説明

シリンダユニット

【課題】イジェクト操作ストローク域でのプランジャ32の下動を規制して、使用済みノズルチップ2内に残留する液体がイジェクト時に飛散してしまうことを防止する。
【解決手段】プランジャホルダー5を、駆動機構6に連動連結される昇降体51と、該昇降体51と一体動作する常時弾圧付勢された連動体52とで構成し、イジェクト手段8を、チップ挿入部311が貫通され、その下面部でノズルチップ2が挿着可能なイジェクト板81と、該イジェクト板81をシリンダホルダー4に対しその頭部821側を突出させた状態から、弾機822の付勢力に抗して下動可能に吊持する吊持片82と、連動体52の所定ストロークを超えた下動を規制するストッパ83とで構成し、昇降体51は、連動体52が下動規制された状態から、さらに吊持片82を押圧しながら下動してイジェクト板81によりノズルチップ2をイジェクトする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置、分析装置等において、容器内の試液(試薬、検体等の液体)をノズルチップ内に定量吸入し、吐出するためのシリンダユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、容器内の試液をノズルチップ内に定量吸入し、複数の分注容器に小分けして定量吐出する分注操作が行われた後には、使用済みのノズルチップを新たなものに取り替える必要がある。
【0003】
ところで、従来、分注装置等におけるシリンダユニットでは、使用済みノズルチップを、プランジャホルダー(91)の昇降駆動機構を利用して、その移動域を分注操作ストロークとイジェクト操作ストロークとし、このイジェクト操作ストローク域において、シリンダホルダー(73、75)下面部に設けたイジェクト板(123)を下動して自動イジェクトするように構成されたものが知られている。(特許文献1参照)
【0004】
しかしながら、このものは、正面視凵状に形成されたイジェクト板(123)の左右立上り片の上方に解除ピン(117)を設け、プランジャホルダー(91)が、解除ピン(117)を押し下げることで使用済みノズルチップを破棄するようになっているため、イジェクト操作ストローク域においてもプランジャ(21)がプランジャホルダー(91)と共に一体可動してしまい、使用済みノズルチップ内に残留する液体を飛散してしまう欠点がある。
【0005】
【特許文献1】特開2001−33463号公報(項目[0016]、図4参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の如き問題点を一掃すべく創案されたものであって、プランジャホルダーを下動させて使用済みノズルチップをイジェクトできるものでありながら、イジェクト操作ストローク域でのプランジャの下動を規制して、使用済みノズルチップ内に液体が残留していても、イジェクト時に飛散してしまうことを防止することのできるシリンダユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のシリンダユニットは、所定の試液をノズルチップ内に定量吸入し、これを任意に定量吐出するシリンダユニットであって、該シリンダユニットは、先端側にノズルチップのチップ挿入部を有するシリンダの胴部を装着するシリンダホルダーと、前記シリンダ内に密封嵌装されて駆動機構により一体的にピストン駆動するプランジャの頭部を装着するプランジャホルダーと、該プランジャホルダーの下部側に設けられて前記チップ挿入部に挿入保持されたノズルチップをイジェクトするイジェクト手段とからなり、前記プランジャホルダーを、前記駆動機構に昇降可能に連動連結される昇降体と、該昇降体の上部側に配設されて、昇降体と常時一体的に動作する連動体とで分離可能に構成し、前記イジェクト手段を、前記チップ挿入部が貫通されて、その下面部でノズルチップの挿着を可能とするイジェクト板と、該イジェクト板を前記シリンダホルダーに対しその頭部側を常時突出させた状態を保持し、該保持位置から下動復帰可能に吊持する吊持片と、前記連動体の所定ストロークを超えた下動を規制するストッパとで構成し、前記昇降体は、前記連動体が下動規制された状態から、さらに前記吊持片を押圧しながら下動して、前記イジェクト板によるノズルチップのイジェクトを可能とすべく構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記のように構成したことにより、プランジャホルダーの駆動機構を利用して使用済みノズルチップをイジェクトできるものでありながら、イジェクト操作ストローク域での連動体の下動を規制することができるので、プランジャが吐出を完了した、所謂分注操作ストロークの終点位置で一旦下動を停止したイジェクト待機状態から、シリンダユニットを使用済みチップ回収容器まで移動した後に、昇降体だけを下動させてイジェクト操作することができ、ノズルチップ内に液体が残留していたとしても飛散が回避され安全に回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を好適な実施の形態として例示する分注装置におけるシリンダユニットを図面に基づいて詳細に説明する。図1は分注装置に設けられたシリンダユニットの全体正面図、図2は同じく全体側面図、図3シリンダユニットの要部構成図である。これらの図に示すように、分注装置に装着されたシリンダユニット1は、先端にノズルチップ2が装着された複数のシリンダ31、31・・・を有するシリンダホルダー4と、前記各シリンダ31内に密封嵌装されて駆動機構6により一体的にピストン駆動する複数のプランジャ32、32・・・を有するプランジャホルダー5とから構成されている。
そして、シリンダユニット1は、ユニット全体が作動機構61により、前後、左右、上下方向の任意に夫々動作可能に構成されており、分注テーブルにセットされたノズルチップ2やカートリッジ容器、使用済みチップ回収容器などの配置部位に対し精度良く位置決めし、ノズルチップ2を同時に挿入保持し、カートリッジ容器に対し所定量の薬液を分配状に同時に注入・吐出できるようになっている。なお、作動機構61の基本的な構成は、駆動機構6と略同じである。
【0010】
前記シリンダ31には、その先端側にノズルチップ2を嵌挿保持するチップ挿入部311と、胴部中央にツバ片312が一体形成されており、シリンダホルダー4に穿設された挿入孔41対してその基端側胴部を挿着させた状態で、都合6個が装着固定されている。
前記プランジャ32は、プランジャホルダー5に設けられた取付部511に、プランジャ頭部321を挿入して装着固定されており、先端側をシリンダ31内にその入口に設けられたOリング7を介して密封状に嵌装されている。
【0011】
前記プランジャホルダー5は、駆動機構6に昇降可能に連動連結される昇降体51と、該昇降体51の上部側に配設されて、昇降体51と常時一体的に動作する連動体52との2部材によって、分離可能に構成される。
昇降体51は、図4に示すように、プランジャ頭部321をセットするための取付部511と、その後方に肉厚に延設した案内部512とによって、全体が倒伏(右側へ)尸字状に一体形成されている。取付部511には、前面側にU字状に開口して、プランジャ頭部321の形状に適合する凹状の頭部受け51aが都合6個形成されており、案内部512には、中央にナット孔51bが、その両側に案内孔51cがそれぞれ設けられている。
つまり、昇降体51は、モーター601が取り付けられるブラケット602に装着された左右のガイド軸603に案内孔51cを介して昇降ガイドされるようになっており、モーター601の出力軸に連結されるカップリング604に連結された送りネジ605をナット孔51bに回転自在に螺合させることで、モーター601の正逆回転駆動により昇降自在に構成される。
【0012】
一方、連動体52は、取付部511の上面左右端部に立設した案内ボルト521に挿通されて載置され、連動体52から突出する案内ボルト521に、その頭部ナット523と連動体52間に圧縮して設けられたコイルスプリング522により、取付部511に弾圧付勢されて、昇降体51と常時一体的に動作するよう構成されている。プランジャ頭部321を頭部受け51aに取り付ける際には、頭部ナット523を外して連動体52を持ち上げた状態で仮セットし、その後、連動体52の弾圧付勢力によりプランジャ頭部321を押さえつけてセットが完了する。昇降体51と連動体52との一体動作は、コイルスプリング522の弾圧付勢により行うようにしたがこれに限定されることはなく、弾圧付勢によらない他の構成を採用するようにしても良い。
これにより、昇降体51が上動すると取付部511がプランジャ頭部321を引き上げ、昇降体51が下動すると連動体52がプランジャ頭部321を押し下げ、プランジャ32のシリンダ31内での所定のストローク間をピストン駆動することができる。なお、本実施例ではプランジャ32の頭部受け51aを昇降体51側に設けたが、連動体52側に設けても良い。
【0013】
次に、ノズルチップ2のイジェクト手段8の構成を、図5、図6に基づいて説明する。図5は吐出動作完了時のシリンダユニットの要部構成図、図6はイジェクト動作時のシリンダユニットの要部構成図である。この図において、イジェクト手段8は、チップ挿入部311に装着されたノズルチップ2をイジェクトするイジェクト板81と、該イジェクト板81をシリンダホルダー4に対して、その頭部821側を常時突出させた状態を保持し、該保持位置から下動復帰可能に吊持する吊持片(吊持ボルト)82と、該吊持片82を突出位置に保持し圧縮付勢力に抗して下動復帰を可能とすべく設けられた弾機(コイルスプリング)822と、連動体52の所定の分注操作ストロークを超えた下動を規制するストッパ83とを備えて構成される。
【0014】
前記イジェクト板81には、シリンダ31のチップ挿入部311を突出させた状態で挿通する6つの挿通孔811、811・・・と、両サイドに吊持ボルト82の先端を取着して立設する取着部812が形成されている。
吊持ボルト82は、シリンダホルダー4の両サイドに形成された凹状溝42を貫通し、その頭部との間で、凹状溝42内にその下半部分がセットされ、上半部分が露出したコイルスプリング822が圧縮された状態で、イジェクト板81を吊持している。
ストッパ83は、プランジャホルダー5が下動すると、昇降体51とは当接せずに連動体52と当接するようになっており、昇降体51は、連動体52がストッパ83に当接して分注操作ストロークを超えた下動が規制された状態から、さらにイジェクト操作ストローク域における下動が許容されている。
これにより、イジェクト板81は、その下面域でシリンダ31のチップ挿入部311が突出された状態で吊持され、コイルスプリング522の付勢力に抗して連動体52から分離した昇降体51が、吊持ボルト82の頭部に当接して押し下げられると、コイルスプリング822の反発付勢力に抗して下動し、チップ挿入部311にセットされたノズルチップ2をイジェクトすることができる構成となっている。なお、吊持ボルト82(イジェクト板81)の突出位置の保持と下動復帰は、コイルスプリング822の弾圧付勢により行うようにしたがこれに限定されることはなく、弾圧付勢によらない他の構成を採用するようにしても良い。
【0015】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、プランジャホルダー5の駆動機構6を利用して、チップ挿入部311にセットされた使用済みのノズルチップ2をイジェクト板81によりイジェクトするのであるが、本発明におけるシリンダユニット1は、プランジャホルダー5を、駆動機構6に昇降可能に連動連結される昇降体51と、該昇降体51の上部側に配設されて、昇降体51と常時一体的に動作する連動体52との2部材によって、分離可能に構成し、イジェクト手段8を、チップ挿入部311が貫通されて、その下面部でノズルチップ2の挿着を可能とするイジェクト板81と、該イジェクト板81をシリンダホルダー4に対しその頭部821側を常時突出させた状態を保持し、該保持位置から、下動復帰可能に吊持する吊持片(吊持ボルト)82と、連動体52の所定ストロークを超えた下動を規制するストッパ83とで構成し、昇降体51は、連動体52が下動規制された状態から、さらに吊持ボルト82を押圧しながら下動して、イジェクト板81によるノズルチップ2のイジェクトを可能とすべく構成されている。
【0016】
つまり、プランジャホルダー5の移動域は、ストッパ83までの移動域を昇降体51と連動体52とが一体駆動する分注操作ストロークと、ストッパ83を超えた移動域を連動体52が単独駆動するイジェクト操作ストロークとに設定されることになる。
このため、プランジャホルダー5の駆動機構6を利用して使用済みノズルチップ2をイジェクトできるものでありながら、通常の分注作業は、分注操作ストローク域において、昇降体51と連動体52とが密着した状態で昇降駆動させることで、従来と同様にプランジャ32のピストン駆動を行うことができ、さらに、イジェクト作業は、イジェクト操作ストローク域において、プランジャ32を押し下げる連動体52の下動がストッパ83によって規制されることで、プランジャ32の下動を規制することができる。その結果、プランジャ32が吐出作業を完了した、所謂分注操作ストロークの終点位置で下動を一旦停止させたイジェクト待機状態から、シリンダユニット1を作動機構61によって使用済みチップ回収容器まで移動した後に、昇降体51だけを下動させてイジェクト操作することができ、ノズルチップ2内に残留する液体の飛散が回避され安全に回収することができる。
【0017】
また、前記連動体52は、昇降体51に立設した案内ボルト521に挿通されて、該案内ボルト521にその頭部ナット523と連動体52間に圧縮して設けられたコイルスプリング522により、昇降体51に弾圧付勢されて常時一体的に動作するよう構成されているため、分注操作ストローク域において、連動体52を昇降体51に密着させた状態で駆動機構6への負担影響を何ら与えることなく、従来と同様のプランジャホルダー5として昇降動作させることができる。
【0018】
また、前記吊持片(吊持ボルト)82は、シリンダホルダー4を挿通してイジェクト板81に立設されると共に、該イジェクト板81は、吊持片82に、吊持片頭部821とシリンダホルダー4間に設けられたコイルスプリング822の付勢力に抗して下動復帰可能に吊持されているので、イジェクト板81がコイルスプリング822の反発付勢力で、常にシリンダ31方向に弾圧させることができ、シリンダ31をシリンダホルダー4の挿入孔41対してその基端側胴部を挿着させた状態を維持させることができる。しかも、イジェクト時においては、Oリング7の弾性力により密接するプランジャ32が、シリンダ31に深く挿入された吐出完了位置にあるため、シリンダ31が挿入孔41より抜けてしまうこともない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るシリンダユニットの全体正面図である。
【図2】同じく全体側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るシリンダユニットの一部破断要部構成図で、(A)はその正面図、(B)はその側面図ある。
【図4】昇降体の斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るシリンダユニットの吐出動作完了状態を示す一部破断要部構成図で、(A)はその正面図、(B)はその側面図ある。
【図6】本発明の実施形態に係るシリンダユニットのイジェクト動作状態を示す一部破断要部構成図で、(A)はその正面図、(B)はその側面図ある。
【符号の説明】
【0020】
1 シリンダユニット
2 ノズルチップ
31 シリンダ
311 チップ挿入部
312 ツバ片
32 プランジャ
321 プランジャ頭部
4 シリンダホルダー
41 挿入孔
42 凹状溝
5 プランジャホルダー
51 昇降体
51a 頭部受け
51b ナット孔
51c 案内孔
511 取付部
512 案内部
52 連動体
521 案内ボルト
522 コイルスプリング
523 頭部ナット
6 駆動機構
601 モーター
602 ブラケット
603 ガイド軸
604 カップリング
605 ネジ
61 作動機構
7 Oリング
8 イジェクト手段
81 イジェクト板
811 挿通孔
812 取着部
82 吊持片(吊持ボルト)
821 吊持片頭部
822 弾機(コイルスプリング)
83 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の試液をノズルチップ内に定量吸入し、これを任意に定量吐出するシリンダユニットであって、
該シリンダユニットは、先端側にノズルチップのチップ挿入部を有するシリンダの胴部を装着するシリンダホルダーと、前記シリンダ内に密封嵌装されて駆動機構により一体的にピストン駆動するプランジャの頭部を装着するプランジャホルダーと、該プランジャホルダーの下部側に設けられて前記チップ挿入部に挿入保持されたノズルチップをイジェクトするイジェクト手段とからなり、
前記プランジャホルダーを、前記駆動機構に昇降可能に連動連結される昇降体と、該昇降体の上部側に配設されて、昇降体と常時一体的に動作する連動体とで分離可能に構成し、
前記イジェクト手段を、前記チップ挿入部が貫通されて、その下面部でノズルチップの挿着を可能とするイジェクト板と、該イジェクト板を前記シリンダホルダーに対しその頭部側を常時突出させた状態を保持し、該保持位置から下動復帰可能に吊持する吊持片と、前記連動体の所定ストロークを超えた下動を規制するストッパとで構成し、
前記昇降体は、前記連動体が下動規制された状態から、さらに前記吊持片を押圧しながら下動して、前記イジェクト板によるノズルチップのイジェクトを可能とすべく構成されていることを特徴とするシリンダユニット。
【請求項2】
前記プランジャホルダーの移動域は、前記ストッパまでの移動域を前記昇降体と連動体とが一体駆動する分注操作ストロークと、前記ストッパを超えた移動域を前記連動体が単独駆動するイジェクト操作ストロークとに設定されていることを特徴とする請求項1に記載のシリンダユニット。
【請求項3】
前記連動体は、前記昇降体に立設した案内ボルトに挿通されて、該案内ボルトにその頭部ナットと連動体間に圧縮して設けられたコイルスプリングにより、前記昇降体に弾圧付勢されて常時一体的に動作することを特徴とする請求項1または2に記載のシリンダユニット。
【請求項4】
前記吊持片は、前記シリンダホルダーを挿通して前記イジェクト板に立設されると共に、該イジェクト板は、吊持片に、吊持片頭部とシリンダホルダー間に設けられたコイルスプリングの付勢力に抗して下動復帰可能に吊持されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のシリンダユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate