シリンジポンプ
【課題】シリンジに接続されているチューブの閉塞が生じた場合であっても、送りネジとパイプやケースが変形してしまうのを防いで、シリンジの押子を押し込む精度が低下したり、ハーフナット部材と送りネジとのかみ合いが外れてしまうのを防ぐことができるシリンジポンプを提供する。
【解決手段】シリンジポンプ1のシリンジ押子駆動部7は、送りネジ135と、シリンジ押子に突き当てられて送りネジ135の回転により送りネジに沿って移動することでシリンジ押子202をシリンジ本体201側に押すためのシリンジ押子押圧部材10と、送りネジのオネジ部分710に対して係脱可能にかみ合うメネジ部分760を有するハーフナット部材750と、送りネジ135を覆いシリンジ押子押圧部材10とハーフナット部材750を連結しているパイプ部材741を有し、送りネジ135とパイプ部材741が、同軸状になっている。
【解決手段】シリンジポンプ1のシリンジ押子駆動部7は、送りネジ135と、シリンジ押子に突き当てられて送りネジ135の回転により送りネジに沿って移動することでシリンジ押子202をシリンジ本体201側に押すためのシリンジ押子押圧部材10と、送りネジのオネジ部分710に対して係脱可能にかみ合うメネジ部分760を有するハーフナット部材750と、送りネジ135を覆いシリンジ押子押圧部材10とハーフナット部材750を連結しているパイプ部材741を有し、送りネジ135とパイプ部材741が、同軸状になっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジを装着してこのシリンジ内の薬液を患者へ送液するためのシリンジポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジポンプは、例えば集中治療室(ICU)等で使用されて、患者に対して抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血等、栄養剤等の薬液の送液処置を、高い精度で比較的長時間行うことに用いられている。シリンジポンプの薬液の流量制御は、他の輸液ポンプに比較して精密で優れている。
すなわち、薬液を充填したシリンジ本体は、シリンジポンプに対してクランプを用いてシリンジポンプの筐体に対して動かないようにセットされ、シリンジポンプは、シリンジ押子を押圧してシリンジ本体内の薬液を正確に患者側に送液するようになっている。
【0003】
シリンジポンプを使用する治療室や手術室では、異なる収容量を有する複数種類のシリンジが予め用意されている。医療従事者は、これらのシリンジから必要とする収容量のシリンジを選択して、選択された収容量のシリンジを、上述したシリンジポンプに対して装着する。
シリンジがシリンジポンプに装着される場合には、シリンジ本体の外周面がシリンジポンプの凹部の内面に密着されるとともに、シリンジの本体フランジがシリンジポンプのはめ込み部分に対してはめ込まれることで、本体フランジが把持できる。そして、モータを駆動することで、シリンジ押子押圧部材がシリンジ押子の押子フランジをシリンジ本体に向けて少しずつ押して、シリンジ本体内の薬液を、チューブを通じて患者に送液することができるようになっている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−88564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通常使用されているシリンジポンプのケースは、ガイドバー、送りネジ、パイプ、ハーフナット部材、そしてモータを有している。このガイドバーと送りネジとパイプは、ケースにおいて互いに平行に取り付けられている。この送りネジとハーフナット部材のメネジ部分はかみ合っている。ハーフナット部材は、パイプの端部に固定されている。モータが駆動されると送りネジが回転してハーフナット部材を送ることで、ハーフナット部材は、ガイドバーにより直線方向にガイド可能である。しかし、送りネジの中心軸とパイプの中心軸は、離れて平行に配置されてために、次のような問題がある。
【0006】
通常使用されているシリンジポンプにシリンジが装着されている状態で、シリンジに接続されているチューブの内部に閉塞現象が生じた場合には、チューブの内部には薬液が通らなくなるので、シリンジ押子駆動部はシリンジの押子を押し込むことができなくなる。そして、モータがさらに送りネジを回転させてしまう。
しかし、上述したように送りネジとパイプは同軸状には配置されておらず送りネジとパイプは平行状態であり相互に間隔がある。このた、このため、送りネジがハーフナット部材を送ろうとすると、送りネジと、ハーフナット部材に固定されているパイプとの間には、モーメントが生じて、送りネジやパイプやケースが変形してしまう。
このように送りネジとパイプやケースが変形すると、送りネジは鋸歯形状を有しており、ハーフナット部材と送りネジとのかみ合い状態が悪くなる。このため、シリンジの押子を押し込む精度が低下したり、ハーフナット部材と送りネジとのかみ合いが外れてしまう恐れもあり、通常使用されているシリンジポンプでは、シリンジ内の薬液を患者に対して送液できなくなる恐れがある。
そこで、本発明は、シリンジに接続されているチューブの閉塞が生じた場合であっても、送りネジとパイプやケースが変形してしまうのを防いで、シリンジの押子を押し込む精度が低下したり、ハーフナット部材と送りネジとのかみ合いが外れてしまうのを防ぐことができるシリンジポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシリンジポンプは、シリンジを装着して前記薬液を患者に送液するシリンジポンプであって、前記シリンジのシリンジ本体を設定するシリンジ載置部と、前記シリンジ載置部に設定された前記シリンジ本体のシリンジ押子を押して前記シリンジ本体内の前記薬液を押し出すシリンジ押子駆動部と、を備え、前記シリンジ押子駆動部は、ケースと、前記ケースに回転可能に配置された送りネジと、前記シリンジ押子に突き当てられて前記送りネジの回転により前記送りネジに沿って移動することで前記シリンジ押子を前記シリンジ本体側に押すためのシリンジ押子押圧部材と、前記送りネジのオネジ部分に対して係脱可能にかみ合うメネジ部分を有するハーフナット部材と、前記送りネジを覆い、前記シリンジ押子押圧部材と前記ハーフナット部材とを連結しているパイプ部材と、を有し、前記送りネジと前記パイプ部材は、同軸状になっていることを特徴とする。
上記構成によれば、シリンジに接続されているチューブの閉塞が生じた場合であっても、送りネジとパイプやケースが変形してしまうのを防いで、シリンジの押子を押し込む精度が低下したり、ハーフナット部材と送りネジとのかみ合いが外れてしまうのを防ぐことができる。すなわち、送りネジとパイプ部材は同軸状になっているので、送りネジとパイプ部材が別々に平行に配置されている場合に比べて、シリンジに接続されているチューブの閉塞が生じた場合であっても、モーメントが生じることがなく送りネジとパイプやケースが変形してしまうのを防いで、シリンジの押子を押し込む精度が低下したり、ハーフナット部材と送りネジとのかみ合いが外れてしまうのを防ぐことができる。
【0008】
好ましくは、前記パイプ部材は、前記送りネジを覆う内側パイプ部材であり、さらに、前記ハーフナット部材を保持するカバー部材と、前記内側パイプ部材を覆い、前記カバー部材と前記シリンジ押子押圧部材とを連結する外側パイプ部材とを有し、前記送りネジと前記内側パイプ部材と前記外側パイプ部材は、同軸状になっていることを特徴とする。
上記構成によれば、送りネジと内側パイプ部材と外側パイプ部材は、同軸状になっているので、外側パイプ部材は、内側パイプ部材と送りネジを保護し、内側パイプ部材と送りネジに対して薬液が付着するのを防止できる。
【0009】
好ましくは、前記シリンジ押子押圧部材は、解除操作部を有し、前記内側パイプ部材の一端部は、前記解除操作部に連結され、前記内側パイプ部材の他端部には、前記解除操作部を操作すると前記ハーフナット部材を回転して前記ハーフナット部材の前記メネジ部分を前記送りネジの前記オネジ部分から離すためのクラッチ部材が設けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、解除操作部を手動により操作してクラッチ部材を動かすと、ハーフナット部材のメネジ部分は、送りネジのオネジ部分から離すことができるので、送りネジの存在に関わらず、シリンジを装着する際に手動によりシリンジ押子押圧部材をシリンジ押子に対して突き当てることができる。
【0010】
好ましくは、前記送りネジを回転駆動するモータを有し、前記モータの出力軸に固定されたギアと、前記送りネジに固定されたギアがかみ合っていることを特徴とする。
上記構成によれば、モータを駆動することで、シリンジ押子押圧部材によりシリンジ押子をシリンジ本体側に押すことができる。
【0011】
好ましくは、前記シリンジ載置部には、前記シリンジ本体の本体フランジを着脱可能に挟み込んで押さえる本体フランジ押さえ部材を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、シリンジ本体の本体フランジは、本体フランジ押さえ部材により挟み込んで押さえることができ、シリンジ本体をシリンジ載置部に対して確実に保持できるので、シリンジ押子を、シリンジ押子押圧部材に対して正確に突き当てることができる。
【0012】
好ましくは、前記シリンジポンプの本体の上部分には、情報を表示する表示部と、操作ボタンを有する操作パネル部が配置され、前記シリンジポンプの本体の下部分には、前記シリンジ載置部と前記シリンジ押子駆動部が配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者は、本体の上部分の表示部の情報を確認しながら、シリンジからの薬液の送液作業を行うことができる。そして、医療従事者は、本体の上部分の表示部の情報を確認しながら、操作パネル部の操作ボタンを操作することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、シリンジに接続されているチューブの閉塞が生じた場合であっても、送りネジとパイプやケースが変形してしまうのを防いで、シリンジの押子を押し込む精度が低下したり、ハーフナット部材と送りネジとのかみ合いが外れてしまうのを防ぐことができるシリンジポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のシリンジポンプの実施形態を示す斜視図。
【図2】図1に示すシリンジポンプをW方向から見た斜視図。
【図3】複数種類の大きさのシリンジの例を示す斜視図。
【図4】シリンジポンプにおける電気な構成例を示す図。
【図5】図2に示すシリンジ載置部とシリンジ押子駆動部の一部分を示す斜視図。
【図6】図5に示すシリンジ載置部とシリンジ押子駆動部の一部分を、E方向から拡大して見た斜視図。
【図7】図7(A)は、図5と図6に示す本体フランジ押さえ部材の形状例を示す斜視図であり、図7(B)は、図6におけるJ−J線から見たこの本体フランジ押さえ部材が固定されている状態を示す図。
【図8】比較的収容量の大きいシリンジの本体フランジが本体フランジ押さえ部材を用いてはめ込んで把持された状態を示す図。
【図9】フロントカバーと、シリンジ押子駆動部と、本体フランジ押さえ部材と、シリンジ押子押圧部材と、カバー部材を示す後側から見た分解斜視図。
【図10】図9に示すシリンジ押子駆動部の構造例を示しており、図9のシリンジ押子駆動部のES−ES線における断面を示す図。
【図11】シリンジ押子駆動部の駆動部本体の構造例を示す断面を有する斜視図。
【図12】シリンジ押子押圧部材とシリンジ押子押圧部材の押圧操作部の構造例を示す斜視図。
【図13】シリンジ押子押圧部材の押圧操作部の構造例を示す斜視図を示す図。
【図14】比較例であるシリンジポンプのシリンジ押子駆動部の構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明のシリンジポンプの実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示すシリンジポンプをW方向から見た斜視図である。
図1と図2に示すシリンジポンプ1は、例えば集中治療室等で使用され、患者に対して、抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血等、栄養剤等の薬液の微量注入処置を、高い精度で比較的長時間行うことに用いられる微量持続注入ポンプである。
【0016】
図1と図2に示すように、シリンジポンプ1は、例えば薬液を充填したシリンジ200のシリンジ本体201を、クランプ5を用いて動かないようにセットすることができる。図2に示すシリンジ押子駆動部7のモータ133が、図2では図示していない送りネジを回転することで、シリンジ押子駆動部7のシリンジ押子押圧部材10は、シリンジ200のシリンジ押子202をシリンジ本体201に対してT方向に押圧して、シリンジ本体201内の薬液を、図2に示すようにチューブ203と留置針204を介して、患者Pに対して正確に送液する。このシリンジ押子押圧部材10は、スライダあるいはシリンジ押子押圧ユニットともいう。
図2に示すように、シリンジポンプ1は、筐体2を有し、この筐体2は耐薬品性を有する成型樹脂材料により一体成型されており、フロントカバー2Fとリアカバー2Rを接合して組み立てることにより、液密性能を有する箱体として構成されている。これにより、後で説明するように、仮に薬液や水分等がかかってもシリンジポンプ1の内部に侵入するのを防ぐことができる防沫および防滴(防水)処理構造を有している。
【0017】
まず、シリンジポンプ1の筐体2に配置された各要素について説明する。
図2に示すように、シリンジポンプ1は、筐体2と取手2Tを有している。筐体2の上部分2Aには、表示部3と、操作パネル部4が配置されている。筐体2の下部分2Bには、シリンジ載置部6とシリンジ押子駆動部7が配置されている。これにより、医療従事者は、筐体2の上部分2Aの表示部3にカラー表示される情報内容を目視で確認しながら、シリンジ200からの薬液の送液作業を行うことができる。そして、医療従事者は、筐体2の表示部3にカラー表示される情報内容を確認しながら、操作パネル部4の操作ボタンを操作することができる。
【0018】
図1と図2に示す表示部3は、カラーグラフィック表示することができるカラー液晶表示装置(LCD)である。この表示部3は、筐体2の上部分2Aの左上位置であって、シリンジ載置部6とシリンジ押子駆動部7の上側に配置されている。操作パネル部4は、筐体2の上部分2Aにおいて表示部3の右側に配置され、操作パネル部4には、操作ボタンとしては、図示例では、パイロットランプ4A、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4E等が配置されている。
【0019】
図2に示す筐体2の上部分2Aは、筐体2の上半分の部分である。筐体2の下部分2Bは、筐体2の下半分の部分である。
図1と図2に示す例では、シリンジ載置部6とシリンジ押子駆動部7は、X方向に沿って並べて配置されている。シリンジ載置部6は、複数種類の収容量の異なるシリンジの中から、例えば必要とする収容量のシリンジ200を選択して着脱可能にはめ込んで装着することができる。
【0020】
図1と図2に示すシリンジ載置部6は、シリンジ本体201を収容する収容部8と、クランプ5と、シリンジ200の本体フランジ209をはめ込んで把持するための本体フランジ押さえ部材500を有している。収容部8は、凹型のシリンジ本体保持部8Dを有している。収容部8の左側の端部の壁部分には、チューブ203を着脱可能に挟み込むためのチューブ固定部9が形成されている。このチューブ固定部9は、図2に示すようにチューブ203の一部を挟み込んで固定する溝部分である。
【0021】
図1と図2において、医療従事者が、クランプ5を操作してシリンジ200をシリンジ載置部6から取り外す際には、例えばクランプ5を図示しないスプリングの力に抗してY1方向(手前方向)に引っ張って、しかもR1方向に90度回すことで、クランプ5はシリンジ本体201の外周面から離れる。これにより、シリンジ本体201は、クランプ5による固定を解除して、収容部8のシリンジ本体保持部8Dから取り出すとともに、チューブ203はチューブ固定部9内から取り外すことができる。
また、このクランプ5を操作してシリンジ200をシリンジ載置部6の収容部8に収容して取り付ける際には、クランプ5を図示しないスプリングの力に抗してY1方向に引っ張ってR2方向に90度回して、スプリングの力によりY2方向に戻すことで、シリンジ本体201は、収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容するとともに、チューブ203をチューブ固定部9内にはめ込んだ状態で、クランプ5により固定することができる。
【0022】
図1と図2に示すように、シリンジ本体201が収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容して装着されると、シリンジ押子202がシリンジ押子駆動部7内に配置される。このシリンジ押子駆動部7は、シリンジ押子押圧部材10を有している。制御部からの指令によりモータ133が駆動すると、このシリンジ押子押圧部材10は、シリンジ押子202の押子フランジ205を、シリンジ本体201に対して相対的にT方向に沿って少しずつ押す。これにより、シリンジ本体201内の薬液は、チューブ203と留置針204を通じて、患者Pに対して高い精度で比較的長時間かけて送液することができる。なお、図1と図2におけるX方向、Y方向、Z方向は互いに直交しており、Z方向は上下方向である。
【0023】
図3は、上述した複数種類の大きさのシリンジの例を示す斜視図である。
図1と図2では、最も薬液の収容量が大きいシリンジ200が固定されている例を示している。図3(A)に示す最も薬液の収容量が大きいシリンジ200は、シリンジ本体201と、シリンジ押子202を有しており、シリンジ本体201は本体フランジ209を有し、シリンジ押子202は押子フランジ205を有している。シリンジ本体201には、薬液の目盛210が形成されている。シリンジ本体201の出口部211には、フレキシブルなチューブ203の一端部が着脱可能に接続される。
【0024】
図3(B)に示す薬液の収容量が中くらいのシリンジ300は、シリンジ本体301と、シリンジ押子302を有しており、シリンジ本体301は本体フランジ309を有し、シリンジ押子302は押子フランジ305を有している。シリンジ本体301には、薬液の目盛310が形成されている。シリンジ本体301の出口部311には、フレキシブルなチューブ203の一端部が着脱可能に接続される。
図3(C)に示す最も薬液の収容量が小さいシリンジ400は、シリンジ本体401と、シリンジ押子402を有しており、シリンジ本体401は本体フランジ409を有し、シリンジ押子402は押子フランジ405を有している。シリンジ本体401には、薬液の目盛410が形成されている。シリンジ本体401の出口部411には、フレキシブルなチューブ203の一端部が着脱可能に接続される。
図3(A)に示すシリンジ200は、例えば薬液の収容量が10mLであり、図3(B)に示すシリンジ300は、例えば薬液の収容量が5mLであり、図3(C)に示すシリンジ400は、例えば薬液の収容量が2.0mLである。
【0025】
図3に示すように、シリンジ200,300,400の各シリンジ本体201,301,401は、それぞれ大きさが異なり、シリンジ本体の収容量が大きくなるにしたがって、本体フランジ209,309,409のサイズが大きくなっている。シリンジ300,400の各シリンジ本体301,401は、図1と図2に示すシリンジ200と同様にして、収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容して固定することができる。しかし、図3では、3種類のシリンジを図示しているが、これに限らず、シリンジが収容できる薬液の収容量は、2.0mLから50mL、例えば20mL、30mL、50mL等であっても良い。シリンジポンプ1に対して設定できるシリンジの収容量は、任意に選択できる。
【0026】
次に、図4を参照して、図1と図2に示すシリンジポンプ1における電気な構成例を説明する。
図4において、シリンジポンプ1は、全体的な動作の制御を行う制御部(コンピュータ)100を有している。この制御部100は、例えばワンチップのマイクロコンピュータであり、ROM(読み出し専用メモリ)101,RAM(ランダムアクセスメモリ)102、不揮発性メモリ103、そしてクロック104を有する。クロック104は、所定の操作により現在時刻の修正ができ、現在時刻の取得や、所定の送液作業の経過時間の計測、送液の速度制御の基準時間の計測等ができる。
【0027】
図4に示す制御部100は、電源スイッチボタン4Sと、スイッチ111が接続されている。スイッチ111は、電源コンバータ部112と例えばリチウムイオン電池のような充電池113を切り換えることで、電源コンバータ部112と充電池113のいずれかから制御部100に電源供給する。電源コンバータ部112は、コンセント114を介して商用交流電源115に接続されている。
図4において、収容部8内には、一対の検出スイッチ120,121が配置されている。検出スイッチ120,121は、シリンジ200のシリンジ本体201が、収容部8内に正しく配置されているかどうかを検知して、制御部100に通知する。
【0028】
図4に示すクランプセンサとしてのポテンションメータ122は、クランプ5に連結されている。このポテンションメータ122は、シリンジ本体201をクランプ5によりクランプした状態で、クランプ5がY2方向に関して移動する際のクランプ5の移動量を検出することで、どの収容量のシリンジ本体201(301,401)がクランプ5によりクランプされているかどうかを、制御部100に検出信号を送って通知する。制御部100は、このポテンションメータ122からの検出信号によりクランプ5のY方向に関する移動量を得て、例えば図3に示す複数種類のシリンジ本体201,301,401の内のどのシリンジが装着されているかを判別することができる。
図4に示すシリンジ押子駆動部7のモータ133は、制御部100の指令によりモータドライバ134により駆動されると、送りネジ135を回転させてシリンジ押子押圧部材10をT方向に移動させる。これにより、シリンジ押子押圧部材10は、シリンジ押子202をT方向に押圧して、図2に示すシリンジ本体201内の薬液を、チューブ203を通じて患者Pに対して留置針204を介して正確に送液する。
【0029】
図4において、表示部ドライバ130は、制御部100の指令により表示部3を駆動して、各種情報や報知内容等を表示するようになっている。スピーカ131は、制御部100の指令により各種の報知内容を音声により告知することができる。
制御部100は、通信ポート140を通じて、例えばデスクトップコンピュータのようなコンピュータ141に対して双方向に通信可能である。このコンピュータ141は、薬液データベース(DB)150に接続されており、薬液データベース150に格納されている薬液情報MFは、コンピュータ141を介して、制御部100に取得して、制御部100の不揮発性メモリ103に記憶させることができる。制御部100は、記憶した薬液情報MFを基にして、表示部3には薬液情報MF等を表示することができる。
図4において、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4Eは、制御部100に電気的に接続されている。
この他に、制御部100には、本体フランジ209が、本体フランジ押さえ部材500(図5から図8を参照)により把持されたことを検出するための検出器としてのフォトカプラセンサ250が、電気的に接続されている。このフォトカプラセンサ250は、発光素子251と、この発光素子251からの光を受光する受光素子252を有している。
【0030】
次に、図5,図6,図7を参照して、シリンジ載置部6の詳しい構造を説明する。
図5は、図2に示すシリンジ載置部6とシリンジ押子駆動部7の一部分を示す斜視図である。図6は、図5に示すシリンジ載置部6とシリンジ押子駆動部7の一部分を、E方向から拡大して見た斜視図である。
図5に示すシリンジ載置部6は、シリンジ本体201を収容する収容部8と、クランプ5と、シリンジ200の本体フランジ209(図3を参照)をはめ込んで押さえて把持するための本体フランジ押さえ部材500と、本体フランジ検出部600を有している。
図1と図2に示すように、一例として、シリンジ200のシリンジ本体201がシリンジ載置部6に設定され、シリンジ200のシリンジ本体201が、クランプ5を用いて固定されている。図5と図6に示すように、シリンジ載置部6の収容部8は、シリンジ本体201の一部分もしくは全部を収容することができる凹部であり、収容部8の軸方向はX方向に沿っている。シリンジ本体201の外周面の一部分が収容部8のシリンジ本体保持部8Dの内面に対して密接され、シリンジ本体201の外周面の残り部分は、外側に露出されている。
図5と図6に示すように、本体フランジ押さえ部材500と本体フランジ検出部600は、本体フランジの把持検出部650を構成している。本体フランジの把持検出部650は、本体フランジ押さえ部材500が一例としてシリンジ200の本体フランジ209をはめ込んで把持したことを、確認するために設けられている。本体フランジ検出部600は、図4に示すフォトカプラセンサ250を有している。
【0031】
図5と図6を参照して、本体フランジ押さえ部材500の構造を説明する。
図5と図6に示す本体フランジ押さえ部材500は、熱可塑性樹脂で形成され、収容部8のシリンジ本体保持部8Dの右側側面部8Vに対して平行に配置されている。この本体フランジ押さえ部材500は、Y方向とZ方向で形成される面に配置されている。
本体フランジ押さえ部材500の先端部501は、2つの導入部502,503と、これらの導入部502,503の間に形成されている凹部504を有している。
図7(A)は、図5と図6に示す本体フランジ押さえ部材500の形状例を示す斜視図であり、図7(B)は、図6におけるJ−J線から見ており、この本体フランジ押さえ部材500が固定されている状態を示す図である。
図8は、シリンジ200の本体フランジ209が、本体フランジ押さえ部材500を用いてはめ込んで把持された状態を示している。
【0032】
図7(A)に示すように、本体フランジ押さえ部材500は、先端部501と、2つの基部506A,506Bと、2つの弾性変形部588A,588Bを有している。先端部501と各基部506A,506Bは、それぞれ細い弾性変形部588A,588Bに一体的に形成されている。これにより、先端部501がシリンジ200の本体フランジ209により押された場合に、先端部501が基部506に対して弾性変形部588A,588Bが弾性変形することで容易にWV方向に移動できる。
図6と図7(A)に示すように、先端部501は、2つの導入部502,503を有している。これらの導入部502,503の内面502A,503Aは、先細りになるように傾斜面になっている。これにより、図7(A)から図8に示すように、医療従事者は、シリンジ200の本体フランジ209を、2つの導入部502,503を用いて、本体フランジ押さえ部材500の内面509とシリンジ本体保持部8Dの右側側面部8Vとの間に、Y2方向に沿って容易に挿入することができるメリットがある。
【0033】
図6に示すように、この導入部502は、シリンジポンプ1の使用時において、上側に位置し、導入部503は下側に位置している。図7に示すように、凹部504の中央位置には、好ましくはさらに小さい凹部505が形成されている。この小さい凹部505は、シリンジ200が装着された状態で、図7(B)に示すシリンジ押子202の羽根部分202Wの一部分を入れ込むための溝部分である。これにより、本体フランジ209を本体フランジ押さえ部材500の内面509と右側側面部8Vの間にはめ込んで把持する際に、シリンジ押子202の羽根部分202Wが本体フランジ押さえ部材500の凹部504の面に乗り上げてしまうことが無い。このため、シリンジ200を所定に位置に確実に固定できる。このことは、シリンジ200だけでなく、図3に示すシリンジ300,400の場合も同様である。こうして、薬液の収容量が2.0mL〜50mLのシリンジを使用することができる。
【0034】
次に、図5と図6に示す覆い部材としてのブーツ800の形状例について説明する。
このブーツ800は、図4に示すように後で説明する送りネジ135等の機械要素の周囲を覆っており、伸縮可能な部材である。図5に示すように、ブーツ800は、収容部8のシリンジ本体保持部8Dの右側側面部8Vと、シリンジ押子押圧部材10のカバー部材80の間に配置されている。ブーツ800は、図4に示す送りネジ135等の機械要素を覆うために防沫構造になっている。これにより、例えばシリンジ本体201内の薬液がこぼれたり、上方に配置されている点滴液がこぼれ落ちたり、周辺で用いる消毒液等が飛散しても、送りネジ135等の機械要素に対して付着するのを防ぐことができる。
ブーツ800は、伸縮可能な例えばゴムやプラスチックにより作られており、シリンジ押子押圧部材10がX1方向とX2方向に移動するのに伴って、伸張と収縮ができる。図6に例示するように、ブーツ800は、例えば複数の第1凸部分811,812,813,814等と、第1凸部分よりは直径の小さい複数の第2凸部分821等と、左右の連結部分830を有している。これにより、シリンジ押子押圧部材10が左側に移動されてブーツ800が収縮されると、第2凸部分821がより直径の大きい第1凸部分の間に入り込むので、収縮した状態の長さを小さくできる。このため、同じ直径の凸部分を配列する場合に比べて、シリンジ押子押圧部材10は、ブーツ800に邪魔されずにより左側に移動することができ、シリンジ押子押圧部材10の移動量を増加できる。
【0035】
図7(A)と図7(B)に示す本体フランジ押さえ部材500は、断面ほぼL字型を有しており、弾性変形可能な金属、例えばステンレス、あるいは弾性変形可能なプラスチックにより作られている。本体フランジ押さえ部材500は、シリンジ本体保持部8Dの右側側面部8Vに対してほぼ平行になるように、シリンジポンプの筐体2の一部分507に対して、固定されている。本体フランジ押さえ部材500の一端部は、取り付け基部506である。本体フランジ押さえ部材500の他端部は、導入部502と導入部503を有し、移動が可能な自由端部である。図7(B)に示すように、この取り付け基部506は、シリンジポンプの筐体2の一部分507に対して、ネジ506Nとボス50Bを用いて固定されている。
図7に示すように、本体フランジ押さえ部材500の内面側には、2つの突起部分511が、間隔をあけて、しかも図7(B)に示す右側側面部8Vに向けて突出して形成されている。図7(B)から図8に示すように、本体フランジ209が本体フランジ押さえ部材500の内面509と右側側面部8Vの間に挿入されると、これらの突起部分511は、本体フランジ209の外面209Sに必ず突き当てられる部分である。
【0036】
図7(B)において、本体フランジ押さえ部材500の内面509と右側側面部8Vの間に形成される隙間CGは、本体フランジ209の厚みGよりも小さく設定されている。これにより、本体フランジ209を挿入して固定する場合には、本体フランジ209は、本体フランジ押さえ部材500をWV方向に弾性変形させることで、2つの突起部分511が、本体フランジ209の外面209Sを、弾性力で押し付けて確実に安定して把持することができる構造になっている。
図1に示すように、シリンジ200が収容部8のシリンジ本体保持部8Dに密接して配置されると、図8に示すように、本体フランジ209の一部分がシリンジ本体保持部8Dの右側側面部8Vと本体フランジ押さえ部材500の先端部501と、の間に挿入される。すなわち、図7(B)と図8に示すように、本体フランジ209が、Y2方向に沿って本体フランジ押さえ部材500の内面509と右側側面部8Vとの隙間CGにはめ込まれると、図8に例示するように、本体フランジ押さえ部材500は、本体フランジ209の挿入により、正立した状態から図7(B)に示す取り付け基部506を中心としてWV方向に押されることで、弾性変形して少し傾いた状態になる。
図8に示すように、本体シリンジ209の一部分は、右側側面部8Vと本体フランジ押さえ部材500の間に挟まれた状態で、しかも本体フランジ押さえ部材500が、弾性変形する際の反発力により、平坦な右側側面部8Vと本体フランジ押さえ部材500の突起部分511との間に挟まれて把持される。これにより、図1と図2に示すように、シリンジ200は、本体フランジ209を用いて確実に把持することができる。
【0037】
図9は、フロントカバー2Fと、シリンジ押子駆動部7と、本体フランジ押さえ部材500と、シリンジ押子押圧部材10と、カバー部材2Vを示す後側から見た分解斜視図である。
図9では、フロントカバー2Fの内面側を示しており、フロントカバー2Fは、本体収容部2Mと、この本体収容部2Mから側方に延長して形成された延長部2Nを有している。本体収容部2Mと延長部2Nの内部には、シリンジ押子駆動部7と本体フランジ押さえ部材500とシリンジ押子押圧部材10が収容されている。延長部2Nには、カバー部材2Vがねじにより固定されている。
図9に示すシリンジ押子駆動部7は、駆動部本体700と、シリンジ押子押圧部材10と、このシリンジ押子押圧部材700に連結されているシリンジ押子押圧部材の押圧操作部701を有する。すでに説明したブーツ800は、本体フランジ押さえ部材500とシリンジ押子押圧部材10との間に配置されている。駆動部本体700は、フロントカバー2Fの本体収容部2Mの下部内に収容され、シリンジ押子押圧部材の押圧操作部701とシリンジ押子押圧部材10は、延長部2N内に収容されている。
【0038】
図10は、図9に示すシリンジ押子駆動部7の構造例を示しており、図9のシリンジ押子駆動部7のES−ES線における断面を示す図である。図11(A)は、シリンジ押子駆動部7の駆動部本体700の構造例を示す断面を有する斜視図であり、図11(B)は、駆動部7の駆動部本体700の構造例を反対側から見た断面を有する斜視図である。なお、図10と図11では、図面の簡単化のために、ブーツ800の図示は省略している。
図10と図11を参照して、シリンジ押子駆動部7の駆動部本体700と、シリンジ押子押圧部材の押圧操作部701の構造例を説明する。図10と図11(A)に示すように、駆動部本体700は、ケース702と、モータ133と、サポート部材703と、2本のガイドバー704,705と、ブッシュガイド706を有している。
【0039】
図10と図11(A)に示すように、ケース702は、例えば側面部702A、側面部702B、端面部702Cを有している。側面部702Aと側面部702Bは、X方向に長く形成され、平行である。側面部702Aと側面部702Bの各一端部は、端面部702Cになっているが、側面部702Aと側面部702Bの各他端部は、サポート部材703の取付け部材707に対して固定されている。
サポート部材703は、平板状の取付け部材707と、この取り付け部材707に固定されているカバー部材708を有している。ケース702とサポート部材703は、プラスチックあるいは金属により作られている。取付け部材707には、モータ133が取り付けられている。図10に例示するように、このモータ133の出力軸にはギア133Gが固定されており、送りネジ135には別のギア135Gが固定されている。このギア133Gは、ギア135Gにかみ合っている。ギア133G、135Gは、カバー部材708内に収容されている。これにより、モータ133の出力軸が回転すると、送りネジ135は、ギア133G、135Gを介して、正回転と逆回転を行うことができる。
【0040】
図10と図11(A)に示すように、送りネジ135は、ケース702の中央において、回転中心軸LLCに沿って回転可能に配置されている。回転中心軸LLCは、X方向に平行である。送りネジ135は、オネジ部分710を有している。オネジ部分710は、例えば鋸歯ネジを採用することができる。送りネジ135の一端部は、円柱状の回転支持部分711を有している。送りネジ135の他端部は、ギア135Gを固定しており、送りネジ135の他端部は、転がり軸受712により回転可能に支持されている。この転がり軸受712は、取付け部材707に固定されている。
【0041】
送りネジ135の回転支持部分711の外径寸法は、オネジ部分710の外径寸法よりも大きい。これにより、送りネジ135の回転支持部分711を内側パイプ部材741の内周面に内接するように回転させることができ、送りネジ135は、転がり軸受712と内側パイプ部材741の内周面を用いて両端支持するようにして、内側パイプ部材741内においてスムーズに回転することができる。
ガイドバー704,705の両端部は、取付け部材707と端面部702Cに対してそれぞれ固定されており、X方向に沿って平行に配置されている。ガイドバー704,705は、送りネジ135を挟んで、送りネジ135の両側に平行に配置されている。ブッシュガイド706は、端面部702Cの外面に固定されている。
図10に示すモータ133が、図4に示す制御部100の指令によりモータドライバ134により駆動されると、ギア133G、135Gを介して送りネジ135を正逆転することができる。
【0042】
次に、シリンジ押子駆動部7のシリンジ押子押圧部材10と、シリンジ押子押圧部材の押圧操作部701の構造例を、図10から図13を参照して説明する。図12は、シリンジ押子押圧部材10と押圧操作部701のシャフトクラッチ部720の構造例を示す斜視図であり、図13は、シリンジ押子押圧部材の押圧操作部701のシャフトクラッチ部720の構造例を示す斜視図である。
図10と図12に示すように、シリンジ押子押圧部材10は、例えばプラスチックにより作られており、本体部80と、手動操作用の解除操作部730を有している。医療従事者が指で解除操作部730をRR方向に押すと、解除操作部730は、本体部80において、図12(A)に示す初期状態から、図12(B)に示す操作後の状態になるように、RR方向に沿って、回転中心軸LLCを中心としてスプリング747の力に抗して回転操作させることができる。そして、医療従者が解除操作部730から指を離すと、スプリング747の力により図12(B)に示す操作後の状態から、図12(A)に示す初期状態に自動的に復帰させることができる。
【0043】
図10と図11に示すシリンジ押子押圧部材の押圧操作部701は、次のような要素を有している。シリンジ押子押圧部材の押圧操作部701は、内側パイプ部材741と、外側パイプ部材742と、ハーフナット部材750と、カバー部材745を有している。
内側パイプ部材741は第1パイプであり、外側パイプ部材742は内側パイプ部材741の外側に配置される第2パイプである。内側パイプ部材741は、送りネジ135の周囲を覆っており、さらに外側パイプ部材742は、内側パイプ部材741の周囲を覆っている。送りネジ135と内側パイプ部材741と外側パイプ部材742は、回転中心軸LLCを中心として、同軸状に配置されている。外側パイプ部材742は、内側パイプ部材741と送りネジ135を保護している。
図10に示すように、内側パイプ部材741の一端部741Aは、解除操作部730に対して機械的に連結されている。そして、内側パイプ部材741の他端部741Bは、ハーフナット部材750に対して機械的に連結されている。これにより、医療従事者が指で解除操作部730をRR方向に押すと内側パイプ部材741が回転するので、ハーフナット部材750は、内側パイプ部材741を介して、解除操作部730の回転角度と同じ角度TUだけRR方向に回転させることができる。
【0044】
一方、図10に示すように、外側パイプ部材742の一端部742Aは、シリンジ押子押圧部材10の本体部80に対して機械的に連結されている。外側パイプ部材742の他端部742Bは、ハーフナット部材750のカバー部材745に対して機械的に連結されている。ブッシュガイド706内には、外側パイプ部材742が通っており、外側パイプ部材742は、ブッシュガイド706がT(X2方向)に沿った移動する際に、ブッシュガイド706をガイドする部材である。
これにより、シリンジ押子押圧部材10と、ハーフナット部材750のカバー部材745は、外側パイプ部材742を用いて一体的になっており、医療従事者がシリンジ押子押圧部材10を持ってT方向(X2方向)またはX1方向に手動により移動することで、シリンジ押子押圧部材10とハーフナット部材750のカバー部材745を、T方向(X2方向)またはX1方向に一体的に移動させることができる。
【0045】
図13と図12に示すように、2本のガイドバー704,705が、カバー部材745穴部に通されている。これによりカバー部材745は、2本のガイドバー704,705によりX方向に直線移動が可能である。図12に示すように、ハーフナット部材750は、カバー部材745内に配置されており、このハーフナット部材750の穴部751には、1本のガイドバー704は通っているが、ハーフナット部材750には、もう1本のガイドバー705は通っていない。これにより、ハーフナット部材750は、1本のガイドバー704を中心として搖動可能である。
図12に示すように、ハーフナット部材750は、ほぼ長方形状の板状の部材であり、突起部752と、開口部753を有している。突起部752とカバー部材745の固定部分746の間には、ハーフナット部材750に対する付勢部材としてのスプリング747が設けられている。
【0046】
図12に示す開口部753は、ほぼ長方形状に形成されており、この開口部753内には、送りネジ135のオネジ部分710が通っている。開口部753は、縁部分753A,753B,753C,753Dにより形成されており、縁部分753Aには、ほぼ半円形状のメネジ部分760が形成されている。このメネジ部分760は、ハーフナット部分とも呼ぶことができる。このように、ハーフナット部材750には、ほぼ半円形状のメネジ部分760が形成されていることから、特にハーフナット部材と呼んでいる。図12(A)に示す初期状態PS1では、ハーフナット部材750のメネジ部分760は、送りネジ135のオネジ部分710にかみ合っている。
これに対して、図12(B)に示す操作後の状態PS2では、ハーフナット部材750は、カバー部材745内において、スプリング747の力に抗して、ガイドバー704を中心としてRR方向に角度TUだけ回転することで、ハーフナット部材750のメネジ部分760は、送りネジ135のオネジ部分710から離れる。このことから、メネジ部分760と送りネジ135のオネジ部分710とのかみ合い状態を解除することができる。
【0047】
ここで、ハーフナット部材750を図12(A)に示す初期状態PS1から図12(B)に示す操作後の状態PS2まで回転操作させる手段について説明する。
ハーフナット部材750を回転操作させる手段は、図12に示す解除操作部730と、内側パイプ部材741と、そしてクラッチ部材770により構成されている。
図10に示すように、すでに説明したように、解除操作部730と内側パイプ部材741の一端部741Aは機械的に連結されている。図12に示すように、この内側パイプ部材741の外周囲には、クラッチ部材770が半径方向に突出して固定されている。クラッチ部材770は、図12に示すように、ハーフナット部材750の縁部分753Aに対して突き当てて配置されている。
【0048】
これにより、図12(A)に示すように、医療従事者が指で解除操作部730をRR方向に押すと、解除操作部730のRR方向への移動とともに、内側パイプ部材741とクラッチ部材770がRR方向に回転する。このため、ハーフナット部材750は、図12(B)に示すように、スプリング747の力に抗して、角度TUだけRR方向に回転させることができる。このように、ハーフナット部材750が回転すると、図12(A)に示す初期状態PS1では、ハーフナット部材750のメネジ部分760が、送りネジ135のオネジ部分710にかみ合っているが、図12(B)の操作後の状態PS2では、ハーフナット部材750のメネジ部分760は、送りネジ135のオネジ部分710から離れる。このようにして、メネジ部分760と送りネジ135のオネジ部分710とのかみ合い状態を解除することができるようになっている。そして、医療従事者が解除操作部730から指を離すと、スプリング747の力により、ハーフナット部材750は、図12(B)の操作後の状態PS2から図12(A)に示す初期状態PS1に、自動的に戻すことができる。
【0049】
次に、本発明の実施形態のシリンジポンプ1の操作例を説明する。
医療従事者は、図3に示す複数種類のシリンジ200,300,400の中から、例えばシリンジ200を選択して、図1と図2に示すように、シリンジ200をシリンジポンプ1に対して装着する。
シリンジ本体201は、収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容するとともに、チューブ203をチューブ固定部9内にはめ込んだ状態で、クランプ5により固定する。これにより、シリンジ本体201は、収容部8のシリンジ本体保持部8D内に確実に固定できる。
【0050】
しかも、図7(A)から図8に示すように、本体シリンジ209の一部分は、右側側面部8Vと本体フランジ押さえ部材500の間に挟まれた状態で、しかも本体フランジ押さえ部材500が弾性変形する際の反発力により、平坦な右側側面部8Vと本体フランジ押さえ部材500の突起部分511との間に挟まれて把持される。これにより、図1と図2に示すように、シリンジ200は、本体フランジ209を用いて確実に把持することができる。
しかも、図1と図2に示すように、シリンジ本体201が収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容して装着されると、シリンジ押子202がシリンジ押子駆動部7内に配置される。この場合に、シリンジ押子押圧部材10の本体部80の突き当て面部80Dには、このシリンジ押子202の押子フランジ205を突き当てる必要がある。
そこで、医療従事者は、図10と図12(A)に示すように、指でシリンジ押子押圧部材10の解除操作部730をRR方向に押すと、解除操作部730は、本体部80において、図12(A)に示す初期状態PS1から、図12(B)に示す操作後の状態PS2になるように、RR方向に沿って回転中心軸LLCを中心として回転操作することができる。
【0051】
図12(A)に示すように、医療従事者が指で解除操作部730をRR方向に押すと、解除操作部730のRR方向への移動とともに、内側パイプ部材741がRR方向に回転する。このため、内側パイプ部材741のクラッチ部材770は、RR方向に回転するので、ハーフナット部材750は、図12(B)に示すように、スプリング747の力に抗して、角度TUだけRR方向に回転させることができる。
ハーフナット部材750が回転すると、図12(A)に示す初期状態PS1では、ハーフナット部材750のメネジ部分760が、送りネジ135のオネジ部分710にかみ合っているが、図12(B)に示す操作後の状態PS2では、ハーフナット部材750のメネジ部分760は、送りネジ135のオネジ部分710から離れる。これにより、メネジ部分760と送りネジ135のオネジ部分710とのかみ合い状態を確実に解除できる。
そして、医療従事者は、指でこの解除操作部730のRR方向へ押したままの状態で、シリンジ押子押圧部材10をT(X2方向)方向に押すことにより、シリンジ押子押圧部材10は、送りネジ135の存在に関わらず、図1と図2に示すように、シリンジ押子押圧部材10の本体部80の突き当て面部80Dを、シリンジ押子202の押子フランジ205の位置に合わせて確実に突き当てることができる。
【0052】
シリンジ押子押圧部材10の本体部80の突き当て面部80Dを、シリンジ押子202の押子フランジ205に突き当てた後、医療従事者が指で解除操作部730のRR方向へ押すのをやめると、解除操作部730は、RR方向とは反対方向に移動して図12(A)に示すように初期状態PS1に復帰する。これにより、図12(A)に示す初期状態では、ハーフナット部材750のメネジ部分760が、送りネジ135のオネジ部分710にかみ合う。
そこで、図10に示すシリンジ押子駆動部7のモータ133は、制御部100の指令によりモータドライバ134により駆動されると、ギア133G、135Gを介して、送りネジ135を回転させる。このため、ハーフナット部材750を含むカバー部材745は、送りネジ135の回転によりシリンジ押子押圧部材10を、2本のガイドバー704,705に沿ってT方向に移動させる。これにより、シリンジ押子押圧部材10は、シリンジ押子202をT方向に押圧して、図2に示すシリンジ本体201内の薬液を、チューブ203を通じて患者Pに対して留置針204を介して正確に送液することができる。
【0053】
なお、モータ133の動作が停止して送液が終了したら、医療従事者は、指で解除操作部730をRR方向に押すことにより、図12(A)に示す初期状態PS1から図12(B)の操作後の状態PS2にする。このため、ハーフナット部材750のメネジ部分760は、送りネジ135のオネジ部分710から離れることから、メネジ部分760と送りネジ135のオネジ部分710とのかみ合い状態を解除して、医療従事者は、指でこの解除操作部730のRR方向へ押したままの状態で、シリンジ押子押圧部材10をT(X2方向)方向とは反対のX1方向に押す。
これにより、送りネジ135の存在に関わらず、図1と図2に示すシリンジ押子押圧部材10の本体部80の突き当て面部80Dを、シリンジ押子202の押子フランジ205から離すことができる。その後、図1と図2に示すクランプ5を操作して、クランプ5をシリンジ本体201から離すことにより、シリンジ200は、シリンジポンプ1から容易に取り外すことができる。
【0054】
ところで、すでに説明したように、図10と図12に示す内側パイプ部材741は、送りネジ135の周囲を覆っており、しかも、外側パイプ部材742は、内側パイプ部材741の周囲を覆っていて、送りネジ135と内側パイプ部材741と外側パイプ部材742は、回転中心軸LLCを中心として、同軸状に配置されている。
これにより、次の2つのメリットがある。第1のメリットとしては、外側パイプ部材742が、内側パイプ部材741と送りネジ135を覆うことで保護しているので、例えばシリンジ本体201内の薬液がこぼれたり、上方に配置されている点滴液がこぼれ落ちたり、周辺で用いる消毒液等が飛散しても、送りネジ135や内側パイプ部材741に対して付着するのを防ぐことができる。
【0055】
さらに、第2のメリットとしては、図2に示すように、シリンジポンプ1に例えばシリンジ200が装着されている状態では、シリンジ200に接続されているチューブ203内に閉塞が生じた場合に、シリンジ本体201内の薬液がチューブ203を通じて押し出すことができなくなり、シリンジ押子駆動部7のシリンジ押子押圧部材10は、シリンジ200のシリンジ押子202を押し込むことができなくなる。チューブ203内に閉塞が生じる場合の例としては、薬液に気泡が混入していたり、薬液濃度が高い場合等である。
この場合に、図10に示すモータ133がさらに送りネジ135を回転させたとしても、送りネジ135と外側パイプ部材742と内側パイプ部材741は、同軸状に配置されているので、送りネジ135と外側パイプ部材742と内側パイプ部材741の間には、モーメントが生じない。従って、送りネジ135と外側パイプ部材742と内側パイプ部材741やケース702が変形してしまうことがない。
このように各要素が変形するのを避けることができるので、チューブ203の閉塞状態を検出する検出装置(図示せず)による検出精度が低下するのを防ぐことができる。
また、送りネジ135は鋸歯形状を有しているが、送りネジ135と外側パイプ部材742と内側パイプ部材741やケース702が変形することがないので、ハーフナット部材750と送りネジ135のオネジ部分710とのかみ合い状態が外れてしまうことがなく、送りネジ135の回転によりシリンジ押子押圧部材10を正確に送ることができ、シリンジ押子押圧部材10は常に確実にシリンジ押子202を押して、図2に示すシリンジ本体201内の薬液を、チューブ203を通じて患者Pに対して留置針204を介して正確に送液することができる。
【0056】
ここで、上述した本発明の実施形態と比較するための比較例を説明する。図14は、本発明の実施形態に対する比較例であるシリンジポンプのシリンジ押子駆動部の構造を示している。
ケース1000には、ガイドバー1001、送りネジ1002、ハーフナット部材1003、パイプ1004、そしてモータ1005が、取り付けられている。送りネジ1002のオネジ部分とハーフナット部材1003のメネジ部分1006はかみ合っている。ハーフナット部材1003は、パイプ1004の端部に固定されている。モータ1005が駆動されると、送りネジ1002が回転して、ハーフナット部材1003は、ガイドバー1001によりX方向にガイド可能である。
ところが、送りネジ1002の中心軸LS1と、パイプ1004の中心軸LS2は、離れて平行になっており、送りネジ1002とパイプ1004は同軸状には配置されていない。このため、比較例のシリンジ押子駆動部の構造を採用すると、次のような問題がある。
【0057】
図14に示す比較例のシリンジポンプにシリンジが装着されている状態で、シリンジに接続されているチューブ内に閉塞が生じた場合には、シリンジ押子駆動部はシリンジの押子を押し込むことができなくなるにもかかわらず、モータ1005がさらに送りネジ1002を回転させてしまう。ところが、送りネジ1002とパイプ1004は同軸状には配置されておらずに送りネジ1002とパイプ1004は平行になって距離があるので、送りネジ1002とパイプ1004の間には、モーメントが生じて、送りネジ1002とパイプ1004やケース1000が変形してしまう。このように各要素が変形してしまうと、チューブの閉塞状態を検出する検出装置による検出精度が低下する。また、送りネジ1002は鋸歯形状を有しており、送りネジ1002とパイプ1004やケース1000が変形するので、ハーフナット部材1003と送りネジ1002とのかみ合い状態が外れてしまう恐れもある。
【0058】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・シリンジポンプ、2・・・筐体(筐体)、6・・・シリンジ載置部、7・・・シリンジ押子駆動部、10・・・シリンジ押子押圧部材、80・・・シリンジ押子押圧部材の本体部、133・・・モータ、135・・・送りネジ、オネジ部分200,300,400・・・シリンジ、201・・・シリンジ本体、202・・・シリンジ押子、500・・・本体フランジ押さえ部材、700・・・駆動部本体、701・・・シリンジ押子押圧部材の押圧操作部、702・・・ケース、710・・・送りネジのオネジ部分、730・・・シリンジ押子押圧部材の解除操作部、741・・・内側パイプ部材、742・・・外側パイプ部材、745・・・カバー部材、750・・・ハーフナット部材、760・・・ハーフナット部材のメネジ部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジを装着してこのシリンジ内の薬液を患者へ送液するためのシリンジポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジポンプは、例えば集中治療室(ICU)等で使用されて、患者に対して抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血等、栄養剤等の薬液の送液処置を、高い精度で比較的長時間行うことに用いられている。シリンジポンプの薬液の流量制御は、他の輸液ポンプに比較して精密で優れている。
すなわち、薬液を充填したシリンジ本体は、シリンジポンプに対してクランプを用いてシリンジポンプの筐体に対して動かないようにセットされ、シリンジポンプは、シリンジ押子を押圧してシリンジ本体内の薬液を正確に患者側に送液するようになっている。
【0003】
シリンジポンプを使用する治療室や手術室では、異なる収容量を有する複数種類のシリンジが予め用意されている。医療従事者は、これらのシリンジから必要とする収容量のシリンジを選択して、選択された収容量のシリンジを、上述したシリンジポンプに対して装着する。
シリンジがシリンジポンプに装着される場合には、シリンジ本体の外周面がシリンジポンプの凹部の内面に密着されるとともに、シリンジの本体フランジがシリンジポンプのはめ込み部分に対してはめ込まれることで、本体フランジが把持できる。そして、モータを駆動することで、シリンジ押子押圧部材がシリンジ押子の押子フランジをシリンジ本体に向けて少しずつ押して、シリンジ本体内の薬液を、チューブを通じて患者に送液することができるようになっている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−88564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通常使用されているシリンジポンプのケースは、ガイドバー、送りネジ、パイプ、ハーフナット部材、そしてモータを有している。このガイドバーと送りネジとパイプは、ケースにおいて互いに平行に取り付けられている。この送りネジとハーフナット部材のメネジ部分はかみ合っている。ハーフナット部材は、パイプの端部に固定されている。モータが駆動されると送りネジが回転してハーフナット部材を送ることで、ハーフナット部材は、ガイドバーにより直線方向にガイド可能である。しかし、送りネジの中心軸とパイプの中心軸は、離れて平行に配置されてために、次のような問題がある。
【0006】
通常使用されているシリンジポンプにシリンジが装着されている状態で、シリンジに接続されているチューブの内部に閉塞現象が生じた場合には、チューブの内部には薬液が通らなくなるので、シリンジ押子駆動部はシリンジの押子を押し込むことができなくなる。そして、モータがさらに送りネジを回転させてしまう。
しかし、上述したように送りネジとパイプは同軸状には配置されておらず送りネジとパイプは平行状態であり相互に間隔がある。このた、このため、送りネジがハーフナット部材を送ろうとすると、送りネジと、ハーフナット部材に固定されているパイプとの間には、モーメントが生じて、送りネジやパイプやケースが変形してしまう。
このように送りネジとパイプやケースが変形すると、送りネジは鋸歯形状を有しており、ハーフナット部材と送りネジとのかみ合い状態が悪くなる。このため、シリンジの押子を押し込む精度が低下したり、ハーフナット部材と送りネジとのかみ合いが外れてしまう恐れもあり、通常使用されているシリンジポンプでは、シリンジ内の薬液を患者に対して送液できなくなる恐れがある。
そこで、本発明は、シリンジに接続されているチューブの閉塞が生じた場合であっても、送りネジとパイプやケースが変形してしまうのを防いで、シリンジの押子を押し込む精度が低下したり、ハーフナット部材と送りネジとのかみ合いが外れてしまうのを防ぐことができるシリンジポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシリンジポンプは、シリンジを装着して前記薬液を患者に送液するシリンジポンプであって、前記シリンジのシリンジ本体を設定するシリンジ載置部と、前記シリンジ載置部に設定された前記シリンジ本体のシリンジ押子を押して前記シリンジ本体内の前記薬液を押し出すシリンジ押子駆動部と、を備え、前記シリンジ押子駆動部は、ケースと、前記ケースに回転可能に配置された送りネジと、前記シリンジ押子に突き当てられて前記送りネジの回転により前記送りネジに沿って移動することで前記シリンジ押子を前記シリンジ本体側に押すためのシリンジ押子押圧部材と、前記送りネジのオネジ部分に対して係脱可能にかみ合うメネジ部分を有するハーフナット部材と、前記送りネジを覆い、前記シリンジ押子押圧部材と前記ハーフナット部材とを連結しているパイプ部材と、を有し、前記送りネジと前記パイプ部材は、同軸状になっていることを特徴とする。
上記構成によれば、シリンジに接続されているチューブの閉塞が生じた場合であっても、送りネジとパイプやケースが変形してしまうのを防いで、シリンジの押子を押し込む精度が低下したり、ハーフナット部材と送りネジとのかみ合いが外れてしまうのを防ぐことができる。すなわち、送りネジとパイプ部材は同軸状になっているので、送りネジとパイプ部材が別々に平行に配置されている場合に比べて、シリンジに接続されているチューブの閉塞が生じた場合であっても、モーメントが生じることがなく送りネジとパイプやケースが変形してしまうのを防いで、シリンジの押子を押し込む精度が低下したり、ハーフナット部材と送りネジとのかみ合いが外れてしまうのを防ぐことができる。
【0008】
好ましくは、前記パイプ部材は、前記送りネジを覆う内側パイプ部材であり、さらに、前記ハーフナット部材を保持するカバー部材と、前記内側パイプ部材を覆い、前記カバー部材と前記シリンジ押子押圧部材とを連結する外側パイプ部材とを有し、前記送りネジと前記内側パイプ部材と前記外側パイプ部材は、同軸状になっていることを特徴とする。
上記構成によれば、送りネジと内側パイプ部材と外側パイプ部材は、同軸状になっているので、外側パイプ部材は、内側パイプ部材と送りネジを保護し、内側パイプ部材と送りネジに対して薬液が付着するのを防止できる。
【0009】
好ましくは、前記シリンジ押子押圧部材は、解除操作部を有し、前記内側パイプ部材の一端部は、前記解除操作部に連結され、前記内側パイプ部材の他端部には、前記解除操作部を操作すると前記ハーフナット部材を回転して前記ハーフナット部材の前記メネジ部分を前記送りネジの前記オネジ部分から離すためのクラッチ部材が設けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、解除操作部を手動により操作してクラッチ部材を動かすと、ハーフナット部材のメネジ部分は、送りネジのオネジ部分から離すことができるので、送りネジの存在に関わらず、シリンジを装着する際に手動によりシリンジ押子押圧部材をシリンジ押子に対して突き当てることができる。
【0010】
好ましくは、前記送りネジを回転駆動するモータを有し、前記モータの出力軸に固定されたギアと、前記送りネジに固定されたギアがかみ合っていることを特徴とする。
上記構成によれば、モータを駆動することで、シリンジ押子押圧部材によりシリンジ押子をシリンジ本体側に押すことができる。
【0011】
好ましくは、前記シリンジ載置部には、前記シリンジ本体の本体フランジを着脱可能に挟み込んで押さえる本体フランジ押さえ部材を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、シリンジ本体の本体フランジは、本体フランジ押さえ部材により挟み込んで押さえることができ、シリンジ本体をシリンジ載置部に対して確実に保持できるので、シリンジ押子を、シリンジ押子押圧部材に対して正確に突き当てることができる。
【0012】
好ましくは、前記シリンジポンプの本体の上部分には、情報を表示する表示部と、操作ボタンを有する操作パネル部が配置され、前記シリンジポンプの本体の下部分には、前記シリンジ載置部と前記シリンジ押子駆動部が配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、医療従事者は、本体の上部分の表示部の情報を確認しながら、シリンジからの薬液の送液作業を行うことができる。そして、医療従事者は、本体の上部分の表示部の情報を確認しながら、操作パネル部の操作ボタンを操作することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、シリンジに接続されているチューブの閉塞が生じた場合であっても、送りネジとパイプやケースが変形してしまうのを防いで、シリンジの押子を押し込む精度が低下したり、ハーフナット部材と送りネジとのかみ合いが外れてしまうのを防ぐことができるシリンジポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のシリンジポンプの実施形態を示す斜視図。
【図2】図1に示すシリンジポンプをW方向から見た斜視図。
【図3】複数種類の大きさのシリンジの例を示す斜視図。
【図4】シリンジポンプにおける電気な構成例を示す図。
【図5】図2に示すシリンジ載置部とシリンジ押子駆動部の一部分を示す斜視図。
【図6】図5に示すシリンジ載置部とシリンジ押子駆動部の一部分を、E方向から拡大して見た斜視図。
【図7】図7(A)は、図5と図6に示す本体フランジ押さえ部材の形状例を示す斜視図であり、図7(B)は、図6におけるJ−J線から見たこの本体フランジ押さえ部材が固定されている状態を示す図。
【図8】比較的収容量の大きいシリンジの本体フランジが本体フランジ押さえ部材を用いてはめ込んで把持された状態を示す図。
【図9】フロントカバーと、シリンジ押子駆動部と、本体フランジ押さえ部材と、シリンジ押子押圧部材と、カバー部材を示す後側から見た分解斜視図。
【図10】図9に示すシリンジ押子駆動部の構造例を示しており、図9のシリンジ押子駆動部のES−ES線における断面を示す図。
【図11】シリンジ押子駆動部の駆動部本体の構造例を示す断面を有する斜視図。
【図12】シリンジ押子押圧部材とシリンジ押子押圧部材の押圧操作部の構造例を示す斜視図。
【図13】シリンジ押子押圧部材の押圧操作部の構造例を示す斜視図を示す図。
【図14】比較例であるシリンジポンプのシリンジ押子駆動部の構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明のシリンジポンプの実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示すシリンジポンプをW方向から見た斜視図である。
図1と図2に示すシリンジポンプ1は、例えば集中治療室等で使用され、患者に対して、抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血等、栄養剤等の薬液の微量注入処置を、高い精度で比較的長時間行うことに用いられる微量持続注入ポンプである。
【0016】
図1と図2に示すように、シリンジポンプ1は、例えば薬液を充填したシリンジ200のシリンジ本体201を、クランプ5を用いて動かないようにセットすることができる。図2に示すシリンジ押子駆動部7のモータ133が、図2では図示していない送りネジを回転することで、シリンジ押子駆動部7のシリンジ押子押圧部材10は、シリンジ200のシリンジ押子202をシリンジ本体201に対してT方向に押圧して、シリンジ本体201内の薬液を、図2に示すようにチューブ203と留置針204を介して、患者Pに対して正確に送液する。このシリンジ押子押圧部材10は、スライダあるいはシリンジ押子押圧ユニットともいう。
図2に示すように、シリンジポンプ1は、筐体2を有し、この筐体2は耐薬品性を有する成型樹脂材料により一体成型されており、フロントカバー2Fとリアカバー2Rを接合して組み立てることにより、液密性能を有する箱体として構成されている。これにより、後で説明するように、仮に薬液や水分等がかかってもシリンジポンプ1の内部に侵入するのを防ぐことができる防沫および防滴(防水)処理構造を有している。
【0017】
まず、シリンジポンプ1の筐体2に配置された各要素について説明する。
図2に示すように、シリンジポンプ1は、筐体2と取手2Tを有している。筐体2の上部分2Aには、表示部3と、操作パネル部4が配置されている。筐体2の下部分2Bには、シリンジ載置部6とシリンジ押子駆動部7が配置されている。これにより、医療従事者は、筐体2の上部分2Aの表示部3にカラー表示される情報内容を目視で確認しながら、シリンジ200からの薬液の送液作業を行うことができる。そして、医療従事者は、筐体2の表示部3にカラー表示される情報内容を確認しながら、操作パネル部4の操作ボタンを操作することができる。
【0018】
図1と図2に示す表示部3は、カラーグラフィック表示することができるカラー液晶表示装置(LCD)である。この表示部3は、筐体2の上部分2Aの左上位置であって、シリンジ載置部6とシリンジ押子駆動部7の上側に配置されている。操作パネル部4は、筐体2の上部分2Aにおいて表示部3の右側に配置され、操作パネル部4には、操作ボタンとしては、図示例では、パイロットランプ4A、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4E等が配置されている。
【0019】
図2に示す筐体2の上部分2Aは、筐体2の上半分の部分である。筐体2の下部分2Bは、筐体2の下半分の部分である。
図1と図2に示す例では、シリンジ載置部6とシリンジ押子駆動部7は、X方向に沿って並べて配置されている。シリンジ載置部6は、複数種類の収容量の異なるシリンジの中から、例えば必要とする収容量のシリンジ200を選択して着脱可能にはめ込んで装着することができる。
【0020】
図1と図2に示すシリンジ載置部6は、シリンジ本体201を収容する収容部8と、クランプ5と、シリンジ200の本体フランジ209をはめ込んで把持するための本体フランジ押さえ部材500を有している。収容部8は、凹型のシリンジ本体保持部8Dを有している。収容部8の左側の端部の壁部分には、チューブ203を着脱可能に挟み込むためのチューブ固定部9が形成されている。このチューブ固定部9は、図2に示すようにチューブ203の一部を挟み込んで固定する溝部分である。
【0021】
図1と図2において、医療従事者が、クランプ5を操作してシリンジ200をシリンジ載置部6から取り外す際には、例えばクランプ5を図示しないスプリングの力に抗してY1方向(手前方向)に引っ張って、しかもR1方向に90度回すことで、クランプ5はシリンジ本体201の外周面から離れる。これにより、シリンジ本体201は、クランプ5による固定を解除して、収容部8のシリンジ本体保持部8Dから取り出すとともに、チューブ203はチューブ固定部9内から取り外すことができる。
また、このクランプ5を操作してシリンジ200をシリンジ載置部6の収容部8に収容して取り付ける際には、クランプ5を図示しないスプリングの力に抗してY1方向に引っ張ってR2方向に90度回して、スプリングの力によりY2方向に戻すことで、シリンジ本体201は、収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容するとともに、チューブ203をチューブ固定部9内にはめ込んだ状態で、クランプ5により固定することができる。
【0022】
図1と図2に示すように、シリンジ本体201が収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容して装着されると、シリンジ押子202がシリンジ押子駆動部7内に配置される。このシリンジ押子駆動部7は、シリンジ押子押圧部材10を有している。制御部からの指令によりモータ133が駆動すると、このシリンジ押子押圧部材10は、シリンジ押子202の押子フランジ205を、シリンジ本体201に対して相対的にT方向に沿って少しずつ押す。これにより、シリンジ本体201内の薬液は、チューブ203と留置針204を通じて、患者Pに対して高い精度で比較的長時間かけて送液することができる。なお、図1と図2におけるX方向、Y方向、Z方向は互いに直交しており、Z方向は上下方向である。
【0023】
図3は、上述した複数種類の大きさのシリンジの例を示す斜視図である。
図1と図2では、最も薬液の収容量が大きいシリンジ200が固定されている例を示している。図3(A)に示す最も薬液の収容量が大きいシリンジ200は、シリンジ本体201と、シリンジ押子202を有しており、シリンジ本体201は本体フランジ209を有し、シリンジ押子202は押子フランジ205を有している。シリンジ本体201には、薬液の目盛210が形成されている。シリンジ本体201の出口部211には、フレキシブルなチューブ203の一端部が着脱可能に接続される。
【0024】
図3(B)に示す薬液の収容量が中くらいのシリンジ300は、シリンジ本体301と、シリンジ押子302を有しており、シリンジ本体301は本体フランジ309を有し、シリンジ押子302は押子フランジ305を有している。シリンジ本体301には、薬液の目盛310が形成されている。シリンジ本体301の出口部311には、フレキシブルなチューブ203の一端部が着脱可能に接続される。
図3(C)に示す最も薬液の収容量が小さいシリンジ400は、シリンジ本体401と、シリンジ押子402を有しており、シリンジ本体401は本体フランジ409を有し、シリンジ押子402は押子フランジ405を有している。シリンジ本体401には、薬液の目盛410が形成されている。シリンジ本体401の出口部411には、フレキシブルなチューブ203の一端部が着脱可能に接続される。
図3(A)に示すシリンジ200は、例えば薬液の収容量が10mLであり、図3(B)に示すシリンジ300は、例えば薬液の収容量が5mLであり、図3(C)に示すシリンジ400は、例えば薬液の収容量が2.0mLである。
【0025】
図3に示すように、シリンジ200,300,400の各シリンジ本体201,301,401は、それぞれ大きさが異なり、シリンジ本体の収容量が大きくなるにしたがって、本体フランジ209,309,409のサイズが大きくなっている。シリンジ300,400の各シリンジ本体301,401は、図1と図2に示すシリンジ200と同様にして、収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容して固定することができる。しかし、図3では、3種類のシリンジを図示しているが、これに限らず、シリンジが収容できる薬液の収容量は、2.0mLから50mL、例えば20mL、30mL、50mL等であっても良い。シリンジポンプ1に対して設定できるシリンジの収容量は、任意に選択できる。
【0026】
次に、図4を参照して、図1と図2に示すシリンジポンプ1における電気な構成例を説明する。
図4において、シリンジポンプ1は、全体的な動作の制御を行う制御部(コンピュータ)100を有している。この制御部100は、例えばワンチップのマイクロコンピュータであり、ROM(読み出し専用メモリ)101,RAM(ランダムアクセスメモリ)102、不揮発性メモリ103、そしてクロック104を有する。クロック104は、所定の操作により現在時刻の修正ができ、現在時刻の取得や、所定の送液作業の経過時間の計測、送液の速度制御の基準時間の計測等ができる。
【0027】
図4に示す制御部100は、電源スイッチボタン4Sと、スイッチ111が接続されている。スイッチ111は、電源コンバータ部112と例えばリチウムイオン電池のような充電池113を切り換えることで、電源コンバータ部112と充電池113のいずれかから制御部100に電源供給する。電源コンバータ部112は、コンセント114を介して商用交流電源115に接続されている。
図4において、収容部8内には、一対の検出スイッチ120,121が配置されている。検出スイッチ120,121は、シリンジ200のシリンジ本体201が、収容部8内に正しく配置されているかどうかを検知して、制御部100に通知する。
【0028】
図4に示すクランプセンサとしてのポテンションメータ122は、クランプ5に連結されている。このポテンションメータ122は、シリンジ本体201をクランプ5によりクランプした状態で、クランプ5がY2方向に関して移動する際のクランプ5の移動量を検出することで、どの収容量のシリンジ本体201(301,401)がクランプ5によりクランプされているかどうかを、制御部100に検出信号を送って通知する。制御部100は、このポテンションメータ122からの検出信号によりクランプ5のY方向に関する移動量を得て、例えば図3に示す複数種類のシリンジ本体201,301,401の内のどのシリンジが装着されているかを判別することができる。
図4に示すシリンジ押子駆動部7のモータ133は、制御部100の指令によりモータドライバ134により駆動されると、送りネジ135を回転させてシリンジ押子押圧部材10をT方向に移動させる。これにより、シリンジ押子押圧部材10は、シリンジ押子202をT方向に押圧して、図2に示すシリンジ本体201内の薬液を、チューブ203を通じて患者Pに対して留置針204を介して正確に送液する。
【0029】
図4において、表示部ドライバ130は、制御部100の指令により表示部3を駆動して、各種情報や報知内容等を表示するようになっている。スピーカ131は、制御部100の指令により各種の報知内容を音声により告知することができる。
制御部100は、通信ポート140を通じて、例えばデスクトップコンピュータのようなコンピュータ141に対して双方向に通信可能である。このコンピュータ141は、薬液データベース(DB)150に接続されており、薬液データベース150に格納されている薬液情報MFは、コンピュータ141を介して、制御部100に取得して、制御部100の不揮発性メモリ103に記憶させることができる。制御部100は、記憶した薬液情報MFを基にして、表示部3には薬液情報MF等を表示することができる。
図4において、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4Eは、制御部100に電気的に接続されている。
この他に、制御部100には、本体フランジ209が、本体フランジ押さえ部材500(図5から図8を参照)により把持されたことを検出するための検出器としてのフォトカプラセンサ250が、電気的に接続されている。このフォトカプラセンサ250は、発光素子251と、この発光素子251からの光を受光する受光素子252を有している。
【0030】
次に、図5,図6,図7を参照して、シリンジ載置部6の詳しい構造を説明する。
図5は、図2に示すシリンジ載置部6とシリンジ押子駆動部7の一部分を示す斜視図である。図6は、図5に示すシリンジ載置部6とシリンジ押子駆動部7の一部分を、E方向から拡大して見た斜視図である。
図5に示すシリンジ載置部6は、シリンジ本体201を収容する収容部8と、クランプ5と、シリンジ200の本体フランジ209(図3を参照)をはめ込んで押さえて把持するための本体フランジ押さえ部材500と、本体フランジ検出部600を有している。
図1と図2に示すように、一例として、シリンジ200のシリンジ本体201がシリンジ載置部6に設定され、シリンジ200のシリンジ本体201が、クランプ5を用いて固定されている。図5と図6に示すように、シリンジ載置部6の収容部8は、シリンジ本体201の一部分もしくは全部を収容することができる凹部であり、収容部8の軸方向はX方向に沿っている。シリンジ本体201の外周面の一部分が収容部8のシリンジ本体保持部8Dの内面に対して密接され、シリンジ本体201の外周面の残り部分は、外側に露出されている。
図5と図6に示すように、本体フランジ押さえ部材500と本体フランジ検出部600は、本体フランジの把持検出部650を構成している。本体フランジの把持検出部650は、本体フランジ押さえ部材500が一例としてシリンジ200の本体フランジ209をはめ込んで把持したことを、確認するために設けられている。本体フランジ検出部600は、図4に示すフォトカプラセンサ250を有している。
【0031】
図5と図6を参照して、本体フランジ押さえ部材500の構造を説明する。
図5と図6に示す本体フランジ押さえ部材500は、熱可塑性樹脂で形成され、収容部8のシリンジ本体保持部8Dの右側側面部8Vに対して平行に配置されている。この本体フランジ押さえ部材500は、Y方向とZ方向で形成される面に配置されている。
本体フランジ押さえ部材500の先端部501は、2つの導入部502,503と、これらの導入部502,503の間に形成されている凹部504を有している。
図7(A)は、図5と図6に示す本体フランジ押さえ部材500の形状例を示す斜視図であり、図7(B)は、図6におけるJ−J線から見ており、この本体フランジ押さえ部材500が固定されている状態を示す図である。
図8は、シリンジ200の本体フランジ209が、本体フランジ押さえ部材500を用いてはめ込んで把持された状態を示している。
【0032】
図7(A)に示すように、本体フランジ押さえ部材500は、先端部501と、2つの基部506A,506Bと、2つの弾性変形部588A,588Bを有している。先端部501と各基部506A,506Bは、それぞれ細い弾性変形部588A,588Bに一体的に形成されている。これにより、先端部501がシリンジ200の本体フランジ209により押された場合に、先端部501が基部506に対して弾性変形部588A,588Bが弾性変形することで容易にWV方向に移動できる。
図6と図7(A)に示すように、先端部501は、2つの導入部502,503を有している。これらの導入部502,503の内面502A,503Aは、先細りになるように傾斜面になっている。これにより、図7(A)から図8に示すように、医療従事者は、シリンジ200の本体フランジ209を、2つの導入部502,503を用いて、本体フランジ押さえ部材500の内面509とシリンジ本体保持部8Dの右側側面部8Vとの間に、Y2方向に沿って容易に挿入することができるメリットがある。
【0033】
図6に示すように、この導入部502は、シリンジポンプ1の使用時において、上側に位置し、導入部503は下側に位置している。図7に示すように、凹部504の中央位置には、好ましくはさらに小さい凹部505が形成されている。この小さい凹部505は、シリンジ200が装着された状態で、図7(B)に示すシリンジ押子202の羽根部分202Wの一部分を入れ込むための溝部分である。これにより、本体フランジ209を本体フランジ押さえ部材500の内面509と右側側面部8Vの間にはめ込んで把持する際に、シリンジ押子202の羽根部分202Wが本体フランジ押さえ部材500の凹部504の面に乗り上げてしまうことが無い。このため、シリンジ200を所定に位置に確実に固定できる。このことは、シリンジ200だけでなく、図3に示すシリンジ300,400の場合も同様である。こうして、薬液の収容量が2.0mL〜50mLのシリンジを使用することができる。
【0034】
次に、図5と図6に示す覆い部材としてのブーツ800の形状例について説明する。
このブーツ800は、図4に示すように後で説明する送りネジ135等の機械要素の周囲を覆っており、伸縮可能な部材である。図5に示すように、ブーツ800は、収容部8のシリンジ本体保持部8Dの右側側面部8Vと、シリンジ押子押圧部材10のカバー部材80の間に配置されている。ブーツ800は、図4に示す送りネジ135等の機械要素を覆うために防沫構造になっている。これにより、例えばシリンジ本体201内の薬液がこぼれたり、上方に配置されている点滴液がこぼれ落ちたり、周辺で用いる消毒液等が飛散しても、送りネジ135等の機械要素に対して付着するのを防ぐことができる。
ブーツ800は、伸縮可能な例えばゴムやプラスチックにより作られており、シリンジ押子押圧部材10がX1方向とX2方向に移動するのに伴って、伸張と収縮ができる。図6に例示するように、ブーツ800は、例えば複数の第1凸部分811,812,813,814等と、第1凸部分よりは直径の小さい複数の第2凸部分821等と、左右の連結部分830を有している。これにより、シリンジ押子押圧部材10が左側に移動されてブーツ800が収縮されると、第2凸部分821がより直径の大きい第1凸部分の間に入り込むので、収縮した状態の長さを小さくできる。このため、同じ直径の凸部分を配列する場合に比べて、シリンジ押子押圧部材10は、ブーツ800に邪魔されずにより左側に移動することができ、シリンジ押子押圧部材10の移動量を増加できる。
【0035】
図7(A)と図7(B)に示す本体フランジ押さえ部材500は、断面ほぼL字型を有しており、弾性変形可能な金属、例えばステンレス、あるいは弾性変形可能なプラスチックにより作られている。本体フランジ押さえ部材500は、シリンジ本体保持部8Dの右側側面部8Vに対してほぼ平行になるように、シリンジポンプの筐体2の一部分507に対して、固定されている。本体フランジ押さえ部材500の一端部は、取り付け基部506である。本体フランジ押さえ部材500の他端部は、導入部502と導入部503を有し、移動が可能な自由端部である。図7(B)に示すように、この取り付け基部506は、シリンジポンプの筐体2の一部分507に対して、ネジ506Nとボス50Bを用いて固定されている。
図7に示すように、本体フランジ押さえ部材500の内面側には、2つの突起部分511が、間隔をあけて、しかも図7(B)に示す右側側面部8Vに向けて突出して形成されている。図7(B)から図8に示すように、本体フランジ209が本体フランジ押さえ部材500の内面509と右側側面部8Vの間に挿入されると、これらの突起部分511は、本体フランジ209の外面209Sに必ず突き当てられる部分である。
【0036】
図7(B)において、本体フランジ押さえ部材500の内面509と右側側面部8Vの間に形成される隙間CGは、本体フランジ209の厚みGよりも小さく設定されている。これにより、本体フランジ209を挿入して固定する場合には、本体フランジ209は、本体フランジ押さえ部材500をWV方向に弾性変形させることで、2つの突起部分511が、本体フランジ209の外面209Sを、弾性力で押し付けて確実に安定して把持することができる構造になっている。
図1に示すように、シリンジ200が収容部8のシリンジ本体保持部8Dに密接して配置されると、図8に示すように、本体フランジ209の一部分がシリンジ本体保持部8Dの右側側面部8Vと本体フランジ押さえ部材500の先端部501と、の間に挿入される。すなわち、図7(B)と図8に示すように、本体フランジ209が、Y2方向に沿って本体フランジ押さえ部材500の内面509と右側側面部8Vとの隙間CGにはめ込まれると、図8に例示するように、本体フランジ押さえ部材500は、本体フランジ209の挿入により、正立した状態から図7(B)に示す取り付け基部506を中心としてWV方向に押されることで、弾性変形して少し傾いた状態になる。
図8に示すように、本体シリンジ209の一部分は、右側側面部8Vと本体フランジ押さえ部材500の間に挟まれた状態で、しかも本体フランジ押さえ部材500が、弾性変形する際の反発力により、平坦な右側側面部8Vと本体フランジ押さえ部材500の突起部分511との間に挟まれて把持される。これにより、図1と図2に示すように、シリンジ200は、本体フランジ209を用いて確実に把持することができる。
【0037】
図9は、フロントカバー2Fと、シリンジ押子駆動部7と、本体フランジ押さえ部材500と、シリンジ押子押圧部材10と、カバー部材2Vを示す後側から見た分解斜視図である。
図9では、フロントカバー2Fの内面側を示しており、フロントカバー2Fは、本体収容部2Mと、この本体収容部2Mから側方に延長して形成された延長部2Nを有している。本体収容部2Mと延長部2Nの内部には、シリンジ押子駆動部7と本体フランジ押さえ部材500とシリンジ押子押圧部材10が収容されている。延長部2Nには、カバー部材2Vがねじにより固定されている。
図9に示すシリンジ押子駆動部7は、駆動部本体700と、シリンジ押子押圧部材10と、このシリンジ押子押圧部材700に連結されているシリンジ押子押圧部材の押圧操作部701を有する。すでに説明したブーツ800は、本体フランジ押さえ部材500とシリンジ押子押圧部材10との間に配置されている。駆動部本体700は、フロントカバー2Fの本体収容部2Mの下部内に収容され、シリンジ押子押圧部材の押圧操作部701とシリンジ押子押圧部材10は、延長部2N内に収容されている。
【0038】
図10は、図9に示すシリンジ押子駆動部7の構造例を示しており、図9のシリンジ押子駆動部7のES−ES線における断面を示す図である。図11(A)は、シリンジ押子駆動部7の駆動部本体700の構造例を示す断面を有する斜視図であり、図11(B)は、駆動部7の駆動部本体700の構造例を反対側から見た断面を有する斜視図である。なお、図10と図11では、図面の簡単化のために、ブーツ800の図示は省略している。
図10と図11を参照して、シリンジ押子駆動部7の駆動部本体700と、シリンジ押子押圧部材の押圧操作部701の構造例を説明する。図10と図11(A)に示すように、駆動部本体700は、ケース702と、モータ133と、サポート部材703と、2本のガイドバー704,705と、ブッシュガイド706を有している。
【0039】
図10と図11(A)に示すように、ケース702は、例えば側面部702A、側面部702B、端面部702Cを有している。側面部702Aと側面部702Bは、X方向に長く形成され、平行である。側面部702Aと側面部702Bの各一端部は、端面部702Cになっているが、側面部702Aと側面部702Bの各他端部は、サポート部材703の取付け部材707に対して固定されている。
サポート部材703は、平板状の取付け部材707と、この取り付け部材707に固定されているカバー部材708を有している。ケース702とサポート部材703は、プラスチックあるいは金属により作られている。取付け部材707には、モータ133が取り付けられている。図10に例示するように、このモータ133の出力軸にはギア133Gが固定されており、送りネジ135には別のギア135Gが固定されている。このギア133Gは、ギア135Gにかみ合っている。ギア133G、135Gは、カバー部材708内に収容されている。これにより、モータ133の出力軸が回転すると、送りネジ135は、ギア133G、135Gを介して、正回転と逆回転を行うことができる。
【0040】
図10と図11(A)に示すように、送りネジ135は、ケース702の中央において、回転中心軸LLCに沿って回転可能に配置されている。回転中心軸LLCは、X方向に平行である。送りネジ135は、オネジ部分710を有している。オネジ部分710は、例えば鋸歯ネジを採用することができる。送りネジ135の一端部は、円柱状の回転支持部分711を有している。送りネジ135の他端部は、ギア135Gを固定しており、送りネジ135の他端部は、転がり軸受712により回転可能に支持されている。この転がり軸受712は、取付け部材707に固定されている。
【0041】
送りネジ135の回転支持部分711の外径寸法は、オネジ部分710の外径寸法よりも大きい。これにより、送りネジ135の回転支持部分711を内側パイプ部材741の内周面に内接するように回転させることができ、送りネジ135は、転がり軸受712と内側パイプ部材741の内周面を用いて両端支持するようにして、内側パイプ部材741内においてスムーズに回転することができる。
ガイドバー704,705の両端部は、取付け部材707と端面部702Cに対してそれぞれ固定されており、X方向に沿って平行に配置されている。ガイドバー704,705は、送りネジ135を挟んで、送りネジ135の両側に平行に配置されている。ブッシュガイド706は、端面部702Cの外面に固定されている。
図10に示すモータ133が、図4に示す制御部100の指令によりモータドライバ134により駆動されると、ギア133G、135Gを介して送りネジ135を正逆転することができる。
【0042】
次に、シリンジ押子駆動部7のシリンジ押子押圧部材10と、シリンジ押子押圧部材の押圧操作部701の構造例を、図10から図13を参照して説明する。図12は、シリンジ押子押圧部材10と押圧操作部701のシャフトクラッチ部720の構造例を示す斜視図であり、図13は、シリンジ押子押圧部材の押圧操作部701のシャフトクラッチ部720の構造例を示す斜視図である。
図10と図12に示すように、シリンジ押子押圧部材10は、例えばプラスチックにより作られており、本体部80と、手動操作用の解除操作部730を有している。医療従事者が指で解除操作部730をRR方向に押すと、解除操作部730は、本体部80において、図12(A)に示す初期状態から、図12(B)に示す操作後の状態になるように、RR方向に沿って、回転中心軸LLCを中心としてスプリング747の力に抗して回転操作させることができる。そして、医療従者が解除操作部730から指を離すと、スプリング747の力により図12(B)に示す操作後の状態から、図12(A)に示す初期状態に自動的に復帰させることができる。
【0043】
図10と図11に示すシリンジ押子押圧部材の押圧操作部701は、次のような要素を有している。シリンジ押子押圧部材の押圧操作部701は、内側パイプ部材741と、外側パイプ部材742と、ハーフナット部材750と、カバー部材745を有している。
内側パイプ部材741は第1パイプであり、外側パイプ部材742は内側パイプ部材741の外側に配置される第2パイプである。内側パイプ部材741は、送りネジ135の周囲を覆っており、さらに外側パイプ部材742は、内側パイプ部材741の周囲を覆っている。送りネジ135と内側パイプ部材741と外側パイプ部材742は、回転中心軸LLCを中心として、同軸状に配置されている。外側パイプ部材742は、内側パイプ部材741と送りネジ135を保護している。
図10に示すように、内側パイプ部材741の一端部741Aは、解除操作部730に対して機械的に連結されている。そして、内側パイプ部材741の他端部741Bは、ハーフナット部材750に対して機械的に連結されている。これにより、医療従事者が指で解除操作部730をRR方向に押すと内側パイプ部材741が回転するので、ハーフナット部材750は、内側パイプ部材741を介して、解除操作部730の回転角度と同じ角度TUだけRR方向に回転させることができる。
【0044】
一方、図10に示すように、外側パイプ部材742の一端部742Aは、シリンジ押子押圧部材10の本体部80に対して機械的に連結されている。外側パイプ部材742の他端部742Bは、ハーフナット部材750のカバー部材745に対して機械的に連結されている。ブッシュガイド706内には、外側パイプ部材742が通っており、外側パイプ部材742は、ブッシュガイド706がT(X2方向)に沿った移動する際に、ブッシュガイド706をガイドする部材である。
これにより、シリンジ押子押圧部材10と、ハーフナット部材750のカバー部材745は、外側パイプ部材742を用いて一体的になっており、医療従事者がシリンジ押子押圧部材10を持ってT方向(X2方向)またはX1方向に手動により移動することで、シリンジ押子押圧部材10とハーフナット部材750のカバー部材745を、T方向(X2方向)またはX1方向に一体的に移動させることができる。
【0045】
図13と図12に示すように、2本のガイドバー704,705が、カバー部材745穴部に通されている。これによりカバー部材745は、2本のガイドバー704,705によりX方向に直線移動が可能である。図12に示すように、ハーフナット部材750は、カバー部材745内に配置されており、このハーフナット部材750の穴部751には、1本のガイドバー704は通っているが、ハーフナット部材750には、もう1本のガイドバー705は通っていない。これにより、ハーフナット部材750は、1本のガイドバー704を中心として搖動可能である。
図12に示すように、ハーフナット部材750は、ほぼ長方形状の板状の部材であり、突起部752と、開口部753を有している。突起部752とカバー部材745の固定部分746の間には、ハーフナット部材750に対する付勢部材としてのスプリング747が設けられている。
【0046】
図12に示す開口部753は、ほぼ長方形状に形成されており、この開口部753内には、送りネジ135のオネジ部分710が通っている。開口部753は、縁部分753A,753B,753C,753Dにより形成されており、縁部分753Aには、ほぼ半円形状のメネジ部分760が形成されている。このメネジ部分760は、ハーフナット部分とも呼ぶことができる。このように、ハーフナット部材750には、ほぼ半円形状のメネジ部分760が形成されていることから、特にハーフナット部材と呼んでいる。図12(A)に示す初期状態PS1では、ハーフナット部材750のメネジ部分760は、送りネジ135のオネジ部分710にかみ合っている。
これに対して、図12(B)に示す操作後の状態PS2では、ハーフナット部材750は、カバー部材745内において、スプリング747の力に抗して、ガイドバー704を中心としてRR方向に角度TUだけ回転することで、ハーフナット部材750のメネジ部分760は、送りネジ135のオネジ部分710から離れる。このことから、メネジ部分760と送りネジ135のオネジ部分710とのかみ合い状態を解除することができる。
【0047】
ここで、ハーフナット部材750を図12(A)に示す初期状態PS1から図12(B)に示す操作後の状態PS2まで回転操作させる手段について説明する。
ハーフナット部材750を回転操作させる手段は、図12に示す解除操作部730と、内側パイプ部材741と、そしてクラッチ部材770により構成されている。
図10に示すように、すでに説明したように、解除操作部730と内側パイプ部材741の一端部741Aは機械的に連結されている。図12に示すように、この内側パイプ部材741の外周囲には、クラッチ部材770が半径方向に突出して固定されている。クラッチ部材770は、図12に示すように、ハーフナット部材750の縁部分753Aに対して突き当てて配置されている。
【0048】
これにより、図12(A)に示すように、医療従事者が指で解除操作部730をRR方向に押すと、解除操作部730のRR方向への移動とともに、内側パイプ部材741とクラッチ部材770がRR方向に回転する。このため、ハーフナット部材750は、図12(B)に示すように、スプリング747の力に抗して、角度TUだけRR方向に回転させることができる。このように、ハーフナット部材750が回転すると、図12(A)に示す初期状態PS1では、ハーフナット部材750のメネジ部分760が、送りネジ135のオネジ部分710にかみ合っているが、図12(B)の操作後の状態PS2では、ハーフナット部材750のメネジ部分760は、送りネジ135のオネジ部分710から離れる。このようにして、メネジ部分760と送りネジ135のオネジ部分710とのかみ合い状態を解除することができるようになっている。そして、医療従事者が解除操作部730から指を離すと、スプリング747の力により、ハーフナット部材750は、図12(B)の操作後の状態PS2から図12(A)に示す初期状態PS1に、自動的に戻すことができる。
【0049】
次に、本発明の実施形態のシリンジポンプ1の操作例を説明する。
医療従事者は、図3に示す複数種類のシリンジ200,300,400の中から、例えばシリンジ200を選択して、図1と図2に示すように、シリンジ200をシリンジポンプ1に対して装着する。
シリンジ本体201は、収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容するとともに、チューブ203をチューブ固定部9内にはめ込んだ状態で、クランプ5により固定する。これにより、シリンジ本体201は、収容部8のシリンジ本体保持部8D内に確実に固定できる。
【0050】
しかも、図7(A)から図8に示すように、本体シリンジ209の一部分は、右側側面部8Vと本体フランジ押さえ部材500の間に挟まれた状態で、しかも本体フランジ押さえ部材500が弾性変形する際の反発力により、平坦な右側側面部8Vと本体フランジ押さえ部材500の突起部分511との間に挟まれて把持される。これにより、図1と図2に示すように、シリンジ200は、本体フランジ209を用いて確実に把持することができる。
しかも、図1と図2に示すように、シリンジ本体201が収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容して装着されると、シリンジ押子202がシリンジ押子駆動部7内に配置される。この場合に、シリンジ押子押圧部材10の本体部80の突き当て面部80Dには、このシリンジ押子202の押子フランジ205を突き当てる必要がある。
そこで、医療従事者は、図10と図12(A)に示すように、指でシリンジ押子押圧部材10の解除操作部730をRR方向に押すと、解除操作部730は、本体部80において、図12(A)に示す初期状態PS1から、図12(B)に示す操作後の状態PS2になるように、RR方向に沿って回転中心軸LLCを中心として回転操作することができる。
【0051】
図12(A)に示すように、医療従事者が指で解除操作部730をRR方向に押すと、解除操作部730のRR方向への移動とともに、内側パイプ部材741がRR方向に回転する。このため、内側パイプ部材741のクラッチ部材770は、RR方向に回転するので、ハーフナット部材750は、図12(B)に示すように、スプリング747の力に抗して、角度TUだけRR方向に回転させることができる。
ハーフナット部材750が回転すると、図12(A)に示す初期状態PS1では、ハーフナット部材750のメネジ部分760が、送りネジ135のオネジ部分710にかみ合っているが、図12(B)に示す操作後の状態PS2では、ハーフナット部材750のメネジ部分760は、送りネジ135のオネジ部分710から離れる。これにより、メネジ部分760と送りネジ135のオネジ部分710とのかみ合い状態を確実に解除できる。
そして、医療従事者は、指でこの解除操作部730のRR方向へ押したままの状態で、シリンジ押子押圧部材10をT(X2方向)方向に押すことにより、シリンジ押子押圧部材10は、送りネジ135の存在に関わらず、図1と図2に示すように、シリンジ押子押圧部材10の本体部80の突き当て面部80Dを、シリンジ押子202の押子フランジ205の位置に合わせて確実に突き当てることができる。
【0052】
シリンジ押子押圧部材10の本体部80の突き当て面部80Dを、シリンジ押子202の押子フランジ205に突き当てた後、医療従事者が指で解除操作部730のRR方向へ押すのをやめると、解除操作部730は、RR方向とは反対方向に移動して図12(A)に示すように初期状態PS1に復帰する。これにより、図12(A)に示す初期状態では、ハーフナット部材750のメネジ部分760が、送りネジ135のオネジ部分710にかみ合う。
そこで、図10に示すシリンジ押子駆動部7のモータ133は、制御部100の指令によりモータドライバ134により駆動されると、ギア133G、135Gを介して、送りネジ135を回転させる。このため、ハーフナット部材750を含むカバー部材745は、送りネジ135の回転によりシリンジ押子押圧部材10を、2本のガイドバー704,705に沿ってT方向に移動させる。これにより、シリンジ押子押圧部材10は、シリンジ押子202をT方向に押圧して、図2に示すシリンジ本体201内の薬液を、チューブ203を通じて患者Pに対して留置針204を介して正確に送液することができる。
【0053】
なお、モータ133の動作が停止して送液が終了したら、医療従事者は、指で解除操作部730をRR方向に押すことにより、図12(A)に示す初期状態PS1から図12(B)の操作後の状態PS2にする。このため、ハーフナット部材750のメネジ部分760は、送りネジ135のオネジ部分710から離れることから、メネジ部分760と送りネジ135のオネジ部分710とのかみ合い状態を解除して、医療従事者は、指でこの解除操作部730のRR方向へ押したままの状態で、シリンジ押子押圧部材10をT(X2方向)方向とは反対のX1方向に押す。
これにより、送りネジ135の存在に関わらず、図1と図2に示すシリンジ押子押圧部材10の本体部80の突き当て面部80Dを、シリンジ押子202の押子フランジ205から離すことができる。その後、図1と図2に示すクランプ5を操作して、クランプ5をシリンジ本体201から離すことにより、シリンジ200は、シリンジポンプ1から容易に取り外すことができる。
【0054】
ところで、すでに説明したように、図10と図12に示す内側パイプ部材741は、送りネジ135の周囲を覆っており、しかも、外側パイプ部材742は、内側パイプ部材741の周囲を覆っていて、送りネジ135と内側パイプ部材741と外側パイプ部材742は、回転中心軸LLCを中心として、同軸状に配置されている。
これにより、次の2つのメリットがある。第1のメリットとしては、外側パイプ部材742が、内側パイプ部材741と送りネジ135を覆うことで保護しているので、例えばシリンジ本体201内の薬液がこぼれたり、上方に配置されている点滴液がこぼれ落ちたり、周辺で用いる消毒液等が飛散しても、送りネジ135や内側パイプ部材741に対して付着するのを防ぐことができる。
【0055】
さらに、第2のメリットとしては、図2に示すように、シリンジポンプ1に例えばシリンジ200が装着されている状態では、シリンジ200に接続されているチューブ203内に閉塞が生じた場合に、シリンジ本体201内の薬液がチューブ203を通じて押し出すことができなくなり、シリンジ押子駆動部7のシリンジ押子押圧部材10は、シリンジ200のシリンジ押子202を押し込むことができなくなる。チューブ203内に閉塞が生じる場合の例としては、薬液に気泡が混入していたり、薬液濃度が高い場合等である。
この場合に、図10に示すモータ133がさらに送りネジ135を回転させたとしても、送りネジ135と外側パイプ部材742と内側パイプ部材741は、同軸状に配置されているので、送りネジ135と外側パイプ部材742と内側パイプ部材741の間には、モーメントが生じない。従って、送りネジ135と外側パイプ部材742と内側パイプ部材741やケース702が変形してしまうことがない。
このように各要素が変形するのを避けることができるので、チューブ203の閉塞状態を検出する検出装置(図示せず)による検出精度が低下するのを防ぐことができる。
また、送りネジ135は鋸歯形状を有しているが、送りネジ135と外側パイプ部材742と内側パイプ部材741やケース702が変形することがないので、ハーフナット部材750と送りネジ135のオネジ部分710とのかみ合い状態が外れてしまうことがなく、送りネジ135の回転によりシリンジ押子押圧部材10を正確に送ることができ、シリンジ押子押圧部材10は常に確実にシリンジ押子202を押して、図2に示すシリンジ本体201内の薬液を、チューブ203を通じて患者Pに対して留置針204を介して正確に送液することができる。
【0056】
ここで、上述した本発明の実施形態と比較するための比較例を説明する。図14は、本発明の実施形態に対する比較例であるシリンジポンプのシリンジ押子駆動部の構造を示している。
ケース1000には、ガイドバー1001、送りネジ1002、ハーフナット部材1003、パイプ1004、そしてモータ1005が、取り付けられている。送りネジ1002のオネジ部分とハーフナット部材1003のメネジ部分1006はかみ合っている。ハーフナット部材1003は、パイプ1004の端部に固定されている。モータ1005が駆動されると、送りネジ1002が回転して、ハーフナット部材1003は、ガイドバー1001によりX方向にガイド可能である。
ところが、送りネジ1002の中心軸LS1と、パイプ1004の中心軸LS2は、離れて平行になっており、送りネジ1002とパイプ1004は同軸状には配置されていない。このため、比較例のシリンジ押子駆動部の構造を採用すると、次のような問題がある。
【0057】
図14に示す比較例のシリンジポンプにシリンジが装着されている状態で、シリンジに接続されているチューブ内に閉塞が生じた場合には、シリンジ押子駆動部はシリンジの押子を押し込むことができなくなるにもかかわらず、モータ1005がさらに送りネジ1002を回転させてしまう。ところが、送りネジ1002とパイプ1004は同軸状には配置されておらずに送りネジ1002とパイプ1004は平行になって距離があるので、送りネジ1002とパイプ1004の間には、モーメントが生じて、送りネジ1002とパイプ1004やケース1000が変形してしまう。このように各要素が変形してしまうと、チューブの閉塞状態を検出する検出装置による検出精度が低下する。また、送りネジ1002は鋸歯形状を有しており、送りネジ1002とパイプ1004やケース1000が変形するので、ハーフナット部材1003と送りネジ1002とのかみ合い状態が外れてしまう恐れもある。
【0058】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・シリンジポンプ、2・・・筐体(筐体)、6・・・シリンジ載置部、7・・・シリンジ押子駆動部、10・・・シリンジ押子押圧部材、80・・・シリンジ押子押圧部材の本体部、133・・・モータ、135・・・送りネジ、オネジ部分200,300,400・・・シリンジ、201・・・シリンジ本体、202・・・シリンジ押子、500・・・本体フランジ押さえ部材、700・・・駆動部本体、701・・・シリンジ押子押圧部材の押圧操作部、702・・・ケース、710・・・送りネジのオネジ部分、730・・・シリンジ押子押圧部材の解除操作部、741・・・内側パイプ部材、742・・・外側パイプ部材、745・・・カバー部材、750・・・ハーフナット部材、760・・・ハーフナット部材のメネジ部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジを装着して前記薬液を患者に送液するシリンジポンプであって、
前記シリンジのシリンジ本体を設定するシリンジ載置部と、
前記シリンジ載置部に設定された前記シリンジ本体のシリンジ押子を押して前記シリンジ本体内の前記薬液を押し出すシリンジ押子駆動部と
を備え、
前記シリンジ押子駆動部は、
ケースと、
前記ケースに回転可能に配置された送りネジと、
前記シリンジ押子に突き当てられて前記送りネジの回転により前記送りネジに沿って移動することで前記シリンジ押子を前記シリンジ本体側に押すためのシリンジ押子押圧部材と、
前記送りネジのオネジ部分に対して係脱可能にかみ合うメネジ部分を有するハーフナット部材と、
前記送りネジを覆い、前記シリンジ押子押圧部材と前記ハーフナット部材とを連結しているパイプ部材と
を有し、
前記送りネジと前記パイプ部材は、同軸状になっていることを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項2】
前記パイプ部材は、前記送りネジを覆う内側パイプ部材であり、さらに、前記ハーフナット部材を保持するカバー部材と、前記内側パイプ部材を覆い、前記カバー部材と前記シリンジ押子押圧部材とを連結する外側パイプ部材とを有し、前記送りネジと前記内側パイプ部材と前記外側パイプ部材は、同軸状になっていることを特徴とする請求項1に記載のシリンジポンプ。
【請求項3】
前記シリンジ押子押圧部材は、解除操作部を有し、前記内側パイプ部材の一端部は、前記解除操作部に連結され、前記内側パイプ部材の他端部には、前記解除操作部を操作すると前記ハーフナット部材を回転して前記ハーフナット部材の前記メネジ部分を前記送りネジの前記オネジ部分から離すためのクラッチ部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のシリンジポンプ。
【請求項4】
前記送りネジを回転駆動するモータを有し、前記モータの出力軸に固定されたギアと、前記送りネジに固定されたギアがかみ合っていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のシリンジポンプ。
【請求項5】
前記シリンジ載置部には、前記シリンジ本体の本体フランジを着脱可能に挟み込んで押さえる本体フランジ押さえ部材を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のシリンジポンプ。
【請求項6】
前記シリンジポンプの本体の上部分には、情報を表示する表示部と、操作ボタンを有する操作パネル部が配置され、前記シリンジポンプの本体の下部分には、前記シリンジ載置部と前記シリンジ押子駆動部が配置されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のシリンジポンプ。
【請求項1】
シリンジを装着して前記薬液を患者に送液するシリンジポンプであって、
前記シリンジのシリンジ本体を設定するシリンジ載置部と、
前記シリンジ載置部に設定された前記シリンジ本体のシリンジ押子を押して前記シリンジ本体内の前記薬液を押し出すシリンジ押子駆動部と
を備え、
前記シリンジ押子駆動部は、
ケースと、
前記ケースに回転可能に配置された送りネジと、
前記シリンジ押子に突き当てられて前記送りネジの回転により前記送りネジに沿って移動することで前記シリンジ押子を前記シリンジ本体側に押すためのシリンジ押子押圧部材と、
前記送りネジのオネジ部分に対して係脱可能にかみ合うメネジ部分を有するハーフナット部材と、
前記送りネジを覆い、前記シリンジ押子押圧部材と前記ハーフナット部材とを連結しているパイプ部材と
を有し、
前記送りネジと前記パイプ部材は、同軸状になっていることを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項2】
前記パイプ部材は、前記送りネジを覆う内側パイプ部材であり、さらに、前記ハーフナット部材を保持するカバー部材と、前記内側パイプ部材を覆い、前記カバー部材と前記シリンジ押子押圧部材とを連結する外側パイプ部材とを有し、前記送りネジと前記内側パイプ部材と前記外側パイプ部材は、同軸状になっていることを特徴とする請求項1に記載のシリンジポンプ。
【請求項3】
前記シリンジ押子押圧部材は、解除操作部を有し、前記内側パイプ部材の一端部は、前記解除操作部に連結され、前記内側パイプ部材の他端部には、前記解除操作部を操作すると前記ハーフナット部材を回転して前記ハーフナット部材の前記メネジ部分を前記送りネジの前記オネジ部分から離すためのクラッチ部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のシリンジポンプ。
【請求項4】
前記送りネジを回転駆動するモータを有し、前記モータの出力軸に固定されたギアと、前記送りネジに固定されたギアがかみ合っていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のシリンジポンプ。
【請求項5】
前記シリンジ載置部には、前記シリンジ本体の本体フランジを着脱可能に挟み込んで押さえる本体フランジ押さえ部材を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のシリンジポンプ。
【請求項6】
前記シリンジポンプの本体の上部分には、情報を表示する表示部と、操作ボタンを有する操作パネル部が配置され、前記シリンジポンプの本体の下部分には、前記シリンジ載置部と前記シリンジ押子駆動部が配置されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のシリンジポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−94376(P2013−94376A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239173(P2011−239173)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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