説明

シロアリのための易運搬性粒状物、及びこれを用いたシロアリ駆除方法

【課題】シロアリのための易運搬性粒状物、及びこれを用いたシロアリ駆除方法を提供すること。
【解決手段】粒径が0.25〜0.80mmであることを特徴とするシロアリのための易運搬性粒状物、及びこれを用いたシロアリ駆除方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロアリにとって運搬し易い粒状物、及びこれを用いたシロアリ駆除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シロアリは木材害虫の一つとして、最も強害なものとして知られており、特に木造建築の住宅や文化財を著しく侵襲することから、その防除は非常に重要である。
【0003】
シロアリは、その生態から社会性昆虫に属し、(1)共同して子を養育する、(2)生殖階級と非生殖階級が存在する、(3)親世代の成虫と子世代の成虫が共存する等の特徴を有している。
【0004】
そして、その非生殖階級に属す職蟻は蟻道を構築し、餌の採取運搬等に利用している。
【0005】
このようなシロアリの特徴に着目し、シロアリの巣全体のシロアリ群を殺滅防除する方法がすでに提案されている(特許文献1)。
【0006】
この方法は、所謂、シロアリ防除剤による二次的殺虫作用効果というものであり、職蟻が毒餌を巣に持ち運ぶことにより、シロアリ群全体を殺滅防除する方法である。
【0007】
この方法は非常に有効且つ効率的なシロアリ防除方法であるが、職蟻が巣に持ち帰る毒餌あるいは毒餌用の防除組成物の採取運搬量の程度により、その効果は大きく影響をうける。
【0008】
シロアリがある種のフェニルピラゾール化合物を巣に持ち帰った場合に、巣にいるシロアリを二次的に殺虫する方法が知られている(特許文献1)。
【0009】
また、シロアリの加害から防ぐために、保護対象の構造物の外周に不連続にシロアリ防除剤を散布処理する方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−19053号公報
【特許文献2】特表2001−504823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、シロアリのための易運搬性粒状物、及びこれを用いたシロアリ駆除方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、シロアリの生態、特に蟻道の構築、餌類の採取運搬行動に着目し、シロアリにとって、どのような粒状物が運搬し易いかを検討した結果、ある一定の粒径をもった粒状物が最も運搬し易いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、粒径が0.25〜0.80mmであることを特徴とするシロアリのための易運搬性粒状物である。
【0014】
前記易運搬性粒状物は、シロアリ防除活性物質を含有することが好ましい。
【0015】
前記易運搬性粒状物は、粒径が0.30〜0.60mmであることが好ましい。
前記易運搬性粒状物において、シロアリ防除活性物質は、フィプロニル、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、アセタミプリド又はジノテフランであることが好ましい。
【0016】
また本発明は、建築物床下の土壌面もしくはコンクリート面もしくは基礎立ち上がり周囲部、及び建築物外周部のシロアリの侵入する場所に、請求項2又は4に記載の易運搬性粒状物を設置ないしは散布するシロアリ駆除方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、粒径が0.25〜0.80mmであることを特徴とするシロアリのための易運搬性粒状物である。本発明で特定されるように、粒径が0.25〜0.80mmである粒状物が、シロアリの該粒状物の運搬行動を最も容易にすることができる。
【0018】
したがって、本発明により、蟻道の構築を容易にすると共にシロアリの移動を容易にし、餌等の採取運搬を容易にすることができる。そして、この粒状物に例えば、シロアリ防除活性物質又は毒餌を含有させることによってシロアリが、このシロアリ防除活性物質含有の粒状物を運搬帰巣し、巣全体のシロアリ群を殺滅することができる。
【0019】
したがって、本発明の易運搬性粒状物は、シロアリ防除活性物質、誘引物質、毒餌等を含有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例2における試験材料と空材料を餌とした試験包材を示した図である。
【図2】実施例2において使用した試験材料と餌を配置したH型のガラス容器を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の最良の実施形態について説明する。
【0022】
本発明の易運搬性粒状物の粒径は0.25〜0.80mmであり、好ましくは0.30〜0.60mmである。
【0023】
本発明に用いられることのできるシロアリ防除活性物質の具体例(一般名記載)としては、フィプロニル、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、アセタミプリド、ジノテフラン、インドキサカルブ、フェノブカルブ、クロラントラニリプロール、メタフルミゾン、クロルフルアズロン、ジフルベンズロン、テフルベンズロン、ブプロフェジン、フルフェノクスロン、ルフェヌロン、エトキサゾール、クロマフェノジド、テブフェノジド、メトキシフェノジド、アザジラクチン、ピリプロキシフェン、メトプレン、シロジン等を挙げることができ、好ましくは、フィプロニル、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、アセタミプリド、ジノテフランを挙げることができ、さらに好ましくはフィプロニルを挙げることができる。
【0024】
本発明の易運搬性粒状物は既知の製法により製造することができる。一般には、被覆法及び練り込み法により造粒することによって調製することができる。
【0025】
被覆法により製造する場合、例えば、粒核に水と界面活性剤の混合溶液を加えて混合撹拌し、更には、必要に応じ、該混合の際に、バインダー、固体希釈剤、増粘剤、消泡剤等を含む混合物を粉砕混合調整した原末を加えて被覆してもよく、混合撹拌後、乾燥し、所望の易運搬性粒状物を得ることができる。
【0026】
粒核としては、例えば、サンド、石灰岩、大理石等の炭酸カルシウム成分、シリカサンド、軽石、クレー粒、造粒した無機物質粒等を挙げることができる。
【0027】
界面活性剤の特定的な例として下記を挙げることができるが、界面活性剤はそれらのみに制限されるものではない。アニオン性界面活性剤として、例えば、メチルオレオイルタウリン酸ナトリウム、硫酸アルキル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンベンジル(もしくはスチリル)フェニルエーテル硫酸又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー硫酸のナトリウム、カルシウム又はアンモニウム塩;スルホン酸アルキル、ジアルキルスルホスクシネート、アルキルベンゼンスルホン酸、モノ−もしくはジ−アルキルナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド−縮合物、リグニンスルホン酸、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸又はポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホスクシネートのナトリウム、カルシウム、アンモニウム又はアルカノールアミン塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンモノ−もしくはジ−アルキルフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンベンジル(もしくはスチリル)フェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーホスフェートのナトリウムもしくはカルシウム塩等を挙げることができる。好ましくは、メチルオレオイルタウリン酸ナトリウムを挙げることができる。また、非イオン性界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル−ホルムアルデヒド−縮合物、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジル(又はスチリル)フェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーベンジル(もしくはスチリル)フェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンカスターオイルエーテル等を挙げることができる。好ましくは、ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド−縮合物を挙げることができる。
【0028】
バインダーとしては、例えば、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、デキストリン等のようなデンプン型天然物質;アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ゼラチン、カゼイン等のような天然物質;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩等のようなセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール−ビニルアルキルエーテルコポリマー;ポリアクリルアミド;アクリル酸、メタクリル酸又はそれらのエステルもしくは塩のポリマー又はコポリマー;ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド;アクリル酸エステル、塩化ビニル、酢酸ビニル又はスチレンなどのポリマー又はコポリマーのエマルジョン;エチレンと酢酸ビニルとのコポリマーのエマルジョン;酢酸ビニルとアクリル酸エステルのコポリマーのエマルジョン等を挙げることができる。
【0029】
さらに、固体希釈剤として、例えば、クレー、軽石微粉、焼成ケイソウ土、カオリン、タルク、酸性白土等の鉱物質を挙げることができる。
【0030】
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、アラビアゴム、トラガントガム、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。好ましくは、キサンタンガムを挙げることができる。
消泡剤としては、ジメチルポリシロキサン・エマルジョンを例示することができる。
【0031】
シロアリ防除活性物質を含有させる場合には、調製時に、有効量のシロアリ防除活性物質を付加することにより、所望のシロアリ防除活性物質含有の易運搬性粒状物を得ることができる。
【0032】
練り込み法により製造する場合には、例えば、炭酸カルシウム粉末、界面活性剤及びバインダーを、必要に応じて、鉱物質微粉、又は植物由来の微粉等と共に混合し、水を加えてよく混練し、押し出し造粒し、乾燥した後、整粒することにより練り込み粒剤を得ることができる。
【0033】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中、特に断りのない限り、数値の単位は重量部を表わす。
【実施例】
【0034】
(製剤例1)
フィプロニル 9.0
アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物 2.0
ジメチルポリシロキサン エマルジョン 3.3
メチルオレオイルタウリン酸ナトリウム 1.0
キサンタンガム 0.75
水 83.95
【0035】
上記の組成物20gに、水100gを加えて希釈液を調製し、それを粒径0.25〜0.80mmの軽石5.88kgとよく混合し、フィプロニル含有の易運搬性粒状物を得る。
【0036】
(実施例1)
〔材料〕
シロアリが運ぶのに適度な粒径を選択するため、粒径0.1〜0.3mm、0.3〜0.6mm、0.25〜0.8mm、及び0.1〜0.3mmと0.6〜1.0mmの混合の4種の軽石を用いた選択試験を行った。
4cm四方の再生紙容器の凹部4区画に粒子各0.4g(計1.6g)を入れ、こぼれないようにトップシールを両面テープで接着し試験材料とした。
〔方法〕
イエシロアリを飼育している円筒形の50L容飼育槽の表面に試験材料を任意に並べて配置し、1週間後の試験材料の状態を目視で確認した(n=2)。
〔結果〕
この試験の結果を下表1に示す。
【0037】
【表1】

−判定−
++++:4区画で運び出し
+++:3区画で運び出し
++:2区画で運び出し
+:1区画で運び出し
−:運び出しなし

粒径0.1〜0.3mmでは、2連とも粒が運び出された様子は観察されず、4区画全てに粒子は残った。
粒径0.3〜0.6mmでは、2連の4区画全てで全ての粒子が運び出された。
粒径0.25〜0.8mmでは、1連が4区画中3区、残り1連は4区画中2区で粒子が運び出され、残った粒子はわずかだった。
粒径0.1〜0.3/0.6〜1.0mm混合は、1連が4区画中1区、残り1連は4区画中2区で粒子が運び出されたが、残った粒子の方が多かった。
【0038】
(実施例2)
(供試薬剤)
前記製剤例1に示したと同じ組成物を用いて、所定濃度の薬剤を調製した。
【0039】
【表2】

〔方法〕
2cm四方の再生紙容器の凹部に粒子薬剤0.4gを入れ、こぼれないようにトップシールを両面テープで接着し試験材料とした。同様に、空材料を「餌」として使用した(図1参照)。H型のガラス容器に海砂(関東化学)を入れ、25%含水率に調整後、一方の縦管に試験材料、もう一方の縦管に「餌」を配置した(図2参照)。
イエシロアリの職蟻200頭、兵蟻20頭を「餌」の縦管から放虫し、3週間後の死虫率を観察した。(n=3)
〔結果〕
この試験の結果を下表3に示す。
【0040】
【表3】

※死虫率の( )内は、3週間を待たずに100%死亡に至った日数
フィプロニルの粒剤はシロアリに対し高い殺蟻効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のシロアリのための易運搬性粒状物は、蟻道の構築を容易にし、その結果シロアリの移動を容易にし、餌等の採取運搬を容易にすることができるという効果を基にして、シロアリの行動特性に合致させた極めて有利なシロアリ群の殺滅効果を的確に達成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径が0.25〜0.80mmであることを特徴とするシロアリのための易運搬性粒状物。
【請求項2】
シロアリ防除活性物質を含有する請求項1に記載の易運搬性粒状物。
【請求項3】
粒径が0.30〜0.60mmである請求項1又は2に記載の易運搬性粒状物。
【請求項4】
シロアリ防除活性物質がフィプロニル、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、アセタミプリド又はジノテフランである請求項2又は3に記載の易運搬性粒状物。
【請求項5】
建築物床下の土壌面もしくはコンクリート面もしくは基礎立ち上がり周囲部、及び建築物外周部のシロアリの侵入する場所に、請求項2又は4に記載の易運搬性粒状物を設置ないしは散布するシロアリ駆除方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−77054(P2012−77054A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226253(P2010−226253)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000232564)バイエルクロップサイエンス株式会社 (23)
【出願人】(591089431)株式会社サニックス (29)
【Fターム(参考)】