説明

シリンジポンプ、分注装置及び自動分析装置

【課題】分注装置や自動分析装置の大型化の回避を可能としたシリンジポンプと、このシリンジポンプを備えた分注装置及び自動分析装置を提供すること。
【解決手段】液体の吐出口63aと吸引口63bとが形成されたシリンジ63と、長手方向に沿った貫通孔64aを有し、長手方向の一端部がシリンジに挿入された大径ピストン64と、貫通孔に挿通され、貫通孔のシリンジ内部に位置する端部から出没自在な小径ピストン65とを有するシリンジポンプ62と、シリンジポンプを備えた分注装置及び自動分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の分注に用いるシリンジポンプ、前記シリンジポンプを使用して液体を分注する分注装置及び前記分注装置を備えて検体の分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体の分析を行う自動分析装置は、検体と試薬とを反応させ、反応液の光学的特性を測定することによって前記検体の成分を分析している(例えば、特許文献1参照)。このとき、自動分析装置は、分注プローブを有する試薬分注用の分注装置と検体分注用の分注装置によって所定量の検体と試薬とをそれぞれ分注している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−230970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された自動分析装置は、ランニングコスト低減に伴う試薬使用量低減のため、検体を希釈して分析を行っている。このため、特許文献1の自動分析装置は、検体分注用のシリンジポンプと希釈水供給用のシリンジポンプの2つのシリンジポンプを使用しており、分注装置や自動分析装置が大型化してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、分注装置や自動分析装置の大型化の回避を可能としたシリンジポンプと、このシリンジポンプを備えた分注装置及び自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のシリンジポンプは、液体の吐出口と吸引口とが形成されたシリンジと、長手方向に沿った貫通孔を有し、長手方向の一端部が前記シリンジに挿入された大径ピストンと、前記貫通孔に挿通され、前記貫通孔の前記シリンジ内部に位置する端部から出没自在な小径ピストンと、を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明のシリンジポンプは、上記の発明において、前記小径ピストンは、前記大径ピストンよりも長いことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のシリンジポンプは、上記の発明において、前記シリンジは、前記吐出口が前記大径ピストンの吐出移動方向の先端に形成され、前記吸引口が後端側に形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分注装置は、液体試料を配管内に吸引し、吸引した液体試料を所定量吐出して分注を行う分注装置であって、配管によって接続された分注プローブと請求項1乃至3のいずれか一つに記載のシリンジポンプと、前記シリンジポンプの前記大径ピストン及び前記小径ピストンを駆動する駆動モータと、前記駆動モータによる前記大径ピストン又は前記小径ピストンの駆動を制御することで前記吸引口からの液体の吸引と前記吐出口からの液体の吐出を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の分注装置は、上記の発明において、前記分注装置は、前記駆動モータの回転力の前記シリンジポンプへの伝達や遮断を行う大径クラッチを介して駆動され、前記大径ピストンをピストン軸方向に沿って移動させる大径ボールねじと、前記駆動モータの回転力の前記シリンジポンプへの伝達や遮断を行う小径クラッチ及び伝達手段を介して駆動され、前記小径ピストンを前記ピストン軸方向に沿って移動させる小径ボールねじと、を備え、前記制御手段は、前記駆動モータの回転力の前記大径クラッチ又は前記小径クラッチによる前記大径ボールねじ又は前記小径ボールねじへの伝達や遮断による前記大径ピストン又は前記小径ピストンの移動を制御することを特徴とする。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、検体を分注する検体分注装置と、試薬を分注する試薬分注装置とを有し、前記検体と前記試薬とを反応させることによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、前記検体分注装置または前記試薬分注装置は、前記分注装置を用いて構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、挿通口を有する大径ピストンによって希釈水を供給し、挿通口から先端を出没自在に大径ピストンに挿入される小径ピストンによって検体や試薬を含む液体試料を分注するので、分注装置や自動分析装置の大型化の回避を可能としたシリンジポンプと、このシリンジポンプを備えた分注装置及び自動分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、分注装置で使用する本発明のシリンジポンプの断面正面図である。
【図2】図2は、図1のシリンジポンプを構成する大径ピストンの斜視図である。
【図3】図3は、図1のシリンジポンプを駆動モータ等と共にユニット化したポンプユニットの一部を断面にして示す正面図である。
【図4】図4は、図3に示すポンプユニットを備えた本発明の実施の形態に係る分注装置の概略構成図である。
【図5】図5は、図4に示す分注装置を備えた本発明の実施の形態に係る分析装置の概略構成図である。
【図6】図6は、大径ピストンを初期位置から後退させてイオン交換水をシリンジ内に最大量まで吸引した状態を示すポンプユニットの要部を示す図である。
【図7】図7は、大径ピストンによってシリンジの吸引口を塞ぎ、吐出口との連通を遮断した状態を示すポンプユニットの要部を示す図である。
【図8】図8は、分注プローブに検体とイオン交換水との混合を遮断する空気を吸引した状態を説明するポンプユニットの要部を示す図である。
【図9】図9は、分注プローブから検体を吸引するため小径ピストンを後退させた状態を示すポンプユニットの要部を示す図である。
【図10】図10は吸引した検体を洗浄水と共に分注プローブから吐出して検体を希釈するため大径ピストンと小径ピストンとを前進させた状態を示すポンプユニットの要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の分注装置、分注装置の分注プローブ洗浄方法及び自動分析装置にかかる実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は、分注装置で使用する本発明のシリンジポンプの断面正面図である。図2は、図1のシリンジポンプを構成する大径ピストンの斜視図である。
【0016】
シリンジポンプ62は、後述する分注装置において圧力を伝達するイオン交換水、分注プローブの洗浄水及び検体や試薬の希釈水として使用するイオン交換水を吸引し、吐出するポンプであり、図1に示すように、シリンジ63と、シリンジ63にスライド自在に挿入される大径ピストン64と、大径ピストン64にスライド自在に挿入される小径ピストン65とを有している。
【0017】
シリンジ63は、図1に示すように、イオン交換水を吐出する吐出口63aが大径ピストン64の吐出移動方向の先端に形成され、大径ピストン64の吐出移動方向の後端側には、イオン交換水の吸引口63bが形成されている。そして、吐出口63aには、吐出金具63cが取り付けられ、吸引口63bには、吸引金具63dが取り付けられている。
【0018】
大径ピストン64は、図1に示すように、長手方向に沿った貫通孔64aを有し、長手方向の一端部がシリンジ63に挿入されている。大径ピストン64は、図2に示すように、前端面64bの中央に挿通口64cが形成されている。また、大径ピストン64は、後端のフランジ64gの側面に凹部64hが形成されている。
【0019】
小径ピストン65は、図1に示すように、大径ピストン64よりも長いピストン本体65aの吐出移動方向の後端部に押圧フランジ65bが形成されている。押圧フランジ65bの側面には、凹部65cが形成されている。小径ピストン65は、ピストン本体65aの先端を挿通口64cから出没自在に挿入して、大径ピストン64のピストン軸Apと同軸上に配置される。
【0020】
このとき、シリンジ63、大径ピストン64及びピストン本体65aは、セラミック等を精密加工して製造され、これにより相互の液密性と摺動性を確保している。
【0021】
図3は、図1のシリンジポンプを駆動モータ等と共にユニット化したポンプユニットの一部を断面にして示す正面図である。上述した2つのピストン64,65を有するシリンジポンプ62は、図3に示すように、ポンプユニット60として駆動モータ66等と共に取付構体61に取り付けてユニット化されている。即ち、ポンプユニット60は、シリンジポンプ62と、駆動モータ66と、大径ボールねじ68と、小径ボールねじ71とを備えている。
【0022】
ここで、図3は、後述する分注装置が検体や試薬の分注を開始する際の大径ピストン64及び小径ピストン65の初期位置を示しており、シリンジポンプ62は、シリンジ63の吐出口63aが吸引口63bと連通している。
【0023】
駆動モータ66は、図3に示すように、取付構体61に立設した取付壁61aに取り付けられ、シリンジポンプ62を駆動する。
【0024】
大径ボールねじ68は、図3に示すように、取付壁61aに取り付けた大径クラッチ67と支持壁61bとの間にねじ軸68aが架設され、ナット68bに設けた突起が大径ピストン64のフランジ64gに形成した凹部64hと嵌合されている。大径ボールねじ68は、大径クラッチ67を介して駆動モータ66によって駆動され、ナット68bによって大径ピストン64をピストン軸Ap方向に沿って移動させる。
【0025】
小径ボールねじ71は、図3に示すように、支持壁61bと支持壁61cとの間にねじ軸71aが架設され、ナット71bに設けた突起が小径ピストン65のフランジ64gに形成した凹部65cと嵌合されている。小径ボールねじ71は、小径クラッチ69及びベルト伝達装置70を介して駆動モータ66によって駆動され、小径ピストン65をピストン軸Ap方向に沿って移動させる。
【0026】
ここで、大径クラッチ67及び小径クラッチ69としては、電源のオンオフによって駆動モータ66の回転力の大径ボールねじ68や小径ボールねじ71への伝達や遮断を行う電磁クラッチが使用される。また、ベルト伝達装置70は、小径クラッチ69の出力軸69aに取り付けたプーリ70aと小径ボールねじ71のねじ軸71aに取り付けたプーリ70cとの間にベルト70bが巻き掛けられている。
【0027】
図4は、図3に示すポンプユニットを備えた本発明の実施の形態に係る分注装置の概略構成図である。以上のように構成されるポンプユニット60を備えた分注装置について、図4を参照して以下に説明する。
【0028】
図4に示す分注装置は、検体分注用の検体分注装置であり、図4に示すように、支柱5a、アーム5b、検体分注プローブ5c及び液面検知手段(図示せず)を有する他、プローブ駆動部51と、タンク55と、分注制御部56と、ポンプユニット60とを備えている。
【0029】
支柱5aは、図4に示すように、アーム5bの基端側を支持しており、アーム5bの先端側には検体分注プローブ5cが下方に向けて設けられている。検体分注プローブ5cは、配管52によってシリンジポンプ62のシリンジ63に設けた吐出金具63cと接続されており、検体の分注とイオン交換水の吐出を行う。
【0030】
なお、前記液面検知手段は、検体分注の際に、検体容器4(図5参照)に収容された検体の液面を検体分注プローブ5cと検体容器4近傍に配置した電極との間の静電容量の変化によって検知する。
【0031】
プローブ駆動部51は、支柱5aを軸周りに回動させると共に、上下方向に昇降させる駆動手段である。
【0032】
タンク55は、図4に示すように、イオン交換水Wを収容しており、シリンジポンプ62のシリンジ63に設けた吸引金具63dと配管53によって接続されている。ここで、配管53は、中間にポンプ54が設けられ、シリンジ63及び配管52と共にポンプ54によって圧送されたイオン交換水Wが満たされている。
【0033】
分注制御部56は、CPU等から構成され、プローブ駆動部51及びポンプ54の他、ポンプユニット60の駆動モータ66、大径クラッチ67及び小径クラッチ69を制御することによって検体分注装置5の作動を制御する。特に、分注制御部56は、駆動モータ66の制御と、大径クラッチ67及び小径クラッチ69による駆動モータ66の回転力の大径ボールねじ68或いは小径ボールねじ71への伝達や遮断の制御とによる大径ピストン64及び小径ピストン65の移動を制御し、吸引口63bからのイオン交換水の吸引と吐出口63aからのイオン交換水の吐出並びにイオン交換水の吐出量を制御する。
【0034】
次に、検体分注装置5を備えた自動分析装置について説明する。図5は、図4に示す分注装置を備えた本発明の実施の形態に係る分析装置の概略構成図である。
【0035】
自動分析装置1は、図5に示すように、筺体2に検体テーブル3、検体分注装置5、キュベットホイール8、測光装置10、洗浄装置11、撹拌装置12、試薬分注装置13、試薬テーブル14及び読取装置16等が設けられている。
【0036】
検体テーブル3は、駆動手段によって図5に示す矢印方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0037】
キュベットホイール8は、検体テーブル3とは異なる駆動手段によって図5に示す矢印方向に回転され、外周には周方向に沿って反応容器9を配置する複数の凹部8aが等間隔で設けられている。キュベットホイール8は、各凹部8aの半径方向両側に測定光が通過する開口が形成されている。キュベットホイール8は、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4分回転し、四周期で反時計方向に凹部8aの1個分回転する。キュベットホイール8の外周には、測光装置10、洗浄装置11及び撹拌装置12が配置されている。
【0038】
反応容器9は、容量が数μL〜数十μLと微量なキュベットであり、測光装置10の光源から出射された分析光に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。
【0039】
測光装置10は、図5に示すように、キュベットホイール8の外周近傍に配置され、反応容器9に保持された液体を分析する分析光を出射する光源と、液体を透過した分析光を分光して受光する受光器とを有している。測光装置10は、前記光源と受光器がキュベットホイール8の凹部8aを挟んで半径方向に対向する位置に配置されている。
【0040】
洗浄装置11は、反応容器9から液体や洗浄液を排出する排出手段と、洗浄液の分注手段とを有している。洗浄装置11は、測光終了後の反応容器9から測光後の液体を排出した後、洗浄液を分注する。洗浄装置11は、洗浄液の分注と排出の動作を複数回繰り返すことにより、反応容器9の内部を洗浄する。このようにして洗浄された反応容器9は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0041】
撹拌装置12は、反応容器9に分注された検体や試薬を、例えば、撹拌棒によって撹拌する。但し、撹拌装置12は、反応容器9に保持された液体を非接触で撹拌する必要がある場合には、反応容器9に表面弾性波素子を取り付け、表面弾性波素子が発生する音波によって撹拌してもよい。
【0042】
試薬分注装置13は、キュベットホイール8に保持された複数の反応容器9に試薬を分注する手段であり、図5に示すように、試薬テーブル14の所定の試薬容器15から試薬を順次反応容器9に分注する。試薬分注装置13は、支柱、アーム13b及び試薬分注プローブを有する他、液面検知手段(図示せず)を備えており、検体分注装置5と同様に構成されている。
【0043】
ここで、筺体2には、検体分注装置5の検体分注プローブ5cを洗浄する洗浄槽2aが検体テーブル3とキュベットホイール8との間の検体分注プローブ5cの移動軌跡上に設けられ、試薬分注装置13の分注プローブを洗浄する洗浄槽2bがキュベットホイール8と試薬テーブル14との間の分注プローブの移動軌跡上に設けられている。
【0044】
試薬テーブル14は、検体テーブル3及びキュベットホイール8とは異なる駆動手段によって図5に示す矢印方向に回転され、扇形に成形された収納室14aが周方向に沿って複数設けられている。収納室14aのそれぞれには、試薬容器15が着脱自在に収納される。複数の試薬容器15は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を記録したバーコードラベル等の情報記録媒体(図示せず)が貼付されている。
【0045】
読取装置16は、試薬テーブル14の外周には、試薬容器15に貼付した前記情報記録媒体に記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を読み取り、制御部17へ出力する。
【0046】
制御部17は、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用され、検体テーブル3、検体分注装置5、キュベットホイール8、測光装置10、洗浄装置11、撹拌装置12、試薬分注装置13、試薬テーブル14、読取装置16、入力部18及び出力部19等と接続されている。制御部17は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記情報記録媒体から読み取った情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設定範囲外の場合、分析作業を停止するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する。そして、制御部17は、図5に示すように、分析部17aを有している。
【0047】
分析部17aは、ホストコンピュータから入力される検体や試薬の識別番号、分析項目、再検の要否等、分析に関連する情報を記憶する。また、分析部17aは、測光装置10が測光した光量に基づいて求められるキュベットC内の検体と試薬の反応液の吸光度(光学的特性)から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を記憶する。
【0048】
入力部18は、制御部17へ検体数や検査項目等の入力操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。
【0049】
出力部19は、分析結果を含む分析内容や警報等を表示する部分であり、例えば、ディスプレイパネル等が使用される。ここで、出力部19は、警報等を音声によって告知するスピーカを使用してもよい。
【0050】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転するキュベットホイール8によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器9に試薬分注装置13が試薬容器15から試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器9は、キュベットホイール8によって周方向に沿って搬送され、検体分注装置5によって検体テーブル3に保持された複数の検体容器4から検体が順次分注される。
【0051】
そして、検体が分注された反応容器9は、キュベットホイール8によって撹拌装置12へ搬送され、分注された試薬と検体が順次撹拌されて反応する。このようにして検体と試薬が反応した反応液を保持した反応容器9は、キュベットホイール8が再び回転したときに測光装置10を通過し、光源から出射された分析光が透過する。このとき、反応容器9を透過した分析光は、受光部で測光され、吸光度をもとに制御部17によって成分濃度等が分析される。また、分析が終了した反応容器9は、洗浄装置11によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0052】
ここで、自動分析装置1は、電源をオンとした分析開始時には、装置全体を初期化し、反応容器9、検体分注プローブ5c及び前記試薬分注プローブを洗浄した後、分析動作を開始する。このとき、検体分注装置5が実行する検体容器4から検体を吸引し、吸引した検体をイオン交換水と共に分注プローブから反応容器9に吐出して検体を希釈分注する際のシリンジポンプ62の作動を、図6乃至図10に示すポンプユニットを参照して以下に説明する。
【0053】
図6は、大径ピストンを初期位置から後退させてイオン交換水をシリンジ内に最大量まで吸引した状態を示すポンプユニットの要部を示す図である。図7は、大径ピストンによってシリンジの吸引口を塞ぎ、吐出口との連通を遮断した状態を示すポンプユニットの要部を示す図である。図8は、分注プローブに検体とイオン交換水との混合を遮断する空気を吸引した状態を説明するポンプユニットの要部を示す図である。図9は、分注プローブから検体を吸引するため小径ピストンを後退させた状態を示すポンプユニットの要部を示す図である。図10は、吸引した検体を洗浄水と共に分注プローブから吐出して検体を希釈するため大径ピストンと小径ピストンとを前進させた状態を示すポンプユニットの要部を示す図である。なお、図6乃至図10は、配管52,53を図示することなく省略している。
【0054】
先ず、検体分注装置5は、プローブ駆動部51を駆動し、検体分注プローブ5cを洗浄槽2aの位置へ移動し、ポンプ54を駆動してイオン交換水を洗浄水としてシリンジ63に圧送する。このとき、大径ピストン64は、初期位置にあるため、図3及び図4に示したように、シリンジ63の吐出口63aと吸引口63bが連通している。従って、シリンジ63に圧送されたイオン交換水は、配管52を通って検体分注プローブ5cから洗浄槽2aに吐出され、検体分注プローブ5cを洗浄する。
【0055】
この検体分注プローブ5cの洗浄中に、分注制御部56は、駆動モータ66によって大径ピストン64を駆動し、図6に示すように、最大吸引量位置まで大径ピストン64を後退させてイオン交換水Wをシリンジ63内に最大量まで吸引する。このとき、分注制御部56は、大径クラッチ67を「接」として駆動モータ66の回転力を大径ボールねじ68へ伝達すると共に、小径クラッチ69を「断」として駆動モータ66の回転力の小径ボールねじ71への伝達を遮断する。
【0056】
次に、検体分注装置5は、駆動モータ66を駆動し、図7に示すように、吸引口63bを塞ぐ位置まで大径ピストン64を前進させると共に、ポンプ54によるイオン交換水のシリンジ63への圧送を停止する。このとき、分注制御部56は、駆動モータ66の回転方向を図6に示す場合と逆にすると共に、大径クラッチ67を「接」として駆動モータ66の回転力を大径ボールねじ68へ伝達すると共に、小径クラッチ69を「断」として駆動モータ66の回転力の小径ボールねじ71への伝達を遮断する。
【0057】
次いで、検体分注装置5は、駆動モータ66を駆動し、図8に示すように、小径ピストン65を僅かに後退させ、検体分注プローブ5c内に空気を吸引する。このとき、吸引口63bは、大径ピストン64によって塞がれているため、イオン交換水がシリンジ63内に流入することはない。また、分注制御部56は、駆動モータ66の回転方向を図7に示す場合とは逆にし、大径クラッチ67を「断」として駆動モータ66の回転力を大径ボールねじ68への伝達を遮断すると共に、小径クラッチ69を「接」として駆動モータ66の回転力を小径ボールねじ71へ伝達する。
【0058】
ここで、検体分注プローブ5c内に吸引する空気は、これから吸引する検体とイオン交換水との接触を遮断するものであるからその量は少しでよいため、図示のように、小径ピストン65の後退量ΔLは僅かでよい。
【0059】
その後、検体分注装置5は、プローブ駆動部51を駆動し、検体分注プローブ5cを検体テーブル3の検体吸引位置へ移動する。そして、検体分注装置5は、プローブ駆動部51を駆動して検体分注プローブ5cを下降させ、検体分注プローブ5cの下端を液面検知手段が検知した液面から所定量検体中へ侵入させる。
【0060】
次に、検体分注装置5は、駆動モータ66を駆動し、図9に示すように、小径ピストン65を分注する検体の量に相当する量後退させる。このとき、分注制御部56は、駆動モータ66の回転方向を図8に示す場合と同じにすると共に、大径クラッチ67を「断」として駆動モータ66の回転力を大径ボールねじ68への伝達を遮断すると共に、小径クラッチ69を「接」として駆動モータ66の回転力を小径ボールねじ71へ伝達をする。これにより、検体分注装置5は、検体分注プローブ5cに体積Vsの検体を吸引する。ここで、図9に示すシリンジ63内に存在するイオン交換水の体積をVi1とする。
【0061】
検体吸引後、検体分注装置5は、プローブ駆動部51を駆動して検体分注プローブ5cを上昇させた後、検体分注プローブ5cをキュベットホイール8の検体吐出位置へ移動する。そして、検体分注装置5は、プローブ駆動部51を駆動して検体分注プローブ5cを所定量下降させる。
【0062】
次いで、検体分注装置5は、駆動モータ66を駆動し、図10に示すように、大径ピストン64と小径ピストン65を前進させる。このとき、吸引口63bは、大径ピストン64によって塞がれている。このため、シリンジポンプ62は、大径ピストン64と小径ピストン65の移動量分に相当するイオン交換水を吐出金具63cから配管52を通って検体分注プローブ5cへと送り出す。
【0063】
この結果、図10に示すシリンジ63内に存在するイオン交換水Wの体積をVi2とすると、検体分注プローブ5cは、小径ピストン65の移動によって吸引した体積Vsの検体を反応容器9へ吐出すると共に、(Vi1−Vi2−Vs)の体積のイオン交換水を反応容器9へ吐出する。この結果、反応容器9へ吐出された検体は、併せて吐出される検体の量を上回るイオン交換水によって希釈される。なお、検体とイオン交換水を検体分注装置5のポンプ54によって吐出させることも可能であるが、吐出量の精度を考慮するとシリンジポンプ62を使用することが好ましい。
【0064】
また、大径ピストン64と小径ピストン65を前進させる場合、分注制御部56は、駆動モータ66の回転方向を図9に示す場合と逆にすると共に、大径クラッチ67及び小径クラッチ69を「接」として駆動モータ66の回転力を大径ボールねじ68及び小径ボールねじ71へ伝達する。
【0065】
このようにして検体を希釈吐出した後、検体分注装置5は、プローブ駆動部51を駆動して検体分注プローブ5cを洗浄槽2aへ戻し、検体分注プローブ5cを洗浄する。そして、図6に示す最大吸引量位置まで大径ピストン64を後退させてイオン交換水Wをシリンジ63内に最大量まで吸引した後、引き続き検体の希釈分注又は検体のみの分注を繰り返す。
【0066】
以上説明したように、シリンジポンプ62は、挿通口64cを有する大径ピストン64によってイオン交換水Wを供給し、挿通口64cから先端を出没自在に大径ピストン64に挿入される小径ピストン65によって検体や試薬を分注することができる。このため、検体分注装置5や試薬分注装置13及び自動分析装置1は、単独で検体や試薬を含む液体試料の分注と、希釈水となるイオン交換水Wを供給できるシリンジポンプ62を備えているので、装置の大型化を回避して設計上の自由度が向上させることができる。
【0067】
尚、上記実施の形態は、シリンジポンプ62を検体分注装置5で使用した場合について説明したが、試薬分注装置13で使用する場合、シリンジポンプ62は、検体分注装置5で使用した場合と同様に、試薬の分注や希釈分注に使用する他、試薬分注後の分注プローブの洗浄や洗剤の希釈分注等に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、本発明のシリンジポンプは、検体や試薬を含む液体試料の分注と希釈水の供給を単独で行うのに有用であり、特に、分注装置及び自動分析装置で使用することにより装置を小型化するのに適している。
【符号の説明】
【0069】
1 自動分析装置
2 筺体
3 検体テーブル
4 検体容器
5 検体分注装置
8 キュベットホイール
9 反応容器
10 測光装置
11 洗浄装置
12 撹拌装置
13 試薬分注装置
14 試薬テーブル
15 試薬容器
16 読取装置
17 制御部
18 入力部
19 出力部
60 ポンプユニット
61 取付構体
62 シリンジポンプ
63 シリンジ
63a 吐出口
63b 吸引口
64 大径ピストン
64a 貫通孔
64b 挿通口
65 小径ピストン
66 駆動モータ
67 大径クラッチ
68 大径ボールねじ
69 小径クラッチ
70 ベルト伝達装置
71 小径ボールねじ
Ap ピストン軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の吐出口と吸引口とが形成されたシリンジと、
長手方向に沿った貫通孔を有し、長手方向の一端部が前記シリンジに挿入された大径ピストンと、
前記貫通孔に挿通され、前記貫通孔の前記シリンジ内部に位置する端部から出没自在な小径ピストンと、
を有することを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項2】
前記小径ピストンは、前記大径ピストンよりも長いことを特徴とする請求項1に記載のシリンジポンプ。
【請求項3】
前記シリンジは、前記吐出口が前記大径ピストンの吐出移動方向の先端に形成され、前記吸引口が後端側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のシリンジポンプ。
【請求項4】
液体試料を配管内に吸引し、吸引した液体試料を所定量吐出して分注を行う分注装置であって、
配管によって接続された分注プローブと請求項1乃至3のいずれか一つに記載のシリンジポンプと、
前記シリンジポンプの前記大径ピストン及び前記小径ピストンを駆動する駆動モータと、
前記駆動モータによる前記大径ピストン又は前記小径ピストンの駆動を制御することで前記吸引口からの液体の吸引と前記吐出口からの液体の吐出を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項5】
前記分注装置は、
前記駆動モータの回転力の前記シリンジポンプへの伝達や遮断を行う大径クラッチを介して駆動され、前記大径ピストンをピストン軸方向に沿って移動させる大径ボールねじと、
前記駆動モータの回転力の前記シリンジポンプへの伝達や遮断を行う小径クラッチ及び伝達手段を介して駆動され、前記小径ピストンを前記ピストン軸方向に沿って移動させる小径ボールねじと、
を備え、
前記制御手段は、前記駆動モータの回転力の前記大径クラッチ又は前記小径クラッチによる前記大径ボールねじ又は前記小径ボールねじへの伝達や遮断による前記大径ピストン又は前記小径ピストンの移動を制御することを特徴とする請求項4に記載の分注装置。
【請求項6】
検体を分注する検体分注装置と、試薬を分注する試薬分注装置とを有し、前記検体と前記試薬とを反応させることによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、
前記検体分注装置または前記試薬分注装置は、請求項4又は5に記載の分注装置を用いて構成されることを特徴とする自動分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−163771(P2011−163771A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23275(P2010−23275)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】