説明

シリンダおよび少なくとも一つのドッファを有するフラットカードまたはローラカードにおける装置

【課題】同じ品質でもってカード機の生産速度を大幅に向上させるか、または同じ生産速度でもって品質を大幅に向上させる。
【解決手段】ドッファ(5)上の針布(5a)が少なくとも400ppsiの針頭密度を有しており、シリンダ(4)上の針布(4a)の針頭密度(ppsi)と前記ドッファ(5)の前記針布(5a)の針頭密度(ppsi)との間の比率は、前記シリンダの回転毎に前記シリンダ(4)から前記ドッファ(5)まで転移される繊維塊の割合に影響し、それにより、フラットカードまたはローラカードの生産速度または品質がより高くなるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダと少なくとも一つのドッファとを含んでいて、特に綿および/または合成繊維を処理するフラットカードまたはローラカードなどのカード機における装置であって、前記シリンダおよび前記ドッファのそれぞれは鋸歯を備えた全鋼製針布を有しており、前記シリンダ上の前記針布および前記ドッファ上の前記針布は25.4mm(平方インチ)あたりの針頭密度(ppsi、P)を有しているという装置に関する。
【背景技術】
【0002】
25.4mm(平方インチ)あたりの針頭(point)の数(ppsi)はカーディング動作に大きな影響を与えないわけではない。シリンダの針頭数およびドッファの針頭数を互いに一致させる必要がある。針頭数が増すと、カーディング動作は或る最適値まで向上する場合が一般的である。その最適値は材料に大きく依存している。繊細な繊維はさらに多数の針頭により処理される必要がある。その理由は、材料の処理能力が同じであっても、さらに多数の繊維が存在することになるためである。
【0003】
特許文献1は、シリンダ用針布に対する25.4mm(平方インチ)あたりの針頭密度が864であると共に、ドッファに対する25.4mm(平方インチ)あたりの針頭密度が359であるカード機での設備を開示している。カード機の生産速度は、シリンダの針頭数とドッファの針頭数との間の比率2.40では不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−62919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、本発明が解決する課題は、公知の欠点を回避する冒頭で述べた形式の装置を提供することであり、特にそのような装置は同じ品質でもってカード機の生産速度を大幅に向上させるか、または同じ生産速度でもって品質を大幅に向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴部によって解決される。
すなわち、1番目の発明によれば、シリンダと少なくとも一つのドッファとを含んでいて、特に綿および/または合成繊維を処理するフラットカードまたはローラカードにおける装置であって、前記シリンダおよび前記ドッファのそれぞれは鋸歯を備えた全鋼製針布を有しており、前記シリンダ上の前記針布および前記ドッファ上の前記針布は25.4mm(平方インチ)あたりの針頭密度(ppsi)を有しているという装置において、前記ドッファ(5)上の前記針布(5a)が少なくとも400ppsiの針頭密度を有しており、前記シリンダ(4)上の前記針布(4a)の針頭密度(ppsi)と前記ドッファ(5)の前記針布(5a)の針頭密度(ppsi)との間の比率は、前記シリンダの回転毎に前記シリンダ(4)から前記ドッファ(5)まで転移される繊維塊の割合に影響し、それにより、フラットカードまたはローラカードの生産速度または品質がより高くなるようにした、装置が提供される。
【0007】
なぜなら、本発明によれば、ドッファの針布に対して少なくとも400ppsiの針頭数でもって、ドッファの針頭数に対するシリンダの針頭数は、シリンダの回転毎にドッファに転移される繊維塊の割合いに一致し、カード機のより高い生産速度またはより高い品質を達成することができる。追加の特別の利点は、同じ品質でもって高い生産速度を達成できるか、または同じ生産速度でもって品質を高めることができることである。
【0008】
請求項2から請求項20は本発明の有利な改良を包含する。
2番目の発明によれば、1番目の発明において、前記繊維塊の割合は前記シリンダ上において増加する。
3番目の発明によれば、1番目または2番目の発明において、前記供給速度が一定でありつつ、前記カード機の前記出口における前記スライバ重量は増加する。
4番目の発明によれば、1番目から3番目のいずれかの発明において、前記スライバ重量が一定でありつつ、前記カード機の前記出口における前記供給速度は増加する。
5番目の発明によれば、1番目から4番目のいずれかの発明において、前記シリンダにおける前記針頭密度と前記ドッファにおける前記針頭密度との間の比率を変えることによって、転移要因を変えることができる。
6番目の発明によれば、1番目から5番目のいずれかの発明において、前記シリンダおよび前記ドッファの25.4mm(平方インチ)あたりの点総数は、要因V1および前記シリンダの針頭数の積よりも小さく、前記要因V1は、2.2×10−3よりも小さく、好ましくは、2.08×10−3よりも小さいようにした。
7番目の発明によれば、1番目から6番目のいずれかの発明において、前記シリンダの針頭数および前記ドッファの針頭数の間の比率は、シリンダの針頭数450から550ppsiの範囲にて1より小さいようにした。
8番目の発明によれば、1番目から7番目のいずれかの発明において、前記シリンダの針頭数および前記ドッファの針頭数の間の比率は、シリンダの針頭数551から650ppsiの範囲にて1.23より小さいようにした。
9番目の発明によれば、1番目から8番目のいずれかの発明において、前記シリンダの針頭数および前記ドッファの針頭数の間の比率は、シリンダの針頭数651から750ppsiの範囲にて1.46より小さいようにした。
10番目の発明によれば、1番目から9番目のいずれかの発明において、前記シリンダの針頭数および前記ドッファの針頭数の間の比率は、シリンダの針頭数751から850ppsiの範囲にて1.68より小さいようにした。
11番目の発明によれば、1番目から10番目のいずれかの発明において、前記シリンダの針頭数および前記ドッファの針頭数の間の比率は、シリンダの針頭数851から950ppsiの範囲にて1.91より小さいようにした。
12番目の発明によれば、1番目から11番目のいずれかの発明において、前記シリンダの針頭数および前記ドッファの針頭数の間の比率は、シリンダの針頭数951から1050ppsiの範囲にて2.13より小さいようにした。
13番目の発明によれば、1番目から12番目のいずれかの発明において、前記ドッファ用針布の脚部幅が0.8mmよりも小さく、好ましくは0.7mmよりも小さく、特に0.6mmよりも小さいようにした。
14番目の発明によれば、1番目から13番目のいずれかの発明において、前記ドッファ用針布の間隔が1.7mmよりも小さく、好ましくは1.6mmよりも小さく、特に1.5mmよりも小さいようにした。
15番目の発明によれば、1番目から14番目のいずれかの発明において、前記ドッファ用針布に関して、針頭数および前面角の積が、1.32×10である。
16番目の発明によれば、1番目から15番目のいずれかの発明において、貫通深さ(歯溝深さh6)が1.8mmよりも小さく、好ましくは1.3mmよりも小さいようにした。
17番目の発明によれば、1番目から16番目のいずれかの発明において、フィリング高さ(ブレード高さh3)が、2.7mmよりも小さく、好ましくは2.2mmよりも小さく、特に1.7mmよりも小さいようにした。
18番目の発明によれば、1番目から17番目のいずれかの発明の針布のための鋸歯状ワイヤが提供される。
19番目の発明によれば、1番目から18番目のいずれかの発明の針布をそれぞれ備えた、ローラ、特にシリンダおよびドッファが提供される。
20番目の発明によれば、1番目から19番目のいずれかの発明の針布をそれぞれ備えたシリンダおよび二つのドッファを有するカード機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】それぞれが鋸歯状ワイヤ製針布を備えたシリンダおよびドッファを有するフラットカードの略側面図である。
【図2】鋸歯ワイヤからなる全鋼製鋸歯状針布を備えたフラットカードのドッファの斜視図である。
【図3】図2に基づくドッファ上の針布の拡大詳細図であり、針布先端は線図で示されている。
【図4】シリンダとドッファとの間において針布の位置決めを線図で示す図である。
【図5】(a)鋸歯状ワイヤの側面図である。(b)鋸歯状ワイヤの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面に示される典型的な実施形態を参照して、以下、本発明を詳細に説明する。
図1はフラットカード、例えばツリュツラー社製TC07フラットカードを示しており、このフラットカードは、フィードローラ1、フィードテーブル2、テーカイン3a、3b、3c、シリンダ4、ドッファ5、ストリッパローラ6、ニップローラ7、8、ウェブ案内要素9、ウェブファンネル10、デリバリローラ11、12、回転頂部案内ローラ13a、13bとフラット14とを備えた回転カード頂部13、ケンス15およびカンコイラ16を含んでいる。ローラの回転方向は湾曲矢印にて示してある。参照文字Mはシリンダ4の中心位置(中心軸線)を示している。参照符号4aは針布を示すと共に、参照符号4bはシリンダ4の回転方向を示している。参照符号5aは針布を示すと共に、参照符号5bはドッファ5の回転方向を示している。参照文字Bはカーディング位置における回転カード頂部13の回転方向を示している。参照文字Cはフラット14の帰還搬送方向を示している。固定されたカバー要素または作動要素、例えば固定されたカーディング要素17’がテーカイン3cと後方の回転頂部案内ローラ13aとの間に配置されている。さらに、固定されたカバー要素または作動要素、例えば固定されたカーディング要素17’’が前方の回転頂部案内ローラ13bとドッファ5との間に配置されている。矢印Aは作動方向を示している。ローラ内部の湾曲矢印はローラの回転方向を示している。
【0011】
図2によれば、全鋼製鋸歯状針布5aを形成するエンドレスの鋸歯状ワイヤがドッファ5に螺旋状に巻かれている。
【0012】
ドッファ用針布5aを備えたドッファ5についての図2から分かるように、シリンダ4(図1を参照されたい)には、全鋼製鋸歯状針布4aを形成するエンドレスの鋸歯状ワイヤが対応して螺旋状に巻かれている。
【0013】
図2に基づく針布の平面図である図3によれば、歯先部(図5(a)を参照されたい)は、ドッファ5の回転方向5bにおいて次々に配置されている。歯先部の列に隣接して、歯先部はこれらの間にチャネルを有している。25.4mm(平方インチ)あたりの針頭数はppsi(point per square inch)またはPで表される。
【0014】
図4によれば、シリンダ4の針布4aがカーディング可能位置に配置されており、ドッファ5の針布5aがドッファ可能位置に配置されている。
【0015】
図5(a)および図5(b)は、鋸歯状ワイヤSDの側面図および断面図をそれぞれ示している。鋸歯状ワイヤSDは、脚部25からブレード26まで一体部材をなして形成されており、鋸歯状ワイヤSDは、歯部を有し、それらの間に溝28が存在している。
【0016】
以下については、図5(a)に示される。
α:前面角;前面と鉛直軸線との間においてワイヤの底部に対する角度
β:くさび角;歯部の前面角δと背面角γとの間の角度
γ:背面角;背面とワイヤの底部との間の角度
δ:前面角;前面とワイヤの底部との間の角度
ε:開口角(opening angle);くさび角に対応する(ε=β)
h6:歯溝深さ;歯先部から測定された歯溝の切欠の深さ
p:歯ピッチ;直線化されたワイヤで測定された連続する二つの歯先部の間の距離
【0017】
以下については、図5(b)に示される。
h1:ワイヤの全高さ;ワイヤの底部から先端までの距離
h2:脚部高さ;底部から測定された脚部の高さ
b1:脚部幅;ワイヤの底部における脚部の幅
b2:脚部におけるブレード幅;脚部において測定されたブレードの幅
b3:先端におけるブレード幅;先端において測定されたブレードの幅
【0018】
h3は、高さh1とh2との差分から得られるブレード高さ(フィリング高さ)を示している。b4は、歯溝の切欠の最深点におけるブレード幅を示している。
【0019】
ツリュツラーカードクローシング社により製造されたTC07フラットカードのシリンダ4の針布4aについての鋸歯状ワイヤSDの例は以下の通りである(D-75387 Neubulach)。
T20.40.040.0950.05/X
950ppsi
α=40°
b1=0.4mm
【0020】
さらに、本発明によれば、ドッファ5には、針頭数が500ppsiの針布5aが設けられている。
【0021】
本発明によれば、シリンダ4の針布4aの針頭密度とドッファ5の針布5aの針頭密度との間の比率が請求項1の内容に応じて選択された場合には、ドッファの針布5aの針頭数を増加させることにより、さらに多量の繊維材料がシリンダの針布4aから取除かれる結果となる。これにより、シリンダの針布4a内の繊維材料は少なくなり、それにより、品質が向上するようになる。
【0022】
請求項2によれば、シリンダ4の針布4aにおける繊維塊を増加させると、その結果、カード機の生産速度も増加する。シリンダの針布4aにおける繊維塊の増加は、フィードローラ1による供給作用が増大することによって影響される。
【0023】
転移要因は、シリンダ4上に位置していてシリンダ4の回転毎にドッファ5に転移される繊維塊の割合の測定(measure)である。
【符号の説明】
【0024】
1 フィードローラ
3a、3b、3c テーカイン
4 シリンダ
4a 針布
5 ドッファ
5a 針布
13 回転カード頂部
13a、13b 回転頂部案内ローラ
14 フラット
16 カンコイラ
17’、17’’ カーディング要素
25 脚部
26 ブレード
28 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと少なくとも一つのドッファとを含んでいて、特に綿および/または合成繊維を処理するフラットカードまたはローラカードにおける装置であって、前記シリンダおよび前記ドッファのそれぞれは鋸歯を備えた全鋼製針布を有しており、前記シリンダ上の前記針布および前記ドッファ上の前記針布は25.4mm(平方インチ)あたりの針頭密度(ppsi)を有しているという装置において、
前記ドッファ(5)上の前記針布(5a)が少なくとも400ppsiの針頭密度を有しており、前記シリンダ(4)上の前記針布(4a)の針頭密度(ppsi)と前記ドッファ(5)の前記針布(5a)の針頭密度(ppsi)との間の比率は、前記シリンダの回転毎に前記シリンダ(4)から前記ドッファ(5)まで転移される繊維塊の割合に影響し、それにより、フラットカードまたはローラカードの生産速度または品質がより高くなるようにした、装置。
【請求項2】
前記繊維塊の割合は前記シリンダ上において増加する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記供給速度が一定でありつつ、前記カード機の前記出口における前記スライバ重量は増加する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記スライバ重量が一定でありつつ、前記カード機の前記出口における前記供給速度は増加する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記シリンダにおける前記針頭密度と前記ドッファにおける前記針頭密度との間の比率を変えることによって、転移要因を変えることができる、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記シリンダおよび前記ドッファの25.4mm(平方インチ)あたりの点総数は、要因V1および前記シリンダの針頭数の積よりも小さく、前記要因V1は、2.2×10−3よりも小さく、好ましくは、2.08×10−3よりも小さいようにした、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記シリンダの針頭数および前記ドッファの針頭数の間の比率は、シリンダの針頭数450から550ppsiの範囲にて1より小さいようにした請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記シリンダの針頭数および前記ドッファの針頭数の間の比率は、シリンダの針頭数551から650ppsiの範囲にて1.23より小さいようにした請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記シリンダの針頭数および前記ドッファの針頭数の間の比率は、シリンダの針頭数651から750ppsiの範囲にて1.46より小さいようにした請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記シリンダの針頭数および前記ドッファの針頭数の間の比率は、シリンダの針頭数751から850ppsiの範囲にて1.68より小さいようにした請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記シリンダの針頭数および前記ドッファの針頭数の間の比率は、シリンダの針頭数851から950ppsiの範囲にて1.91より小さいようにした請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記シリンダの針頭数および前記ドッファの針頭数の間の比率は、シリンダの針頭数951から1050ppsiの範囲にて2.13より小さいようにした請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記ドッファ用針布の脚部幅が0.8mmよりも小さく、好ましくは0.7mmよりも小さく、特に0.6mmよりも小さいようにした請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記ドッファ用針布の間隔が1.7mmよりも小さく、好ましくは1.6mmよりも小さく、特に1.5mmよりも小さいようにした請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記ドッファ用針布に関して、針頭数および前面角の積が、1.32×10である請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
貫通深さ(歯溝深さh6)が1.8mmよりも小さく、好ましくは1.3mmよりも小さいようにした請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
フィリング高さ(ブレード高さh3)が、2.7mmよりも小さく、好ましくは2.2mmよりも小さく、特に1.7mmよりも小さいようにした請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の針布のための鋸歯状ワイヤ。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の針布をそれぞれ備えた、ローラ、特にシリンダおよびドッファ。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の針布をそれぞれ備えたシリンダおよび二つのドッファを有するカード機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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