説明

シリンダ内径測定装置

【課題】本発明は、二軸シリンダの各シリンダ孔内に設けた各一対の距離測定器を内壁に対して非接触状態で正確に内径を測定することを目的とする。
【解決手段】本発明によるシリンダ内径測定装置は、二軸シリンダ(2)内の台車(5)を車輪(6)を介して走行自在とし、台車(5)に設けた各一対の距離測定器(10)をシリンダ(2)の各シリンダ孔(3,4)内で内面とは非接触状態で長手方向に移動させることにより、正確にシリンダ孔(3,4)の内径を測定することができる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュ式混練押出機のシリンダ内径測定装置に関し、特に、各シリンダ孔内に一対ずつの距離測定器を設け、各距離測定器を各シリンダ孔の内面とは非接触で回転させて測定することにより、容易に内径摩耗量を測定できるようにするための新たな改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粉状あるいは粒状の合成樹脂原料、食品原料などの原材料が、必要に応じてグラスファイバー、酸化鉄等の無機原料等の添加原材料を加えられながら、スクリュ式混練押出機により溶融・混練され、新たな製品として加工され、生産されることが行われている。
このような加工に使用されるスクリュ式混練押出機は、シリンダとそのシリンダ孔に挿入されて回転駆動されるスクリュとにより主要部が構成されている。
このシリンダは軸直角断面が円形のシリンダ孔が形成される長尺筒形状で、スクリュは軸直角断面が円形の外周に主として螺旋溝が形成される長尺棒形状で、それぞれ構成され、スクリュが僅かな所定量の隙間を設けてシリンダのシリンダ孔に挿入されている。
【0003】
このスクリュ式混練押出機は、加工運転中において、原材料が摩耗性あるいは腐食性を有する原料によりシリンダのシリンダ孔が局所的または広範囲に摩耗または腐食すると、スクリュ式混練押出機の溶融・混練性能が低下するとともに加工運転が安定せず、生産される製品の品質が低下することになる。
【0004】
従って、スクリュ式混練押出機は、例えば、定期的にシリンダのシリンダ孔の摩耗または腐食による損耗を確認し、損耗量が許容値を超えた場合あるいは許容範囲以上に不均一な摩耗または腐食が発生した場合、正常なシリンダ又はシリンダブロックに交換する必要がある。
【0005】
二軸および多軸のスクリュ式混練押出機において、シリンダ孔の摩耗を確認するためのシリンダ孔の内径を測定する装置として、特許文献1に示されるものがある。
この公報に示されるシリンダ内径測定装置は、軸直角断面においてシリンダ孔の一部が相互に重なり合う複数個のシリンダ孔の隣接する凸部に沿って軸方向へ摺動するガイド部材を備えた走行台車と、走行台車に備えられそれぞれのシリンダにおいて軸芯の周りに回転しシリンダ孔の内径を測定する非接触式測定手段と、により構成されている。
【0006】
このように構成されたシリンダ内径測定装置によりシリンダシリンダ孔の内径を測定する場合は、先ず、測定されるシリンダと同一構成で正常値に製作された基準治具において、シリンダ孔の隣接する凸部にガイド部材を沿わせた測定状態にシリンダ内径測定装置を設置し、それぞれのシリンダに対応する非接触式測定手段を基準調整(ゼロ点調整)し、初期設定する。
【0007】
次に、スクリュ式混練押出機のスクリュが引抜かれた状態のシリンダにおいて、開口端からシリンダ孔内へ、ガイド部材を凸部に沿わせながらシリンダ内径測定装置を挿入する。次に、走行台車を走行させ、ガイド部材を凸部に沿って摺動させながらシリンダ内を所定距離移動させ、非接触式測定手段を軸芯の周りに回転させてシリンダ孔の内径を測定し、測定データを外部の記録手段(PC)に記録する。
以下、同様にして、シリンダの全長にわたり移動させ、所望の位置において順次シリンダ孔の内径を測定し、測定データを記録手段に記録していた。
【0008】
【特許文献1】特許第3746777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のスクリュ式混練押出機のシリンダ内径測定装置は以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、シリンダ内部は混錬する原料によって不均一に摩耗または腐食するため、各シリンダ孔の合わせ面である凸部も摩耗または腐食することになり、この凸部を距離測定器のガイドとしているため、測定器の芯がずれて正確なシリンダ孔の内径すなわち摩耗または腐食により損傷量の測定が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるシリンダ内径測定装置は、二軸シリンダ内に挿入される長手形状の台車と、前記台車の外面側に設けられ前記二軸シリンダの第1、第2シリンダ孔の内面と接する複数の車輪と、前記台車の一端で長手方向と直交する両側に各々回転自在に設けられた第1、第2回転体と、前記各回転体に互いに背中合わせに対向して設けられた非接触式の一対の距離測定器とを備え、前記第1、第2シリンダ孔内には、各々一対の前記距離測定器が回転自在に配設されている構成であり、また、前記台車の外面側には、前記各シリンダ孔に対応して各三個の長手支持部材が設けられ、前記車輪は前記各長手支持部材の外面に設けられ、前記台車と各長手支持部材は、ゴム又はバネからなる弾性体で連結され、車輪が第1、第2シリンダ孔の内面と密着するようにされている構成であり、また、前記各回転体は、互いに離間する一対の舌片を一体に有し全体形状がコ字型をなし、前記各距離測定器は前記各舌片に設けられている構成であり、また、前記台車の前記一端には、前記台車を移動させるための棒体が接続され、前記棒体は、前記第1、第2回転体の間に位置している構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるシリンダ内径測定装置は、以上のように構成されていたため、次のような効果が得られる。
すなわち、二軸シリンダ内に挿入される長手形状の台車と、前記台車の外面側に設けられ前記二軸シリンダの第1、第2シリンダ孔の内面と接する複数の車輪と、前記台車の一端で長手方向と直交する両側に各々回転自在に設けられた第1、第2回転体と、前記各回転体に互いに背中合わせに対向して設けられた非接触式の一対の距離測定器とを備え、前記第1、第2シリンダ孔内には、各々一対の前記距離測定器が回転自在に配設されているため、シリンダ内に不均一な摩耗が発生している場合でも、一対の距離測定器を支持する回転体の回転軸の軸位置は、シリンダの軸心位置と一致し、非接触状態において正確かつ簡単にシリンダ内径を測定することができる。
また、前記台車の外面側には、前記各シリンダ孔に対応して各三個の長手支持部材が設けられ、前記車輪は前記各長手支持部材の外面に設けられ、前記台車と各長手支持部材は、ゴム又はバネからなる弾性体で連結され、車輪が第1、第2シリンダ孔の内面と密着するようにされていると共に、合計六個の長手支持部材に設けられた合計12個の車輪がシリンダの内面に接しているため、シリンダ内における台車の位置が安定し、測定精度が安定する。
また、前記各回転体は、互いに離間する一対の舌片を一体に有し全体形状がコ字型をなし、前記各距離測定器は前記各舌片に設けられているため、各シリンダ孔内における各距離測定器の回転中心を安定させることができる。
さらに、前記台車の前記一端には、前記台車を移動させるための棒体が接続され、前記棒体は、前記第1、第2回転体の間に位置しているため、台車をシリンダ内で前後進させる場合に、各車輪に均一に力が作用し、円滑な動作を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、各シリンダ内に一対ずつの距離測定器を設け、各距離測定器をシリンダ孔の内面とは非接触で測定することにより、容易に内径摩耗量を測定できるようにしたシリンダ内径測定装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0013】
以下、図面と共に本発明によるスクリュ式混練押出機に用いるシリンダ内径測定装置の好適な実施の形態を、少なくとも、シリンダに2本のシリンダ孔が形成される二軸スクリュ式混練押出機の場合について説明する。
図において、符号1で示されるものはシリンダ内径測定装置であり、このシリンダ内径測定装置1は、図4で示されるように、二軸のシリンダ2の一対の第1、第2シリンダ孔3,4にわたって形成された厚板状の台車5と、この台車5の外面に設けられ複数の車輪6を有する各3個の長手支持部材7と、この台車5の一端5Aでその長手方向Aと直交する両側に各々互いに離間して回転自在に設けられコ字型をなす第1、第2回転体8,9と、この各回転体8,9の各一対の舌片8A,9Aに各々設けられた距離測定器10と、から主として構成されている。
【0014】
前記台車5は長尺の箱状あるいは板状部材であり、前記各長手支持部材7の長手方向の両端部付近において突出させるように前記走行車輪6が設けられ、各車輪6が弾性体11により各シリンダ孔3、4の内面に押しつけられて走行できるように構成されている。
【0015】
各3個の前記長手支持部材7が、図4に示すように、各シリンダ孔3,4の軸直角断面における上下および外側真横の3ケ所において、シリンダ2の軸芯方向へ長手方向を合わせて台車5に平行に配置され、それぞれの前記車輪6を各シリンダ孔3,4に接触させることができるように、それらの前方端部において一端5Aにより、後方端部において他端5Bにより、それぞれ長手支持部材7に取り付けられた前記車輪6が弾性体11により各シリンダ孔3、4に押しつけられるよう可動な状態で連結されて一体化され、走行可能な台車5として構成されている。すなわち、台車5と長手支持部材7は弾性体11で連結されている。
【0016】
前記台車5の前記一端5Aにおいて、各シリンダ孔3,4の軸芯に一致する中心軸上に各々一対の回軸16が設けられ、各回転軸16には各シリンダ孔3,4の軸芯の周りに旋回できるコ字型の回転体8が設けられている。
【0017】
前記各回転体8,9の一対の各舌片8A,9Aには、回転中心を通る回転軸16の直交線上に、2ケの非接触式の距離測定器10が背中合わせに各々配置され保持されている。 尚、各距離測定器10は、それぞれの外周端(先端)間の距離が前記各シリンダ孔3,4より僅かに小さく各シリンダ孔3,4の内面に対して非接触状態で回転できるように配置されている。
各距離測定器10に接続された信号線18の他端は、外部に配置される図示しない測定データ記録装置に接続されている。
尚、前記距離測定器10は、磁気式あるいは誘電式のものが好ましい。
【0018】
前記一端には、前記台車5の前方に伸びる棒体19が前記各回転体8,9間に位置して設けられ、この棒体19を用いて図示しない駆動手段を介して台車5が前後進可能となる。尚、この棒体19は、前記他端5Bに連結して台車5の後方に伸びるように設けられてもよい。
【0019】
次に、動作について述べる。
まず、図5のように、測定しようとするシリンダの正常値に製作された零点調整用治具30の各シリンダ孔3,4内に、シリンダ内径測定装置1を挿入し、その状態で、それぞれの距離測定器10を中心軸の周りに旋回させて基準調整(ゼロ点調整)し、初期設定する。
さらに、それぞれのシリンダ孔3,4を測定する各距離測定器10の測定方向を、例えば、図3におけるB−Fの方向に設定する。以上は測定前の設定動作である。
【0020】
次に、スクリュ式混練押出機のスクリュが引抜かれたシリンダ2において、開口端から各シリンダ孔3,4内へ、シリンダ内径測定装置1を、挿入する。
次に、棒体19を押し引きし、長手支持部材7の各車輪6を介して台車5を各シリンダ孔3,4内の軸芯の長手方向Aの方向へ走行させてシリンダ内径測定装置1を移動させ、各距離測定器10が所定の測定位置に到達した時点で停止させる。
停止後、各シリンダ孔3,4のB−F方向におけるそれぞれ2ケの距離測定器10と対面するシリンダ孔3,4の内面との距離、例えば、図1に示すB方向のαおよびF方向のβを測定する。
測定データは、信号線18を経由して図示しない測定データ記録装置へ送り、必要に応じて演算などの処理を行う。
すなわち、2ケの距離測定器10の基準調整(ゼロ点調整)された初期設定値と2ケの距離測定器10の測定値、例えば前記のαとβとを加算演算することにより、各シリンダ孔3,4の内径が得られる。尚、測定位置としては、図3のB−F,C−G,D−D,A−Eのように、例えば、45°毎の測定を行うことができる。
【0021】
前記シリンダ孔3,4は、スクリュが引抜かれた後、清掃されて残余の原材料が取り除かれるが、固着して残る場合がある。
しかし、距離測定器10が磁気式あるいは誘電式のものであることにより、合成樹脂原料、食品原料などの非金属原材料の固着物は無視され、金属部分の各シリンダ孔3,4が測定対象となり、正確に距離測定器10とシリンダ孔3,4との距離が測定される。
【0022】
前述と同様にして、棒体19にロータリエンコーダ等の長手方向の位置検出センサーを接触させて、この信号及び4ヶの距離測定器10の測定値の信号をパソコンなどに取り込めば指定の長手方向距離毎にデータを自動計測できるため、測定点毎に停止する必要が無くなり、効率的にシリンダの距離測定器10とシリンダ孔3、4との距離が測定できる。
なお、距離測定器10の測定方向については、図3に示すものは一例であり、必要に応じて任意の方向を選択し、測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるシリンダ内径測定装置を示す側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明によるシリンダ内径測定装置における距離測定器の測定方向図である。
【図4】図1における矢視A−A断面図である。
【図5】本発明に用いる零点調整用治具である。
【符号の説明】
【0024】
1 シリンダ内径測定装置
2 シリンダ
3,4 第1、第2シリンダ孔
5 台車
5A 一端
5B 他端
6 車輪
7 長手支持部材
8,9 第1、第2回転体
8A 舌片
10 距離測定器
11 弾性体
18 信号線
19 棒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸シリンダ(2)内に挿入される長手形状の台車(5)と、前記台車(5)の外面側に設けられ前記二軸シリンダ(2)の第1、第2シリンダ孔(3,4)の内面と接する複数の車輪(6)と、前記台車(5)の一端(5A)で長手方向と直交する両側に各々回転自在に設けられた第1、第2回転体(8,9)と、前記各回転体(8,9)に互いに背中合わせに対向して設けられた非接触式の一対の距離測定器(10)と、を備え、
前記第1、第2シリンダ孔(3,4)内には、各々一対の前記距離測定器(10)が回転自在に配設されていることを特徴とするシリンダ内径測定装置。
【請求項2】
前記台車(5)の外面側には、前記各シリンダ孔(3,4)に対応して各三個の長手支持部材(7)が設けられ、前記車輪(6)は前記各長手支持部材(7)の外面に設けられ、前記台車(5)と各長手支持部材(7)は、ゴム又はバネからなる弾性体(11)で連結され、車輪(6)が第1、第2シリンダ孔(3,4)の内面と密着するようにされていることを特徴とする請求項1記載のシリンダ内径測定装置。
【請求項3】
前記各回転体(8,9)は、互いに離間する一対の舌片(8A,9A)を一体に有し全体形状がコ字型をなし、前記各距離測定器(10)は前記各舌片(8A,9A)に設けられていることを特徴とする請求項1記載のシリンダ内径測定装置。
【請求項4】
前記台車(5)の前記一端(5A)には、前記台車を移動させるための棒体(19)が接続され、前記棒体(19)は、前記第1、第2回転体(8,9)の間に位置していることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のシリンダ内径測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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