル酸亜鉛(2−エチルヘキサン酸亜鉛)およびテトラアルキルアンモニウム化合物を使用するのが好ましく、オクチル酸亜鉛を使用するのがより好ましい。触媒として、さらに、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジブチルスズジアセテートまたはジブチルスズジオクトエートなどの一般的に使用されている有機スズ化合物を使用することができる。さらに、ビスマス触媒、例えば、Borchi触媒、チタン酸塩、例えば、チタン(IV)イソプロポキシド、鉄(III)化合物、例えば、鉄(III)アセチルアセトネート、アルミニウム化合物、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、カルシウム化合物、例えば、カルシウムエチレンジアミン四酢酸、マグネシウム化合物、例えばマグネシウムエチレンジアミン四酢酸、あるいはアミン、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、N,N−ビス(N,N−ジメチル−2−アミノエチル)メチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルフェニルアミン、N−エチルモルホリンなどを使用することもできる。同様に、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸または塩化ベンゾイル、塩酸、リン酸などの有機または無機ブレンステッド酸、例えば、ブチルホスフェート、(イソ)プロピルホスフェート、ジブチルホスフェートなどのそれらのモノエステルおよび/またはジエステルも、触媒として好適である。同様に、例えば、水酸化ナトリウム、テトラメチル水酸化アンモニウム、水酸化カリウムまたはテトラブチル水酸化アンモニウムなどの無機および有機ブレンステッド塩基も、触媒として好適である。当然ながら、2種以上の触媒の組合せを使用することもできる。本発明の硬化性改質剤は、国際公開第2005/100482号に記載されるような、光潜在性(photolatent)塩基と呼ばれるものも触媒として含んでいてもよい。光潜在性塩基とは、好ましくは1つ以上の塩基性窒素原子を有する有機塩基を意味し、それは、最初はブロックされた形態で存在し、紫外光、可視光または赤外線で照射されて初めて、分子の解離によって、塩基性形態を放出する。
【0052】
触媒および/または光潜在性塩基は、アルコキシシリル官能性プレポリマーを基準にして、0.001重量%〜5.0重量%、好ましくは0.01重量%〜1.0重量%、より好ましくは0.05重量%〜0.5重量%の量で使用される。触媒および/または光潜在性塩基は、一度にあるいは複数回に分けて、あるいは連続して添加され得る。全量を一度に添加するのが好ましい。
【0053】
さらに、プレポリマー相は、架橋密度をさらに上げるために有機官能性で(部分的に)水不溶性のシランを含んでいてもよい。このシランは、場合により反応性希釈剤の役割を果たし得る。この種の有機官能性シランは、例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、およびヘキサデシルトリメトキシシランである。
【0054】
プレポリマー相は、有機官能性で(部分的に)水不溶性のシロキサンをさらに含んでいてもよい。この種の有機官能性シロキサンは、例えば、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(トリメトキシシリル)ポリジメチルシロキサン、およびα,ω−ビス(トリエトキシシリル)ポリジメチルシロキサンである。
【0055】
エマルジョンは、さらにまた、文献および従来技術から公知の助剤と混合されてもよい。これらには、例えば、膜形成ポリ(メタ)アクリレート、シリコーン/(メタ)アクリレートコポリマー、ポリ−N−アシルアルキレンイミン、ポリ−N−メチルピロリドン、ならびにフッ素化された有機基、アミノ基またはシラノール基を有するシリコーン樹脂が含まれる。さらなる例は、抗菌剤および防腐剤(例えば、トリクロサン、トリクロカルバン、ヘキサクロロフェン)、酸化防止剤(例えば、BHA、BHT、アスコルビン酸、およびγ−オリザノール)、分散剤、消泡剤および脱気剤、染料、着色剤、顔料、不凍剤(例えば、エタノール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールまたはイソプロパノール)、殺菌剤、接着促進剤および/または反応性希釈剤さらにまた可塑剤(例えば、フタレート、ベンゾエート、ホスフェート可塑剤)および錯化剤(例えば、EDTA、クエン酸、およびエチドロン酸、さらにまたそれらの塩)である。さらに、噴霧助剤、湿潤剤、ビタミン、成長物質、ホルモン、さらにまた香料、光安定剤、フリーラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤、(例えば、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ケイ皮酸エステルあるいは例えばZnOまたはTiOなどの微粒子紫外線吸収剤、さらにまたさらなる安定剤が、混合物に添加され得る。
【0056】
本発明のプレポリマーエマルジョンは、塗料、インク、離型剤、接着剤、化粧品、傷防止コーティング、建築用防腐剤、腐食防止剤および/または封止剤のため、紙、粒子、紡織繊維およびガラス繊維のコーティングのため、紙用の充填剤のコーティングのため、帯電防止表面を生成するための原料として、ならびに/あるいは例えば、ポリプロピレンオキシドゴムをベースとするゴム部品を製造するための出発材料として使用され得る。
【0057】
本発明のエマルジョンが、例として以下に記載されるが、本発明はこれらの例示的実施形態に限定されるべきであることは意図されない。範囲、一般式または化合物の種類の以下に示される表示は、明示的に記載される対応する範囲または化合物の群だけでなく、個別の値(範囲)または化合物を抜き出すことによって得られる全ての部分範囲および化合物の部分群も包含するものと解釈されるべきである。本明細書の文脈中に文献が引用される場合、それらの内容全体が、本発明の開示の内容に属するべきであることが意図される。
【実施例】
【0058】
以下の実施例において、シリル官能化ポリエーテル(シロキサン)をベースとするエマルジョンの製造を記載する。独国特許出願第10 2008 000360.3号および独国特許出願第10 2008 044373.5号の未公開の明細書における、プロピレンオキシド(PO)および3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(GlyEO)を用いたDMC触媒によるアルコキシ化のプロセス原理にしたがって、これらのシリル官能化ポリエーテル(シロキサン)を製造した。25.0℃におけるプレポリマーの粘度を、回転式粘度計(Physica MCR301)およびコーンプレート型ジオメトリを用いて、100秒−1で測定した。エマルジョンの安定性を、以下のように評価した:エマルジョンを室温で保存し、1週間以内に不安定性の目立った兆候がなければ、クリーミング(creaming)および/または凝集について安定とみなす。このような兆候は、例えば、2つ以上の層の形成またははっきりと目に見える脂の点在である。製造の直後および1週間保存した後の両方で、ガスクロマトグラフィーによって、エマルジョンのアルカノール含量を測定することによって、加水分解についての安定性を評価した。アルカノール含量が0.1%未満である(これは同時に用いられるガスクロマトグラフ(モデル6890、Agilent)の検出限界に相当する)場合、エマルジョンを、加水分解に対して安定であるとみなす。
【0059】
トリエトキシシリルポリエーテルI:
約9000g/モルの平均モル質量を有するポリプロピレングリコールから出発して製造され、4倍のトリアルコキシシラン官能基を有する、該して統計的構造からなるほぼ無色のポリエーテル。
モノマー計量による化学構造:
PPG500+128.5モルのPO+4モルのGLYEO。
【0060】
トリエトキシシリルポリエーテルII:
約16000g/モルの平均モル質量を有するポリプロピレングリコールから出発して製造され、4倍のトリアルコキシシラン官能基を有する、該して統計的構造からなるほぼ無色のポリエーテル。
モノマー計量による化学構造:
PPG700+123モルのPO+2モルのGLYEO+123モルのPO+2モルのGLYEO。
【0061】
トリエトキシシリルポリエーテルシロキサンIII:
約9000g/モルの平均モル質量を有するポリエーテルシロキサンから出発して製造され、4倍のトリアルコキシシラン官能基を有する、概して統計的構造からなるほぼ無色のポリエーテル。
20:80のエチレンオキシド対プロピレンオキシドの比率の、ポリ(エチレンオキシド−stat−プロピレンオキシド)アリルエーテル上で、ヘプタメチルトリシロキサン(HMTS)のヒドロシリル化することによって、ポリエーテルシロキサンを製造した。ポリエーテルの分子量は、880グラム/モルであった。
モノマー計量による化学構造:
ポリエーテルシロキサン+1.5モルのPO+2モルのGLYEO+1.5モルのPO。
【0062】
トリエトキシシリルポリエーテルIV:
約20000g/モルの平均モル質量を有するポリプロピレングリコールから出発して製造され、4倍のトリアルコキシシラン官能基を有する、概して統計的構造からなるほぼ無色のポリエーテル。
モノマー計量による化学構造:
PPG700+212モルのPO+4モルのGLYEOおよび101.5モルのPO。
【0063】
実施例1:
12.0グラムのTEGO(登録商標)Alkanol S100P(ステアリルアルコール、ポリオキシエチレン(100)エーテル、Evonik Goldschmidt GmbH)、3.0グラムのTEGO(登録商標)Alkanol TD6(イソトリデカノール、ポリオキシエチレン(6)エーテル、Evonik Goldschmidt GmbH)および15.0グラムの水を、二重壁のガラス容器中で60℃に加熱し、Mizerディスクを用いて1000rpmで均一になるまで撹拌し、粘性のペーストを形成した。滴下漏斗を用いて、30分間の期間にわたって、100.0グラムのトリエトキシシリルポリエーテルIVを、撹拌しながらペーストに滴下導入した。仕上げられたペーストを、10分間1000rpmで撹拌した。その後、ペーストを、残りの200.0グラムの水で希釈した。これによりエマルジョンを得た。
【0064】
液滴径分布を、動的光散乱(633nmのHeNeレーザーを有するMalvern HPPS)によって測定した。CONTINアルゴリズムを用いた相関関数の評価により、平均半径が154nmの単峰性の液滴径分布が得られた。
【0065】
ガスクロマトグラフィーによって、エタノール含量を求めた。製造の直後および室温で7日間保存した後の両方で、含量は検出限界(0.1%)未満であった。室温で1週間保存した後、エマルジョンは、不安定性の目に見える兆候を全く示さない。
【0066】
実施例2:
9.0グラムのTEGO(登録商標)Alkanol TD12(イソトリデシルアルコール、ポリオキシエチレン(12)エーテル)、6.0グラムのRewopal(登録商標)LA3(ラウリルアルコール、ポリオキシエチレン(3)エーテル)、および20.0グラムの水を、二重壁のガラス容器中で60℃に加熱し、Mizerディスクを用いて1000rpmで均一になるまで撹拌し、粘性のペーストを形成した。滴下漏斗を用いて、30分間の期間にわたって、80.0グラムのトリエトキシシリルポリエーテルIに溶かした20.0グラムのオクチルトリエトキシシランの均一溶液を、撹拌しながらペーストに滴下導入した。仕上げられたペーストを、10分間1000rpmで撹拌した。その後、ペーストを、撹拌しながら、残りの80.0グラムの水で希釈した。これによりエマルジョンを得た。液滴径分布を、動的光散乱(Malvern HPPS)によって測定した。平均液滴半径は116nmであった。
【0067】
コーンプレート型ジオメトリを備えた回転式粘度計(Physica MCR301)を用いて、エマルジョンの流動曲線を測定した。実施例2のエマルジョンの流動曲線を図4に示す。エマルジョンはせん断により薄くなる(shear-thinning)。100秒−1における粘度は0.18Pa・sであり、すなわち、用いられるプレポリマーの粘度をはるかに下回っている。
【0068】
実施例3:
12.0グラムのTEGO(登録商標)Alkanol S100P(ステアリルアルコール、ポリオキシエチレン(100)エーテル、Evonik Goldschmidt GmbH)、3.0グラムのTEGO(登録商標)Alkanol TD6(イソトリデカノール、ポリオキシエチレン(6)エーテル、Evonik Goldschmidt GmbH)、および15.0グラムの水を、二重壁のガラス容器中で60℃に加熱し、Mizerディスクを用いて1000rpmで均一になるまで撹拌し、粘性のペーストを形成した。滴下漏斗を用いて、30分間の期間にわたって、100.0グラムのトリエトキシシリルポリエーテルIIIを、撹拌しながらペーストに滴下導入した。仕上げられたペーストを、10分間1000rpmで撹拌した。その後、ペーストを、撹拌しながら、残りの85.0グラムの水で希釈した。これによりエマルジョンを得た。液滴径分布を、動的光散乱(Malvern HPPS)によって測定した。平均液滴半径は122nmであった。その後、10.0グラムのAerosil A200を、仕上げられたエマルジョンに添加し、2000rpmで10分間撹拌して分散することによって導入した。
【0069】
実施例4:
10.0グラムのMarlon(登録商標)A315(ドデシルベンゼンスルホネート、Na塩、Sasol Germany GmbH)、15.0gのTEGO(登録商標)Betaine F50(コカミドプロピルベタイン、Evonik Goldschmidt GmbH)、7.5グラムのTEGO(登録商標)Alkanol TD6(イソトリデカノール、ポリオキシエチレン(6)エーテル、Evonik Goldschmidt GmbH)を、室温において、プラスチックのビーカー中でMizerディスクを用いて1000rpmで均一になるまで撹拌し、粘性のペーストを形成した。滴下漏斗を用いて、30分間の期間にわたって、100.0グラムのトリエトキシシリルポリエーテルIIIを、撹拌しながらペーストに滴下導入した。仕上げられたペーストを、10分間1000rpmで撹拌した。その後、ペーストを、撹拌しながら、100.0グラムの水で希釈した。これによりエマルジョンを得た。液滴径分布を、動的光散乱(Malvern HPPS)によって測定した。平均液滴半径は144nmであった。
【0070】
実施例5:
30.0グラムのSynperonic(登録商標)PE/F108(EO−PO−EOトリブロックコポリマー(Croda)の25%濃度の水溶液)および7.5グラムのPluronic(登録商標)PE10300(EO−PO−EOトリブロックコポリマー、BASF)を、室温において、プラスチックのビーカー中でMizerディスクを用いて1000rpmで均一になるまで撹拌し、粘性のペーストを形成した。滴下漏斗を用いて、30分間の期間にわたって、100.0グラムのトリエトキシシリルポリエーテルIVを、撹拌しながらペーストに滴下導入した。仕上げられたペーストを、10分間1000rpmで撹拌した。その後、ペーストを、撹拌しながら、162.5グラムの水で希釈した。これによりエマルジョンを得た。液滴径分布を、動的光散乱(Malvern HPPS)によって測定した。平均液滴半径は251nmであり、いくらかの粗画分(液滴半径>1マイクロメートル)がはっきりと見られた。
【0071】
ガスクロマトグラフィーによって、エタノール含量を求めた。製造の直後および室温で7日間保存した後の両方で、含量は検出限界(0.1%)未満であった。室温で1週間保存した後、粗画分にもかかわらず、エマルジョンは、不安定性の目に見える兆候を全く示さない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの場合に分子中に少なくとも1つの非末端シリル官能基を有する、シリル官能化ポリエーテルおよび/またはシリル官能化ポリエーテルシロキサンを含む、安定した耐加水分解性水性エマルジョン。
【請求項2】
シリル官能化ポリエーテルとして、式(1)
【化1】

(式中、
aは、1〜3の整数であり、
bは、0〜2の整数であり、
aおよびbの合計は3であり、
cは、0〜22の整数であり、
dは、1〜1000の整数であり、
eは、0〜10000の整数であり、
fは、0〜1000の整数であり、
gは、0〜1000の整数であり、
h、i、およびjは、0〜500の整数であり、
ただし、前記指数d〜jを有するフラグメントは、互いに自由に順序を変えることができ、すなわち、ポリエーテル鎖内の配列において互いに交換可能であり、
nは、2〜8の整数であり、
Rは、直鎖状または分枝状の、飽和、単価不飽和または多価不飽和の、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、あるいは1〜20個の炭素原子を有するハロアルキル基から選択される1つ以上の同一または異なる基を示し、
が、飽和または不飽和の、場合により分枝状の基であるか、あるいはアルコキシ、アリールアルコキシまたはアルキルアリールアルコキシ基の種類のポリエーテル基であり、ここで、前記炭素鎖は、酸素原子によって介在されていてもよく、あるいは、場合により単縮合または多縮合した芳香族アリールオキシ基であるか、あるいはアルキル基および/またはアリール基で置換されていてもよいケイ素含有化合物またはシロキサン基またはポリ(シロキサン)基であり、
またはR、さらにまたRまたはRは、同一にかあるいは互いに独立して、H、あるいは飽和または場合により単価不飽和または多価不飽和の、さらに場合により置換された、場合により一価または多価の、炭化水素基であり、前記基RまたはRについては、それらが一価の炭化水素基である場合があり、ここで、前記炭化水素基は、フラグメントYを介して脂環式に架橋されていてもよく;Yが存在しなくてもよく、あるいは1つまたは2つのメチレン単位を有するメチレン架橋であってもよく、Yが存在しない場合、RまたはRは、互いに独立して、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の基であり、
は、1〜24個の炭素原子の直鎖状または分枝状のアルキル基、あるいは場合により同様にアルキル基を有していてもよい芳香族または脂環式基に対応し、
およびRは、互いに独立して、代替的に、水素であるかあるいはアルキル、アルコキシ、アリールまたはアラルキル基であってこれらの基は、開環重合によって共重合して、アルコキシシラン基を含有する架橋性ポリエーテルエステルを提供し、
、R10、R11、およびR12は、互いに独立して、代替的に、水素であるかあるいはアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールまたはアラルキル基であり、前記炭化水素基は、フラグメントZを介して脂環式または芳香族式に架橋可能であり、Zは二価のアルキレン基またはアルケニレン基であることが可能である)
の化合物を、単独でまたは互いに対する混合物として使用することを特徴とする、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項3】
前記OR基の一部が、エステル交換反応の結果としてシリルポリエーテル基で置換されることにより、式(1)の指数(a)+(b)の合計が平均して3未満である組成物が存在することを特徴とする、請求項2に記載のエマルジョン。
【請求項4】
が、(ポリ)シロキサン基であることを特徴とする、請求項2または3に記載のエマルジョン。
【請求項5】
(ポリ)シロキサン基を含有する化合物として、式(3)
【化2】

(式中、
Xは、酸素、窒素、リンまたは硫黄などのヘテロ原子を含んでいてもよい、1〜20個のC原子を有する、直鎖状、環状または分枝状の、脂肪族または芳香族の、飽和または不飽和の炭化水素基であり、
は、代替的にX、XまたはXであり、
は、アルコキシシリル基を有し、かつエステル変性またはカーボネート変性されていてもよい、式(3a)のOH官能性ポリオキシアルキレン基であり、
【化3】

は、式(3b)の末端エーテル化ポリオキシアルキレン基であり、
【化4】

式中、
Rは、直鎖状または分枝状の、飽和、単価不飽和または多価不飽和の、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、あるいは1〜20個の炭素原子を有するハロアルキル基から選択される1つ以上の同一または異なる基を示し、
またはR、さらにまたRまたはRは、同一にかあるいは互いに独立して、H、あるいは飽和または場合により単価不飽和または多価不飽和の、さらに場合により置換された、場合により一価または多価の、炭化水素基であり、前記基RまたはRについては、それらが一価の炭化水素基である場合があり、ここで、前記炭化水素基は、フラグメントYを介して脂環式に架橋されていてもよく;Yは存在しなくてもよく、あるいは1つまたは2つのメチレン単位を有するメチレン架橋であってもよく、Yが0である場合、RまたはRは、互いに独立して、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の基であり;前記炭化水素基RおよびRは同様にさらに置換されてもよく、ハロゲン、ヒドロキシル基またはグリシジルオキシプロピル基などの官能基を有していてもよく;Rは、芳香族基または脂環式基に結合されてもよい、1〜18個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状のアルキル基であり、
およびRは、互いに独立して、代替的に水素であるかあるいはアルキル、アルコキシ、アリールまたはアラルキル基であり、
、R10、R11、およびR12は、互いに独立して、代替的に水素であるかあるいはアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリールまたはアラルキル基であり、前記炭化水素基は、フラグメントZを介して脂環式または芳香族式に架橋可能であり、Zは二価のアルキレン基またはアルケニレン基のいずれかを示すことが可能であり;
13は、代替的に、1〜18個のC原子を有するアルキル基、または式(3c)のポリオキシアルキレン基であり、単官能性カルボン酸で末端エステル化され、
【化5】

式中、
14は、1〜30個の炭素原子を有する、飽和または単価不飽和または多価不飽和の、直鎖状または分枝状のいずれかの、脂肪族または芳香族炭化水素基であり、同様にOH基を有していてもよく、
は、Xまたは式(3d)のフラグメントのいずれかであり、
【化6】

式中、
k、kおよびkは、互いに独立して、0〜500の整数であり、
、l、l、l、l、およびlは、互いに独立して、0〜60の整数であり、
oは、0〜10の整数であり、
ただし、
、l、およびlの合計が0である場合、Xは少なくとも1度はXであり、
がX以外である場合、l、l、およびlの合計は少なくとも1であり、
ここで、
aは、1〜3の整数であり、
bは、0〜2の整数であり、
aおよびbの合計は3であり、
cは、0〜22の整数であり、
は、0〜24の整数であり、
dは、1〜500の整数であり、
eは、0〜5000の整数であり、
nは、2〜8の整数であり、
f、g、h、i、およびjは各々、0〜500の整数であり、
ただし、前記指数d〜jを有するフラグメントは、互いに自由に順序を変えることができ、ポリエーテル鎖内の配列において互いに交換可能であり、ここで、前記指数d〜jを有するフラグメントの様々なモノマー単位は、互いにブロック状に構成されていてもよく、あるいは統計的分布にしたがっていてもよく、ただし、前記指数k、k、k、l、l、l、l、l、l、およびoを有するフラグメントは、互いに自由に順序を変えることができ、シロキサン鎖内で互いに交換可能であり、代替的に、統計的分布またはブロック状の配列で存在してもよい)
のアルコキシシリル官能性ポリエーテルシロキサンおよびそれらの混合物を使用することを特徴とする、請求項4に記載のエマルジョン。
【請求項6】
アルコキシシリル基を備えたポリエーテル鎖が、Si−O−C結合を介してシロキサン構造に結合した、式(5)
【化7】

(式中、
R’は、1つ以上の同一または異なる、直鎖状または分枝状の、飽和、単価不飽和または多価不飽和の、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基に対応し、
mは、0〜5000の整数であり、
は、式(5a)のポリエーテルフラグメントに対応し、
【化8】

式中、前記置換基R、R〜R12、前記基YおよびZ、ならびに前記指数a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、およびnは、式(3a)の化合物について上述した定義に対応し、式(3)で表される前記ポリエーテルシロキサンは、遊離した過剰のポリエーテルまたは転位生成物などの、手順の付随物として存在し得る副生成物を含む)
の直鎖状ポリエーテル−シロキサン−ポリエーテルトリブロックコポリマーが存在することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項7】
式(1)、(5)および/または(6)の化合物が、単独でまたは互いの混合物として使用されることを特徴とする、請求項2、5および6のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項8】
使用される乳化剤が、陰イオン性、非陰イオン性、陽イオン性、および両性の乳化剤さらにまた乳化剤混合物であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項9】
触媒、光潜在性塩基、レオロジー特性を改質するための添加剤、親水性充填剤、有機官能性および/または部分的に可溶性および/または水不溶性シランおよび/またはシロキサン、助剤、膜形成剤、抗菌剤および防腐剤、分散剤、消泡剤および脱気剤、染料、着色剤および顔料、不凍剤、殺菌剤、接着促進剤および/または反応性希釈剤、可塑剤および錯化剤、噴霧助剤、湿潤剤、ビタミン、成長物質、ホルモンおよび/または香料、光安定剤、フリーラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤、さらなる安定剤の群から選択される化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項10】
塗料、インク、離型剤、接着剤、化粧品、傷防止コーティング、建築用防腐剤、腐食防止剤および/または封止剤のため、紙、粒子、紡織繊維およびガラス繊維のコーティングのため、紙用の充填剤のコーティングのため、帯電防止表面を生成するための原料として、ならびに/あるいはポリプロピレンオキシドをベースとするゴム部品を製造するための出発材料としての、請求項1〜9のいずれか一項に記載のエマルジョンの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−528203(P2012−528203A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511218(P2012−511218)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055495
【国際公開番号】WO2010/136279
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(507375465)エヴォニク ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (100)
【Fターム(参考)】