説明

シリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構

【課題】メダル補給扉を開けて鍵板を鍵穴から抜いたときにロック部材が作業の邪魔にならない状態にすることのできるシリンダーキーを用いた施錠機構を提案すること。
【解決手段】メダル補給扉6の施錠機構に用いているキーシリンダ30では、そのキーシリンダ回転軸35に対してロック部材33を所定角度θだけ相対回転可能な状態で取り付けてある。鍵板40によりキーシリンダ回転軸35をアンロック位置35Bに回した後に、メダル補給扉6を開け、この状態で鍵板40を逆方向に回して、キーシリンダ回転軸35をロック位置35Aに戻すと、ロック部材33のみが棒バネ52の付勢力で更に所定角度θだけ回り、ロック部材33がメダル補給扉6に隠れ、メダル補給口21に露出しない状態になる。この状態では鍵板40を引き抜くことができ、ロック部材33に邪魔されることなく、メダル補給口21を介してメダル補給作業などを行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵板を鍵穴に差し込んで回すと施錠状態が解除されて開錠状態に切り替わり、鍵穴から鍵板を引き抜くためには鍵板を再び施錠状態まで戻す必要のあるシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構に関するものである。さらに詳しくは、開閉扉を開けた状態で鍵板を鍵穴から抜き取るためにキーシリンダを施錠状態に戻した場合に、当該キーシリンダのロック部材が開閉扉によって開閉される開口部に突出しないように構成したシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の構造のシリンダーキーは開閉扉の施錠のために広く使用されている。例えば、遊技店などに設置されているメダル貸し機におけるメダル補給口や硬貨補給口の開閉扉、ロッカー、ポスト類、電源操作盤、各種のオペレータ盤、各種のメンテナンス用開口部などの開閉扉に用いられている。これらの開口部は、開閉扉を開けて、作業員などが手を入れて所定の操作や作業を行うために利用される。
【0003】
図5(a)はシリンダーキーによる施錠機構を備えた従来のメダル貸し機を示す概略外観斜視図であり、図5(b)はその補給扉の部分を示す部分断面図である。メダル貸し機1は、縦長の直方体形状をした筐体2を備えており、この筐体2の前面の上側部分には硬貨投入口3および紙幣挿入口4が形成され、内部には貨幣処理機構(図示せず)が配置されている。硬貨投入口3および紙幣挿入口4の下側には矩形の開口部5が形成されており、この開口部5は開閉可能な矩形のメダル補給扉6によって封鎖されている。このメダル補給扉6の下側にはメダル投出用の受け皿8が配置されており、当該部分の筐体内部にはメダル集積部およびメダル投出機構(図示せず)が配置されている。
【0004】
メダル補給扉6はその下端に取り付けたヒンジ7を中心として前方に開けることができる開閉扉であり、その上端部の中央部分にはシリンダーキーからなる施錠機構が取り付けられている。メダル補給扉6の側縁部分には円弧状のガイド溝9aが形成されたガイド板9が取り付けられている。ガイド溝9aに沿って、筐体2に取り付けたガイドピン2aがスライドするようになっており、これらにより、メダル補給扉6の開度が規定されている。
【0005】
メダル補給扉6の施錠機構は、キーシリンダ11と、鍵板(キープレート)20と、筐体2の側に形成されている係合用の張り出し部2bを備えている。図5(a)に示す施錠状態にあるキーシリンダ11の鍵穴12に鍵板20を差し込み、図面に向かって右回りに鍵板20を回すと、キーシリンダ11のロック部材13が開口部5の上縁部分に形成した内側への張り出し部2bから外れる。この結果、施錠状態が解除される。
【0006】
図6(a)〜(c)はそれぞれ、キーシリンダ11を示す側面図、キーシリンダの背面図、および、ロック部材の平面図である。キーシリンダ11は、キーシリンダ本体14と、このキーシリンダ本体14の中心を同軸状態で貫通して延びるキーシリンダ回転軸15と、キーシリンダ回転軸15に一体回転するように取り付けた細長い矩形のロック部材13を備えている。
【0007】
キーシリンダ本体14はメダル補給扉6に対して貫通した状態で取り付けられており、大ナット16によって当該メダル補給扉6に締結固定されている。キーシリンダ回転軸15の後側の軸端部15aは図5(b)から分かるように、円形断面の軸の直径方向の両端部分を平面状に切り取った断面形状とされており、当該断面形状の軸端部を嵌め込み可能な穴13aがロック部材13に形成されている。ロック部材13は、その穴13aにキーシリンダ回転軸15の軸端部が貫通した状態で、小ナット17によって抜け出ないように当該キーシリンダ回転軸15に固定されている。
【0008】
キーシリンダ本体14とキーシリンダ回転軸15は不図示の複数本のピンによって相対回転不可の状態に係合している。鍵板20を差し込むとこれらの係合状態が解除され、鍵板20を回すと、キーシリンダ回転軸15がキーシリンダ本体14に対して相対回転し、キーシリンダ回転軸15と一体回転するロック部材13も一緒に回転する。キーシリンダ回転軸15の回転可能な方向は一方向に定められており、また、その回転可能な角度範囲も一般に75〜90度の範囲に制限されている。
【0009】
キーシリンダ回転軸15に差し込んだ鍵板20は、キーシリンダ回転軸15を回した状態ではその鍵穴から抜き取ることができず、キーシリンダ回転軸15を元の位置、すなわち、ロック位置に戻すと抜き取ることができるように構成されている。
【0010】
図7(a)および(b)は、メダル補給扉6の施錠を解除して開いた状態を示す部分斜視図および部分断面図である。この状態では、鍵穴12に差し込まれた鍵板20が90度回され、ロック部材13は水平に倒れたアンロック位置13Bにある。また、メダル補給扉6はガイド溝9aの端とガイドピン2aとの係合によって規定される開度で開いている。メダル補給扉6が開くと、当該メダル補給扉6の本体板部分6aおよび、この左右の側板部分6b、6cと、筐体2側の開口部5の上縁部分5aとによって規定される矩形のメダル補給口21が開放状態になり、ここを介してメダル(図示せず)の補給が行われる。
【0011】
この状態では、先に述べたように、鍵板20を鍵穴12から抜き取ることができない。鍵板20を抜き取るためには、鍵板20を再び元の位置まで回す必要がある。
【0012】
図8(a)および(b)は、メダル補給扉6を開けたまま、鍵板20を元の位置まで戻して抜き取った状態を示す部分斜視図および部分断面図である。この状態では、ロック部材13が垂直に立ったロック位置13Aに戻り、メダル補給扉6の本体板部分6aの上縁から上方に突出した状態となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、遊技店の店員、メンテナンスを行う作業員などは、多種多様の鍵板類を束にして所持し、鍵束と着衣などをロープ、ケーブル、カールコード等によって連結していることが多い。このため、メダル補給扉6を開けた後は、鍵板20を鍵穴12から抜き取らないと、メダル補給などの作業の邪魔になってしまう。特に、同時に複数箇所の開閉扉を開けて同時に、あるいは連続して作業を行う場合は、鍵板20から鍵穴12を抜き取る必要がある。
【0014】
先に述べたように、鍵板20を鍵穴12から抜き取るためには、キーシリンダ11のロック部材13をロック位置13Aに戻す必要がある。ロック部材13がロック位置13Aに戻ると、図8に示すように、メダル補給扉6の上縁からロック部材13が突出した状態になる。この状態でメダル補給などの作業を行うと、作業員の手や腕がロック部材13に接触しやすい。このため、ロック部材13に当たらないように注意しながら作業を行う必要があり、不便である。また、ロック部材13に当たって怪我をするおそれもある。
【0015】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、開閉扉を開けたときに、ロック部材が作業の邪魔にならない状態で鍵板を鍵穴から引き抜くことのできるようにしたシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明は、鍵板を、施錠状態にあるキーシリンダの鍵穴に差し込むと、キーシリンダ本体とキーシリンダ回転軸の係合が解除され、ロック部材が取り付けられている当該キーシリンダ回転軸がロック位置から第1回転方向に所定角度だけ回転したアンロック位置までの範囲内で、前記キーシリンダ本体に対して相対回転可能となり、前記鍵穴から前記鍵板を引き抜くためには前記キーシリンダ回転軸を前記ロック位置に戻す必要のあるシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構において、
前記ロック部材を、所定角度だけ相対回転可能な状態で前記キーシリンダ回転軸に取り付けている取付部と、
前記キーシリンダ回転軸が前記ロック位置から前記第1回転方向に少なくとも前記所定角度だけ回転するまでの間は、前記ロック部材に前記第1回転方向とは逆方向の第2回転方向への付勢力を与え、前記キーシリンダ回転軸が前記所定角度を越えて前記第1回転方向に回転すると、前記ロック部材に前記第1回転方向の付勢力を与える付勢部材と、
前記開閉扉が閉じている状態においてのみ、前記ロック部材の前記ロック位置から前記第2回転方向への回転を阻止する回転阻止部と、
を有していることを特徴としている。
【0017】
本発明では、開閉蓋が閉じて施錠状態にあるキーシリンダの鍵穴に鍵板を差し込み、第1回転方向に回しても、最初はロック部材が回転しない。所定角度だけキーシリンダ回転軸が回転した後から、ロック部材はキーシリンダ回転軸と一体となって第1回転方向に回る。また、これに伴って、ロック部材に作用している付勢部材の付勢力が、第2回転方向から第1回転方向に切り替わる。キーシリンダ回転軸がアンロック位置まで回ると、ロック部材もアンロック位置となり、施錠状態が解除される。これにより開閉扉を開けることができる。
【0018】
開閉扉を開けた状態において、鍵板を逆に第2回転方向に回してキーシリンダ回転軸をロック位置に戻すと、ロック部材も元のロック位置まで戻る。
【0019】
ここで、キーシリンダ回転軸は、シリンダーキーの構造上、ロック位置においてキーシリンダ本体に係合して、それ以上第2回転方向に回転することが無い。これに対して、ロック部材はキーシリンダ回転軸に対して所定角度だけ相対回転可能な状態で取り付けられている。また、付勢部材によって、ロック位置にあるロック部材には第2回転方向に向かう付勢力が作用している。よって、ロック部材はロック位置から更に所定角度だけ付勢力によって第2回転方向に回転する。
【0020】
ロック部材のサイズ、相対回転可能な所定角度などを適切に設定しておくことにより、ロック位置から第2回転方向にロック部材が回った後の状態において、ロック部材が開閉扉によって開閉される開口部に突出しないようにすることができる。また、この状態は、キーシリンダ回転軸がロック位置に戻っており、鍵穴から鍵板を抜き取ることができる。よって、本発明によれば、鍵穴から鍵板を抜き取った状態においてロック部材が開口部に突出していないので、開口部を介して作業がロック部材に邪魔されることなく、また、ロック部材に接触して怪我をしてしまう危険性も無く、行うことができる。
【0021】
なお、開閉扉を閉じて施錠する場合には、開閉蓋を閉じる前に、まず、鍵板を鍵穴に差し込み、鍵板を第1回転方向に回転して、キーシリンダ回転軸およびロック部材をアンロック位置まで回す。しかる後に、開閉扉を閉じて、鍵板を第2回転方向に回して、キーシリンダ回転軸をロック位置に戻す。これに伴って、ロック部材もロック位置に向けて回る。開閉扉を閉じた状態では、回転阻止部材によって、ロック位置に至ったロック部材の第2回転方向の回転が阻止される。よって、ロック部材はロック位置に保持され、施錠状態が形成される。
【0022】
ここで、前記取付部を、前記ロック部材に形成した軸穴と、前記キーシリンダ回転軸における前記軸穴を貫通している軸部とを備えた構成とすることができる。この場合、前記軸穴を、円形穴の内周面における前記所定角度の間隔を開けた位置において、当該円形穴の中心に向けて突出している一対の回り止め用突起を備えた形状とすればよい。また、前記軸部を、前記軸穴内において前記一対の回り止め用突起によって規定される前記所定角度の範囲内を回転可能な断面形状とすればよい。
【0023】
また、本発明において、前記開閉扉が開き、前記キーシリンダ回転軸が前記ロック位置にあり、前記付勢部材によって前記ロック部材が前記第2回転方向に前記所定角度だけ回転した状態では、当該ロック部材が前記開閉扉によって開閉される開口部に突出していないことが望ましい。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明のシリンダーキーを用いた開閉蓋の施錠機構では、ロック部材をキーシリンダ回転軸に対して所定角度だけ相対回転可能な状態で取り付けてある。また、開閉扉を開けた状態では、キーシリンダ回転軸をロック位置に戻して鍵穴から鍵板を引き抜き可能にすると、ロック部材が付勢部材によってロック位置よりも更に所定角度だけ回転した位置まで回るようになっている。したがって、開閉扉を開けることにより開かれた開口部に、ロック部材が突出していない状態を形成できる。あるいは、その突出量を実用上において支障の無い程度まで少なくすることができる。よって、開口部を介しての作業を、ロック部材に邪魔されることなく、簡単かつ安全に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構の実施の形態を説明する。
【0026】
図1(a)〜(c)は本発明を適用した施錠機構を示す部分正面図、部分断面図および部分背面図である。図示の例は、メダル貸し機のメダル補給扉に本発明によるシリンダーキーによる施錠機構を適用したものである。メダル貸し機の基本構成は図5〜図8に示すものと同一であるので、対応する部位には同一の符号を付し、以下の説明では必要な部分のみ説明する。
【0027】
メダル貸し機1は、縦長の直方体形状をした筐体2を備えており、この筐体2の前面における上下方向の中央部分に矩形の開口部5が形成されている。開口部5は対応する矩形形状のメダル補給扉6によって封鎖されている。メダル補給扉6はその下端に取り付けたヒンジ7を中心として前方に開けることができる開閉扉であり、その上端部の中央部分にはシリンダーキーを備えた施錠機構が取り付けられている。メダル補給扉6の側縁部分には円弧状のガイド溝9aが形成されたガイド板9が取り付けられている。ガイド溝9aに沿って、筐体2に取り付けたガイドピン2aがスライドするようになっており、これらにより、メダル補給扉6の開度が規定されている。
【0028】
メダル補給扉6の施錠機構は、キーシリンダ30と、鍵板(キープレート)40と、筐体2の側に形成されている係合用の張り出し部2bを備えている。キーシリンダ30は、キーシリンダ本体34と、この中心を貫通して延びているキーシリンダ回転軸35と、キーシリンダ回転軸35に所定角度θだけ相対回転可能な状態で取り付けたロック部材33を備えている。
【0029】
筐体2の開口部5の上縁部分には回転阻止部材51が取り付けられている。メダル補給扉6が閉じた状態において、図1に示すように上方に垂直に延びているロック位置33Aにあるロック部材33の端面が当該回転阻止部材51に当接可能となっている。この状態では、ロック部材33は矢印Bで示す第2回転方向へは回転できない。
【0030】
また、ロック部材33とメダル補給扉6の間には、棒バネ52が湾曲状態で架け渡されている。ロック部材33と棒バネ52の上端部との連結位置52aは、キーシリンダ30の回転中心に対して、回転阻止部材51とは反対側に位置するように設定されている。この結果、ロック部材33がロック位置33Aにある状態では、棒バネ52は、ロック部材33を回転阻止部材51に押し付ける方向の回転トルク、すなわち、第2回転方向Bの回転トルクを、当該ロック部材33に加える。
【0031】
これに対して、ロック部材33が第1回転方向Aに回転して、連結位置52aがキーシリンダ30の回転中心に対して回転阻止部材51と同一の側に移動した後は、ロック部材33に対して第1回転方向Aに向かう回転トルクが作用することになる。
【0032】
図2(a)〜(d)は、キーシリンダ30の側面図、その背面図、ロック部材を示す説明図、およびキーシリンダ回転軸に対するロック部材の取付部を示す説明図である。これらの図も参照して、キーシリンダ30を詳細に説明する。
【0033】
まず、キーシリンダ回転軸35の後側の軸端部35aは、円形断面の直径方向の両端部分を平坦となるように切断した断面形状をしている。この軸端部35aがロック部材33に形成した軸穴33aに装着されている。
【0034】
軸穴33aは、図2(d)に示すように、円形穴の内周面において、所定の角度間隔で一対の回り止め用の突起38、39を円形穴の中心に向けて突出させた形状をしている。キーシリンダ回転軸35の軸端部35aは、円形穴内を回転可能な大きさの円形断面の軸の両側を切断した断面形状をしている。この軸端部の両側端面35b、35cが、そのロック位置35Aにおいて、突起38、39の一方の端面38a、39aに当接するようになっている。また、軸端部35aの両側端面35b、35cが、想像線で示す所定角度θ(=60度)回転した位置35Cにおいて、突起38、39の他方の端面38b、39bに当接するようになっている。
【0035】
このように、キーシリンダ回転軸35の軸端部35aが、ロック部材33の軸穴33aに対して、角度θ(=60度)だけ相対回転可能な状態で装着されている。また、ロック部材33の両側にスラストワッシャを挟み、2個の小ナット17a、17bによってロック部材33が軸端部35aに取り付けられている。
【0036】
したがって、図3(a)、(b)に示すように、キーシリンダ回転軸35がロック位置35Aにある状態では、ロック部材33は棒バネ52の付勢力によって回転阻止部材51に押し付けられて、そのロック位置33Aに保持されている。
【0037】
この状態から、鍵穴32に鍵板40を差し込み、第1回転方向Aにキーシリンダ回転軸35を所定角度θ(=60度)回す間は、ロック部材33は回転せずにロック位置33Aに保持される。図2(c)、(d)には60度回した後の状態を示してある。この後から、キーシリンダ回転軸35と一体となってロック部材33がアンロック位置に向けて、第1回転方向Aに回転することになる。
【0038】
次に、図4は本例のシリンダーキーの動作を示す説明図である。図3、図4を参照してシリンダーキーの動作を説明する。まず、図3を参照して説明したように、鍵板40を差し込み、キーシリンダ回転軸35をロック位置35Aから所定角度θ(=60度)回す間は、ロック部材33はそのロック位置33Aに留まっている。キーシリンダ回転軸35を所定角度θまで回すと、その軸端部35aの両側端面35b、35cが、それぞれ、ロック部材33の軸穴33aの突起38、39の端面38b、39bに当たる(図2(d)参照)。よって、これ以後は、ロック部材33も第1回転方向Aに一緒に回る。
【0039】
図4(a−1)〜(a−3)に示すように、ロック部材33が第1回転方向Aに回って、その棒バネ52との連結位置52aが、キーシリンダ30の回転中心に対して回転阻止部材51と同一の側に移動した後は、棒バネ52によってロック部材33には第1回転方向Aの回転トルクが作用する。
【0040】
キーシリンダ回転軸35をアンロック位置35Bまで回すと、ロック部材33も横に倒れたアンロック位置33Aまで回転する。図4(b−1)、(b−2)はこのアンロック状態を示してある。この状態において、図4(b−3)に示すように、メダル補給扉6を開けて、メダル補給口21を開くことができる。この状態では、鍵板40を鍵穴32から引き抜くことができない。
【0041】
次に、メダル補給扉6を開けた状態において、鍵板40を逆に第2回転方向Bに回す際には、キーシリンダ回転軸35の軸端部35aの両側端面35b、35cが、それぞれ、ロック部材33の軸穴33aの突起38、39の端面38a、39aに当たった状態にある(図2(d)参照)。よって、キーシリンダ回転軸35とロック部材33とが一体となってロック位置33Aに向けて回転する。
【0042】
キーシリンダ回転軸35がロック位置35Aに至ると、キーシリンダ本体34に係合して、それ以上第2回転方向Bには回転しない。これに対して、ロック部材33は、そのロック位置33Aから更に所定角度θだけ第2回転方向に回転可能である。また、メダル補給扉6が開いているので、ロック部材33は回転阻止部材51に当たることがないので、棒バネ52の付勢力によって第2回転方向Bに所定角度だけ回転する。図4(c−1)〜(c−3)にはこの状態を示してある。
【0043】
この状態では、キーシリンダ回転軸35はロック位置35Aにあるので、鍵穴32から鍵板40を引き抜くことができる。また、ロック部材33は、第2回転方向Bに倒れた状態にあり、メダル補給扉6に隠れ、開口部5に突出していない。したがって、メダル補給口21を介してのメダル補給作業などを、簡単に、しかも、ロック部材33に接触して手などを負傷することなく安全に行うことができる。
【0044】
なお、メダル補給扉6を閉じて施錠する場合には、メダル補給扉6を閉じる前に、まず、鍵板40を鍵穴32に差し込み、鍵板40を第1回転方向Aに回転して、ロック部材33を反対側に倒れたアンロック位置33Bまで回転する(図4(b−1)、(b−2))。しかる後に、メダル補給扉6を閉じて、鍵板40を第2回転方向Bに回転する。メダル補給扉6を閉じた状態では、回転阻止部材51によってロック部材33の回転が阻止され、そのロック位置33Aを越えて第2回転方向Bに回転することがない。よって、キーシリンダ回転軸35およびロック部材33がロック位置に至ると、メダル補給扉6の施錠状態が形成される(図1参照)。
【0045】
(その他の実施の形態)
上記の例はメダル補給扉の施錠機構に本発明を適用したものである。本発明は、メダル補給扉以外の各種の開閉扉の施錠機構として用いることができる。
【0046】
また、上記の例では棒バネ52を用いているが、この代わりに、板バネ、トーションバーなどの各種のバネ要素を用いることができる。
【0047】
さらに、上記の例では、キーシリンダ30をメダル補給扉6の側に取り付けてあるが、キーシリンダ30を筐体2の側に取り付け、キーシリンダ30のロック部材33が係合する張り出し部2bに対応する部位および回転阻止部材をメダル補給扉6の側に設けても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a)〜(c)は本発明を適用した施錠機構を示す部分正面図、部分断面図および部分背面図である。
【図2】(a)〜(d)は、シリンダーキーの側面図、その背面図、ロック部材を示す説明図、および、キーシリンダ回転軸に対するロック部材の取付部を示す説明図である。
【図3】(a)および(b)はシリンダーキーの施錠状態を示す説明図であり、(c)および(d)はロック位置から所定角度だけ鍵板を回した後の状態を示す説明図である。
【図4】(a−1)〜(a−3)は鍵板を所定角度を越えて回した後の状態を示す説明図であり、(b−1)〜(b−3)はシリンダーキーの施錠が解除された状態を示す説明図であり、(c−1)〜(c−3)は鍵板を抜き取り可能な位置に回転した後の状態を示す説明図である。
【図5】(a)および(b)は、シリンダーキーによる施錠機構を備えた従来のメダル貸し機を示す概略外観斜視図、およびその補給扉の部分を示す部分断面図である。
【図6】(a)〜(c)はそれぞれ、シリンダーキーを示す側面図、シリンダーキーの背面図、および、ロック部材の平面図である。
【図7】(a)および(b)は、メダル補給扉の施錠を解除して開いた状態を示す部分斜視図および部分断面図である。
【図8】(a)および(b)は鍵板を元の位置まで戻して抜き取った状態を示す部分斜視図および部分断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 メダル貸し機、2 筐体、2b 張り出し部、5 開口部、6 メダル補給扉、30 キーシリンダ、32 鍵穴、33 ロック部材、33A ロック位置、33B アンロック位置、34 キーシリンダ本体、35 キーシリンダ回転軸、35A ロック位置、35B アンロック位置、35a 軸端部、35b,35c 端面、38,39 突起、38a,38b,39a,39b 端面、40 鍵板、51 回転阻止部材、52 棒バネ、52a 連結位置、A 第1回転方向、B 第2回転方向、θ 相対回転可能な所定角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵板を、施錠状態にあるキーシリンダの鍵穴に差し込むと、キーシリンダ本体とキーシリンダ回転軸の係合が解除され、ロック部材が取り付けられている当該キーシリンダ回転軸がロック位置から第1回転方向に所定角度だけ回転したアンロック位置までの範囲内で、前記キーシリンダ本体に対して相対回転可能となり、前記鍵穴から前記鍵板を引き抜くためには前記キーシリンダ回転軸を前記ロック位置に戻す必要のあるシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構において、
前記ロック部材を、所定角度だけ相対回転可能な状態で前記キーシリンダに取り付けている取付部と、
前記キーシリンダ回転軸が前記ロック位置から前記第1回転方向に少なくとも前記所定角度だけ回転するまでの間は、前記ロック部材に前記第1回転方向とは逆の第2回転方向への付勢力を与え、前記キーシリンダ回転軸が前記所定角度を越えて前記第1回転方向に回転すると、前記ロック部材に前記第1回転方向の付勢力を与える付勢部材と、
前記開閉扉が閉じている状態においてのみ、前記ロック部材の前記ロック位置から前記第2回転方向への回転を阻止する回転阻止部材と、
を有していることを特徴とするシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構。
【請求項2】
請求項1において、
前記取付部は、前記ロック部材に形成した軸穴と、前記キーシリンダ回転軸における前記軸穴を貫通している軸部とを備えており、
前記軸穴は、円形穴の内周面における前記所定角度の間隔を開けた位置において、当該円形穴の中心に向けて突出している一対の回り止め用突起を備えた形状をしており、
前記軸部は、前記軸穴内において前記一対の回り止め用突起によって規定される前記所定角度の範囲内を回転可能な断面形状とされていることを特徴とするシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠機構。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記開閉扉が開き、前記キーシリンダ回転軸が前記ロック位置にあり、前記付勢部材によって前記ロック部材が前記第2回転方向に前記所定角度だけ回転した状態では、当該ロック部材が前記開閉扉によって開閉される開口部に突出していないことを特徴とするシリンダーキーを用いた開閉扉の施錠開錠機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−297790(P2007−297790A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124788(P2006−124788)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000128946)マミヤ・オーピー株式会社 (122)
【Fターム(参考)】