説明

シリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構

【課題】メダル補給扉を開けたときにロック部材が作業の邪魔にならない状態で鍵板を鍵穴から引き抜くことのできるようにしたシリンダーキーを用いた施錠機構を提案すること。
【解決手段】メダル補給扉6の施錠機構のキーシリンダ30では、メダル補給扉6を開けた状態において、鍵板40を引き抜き可能な状態のままでキーシリンダ30の全体を、第2位置34Bまで回転可能としてある。第2位置34Bまで回転させることにより、ロック部材33が、メダル補給口に突出していない状態を形成できる。よって、メダル補給扉6を開けた状態において、キーシリンダ30のロック部材33が作業の邪魔になることが無く、また、その状態で鍵板40を鍵穴32から抜き取ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵板を鍵穴に差し込んで回すと施錠状態が解除されて開錠状態に切り替わり、鍵穴から鍵板を引き抜くためには鍵板を再び施錠状態まで戻す必要のあるシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構に関するものである。さらに詳しくは、開閉扉を開けた状態で鍵板を鍵穴から抜き取るためにキーシリンダを施錠状態に戻した場合に、当該キーシリンダのロック部材が開閉扉によって開閉される開口部に突出しないように構成したシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の構造のシリンダーキーは開閉扉の施錠のために広く使用されている。例えば、遊技店などに設置されているメダル貸し機におけるメダル補給口や硬貨補給口の開閉扉、ロッカー、ポスト類、電源操作盤、各種のオペレータ盤、各種のメンテナンス用開口部などの開閉扉に用いられている。これらの開口部は、開閉扉を開けて、作業員などが手を入れて所定の操作や作業を行うために利用される。
【0003】
図5(a)はシリンダーキーによる施錠機構を備えた従来のメダル貸し機を示す概略外観斜視図であり、図5(b)はその補給扉の部分を示す部分断面図である。メダル貸し機1は、縦長の直方体形状をした筐体2を備えており、この筐体2の前面の上側部分には硬貨投入口3および紙幣挿入口4が形成され、内部には貨幣処理機構(図示せず)が配置されている。硬貨投入口3および紙幣挿入口4の下側には矩形の開口部5が形成されており、この開口部5は開閉可能な矩形のメダル補給扉6によって封鎖されている。このメダル補給扉6の下側にはメダル投出用の受け皿8が配置されており、当該部分の筐体内部にはメダル集積部およびメダル投出機構(図示せず)が配置されている。
【0004】
メダル補給扉6はその下端に取り付けたヒンジ7を中心として前方に開けることができる開閉扉であり、その上端部の中央部分にはシリンダーキーからなる施錠機構が取り付けられている。メダル補給扉6の側縁部分には円弧状のガイド溝9aが形成されたガイド板9が取り付けられている。ガイド溝9aに沿って、筐体2に取り付けたガイドピン2aがスライドするようになっており、これらにより、メダル補給扉6の開度が規定されている。
【0005】
メダル補給扉6の施錠機構は、キーシリンダ11と、鍵板(キープレート)20と、筐体2の側に形成されている係合用の張り出し部2bを備えている。図5(a)に示す施錠状態にあるキーシリンダ11の鍵穴12に鍵板20を差し込み、図面に向かって右回りに鍵板20を回すと、キーシリンダ11のロック部材13が開口部5の上縁部分に形成した内側への張り出し部2bから外れる。この結果、施錠状態が解除される。
【0006】
図6(a)〜(c)はそれぞれ、キーシリンダ11を示す側面図、キーシリンダの背面図、および、ロック部材の平面図である。キーシリンダ11は、キーシリンダ本体14と、このキーシリンダ本体14の中心を同軸状態で貫通して延びるキーシリンダ回転軸15と、キーシリンダ回転軸15に一体回転するように取り付けた細長い矩形のロック部材13を備えている。
【0007】
キーシリンダ本体14はメダル補給扉6に対して貫通した状態で取り付けられており、大ナット16によって当該メダル補給扉6に締結固定されている。キーシリンダ回転軸15の後側の軸端部15aは図5(b)から分かるように、円形断面の軸の直径方向の両端部分を平面状に切り取った断面形状とされており、当該断面形状の軸端部を嵌め込み可能な穴13aがロック部材13に形成されている。ロック部材13は、その穴13aにキーシリンダ回転軸15の軸端部が貫通した状態で、小ナット17によって抜け出ないように当該キーシリンダ回転軸15に固定されている。
【0008】
キーシリンダ本体14とキーシリンダ回転軸15は不図示の複数本のピンによって相対回転不可の状態に係合している。鍵板20を差し込むとこれらの係合状態が解除され、鍵板20を回すと、キーシリンダ回転軸15がキーシリンダ本体14に対して相対回転し、キーシリンダ回転軸15と一体回転するロック部材13も一緒に回転する。キーシリンダ回転軸15の回転可能な方向は一方向に定められており、また、その回転可能な角度範囲も一般に75〜90度の範囲に制限されている。
【0009】
キーシリンダ回転軸15に差し込んだ鍵板20は、キーシリンダ回転軸15を回した状態ではその鍵穴から抜き取ることができず、キーシリンダ回転軸15を元の位置、すなわち、ロック位置に戻すと抜き取ることができるように構成されている。
【0010】
図7(a)および(b)は、メダル補給扉6の施錠を解除して開いた状態を示す部分斜視図および部分断面図である。この状態では、鍵穴12に差し込まれた鍵板20が90度回され、ロック部材13は水平に倒れたアンロック位置13Bにある。また、メダル補給扉6はガイド溝9aの端とガイドピン2aとの係合によって規定される開度で開いている。メダル補給扉6が開くと、当該メダル補給扉6の本体板部分6aおよび、この左右の側板部分6b、6cと、筐体2側の開口部5の上縁部分5aとによって規定される矩形のメダル補給口21が開放状態になり、ここを介してメダル(図示せず)の補給が行われる。
【0011】
この状態では、先に述べたように、鍵板20を鍵穴12から抜き取ることができない。鍵板20を抜き取るためには、鍵板20を再び元の位置まで回す必要がある。
【0012】
図8(a)および(b)は、メダル補給扉6を開けたまま、鍵板20を元の位置まで戻して抜き取った状態を示す部分斜視図および部分断面図である。この状態では、ロック部材13が垂直に立ったロック位置13Aに戻り、メダル補給扉6の本体板部分6aの上縁から上方に突出した状態となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、遊技店の店員、メンテナンスを行う作業員などは、多種多様の鍵板類を束にして所持し、鍵束と着衣などをロープ、ケーブル、カールコード等によって連結していることが多い。このため、メダル補給扉6を開けた後は、鍵板20を鍵穴12から抜き取らないと、メダル補給などの作業の邪魔になってしまう。特に、同時に複数箇所の開閉扉を開けて同時に、あるいは連続して作業を行う場合は、鍵板20から鍵穴12を抜き取る必要がある。
【0014】
先に述べたように、鍵板20を鍵穴12から抜き取るためには、キーシリンダ11のロック部材13をロック位置13Aに戻す必要がある。ロック部材13がロック位置13Aに戻ると、図8に示すように、メダル補給扉6の上縁からロック部材13が突出した状態になる。この状態でメダル補給などの作業を行うと、作業員の手や腕がロック部材13に接触しやすい。このため、ロック部材13に当たらないように注意しながら作業を行う必要があり、不便である。また、ロック部材13に当たって怪我をするおそれもある。
【0015】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、開閉扉を開けたときに、ロック部材が作業の邪魔にならない状態で鍵板を鍵穴から引き抜くことのできるようにしたシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明は、鍵板を、キーシリンダ回転軸に形成されている鍵穴に差し込むと、キーシリンダ本体とキーシリンダ回転軸の係合が解除され、当該キーシリンダ回転軸がその軸線周りに、ロック位置から第1回転方向に所定角度だけ回転したアンロック位置までの範囲内で、前記キーシリンダ本体に対して相対回転可能となり、前記鍵穴から前記鍵板を引き抜くためには前記キーシリンダ回転軸を前記ロック位置に戻す必要のあるシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構において、
前記キーシリンダ本体をその軸線周りに、第1位置から前記第1回転方向とは逆の第2回転方向に所定量だけ回転した第2位置まで回転可能な状態で支持している支持部と、
前記開閉扉が閉じている状態では前記キーシリンダ本体の回転を阻止している回転阻止部とを有していることを特徴としている。
【0017】
本発明では、施錠状態にあるキーシリンダの鍵穴に鍵板を差し込み、第1回転方向に回すと、キーシリンダ本体は第1位置に保持されたままで、キーシリンダ回転軸が第1回転方向に回転し、当該キーシリンダ回転軸と一体回転するロック部材がロック位置からアンロック位置まで回転し、そこに止まる。ロック部材がアンロック位置まで回転すると、開錠状態になり、開閉扉を開けることができる。
【0018】
開閉扉を開けた状態において、鍵板を逆に第2回転方向に回すとキーシリンダ回転軸およびロック部材が元のロック位置まで戻る。ロック位置まで戻った後は、キーシリンダ回転軸はキーシリンダ本体に係合して、それ以上第2回転方向へ相対回転することが構造上できない。この状態ではロック部材がロック位置に戻っているので、開閉扉を開けることによって開いた開口部にロック部材が突出した状態になる。
【0019】
ここで、本発明では、開閉扉を開けた状態においては、キーシリンダ本体がその軸線周りに、第1位置から第2回転方向に回転可能である。したがって、鍵板をロック位置から更に第2回転方向に回すと、キーシリンダ回転軸およびロック部材と、キーシリンダ本体とが第2回転方向に一体となって回転する。すなわち、鍵板を引き抜き可能な状態のままで、キーシリンダが全体として第2回転方向に回転して、第2位置に至る。この第2位置を適切に設定しておくことにより、当該第2位置に至ったときに、ロック部材が開口部に突出しない状態にすることができる。
【0020】
したがって、本発明では、ロック部材が開口部に突出していない状態で、鍵板を鍵穴から引き抜くことができる。よって、ロック部材が、開口部を介して行う作業の邪魔になることがない。
【0021】
なお、開閉扉を閉じて施錠する場合には、開閉蓋を閉じる前に、まず、鍵板を鍵穴に差し込み、鍵板を第1回転方向に回転して、ロック部材をアンロック位置まで回転する。しかる後に、開閉扉を閉じて、鍵板を第2回転方向に回転する。開閉扉を閉じた状態では、キーシリンダ本体の回転が阻止されているので、キーシリンダ回転軸およびロック部材がロック位置に至ると、それらの回転が阻止され、ロック位置に位置決めされる。これにより、施錠状態が形成される。
【0022】
ここで、本発明において、前記支持部は、前記キーシリンダ本体を回転可能な状態で支持している支持穴と、前記キーシリンダ本体と一体回転する回転板と、前記回転板の第1回転方向の回転が前記第1位置を越えないように規制している第1回転阻止部材と、前記回転板の第2回転方向の回転が前記第2位置を越えないように規制している第2回転阻止部材とを備えた構成とすることができる。
【0023】
また、前記回転阻止部は、前記第1回転阻止部材と、前記開閉扉を閉じた状態において、第1位置にある前記回転板に当接して当該回転板の第2回転方向の回転を阻止する第3回転阻止部材とを備えた構成とすることができる。
【0024】
次に、本発明において、前記キーシリンダ本体が前記第2位置にあり、前記キーシリンダ回転軸が前記ロック位置にある状態では、前記ロック部材が、前記開閉蓋によって開閉される開口部に突出しないようにすることが望ましい。
【0025】
また、本発明において、前記キーシリンダ回転軸に対してその軸線周りに回転力を付与している付勢部材を配置し、前記キーシリンダ本体が前記第1位置にあり、前記キーシリンダ回転軸が前記ロック位置にある状態では、第2回転方向への回転力が前記キーシリンダ回転軸に作用し、前記キーシリンダ本体が前記第1位置にあり、前記キーシリンダ回転軸が前記アンロック位置にある状態では、第1回転方向への回転力が前記キーシリンダ回転軸に作用し、前記キーシリンダ本体が前記第2位置にある状態では、前記第2回転方向への回転力が前記キーシリンダ回転軸に作用するようにすることが望ましい。
【0026】
このようにすれば、開閉扉を開けたときにはロック部材がアンロック位置に付勢される。また、開閉扉を開けた状態において鍵板を第2回転方向に回すと、キーシリンダ回転軸に対してそれを第2回転方向に回す方向の付勢力が作用する。したがって、開閉扉を開けた後に、ロック部材をロック位置に戻した状態でキーシリンダ本体を第1位置を経由して第2位置まで回転させる操作を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のシリンダーキーを用いた開閉蓋の施錠機構では、開閉扉を開けた状態において、鍵板を引き抜き可能な状態のままでキーシリンダの全体を、第2位置まで回転可能としてある。第2位置まで回転させることにより、ロック部材が、開閉扉を開けることにより開かれた開口部に突出していない状態、あるいは、突出量が実際上において障害とならない程度の状態を形成できる。よって、本発明によれば、開閉扉を開けた状態において、シリンダーキーのロック部材が作業の邪魔になることが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構の実施の形態を説明する。
【0029】
図1(a)〜(c)は本発明を適用した施錠機構を示す部分正面図、部分断面図および部分背面図である。図示の例は、メダル貸し機のメダル補給扉に本発明によるシリンダーキーによる施錠機構を適用したものである。メダル貸し機の基本構成は図6〜図9に示すものと同一であるので、対応する部位には同一の符号を付し、以下の説明では必要な部分のみ説明する。
【0030】
メダル貸し機1は、縦長の直方体形状をした筐体2を備えており、この筐体2の前面における上下方向の中央部分に矩形の開口部5が形成されている。開口部5は対応する矩形形状のメダル補給扉6によって封鎖されている。メダル補給扉6はその下端に取り付けたヒンジ7を中心として前方に開けることができる開閉扉であり、その上端部の中央部分にはシリンダーキーを備えた施錠機構が取り付けられている。メダル補給扉6の側縁部分には円弧状のガイド溝9aが形成されたガイド板9が取り付けられている。ガイド溝9aに沿って、筐体2に取り付けたガイドピン2aがスライドするようになっており、これらにより、メダル補給扉6の開度が規定されている。
【0031】
メダル補給扉6の施錠機構は、キーシリンダ30と、鍵板(キープレート)40と、筐体2の側に形成されている係合用の張り出し部2bを備えている。キーシリンダ30は、キーシリンダ本体34と、この中心を貫通して延びているキーシリンダ回転軸35と、キーシリンダ回転軸35に一体回転するように取り付けたロック部材33を備えている。キーシリンダ本体34はその軸線周りに回転可能な状態でメダル補給扉6に取り付けられている。
【0032】
キーシリンダ本体34には一体回転するように回転板38が取り付けられており、当該回転板38の回転が、メダル補給扉6の背面に取り付けた第1回転阻止部材51、第2回転阻止部材52によって規制されている。また、当該回転板38の回転が、当該回転板38に形成した突出部38aの上端面38cが筐体側の張り出し部2bの下面部分2c(第3回転阻止部材)に当接することにより規制されるようになっている。一方、ロック部材33とメダル補給扉6の本体板部分6aとの間には、棒バネ54が湾曲状態となるように架け渡されている。
【0033】
図2(a)〜(d)は、キーシリンダの側面図、その回転板38の正面図、キーシリンダの背面図およびロック部材の説明図である。これらの図も参照して、キーシリンダ30を詳細に説明する。キーシリンダ本体34は円形断面の直径方向の両端部分を平坦となるように切断した断面形状をしており、これに対応する形状の穴38bが回転板38に形成されており、回転板38がキーシリンダ本体34と一体回転するようになっている。キーシリンダ本体34はメダル補給扉6の本体板部分6aに形成された装着穴6dを貫通した状態に配置されている。装着穴6dは円形穴であり、キーシリンダ本体34はその軸線周りに回転可能な状態でメダル補給扉6に取り付けられている。また、当該キーシリンダ本体34は、わずかな隙間Δを確保した状態で、滑りワッシャなどを介して、回転板38に対して2個の大ナット16a、16bによって固定されている。
【0034】
ロック部材33には、その隅部に連結穴33aが形成されており、ここに、棒バネ54の上端部が連結固定されている。棒バネ54の下端は、メダル補給扉6の本体板部分6aにおける下方のヒンジ7の近傍位置に連結固定されている。棒バネ54は湾曲状態に架け渡されており、常に、ロック部材33を介してキーシリンダ回転軸35に対してその軸線周りの回転トルクを与えている。この回転トルクの方向は、後述のように、キーシリンダ30の各部の回転位置に応じて切り替わるように設定されている。
【0035】
ここで、メダル補給扉6が閉じた施錠状態においては、図1に示すように、キーシリンダ本体34の第1回転方向Aおよび第2回転方向Bのいずれの回転も阻止された状態で第1位置34Aに位置している。すなわち、キーシリンダ本体34に固定した回転板38の突出部38aの上端面38cが筐体側の張り出し部2bの下面部分2cに下側から当接し、同時に、当該突出部38aの端面38dがメダル補給扉側の第1回転阻止部材51に当接している。また、ロック部材33は上向きの垂直姿勢となったロック位置33Aにあり、その上端部分が筐体側の張り出し部2bに係合している。
【0036】
この状態において、鍵板40を鍵穴32に差し込み、図1(c)において第1回転方向Aに回すと、従来のシリンダーキーと同様に、キーシリンダ回転軸35のみが回転し、それと一体回転するロック部材33をアンロック位置33Bまで回転させることができる。例えば、ロック位置33Aから90度だけ第1回転方向Aに回転した位置がアンロック位置33Bとされている。
【0037】
一方、メダル補給扉6を開けた状態では、回転板38の突出部38aの上端面38cが、筐体側の張り出し部2bの下面部分2cから外れる。したがって、回転板38の第2回転方向Bへの回転が可能となる。鍵板40を鍵穴32に差し込んだ状態で、鍵板40を第2回転方向Bに回すと、ロック部材33がアンロック位置33Bからロック位置33Aまで回転する間は、ロック部材33およびキーシリンダ回転軸35のみが回転する。ロック部材33がロック位置33Aに至ると、シリンダーキーの構造上、キーシリンダ回転軸35がキーシリンダ本体34に係合するので、これ以後は、キーシリンダ本体34も一緒に第2回転方向Bに回転することになる。換言すると、キーシリンダ30が、各部33、35、34の相対回転位置を保持したまま、全体として第2回転方向Bに回転する。
【0038】
ここで、メダル補給扉6の背面には、回転板38の突出部38aにおける上端面38cの第2回転方向Bの回転軌跡上に、第2回転阻止部材52が配置されている。例えば90度だけ回転した位置に第2回転阻止部材52が配置されている。第2回転阻止部材52に当たることによって、キーシリンダ30の回転が阻止され、当該第2回転阻止部材52によって規定される第2位置34Bにキーシリンダ本体34が止まることになる。
【0039】
次に、図3および図4は本例のキーシリンダ30の動作を示す説明図である。図3(a)および(b)はメダル補給扉6の施錠を解除した直後の状態を示す説明図であり、(c)および(d)はメダル補給扉6を開けた状態でロック部材33を再びロック位置33Aに戻した状態を示す説明図であり、(e)および(f)はメダル補給扉6を開けた状態において更にロック部材33が反対側に倒れる状態となるまで回転させた状態を示す説明図である。図4は図3(e)および(f)の状態を示す部分断面図である。
【0040】
これらの図も参照して、本例の施錠機構の動作を纏めて説明する。まず、図1に示す施錠状態にあるキーシリンダ30の鍵穴32に鍵板40を差し込み、第1回転方向Aに回すと、キーシリンダ本体34は第1位置34Aに保持されたままで、キーシリンダ回転軸35が第1回転方向Aに回転し、当該キーシリンダ回転軸35と一体回転するロック部材33がロック位置33Aからアンロック位置33Bまで回転し、そこに止まり、図3(a)および(b)の状態になる。かかる動作は従来のシリンダーキーと同様である。この結果、ロック部材33が筐体側の張り出し部2bから外れた施錠解除状態になり、メダル補給扉6を開けることができる。
【0041】
この状態においては、棒バネ54からロック部材33には第1回転方向Aに向かう回転トルクが作用する。よって、ロック部材33がアンロック位置に保持される。また、鍵板40を鍵穴32から抜くことができない。
【0042】
次に、メダル補給扉6を開けた状態において、鍵板40を逆に第2回転方向Bに回すと、キーシリンダ回転軸35およびロック部材33が元のロック位置33Aまで戻る。ここで、ロック部材33と棒バネ54の連結位置がキーシリンダ30の中心軸線に対して反対側に移動した後は、棒バネ54によってロック部材33を介してキーシリンダ回転軸35に対して第2回転方向Bの回転トルクが作用し、ロック位置への操作を簡単に行うことができる。
【0043】
ここで、各部の摩擦の状態、棒バネ54の回転トルクの大きさなどの要因によって、キーシリンダ回転軸35とキーシリンダ本体34は一体となって第2回転方向に回転する場合もあれば、キーシリンダ回転軸35の回転が先行する場合もある。あるいは、キーシリンダ本体34が回転しない場合もある。
【0044】
キーシリンダ回転軸35が一体となって回転する場合には、ロック部材33がロック位置33Aに戻ったときには、キーシリンダ本体34と一体回転する回転板38の突出部38aの上端面38cが第2回転阻止部材52に当接した状態になる。図3(c)および(d)にはこの状態を示してある。この状態ではロック部材33がロック位置33Aに戻っているので、メダル補給扉6の上縁から上方にロック部材33が突出した状態になる。
【0045】
いずれの場合であっても、ロック部材33がロック位置33Aまで戻った後は、キーシリンダ回転軸35がキーシリンダ本体34に係合して、それ以上第2回転方向Bへ相対回転することが構造上できない。したがって、これ以後は第2回転方向Bへキーシリンダ回転軸35およびキーシリンダ本体34が一体となって回転する。すなわち、ロック部材33がロック位置33Aにある相対回転位置が保持されたままキーシリンダ30の全体が回転する。換言すると、鍵板40を鍵穴32から引き抜き可能な状態が保持されたまま、第2回転方向Bに回転して、図3(e)および(f)並びに図4に示す状態が形成される。
【0046】
ここで、棒バネ54によって、ロック部材33には第2回転方向の回転トルクが常時作用している。したがって、鍵板40の操作を簡単に行うことができる。また、図3(e)、(f)に示す状態から逆方向にキーシリンダ30の各部分が回転しないように保持されるので、ロック部材33が回転して、メダル補給扉6の上縁から突出した状態になってしまうことも防止される。さらに、人為的に回転させた場合でも、棒バネ54の回転トルクによって回転が戻されるので、ロック部材33が突出することがない。
【0047】
この状態においては、キーシリンダ回転軸35はロック位置にあるので、鍵板40を鍵穴32から引き抜くことができる。
【0048】
このように、本例では、ロック部材33が開口部5に突出していない状態で、鍵板40を鍵穴32から引き抜くことができる。よって、ロック部材33が作業の邪魔になることがない。また、本例の施錠機構は、従来のシリンダーキーに対して、回転板38、第1および第2回転阻止部材51、52を付加するだけでよいので、廉価に構築できるという利点もある。
【0049】
なお、メダル補給扉6を閉じて施錠する場合には、メダル補給扉6を閉じる前に、まず、鍵板40を鍵穴32に差し込み、鍵板40を第1回転方向Aに回転して、ロック部材33が反対側に倒れたアンロック位置33Bまで回転する(図3(a)、(b))。しかる後に、メダル補給扉6を閉じて、鍵板40を第2回転方向Bに回転する。メダル補給扉6を閉じた状態では、キーシリンダ本体34の回転が阻止されているので、キーシリンダ回転軸35およびロック部材33がロック位置33Aに至ると、それらの回転が阻止され、ロック位置33Aに位置決めされる。これにより、施錠状態が形成される(図1参照)。
【0050】
(その他の実施の形態)
上記の例はメダル補給扉の施錠機構に本発明を適用したものである。本発明は、メダル補給扉以外の各種の開閉扉の施錠機構として用いることができる。
【0051】
また、上記の例では棒バネ54を用いているが、この代わりに、板バネ、トーションバーなどの各種のバネ要素を用いることができる。
【0052】
さらに、上記の例では、キーシリンダ30をメダル補給扉6の側に取り付けてあるが、キーシリンダ30、回転阻止部材51、52を筐体2の側に取り付け、キーシリンダ30のロック部材33が係合する張り出し部2bおよび下面部分2cに対応する部位をメダル補給扉6の側に設けても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】(a)〜(c)は本発明を適用した施錠機構を示す部分正面図、部分断面図および部分背面図である。
【図2】(a)〜(d)は、キーシリンダの側面図、その回転板の正面図、キーシリンダの背面図およびロック部材の正面図である。
【図3】(a)および(b)はメダル補給扉の施錠を解除した直後の状態を示す説明図であり、(c)および(d)はメダル補給扉を開けた状態でロック部材を再びロック位置に戻した状態を示す説明図であり、(e)および(f)はメダル補給扉を開けた状態において更にロック部材が反対側に倒れる状態となるまで回転させた状態を示す説明図である。
【図4】図3(e)および(f)の状態を示す部分断面図である。
【図5】(a)および(b)は、シリンダーキーによる施錠機構を備えた従来のメダル貸し機を示す概略外観斜視図、およびその補給扉の部分を示す部分断面図である。
【図6】(a)〜(c)はそれぞれ、キーシリンダを示す側面図、キーシリンダの背面図、および、ロック部材の平面図である。
【図7】(a)および(b)は、メダル補給扉の施錠を解除して開いた状態を示す部分斜視図および部分断面図である。
【図8】(a)および(b)は鍵板を元の位置まで戻して抜き取った状態を示す部分斜視図および部分断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 メダル貸し機、2 筐体、2b 張り出し部、2c 下面部分、5 開口部、6 メダル補給扉、30 キーシリンダ、32 鍵穴、33 ロック部材、33A ロック位置、33B アンロック位置、34 キーシリンダ本体、34A 第1位置、34B 第2位置、35 キーシリンダ回転軸、38 回転板、38a 突出部、38b 穴、38c 上端面、38d 端面、40 鍵板、51 第1回転阻止部材、52 第2回転阻止部材、54 棒バネ、A 第1回転方向、B 第2回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵板を、キーシリンダ回転軸に形成されている鍵穴に差し込むと、キーシリンダ本体とキーシリンダ回転軸の係合が解除され、当該キーシリンダ回転軸がその軸線周りに、ロック位置から第1回転方向に所定角度だけ回転したアンロック位置までの範囲内で、前記キーシリンダ本体に対して相対回転可能となり、前記鍵穴から前記鍵板を引き抜くためには前記キーシリンダ回転軸を前記ロック位置に戻す必要のあるシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構において、
前記キーシリンダ本体をその軸線周りに、第1位置から前記第1回転方向とは逆の第2回転方向に所定量だけ回転した第2位置まで回転可能な状態で支持している支持部と、
前記開閉扉が閉じている状態では前記キーシリンダ本体の回転を阻止している回転阻止部と、
を有していることを特徴とするシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構。
【請求項2】
請求項1において、
前記支持部は、
前記キーシリンダ本体を回転可能な状態で支持している支持穴と、
前記キーシリンダ本体と一体回転する回転板と、
前記回転板の前記第1回転方向の回転が前記第1位置を越えないように規制している第1回転阻止部材と、
前記回転板の前記第2回転方向の回転が前記第2位置を越えないように規制している第2回転阻止部材とを備えていることを特徴とするシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構。
【請求項3】
請求項2において、
前記回転阻止部は、
前記第1回転阻止部材と、
前記開閉扉を閉じた状態において、第1位置にある前記回転板に当接して当該回転板の第2回転方向の回転を阻止する第3回転阻止部材とを備えていることを特徴とするシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
前記キーシリンダ本体が前記第2位置にあり、前記キーシリンダ回転軸が前記ロック位置にある状態では、前記ロック部材が、前記開閉扉によって開閉される開口部に突出しないようになっていることを特徴とするシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠開錠機構。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記キーシリンダ回転軸に対してその軸線周りに回転力を付与している付勢部材を有しており、
前記キーシリンダ本体が前記第1位置にあり、前記キーシリンダ回転軸が前記ロック位置にある状態では、第2回転方向への回転力が前記キーシリンダ回転軸に作用し、
前記キーシリンダ本体が前記第1位置にあり、前記キーシリンダ回転軸が前記アンロック位置にある状態では、第1回転方向への回転力が前記キーシリンダ回転軸に作用し、
前記キーシリンダ本体が前記第2位置にある状態では、前記第2回転方向への回転力が前記キーシリンダ回転軸に作用することを特徴とするシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠開錠機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−297789(P2007−297789A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124787(P2006−124787)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000128946)マミヤ・オーピー株式会社 (122)
【Fターム(参考)】