説明

シリンジポンプ駆動装置

【課題】 本発明の目的は送液、吸引精度の良い多連シリンジポンプ駆動装置を提供することにある。
【解決手段】 複数のシリンジポンプ(12a〜12h)の送液及び吸引を制御するシリンジポンプ駆動装置10において、
複数のシリンジポンプのシリンジ(14a〜14h)を平行に並べて支持するシリンジ側ホルダ18と、
前記各シリンジに納められたプランジャ(16a〜16h)を平行に並べて支持するプランジャ側ホルダ20と、
前記シリンジ側ホルダーまたはプランジャ側ホルダの一方を固定する固定台22と、
前記他方のホルダーを固定されたホルダーに対して移動させるための3本の送りネジ(24−1〜24−3)と、
該送りネジの動力源となる一つまたは複数のモーター26と、を備え、
前記3本の送りネジは、前記移動側ホルダーと3点の駆動点で接触していることを特徴とするシリンジポンプ駆動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のシリンジポンプを並べ、それらの吐出、吸引の制御を行うシリンジポンプ駆動装置、特にその駆動機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジポンプは、各種試験、測定等における溶液の吐出、吸引量を高精度に制御するために多く用いられている。吐出、吸引量は、プランジャの移動量により決まるため、その移動機構として送りネジを使用したものが一般的である。
また、複数のシリンジポンプを並列に連結し同時に駆動することによって、多数の流路に対する吐出、吸引を行う駆動装置も使用されている。そのような装置の例として特許文献1に記載されたものが挙げられる。
特許文献1記載のシリンジポンプ駆動装置は、複数のシリンジを固定したホルダを一本の送りネジによって駆動し、また複数のガイドレールにより移動時のホルダのバランスをとるという構成をとるものである。
【特許文献1】米国特許第5988236号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された装置では動作点が1点であるため、各シリンジの抵抗が劣化等により変化し、ホルダの力学的バランスが悪くなると、ホルダを平行に保ちながら移動させることが困難になる。その結果、シリンジの送液、吸引精度が悪くなってしまう。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は送液、吸引精度の良い多連シリンジポンプ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明のシリンジポンプ駆動装置は、複数のシリンジポンプを並列に連結し、該複数のシリンジポンプの送液及び吸引を制御するシリンジポンプ駆動装置において、複数のシリンジポンプのシリンジを平行に並べて支持するシリンジ側ホルダと、前記各シリンジに納められたプランジャを平行に並べて支持するプランジャ側ホルダと、前記シリンジ側ホルダーまたはプランジャ側ホルダの一方を固定側ホルダー、他方を移動側ホルダとし、該固定側ホルダーを固定する固定台と、該移動側ホルダーをシリンジ方向に固定側ホルダーに対して移動させるための3本の送りネジと、該送りネジの動力源となる一つまたは複数のモーターと、を備え、前記3本の送りネジは、前記移動側ホルダーと3点の駆動点で接触していることを特徴とする。
上記のシリンジポンプ駆動装置において、前記送りネジの移動側ホルダーに対する3つの駆動点の位置は、シリンジおよび/またはピストンからの負荷力が、前記3つの駆動点に略等しくかかるように配置されていることが好適である。
【発明の効果】
【0005】
本発明のシリンジポンプ駆動装置によれば、移動側ホルダーをシリンジ方向に固定側ホルダーに対して移動させるための3本の送りネジと、送りネジの動力源となる一つまたは複数のモーターとを備え、前記3本の送りネジが前記移動側ホルダーを3点の駆動点で支持する構成となっているため、送液および吸引量を高い精度で制御することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態にかかるシリンジポンプ駆動装置の概略構成図である。図1に示したシリンジポンプ駆動装置10は、複数のシリンジポンプ12a〜12hのシリンジ14a〜14hを平行に並べて支持するためのシリンジ側ホルダ18と、それらに対応するプランジャ16a〜16hを平行に並べて支持するプランジャ側ホルダ20と、を備えている。なお、本実施形態ではシリンジポンプが8本の場合を示したが、この本数に特に限定されない。
本実施形態では、上記のシリンジ側ホルダ18を固定側ホルダ、プランジャ側ホルダ20を移動側ホルダとしている。つまり、シリンジ側ホルダ18を固定台22に固定し、それに対してプランジャ側ホルダ20が移動可能に構成されている。
3本の送りネジ24−1〜24−3はそれぞれ、その一端をシリンジ側ホルダ18に、他端を固定台22に、その軸を中心として回転可能に支持されている。また、プランジャ側ホルダ20は、送りネジ24−1〜24−3と3つの駆動点で接触しており、該駆動点にて3本の送りネジ24−1〜24−3の回転力をプランジャ側ホルダ20の駆動力に変換する。また、送りネジ24−1〜24−3は、ベルト28a,bによって動力源であるモータ26にそれぞれ接続されている。
【0007】
図2は、図1の本実施形態のシリンダ駆動装置のシリンダ方向から見たI−I方向の断面図である。図2に示すように、上記3本の送りネジ24−1〜24−3の、プランジャ側ホルダ20上の3つの駆動点の位置は、3つの駆動点にかかる負荷が略等しくなるように配置することが好適である。図2に示した例では、2つの駆動点は平行に一列に並んだプラジャ16a〜16hを両端から挟むように配置され、もう一つの駆動点はシリンジの列の中央部に位置しており、上記の2つの駆動点を結ぶ直線を底辺とし、残り一点を頂点とした二等辺三角形をなすように3つの駆動点が配置される。さらに、頂点から底辺に下ろした垂線を2対1に分割する点を通り、該垂線に垂直な直線上にシリンジが配置されている。
【0008】
以上が本実施形態の概略構成であり、次にその作用を再び図1を参照して説明する。
モータ26の回転力は送りネジ24−1、およびベルト28a、28bを介して送りネジ24−2、24−3に伝えられる。このように、各送りネジ24−1〜24−3の回転は互いに連動している。
送りネジ24−1〜24−3はプランジャ側ホルダ20の適切な3点を動作点としており、該動作点にて送りネジ24−1〜24−3の回転力がプランジャ側ホルダ20のシリンジ方向への駆動力へ変換される。つまり、送りネジ24−1〜24−3の回転量を制御することで、移動側ホルダ20の移動量を制御している。
また、モータ26は図示していない制御装置によってその回転量、回転の向きが制御されており、それによりプランジャ側ホルダ20の移動量及び移動方向が制御されている。
【0009】
特許文献1に記載されたような一本の送りネジと複数のガイドレールを組み合わせた方式では、送りネジの駆動点を負荷の中心に合わせることが必要であるが、シリンジの劣化等によって起こる各シリンジの個体差のために負荷のバランスが崩れると滑らかな動きができなくなる。
それに対して、本実施形態のシリンジポンプ駆動装置では、ホルダに取り付けられた複数のシリンジの摺動抵抗が劣化などにより変化し、ホルダの力学的バランスが変動しても、3本の送りネジによって、ホルダの適切な3点を能動的に動かす構成をとっているため、常にホルダを平行に保ちながら精度よく動かすことができる。その結果、各シリンジの送液、吸引量の精度が保たれる。
また、上記の実施形態ではシリンジ側ホルダを移動側とし、プランジャ側ホルダを固定側としたが、逆にプランジャ側ホルダを移動側、シリンジ側ホルダを固定側としてももちろんよい。
また、上記の実施形態では、一つのモータによって3本の送りネジの駆動を行ったが、複数のモータを同期させて送りネジの駆動を行う構成でもよい。
【0010】
次に上記の実施形態のシリンジポンプ駆動装置を、溶出試験機の送液機構として使用した例について説明する。溶出試験機は錠剤状の薬品を所定の試験液中に浸漬したときの溶出量などを測定するのに用いられるものである。
図3は溶出試験機の概略構成図であり、その一部を断面図とした。図3の溶出試験機100は、試験液及び被検体が投入される複数のベッセル130a〜130cと、各ベッセル内の溶液を攪拌する複数の攪拌子132a〜132cと、各ベッセル130a〜130c内へ溶液を注入、もしくは吸引する複数のノズル部134a〜134cと、シリンジポンプ駆動装置110と、該シリンジポンプ駆動装置110内の各シリンジとノズル部134a〜134cと接続するためのチューブ部136a〜136cと、を備える。図ではベッセル、攪拌子、ノズル部、チューブ部の個数を3個として示したが、この個数は特に限定されない。
【0011】
攪拌子132a〜132cは攪拌子用ヘッド部138に設置され、攪拌子用ヘッド部138は上下方向に移動可能に構成されている。
ノズル部134a〜134cは、ノズル部用ヘッド部140に設置され、ノズル部用ヘッド部140も上下方向に移動可能に構成されている。また、上記攪拌子用ヘッド部138とノズル部用ヘッド部140はそれぞれ独立した移動機構として構成されている。
溶出試験機10の攪拌子132a〜132c及びノズル部134a〜134cは、準備状態では図3に示すように上昇した状態で待機している。そして、図4(a)に示すようにベッセル130a〜130c内を攪拌子132a〜132cによって攪拌するために、まず攪拌子用ヘッド部138のみが下方向に移動し攪拌子132a〜132cをベッセル130a〜130c内の所定位置に位置させる。
【0012】
所定の時間が経過した後に、ベッセル130a〜130c内から溶液を吸引するために、ノズル部用ヘッド部140も下方向に移動しノズル部134a〜134cをベッセル130a〜130c内の所定位置に位置させる。そしてシリンジポンプ駆動装置110により、各ベッセル130a〜130c内の溶液を各シリンジ内へ吸引する。
このように、本実施形態のシリンジポンプ駆動装置は、上記の溶出試験機などの精密な送液、吸引が必要な装置に対して好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態にかかるシリンジポンプ駆動装置の概略構成図
【図2】本発明の実施形態にかかるシリンジポンプ駆動装置をシリンジ方向から見た図。
【図3】本実施形態のシリンジポンプ駆動装置を設けた溶出試験機の概略構成図
【図4】図3の溶出試験機の動作の説明図
【符号の説明】
【0014】
10 シリンジポンプ駆動装置
12a〜12h シリンジポンプ
14a〜14h シリンジ
16a〜16h プランジャ
18 シリンジ側ホルダ
20 プランジャ側ホルダ
22 固定台
24−1〜24−3 送りネジ
26 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシリンジポンプを並列に連結し、該複数のシリンジポンプの送液及び吸引を制御するシリンジポンプ駆動装置において、
複数のシリンジポンプのシリンジを平行に並べて支持するシリンジ側ホルダと、
前記各シリンジに納められたプランジャを平行に並べて支持するプランジャ側ホルダと、
前記シリンジ側ホルダーまたはプランジャ側ホルダの一方を固定側ホルダー、他方を移動側ホルダとし、該固定側ホルダーを固定する固定台と、
該移動側ホルダーをシリンジ方向に固定側ホルダーに対して移動させるための3本の送りネジと、
該送りネジの動力源となる一つまたは複数のモーターと、
を備え、
前記3本の送りネジは、前記移動側ホルダーと3点の駆動点で接触していることを特徴とするシリンジポンプ駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載のシリンジポンプ駆動装置において、
前記送りネジの移動側ホルダーに対する3つの駆動点の位置は、シリンジおよび/またはピストンからの負荷力が、前記3つの駆動点に略等しくかかるように配置されていることを特徴とするシリンジポンプ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−70868(P2006−70868A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258215(P2004−258215)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000232689)日本分光株式会社 (87)
【Fターム(参考)】