シリンダーヘッド用積層型メタルガスケット
【課題】外側段差調整板と内側段差調整板との高精度の位置決めと突合せレーザー溶接とにかかっていた製造時間を短縮して製造費用を削減する。
【解決手段】複数のシリンダー孔2aと、環状ビード2bと、各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔2cと、それら環状ビードおよび冷却水孔を全体的に囲繞する外周ビード2dとを有する二枚の基板2を環状ビード2b同士が互いに当該ガスケットの厚さ方向に整列して位置するように重ね合わせて具えとともに、外側段差調整板3と、その外側段差調整板3よりも厚い金属板からなる内側段差調整板4とを前記二枚の基板2の間に介挿して具え、外側段差調整板3の、基板2の隣り合うシリンダー孔2a間に対応する位置に、外側段差調整板3を何れか一方の基板2に固定する固定手段3fを設けるとともに、内側段差調整板4を前記一方の基板2に固定する固定手段4fを設けてなる、シリンダーヘッド用積層型メタルガスケット。
【解決手段】複数のシリンダー孔2aと、環状ビード2bと、各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔2cと、それら環状ビードおよび冷却水孔を全体的に囲繞する外周ビード2dとを有する二枚の基板2を環状ビード2b同士が互いに当該ガスケットの厚さ方向に整列して位置するように重ね合わせて具えとともに、外側段差調整板3と、その外側段差調整板3よりも厚い金属板からなる内側段差調整板4とを前記二枚の基板2の間に介挿して具え、外側段差調整板3の、基板2の隣り合うシリンダー孔2a間に対応する位置に、外側段差調整板3を何れか一方の基板2に固定する固定手段3fを設けるとともに、内側段差調整板4を前記一方の基板2に固定する固定手段4fを設けてなる、シリンダーヘッド用積層型メタルガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関のシリンダーブロックとシリンダーヘッドとの間に介挿されるシリンダーヘッド用メタルガスケットに関し、特には、複数枚の金属板を重ね合わせた積層型のメタルガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のメタルガスケットとしては例えば、本願出願人が先に出願して特許を取得した特許文献1記載のものが知られており、このシリンダーヘッド用メタルガスケットは、各々金属板からなり、内燃機関のシリンダーヘッドを組み付けられるシリンダーブロックの複数のシリンダーボアにそれぞれ対応して形成された複数のシリンダー孔と、前記複数のシリンダー孔の各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビードと、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットおよび前記シリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔と、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビードとを有する二枚の基板を具えている。そして、それらの基板の間には、金属板からなる薄い段差調整板が介挿されている。
【0003】
この段差調整板は、金属板からなり、上記冷却水ジャケットの位置から上記基板の外周縁の位置まで延在する外側段差調整板と、その外側段差調整板よりも厚い金属板からなり、上記基板の複数のシリンダー孔にそれぞれ対応して形成された複数のシリンダー孔を有して、それらのシリンダー孔の内周縁の位置から上記冷却水ジャケットの位置まで延在する内側段差調整板とをその冷却水ジャケットの位置で突き合せてレーザー溶接により互いに一体的に結合し一枚の板にしたもので、それら外側段差調整板と内側段差調整板との板厚の差により上記基板の環状ビードに加わる面圧を高め、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性を向上させている。
【特許文献1】特許第2925920号公報、図3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本願発明者が上記従来のメタルガスケットについて研究を進めた結果、上記従来のメタルガスケットでは、上記外側段差調整板と内側段差調整板とをレーザー溶接で結合する際、それぞれの段差調整板の高精度の位置決めと比較的長い距離にわたるレーザー溶接とに時間がかかり、製造費用が嵩むという不都合があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、請求項1記載のこの発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットは、各々金属板からなり、内燃機関のシリンダーヘッドを組み付けられるシリンダーブロックの複数のシリンダーボアにそれぞれ対応して形成された複数のシリンダー孔と、前記複数のシリンダー孔の各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビードと、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットおよび前記シリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔と、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビードとを有する二枚の基板を、前記環状ビード同士が互いに当該ガスケットの厚さ方向に整列して位置するように重ね合わせて具えるシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットにおいて、金属板からなり、前記冷却水ジャケットの位置から前記基板の外周縁の位置まで延在する外側段差調整板と、前記外側段差調整板よりも厚い金属板からなり、前記基板の複数のシリンダー孔にそれぞれ対応して形成された複数のシリンダー孔を有して、それらのシリンダー孔の内周縁の位置から前記冷却水ジャケットの位置まで延在する内側段差調整板と、を前記二枚の基板の間に介挿して具え、前記外側段差調整板の、前記基板の互いに隣り合う前記シリンダー孔間の位置に対応する位置に固定手段を設けるとともに、前記内側段差調整板の、前記基板の前記各シリンダー孔に対し前記複数のシリンダー孔の整列方向と直行する方向の側方位置に対応する位置に固定手段を設け、前記外側段差調整板と前記内側段差調整板とをそれぞれ前記固定手段によって前記二枚の基板の何れか一方に固定したことを特徴とするものである。
【0006】
また、請求項2記載のこの発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットは、前記外側段差調整板と前記内側段差調整板とをそれぞれ前記固定手段によって前記二枚の基板の何れか一方に固定する代わりに、前記外側段差調整板を前記固定手段によって前記二枚の基板のうち何れか一方の基板に固定するとともに、前記内側段差調整板を前記固定手段によって前記二枚の基板のうち他方の基板に固定したことを特徴とするものである。
【0007】
さらに、請求項3記載のこの発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットは、前記外側段差調整板の、前記基板の互いに隣り合う前記シリンダー孔間の位置に対応する位置に固定手段を設けるとともに、前記内側段差調整板の、前記基板の前記各シリンダー孔に対し前記複数のシリンダー孔の整列方向と直行する方向の側方位置に対応する位置に固定手段を設ける代わりに、前記外側段差調整板の、前記基板の前記各シリンダー孔に対し前記複数のシリンダー孔の整列方向と直行する方向の側方位置に対応する位置に固定手段を設けるとともに、前記内側段差調整板の、前記基板の互いに隣り合う前記シリンダー孔間の位置に対応する位置に固定手段を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
そして、請求項4記載のこの発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットは、前記外側段差調整板と前記内側段差調整板とをそれぞれ前記固定手段によって前記二枚の基板の何れか一方に固定する代わりに、前記外側段差調整板を前記固定手段によって前記二枚の基板のうち何れか一方の基板に固定するとともに、前記内側段差調整板を前記固定手段によって前記二枚の基板のうち他方の基板に固定したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
かかる請求項1〜4記載のこの発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットによれば、外側段差調整板と内側段差調整板との板厚の差により上記基板の環状ビードに加わる面圧を高めて、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性を向上させることができ、かつ、上記のように板厚の差を用いるので、上記基板の環状ビードに加わる面圧と外周ビードに加わる面圧とのバランスを微調整することができる。
【0010】
しかもこの発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットによれば、外側段差調整板と内側段差調整板とを、互いに突き合せて突き合せ部分に沿ってレーザー溶接で結合することなく、基板側の複数箇所に固定手段によってそれぞれ固定することから、それぞれの段差調整板の高精度の位置決めと比較的長い距離にわたるレーザー溶接とに長時間かかっていた製造時間を短縮し得て、製造費用を削減することができる。
【0011】
なお、この発明においては、請求項5に記載のように、前記固定手段は、剪断押出し結合部、リベット、ハトメおよびスポット溶接部のうちの少なくとも一つであっても良く、これらの固定手段によれば、外側段差調整板と内側段差調整板とを、基板側に固定手段でそれぞれ確実に固定することができる。
【0012】
また、この発明においては、請求項6に記載のように、前記内側段差調整板は、前記複数のシリンダー孔の各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビードを具え、それらの環状ビードと前記基板の前記環状ビードとが互いに当該ガスケットの厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように前記二枚の基板の間に配置されていても良く、このようにすれば、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第1実施例の全体を示す平面図、図2(a),(b)は、その第1実施例のメタルガスケットの、図1のA−A線およびB−B線にそれぞれ沿う拡大断面図、図3はその第1実施例のメタルガスケットの外側段差調整板を示す平面図、図4はその第1実施例のメタルガスケットの内側段差調整板を示す平面図、そして図5(a)はそれら外側段差調整板と内側段差調整板とを組合せた状態で示す平面図であり、図中符号1はメタルガスケット、2は基板、3は外側段差調整板、4は内側段差調整板をそれぞれ示す。
【0014】
この第1実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1は、各シリンダーボアを囲む冷却水ジャケットの位置でデッキ面が大きく開放されているオープンデッキ型シリンダーブロックに適合するように構成された三層積層型のもので、図2に示すように、各々金属板としてのステンレス鋼板からなる二枚の基板2を具えており、これらの基板2は各々、図1に示すように、当該メタルガスケット1が組み込まれる内燃機関としてのエンジンの、シリンダーヘッドを組み付けられるシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成された複数(図では四つ)のシリンダー孔2aと、前記各シリンダー孔2aの周囲に形成された山形断面形状の環状ビード2bと、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットおよび前記シリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビード2bの外側周辺部に形成された多くの冷却水孔2cと、前記環状ビード2bおよび前記冷却水孔2cを全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビード2dとを有している。
【0015】
二枚の基板2はさらに各々、その外周ビード2dの外側に、複数の潤滑油孔2eおよび、シリンダーヘッドをシリンダーブロックに締め付け固定するためのヘッドボルトを各々挿通される複数(図では10本)のボルト孔2fと、後述するグロメット孔2gとを有しており、図2に示すように、それら二枚の基板2の環状ビード2bは、互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに、互いに逆向きになるように各々内向きに突出し、二枚の基板2の外周ビード2dも、互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに、互いに逆向きになるように各々内向きに突出している。
【0016】
この第1実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1はまた、図2に示すように、二枚の基板2の間に、例えば基板2よりも薄い厚さ(例えば0.15mm)を持つ金属板としてのステンレス鋼板からなる外側段差調整板3と、例えば基板2に等しい厚さ(例えば0.2mm)を持つ金属板としてのステンレス鋼板からなる内側段差調整板4とを介挿されて具えており、ここにおける外側段差調整板3は、図1、図3および図5に示すように、上記エンジンのシリンダーブロックの冷却水ジャケットに対応する位置から二枚の基板2の外周端部の位置まで延在している。そしてこの外側段差調整板3は、上記冷却水ジャケットに対応して位置する内周縁の、基板2の互いに隣り合うシリンダー孔2a間の位置にそれぞれ対応する位置で、互いに向き合うように内方へ突出する複数(図では基板2の各シリンダー孔2a間に対し二箇所ずつの計六箇所)の舌状突起3aを有する他、上記内周縁に設けられて各基板2の冷却水孔2cに対応する半長円形の凹部3bと、各基板2の潤滑油孔2eおよびボルト孔2fにそれぞれ対応する複数の孔3cと、後述するグロメット孔3dと、この外側段差調整板3に対する内側段差調整板4の組合せの向きを間違えないようにするための二つの誤組防止突起3eとを有している。ここで、各舌状突起3aには後述のように、この実施例では下側の基板2に外側段差調整板3を固定するための固定手段が設けられる。
【0017】
一方、ここにおける内側段差調整板4は、図1、図4および図5に示すように、基板2の複数のシリンダー孔2aにそれぞれ対応して形成された複数のシリンダー孔4aを有してそれらのシリンダー孔4aの内周縁の位置から上記冷却水ジャケットの位置まで、外側段差調整板3と重ならないように延在している。そしてこの内側段差調整板4は、外側段差調整板3の複数の舌爪状突起3aの各々に対応する位置にその舌状突起3aと重ならないようにそれと実質的に同一平面内で嵌まり合う凹部4bを有する他、各基板2の冷却水孔2cに対応する孔4cと、上記冷却水ジャケットに対応して位置する外周縁に設けられて各基板2の冷却水孔2cに対応する半長円形の凹部4dと、外側段差調整板3に対するこの内側段差調整板4の組合せの向きを間違えないようにするための二つの誤組防止凹部4e(図4では上側の誤組防止凹部4eは、上記軸線上から外れている。)とを有している。これは、この内側段差調整板4がシリンダー孔4aの中心同士を結んだ軸線に対し左右対称でないためであり、これら二つの誤組防止凹部4eはそれぞれ、内側段差調整板4が所定の向きの時に外側段差調整板3の二つの誤組防止突起3eと嵌まり合う。
【0018】
さらに、この第1実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1では、図1および図5に示すように、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部と、内側段差調整板4の、基板2の各シリンダー孔2aに対しそれら複数のシリンダー孔2aの整列方向と直行する方向の両側方位置に対応する位置とにそれぞれ、固定手段としての剪断押出し結合部3f,4fが設けられ、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部を下側の基板2の対応する位置に固定し、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fは、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔側部に対応する位置を下側の基板2の対応する位置すなわちシリンダー孔側部に固定する。
【0019】
図5(b),(c)は、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部の剪断押出し結合部3fを示す、図5(a)のC−C線およびD−D線にそれぞれ沿う断面図、また図5(d),(e)は、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔側部に対応する位置の剪断押出し結合部4fを示す、図5(a)のE−E線およびF−F線にそれぞれ沿う断面図であり、図示のように、剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3と下側の基板2とを上から順に重ねて、例えば縦断面形状が台形で横断面形状が長方形のポンチとそのポンチに短辺側を大きくした所定クリアランスをあけて嵌り合う長方形穴を持つダイスとを組合せたプレス型やNCパンチングプレス等でプレス加工することで形成することができ(例えば、特開平6−281011号公報等参照)、剪断押出し結合部4fも同様に、内側段差調整板4と下側の基板2とを上から順に重ねて、上記プレス型やNCパンチングプレス等でプレス加工することで形成することができる。
【0020】
上記ポンチとダイスとで剪断して押し出した部分は、そのままでも剪断によって幅が広がるので外側段差調整板3や内側段差調整板4と下側の基板2とを結合するが、ダイスの長方形穴に底部を設けてその底部とポンチとでさらに挟んで加圧する(ポンチを底突きさせる)ことにより、図2(a),(b)および図5(b),(d)に示すように潰して押し広げても良く、このようにすればその結合をより強固なものにすることができる。
【0021】
この第1実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1では、下側の基板2の下面から下方に突出する上記各剪断押出し結合部3f,4fを、冷却水ジャケットの位置でデッキ面が大きく開放されているオープンデッキ型シリンダーブロックに適するように、その冷却水ジャケットの位置に配置して、冷却水ジャケット内に入り込むようにしているが、デッキ面の冷却水孔の位置に配置して、その冷却水孔内に入り込むようにすることで、デッキ面が冷却水ジャケットの上方で冷却水孔を除いて閉じているクローズドデッキ型シリンダーブロックにも、この第1実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1を適用することができる。
【0022】
そして、この第1実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1は、図1に示すように、二枚の基板2とそれらの間に位置する外側段差調整板3との、互いに整列するグロメット孔2g,3dに挿通された通常のグロメット5が加締められ、それらのグロメット5により二枚の基板2とそれらの間に位置する外側段差調整板3および内側段差調整板4とが互いに位置決めされて、三層構造をなしている。なお、これらのグロメット孔2g,3dは、上記エンジンのシリンダーブロックとシリンダーヘッドとの間の位置から外方に外れており、それゆえ上記グロメット5は、上記エンジンのシリンダーブロックとシリンダーヘッドとの間に挟まれてビード2b,2dの面圧を低下させることはない。
【0023】
この第1実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、外側段差調整板3と内側段差調整板4との板厚の差により上記二枚の基板2の環状ビード2aに加わる面圧を高めて、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性を向上させることができ、かつ、上記のように板厚の差を用いるので、上記二枚の基板2の環状ビード2aに加わる面圧と外周ビード2dに加わる面圧とのバランスを微調整することができる。
【0024】
しかもこの第1実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、外側段差調整板3と内側段差調整板4とを、互いに突き合せてレーザー溶接で結合することなく、基板2側の複数箇所に剪断押出し結合部3f,4fによってそれぞれ固定することから、それぞれの段差調整板3,4の高精度の位置決めと比較的長い距離にわたるレーザー溶接とに長時間かかっていた製造時間を短縮し得て、製造費用を削減することができる。
【0025】
図6(a),(b)は、上記第1実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この変形例は図示のように、上側の基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの突出方向が各々外向き(上向き)に変わり、また内側段差調整板4が、上記複数のシリンダー孔4aの各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード4gを具えて、それらの環状ビード4gと上下の基板2の環状ビード2bとが互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように二枚の基板2の間に配置されている点のみ先の第1実施例と相違し、他の点では第1実施例と同一の構成とされている。
【0026】
この変形例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、先の第1実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0027】
図7(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第2実施例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この第2実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1は各シリンダーボアを囲む冷却水ジャケットの位置でデッキ面が冷却水孔を除いて閉じているクローズドデッキ型シリンダーブロックに適合するように構成された三層積層型のもので、先の第1実施例と同様、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部と、内側段差調整板4の、基板2の各シリンダー孔2aに対しそれら複数のシリンダー孔2aの整列方向と直行する方向の両側方位置に対応する位置とにそれぞれ、固定手段としての剪断押出し結合部3f,4fが設けられるが、第1実施例と異なり、図示のように、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部を上側の基板2の対応する位置に固定し、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fは、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔側部に対応する位置を上側の基板2の対応する位置すなわちシリンダー孔側部に固定する。
【0028】
そして、下側の基板2の、外側段差調整板3および内側段差調整板4の各剪断押出し結合部3f,4fに対応する位置には、それらの剪断押出し結合部3f,4fと下側の基板2とが重ならないように逃げ孔2hが設けられており、他の点では第1実施例と同一の構成とされている。
【0029】
この第2実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によっても、先の第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0030】
図8(a),(b)は、上記第2実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この変形例は図示のように、上側の基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの突出方向が各々外向き(上向き)に変わり、また内側段差調整板4が、上記複数のシリンダー孔4aの各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード4gを具えて、それらの環状ビード4gと上下の基板2の環状ビード2bとが互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように二枚の基板2の間に配置されている点のみ先の第2実施例と相違し、他の点では第2実施例と同一の構成とされている。
【0031】
この変形例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、先の第2実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0032】
図9(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第3実施例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この第3実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1は、各シリンダーボアを囲む冷却水ジャケットの位置でデッキ面が大きく開放されているオープンデッキ型シリンダーブロックに適合するように構成された三層積層型のもので、先の第1実施例と同様、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部と、内側段差調整板4の、基板2の各シリンダー孔2aに対しそれら複数のシリンダー孔2aの整列方向と直行する方向の両側方位置に対応する位置とにそれぞれ、固定手段としての剪断押出し結合部3f,4fが設けられるが、第1実施例と異なり、図示のように、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部を下側の基板2の対応する位置に固定し、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fは、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔側部に対応する位置を上側の基板2の対応する位置すなわちシリンダー孔側部に固定する。
【0033】
そして、下側の基板2の、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fに対応する位置には、その剪断押出し結合部4fと下側の基板2とが重ならないように逃げ孔2hが設けられており、他の点では第1実施例と同一の構成とされている。
【0034】
この第3実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によっても、先の第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0035】
図10(a),(b)は、上記第3実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この変形例は図示のように、上側の基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの突出方向が各々外向き(上向き)に変わり、また内側段差調整板4が、上記複数のシリンダー孔4aの各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード4gを具えて、それらの環状ビード4gと上下の基板2の環状ビード2bとが互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように二枚の基板2の間に配置されている点のみ先の第3実施例と相違し、他の点では第3実施例と同一の構成とされている。
【0036】
この変形例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、先の第3実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0037】
図11(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第4実施例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この第4実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1は、各シリンダーボアを囲む冷却水ジャケットの位置でデッキ面が大きく開放されているオープンデッキ型シリンダーブロックに適合するように構成された三層積層型のもので、先の第1実施例と同様、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部と、内側段差調整板4の、基板2の各シリンダー孔2aに対しそれら複数のシリンダー孔2aの整列方向と直行する方向の両側方位置に対応する位置とにそれぞれ、固定手段としての剪断押出し結合部3f,4fが設けられるが、第1実施例と異なり、図示のように、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部を上側の基板2の対応する位置に固定し、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fは、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔側部に対応する位置を下側の基板2の対応する位置すなわちシリンダー孔側部に固定する。
【0038】
そして、下側の基板2の、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fに対応する位置には、その剪断押出し結合部3fと下側の基板2とが重ならないように逃げ孔2hが設けられており、他の点では第1実施例と同一の構成とされている。
【0039】
この第4実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によっても、先の第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0040】
図12(a),(b)は、上記第4実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この変形例は図示のように、上側の基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの突出方向が各々外向き(上向き)に変わり、また内側段差調整板4が、上記複数のシリンダー孔4aの各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード4gを具えて、それらの環状ビード4gと上下の基板2の環状ビード2bとが互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように二枚の基板2の間に配置されている点のみ先の第4実施例と相違し、他の点では第4実施例と同一の構成とされている。
【0041】
この変形例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、先の第4実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0042】
図13は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第5実施例の全体を示す平面図、図14(a),(b)は、その第5実施例のメタルガスケットの、図13のG−G線およびH−H線にそれぞれ沿う拡大断面図、図15はその第5実施例のメタルガスケットの外側段差調整板を示す平面図、図16はその第5実施例のメタルガスケットの内側段差調整板を示す平面図、そして図17(a)はそれら外側段差調整板と内側段差調整板とを組合せた状態で示す平面図であり、図中符号1はメタルガスケット、2は基板、3は外側段差調整板、4は内側段差調整板をそれぞれ示す。
【0043】
この第5実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1は、各シリンダーボアを囲む冷却水ジャケットの位置でデッキ面が大きく開放されているオープンデッキ型シリンダーブロックに適合するように構成された三層積層型のもので、図14に示すように、各々金属板としてのステンレス鋼板からなる二枚の基板2を具えており、これらの基板2は各々、図13に示すように、当該メタルガスケット1が組み込まれる内燃機関としてのエンジンの、シリンダーヘッドを組み付けられるシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成された複数(図では四つ)のシリンダー孔2aと、前記各シリンダー孔2aの周囲に形成された山形断面形状の環状ビード2bと、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットおよび前記シリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビード2bの外側周辺部に形成された多くの冷却水孔2cと、前記環状ビード2bおよび前記冷却水孔2cを全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビード2dとを有している。
【0044】
二枚の基板2はさらに各々、その外周ビード2dの外側に、複数の潤滑油孔2eおよび、シリンダーヘッドをシリンダーブロックに締め付け固定するためのヘッドボルトを各々挿通される複数(図では10本)のボルト孔2fと、後述するグロメット孔2gとを有しており、図14に示すように、それら二枚の基板2の環状ビード2bは、互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに、互いに逆向きになるように各々内向きに突出し、二枚の基板2の外周ビード2dも、互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに、互いに逆向きになるように各々内向きに突出している。
【0045】
この第5実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1はまた、図14に示すように、二枚の基板2の間に、例えば基板2よりも薄い厚さ(例えば0.15mm)を持つ金属板としてのステンレス鋼板からなる外側段差調整板3と、例えば基板2に等しい厚さ(例えば0.2mm)を持つ金属板としてのステンレス鋼板からなる内側段差調整板4とを介挿されて具えており、ここにおける外側段差調整板3は、図13、図15および図17に示すように、上記エンジンのシリンダーブロックの冷却水ジャケットに対応する位置から二枚の基板2の外周端部の位置まで延在している。そしてこの外側段差調整板3は、上記冷却水ジャケットに対応して位置する内周縁の、基板2の各シリンダー孔2aに対しそれら複数のシリンダー孔2aの整列方向と直行する方向の両側方位置に対応する位置にそれぞれ対応する位置で、互いに向き合うように内方へ突出する複数(図では基板2の各シリンダー孔2aに対し二箇所ずつの計八箇所)の舌状突起3gを有する他、上記内周縁に設けられて各基板2の冷却水孔2cに対応する半長円形の凹部3bと、各基板2の潤滑油孔2eおよびボルト孔2fにそれぞれ対応する複数の孔3cと、後述するグロメット孔3dと、この外側段差調整板3に対する内側段差調整板4の組合せの向きを間違えないようにするための二つの誤組防止突起3eとを有している。ここで、各舌状突起3gには後述のように、この実施例では下側の基板2に外側段差調整板3を固定するための固定手段が設けられる。
【0046】
一方、ここにおける内側段差調整板4は、図13、図16および図17に示すように、基板2の複数のシリンダー孔2aにそれぞれ対応して形成された複数のシリンダー孔4aを有してそれらのシリンダー孔4aの内周縁の位置から上記冷却水ジャケットの位置まで、外側段差調整板3と重ならないように延在している。そしてこの内側段差調整板4は、外側段差調整板3の複数の舌爪状突起3gの各々に対応する位置にその舌状突起3gと重ならないようにそれと実質的に同一平面内で嵌まり合う凹部4hを有する他、各基板2の冷却水孔2cに対応する孔4cと、上記冷却水ジャケットに対応して位置する外周縁に設けられて各基板2の冷却水孔2cに対応する半長円形の凹部4dと、外側段差調整板3に対するこの内側段差調整板4の組合せの向きを間違えないようにするための二つの誤組防止凹部4e(図16では上側の誤組防止凹部4eは、上記軸線上から外れている。)とを有している。これは、この内側段差調整板4がシリンダー孔4aの中心同士を結んだ軸線に対し左右対称でないためであり、これら二つの誤組防止凹部4eはそれぞれ、内側段差調整板4が所定の向きの時に外側段差調整板3の二つの誤組防止突起3eと嵌まり合う。
【0047】
さらに、この第5実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1では、図13および図17に示すように、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部と、内側段差調整板4の、基板2の互いに隣り合うシリンダー孔2a間の位置にそれぞれ対応する二箇所ずつ合計六箇所の位置とにそれぞれ、固定手段としての剪断押出し結合部3f,4fが設けられ、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部を下側の基板2の対応する位置に固定し、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fは、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔間位置に対応する位置を下側の基板2の対応する位置すなわちシリンダー孔間位置に固定する。
【0048】
図17(b),(c)は、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部の剪断押出し結合部3fを示す、図17(a)のI−I線およびJ−J線にそれぞれ沿う断面図、また図17(d),(e)は、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔側部に対応する位置の剪断押出し結合部4fを示す、図17(a)のK−K線およびL−L線にそれぞれ沿う断面図であり、図示のように、剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3と下側の基板2とを上から順に重ねて、例えば縦断面形状が台形で横断面形状が長方形のポンチとそのポンチに短辺側を大きくした所定クリアランスをあけて嵌り合う長方形穴を持つダイスとを組合せたプレス型やNCパンチングプレス等でプレス加工することで形成することができ(例えば、特開平6−281011号公報等参照)、剪断押出し結合部4fも同様に、内側段差調整板4と下側の基板2とを上から順に重ねて、上記プレス型やNCパンチングプレス等でプレス加工することで形成することができる。
【0049】
上記ポンチとダイスとで剪断して押し出した部分は、そのままでも剪断によって幅が広がるので外側段差調整板3や内側段差調整板4と下側の基板2とを結合するが、ダイスの長方形穴に底部を設けてその底部とポンチとでさらに挟んで加圧する(ポンチを底突きさせる)ことにより、図14(a),(b)および図17(b),(d)に示すように潰して押し広げても良く、このようにすればその結合をより強固なものにすることができる。
【0050】
この第5実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1では、下側の基板2の下面から下方に突出する上記各剪断押出し結合部3f,4fを、冷却水ジャケットの位置でデッキ面が大きく開放されているオープンデッキ型シリンダーブロックに適するように、その冷却水ジャケットの位置に配置して、冷却水ジャケット内に入り込むようにしているが、デッキ面の冷却水孔の位置に配置して、その冷却水孔内に入り込むようにすることで、デッキ面が冷却水ジャケットの上方で冷却水孔を除いて閉じているクローズドデッキ型シリンダーブロックにも、この第5実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1を適用することができる。
【0051】
そして、この第5実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1は、図13に示すように、二枚の基板2とそれらの間に位置する外側段差調整板3との、互いに整列するグロメット孔2g,3dに挿通された通常のグロメット5が加締められ、それらのグロメット5により二枚の基板2とそれらの間に位置する外側段差調整板3および内側段差調整板4とが互いに位置決めされて、三層構造をなしている。なお、これらのグロメット孔2g,3dは、上記エンジンのシリンダーブロックとシリンダーヘッドとの間の位置から外方に外れており、それゆえ上記グロメット5は、上記エンジンのシリンダーブロックとシリンダーヘッドとの間に挟まれてビード2b,2dの面圧を低下させることはない。
【0052】
この第5実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、外側段差調整板3と内側段差調整板4との板厚の差により上記二枚の基板2の環状ビード2aに加わる面圧を高めて、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性を向上させることができ、かつ、上記のように板厚の差を用いるので、上記二枚の基板2の環状ビード2aに加わる面圧と外周ビード2dに加わる面圧とのバランスを微調整することができる。
【0053】
しかもこの第5実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、外側段差調整板3と内側段差調整板4とを、互いに突き合せて突き合せ部分に沿ってレーザー溶接で結合することなく、基板2側の複数箇所に剪断押出し結合部3f,4fによってそれぞれ固定することから、それぞれの段差調整板3,4の高精度の位置決めと比較的長い距離にわたるレーザー溶接とに長時間かかっていた製造時間を短縮し得て、製造費用を削減することができる。
【0054】
図18(a),(b)は、上記第5実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この変形例は図示のように、上側の基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの突出方向が各々外向き(上向き)に変わり、また内側段差調整板4が、上記複数のシリンダー孔4aの各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード4gを具えて、それらの環状ビード4gと上下の基板2の環状ビード2bとが互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように二枚の基板2の間に配置されている点のみ先の第5実施例と相違し、他の点では第1実施例と同一の構成とされている。
【0055】
この変形例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、先の第5実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0056】
図19(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第6実施例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この第6実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1は各シリンダーボアを囲む冷却水ジャケットの位置でデッキ面が冷却水孔を除いて閉じているクローズドデッキ型シリンダーブロックに適合するように構成された三層積層型のもので、先の第5実施例と同様、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部と、内側段差調整板4の、基板2の互いに隣り合うシリンダー孔2a間の位置にそれぞれ対応する二箇所ずつ合計六箇所の位置とにそれぞれ、固定手段としての剪断押出し結合部3f,4fが設けられるが、第5実施例と異なり、図示のように、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部を上側の基板2の対応する位置に固定し、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fは、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔間位置に対応する位置を上側の基板2の対応する位置すなわちシリンダー孔間位置に固定する。
【0057】
そして、下側の基板2の、外側段差調整板3および内側段差調整板4の各剪断押出し結合部3f,4fに対応する位置には、それらの剪断押出し結合部3f,4fと下側の基板2とが重ならないように逃げ孔2hが設けられており、他の点では第5実施例と同一の構成とされている。
【0058】
この第6実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によっても、先の第5実施例と同様の作用効果が得られる。
【0059】
図20(a),(b)は、上記第6実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この変形例は図示のように、上側の基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの突出方向が各々外向き(上向き)に変わり、また内側段差調整板4が、上記複数のシリンダー孔4aの各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード4gを具えて、それらの環状ビード4gと上下の基板2の環状ビード2bとが互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように二枚の基板2の間に配置されている点のみ先の第6実施例と相違し、他の点では第6実施例と同一の構成とされている。
【0060】
この変形例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、先の第6実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0061】
図21(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第7実施例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この第7実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1は、各シリンダーボアを囲む冷却水ジャケットの位置でデッキ面が大きく開放されているオープンデッキ型シリンダーブロックに適合するように構成された三層積層型のもので、先の第5実施例と同様、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部と、内側段差調整板4の、基板2の互いに隣り合うシリンダー孔2a間の位置にそれぞれ対応する二箇所ずつ合計六箇所の位置とにそれぞれ、固定手段としての剪断押出し結合部3f,4fが設けられるが、第5実施例と異なり、図示のように、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部を下側の基板2の対応する位置に固定し、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fは、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔間位置に対応する位置を上側の基板2の対応する位置すなわちシリンダー孔間位置に固定する。
【0062】
そして、下側の基板2の、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fに対応する位置には、その剪断押出し結合部4fと下側の基板2とが重ならないように逃げ孔2hが設けられており、他の点では第5実施例と同一の構成とされている。
【0063】
この第7実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によっても、先の第5実施例と同様の作用効果が得られる。
【0064】
図22(a),(b)は、上記第7実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この変形例は図示のように、上側の基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの突出方向が各々外向き(上向き)に変わり、また内側段差調整板4が、上記複数のシリンダー孔4aの各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード4gを具えて、それらの環状ビード4gと上下の基板2の環状ビード2bとが互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように二枚の基板2の間に配置されている点のみ先の第7実施例と相違し、他の点では第7実施例と同一の構成とされている。
【0065】
この変形例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、先の第7実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0066】
図23(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第8実施例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この第8実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1は、各シリンダーボアを囲む冷却水ジャケットの位置でデッキ面が大きく開放されているオープンデッキ型シリンダーブロックに適合するように構成された三層積層型のもので、先の第5実施例と同様、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部と、内側段差調整板4の、基板2の互いに隣り合うシリンダー孔2a間の位置にそれぞれ対応する二箇所ずつ合計六箇所の位置とにそれぞれ、固定手段としての剪断押出し結合部3f,4fが設けられるが、第5実施例と異なり、図示のように、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部を上側の基板2の対応する位置に固定し、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fは、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔間位置に対応する位置を下側の基板2の対応する位置すなわちシリンダー孔間位置に固定する。
【0067】
そして、下側の基板2の、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fに対応する位置には、その剪断押出し結合部3fと下側の基板2とが重ならないように逃げ孔2hが設けられており、他の点では第5実施例と同一の構成とされている。
【0068】
この第8実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によっても、先の第5実施例と同様の作用効果が得られる。
【0069】
図24(a),(b)は、上記第8実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この変形例は図示のように、上側の基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの突出方向が各々外向き(上向き)に変わり、また内側段差調整板4が、上記複数のシリンダー孔4aの各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード4gを具えて、それらの環状ビード4gと上下の基板2の環状ビード2bとが互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように二枚の基板2の間に配置されている点のみ先の第8実施例と相違し、他の点では第8実施例と同一の構成とされている。
【0070】
この変形例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、先の第8実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0071】
図25(a),(b)は、先の第1実施例における剪断押出し結合部3f,4fに代えて、他の固定手段としてのリベット6を用いて下側の基板2と外側段差調整板3および下側の基板2と内側段差調整板4をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、ここではリベット6と上側の基板2とが当接して締め付けが困難にならないようにするために、上側の基板2に逃げ孔2hが設けられている。このようにしても先の第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0072】
図26(a),(b)は、先の第1実施例の変形例における剪断押出し結合部3f,4fに代えて、他の固定手段としてのリベット6を用いて下側の基板2と外側段差調整板3および下側の基板2と内側段差調整板4をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、ここではリベット6と上側の基板2とが当接して締め付けが困難にならないようにするために、上側の基板2に逃げ孔2hが設けられている。このようにしても先の第1実施例の変形例と同様の作用効果が得られる。
【0073】
図27(a),(b)は、先の第1実施例における剪断押出し結合部3f,4fに代えて、さらに他の固定手段としてのハトメ7を用いて下側の基板2と外側段差調整板3および下側の基板2と内側段差調整板4をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、ここではハトメ7と上側の基板2とが当接して締め付けが困難にならないようにするために、上側の基板2に逃げ孔2hが設けられている。このようにしても先の第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0074】
図28(a),(b)は、先の第1実施例の変形例における剪断押出し結合部3f,4fに代えて、さらに他の固定手段としてのハトメ7を用いて下側の基板2と外側段差調整板3および下側の基板2と内側段差調整板4をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、ここではハトメ7と上側の基板2とが当接して締め付けが困難にならないようにするために、上側の基板2に逃げ孔2hが設けられている。このようにしても先の第1実施例の変形例と同様の作用効果が得られる。
【0075】
図29(a),(b)は、先の第1実施例における剪断押出し結合部3f,4fに代えて、さらに他の固定手段としてのスポット溶接部8を用いて下側の基板2と外側段差調整板3および下側の基板2と内側段差調整板4をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。このようにしても先の第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0076】
図30(a),(b)は、先の第1実施例の変形例における剪断押出し結合部3f,4fに代えて、さらに他の固定手段としてのスポット溶接部8を用いて下側の基板2と外側段差調整板3および下側の基板2と内側段差調整板4をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。このようにしても先の第1実施例の変形例と同様の作用効果が得られる。
【0077】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであることはもちろんである。例えば、上記図25〜図30に示すリベット6、ハトメ7およびスポット溶接部8は、他の実施例や他の変形例にも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
かくしてこの発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットによれば、外側段差調整板と内側段差調整板との板厚の差により上記基板の環状ビードに加わる面圧を高めて、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性を向上させることができ、かつ、上記のように板厚の差を用いるので、上記基板の環状ビードに加わる面圧と外周ビードに加わる面圧とのバランスを微調整することができる。
【0079】
しかもこの発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットによれば、外側段差調整板と内側段差調整板とを、互いに突き合せて突き合せ部分に沿ってレーザー溶接で結合することなく、基板側の複数箇所に固定手段によってそれぞれ固定することから、それぞれの段差調整板の高精度の位置決めと比較的長い距離にわたるレーザー溶接とに長時間かかっていた製造時間を短縮し得て、製造費用を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第1実施例の全体を示す平面図である。
【図2】(a),(b)は、上記第1実施例のメタルガスケットの、図1のA−A線およびB−B線にそれぞれ沿う拡大断面図である。
【図3】上記第1実施例のメタルガスケットの外側段差調整板を示す平面図である。
【図4】上記第1実施例のメタルガスケットの内側段差調整板を示す平面図である。
【図5】(a)は、上記第1実施例のメタルガスケットの外側段差調整板と内側段差調整板とを組合せた状態で示す平面図、(b),(c)は、外側段差調整板の各舌状突起の中央部の剪断押出し結合部を示す、(a)のC−C線およびD−D線にそれぞれ沿う断面図、(d),(e)は、内側段差調整板の各基板シリンダー孔側部に対応する位置の剪断押出し結合部を示す、(a)のE−E線およびF−F線にそれぞれ沿う断面図である。
【図6】(a),(b)は、上記第1実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図7】(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第2実施例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図8】(a),(b)は、上記第2実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図9】(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第3実施例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図10】(a),(b)は、上記第3実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図11】(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第4実施例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図12】(a),(b)は、上記第4実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図13】この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第5実施例の全体を示す平面図である。
【図14】(a),(b)は、上記第5実施例のメタルガスケットの、図13のG−G線およびH−H線にそれぞれ沿う拡大断面図である。
【図15】上記第5実施例のメタルガスケットの外側段差調整板を示す平面図である。
【図16】上記第5実施例のメタルガスケットの内側段差調整板を示す平面図である。
【図17】(a)は、上記第5実施例のメタルガスケットの外側段差調整板と内側段差調整板とを組合せた状態で示す平面図、(b),(c)は、外側段差調整板の各舌状突起の中央部の剪断押出し結合部3fを示す、(a)のI−I線およびJ−J線にそれぞれ沿う断面図、(d),(e)は、内側段差調整板の各基板シリンダー孔側部に対応する位置の剪断押出し結合部を示す、図17(a)のK−K線およびL−L線にそれぞれ沿う断面図である。
【図18】(a),(b)は、上記第5実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図19】(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第6実施例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図20】(a),(b)は、上記第6実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図21】(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第7実施例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図22】(a),(b)は、上記第7実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図23】(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第8実施例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図24】(a),(b)は、上記第8実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図25】(a),(b)は、先の第1実施例における剪断押出し結合部に代えて、他の固定手段としてのリベットを用いて下側の基板と外側段差調整板および下側の基板と内側段差調整板をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図26】(a),(b)は、先の第1実施例の変形例における剪断押出し結合部に代えて、他の固定手段としてのリベットを用いて下側の基板と外側段差調整板および下側の基板と内側段差調整板をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図27】(a),(b)は、先の第1実施例における剪断押出し結合部に代えて、さらに他の固定手段としてのハトメを用いて下側の基板と外側段差調整板および下側の基板と内側段差調整板をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図28】(a),(b)は、先の第1実施例の変形例における剪断押出し結合部に代えて、さらに他の固定手段としてのハトメを用いて下側の基板と外側段差調整板および下側の基板と内側段差調整板をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図29】(a),(b)は、先の第1実施例における剪断押出し結合部に代えて、さらに他の固定手段としてのスポット溶接部を用いて下側の基板と外側段差調整板および下側の基板と内側段差調整板をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図30】(a),(b)は、先の第1実施例の変形例における剪断押出し結合部に代えて、さらに他の固定手段としてのスポット溶接部を用いて下側の基板と外側段差調整板および下側の基板と内側段差調整板をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 メタルガスケット
2 基板
2a シリンダー孔
2b 環状ビード
2c 冷却水孔
2d 外周ビード
2e 潤滑油孔
2f ボルト孔
2g グロメット孔
2h 逃げ孔
3 外側段差調整板
3a 舌状突起
3b 凹部
3c 孔
3d グロメット孔
3e 誤組防止突起
3f 剪断押出し結合部
3g 舌状突起
4 内側段差調整板
4a シリンダー孔
4b 凹部
4c 孔
4d 凹部
4e 誤組防止凹部
4f 剪断押出し結合部
4g 環状ビード
4h 凹部
5 グロメット
6 リベット
7 ハトメ
8 スポット溶接部
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関のシリンダーブロックとシリンダーヘッドとの間に介挿されるシリンダーヘッド用メタルガスケットに関し、特には、複数枚の金属板を重ね合わせた積層型のメタルガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のメタルガスケットとしては例えば、本願出願人が先に出願して特許を取得した特許文献1記載のものが知られており、このシリンダーヘッド用メタルガスケットは、各々金属板からなり、内燃機関のシリンダーヘッドを組み付けられるシリンダーブロックの複数のシリンダーボアにそれぞれ対応して形成された複数のシリンダー孔と、前記複数のシリンダー孔の各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビードと、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットおよび前記シリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔と、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビードとを有する二枚の基板を具えている。そして、それらの基板の間には、金属板からなる薄い段差調整板が介挿されている。
【0003】
この段差調整板は、金属板からなり、上記冷却水ジャケットの位置から上記基板の外周縁の位置まで延在する外側段差調整板と、その外側段差調整板よりも厚い金属板からなり、上記基板の複数のシリンダー孔にそれぞれ対応して形成された複数のシリンダー孔を有して、それらのシリンダー孔の内周縁の位置から上記冷却水ジャケットの位置まで延在する内側段差調整板とをその冷却水ジャケットの位置で突き合せてレーザー溶接により互いに一体的に結合し一枚の板にしたもので、それら外側段差調整板と内側段差調整板との板厚の差により上記基板の環状ビードに加わる面圧を高め、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性を向上させている。
【特許文献1】特許第2925920号公報、図3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本願発明者が上記従来のメタルガスケットについて研究を進めた結果、上記従来のメタルガスケットでは、上記外側段差調整板と内側段差調整板とをレーザー溶接で結合する際、それぞれの段差調整板の高精度の位置決めと比較的長い距離にわたるレーザー溶接とに時間がかかり、製造費用が嵩むという不都合があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、請求項1記載のこの発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットは、各々金属板からなり、内燃機関のシリンダーヘッドを組み付けられるシリンダーブロックの複数のシリンダーボアにそれぞれ対応して形成された複数のシリンダー孔と、前記複数のシリンダー孔の各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビードと、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットおよび前記シリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔と、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビードとを有する二枚の基板を、前記環状ビード同士が互いに当該ガスケットの厚さ方向に整列して位置するように重ね合わせて具えるシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットにおいて、金属板からなり、前記冷却水ジャケットの位置から前記基板の外周縁の位置まで延在する外側段差調整板と、前記外側段差調整板よりも厚い金属板からなり、前記基板の複数のシリンダー孔にそれぞれ対応して形成された複数のシリンダー孔を有して、それらのシリンダー孔の内周縁の位置から前記冷却水ジャケットの位置まで延在する内側段差調整板と、を前記二枚の基板の間に介挿して具え、前記外側段差調整板の、前記基板の互いに隣り合う前記シリンダー孔間の位置に対応する位置に固定手段を設けるとともに、前記内側段差調整板の、前記基板の前記各シリンダー孔に対し前記複数のシリンダー孔の整列方向と直行する方向の側方位置に対応する位置に固定手段を設け、前記外側段差調整板と前記内側段差調整板とをそれぞれ前記固定手段によって前記二枚の基板の何れか一方に固定したことを特徴とするものである。
【0006】
また、請求項2記載のこの発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットは、前記外側段差調整板と前記内側段差調整板とをそれぞれ前記固定手段によって前記二枚の基板の何れか一方に固定する代わりに、前記外側段差調整板を前記固定手段によって前記二枚の基板のうち何れか一方の基板に固定するとともに、前記内側段差調整板を前記固定手段によって前記二枚の基板のうち他方の基板に固定したことを特徴とするものである。
【0007】
さらに、請求項3記載のこの発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットは、前記外側段差調整板の、前記基板の互いに隣り合う前記シリンダー孔間の位置に対応する位置に固定手段を設けるとともに、前記内側段差調整板の、前記基板の前記各シリンダー孔に対し前記複数のシリンダー孔の整列方向と直行する方向の側方位置に対応する位置に固定手段を設ける代わりに、前記外側段差調整板の、前記基板の前記各シリンダー孔に対し前記複数のシリンダー孔の整列方向と直行する方向の側方位置に対応する位置に固定手段を設けるとともに、前記内側段差調整板の、前記基板の互いに隣り合う前記シリンダー孔間の位置に対応する位置に固定手段を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
そして、請求項4記載のこの発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットは、前記外側段差調整板と前記内側段差調整板とをそれぞれ前記固定手段によって前記二枚の基板の何れか一方に固定する代わりに、前記外側段差調整板を前記固定手段によって前記二枚の基板のうち何れか一方の基板に固定するとともに、前記内側段差調整板を前記固定手段によって前記二枚の基板のうち他方の基板に固定したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
かかる請求項1〜4記載のこの発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットによれば、外側段差調整板と内側段差調整板との板厚の差により上記基板の環状ビードに加わる面圧を高めて、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性を向上させることができ、かつ、上記のように板厚の差を用いるので、上記基板の環状ビードに加わる面圧と外周ビードに加わる面圧とのバランスを微調整することができる。
【0010】
しかもこの発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットによれば、外側段差調整板と内側段差調整板とを、互いに突き合せて突き合せ部分に沿ってレーザー溶接で結合することなく、基板側の複数箇所に固定手段によってそれぞれ固定することから、それぞれの段差調整板の高精度の位置決めと比較的長い距離にわたるレーザー溶接とに長時間かかっていた製造時間を短縮し得て、製造費用を削減することができる。
【0011】
なお、この発明においては、請求項5に記載のように、前記固定手段は、剪断押出し結合部、リベット、ハトメおよびスポット溶接部のうちの少なくとも一つであっても良く、これらの固定手段によれば、外側段差調整板と内側段差調整板とを、基板側に固定手段でそれぞれ確実に固定することができる。
【0012】
また、この発明においては、請求項6に記載のように、前記内側段差調整板は、前記複数のシリンダー孔の各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビードを具え、それらの環状ビードと前記基板の前記環状ビードとが互いに当該ガスケットの厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように前記二枚の基板の間に配置されていても良く、このようにすれば、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第1実施例の全体を示す平面図、図2(a),(b)は、その第1実施例のメタルガスケットの、図1のA−A線およびB−B線にそれぞれ沿う拡大断面図、図3はその第1実施例のメタルガスケットの外側段差調整板を示す平面図、図4はその第1実施例のメタルガスケットの内側段差調整板を示す平面図、そして図5(a)はそれら外側段差調整板と内側段差調整板とを組合せた状態で示す平面図であり、図中符号1はメタルガスケット、2は基板、3は外側段差調整板、4は内側段差調整板をそれぞれ示す。
【0014】
この第1実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1は、各シリンダーボアを囲む冷却水ジャケットの位置でデッキ面が大きく開放されているオープンデッキ型シリンダーブロックに適合するように構成された三層積層型のもので、図2に示すように、各々金属板としてのステンレス鋼板からなる二枚の基板2を具えており、これらの基板2は各々、図1に示すように、当該メタルガスケット1が組み込まれる内燃機関としてのエンジンの、シリンダーヘッドを組み付けられるシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成された複数(図では四つ)のシリンダー孔2aと、前記各シリンダー孔2aの周囲に形成された山形断面形状の環状ビード2bと、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットおよび前記シリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビード2bの外側周辺部に形成された多くの冷却水孔2cと、前記環状ビード2bおよび前記冷却水孔2cを全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビード2dとを有している。
【0015】
二枚の基板2はさらに各々、その外周ビード2dの外側に、複数の潤滑油孔2eおよび、シリンダーヘッドをシリンダーブロックに締め付け固定するためのヘッドボルトを各々挿通される複数(図では10本)のボルト孔2fと、後述するグロメット孔2gとを有しており、図2に示すように、それら二枚の基板2の環状ビード2bは、互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに、互いに逆向きになるように各々内向きに突出し、二枚の基板2の外周ビード2dも、互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに、互いに逆向きになるように各々内向きに突出している。
【0016】
この第1実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1はまた、図2に示すように、二枚の基板2の間に、例えば基板2よりも薄い厚さ(例えば0.15mm)を持つ金属板としてのステンレス鋼板からなる外側段差調整板3と、例えば基板2に等しい厚さ(例えば0.2mm)を持つ金属板としてのステンレス鋼板からなる内側段差調整板4とを介挿されて具えており、ここにおける外側段差調整板3は、図1、図3および図5に示すように、上記エンジンのシリンダーブロックの冷却水ジャケットに対応する位置から二枚の基板2の外周端部の位置まで延在している。そしてこの外側段差調整板3は、上記冷却水ジャケットに対応して位置する内周縁の、基板2の互いに隣り合うシリンダー孔2a間の位置にそれぞれ対応する位置で、互いに向き合うように内方へ突出する複数(図では基板2の各シリンダー孔2a間に対し二箇所ずつの計六箇所)の舌状突起3aを有する他、上記内周縁に設けられて各基板2の冷却水孔2cに対応する半長円形の凹部3bと、各基板2の潤滑油孔2eおよびボルト孔2fにそれぞれ対応する複数の孔3cと、後述するグロメット孔3dと、この外側段差調整板3に対する内側段差調整板4の組合せの向きを間違えないようにするための二つの誤組防止突起3eとを有している。ここで、各舌状突起3aには後述のように、この実施例では下側の基板2に外側段差調整板3を固定するための固定手段が設けられる。
【0017】
一方、ここにおける内側段差調整板4は、図1、図4および図5に示すように、基板2の複数のシリンダー孔2aにそれぞれ対応して形成された複数のシリンダー孔4aを有してそれらのシリンダー孔4aの内周縁の位置から上記冷却水ジャケットの位置まで、外側段差調整板3と重ならないように延在している。そしてこの内側段差調整板4は、外側段差調整板3の複数の舌爪状突起3aの各々に対応する位置にその舌状突起3aと重ならないようにそれと実質的に同一平面内で嵌まり合う凹部4bを有する他、各基板2の冷却水孔2cに対応する孔4cと、上記冷却水ジャケットに対応して位置する外周縁に設けられて各基板2の冷却水孔2cに対応する半長円形の凹部4dと、外側段差調整板3に対するこの内側段差調整板4の組合せの向きを間違えないようにするための二つの誤組防止凹部4e(図4では上側の誤組防止凹部4eは、上記軸線上から外れている。)とを有している。これは、この内側段差調整板4がシリンダー孔4aの中心同士を結んだ軸線に対し左右対称でないためであり、これら二つの誤組防止凹部4eはそれぞれ、内側段差調整板4が所定の向きの時に外側段差調整板3の二つの誤組防止突起3eと嵌まり合う。
【0018】
さらに、この第1実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1では、図1および図5に示すように、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部と、内側段差調整板4の、基板2の各シリンダー孔2aに対しそれら複数のシリンダー孔2aの整列方向と直行する方向の両側方位置に対応する位置とにそれぞれ、固定手段としての剪断押出し結合部3f,4fが設けられ、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部を下側の基板2の対応する位置に固定し、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fは、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔側部に対応する位置を下側の基板2の対応する位置すなわちシリンダー孔側部に固定する。
【0019】
図5(b),(c)は、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部の剪断押出し結合部3fを示す、図5(a)のC−C線およびD−D線にそれぞれ沿う断面図、また図5(d),(e)は、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔側部に対応する位置の剪断押出し結合部4fを示す、図5(a)のE−E線およびF−F線にそれぞれ沿う断面図であり、図示のように、剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3と下側の基板2とを上から順に重ねて、例えば縦断面形状が台形で横断面形状が長方形のポンチとそのポンチに短辺側を大きくした所定クリアランスをあけて嵌り合う長方形穴を持つダイスとを組合せたプレス型やNCパンチングプレス等でプレス加工することで形成することができ(例えば、特開平6−281011号公報等参照)、剪断押出し結合部4fも同様に、内側段差調整板4と下側の基板2とを上から順に重ねて、上記プレス型やNCパンチングプレス等でプレス加工することで形成することができる。
【0020】
上記ポンチとダイスとで剪断して押し出した部分は、そのままでも剪断によって幅が広がるので外側段差調整板3や内側段差調整板4と下側の基板2とを結合するが、ダイスの長方形穴に底部を設けてその底部とポンチとでさらに挟んで加圧する(ポンチを底突きさせる)ことにより、図2(a),(b)および図5(b),(d)に示すように潰して押し広げても良く、このようにすればその結合をより強固なものにすることができる。
【0021】
この第1実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1では、下側の基板2の下面から下方に突出する上記各剪断押出し結合部3f,4fを、冷却水ジャケットの位置でデッキ面が大きく開放されているオープンデッキ型シリンダーブロックに適するように、その冷却水ジャケットの位置に配置して、冷却水ジャケット内に入り込むようにしているが、デッキ面の冷却水孔の位置に配置して、その冷却水孔内に入り込むようにすることで、デッキ面が冷却水ジャケットの上方で冷却水孔を除いて閉じているクローズドデッキ型シリンダーブロックにも、この第1実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1を適用することができる。
【0022】
そして、この第1実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1は、図1に示すように、二枚の基板2とそれらの間に位置する外側段差調整板3との、互いに整列するグロメット孔2g,3dに挿通された通常のグロメット5が加締められ、それらのグロメット5により二枚の基板2とそれらの間に位置する外側段差調整板3および内側段差調整板4とが互いに位置決めされて、三層構造をなしている。なお、これらのグロメット孔2g,3dは、上記エンジンのシリンダーブロックとシリンダーヘッドとの間の位置から外方に外れており、それゆえ上記グロメット5は、上記エンジンのシリンダーブロックとシリンダーヘッドとの間に挟まれてビード2b,2dの面圧を低下させることはない。
【0023】
この第1実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、外側段差調整板3と内側段差調整板4との板厚の差により上記二枚の基板2の環状ビード2aに加わる面圧を高めて、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性を向上させることができ、かつ、上記のように板厚の差を用いるので、上記二枚の基板2の環状ビード2aに加わる面圧と外周ビード2dに加わる面圧とのバランスを微調整することができる。
【0024】
しかもこの第1実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、外側段差調整板3と内側段差調整板4とを、互いに突き合せてレーザー溶接で結合することなく、基板2側の複数箇所に剪断押出し結合部3f,4fによってそれぞれ固定することから、それぞれの段差調整板3,4の高精度の位置決めと比較的長い距離にわたるレーザー溶接とに長時間かかっていた製造時間を短縮し得て、製造費用を削減することができる。
【0025】
図6(a),(b)は、上記第1実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この変形例は図示のように、上側の基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの突出方向が各々外向き(上向き)に変わり、また内側段差調整板4が、上記複数のシリンダー孔4aの各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード4gを具えて、それらの環状ビード4gと上下の基板2の環状ビード2bとが互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように二枚の基板2の間に配置されている点のみ先の第1実施例と相違し、他の点では第1実施例と同一の構成とされている。
【0026】
この変形例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、先の第1実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0027】
図7(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第2実施例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この第2実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1は各シリンダーボアを囲む冷却水ジャケットの位置でデッキ面が冷却水孔を除いて閉じているクローズドデッキ型シリンダーブロックに適合するように構成された三層積層型のもので、先の第1実施例と同様、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部と、内側段差調整板4の、基板2の各シリンダー孔2aに対しそれら複数のシリンダー孔2aの整列方向と直行する方向の両側方位置に対応する位置とにそれぞれ、固定手段としての剪断押出し結合部3f,4fが設けられるが、第1実施例と異なり、図示のように、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部を上側の基板2の対応する位置に固定し、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fは、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔側部に対応する位置を上側の基板2の対応する位置すなわちシリンダー孔側部に固定する。
【0028】
そして、下側の基板2の、外側段差調整板3および内側段差調整板4の各剪断押出し結合部3f,4fに対応する位置には、それらの剪断押出し結合部3f,4fと下側の基板2とが重ならないように逃げ孔2hが設けられており、他の点では第1実施例と同一の構成とされている。
【0029】
この第2実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によっても、先の第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0030】
図8(a),(b)は、上記第2実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この変形例は図示のように、上側の基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの突出方向が各々外向き(上向き)に変わり、また内側段差調整板4が、上記複数のシリンダー孔4aの各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード4gを具えて、それらの環状ビード4gと上下の基板2の環状ビード2bとが互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように二枚の基板2の間に配置されている点のみ先の第2実施例と相違し、他の点では第2実施例と同一の構成とされている。
【0031】
この変形例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、先の第2実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0032】
図9(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第3実施例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この第3実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1は、各シリンダーボアを囲む冷却水ジャケットの位置でデッキ面が大きく開放されているオープンデッキ型シリンダーブロックに適合するように構成された三層積層型のもので、先の第1実施例と同様、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部と、内側段差調整板4の、基板2の各シリンダー孔2aに対しそれら複数のシリンダー孔2aの整列方向と直行する方向の両側方位置に対応する位置とにそれぞれ、固定手段としての剪断押出し結合部3f,4fが設けられるが、第1実施例と異なり、図示のように、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部を下側の基板2の対応する位置に固定し、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fは、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔側部に対応する位置を上側の基板2の対応する位置すなわちシリンダー孔側部に固定する。
【0033】
そして、下側の基板2の、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fに対応する位置には、その剪断押出し結合部4fと下側の基板2とが重ならないように逃げ孔2hが設けられており、他の点では第1実施例と同一の構成とされている。
【0034】
この第3実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によっても、先の第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0035】
図10(a),(b)は、上記第3実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この変形例は図示のように、上側の基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの突出方向が各々外向き(上向き)に変わり、また内側段差調整板4が、上記複数のシリンダー孔4aの各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード4gを具えて、それらの環状ビード4gと上下の基板2の環状ビード2bとが互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように二枚の基板2の間に配置されている点のみ先の第3実施例と相違し、他の点では第3実施例と同一の構成とされている。
【0036】
この変形例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、先の第3実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0037】
図11(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第4実施例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この第4実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1は、各シリンダーボアを囲む冷却水ジャケットの位置でデッキ面が大きく開放されているオープンデッキ型シリンダーブロックに適合するように構成された三層積層型のもので、先の第1実施例と同様、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部と、内側段差調整板4の、基板2の各シリンダー孔2aに対しそれら複数のシリンダー孔2aの整列方向と直行する方向の両側方位置に対応する位置とにそれぞれ、固定手段としての剪断押出し結合部3f,4fが設けられるが、第1実施例と異なり、図示のように、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3の各舌状突起3aの中央部を上側の基板2の対応する位置に固定し、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fは、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔側部に対応する位置を下側の基板2の対応する位置すなわちシリンダー孔側部に固定する。
【0038】
そして、下側の基板2の、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fに対応する位置には、その剪断押出し結合部3fと下側の基板2とが重ならないように逃げ孔2hが設けられており、他の点では第1実施例と同一の構成とされている。
【0039】
この第4実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によっても、先の第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0040】
図12(a),(b)は、上記第4実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この変形例は図示のように、上側の基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの突出方向が各々外向き(上向き)に変わり、また内側段差調整板4が、上記複数のシリンダー孔4aの各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード4gを具えて、それらの環状ビード4gと上下の基板2の環状ビード2bとが互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように二枚の基板2の間に配置されている点のみ先の第4実施例と相違し、他の点では第4実施例と同一の構成とされている。
【0041】
この変形例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、先の第4実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0042】
図13は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第5実施例の全体を示す平面図、図14(a),(b)は、その第5実施例のメタルガスケットの、図13のG−G線およびH−H線にそれぞれ沿う拡大断面図、図15はその第5実施例のメタルガスケットの外側段差調整板を示す平面図、図16はその第5実施例のメタルガスケットの内側段差調整板を示す平面図、そして図17(a)はそれら外側段差調整板と内側段差調整板とを組合せた状態で示す平面図であり、図中符号1はメタルガスケット、2は基板、3は外側段差調整板、4は内側段差調整板をそれぞれ示す。
【0043】
この第5実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1は、各シリンダーボアを囲む冷却水ジャケットの位置でデッキ面が大きく開放されているオープンデッキ型シリンダーブロックに適合するように構成された三層積層型のもので、図14に示すように、各々金属板としてのステンレス鋼板からなる二枚の基板2を具えており、これらの基板2は各々、図13に示すように、当該メタルガスケット1が組み込まれる内燃機関としてのエンジンの、シリンダーヘッドを組み付けられるシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成された複数(図では四つ)のシリンダー孔2aと、前記各シリンダー孔2aの周囲に形成された山形断面形状の環状ビード2bと、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットおよび前記シリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビード2bの外側周辺部に形成された多くの冷却水孔2cと、前記環状ビード2bおよび前記冷却水孔2cを全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビード2dとを有している。
【0044】
二枚の基板2はさらに各々、その外周ビード2dの外側に、複数の潤滑油孔2eおよび、シリンダーヘッドをシリンダーブロックに締め付け固定するためのヘッドボルトを各々挿通される複数(図では10本)のボルト孔2fと、後述するグロメット孔2gとを有しており、図14に示すように、それら二枚の基板2の環状ビード2bは、互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに、互いに逆向きになるように各々内向きに突出し、二枚の基板2の外周ビード2dも、互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに、互いに逆向きになるように各々内向きに突出している。
【0045】
この第5実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1はまた、図14に示すように、二枚の基板2の間に、例えば基板2よりも薄い厚さ(例えば0.15mm)を持つ金属板としてのステンレス鋼板からなる外側段差調整板3と、例えば基板2に等しい厚さ(例えば0.2mm)を持つ金属板としてのステンレス鋼板からなる内側段差調整板4とを介挿されて具えており、ここにおける外側段差調整板3は、図13、図15および図17に示すように、上記エンジンのシリンダーブロックの冷却水ジャケットに対応する位置から二枚の基板2の外周端部の位置まで延在している。そしてこの外側段差調整板3は、上記冷却水ジャケットに対応して位置する内周縁の、基板2の各シリンダー孔2aに対しそれら複数のシリンダー孔2aの整列方向と直行する方向の両側方位置に対応する位置にそれぞれ対応する位置で、互いに向き合うように内方へ突出する複数(図では基板2の各シリンダー孔2aに対し二箇所ずつの計八箇所)の舌状突起3gを有する他、上記内周縁に設けられて各基板2の冷却水孔2cに対応する半長円形の凹部3bと、各基板2の潤滑油孔2eおよびボルト孔2fにそれぞれ対応する複数の孔3cと、後述するグロメット孔3dと、この外側段差調整板3に対する内側段差調整板4の組合せの向きを間違えないようにするための二つの誤組防止突起3eとを有している。ここで、各舌状突起3gには後述のように、この実施例では下側の基板2に外側段差調整板3を固定するための固定手段が設けられる。
【0046】
一方、ここにおける内側段差調整板4は、図13、図16および図17に示すように、基板2の複数のシリンダー孔2aにそれぞれ対応して形成された複数のシリンダー孔4aを有してそれらのシリンダー孔4aの内周縁の位置から上記冷却水ジャケットの位置まで、外側段差調整板3と重ならないように延在している。そしてこの内側段差調整板4は、外側段差調整板3の複数の舌爪状突起3gの各々に対応する位置にその舌状突起3gと重ならないようにそれと実質的に同一平面内で嵌まり合う凹部4hを有する他、各基板2の冷却水孔2cに対応する孔4cと、上記冷却水ジャケットに対応して位置する外周縁に設けられて各基板2の冷却水孔2cに対応する半長円形の凹部4dと、外側段差調整板3に対するこの内側段差調整板4の組合せの向きを間違えないようにするための二つの誤組防止凹部4e(図16では上側の誤組防止凹部4eは、上記軸線上から外れている。)とを有している。これは、この内側段差調整板4がシリンダー孔4aの中心同士を結んだ軸線に対し左右対称でないためであり、これら二つの誤組防止凹部4eはそれぞれ、内側段差調整板4が所定の向きの時に外側段差調整板3の二つの誤組防止突起3eと嵌まり合う。
【0047】
さらに、この第5実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1では、図13および図17に示すように、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部と、内側段差調整板4の、基板2の互いに隣り合うシリンダー孔2a間の位置にそれぞれ対応する二箇所ずつ合計六箇所の位置とにそれぞれ、固定手段としての剪断押出し結合部3f,4fが設けられ、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部を下側の基板2の対応する位置に固定し、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fは、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔間位置に対応する位置を下側の基板2の対応する位置すなわちシリンダー孔間位置に固定する。
【0048】
図17(b),(c)は、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部の剪断押出し結合部3fを示す、図17(a)のI−I線およびJ−J線にそれぞれ沿う断面図、また図17(d),(e)は、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔側部に対応する位置の剪断押出し結合部4fを示す、図17(a)のK−K線およびL−L線にそれぞれ沿う断面図であり、図示のように、剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3と下側の基板2とを上から順に重ねて、例えば縦断面形状が台形で横断面形状が長方形のポンチとそのポンチに短辺側を大きくした所定クリアランスをあけて嵌り合う長方形穴を持つダイスとを組合せたプレス型やNCパンチングプレス等でプレス加工することで形成することができ(例えば、特開平6−281011号公報等参照)、剪断押出し結合部4fも同様に、内側段差調整板4と下側の基板2とを上から順に重ねて、上記プレス型やNCパンチングプレス等でプレス加工することで形成することができる。
【0049】
上記ポンチとダイスとで剪断して押し出した部分は、そのままでも剪断によって幅が広がるので外側段差調整板3や内側段差調整板4と下側の基板2とを結合するが、ダイスの長方形穴に底部を設けてその底部とポンチとでさらに挟んで加圧する(ポンチを底突きさせる)ことにより、図14(a),(b)および図17(b),(d)に示すように潰して押し広げても良く、このようにすればその結合をより強固なものにすることができる。
【0050】
この第5実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1では、下側の基板2の下面から下方に突出する上記各剪断押出し結合部3f,4fを、冷却水ジャケットの位置でデッキ面が大きく開放されているオープンデッキ型シリンダーブロックに適するように、その冷却水ジャケットの位置に配置して、冷却水ジャケット内に入り込むようにしているが、デッキ面の冷却水孔の位置に配置して、その冷却水孔内に入り込むようにすることで、デッキ面が冷却水ジャケットの上方で冷却水孔を除いて閉じているクローズドデッキ型シリンダーブロックにも、この第5実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1を適用することができる。
【0051】
そして、この第5実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1は、図13に示すように、二枚の基板2とそれらの間に位置する外側段差調整板3との、互いに整列するグロメット孔2g,3dに挿通された通常のグロメット5が加締められ、それらのグロメット5により二枚の基板2とそれらの間に位置する外側段差調整板3および内側段差調整板4とが互いに位置決めされて、三層構造をなしている。なお、これらのグロメット孔2g,3dは、上記エンジンのシリンダーブロックとシリンダーヘッドとの間の位置から外方に外れており、それゆえ上記グロメット5は、上記エンジンのシリンダーブロックとシリンダーヘッドとの間に挟まれてビード2b,2dの面圧を低下させることはない。
【0052】
この第5実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、外側段差調整板3と内側段差調整板4との板厚の差により上記二枚の基板2の環状ビード2aに加わる面圧を高めて、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性を向上させることができ、かつ、上記のように板厚の差を用いるので、上記二枚の基板2の環状ビード2aに加わる面圧と外周ビード2dに加わる面圧とのバランスを微調整することができる。
【0053】
しかもこの第5実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、外側段差調整板3と内側段差調整板4とを、互いに突き合せて突き合せ部分に沿ってレーザー溶接で結合することなく、基板2側の複数箇所に剪断押出し結合部3f,4fによってそれぞれ固定することから、それぞれの段差調整板3,4の高精度の位置決めと比較的長い距離にわたるレーザー溶接とに長時間かかっていた製造時間を短縮し得て、製造費用を削減することができる。
【0054】
図18(a),(b)は、上記第5実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この変形例は図示のように、上側の基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの突出方向が各々外向き(上向き)に変わり、また内側段差調整板4が、上記複数のシリンダー孔4aの各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード4gを具えて、それらの環状ビード4gと上下の基板2の環状ビード2bとが互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように二枚の基板2の間に配置されている点のみ先の第5実施例と相違し、他の点では第1実施例と同一の構成とされている。
【0055】
この変形例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、先の第5実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0056】
図19(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第6実施例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この第6実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1は各シリンダーボアを囲む冷却水ジャケットの位置でデッキ面が冷却水孔を除いて閉じているクローズドデッキ型シリンダーブロックに適合するように構成された三層積層型のもので、先の第5実施例と同様、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部と、内側段差調整板4の、基板2の互いに隣り合うシリンダー孔2a間の位置にそれぞれ対応する二箇所ずつ合計六箇所の位置とにそれぞれ、固定手段としての剪断押出し結合部3f,4fが設けられるが、第5実施例と異なり、図示のように、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部を上側の基板2の対応する位置に固定し、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fは、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔間位置に対応する位置を上側の基板2の対応する位置すなわちシリンダー孔間位置に固定する。
【0057】
そして、下側の基板2の、外側段差調整板3および内側段差調整板4の各剪断押出し結合部3f,4fに対応する位置には、それらの剪断押出し結合部3f,4fと下側の基板2とが重ならないように逃げ孔2hが設けられており、他の点では第5実施例と同一の構成とされている。
【0058】
この第6実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によっても、先の第5実施例と同様の作用効果が得られる。
【0059】
図20(a),(b)は、上記第6実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この変形例は図示のように、上側の基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの突出方向が各々外向き(上向き)に変わり、また内側段差調整板4が、上記複数のシリンダー孔4aの各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード4gを具えて、それらの環状ビード4gと上下の基板2の環状ビード2bとが互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように二枚の基板2の間に配置されている点のみ先の第6実施例と相違し、他の点では第6実施例と同一の構成とされている。
【0060】
この変形例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、先の第6実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0061】
図21(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第7実施例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この第7実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1は、各シリンダーボアを囲む冷却水ジャケットの位置でデッキ面が大きく開放されているオープンデッキ型シリンダーブロックに適合するように構成された三層積層型のもので、先の第5実施例と同様、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部と、内側段差調整板4の、基板2の互いに隣り合うシリンダー孔2a間の位置にそれぞれ対応する二箇所ずつ合計六箇所の位置とにそれぞれ、固定手段としての剪断押出し結合部3f,4fが設けられるが、第5実施例と異なり、図示のように、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部を下側の基板2の対応する位置に固定し、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fは、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔間位置に対応する位置を上側の基板2の対応する位置すなわちシリンダー孔間位置に固定する。
【0062】
そして、下側の基板2の、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fに対応する位置には、その剪断押出し結合部4fと下側の基板2とが重ならないように逃げ孔2hが設けられており、他の点では第5実施例と同一の構成とされている。
【0063】
この第7実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によっても、先の第5実施例と同様の作用効果が得られる。
【0064】
図22(a),(b)は、上記第7実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この変形例は図示のように、上側の基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの突出方向が各々外向き(上向き)に変わり、また内側段差調整板4が、上記複数のシリンダー孔4aの各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード4gを具えて、それらの環状ビード4gと上下の基板2の環状ビード2bとが互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように二枚の基板2の間に配置されている点のみ先の第7実施例と相違し、他の点では第7実施例と同一の構成とされている。
【0065】
この変形例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、先の第7実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0066】
図23(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第8実施例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この第8実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1は、各シリンダーボアを囲む冷却水ジャケットの位置でデッキ面が大きく開放されているオープンデッキ型シリンダーブロックに適合するように構成された三層積層型のもので、先の第5実施例と同様、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部と、内側段差調整板4の、基板2の互いに隣り合うシリンダー孔2a間の位置にそれぞれ対応する二箇所ずつ合計六箇所の位置とにそれぞれ、固定手段としての剪断押出し結合部3f,4fが設けられるが、第5実施例と異なり、図示のように、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fは、外側段差調整板3の各舌状突起3gの中央部を上側の基板2の対応する位置に固定し、内側段差調整板4の各剪断押出し結合部4fは、内側段差調整板4の各基板シリンダー孔間位置に対応する位置を下側の基板2の対応する位置すなわちシリンダー孔間位置に固定する。
【0067】
そして、下側の基板2の、外側段差調整板3の各剪断押出し結合部3fに対応する位置には、その剪断押出し結合部3fと下側の基板2とが重ならないように逃げ孔2hが設けられており、他の点では第5実施例と同一の構成とされている。
【0068】
この第8実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によっても、先の第5実施例と同様の作用効果が得られる。
【0069】
図24(a),(b)は、上記第8実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、この変形例は図示のように、上側の基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの突出方向が各々外向き(上向き)に変わり、また内側段差調整板4が、上記複数のシリンダー孔4aの各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード4gを具えて、それらの環状ビード4gと上下の基板2の環状ビード2bとが互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように二枚の基板2の間に配置されている点のみ先の第8実施例と相違し、他の点では第8実施例と同一の構成とされている。
【0070】
この変形例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1によれば、先の第8実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、環状ビードが三重になるので、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0071】
図25(a),(b)は、先の第1実施例における剪断押出し結合部3f,4fに代えて、他の固定手段としてのリベット6を用いて下側の基板2と外側段差調整板3および下側の基板2と内側段差調整板4をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、ここではリベット6と上側の基板2とが当接して締め付けが困難にならないようにするために、上側の基板2に逃げ孔2hが設けられている。このようにしても先の第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0072】
図26(a),(b)は、先の第1実施例の変形例における剪断押出し結合部3f,4fに代えて、他の固定手段としてのリベット6を用いて下側の基板2と外側段差調整板3および下側の基板2と内側段差調整板4をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、ここではリベット6と上側の基板2とが当接して締め付けが困難にならないようにするために、上側の基板2に逃げ孔2hが設けられている。このようにしても先の第1実施例の変形例と同様の作用効果が得られる。
【0073】
図27(a),(b)は、先の第1実施例における剪断押出し結合部3f,4fに代えて、さらに他の固定手段としてのハトメ7を用いて下側の基板2と外側段差調整板3および下側の基板2と内側段差調整板4をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、ここではハトメ7と上側の基板2とが当接して締め付けが困難にならないようにするために、上側の基板2に逃げ孔2hが設けられている。このようにしても先の第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0074】
図28(a),(b)は、先の第1実施例の変形例における剪断押出し結合部3f,4fに代えて、さらに他の固定手段としてのハトメ7を用いて下側の基板2と外側段差調整板3および下側の基板2と内側段差調整板4をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図であり、ここではハトメ7と上側の基板2とが当接して締め付けが困難にならないようにするために、上側の基板2に逃げ孔2hが設けられている。このようにしても先の第1実施例の変形例と同様の作用効果が得られる。
【0075】
図29(a),(b)は、先の第1実施例における剪断押出し結合部3f,4fに代えて、さらに他の固定手段としてのスポット溶接部8を用いて下側の基板2と外側段差調整板3および下側の基板2と内側段差調整板4をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。このようにしても先の第1実施例と同様の作用効果が得られる。
【0076】
図30(a),(b)は、先の第1実施例の変形例における剪断押出し結合部3f,4fに代えて、さらに他の固定手段としてのスポット溶接部8を用いて下側の基板2と外側段差調整板3および下側の基板2と内側段差調整板4をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。このようにしても先の第1実施例の変形例と同様の作用効果が得られる。
【0077】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであることはもちろんである。例えば、上記図25〜図30に示すリベット6、ハトメ7およびスポット溶接部8は、他の実施例や他の変形例にも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
かくしてこの発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットによれば、外側段差調整板と内側段差調整板との板厚の差により上記基板の環状ビードに加わる面圧を高めて、シリンダーボア内の燃焼ガスに対するシール性を向上させることができ、かつ、上記のように板厚の差を用いるので、上記基板の環状ビードに加わる面圧と外周ビードに加わる面圧とのバランスを微調整することができる。
【0079】
しかもこの発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットによれば、外側段差調整板と内側段差調整板とを、互いに突き合せて突き合せ部分に沿ってレーザー溶接で結合することなく、基板側の複数箇所に固定手段によってそれぞれ固定することから、それぞれの段差調整板の高精度の位置決めと比較的長い距離にわたるレーザー溶接とに長時間かかっていた製造時間を短縮し得て、製造費用を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第1実施例の全体を示す平面図である。
【図2】(a),(b)は、上記第1実施例のメタルガスケットの、図1のA−A線およびB−B線にそれぞれ沿う拡大断面図である。
【図3】上記第1実施例のメタルガスケットの外側段差調整板を示す平面図である。
【図4】上記第1実施例のメタルガスケットの内側段差調整板を示す平面図である。
【図5】(a)は、上記第1実施例のメタルガスケットの外側段差調整板と内側段差調整板とを組合せた状態で示す平面図、(b),(c)は、外側段差調整板の各舌状突起の中央部の剪断押出し結合部を示す、(a)のC−C線およびD−D線にそれぞれ沿う断面図、(d),(e)は、内側段差調整板の各基板シリンダー孔側部に対応する位置の剪断押出し結合部を示す、(a)のE−E線およびF−F線にそれぞれ沿う断面図である。
【図6】(a),(b)は、上記第1実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図7】(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第2実施例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図8】(a),(b)は、上記第2実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図9】(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第3実施例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図10】(a),(b)は、上記第3実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図11】(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第4実施例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図12】(a),(b)は、上記第4実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図2(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図13】この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第5実施例の全体を示す平面図である。
【図14】(a),(b)は、上記第5実施例のメタルガスケットの、図13のG−G線およびH−H線にそれぞれ沿う拡大断面図である。
【図15】上記第5実施例のメタルガスケットの外側段差調整板を示す平面図である。
【図16】上記第5実施例のメタルガスケットの内側段差調整板を示す平面図である。
【図17】(a)は、上記第5実施例のメタルガスケットの外側段差調整板と内側段差調整板とを組合せた状態で示す平面図、(b),(c)は、外側段差調整板の各舌状突起の中央部の剪断押出し結合部3fを示す、(a)のI−I線およびJ−J線にそれぞれ沿う断面図、(d),(e)は、内側段差調整板の各基板シリンダー孔側部に対応する位置の剪断押出し結合部を示す、図17(a)のK−K線およびL−L線にそれぞれ沿う断面図である。
【図18】(a),(b)は、上記第5実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図19】(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第6実施例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図20】(a),(b)は、上記第6実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図21】(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第7実施例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図22】(a),(b)は、上記第7実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図23】(a),(b)は、この発明のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケットの第8実施例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図24】(a),(b)は、上記第8実施例のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット1の一変形例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図25】(a),(b)は、先の第1実施例における剪断押出し結合部に代えて、他の固定手段としてのリベットを用いて下側の基板と外側段差調整板および下側の基板と内側段差調整板をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図26】(a),(b)は、先の第1実施例の変形例における剪断押出し結合部に代えて、他の固定手段としてのリベットを用いて下側の基板と外側段差調整板および下側の基板と内側段差調整板をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図27】(a),(b)は、先の第1実施例における剪断押出し結合部に代えて、さらに他の固定手段としてのハトメを用いて下側の基板と外側段差調整板および下側の基板と内側段差調整板をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図28】(a),(b)は、先の第1実施例の変形例における剪断押出し結合部に代えて、さらに他の固定手段としてのハトメを用いて下側の基板と外側段差調整板および下側の基板と内側段差調整板をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図29】(a),(b)は、先の第1実施例における剪断押出し結合部に代えて、さらに他の固定手段としてのスポット溶接部を用いて下側の基板と外側段差調整板および下側の基板と内側段差調整板をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【図30】(a),(b)は、先の第1実施例の変形例における剪断押出し結合部に代えて、さらに他の固定手段としてのスポット溶接部を用いて下側の基板と外側段差調整板および下側の基板と内側段差調整板をそれぞれ結合した例を示す、図14(a),(b)と同様の位置での断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 メタルガスケット
2 基板
2a シリンダー孔
2b 環状ビード
2c 冷却水孔
2d 外周ビード
2e 潤滑油孔
2f ボルト孔
2g グロメット孔
2h 逃げ孔
3 外側段差調整板
3a 舌状突起
3b 凹部
3c 孔
3d グロメット孔
3e 誤組防止突起
3f 剪断押出し結合部
3g 舌状突起
4 内側段差調整板
4a シリンダー孔
4b 凹部
4c 孔
4d 凹部
4e 誤組防止凹部
4f 剪断押出し結合部
4g 環状ビード
4h 凹部
5 グロメット
6 リベット
7 ハトメ
8 スポット溶接部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々金属板からなり、内燃機関のシリンダーヘッドを組み付けられるシリンダーブロックの複数のシリンダーボアにそれぞれ対応して形成された複数のシリンダー孔(2a)と、前記複数のシリンダー孔の各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード(2b)と、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットおよび前記シリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔(2c)と、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビード(2d)とを有する二枚の基板(2)を、前記環状ビード(2b)同士が互いに当該ガスケットの厚さ方向に整列して位置するように重ね合わせて具えるシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット(1)において、
金属板からなり、前記冷却水ジャケットの位置から前記基板(2)の外周縁の位置まで延在する外側段差調整板(3)と、
前記外側段差調整板(3)よりも厚い金属板からなり、前記基板(2)の複数のシリンダー孔(2a)にそれぞれ対応して形成された複数のシリンダー孔(4a)を有して、それらのシリンダー孔(4a)の内周縁の位置から前記冷却水ジャケットの位置まで延在する内側段差調整板(4)と、
を前記二枚の基板(2)の間に介挿して具え、
前記外側段差調整板の、前記基板(2)の互いに隣り合う前記シリンダー孔(2a)間の位置に対応する位置に固定手段(3f)を設けるとともに、前記内側段差調整板の、前記基板(2)の前記各シリンダー孔(2a)に対し前記複数のシリンダー孔の整列方向と直行する方向の側方位置に対応する位置に固定手段(4f)を設け、
前記外側段差調整板と前記内側段差調整板とをそれぞれ前記固定手段(3f,4f)によって前記二枚の基板(2)の何れか一方に固定したことを特徴とする、シリンダーヘッド用積層型メタルガスケット。
【請求項2】
前記外側段差調整板と前記内側段差調整板とをそれぞれ前記固定手段によって前記二枚の基板の何れか一方に固定する代わりに、
前記外側段差調整板(3)を前記固定手段(3f)によって前記二枚の基板のうち何れか一方の基板(2)に固定するとともに、前記内側段差調整板(4)を前記固定手段(4f)によって前記二枚の基板のうち他方の基板(2)に固定したことを特徴とする、請求項1記載のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット。
【請求項3】
前記外側段差調整板の、前記基板の互いに隣り合う前記シリンダー孔間の位置に対応する位置に固定手段を設けるとともに、前記内側段差調整板の、前記基板の前記各シリンダー孔に対し前記複数のシリンダー孔の整列方向と直行する方向の側方位置に対応する位置に固定手段を設ける代わりに、
前記外側段差調整板(3)の、前記基板(2)の前記各シリンダー孔(2a)に対し前記複数のシリンダー孔の整列方向と直行する方向の側方位置に対応する位置に固定手段(3f)を設けるとともに、前記内側段差調整板(4)の、前記基板(2)の互いに隣り合う前記シリンダー孔(2a)間の位置に対応する位置に固定手段(4f)を設けたことを特徴とする、請求項1記載のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット。
【請求項4】
前記外側段差調整板と前記内側段差調整板とをそれぞれ前記固定手段によって前記二枚の基板の何れか一方に固定する代わりに、
前記外側段差調整板を前記固定手段(3f)によって前記二枚の基板のうち何れか一方の基板(2)に固定するとともに、前記内側段差調整板を前記固定手段(4f)によって前記二枚の基板のうち他方の基板(2)に固定したことを特徴とする、請求項3記載のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット。
【請求項5】
前記固定手段は、剪断押出し結合部(3f,4f)、リベット、ハトメおよびスポット溶接部のうちの少なくとも一つである、請求項1から4までの何れか記載のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット。
【請求項6】
前記内側段差調整板(4)は、前記複数のシリンダー孔(4a)の各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード(4g)を具え、それらの環状ビードと前記基板(2)の前記環状ビード(2b)とが互いに当該ガスケットの厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように前記二枚の基板の間に配置されていることを特徴とする、請求項1から5までの何れか記載のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット。
【請求項1】
各々金属板からなり、内燃機関のシリンダーヘッドを組み付けられるシリンダーブロックの複数のシリンダーボアにそれぞれ対応して形成された複数のシリンダー孔(2a)と、前記複数のシリンダー孔の各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード(2b)と、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットおよび前記シリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔(2c)と、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビード(2d)とを有する二枚の基板(2)を、前記環状ビード(2b)同士が互いに当該ガスケットの厚さ方向に整列して位置するように重ね合わせて具えるシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット(1)において、
金属板からなり、前記冷却水ジャケットの位置から前記基板(2)の外周縁の位置まで延在する外側段差調整板(3)と、
前記外側段差調整板(3)よりも厚い金属板からなり、前記基板(2)の複数のシリンダー孔(2a)にそれぞれ対応して形成された複数のシリンダー孔(4a)を有して、それらのシリンダー孔(4a)の内周縁の位置から前記冷却水ジャケットの位置まで延在する内側段差調整板(4)と、
を前記二枚の基板(2)の間に介挿して具え、
前記外側段差調整板の、前記基板(2)の互いに隣り合う前記シリンダー孔(2a)間の位置に対応する位置に固定手段(3f)を設けるとともに、前記内側段差調整板の、前記基板(2)の前記各シリンダー孔(2a)に対し前記複数のシリンダー孔の整列方向と直行する方向の側方位置に対応する位置に固定手段(4f)を設け、
前記外側段差調整板と前記内側段差調整板とをそれぞれ前記固定手段(3f,4f)によって前記二枚の基板(2)の何れか一方に固定したことを特徴とする、シリンダーヘッド用積層型メタルガスケット。
【請求項2】
前記外側段差調整板と前記内側段差調整板とをそれぞれ前記固定手段によって前記二枚の基板の何れか一方に固定する代わりに、
前記外側段差調整板(3)を前記固定手段(3f)によって前記二枚の基板のうち何れか一方の基板(2)に固定するとともに、前記内側段差調整板(4)を前記固定手段(4f)によって前記二枚の基板のうち他方の基板(2)に固定したことを特徴とする、請求項1記載のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット。
【請求項3】
前記外側段差調整板の、前記基板の互いに隣り合う前記シリンダー孔間の位置に対応する位置に固定手段を設けるとともに、前記内側段差調整板の、前記基板の前記各シリンダー孔に対し前記複数のシリンダー孔の整列方向と直行する方向の側方位置に対応する位置に固定手段を設ける代わりに、
前記外側段差調整板(3)の、前記基板(2)の前記各シリンダー孔(2a)に対し前記複数のシリンダー孔の整列方向と直行する方向の側方位置に対応する位置に固定手段(3f)を設けるとともに、前記内側段差調整板(4)の、前記基板(2)の互いに隣り合う前記シリンダー孔(2a)間の位置に対応する位置に固定手段(4f)を設けたことを特徴とする、請求項1記載のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット。
【請求項4】
前記外側段差調整板と前記内側段差調整板とをそれぞれ前記固定手段によって前記二枚の基板の何れか一方に固定する代わりに、
前記外側段差調整板を前記固定手段(3f)によって前記二枚の基板のうち何れか一方の基板(2)に固定するとともに、前記内側段差調整板を前記固定手段(4f)によって前記二枚の基板のうち他方の基板(2)に固定したことを特徴とする、請求項3記載のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット。
【請求項5】
前記固定手段は、剪断押出し結合部(3f,4f)、リベット、ハトメおよびスポット溶接部のうちの少なくとも一つである、請求項1から4までの何れか記載のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット。
【請求項6】
前記内側段差調整板(4)は、前記複数のシリンダー孔(4a)の各々の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード(4g)を具え、それらの環状ビードと前記基板(2)の前記環状ビード(2b)とが互いに当該ガスケットの厚さ方向に整列して位置するとともに互いに逆向きに突出するように前記二枚の基板の間に配置されていることを特徴とする、請求項1から5までの何れか記載のシリンダーヘッド用積層型メタルガスケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2007−64449(P2007−64449A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254024(P2005−254024)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000230423)日本リークレス工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000230423)日本リークレス工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]