説明

シリンジ容器

【課題】内容液の吐出状態の安定化を図ることができるシリンジ容器を提供することを目的とする。
【解決手段】内容液Xが内部に充填される摺動筒部20、及び、摺動筒部20の軸方向先端側に配設されたノズル装着部21をそれぞれ有するシリンダ2と、摺動筒部20の軸方向基端側から摺動筒部20の内側に挿入されたピストン3と、を備えるシリンジ容器1において、内容液Xの流通路の一部を閉塞すると共にシリンダ2の内圧上昇に伴って開放される開閉バルブ6が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容液を吐出させるシリンジ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシリンジ容器として、従来、筒状のシリンダと、シリンダ内に挿入されたピストン(プランジャ)と、シリンダの先端に装着されたノズル部材と、を備えた構成が知られている。このようなシリンジ容器では、上記したノズル部材が取り外され、シリンダとピストンとが組み合わされた状態で市場に流通する場合がある。
【0003】
上記したシリンダ及びピストンとしては、従来、例えば下記特許文献1に記載されているように、内容液が内部に充填される摺動筒部とその摺動筒部の先端に配設されたノズル装着部とをそれぞれ有するシリンダ、及び、前記した摺動筒部の基端側から摺動筒部の内側に挿入されたピストン、が知られている。このようなシリンダ及びピストンを備えるシリンジ容器では、ノズル装着部にノズル部材を装着させた後、ピストンをシリンダ内に押し込んで軸方向先端側に向けて摺動させることで、シリンダの内圧が上昇し、シリンダ内の内容液が、ノズル部材に備えられたノズルの先端から噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−24768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来のシリンジ容器では、ピストンの押し込む際の押圧力が弱くても、シリンダの内圧上昇に伴い、その押圧力に応じた吐出速度で内容液が吐出されるため、内容液の吐出状態が不安定であるという問題が存在する。すなわち、使用時において、ピストンの押圧力が強いとシリンダの内圧が大きく上昇するため、内容液が勢いよく吐出されるが、ピストンの押圧力が弱いとシリンダの内圧上昇が小さいため、内容液の吐出の勢いが弱くなり、内容液が十分に噴射されない場合がある。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、内容液の吐出状態の安定化を図ることができるシリンジ容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシリンジ容器は、内容液が内部に充填される摺動筒部、及び、該摺動筒部の軸方向先端側に配設されたノズル装着部をそれぞれ有するシリンダと、前記摺動筒部の軸方向基端側から該摺動筒部の内側に挿入されたピストンと、を備えるシリンジ容器において、前記内容液の流通路の一部を閉塞すると共に前記シリンダの内圧上昇に伴って開放される開閉バルブが備えられていることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、内容液を吐出させる際には、ピストンをシリンダ内に押し込んで軸方向先端側に移動させる。このとき、シリンダの内圧が所定の高さに達するまでの間は、内容液の流通路の一部が開閉バルブによって閉塞されているので、内容液が吐出されることがなく、シリンダの内圧は上昇する。そして、シリンダの内圧が所定の高さまで上昇すると、開閉バルブが開放され、シリンダの内圧によってシリンダ内の内容液が圧送されて吐出される。
【0009】
また、本発明に係るシリンジ容器は、前記ノズル装着部には、前記摺動筒部に連通された筒状の中栓が装着されており、前記開閉バルブは、前記シリンダの内側に配設された弁座と、該弁座に対して軸方向先端側に着脱可能に配設された弁体と、前記中栓の内側に形成された反力受部と前記弁体との間に介装されて該弁体を軸方向基端側へ向けて付勢する弾性部材と、を備えており、前記中栓は、前記反力受部によって前記弾性部材を弾性変形させて該弾性部材の弾性力によって前記弁体を軸方向先端側から前記弁座に着座させる第一位置と、該第一位置よりも前記反力受部と前記弁座との間隔を拡げて前記弾性部材の弾性力を解除して前記弁体を前記弁座から離間させる第二位置と、の間で軸方向に沿って移動可能に設けられていることが好ましい。
【0010】
これにより、シリンジ容器に内容液を充填する際には、まず、中栓をシリンダに対して軸方向先端側に相対移動させて上記した第二位置に配置する。これにより、中栓内の反力受部とシリンダ内の弁座との間隔が拡げられ、弾性部材が無負荷状態(自由長の状態)となって弾性力が無い状態となる。その結果、弁体に対する弾性部材の付勢が解除され、弁体が弁座から離間される。
次に、ピストンをシリンダ内に押し込んだ状態で、軸方向先端側を下向きにして中栓の先端を内容液中に浸ける。そして、そのままの状態でピストンを引き上げてピストンをシリンダに対して相対的に軸方向基端側に移動させる。これにより、シリンダの内圧が低下することで、中栓の先端から内容液が吸い込まれ、その内容液は、弁体が離間して開放された弁座内を通って摺動筒内に流入し、摺動筒内に充填される。
続いて、中栓をシリンダに対して軸方向基端側に相対移動させて上記した第一位置に配置する。これにより、中栓内の反力受部とシリンダ内の弁座との間隔が狭くなり、弾性部材が弾性変形して弁体を弁座側に付勢し、弁体が弁座に着座される。
以上により、シリンジ容器への内容液の充填が完了する。
【0011】
また、本発明に係るシリンジ容器は、前記ノズル装着部には、前記内容液を吐出するノズルを有するノズル部材が装着されており、前記ノズルの先端部には、前記摺動筒内から移送された前記内容液と外部から流入した空気とを混合させる気液混合室が形成されていると共に、該気液混合室内の気液混合体を発泡させる発泡部材が設けられていることが好ましい。
【0012】
これにより、上述したように内容液を吐出させる際、摺動筒部内の内容液は、ノズル内を流通して気液混合室に流入する。一方、この気液混合室には外部から空気が流入する。そして、気液混合室において上記した内容液と空気とが混合され、この気液混合体が発泡部材によって発泡され、内容液が泡状になってノズル先端から吐出される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るシリンジ容器によれば、シリンダの内圧が所定の高さに達していない状態では、内容液が吐出されず、シリンダの内圧が所定の高さまで達したところで内容液が吐出されるので、シリンダの内圧が低い状態での内容液の吐出が抑制され、内容液が所定の吐出速度以上でのみ吐出されることとなり、内容液の吐出状態の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態を説明するためのシリンジ容器の側面図である。
【図2】図1に示すA−A間の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するためのシリンジ容器に内容液を充填時の状態を表した半断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するためのシリンジ容器に内容液を充填時の状態を表した半断面図である。
【図5】本発明の実施の形態を説明するためのシリンジ容器に内容液を充填完了時の状態を表した半断面図である。
【図6】本発明の実施の形態を説明するためのシリンジ容器の吐出時の状態を表した半断面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態を説明するためのシリンジ容器の破断図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るシリンジ容器の実施の形態について、図面に基いて説明する。
なお、本実施の形態では、シリンダ2からみたノズル部材4側(図1における上側)を軸方向先端側(以下、単に「先端側」と記す。)とし、その反対側(図1における下側)を軸方向基端側(以下、単に「基端側」と記す。)とする。また、図1に示す符号Oは、シリンジ容器1の中心軸線を示しており、以下、単に「軸線O」と記す。さらに、この軸線Oに沿った方向を「軸方向」とし、軸線Oに直交する方向を「径方向」とし、軸線O回りの方向を「周方向」とする。
【0016】
図1、図2に示すように、シリンジ容器1は、例えば口腔内に薬剤(内容液X)を点薬するために用いられる吐出容器であり、その概略構成としては、筒状のシリンダ2と、シリンダ2に挿入されたピストン3と、シリンダ2の先端に着脱可能に装着されたノズル部材4と、シリンダ2の先端部の内側に装着された中栓5と、シリンダ2の内側に配設された開閉バルブ6と、を備えている。
【0017】
シリンダ2は、内容液Xが内部に充填された摺動筒部20と、摺動筒部20の先端側に配設されたノズル装着部21と、摺動筒部20の軸方向中間部に配設されたフランジ22と、を備えている。
【0018】
摺動筒部20は、軸線Oを中心軸にして延設された円筒形状の直筒部である。摺動筒部20の基端部の内周面は、基端側に向かうに従い漸次拡径されている。また、摺動筒部20の基端部には、摺動筒部20の基端からフランジ22にかけて軸方向に沿って延在するスリット23が形成されている。
【0019】
フランジ22は、ピストン3をシリンダ2内に押し込んで内容液Xを吐出させる際に指等を引っ掛けるための指掛け部であり、摺動筒部20の外周面から径方向外側に向かって突出されていると共に摺動筒部20の外周面の周りに全周に亘って延設されている。
【0020】
ノズル装着部21は、ノズル部材4を装着させるための装着部であり、軸線Oを中心軸にして延設されていると共に外径が摺動筒部20よりも拡径された二重筒構造の筒部である。このノズル装着部21には、テーパー部24と外筒部25と内筒部26とが備えられている。テーパー部24は、摺動筒部20の先端に設けられたテーパー形状の筒部であり、摺動筒部20の先端から先端側に向かうに従い漸次拡径されている。外筒部25は、テーパー部24の外縁から先端側に向けて突設された円筒形状の筒部であり、その内周面には雌ねじ27が形成されている。内筒部26は、外筒部25の内側に配設されていると共に軸線Oを共通軸にして外筒部25と同軸上に配設された円筒形状の筒部であり、テーパー部24の内周面から先端側に向けて突設されている。
【0021】
上記した内筒部26の内周面には、中栓5を2段階で係止させるための第一、第二係合部28、29が配設されている。第一、第二係合部28、29は、それぞれ径方向内側に向けて膨出された凸部であり、内筒部26の内周面に沿って全周に亘ってそれぞれ延設されている。また、第一、第二係合部28、29は、軸方向に間隔をあけて配設されており、基端側の第一係合部28は、内筒部26の基端(図2における下端)よりも先端側(図2における上側)の部分(内筒部26の軸方向中間部分)に配設され、先端側の第二係合部29は、第一係合部28よりも先端側(図2における上側)であって内筒部26の先端(図2における上端)よりも基端側(図2における下側)に配設されている。
【0022】
ピストン3は、摺動筒部20の基端側から摺動筒部20の内側に挿入される棒状の部材であり、シリンダ2に対して相対的に軸方向に沿って往復移動可能であると共に軸線O回りに軸回転可能である。このピストン3の概略構成としては、軸方向に沿って延設された軸部30と、軸部30の基端に設けられた基端部31と、軸部30の先端に設けられた摺動部32と、シリンダ2に対するピストン3の先端側への相対移動を規制するストッパー部33と、を備えている。
【0023】
軸部30は、軸方向に延在する凸リブを平断面視十字状に配設させた形状からなる棒状部材であり、摺動筒部20の内側に軸方向に沿って往復移動可能に挿入されている。この軸部30は、シリンジ容器1の使用前の状態(内容液Xを吐出させる前の状態)においては、先端部が摺動筒部20の内側に挿入され、基端部が摺動筒部20の基端から軸方向に沿って突出されている。
【0024】
基端部31は、ピストン3をシリンダ2内に押し込む際に指等で押圧したり、ピストン3をシリンダ2内から引張る際に指等を掛けたり摘んだりする操作部であり、軸線Oに対して垂直に配設された板部である。この基端部31は、平面視においてその外径が少なくとも軸部30よりも大きく、軸部30の基端から径方向外側に向けて突出されている。
【0025】
摺動部32は、先端面が略テーパー状に形成された略円柱形状の部材であり、摺動筒部20の内側に軸方向に沿って往復移動可能に収容されている。摺動部32の外周面には、断面視凹形状の周溝34が全周に亘って形成されており、この周溝34の内側には、例えばゴムや樹脂等からなるOリング35が嵌め込まれている。このOリング35は、摺動筒部20の内周面に摺動可能に密接されており、このOリング35によって摺動部32が摺動筒部20の内周面に対して液密に摺接されている。
【0026】
ストッパー部33は、軸部30の基端部から径方向外側に向けて突出されていると共に軸方向に沿って延設された凸リブである。このストッパー部33の先端面は、摺動筒部20の基端面に対向若しくは当接されている。また、ストッパー部33は、上記した摺動筒部20のスリット23の内側に挿入可能な凸リブであり、このストッパー部33の幅寸法は、スリット23に挿通可能なように、スリット23の幅寸法以下となっている。
【0027】
ノズル部材4は、ノズル装着部21の先端側に配設された基板部40と、基板部40から基端側に向けて突設された装着筒部41と、基板部40から先端側に向けて突設されたノズル42と、ノズル42の内側に収容された流路形成部材43と、が備えられている。
【0028】
基板部40は、軸線Oに対して垂直に配設された板部であり、平面視長方円形状に形成され、全周に亘って外筒部25の径方向外側に突出されている。また、基板部40の中央部分には、後述する中栓5の先端筒部52が挿通される平面視円形の挿通孔40aが形成されている。
【0029】
装着筒部41は、ノズル部材4をシリンダ2に装着させるための装着部であり、基板部40の基端側の面(図2における下面)から基端側に向けて突出された円筒形状の筒部である。この装着筒部41は、外筒部25と内筒部26との間に配置されて軸線Oを共通軸にして上記した外筒部25と同軸上に延設されている。また、装着筒部41の外周面には、外筒部25の雌ねじ27に螺合される雄ねじ45が形成されており、装着筒部41は外筒部25に螺着されている。
【0030】
ノズル42は、内容液Xを吐出させるための吐出部であり、軸線Oを中心軸にして軸方向に沿って延設された略円筒形状の筒部である。このノズル42は、基板部40の挿通孔40aの内縁から先端側に向けて突設されており、ノズル42の基端部46の内側には、基板部40の挿通孔40aから突出した後述する中栓5の先端筒部52が挿入されている。また、ノズル42の中間部47は、上記したノズル42の基端部46よりも縮径された直筒形状を成している。
【0031】
また、ノズル42の先端部48は、軸線Oに対して傾けられている。この先端部48の周壁部には、外部と先端部48の内側とを連通して先端部48の内側に空気を供給する空気孔48aが形成されている。また、先端部48の先端開口部には、後述する気液混合体を発泡させる発泡部材44が設けられている。発泡部材44は、複数の微小孔を有する部材であり、例えば先端部48の先端開口部に張設されたメッシュシート等からなる。また、ノズル42の先端部48と中間部47との間には、先端部48の内側と中間部47の内側とを区画する隔壁部49が設けられている。この隔壁部49の中央部分には、先端部48の内側と中間部47の内側とを連通して内容液Xを中間部47の内側から先端部48の内側へ流入させる連通孔49aが形成されている。そして、上記した先端部48の内側、つまり、先端部48の周壁部と隔壁部49と発泡部材44とで囲まれた内部空間は、上記した連通孔49aを通って流入した内容液Xと上記した空気孔48aを通って流入した空気とを混合させて気液混合体を生成する気液混合室10となっている。
【0032】
流路形成部材43は、ノズル42の中間部47の内側に収納された棒状部材であり、この流路形成部材43には、内容液Xの流通路を所定断面に形成するための切欠き面43aが形成されており、この切欠き面43aとノズル42の中間部47の内周面とにより、所定断面形状の流通路が形成されている。また、流路形成部材43の先端面43bと隔壁部49の基端側の面(図2における下面)との間には、微小な隙間があけられており、この隙間において内容液Xが旋回される構成となっている。
【0033】
中栓5は、摺動筒部20及びノズル42にそれぞれ連通される筒状部材である。この中栓5は、ノズル装着部21の内側に軸方向に沿って移動可能に挿入されており、この中栓5を先端側に移動させることによって開閉バルブ6が解除される。すなわち、中栓5は、開閉バルブ6を機能させて内容液Xの流通を適宜規制する図2、図4に示すバルブスタンバイ位置(第一位置)と、開閉バルブ6の機能を解除して内容液Xの流通を許容させる図3に示すバルブ解除位置(第二位置)と、の間で軸方向に沿って移動可能となっている。中栓5の概略構成としては、軸線Oに対して垂直に配設された円環板状の天壁部50と、天壁部50の基端側の面(図2における下面)から基端側に向けて突出された嵌合筒部51と、天壁部50の内縁から先端側に向けて突出された先端筒部52と、嵌合筒部51の内側に配設された反力受部53と、を備えている。
【0034】
天壁部50は、装着筒部41の内側に配設されていると共に内筒部26の先端側に配設されており、天壁部50の基端側の面は内筒部26の先端面に当接されている。
先端筒部52は、ノズル42の基端部46の内側に挿入された略円筒形状の筒部であり、この先端筒部52を介して嵌合筒部51の内側とノズル42の中間部47の内側とが連通されている。
【0035】
嵌合筒部51は、内筒部26の内側に配設されていると共に軸線Oを共通軸にして内筒部26と同軸上に配設された円筒形状の筒部である。この嵌合筒部51の外周面には、上記した内筒部26の第一、第二係合部28、29にそれぞれ係合されて中栓5を2段階で係止させるための第一、第二係合部54、55が配設されている。これら第一、第二係合部54、55は、それぞれ径方向外側に向けて膨出された凸部であり、嵌合筒部51の外周面に沿って全周に亘ってそれぞれ延設されている。また、第一、第二係合部54、55は、軸方向に間隔をあけて配設されており、第一係合部54は、嵌合筒部51の摺動筒部20側の端部(図2における下端)に配設され、第二係合部55は、嵌合筒部51の軸方向中間部に配設されている。
【0036】
上記した第一係合部54は、図2、図4に示すように、天壁部50が内筒部26の先端面に当接され、中栓5がバルブスタンバイ位置に配置された状態において、内筒部26の基端部の内側に配設されて内筒部26の第一係合部28から離間されている。一方、図3に示すように、天壁部50が内筒部26の先端面から離間され、中栓5がバルブ解除位置に配置された状態において、第一係合部54は、内筒部26の第一係合部28の基端側に配設され、その第一係合部28に対して基端側から係合される。
【0037】
また、上記した第二係合部55は、図2、図4に示すように、天壁部50が内筒部26の先端面に当接され、中栓5がバルブスタンバイ位置に配置された状態において、内筒部26の第一係合部28と第二係合部29との間に嵌め込まれ、その第二係合部29に対して基端側から係合されている。一方、図3に示すように、天壁部50が内筒部26の先端面から離間され、中栓5がバルブ解除位置に配置された状態において、第二係合部55は、内筒部26の第二係合部29の先端側に配設され、その第二係合部29に対して先端側から係合される。
【0038】
反力受部53は、嵌合筒部51の内周面から径方向内側に向けて突出された凸リブ状の凸部であり、周方向に間隔をあけて複数配設されている。また、反力受部53は、天壁部50の基端側の面から軸方向に沿って延設されており、反力受部53の基端側(摺動筒部20側)の端面は、嵌合筒部51の軸方向中間部の位置に形成されている。
【0039】
開閉バルブ6は、内容液Xの流通路の一部を閉塞すると共にシリンダ2の内圧上昇に伴って開放される機構であり、シリンダ2(摺動筒部20)の内圧が所定値よりも低いときには内容液Xの流通を規制し、シリンダ2(摺動筒部20)の内圧が所定値以上になると内容液Xの流通を許容するものである。具体的に説明すると、開閉バルブ6の概略構成としては、シリンダ2の内側に配設された弁座60と、弁座60に対して先端側に着脱可能に配設された弁体61と、上記した反力受部53と弁体61との間に介装されて弁体61を基端側へ向けて付勢する弾性部材62と、を備えている。なお、上記した「流通路」は、内容液Xが流通する流通路であり、摺動筒部20内と中栓5の嵌合筒部51内と先端筒部52内とノズル42内とによって形成される流路である。
【0040】
弁座60は、シリンダ2と一体に形成されており、その概略構成としては、摺動筒部20の先端部の内側に配設された円環状の隔壁63と、隔壁63の内縁から先端側に向かって突出された筒状の台座64と、を備えている。隔壁63は、軸線Oを中心軸にして配設されており、径方向外側から径方向内側に向かって先端側に傾いたテーパー形状を成している。台座64は、軸線Oを中心軸にして延設された円筒形状の筒部であり、その先端には、弁体61が着座可能な着座面65が形成されている。この着座面65は、基端側から先端側に向かうに従い漸次拡径されたテーパー形状を成している。
【0041】
弁体61は、筒状の台座64を開閉するための部材であり、上記した着座面65に対して着座および離間可能な球体である。
弾性部材62は、弁体61を弁座60側に付勢する付勢部材であり、軸方向に弾性変形可能なコイルスプリングからなる。この弾性部材62は、中栓5の嵌合筒部51の内側に配設されていると共に軸方向に沿って延設されており、弾性部材62の先端側(ノズル42側)の端部は反力受部53の基端側の端面に当接され、弾性部材62の基端側(摺動筒部20側)の端部は弁体61に当接されている。この弾性部材62は、天壁部50が内筒部26の先端面に当接された状態において、軸方向に圧縮され、反力受部53から反力をとって弁体61を基端側へ向けて付勢する弾性力が付与されている。
【0042】
次に、上記した構成からなるシリンジ容器1に内容液Xを充填する方法について説明する。
【0043】
まず、図3に示すように、ノズル装着部21からノズル部材4を取り外しておく。
また、ピストン3の基端部31が摺動筒部20の基端面に当接するところまで、ピストン3をシリンダ2の内側に押し込んでおく。このとき、摺動筒部20のスリット23の内側にストッパー部33が嵌め込まれると共に、弁座60の基端側のテーパー面にピストン3の摺動部32の先端面が近接又は当接される。
【0044】
さらに、中栓5をシリンダ2に対して先端側に向けて相対移動させ、中栓5を上記したバルブ解除位置に配置させておく。このとき、中栓5の第一係合部54が内筒部26の第一係合部28に対して基端側から係合されると共に、中栓5の第二係合部55が内筒部26の第二係合部29を乗り越えて内筒部26の第二係合部29の先端側に配置され、中栓5の第二係合部55が内筒部26の第二係合部29に対して先端側から係合される。これにより、中栓5のシリンダ2に対する先端側および基端側への相対移動がそれぞれ規制され、中栓5がバルブ解除位置で保持される。また、このとき、反力受部53と弁座60との間隔が拡げられ、弾性部材62が無負荷状態(自由長の状態)となって弾性力が無い状態となる。これにより、弁体61に対する弾性部材62の付勢が解除され、図3に示すようにシリンジ容器1の先端側を下向きにすることにより、弁体61が自重によって弁座60の着座面65から離間され、開閉バルブ6が開放される。
なお、シリンジ容器1は、ノズル装着部21にノズル部材4が装着されてなく、中栓5がバルブ解除位置で保持された図3に示す状態に組み立てて、市場に流通させてもよい。
【0045】
次に、シリンジ容器1の先端側を下向きにした状態で、中栓5の先端筒部52の少なくとも先端部分を、図示せぬプール等に貯留された内容液Xの中に浸ける。続いて、ピストン3の基端部31を指等で摘んでピストン3を軸方向に沿って引き上げ、ピストン3をシリンダ2に対して基端側に相対移動させる。これにより、ピストン3の基端側への移動に伴いシリンダ2の内圧が低下し、中栓5の先端筒部52の先端開口部から内容液Xが吸い込まれ、その内容液Xは、中栓5の先端筒部52内から嵌合筒部51内を通ってシリンダ2の内筒部26の内側に流入する。このとき、上記したように弁座60の着座面65から弁体61が離間されて開閉バルブ6が開放されており、弁座60の筒状の台座64が開放されているので、内容液Xは内筒部26内から台座64内を通って摺動筒部20内に流入し、摺動筒部20内に充填される。
【0046】
そして、摺動筒部20内に所定量の内容液Xが充填された時点で、図4に示すように、中栓5の天壁部50が内筒部26の先端面に当接するところまで、中栓5をシリンダ2に対して基端側に向けて相対移動させ、中栓5を上記したバルブスタンバイ位置に配置させる。このとき、中栓5の第二係合部55が内筒部26の第二係合部29を乗り越えて内筒部26の第一係合部28と第二係合部29との間に配置され、中栓5の第二係合部55が内筒部26の第二係合部29に対して基端側から係合される。これにより、中栓5のシリンダ2に対する先端側への相対移動が規制される。また、中栓5の基端側への移動によって中栓5の第一係合部54が内筒部26の第一係合部28から離間されるが、中栓5の天壁部50が内筒部26の先端面に当接することで、中栓5のシリンダ2に対する基端側への相対移動が規制される。したがって、中栓5がバルブスタンバイ位置で保持される。また、このとき、反力受部53と弁座60との間隔が狭くなることによって、弾性部材62を介して弁体61が弁座60側に移動し、この弁体61が弁座60の着座面65に着座されると共に弾性部材62が圧縮される。これにより、弾性部材62に弾性力が作用し、その弾性力によって弁体61が弁座60側に向けて付勢され、開閉バルブ6が閉塞される。
【0047】
次に、図5に示すように、ピストン3をシリンダ2に対して軸線O回りに相対的に軸回転させ、ピストン3のストッパー部33と摺動筒部20のスリット23との周方向位置をずらす。これにより、ストッパー部33の先端面が摺動筒部20の基端面に係止され、ピストン3のシリンダ2に対する先端側への相対移動が規制される。
また、ノズル装着部21にキャップ7を装着させる。このキャップ7は、ノズル部材4が取り外された状態で流通する際に中栓5の先端筒部52からの液漏れを防止するための部材であり、ノズル装着部21の外筒部25の内側に螺着されて中栓5の先端筒部52を覆うキャップである。
【0048】
次に、上記したシリンジ容器1の使用方法について説明する。
【0049】
まず、図5に示すキャップ7をノズル装着部21から取り外した後、図1、図2に示すように、ノズル装着部21にノズル部材4を装着させる。
次に、ピストン3をシリンダ2に対して軸線O回りに相対的に軸回転させ、ピストン3のストッパー部33と摺動筒部20のスリット23との周方向位置を一致させる。これにより、摺動筒部20の基端面に対するストッパー部33の係止状態が解除され、ストッパー部33が摺動筒部20のスリット23の内側に挿入可能となるため、ピストン3のシリンダ2に対する先端側への相対移動が許容される。
【0050】
次に、ノズル42の先端を患部に向けた状態で、図6に示すように、ピストン3をシリンダ2内に押し込んでシリンダ2に対して相対的に先端側に移動させる。詳しく説明すると、まず、シリンダ2のフランジ22に指等を掛けた状態でシリンダ2を支持し、ノズル42を例えば口腔内等の患部に挿入する。続いて、ピストン3の基端部31を先端側に向けて指等で押圧し、ピストン3を軸方向に沿ってシリンダ2の内側に押し込む。これにより、ピストン3の摺動部32が摺動筒部20の内周面に沿って先端側に移動する。このとき、弁座60の着座面65に弁体61が着座されていると共にその弁体61が弾性部材62によって弁座60側に付勢されているので、内容液Xが収容された摺動筒部20の内圧が、弾性部材62による弁体61に対する付勢力を上回るまでの間は、弁体61が弁座60に着座されて開閉バルブ6が閉塞された状態となり、内容液Xが収容された摺動筒部20の内圧が上昇する。
【0051】
そして、摺動筒部20の内圧が、弾性部材62による弁体61に対する付勢力を越えた時点で、弾性部材62の弾性力に抵抗しながら弁体61が弁座60の着座面65から離間して開閉バルブ6が開放される。その結果、摺動筒部20内の内容液Xは、弁座60の筒状の台座64内を通って中栓5の嵌合筒部51内に流入し、中栓5の先端筒部52内を通ってノズル42内に流入する。そして、この内容液Xは、流路形成部材43の切欠き面43aとノズル42の中間部47の内周面との間に形成された流通路を通って先端側に向かって流通し、流路形成部材43の先端面43bとノズル42の隔壁部49との間の隙間に流入し、この隙間において軸線O回りに旋回する。その後、上記した隙間で旋回した内容液Xは、隔壁部49の連通孔49aを通ってノズル42の先端部48の内側の気液混合室10に霧状となって流入する。一方、ノズル42の先端部48の空気孔48aを通って外部の空気が気液混合室10内に流入する。そして、この気液混合室10内において内容液Xに空気が混合されて気液混合体が生成され、この気液混合体は発泡部材44によって発泡されて泡状になった後、ノズル42の先端部48の先端から吐出される。
【0052】
上記したシリンジ容器1によれば、シリンダ2の内圧が所定の高さに達していない状態では、内容液Xが吐出されず、シリンダ2の内圧が所定の高さまで達したところで内容液Xが吐出されるので、シリンダ2の内圧が低い状態での内容液Xの吐出が抑制され、内容液Xが所定の吐出速度以上でのみ吐出されることになる。したがって、内容液Xの吐出状態を安定させることができる。
【0053】
また、上記したシリンジ容器1によれば、中栓5をシリンダ2に対して軸方向先端側に相対移動させることで、開閉バルブ6の機能が解除された状態となり、中栓5の先端筒部52を内容液Xに浸けた状態でピストン3を引き上げることで摺動筒部20内に内容液Xが充填されるので、シリンジ容器1に対して内容液Xを容易に充填させることができる。
【0054】
また、上記したシリンジ容器1によれば、ノズル42の先端部48の内側に気液混合室10が形成されていると共にその先端部48の先端に発泡部材44が設けられているので、内容液Xをノズル42の先端から泡状にして吐出させることができる。このとき、内容液Xの流通速度が遅いと泡質が低下するが、上述したように開閉バルブ6によって内容液Xが所定の吐出速度以上でのみノズル42内に吐出されるので、内容液Xを良質の泡に発泡させることができ、吐出される泡の品質を安定させることができる。
【0055】
以上、本発明に係るシリンジ容器の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、中栓5の内側に開閉バルブ6が配設されているが、本発明は、摺動筒部20の内側に開閉バルブ6を配設させることも可能であり、或いは、図7に示すように、ノズル42の内側に開閉バルブ106を配設させることも可能である。なお、図7に示すシリンジ容器101では、ノズル42の内側に収容された円筒状の流路形成部材143の上端部が弁座160となっており、また、ノズル42の隔壁部49との間に隙間をあけて配設されたスピンエレメント153によって開閉バルブ106の弾性部材62の反力をとっている。
【0056】
また、上記した実施の形態では、ピストン3をシリンダ2内に押し込む前の使用前状態において、ストッパー部33の先端面が摺動筒部20の基端面に近接或いは当接された構成となっているが、本発明は、ストッパー部の軸方向長さを短縮させてストッパー部の先端面と摺動筒部20の基端面との間に所定の間隔をあけてもよい。これにより、摺動筒部20内の内容液Xを2回に分けて所定量ずつ吐出させることができる。すなわち、まず、ストッパー部の先端面が摺動筒部20の基端面に当接するまでピストン3をシリンダ2内に押し込むことで、摺動筒部20内の内容液Xのうちの所定量の内容液Xが吐出される。次に、ピストン3を軸回転させてストッパー部を摺動筒部20のスリット23に位置合わせした後、ピストン3をシリンダ2の内側に押し込むことで、摺動筒部20内に残った所定量の内容液Xが吐出される。
【0057】
また、上記した実施の形態では、ノズル42の先端部48の内側に気液混合室10が形成されていると共にその先端部48の先端に発泡部材44が設けられ、内容液Xを泡状にして吐出させる構成となっているが、本発明は、上記した気液混合室10や発泡部材44を省略して、内容液Xを液体のまま吐出させることも可能である。さらに、流路形成部材43、143及び/又はスピンエレメント153を削除することも可能である。
【0058】
また、上記した実施の形態では、バルブスタンバイ位置とバルブ解除位置との間で軸方向に沿って移動可能な中栓5がノズル装着部21に装着されているが、本発明は、中栓5が移動できないようにノズル装着部21に嵌合されていてもよい。
【0059】
また、上記した実施の形態では、弁座60と弁体61と弾性部材62とからなる開閉バルブ6が備えられているが、本発明は、開閉バルブの構成は適宜変更可能であり、他の公知の開閉バルブを用いることも可能である。
さらに、本発明は、弁体61と弾性部材62、弾性部材62と反力受部53(中栓5)、或いは弁体61と弾性部材62と反力受部53(中栓5)を一体成形品で構成しても良い。
【0060】
また、上記した実施の形態では、ノズル装着部21からノズル部材4を取り外してそのノズル装着部21にキャップ7を装着させた状態で搬送されたり保管されたりするシリンジ容器1について説明しているが、本発明は、ノズル装着部21にノズル部材4が装着された状態で搬送されたり保管されたりするシリンジ容器であってもよい。
【0061】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1、101 シリンジ容器
2 シリンダ
3 ピストン
4 ノズル部材
5 中栓
6、106 開閉バルブ
10 気液混合室
20 摺動筒部
21 ノズル装着部
42 ノズル
44 発泡部材
53 反力受部
60、160 弁座
61 弁体
62 弾性部材
X 内容液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液が内部に充填される摺動筒部、及び、該摺動筒部の軸方向先端側に配設されたノズル装着部をそれぞれ有するシリンダと、
前記摺動筒部の軸方向基端側から該摺動筒部の内側に挿入されたピストンと、
を備えるシリンジ容器において、
前記内容液の流通路の一部を閉塞すると共に前記シリンダの内圧上昇に伴って開放される開閉バルブが備えられていることを特徴とするシリンジ容器。
【請求項2】
請求項1に記載のシリンジ容器において、
前記ノズル装着部には、前記摺動筒部に連通された筒状の中栓が装着されており、
前記開閉バルブは、前記シリンダの内側に配設された弁座と、該弁座に対して軸方向先端側に着脱可能に配設された弁体と、前記中栓の内側に形成された反力受部と前記弁体との間に介装されて該弁体を軸方向基端側へ向けて付勢する弾性部材と、を備えており、
前記中栓は、
前記反力受部によって前記弾性部材を弾性変形させて該弾性部材の弾性力によって前記弁体を軸方向先端側から前記弁座に着座させる第一位置と、
該第一位置よりも前記反力受部と前記弁座との間隔を拡げて前記弾性部材の弾性力を解除して前記弁体を前記弁座から離間させる第二位置と、
の間で軸方向に沿って移動可能に設けられていることを特徴とするシリンジ容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシリンジ容器において、
前記ノズル装着部には、前記内容液を吐出するノズルを有するノズル部材が装着されており、
前記ノズルの先端部には、前記摺動筒内から移送された前記内容液と外部から流入した空気とを混合させる気液混合室が形成されていると共に、該気液混合室内の気液混合体を発泡させる発泡部材が設けられていることを特徴とするシリンジ容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−259546(P2010−259546A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111466(P2009−111466)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】