説明

シリンダヘッドカバーのガスケット取付構造

【課題】ガスケット側のシールに関与しない付帯部材がヘッドカバー内に露出せざるを得ない場合に、動弁機構等の機構部品との干渉を回避できるようにしたヘッドカバーのガスケット取付構造を提供する。
【解決手段】 上記ガスケット6は、ヘッドカバー2側の接合面に嵌合保持される閉ループ状のメインガスケット部16と、メインガスケット部16の内側に位置するリング状のホールガスケット部15と、メインガスケット部16とホールガスケット部15を連結しているブリッジ部17を備える。ブリッジ部17は、ヘッドカバー2の内壁面に沿って略アーチ形状のものとなるように、ヘッドカバー2の内壁面にクリップ19にて止着保持させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関におけるシリンダヘッドカバーのガスケット取付構造に関し、特に閉ループ状のガスケットの内側に別のガスケットが併存している場合の両者の連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
閉ループ状のガスケットの内側に別のガスケットが併存している場合において、双方のガスケット同士を連結する技術として特許文献1,2に開示されているものがある。
【0003】
特許文献1(特に第1図参照)では、閉ループ状の外周シール部と同じく閉ループ状の内周シール部とを、シリンダヘッドカバーの長辺方向に延在しつつ両者の間に架橋的に配置された橋渡し用接続部で接続している。また、特許文献2(特に第8図参照)では、閉ループ状の外縁ガスケット部と複数のリング状の点火栓用ガスケット部とをシリンダヘッドカバーの短辺方向に延在する連絡部にてそれぞれに接続した上、それとは別に上記連絡部と直交するようにシリンダヘッドカバーの長辺方向に延在する外れ防止体にて点火栓用ガスケット部同士を接続しつつ外縁ガスケット部に接続している。
【特許文献1】実公平1−17634号公報
【特許文献2】実開平4−74771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に代表されるような従来の技術によれば、シリンダヘッドにシリンダヘッドカバーが装着された状態において、シールに直接関与しない橋渡し用接続部や外れ防止体がシリンダヘッドカバーの内部空間に露出しつつ延在するかたちとなるため、シリンダヘッド側の動弁機構等の機構部品と干渉するおそれがある。特に昨今のように動弁機構が例えば可変動弁機構として高機能化している状況では、シリンダヘッドカバー内において各種の機構部品が錯綜して配置されることから、先に述べたようにシールに直接関与しない橋渡し用接続部や外れ防止体が露出していることは機構部品との干渉の上で好ましくない。
【0005】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、ガスケット側のシールに直接関与しない付帯部材がシリンダヘッドカバー内に露出せざるを得ない場合であっても、動弁機構等の機構部品との干渉を確実に回避できるようにしたシリンダヘッドカバーのガスケット取付構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、内燃機関のシリンダヘッドと接合されるシリンダヘッドカバーの接合面に装着されるガスケットの取付構造であって、上記ガスケットは、シリンダヘッドカバー側の接合面に嵌合保持される閉ループ状のメインガスケット部と、上記閉ループ状のメインガスケット部の内側空間に位置するリング状のホールガスケット部と、上記メインガスケット部とホールガスケット部とを連結している条片状または紐状のブリッジ部と、を備えている。そして、上記ブリッジ部は、シリンダヘッドカバーの内壁面に沿って略アーチ形状のものとなるように、そのシリンダヘッドカバーの内壁面に止着保持させてあることを特徴とする。
【0007】
この場合において、上記ブリッジ部はシリンダヘッドカバーの内壁面に止着保持させてあるために、ブリッジ部単独では、シリンダヘッドカバーの内壁面に沿った略アーチ形状を自己保持することができるものでも良く、あるいは自己保持できないものでも良い。アーチ形状を自己保持することができるものとは、請求項3に記載のように、ブリッジ部自体を予め屈曲させて成形してあるものとする。
【0008】
また、上記ブリッジ部は、シリンダヘッドカバーの内部空間に露出するものであることを考慮すれば、機能上必要最小限の大きさおよび占有スペースであることが望ましく、したがって、上記のようにブリッジ部は条片状または紐状のものとする。
【0009】
より具体的には、請求項2に記載のように、上記メインガスケット部によってシールされる部分とホールガスケット部によってシールされる部分とが同一平面上にはなくその位置が互いに異なっていて、上記ブリッジ部は、メインガスケット部とホールガスケット部とを結んだ最短距離を通ることなくアーチ状に湾曲しているものとする。
【0010】
この場合において、請求項4に記載のように、上記メインガスケット部がシリンダヘッドとシリンダヘッドカバーの接合面同士の間をシールし、上記ホールガスケット部がシリンダヘッドカバー側の部品取付穴と他部品との間をシールするものであるのに対して、上記ブリッジ部は特定部位のシールに関与していないものとする。ここでの部品取付穴とは、例えばプラグホール(点火プラグまたはその点火プラグを取り付けるためのプラグチューブを受容する穴)あるいはボルトホール(ボルト挿入穴)等を想定している。
【0011】
そして、上記ブリッジ部の成形性または組付性を考慮するならば、同請求項4に記載のように、上記ブリッジ部は、メインガスケット部およびホールガスケット部とともに一体成形してあることが望ましい。
【0012】
加えて、止着保持手段として機能するものをシリンダヘッドカバーの内壁面およびブリッジ部の双方に形成することも可能ではあるが、所期の目的を達成する上では、請求項5に記載のように、上記ブリッジ部をシリンダヘッドカバーの内壁面に止着保持する止着保持手段を少なくともシリンダヘッドカバーの内壁面に形成してあれば足りる。
【0013】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、ガスケット側のシールに直接関与しないブリッジ部が不可避的にシリンダヘッドカバー内に露出することになるものの、そのブリッジ部は、シリンダヘッドカバーの内壁面に沿って略アーチ形状のものとなるように、そのシリンダヘッドカバーの内壁面に止着保持させてある。つまり、ブリッジ部がシリンダヘッドカバーの内壁面に沿って略アーチ形状のものとなるように止着保持させてあることは、そのブリッジ部がシリンダヘッド側の例えば動弁機構等の機構部品から距離的且つ可及的に離れるように保持してあることを意味する。そのために、ブリッジ部が不可避的にシリンダヘッドカバー内に露出してはいても、ブリッジ部とシリンダヘッド側の動弁機構等の機構部品とが距離的に大きく離れることとなり、ブリッジ部と上記機構部品等とが干渉することはなくなる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1,2に記載の発明によれば、シリンダヘッドカバー内において、ガスケットに付帯するブリッジ部と動弁機構等の機構部品とを距離的に大きく離すことができるから、両者の干渉を確実に回避することができる。特に、ブリッジ部を条片状または紐状のものとしたことでその大きさおよび占有スペースが最小限で済み、ブリッジ部と動弁機構等の機構部品との干渉を回避する上で一段と有利となる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、ブリッジ部自体を予め屈曲させて成形して、いわゆるくせ付けを施してあることにより、シリンダヘッドカバーの内壁面に対するブリッジ部の形状追従性、およびブリッジ部自体の形状保持性が高いものとなり、先に述べたようなブリッジ部と動弁機構等の機構部品との干渉を回避する上でより一層有利となるとともに、ブリッジ部をシリンダヘッドカバーの内壁面に沿わせた形状を長期にわたって安定して維持することが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、ブリッジ部をメインガスケット部およびホールガスケット部とともに一体成形したことで、成形性、組付性および部品点数削減の上で一段と有利となる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、ブリッジ部の止着保持手段を少なくともシリンダヘッドカバーの内壁面に形成したので、上記止着保持手段をブリッジ部およびシリンダヘッドカバーの内壁面の双方に形成する場合と比べて、構造の簡素化および製造工数の削減の上で有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1〜7は本発明のより具体的な第1の実施の形態を示し、特に図1は本発明が適用される自動車用エンジンの基本構造の一例を示している。
【0019】
図1に示すように、シリンダヘッド1と樹脂製のシリンダヘッドカバー(以下、単にヘッドカバーと言う。)2との間に、ヘッドカバー2とともにシリンダヘッド1の上面開口部を覆ういわゆるラダー状のカムシャフトブラケット3を介装し、このカムシャフトブラケット3とシリンダヘッド1との間にカムシャフト4,5を回転可能に圧締保持するようにしてある。なお、カムシャフトブラケット3はシリンダヘッド1の一部として機能するものであることは言うまでもなく、このような構造は、例えば特開2005−113850号公報等にて公知である。そして、カムシャフトブラケット3とヘッドカバー2との接合面同士の間に閉ループ状で且つ紐状のガスケット6が介装される。
【0020】
図2は先に述べたようなカムシャフトブラケット3とカムシャフト4,5およびガスケット6との相互関係を示している。
【0021】
図2に示すように、カムシャフトブラケット3は図1にも示したように図示外のボルトにてシリンダヘッド1の上面に固定されるとともに、カムシャフトブラケット3にはその周縁上面部を接合面として図1に示す樹脂製のヘッドカバー2が装着される。そして、シリンダヘッド1に対してカムシャフトブラケット3が正しく装着された状態では、カムシャフトブラケット3側のベアリングキャップビーム7,7同士の間にシリンダヘッド1側の複数のプラグチューブ(点火プラグを装着するための筒状体)8が臨むことになる。
【0022】
図3は図1のヘッドカバー2を内側から見た図であり、その周縁部には複数のボルト穴9が形成されているとともに、ヘッドカバー2それ自体の中央部にも二つのボルト穴10が形成されている。他方、図2に示したカムシャフトブラケット3にはヘッドカバー2側の各ボルト穴9,10と同じ配置で複数のねじ穴11,12が形成されている。そして、ヘッドカバー2側の各ボルト穴9,10とカムシャフトブラケット3側の各ねじ穴11,12を合致させた上で、各ボルト穴9,10から図示外のボルトを締め込むことでカムシャフトブラケット3に対してヘッドカバー2が固定される。
【0023】
なお、ボルト穴10でのボルト締結部については、後述する図5に示すように、ボス部2bに形成されたボルト穴10に挿入されるカラー18aを介してボルト18にて固定される。
【0024】
また、ヘッドカバー2の中央部には、部品取付穴として図2に示したシリンダヘッド1側のプラグチューブ8に対応する複数のプラグホール13が形成されている。そして、カムシャフトブラケット3に対してヘッドカバー2が正しく装着された状態では、図2に示すプラグチューブ8に対してヘッドカバー2側のプラグホール13が外挿され、図示しないOリング等のシール部材にて両者の間がシールされることになる。
【0025】
図2,3に示すように、ヘッドカバー2の周縁の接合面には、複数のボルト穴9を迂回するようにしてゴム等の弾性材料で形成された閉ループ状のガスケット6を予め嵌合保持させてある。より具体的には、後述する図5に示すように、ヘッドカバー2の周縁に閉ループ状に形成された溝14に対してガスケット6を嵌合保持させてある。したがって、上記のようにカムシャフトブラケット3に対してヘッドカバー2を装着したときは、それらのカムシャフトブラケット3とヘッドカバー2との間にガスケット6が介在して、両者の接合面間がシールされることになる。
【0026】
ここで、図3から明らかなように、各ボルト穴9の位置に相当するボルト締結部はガスケット6の外側に位置していて、しかもヘッドカバー2の内外はガスケット6によるシール機能によって隔絶されているので、上記各ボルト穴9の位置に相当するボルト締結部については特にシールを考慮する必要がない。なお、図2のプラグチューブ8とヘッドカバー2側のプラグホール13との嵌合部においても、独立したシール部材でシールされていることは先に述べたとおりである。
【0027】
これに対して、ヘッドカバー2側の中央部の二つのボルト穴10とカムシャフトブラケット3側のねじ穴12の位置に相当するボルト締結部については、ヘッドカバー2の内外を隔絶する上で別に何らかのシール機能を付与する必要がある。
【0028】
そこで、本実施の形態では、カムシャフトブラケット3に対してヘッドカバー2を正しく装着した際には、ヘッドカバー2の内下面2aのうち二つのボルト穴10の周縁部をカムシャフトブラケット3側のベアリングキャップビーム7に形成したねじ穴12の周縁部にそれぞれ着座させるように設定してあるので、図2,3から明らかなように、ヘッドカバー2の内下面2aのうち二つのボルト穴10に相当する位置に当該ボルト締結部でのシールを司るリング状のホールガスケット部15をそれぞれに設けてある。
【0029】
ここでは、上記のように二つのボルト穴10に相当する位置でのシールを司るシール部材をホールガスケット部15と称するのと併せて、先に説明したようにカムシャフトブラケット3とヘッドカバー2との接合部の周縁部を閉ループ状にシールしている部分をメインガスケット部16と称するものとし、それらのホールガスケット部15およびメインガスケット部16を含む全体をガスケット6と称するものとする。
【0030】
そして、図2,3に示すように、二つのホールガスケット部15とメインガスケット部16とをヘッドカバー2の短辺側から架橋的に延びる条片状または偏平な矩形紐状のブリッジ部17を介して相互に接続してある。このブリッジ部17は、図2,3に示すように、メインガスケット部16側からほぼ直角に延び出すものの、その途中から三次元的に屈曲してホールガスケット部15側に向かって斜めに延びていて、最終的にそのホールガスケット部15に接続してある。つまり、メインガスケット部16およびホールガスケット部15のほかブリッジ部17を含むガスケット6全体は、ゴム等の弾性材料にて一体に成形してある。
【0031】
図4は上記ブリッジ部17によるメインガスケット部16とホールガスケット部15との接続部の詳細を、図5はその断面図をそれぞれに示している。同図から明らかなように、それぞれにシールが必要な面、すなわちメインガスケット部16が介在することになるヘッドカバー2の周縁部の接合面と、上記ホールガスケット部15が介在することになる二つのボルト穴10の周縁部がカムシャフトブラケット3側のベアリングキャップビーム7に着座する面とでは、その高さ位置が相互に異なっていて、両者が同一平面上に位置していない。しかも、ヘッドカバー2の内下面2aは上記のようなシールが必要な面よりも深くなっている。
【0032】
なお、図5から明らかなように、ホールガスケット部15はメインガスケット部16と同様に断面が縦長形状のものであり、ボス部2bに形成された溝31に嵌合保持されている。
【0033】
このようなことから、図4,5に示すように、メインガスケット部16とホールガスケット部15とを接続しているブリッジ部17については、メインガスケット部16とホールガスケット部15とを結んだ最短距離を通ることなく、カムシャフト4に対して十分な距離を保ちながらその上方に大きく湾曲していて、結果としてヘッドカバー2の内面形状に沿わせつつカムシャフト4等と干渉することなくこれを跨ぐことができるように予め三次元的に湾曲または屈曲したアーチ形状に成形してある。すなわち、条片状または偏平な矩形紐状のブリッジ部17は、図5に示すようにヘッドカバー2の内面の縦壁面および内下面2aに沿わせることができるだけの十分な周長を有していて、弾性材料製のもの故に同図のような姿勢を自律的に保持(自己保持)することができないまでも、先に述べたようにヘッドカバー2の内面形状に沿わせることができるように三次元的に屈曲したアーチ形状に予めいわゆるくせ付けしてある。そして、ホールガスケット部15側に近い斜状部の根元部17aには所定の捻れを具備させてある。これらによって、ヘッドカバー2の内面に対するブリッジ部17の形状追従性を確保してある。
【0034】
他方、ヘッドカバー2の内面である内下面2aには、図4のほか図6,7に示すように、ブリッジ部17の長手方向に沿って、L字状に屈曲した係止片であるフック部19aを二つ一組で正対させてなる複数組(本実施の形態では、一つのブリッジ部17について二組)のクリップ19を一体に設けてあり、これらのクリップ19に条片状または偏平な矩形紐状のブリッジ部17を嵌合保持させてある。これによって、クリップ19はブリッジ部17のための止着保持手段として機能し、ブリッジ部17のうち少なくともヘッドカバー2の内下面2aに沿う部分ではそのヘッドカバー2の内下面2aに密着していて、その脱落防止が図られていることにより、図2,5のようなアーチ形状を保持している。なお、図5に示すように、ヘッドカバー2の内下面2aは、後述するように、ブローバイガス通路等として機能することになる上部の空間20を隔離形成するバッフルプレートを兼ねている。
【0035】
ここで、クリップ19のような止着保持手段の採用を前提とした場合には、ブリッジ部17としては必ずしも図5のようなアーチ形状にくせ付けしてある必要はなく、いわゆるフラットな形状のままでも良い。また、図5および図6から明らかなように、ブリッジ部17はその断面形状がメインガスケット部16やホールガスケット部15とは明らかに相違していて、メインガスケット部16やホールガスケット部15と異なり特定部品間をシールする機能は有していない。
【0036】
さらに、図5から明らかなように、ヘッドカバー2の内下面2aの上側には所定の空間20が確保されていて、この空間20はブローバイガスの通路あるいはそのガス中に含まれるオイルの分離のためのオイルミストセパレータとして機能することになる。そのために、図4にはブローバイガス導入口21のほか分離されたオイルを貯留した上で滴下するためのオイル吐出部22が描かれている。
【0037】
したがって、本実施の形態によれば、メインガスケット部16とホールガスケット部15を接続しているブリッジ部17は、図5に示すようにヘッドカバー2の内部空間に露出してはいても、ヘッドカバー2の内面に沿うかたちでこれに忠実に追従するようにアーチ形状を保持していて、そのアーチ形状をもってカムシャフト4等の動弁系の機構部品と干渉することがないように、そのカムシャフト4等に対して大きな距離を保ちながらカムシャフト4等を跨いでいる。
【0038】
このアーチ形状の保持は、先に述べたようにブリッジ部17自体が図5のような三次元形状に予め成形されていわゆるくせ付けされているのに加えて、止着保持手段としてのクリップ19によって嵌合保持されていることに基づいている。そのために、ブリッジ部17は同図の形状を長期にわたって安定して維持することが可能であるとともに、ブリッジ部17それ自体の占有スペースも小さいことから、カムシャフト4をはじめとする動弁機構等の機構部品との干渉を確実に回避できるようになる。
【0039】
その上、ブリッジ部17はメインガスケット部16およびホールガスケット部15とともに一体成形してあるため、成形性や組付性が良好なものとなるほか、部品点数および部品管理工数の削減の上でも一段と有利となる。
【0040】
ここで、ブリッジ部17については、可能な限り肉厚を大きくしたり、あるいは樹脂あるいは金属製の芯材を埋設することで、その剛性を大きくし、それによってブリッジ部17それ自体で図5のようなアーチ形状を自己保持できるようにすれば、止着保持手段であるクリップ19は必ずしも必要としない。また、ブリッジ部17を図5のようなアーチ状に保持することができる機能さえであれば、止着保持手段たるクリップ19は必ずしも図6,7の形状のものに限定されるものではない。
【0041】
図8,9および図10は本発明の第2,第3の実施の形態を示し、図6に示したブリッジ部17のための止着保持手段たるクリップの変形例を示している。
【0042】
図8,9の第2の実施の形態は、L字状をなす単一のフック部をもってクリップ19Aとし、ブリッジ部17の長手方向においてこのクリップ19Aを同じ向きで複数並設したものであり、同様に図10の第3の実施の形態は、L字状をなす単一のフック部をもって形成したクリップ19Bをブリッジ部17の長手方向において互い違いの関係となるようにいわゆる千鳥状に複数並設したものである。これらの各実施の形態でも、クリップ19A,19Bは樹脂製のヘッドカバー2と一体に成形される。
【0043】
したがって、これらの第2,第3の実施の形態においても先の第1の実施の形態と同様の効果が得られることになる。
【0044】
図11〜図13は本発明の第4〜第6の実施の形態をそれぞれに示し、上記と同様にブリッジ部17のための止着保持手段の変形例を示している。
【0045】
図11の第4の実施の形態では、図8〜10と同様にL字状をなす単一のフック部をもってクリップ19Cとし、そのクリップ19Cの先端に脱落防止のための突起部23を形成したものである。
【0046】
図12の第5の実施の形態では、L字状をなす単一のフック部24とそのフック部24の開口部側に所定の隙間Gを隔てて対向する突起部25とをもってクリップ19Dを形成し、突起部25にブリッジ部17の脱落防止機能を不備させたものである。
【0047】
図13の第6の実施の形態では、ヘッドカバー2の内下面2aに、ブリッジ部17のための止着保持手段として、奥部側が幅広となる断面T字状のいわゆるT溝(Tスロット)26を形成し、このT溝26にブリッジ部17を嵌合保持させたものである。
【0048】
これらの第4〜第6の実施の形態においても先の第1の実施の形態と同様の効果が得られることになる。
【0049】
さらに、図14〜図17は本発明の第7〜第10の実施の形態をそれぞれに示し、上記と同様にブリッジ部17のための止着保持手段の変形例を示している。
【0050】
図14の第7の実施の形態では、ガスケット6のブリッジ部17に、その長手方向に沿って所定のピッチで複数の係止穴27を形成する一方、ヘッドカバー2の内下面2aには、上記係止穴27に対応して、先端に軸部28aよりも大径で且つ円錐状の頭部28bを有するアンカー部28を形成し、このアンカー部28を上記係止穴27に係止させるようにしたものである。
【0051】
図15の第8の実施の形態では、上記とは逆に、ガスケット6のブリッジ部17に、その長手方向に沿って所定のピッチで複数のアンカー部29を形成する一方、ヘッドカバー2の内下面2aには、上記アンカー部29に対応して、そのアンカー部29を受容可能な係止穴30を形成し、アンカー部29を上記係止穴30に係止させるようにしたものである。なお、アンカー部29は、図14と同様にその先端に軸部29aよりも大径で且つ円錐状の頭部29bを有している。
【0052】
これら図14,15の第7,第8の実施の形態では、ブリッジ部17の止着保持手段として、ブリッジ部17およびヘッドカバー2の内下面2aの双方に係止穴やアンカー部を個別に形成する必要があるが、ブリッジ部17の脱落防止の上ではより信頼性が高いものとなる。
【0053】
図16の第9の実施の形態では、これまでの条片状または偏平な矩形紐状のブリッジ部17に代えて、ブリッジ部27そのものの断面形状を三角形状にしたものであり、図17の第10の実施の形態では、同様にブリッジ部47そのものの断面形状を円形状にしたものである。
【0054】
すなわち、先に述べたようなブリッジ部本来の機能さえ確保できればその断面形状は特に問わないものであり、図16に例示した断面三角形状のもの、あるいは図17に例示した断面円形状のものでも所期の目的は達成される。そして、そのブリッジ部37または47の断面形状に応じて、止着保持手段としても最適なものが選定される。すなわち、図16,17に例示した断面形状のブリッジ部37,47の場合にも、止着保持手段としては、図6〜12に示したクリップタイプ、図13に例示した溝タイプ、さらには図14,15に例示したアンカータイプ等を前提として、それらにブリッジ部そのもの断面形状に応じた改良を加えることで容易に採用できる。
【0055】
ここで、上記各実施の形態においては、図1に示したように、シリンダヘッド1とヘッドカバー2との間にカムシャフトブラケット3が介在する場合の例を示しているが、カムシャフトブラケット3が介在しないタイプのエンジンにも同様に適用することができることは言うまでもない。
【0056】
また、上記各実施の形態においては、ボルト穴10の周縁部をシールするホールガスケット部15とメインガスケット部16とをブリッジ部17を介して連結する場合の例を示しているが、これに代えて、図2に示したプラグチューブ8とヘッドカバー2側のプラグホール13との間をシールするシール部材とメインガスケット部16とをブリッジ部17を介して連結する場合のほか、ホールガスケット部15と上記シール部材の双方をメインガスケット部16にブリッジ部17を介して連結する場合にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】カムシャフトブラケットを採用した自動車用エンジンの基本構造を示す分解図。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、ガスケットとカムシャフトブラケットおよびカムシャフトの相互関係を示す斜視図。
【図3】図2のカムシャフトブラケットと併用されるヘッドカバーを内側から見た説明図。
【図4】図3の要部拡大斜視図。
【図5】図2のカムシャフトブラケットに図3のヘッドカバーを装着した状態での要部断面図。
【図6】図4の要部拡大図。
【図7】図6のA−A線に沿う断面図。
【図8】本発明の第2の実施の形態を示す図で、図6の変形例を示す要部斜視図。
【図9】図8のB−B線に沿う断面図。
【図10】本発明の第3の実施の形態を示す図で、図6の変形例を示す断面図。
【図11】本発明の第4の実施の形態を示す図で、図9の変形例を示す断面図。
【図12】本発明の第5の実施の形態を示す図で、図9の変形例を示す断面図。
【図13】本発明の第6の実施の形態を示す図で、図9の変形例を示す断面図。
【図14】本発明の第7の実施の形態を示す図で、図9のさらなる変形例を示す断面図。
【図15】本発明の第8の実施の形態を示す図で、図9のさらなる変形例を示す断面図。
【図16】本発明の第9の実施の形態を示す図で、図6に示したブリッジ部の断面形状の変形例を示す断面図。
【図17】本発明の第10の実施の形態を示す図で、図6に示したブリッジ部の断面形状の変形例を示す断面図。
【符号の説明】
【0058】
1…シリンダヘッド
2…シリンダヘッドカバー
3…カムシャフトブラケット
6…ガスケット
10…ボルト穴
13…プラグホール
15…ホールガスケット部
16…メインガスケット部
17…ブリッジ部
19…クリップ(止着保持手段)
19A…クリップ(止着保持手段)
19B…クリップ(止着保持手段)
19C…クリップ(止着保持手段)
19D…クリップ(止着保持手段)
26…T溝(止着保持手段)
27…係止穴(止着保持手段)
28…アンカー部(止着保持手段)
29…アンカー部(止着保持手段)
30…係止穴(止着保持手段)
37…ブリッジ部
47…ブリッジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダヘッドと接合されるシリンダヘッドカバーの接合面に装着されるガスケットの取付構造であって、
上記ガスケットは、
シリンダヘッドカバー側の接合面に嵌合保持される閉ループ状のメインガスケット部と、
上記閉ループ状のメインガスケット部の内側空間に位置するリング状のホールガスケット部と、
上記メインガスケット部とホールガスケット部とを連結している条片状または紐状のブリッジ部と、
を備えていて、
上記ブリッジ部は、シリンダヘッドカバーの内壁面に沿って略アーチ形状のものとなるように、そのシリンダヘッドカバーの内壁面に止着保持させてあることを特徴とするシリンダヘッドカバーのガスケット取付構造。
【請求項2】
上記メインガスケット部によってシールされる部分とホールガスケット部によってシールされる部分とが同一平面上にはなくその位置が互いに異なっていて、
上記ブリッジ部は、メインガスケット部とホールガスケット部とを結んだ最短距離を通ることなくアーチ状に湾曲しているものであることを特徴とする請求項1に記載のシリンダヘッドカバーのガスケット取付構造。
【請求項3】
上記ブリッジ部がシリンダヘッドカバーの内壁面に沿った略アーチ形状のものとなるように、ブリッジ部自体を予め屈曲させて成形してあることを特徴とする請求項2に記載のシリンダヘッドカバーのガスケット取付構造。
【請求項4】
上記メインガスケット部がシリンダヘッドとシリンダヘッドカバーの接合面同士の間をシールし、
上記ホールガスケット部がシリンダヘッドカバー側の部品取付穴と他部品との間をシールするものであるのに対して、
上記ブリッジ部は特定部位のシールに関与しないようになっていて、
そのブリッジ部は、メインガスケット部およびホールガスケット部とともに一体成形してあることを特徴とする請求項3に記載のシリンダヘッドカバーのガスケット取付構造。
【請求項5】
上記ブリッジ部をシリンダヘッドカバーの内壁面に止着保持する止着保持手段を少なくともシリンダヘッドカバーの内壁面に形成してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシリンダヘッドカバーのガスケット取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−112278(P2010−112278A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286038(P2008−286038)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000151209)株式会社マーレ フィルターシステムズ (159)
【Fターム(参考)】