説明

シルセスキオキサン化合物およびその製造方法並びにレジスト材料

【課題】アダマンタン化合物に由来の基が導入されてなる新規なシスセスキオキサン化合物およびその製造方法を提供すること、低LERであり、従って微細なパターンを高精度に、かつ安定して形成することのできるレジスト材料を提供すること。
【解決手段】シスセスキオキサン化合物であってシスセスキオキサン化合物中のR1は下記化学式(a)で表わされる基を示す。


〔式中、R2は、アルキル基を示す〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シルセスキオキサン化合物およびその製造方法、並びにレジスト材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子などの集積回路素子の製造には、フォトリソグラフィー技術が広く用いられており、このフォトリソグラフィー技術においては、近年の集積回路素子の更なる高集積化の要請があることから、露光光として、従来から用いられていた、例えばKrFエキシマレーザー光およびArFエキシマレーザー光などに代えて、これらのエキシマレーザー光よりも短波長の光である極端紫外線(EUV:Extreme Ultra−Violet)を用いることによって形成すべき回路パターンの微細化に対応することが検討されており、また、露光光として極端紫外線を用いる場合におけるフォトリソグラフィープロセスおよびレジスト材料についての研究開発が行われている。
【0003】
露光光によって形成すべき回路パターンに対応する露光パターンが形成されるレジスト膜においては、微細なパターンを高精度に形成するために薄膜化が必要とされるが、パターン形成されたレジスト膜をエッチングマスクとして行われる基板の加工が一般的にドライエッチングによって行われることから、薄膜化されたエッチングマスクには十分な耐ドライエッチング性が得られないおそれがある、という問題がある。
このような問題を解決するための手法として、レジスト膜を多層構造とする多層レジスト法が注目されている(例えば、非特許文献1〜6参照。)。この多層レジスト法としては、例えばレジスト膜を2層構造とする2層レジスト法においては、基板の表面に形成される最下層が酸素プラズマによるドライエッチングにより加工されることとなるため、最上層を構成するレジスト材料として、酸素プラズマによるドライエッチングに対する耐ドライエッチング性を有する、分子中にケイ素原子を含有する高分子化合物が提案されている(例えば、非特許文献7〜12参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.D.Meador et al.,Proc.SPIE.,5376,1138(2004)
【非特許文献2】H.Sugita et al.,J Appl Polymer Sci.,88,636(2003)
【非特許文献3】Y.Kimura et al.,Proc.SPIE.,3333,347(1998)
【非特許文献4】G.W.Ray et al.,J.Electrochem.Soc.,9,2152(1982)
【非特許文献5】S.P.Lyman et al.,J.Vac.Sci.Technol.,19,1325(1981)
【非特許文献6】J.M.Moran et al.,J.Vac.Sci.Technol.,16,1620(1979)
【非特許文献7】W.S.Han et al.,J.Photopoly.Sci.Technol,16,499(2003)
【非特許文献8】A.Zampini et al.,J.Photopoly.Sci.Technol,17,511(2004)
【非特許文献9】J.Hatakeyama et al.,J.Photopoly.Sci.Technol.,17,519(2004)
【非特許文献10】H.Ito et al.,J.Photopoly.Sci.Technol,18,355(2005)
【非特許文献11】T.Hosono et al.,J.Photopoly.Sci.Technol,18,365(2005)
【非特許文献12】K.Ober et al.,Proc.SPIE.,5039,1204(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情を背景とし、極端紫外線を露光光とするフォトリソグラフィー用のレジスト材料としては低分子量の化合物が有用であることに基づいて、発明者らが研究を重ね、分子中にケイ素原子を含有する低分子量の化合物であるかご型シスセスキオキサンに対して、特異な特性を有することから種々の用途への利用が試みられているアダマンタン化合物に由来の基を導入することが可能であることを見出した結果、なされたものである。
【0006】
本発明の目的は、アダマンタン化合物に由来の基が導入されてなる新規なシスセスキオキサン化合物およびその製造方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、低LERであり、従って微細なパターンを高精度に、かつ安定して形成することのできるレジスト材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシスセスキオキサン化合物は、下記化学式(1)で表されることを特徴とする。
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、R1 は、下記化学式(a)で表わされる基を示す。〕
【0010】
【化2】

【0011】
〔式中、R2 は、アルキル基を示す。〕
【0012】
本発明のシスセスキオキサン化合物の製造方法は、下記化学式(2)で表わされる化合物と、下記化学式(3)で表わされる化合物とを反応させることにより、前記の化学式(1)で表わされるシルセスキオキサン化合物を得ることを特徴とする。
【0013】
【化3】

【0014】
〔式中、R3 は、下記化学式(b)で表わされる基を示す。〕
【0015】
【化4】


【化5】

【0016】
〔式中、R2 はアルキル基を示し、Xはハロゲン原子または1価の有機基を示す。〕
【0017】
本発明のシスセスキオキサン化合物の製造方法においては、前記化学式(2)で表わされる化合物が、下記化学式(4)で表わされる化合物と、4−(tert−ブトキシ)スチレンとを反応することによって生成される化合物を脱保護反応させることによって得られることが好ましい。
【0018】
【化6】

【0019】
〔式中、R4 は、下記化学式(c)で表わされる基を示す。〕
【0020】
【化7】

【0021】
本発明のレジスト材料は、前記のシルセスキオキサン化合物を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のシルセスキオキサン化合物は、分子中にケイ素原子を含有する低分子量のものであると共に、アダマンタン化合物に由来の基を有するため、容易に成膜することが可能であり、また、極端紫外線に対して感度を有すると共に、当該シルセスキオキサン化合物から得られる薄膜が、低LER(Line Edge Roughness)、すなわち膜面荒れの程度が少なく、よって微細なパターンを高精度に、かつ安定して形成することができ、その上酸素プラズマによるドライエッチングに対する耐ドライエッチング性を有するものであることから、極端紫外線を露光光とするフォトリソグラフィーに用いる多層構造を有するレジスト膜における最上層を形成するためのレジスト材料として有用である。
【0023】
本発明のシクロデキストリン誘導体の製造方法によれば、本発明のシスセスキオキサン化合物を容易に得ることができる。
【0024】
本発明のレジスト材料によれば、本発明のシスセスキオキサン化合物を含有するものであることから、低LER(Line Edge Roughness)、すなわち膜面荒れの程度が少なく、従って微細なパターンを高精度に、かつ安定して形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1で得られた原料化合物(1−1)の 1H−NMRペクトルである。
【図2】実施例1で得られた原料化合物(1−1)の13C−NMRスペクトルである。
【図3】実施例1で得られた中間生成物の1H−NMRペクトルである。
【図4】実施例1で得られた原料化合物(1)IRペクトルである。
【図5】実施例1で得られた原料化合物(1)の1H−NMRペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
本発明のシルセスキオキサン化合物は、上記化学式(1)で表わされる化合物であり、アダマンタン化合物に由来の基を有することを特徴とするものである。
【0028】
本発明のシルセスキオキサン化合物に係る化学式(1)において、R1 は、上記化学式(a)で表わされるアダマンタン化合物に由来の基である。
【0029】
前記化学式(a)において、R2 は、アルキル基である。
化学式(a)におけるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
化学式(a)においては、R2 は、メチル基であることが好ましい。
【0030】
このような構成の本発明のシルセスキオキサン化合物は、上記化学式(2)で表わされるシルセスキオキサン化合物(以下、「原料化合物(1)」ともいう。)と、上記化学式(3)で表わされるアダマンタン化合物(以下、「原料化合物(2)」ともいう。)とを反応させることにより得ることができる。
ここに、原料化合物(1)に係る化学式(2)において、R3 は、上記化学式(b)で表わされる基であり、原料化合物(2)に係る化学式(3)において、R2 は、アルキル基であり、Xは、ハロゲン原子または1価の有機基である。この化学式(3)に係るXとしては、例えば臭素原子、塩素原子などのハロゲン原子、p−トルエンスルホン酸エステルに由来の基などの1価の有機基が挙げられる。
【0031】
原料化合物(1)は、例えば上記化学式(4)で表わされるシルセスキオキサン化合物(以下、「原料化合物(1−1)」ともいう。)と、tert−ブチル基で保護されたヒドロキシ基を有する、4−tert−ブトキシスチレン(以下、「原料化合物(1−2)」ともいう。)とを反応させることによって生成される化合物(以下、「中間生成物」ともいう。)を脱保護反応させることによって得ることができる。
ここに、原料化合物(1−1)に係る化学式(4)において、R4 は、上記化学式(c)で表わされる基である。
【0032】
原料化合物(1−1)と原料化合物(1−2)とを反応させることによって中間生成物を得る反応工程において、原料化合物(1−1)と、原料化合物(1−2)との使用量は、原料化合物(1−1)中の化学式(c)で表わされる基1molに対して原料化合物(1−2)が1.1〜5.0molであることが好ましい。
この原料化合物(1−1)と原料化合物(1−2)との反応は、触媒の存在下、適宜の溶媒中において行うことができる。
ここに、触媒としては、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(0)錯体などを用いることができる。また、触媒の使用量は、原料化合物(1−1)に対して0.1〜100mol%であることが好ましい。
溶媒としては、トルエンなどを用いることができる。
反応条件としては、例えば反応温度が0〜160℃であり、反応時間が0.5〜72時間である。
【0033】
原料化合物(1−1)と原料化合物(1−2)とを反応させることによって得られた中間生成物を脱保護反応する反応工程においては、中間生成物に強酸性溶液を作用させ、その後、溶媒を留去することにより、目的生成物である原料化合物(1)を得ることができる。
【0034】
原料化合物(1)と原料化合物(2)とを反応させることによって本発明のシルセスキオキサン化合物を得る反応系において、原料化合物(1)と、原料化合物(2)との使用量は、原料化合物(1)中の化学式(b)で表わされる基1molに対して原料化合物(2)が1.1〜5.0molであることが好ましい。
この原料化合物(1)と原料化合物(2)との反応は、触媒の存在下、適宜の溶媒中において行うことができる。
ここに、触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)などを用いることができる。また、触媒の使用量は、原料化合物(1−1)に対して0.1〜2.0mol%であることが好ましい。
溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などを用いることができる。
反応条件としては、例えば反応温度が0〜160℃であり、反応時間が1〜72時間である。
【0035】
本発明のシルセスキオキサン化合物の合成プロセスの一例を、下記反応式(1)に示す。
【0036】
【化8】

【0037】
〔式中、R1 は上記化学式(a)で表わされる基を示し、R2 はアルキル基を示し、R3 は上記化学式(b)で表わされる基を示し、R4 は上記化学式(c)で表わされる基を示し、R5 は下記化学式(d)で表わされる基を示し、Xはハロゲン原子または1価の有機基を示す。〕
【0038】
【化9】

【0039】
以上のような本発明のシルセスキオキサン化合物は、分子中にケイ素原子を含有する低分子量のものであると共に、アダマンタン化合物に由来の基を有するため、容易に成膜することが可能であり、また、極端紫外線に対して感度を有すると共に、当該シルセスキオキサン化合物から得られる薄膜が、低LERであって微細なパターンを高精度に、かつ安定して形成することができ、その上酸素プラズマによるドライエッチングに対する耐ドライエッチング性を有するものであることから、極端紫外線を露光光とするフォトリソグラフィーに用いる多層構造を有するレジスト膜における最上層を形成するためのレジスト材料として有用である。
【0040】
本発明のレジスト材料は、本発明のシルセスキオキサン化合物を含有することを特徴とするものである。
具体的には、例えば本発明のシルセスキオキサン化合物と共に、極端紫外線などの放射線が照射されることにより酸を発生する感放射線性酸発生剤と、当該感放射線性発生剤から生じる酸のレジスト膜(レジスト被膜)中における拡散現象を制御するための酸拡散制御剤と、有機溶剤と、必要に応じて例えば界面活性剤および増感剤などの任意成分を含有するものである。
ここに、本発明のレジスト材料は、当該レジスト材料を構成する本発明のシルセスキオキサン化合物が1種単独または2種以上が組み合わされてなるものであってもよい。
【0041】
本発明のレジスト材料において、本発明のシルセスキオキサン化合物の含有割合は、1〜50質量%であることが好ましい。
本発明のシルセスキオキサン化合物の含有割合が過小である場合には、成膜しないおそれがある。一方、本発明のシルセスキオキサン化合物の含有割合が過大である場合には、均一な薄膜が得られないおそれがある。
【0042】
前記感放射線性発生剤は、電子線および極端紫外線等の放射線などの光を照射したときに、本発明のレジスト材料中において酸を発生する物質であり、本発明のレジスト材料に光を照射した場合には、当該本発明のレジスト材料を構成する本発明のシルセスキオキサン化合物体における、酸解離性を有するアダマンタン化合物に由来の基(化学式(a)で表わされる基)が解離することとなる。
感放射線性発生剤としては、酸発生効率および耐熱性の観点から、例えばオニウム塩、ジアゾメタン化合物、スルホンイミド化合物およびその他の非イオン性酸発生剤などが好適に用いられる。これらの化合物は、単独で用いることもでき、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0043】
感放射線性発生剤の具体例としては、例えば下記一般式(B−1)で表わされるスルホニルオキシイミド化合物が挙げられる。
【0044】
【化10】

【0045】
〔上記式中、R6 は、アルキレン基、アリーレン基、アルコキシレン基、シクロアルキレン基、不飽和結合を有する環状骨格を含むシクロアルキレン基等の2価の基を示し、R7 はハロゲン原子、シクロアルキル基で置換されていてもよいアルキル基、アルキル基、エステル結合を有する基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子またはアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示す。〕
【0046】
本発明において、スルホニルオキシイミド化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0047】
スルホニルオキシイミド化合物の具体例としては、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−トルエンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{(5−メチル−5−カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)スルホニルオキシ}スクシンイミドなどを挙げることができる。
【0048】
前記他の非イオン性酸発生剤としては、スルホニルジアゾメタン化合物が好ましい。スルホニルジアゾメタン化合物としては、例えば、下記一般式(B−2)で表される化合物を挙げることができる。
【0049】
【化11】

【0050】
〔上記式中、各R8 は、相互に独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基、ハロゲン置換アリール基等の1価の基を示す。〕
【0051】
スルホニルジアゾメタン化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキサンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4―ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−t−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−クロロベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル・4−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキサンスルホニル・4−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキサンスルホニル・1,1−ジメチルエタンスルホニルジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエタンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1−メチルエタンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(3,3−ジメチル−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ドデカン−8―スルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−7−スルホニル)ジアゾメタンなどを挙げることができる。
【0052】
前記オニウム塩としては、フッ素原子で置換されてもよいベンゼンスルホン酸を発生するものを使用できる。
【0053】
前記オニウム塩化合物の具体例としては、下記一般式(B−3)および一般式(B−4)で表される化合物を挙げることができる。
【0054】
【化12】

【0055】
〔上記式(B−3)中、R9 およびR10は、相互に独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基であるか、あるいは、R9 およびR10が相互に結合して式中のヨウ素原子とともに環状構造を形成していてもよい。上記式(B−4)中、R11、R12およびR13は、相互に独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基であるか、あるいは、R11、R12およびR13のいずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子とともに環状構造を形成しており、残りの1つが置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基であってもよい。また、一般式(B−3)および上記一般式(B−4)中、X’- はR14−SO3またはR15−COOHを示し、R14およびR15はそれぞれ独立にフッ素原子、水酸基、アルコキシル基およびカルボキシル基で置換されてもよいアルキル基または芳香族誘導体に由来の基を示す。〕
【0056】
一般式(B−3)および上記一般式(B−4)に係る好ましいR14−SO3としては、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、10−カンファースルホネート、2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、2,4−ジフルオロベンゼンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネート、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)エタンスルホネートを挙げることができる。
【0057】
感放射線性発生剤の含有割合は、本発明のシルセスキオキサン化合物100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましい。
【0058】
前記酸拡散制御剤は、本発明のレジスト材料を構成する感放射線性発生剤から生じる酸のレジスト膜(レジスト被膜)中における拡散現象を制御することによって非露光領域において化学反応が生じることを抑制する作用を有するものである。
酸拡散制御剤としては、含窒素有機化合物または感光性塩基性化合物などが好適に用いられる。これらの化合物は、単独で用いることもでき、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0059】
前記含窒素有機化合物としては、例えば、下記一般式(C−1)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(i)」という。)、下記一般式(C−2)で表される同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(ii)」という。)、窒素原子を3個以上有するポリアミノ化合物や重合体(以下、これらをまとめて「含窒素化合物(iii)」という。)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物などを挙げることができる。
【0060】
【化13】

【0061】
〔上記式中、複数のR16は、相互に独立に、水素原子、置換されていてもよい、直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいアラルキル基を示す。〕
【0062】
【化14】

【0063】
〔上記式中、複数のR17は、相互に独立に、水素原子、置換されていてもよい、直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいアラルキル基を示し、L’は単結合若しくは炭素数1〜6のアルキレン基、エーテル基、カルボニル基またはアルコキシカルボニル基を示す。〕
【0064】
含窒素化合物(i)としては、ジ(シクロ)アルキルアミン類、トリ(シクロ)アルキルアミン類、トリアルコールアミン等の置換アルキルアミン類、アニリン類等の芳香族アミン類を挙げることができる。
【0065】
含窒素化合物(iii)としては、例えば、トリアジン類、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、2−ジメチルアミノエチルアクリルアミドの重合体等を挙げることができる。
【0066】
前記アミド基含有化合物としては、例えば、下記一般式(C−3)で表される化合物を挙げることができる。
【0067】
【化15】

【0068】
〔上記式中、複数のR18は、相互に独立に、水素原子、置換されていてもよい、直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいアラルキル基を示し、複数のR18は互いに結合し複素環式構造を形成してもよい。R19は置換基を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいアラルキル基を示す。〕
【0069】
前記ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等を挙げることができる。
【0070】
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、イミダゾール類、ピリジン類、ピペラジン類、ピペリジン類、トリアジン類、モルホリン類のほか、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等を好適例として挙げることができる。
【0071】
酸拡散制御剤の含有割合は、本発明のシルセスキオキサン化合物100質量部に対して15質量部以下であることが好ましい。
【0072】
前記有機溶剤としては、本発明のレジスト材料を構成する他の構成要素を溶解可能なものが用いられる。
【0073】
有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸i−プロピル等の乳酸エステル類;ぎ酸n−アミル、ぎ酸i−アミル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸i−アミル、プロピオン酸i−プロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ブチロラクン等のラクトン類;などが挙げられる。
【0074】
有機溶剤の含有割合は、レジスト材料における全固形分濃度が5〜70質量%となる量であることが好ましい。
【0075】
このような構成の本発明のレジスト材料は、例えば本発明のシルセスキオキサン化合物と共に、感放射線性酸発生剤、酸拡散制御剤、および必要に応じて任意成分を、適宜の溶媒に溶解し、好ましくは得られた溶液を孔径0.2μmのフィルターによってろ過することによって製造することができる。
また、このようにして得られた本発明のレジスト材料は、例えば、エッチング選択性の異なる複数種類(例えば2種類)のレジスト材料を用い、各レジスト材料を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布などの適宜の塗布方法によって、シリコンウエハ等の基板上に順次に塗布することによって多層構造のレジスト膜(レジスト被膜)を形成し、そのレジスト層における最上層(レジスト最上層)に対して極端紫外線などの露光によって所期のレジストパターンを形成し、適宜の現像液によって現像処理し、このようにしてパターン形成された最上層をエッチングマスクとして、当該最上層の下方に位置するレジスト層に対して酸素プラズマによるドライエッチング処理を行う、フォトリソグラフィープロセスにおいて、レジスト膜における最上層の構成材料として好適に用いられる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0077】
〔実施例1〕
(原料化合物(1−1)の合成)
容量25mLの二口ナスフラスコを窒素置換し、ジメチルクロロシラン13.2mL(120mmol)と、ヘキサン15mLとを仕込み、その後、氷冷下において、メタノール15mLにオクタアニオン11.4g(10mmol)を溶解した溶液をゆっくりと添加した後、室温で3時間撹拌することによって反応させた。
反応が完了した後、反応溶液をヘキサンで希釈し、水で3回洗浄し、有機相を乾燥剤として硫酸マグネシウムを用いて乾燥処理した。乾燥剤をろ別し、減圧留去することによって白色固体を得た。得られた白色固体をメタノールで洗浄し、乾燥することにより、反応生成物4.60gを収率45%で得た。
得られた反応生成物は、1H−NMR分析および13C−NMR分析の結果から、化学式(4)で表される化合物(以下、「原料シルセスキオキサン化合物(A)」ともいう。)であることが確認された。
また、原料シルセスキオキサン化合物(A)について、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって分子量および分子量分布を確認したところ、数平均分子量(Mn)は896であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.02であった。なお、理論分子量は1017である。
【0078】
原料シルセスキオキサン化合物(A)の1H−NMR分析および13C−NMR分析の結果を下記に示すと共に、1H−NMRスペクトルを図1および13C−NMRスペクトルを図2に示す。
【0079】
1H NMR(600MHz,CDCl3 ,TMS )δ(ppm):
0.25−0.26(d,6H,Ha ),
4.73−4.74(m,1H,Hb
【0080】
13C NMR(150MHz,CDCl3 ,TMS )δ(ppm):
0.26(Ca
【0081】
(中間生成物の合成)
ナスフラスコに原料シルセスキオキサン化合物(A)0.51g(0.5mmol)を加え、窒素ガスに置換し、4−tert−ブトキシスチレン(tBS)0.35g(5mmol)、溶媒としてトルエン3mLを加えた。次に、触媒として1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(0)錯体[Pt(dvs)]キシレン溶液0.3mL(2mmol)加えた後、100℃の条件で30分間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで希釈し、活性炭を加えた。活性炭をろ別し、濃縮し茶褐色の粘性液体を得た。
得られた反応生成物は、1H−NMR分析の結果から、上記反応式(1)において中間生成物として示されている化合物(以下、「中間生成物(A)」ともいう。)であることが確認された。
【0082】
中間生成物(A)の1H−NMRスペクトルを図3に示す。
【0083】
(原料化合物(1)の合成)
ナスフラスコに中間生成物(A)1.21g(0.5mmol)を仕込み、溶媒としての1,4−ジオキサン6mLと共に3N塩酸水溶液4mLを添加し、温度85℃の条件で12時間かけて反応させた。
反応が完了した後、水とメタノールの混合溶媒(水とメタノールとの質量比(水:メタノール)=8:2)を用いて沈殿生成を行った。得られた粘性液体を少量のテトラヒドロフランに溶解させてn−ヘキサン中に滴下することにより、褐色固体よりなる反応生成物0.58gを収率59%で得た。
得られた反応生成物は、IR分析および1H−NMR分析の結果から、化学式(2)で表される化合物(以下、「原料化合物(A)」ともいう。)であることが確認され、また、1H−NMR分析の結果からは、脱保護率が99%以上であることが確認された。
また、原料化合物(A)について、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって分子量および分子量分布を確認したところ、数平均分子量(Mn)は2134であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.11であった。なお、理論分子量は1978.3である。
【0084】
原料化合物(A)のIR分析および1H−NMR分析の結果を下記に示すと共に、IRスペクトルを図4および1H−NMRスペクトルを図5に示す。
【0085】
○IR(film,cm-1):
3348(ν C−H),
2957(ν C−H(aromtic)),
1512(ν C=C(aromatic)),
1253(ν Si−C),
1084(ν Si−O)
【0086】
1H NMR(600MHz,CDCl3 ,TMS )δ(ppm):
0.07−0.12(d,36H,a ),
0.89−1.35(b,16H,b),
1.29−1.35(b,16H,c),
6.65−6.95(b,32H,d and e),
9.00−9.13(b,8H,OH)
【0087】
(特定アダマンチル基を有するシルセスキオキサン化合物の合成)
容量100mLのナスフラスコに原料化合物(A)0.20g(0.1mmol)を仕込み、相関移動触媒としてのテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)0.03g(0.10mmol)と、塩基としての炭酸カリウム0.14g(1.0mmol)と共に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)1mLを添加した後、室温で3時間撹拌することによって反応(塩形成反応)させた。反応が完了して塩が形成された後、化学式(3)においてXがブロモ基であってR2 がメチル基の化合物0.11g(0.4mmol)を添加して温度60℃の条件で63時間撹拌することによって反応させた。
反応が完了した後、反応溶液を酢酸エチルで希釈し、濃度3質量%のシュウ酸水溶液3回、水道水で3回洗浄し、有機相を乾燥剤として硫酸マグネシウムを用いて乾燥処理した。乾燥剤をろ別した後、濃縮することにより、反応生成物0.28gを収率89%で得た。
得られた反応生成物は、 1H−NMR分析の結果から、化学式(1)において、化学式(a)のR2 がメチル基である化合物(以下、「シスセスキオキサン化合物(A)」ともいう。)であることが確認された。
また、シルセスキオキサン化合物(A)について、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって分子量および分子量分布を確認したところ、数平均分子量(Mn)は3600であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表されることを特徴とするシルセスキオキサン化合物。
【化1】


〔式中、R1 は、下記化学式(a)で表わされる基を示す。〕
【化2】

〔式中、R2 は、アルキル基を示す。〕
【請求項2】
下記化学式(2)で表わされる化合物と、下記化学式(3)で表わされる化合物とを反応させることにより、請求項1に記載のシルセスキオキサン化合物を得ることを特徴とするシルセスキオキサン化合物の製造方法。
【化3】


〔式中、R3 は、下記化学式(b)で表わされる基を示す。〕
【化4】


【化5】


〔式中、R2 はアルキル基を示し、Xはハロゲン原子または1価の有機基を示す。〕
【請求項3】
前記化学式(2)で表わされる化合物が、下記化学式(4)で表わされる化合物と、4−(tert−ブトキシ)スチレンとを反応することによって生成される化合物を脱保護反応させることによって得られることを特徴とする請求項2に記載のシルセスキオキサン化合物の製造方法。
【化6】


〔式中、R4 は、下記化学式(c)で表わされる基を示す。〕
【化7】

【請求項4】
請求項1に記載のシルセスキオキサン化合物を含有することを特徴とするレジスト材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−28743(P2013−28743A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166736(P2011−166736)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】