説明

シロアリの卵認識フェロモンの構成成分としてβ−グルコシダーゼを用いた擬似卵およびそれを用いたシロアリ駆除

【課題】従来のものより運搬活性が高い害虫の擬似卵、特にシロアリの擬似卵を提供すること、さらに効率の良い駆除・防除方法および生物学研究ツール等を提供する。
【解決手段】害虫、特にシロアリの卵を模した基材に卵認識フェロモンの構成成分としてβ−グルコシダーゼ、その塩、その生物学的フラグメントまたはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドを含有せしめた擬似卵、それを用いる害虫の駆除・防除方法および生物学研究ツール等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫、特にシロアリの駆除・防除のための新規擬似卵、ならびにそれを用いた害虫、特にシロアリ駆除・防除方法および生物学研究ツール等に関する。詳細には、本発明は、シロアリの卵認識フェロモンの構成成分としてβ−グルコシダーゼあるいはその関連ペプチド等を用いたシロアリの擬似卵、それを用いるシロアリの駆除・防除方法および生物学研究ツール等に関する。
【背景技術】
【0002】
害虫による被害は世界中で深刻な問題となっており、これまで様々な駆除方法が開発されてきた。害虫のなかでもシロアリは木造家屋に対して甚大な損害を与えるため、その駆除剤および駆除方法に関してとりわけ熱心に研究・開発がなされている。
【0003】
シロアリの駆除方法としては有機リン剤、カーバメート剤、ピレスロイド剤などの溶液型薬剤を侵入箇所に注入して殺虫する方法、または臭化メチルなどで燻煙を行い殺虫する方法がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
薬剤散布型処理法に代わるものとして、遅効性の殺虫有効成分を餌に混入してシロアリに摂食させ、その駆除を行うベイト法がある(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
従来の駆除技術は基本的には加害された木材の外側から大量に薬剤を投入して殺虫するというものであり、シックハウス症候群などの健康被害や環境汚染につながっている。また、シロアリのコロニーの一部でも残存すると、別の箇所に被害を拡大してしまうという問題がある。最も重大な問題は、駆除に要する労働コストがかかりすぎる点である。頻繁に実施されているのは臭化メチルを用いた燻蒸法であるが、臭化メチルはオゾン層破壊の原因物質であり、近年使用を規制しようとする動きが強まっている。
【0006】
シロアリと同様に社会生活を営むアリの駆除法としては毒物にアリの嗜好物を混入して餌として与え、巣に持ち帰らせて全集団を捕殺する方法が有効である。しかしシロアリは営巣している木材自体を摂食するため、毒餌剤を用いて巣の外部から巣の内部に薬剤を運搬させるベイト法は必ずしも効果的ではない。特にヤマトシロアリ属シロアリではベイト法によって巣を根絶することは難しい(非特許文献2参照)。
【0007】
ベイト法よりもさらに効率よく活性成分を害虫に摂取させる方法として、害虫の基本的社会行動である卵運搬本能を利用した「擬似卵運搬による害虫駆除法」が開発された(特許文献1)。シロアリの卵認識フェロモンの主成分はリゾチームという抗菌タンパク質であり、リゾチーム単体でも卵認識フェロモン活性を有することが明らかになっている(非特許文献3参照)。また、シロアリ卵認識フェロモンの補助物質としてセルラーゼ(EC3.2.1.4)、すなわちエンド−1,4−β−グルカナーゼを添加することにより、擬似卵の運搬活性を高める効果があることが知られている(特許文献2、非特許文献3参照)。
【0008】
これまでにも擬似卵の運搬活性を安定化させる補助物質としてリゾチームにセルラーゼ(EC3.2.1.4)を添加する方法はあったが、セルラーゼによる運搬活性の向上は顕著なものではなく(特許文献2、非特許文献3)、本物のシロアリ卵の抽出物に匹敵する、あるいはそれを上回る卵運搬活性は得られていない。
【特許文献1】特開平2000−342149号公報
【特許文献2】特願2007−035030
【非特許文献1】「シロアリと防除対策」、社団法人日本しろあり対策協会、2000年、p.219
【非特許文献2】「モニタリングステーションを用いた日本産地下シロアリの活性評価とベイト法による防除」、生存圏における昆虫生態のモニタリング技術の新展開、2006年、p.48
【非特許文献3】Matsuura, K., Tamura, T. Kobayashi, N., Yashiro, T. Tatsumi, S.: The antibacterial protein lysozyme identified as the termite egg recognition pheromone. PLoS ONE 2(8): e813. doi:10.1371/journal.pone.0000813
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のものより運搬活性が高い害虫の擬似卵、特にシロアリの擬似卵を提供すること、さらに効率の良い駆除・防除方法および生物学研究ツール等を提供することが本発明の課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記事情に鑑みて、擬似卵の運搬活性をさらに向上させ、安定化するため、シロアリの卵認識フェロモンの構成成分としてリゾチーム以外の物質も卵認識に関与している可能性を検討してきた。シロアリが自分で生産できる可能性のあるタンパク質を網羅的に調査し、種々のタンパク質標品について卵運搬活性試験を行ってきた。そしてシロアリの消化酵素として知られるβ−グルコシダーゼ(EC3.2.1.21)を擬似卵に含有させることにより、擬似卵の運搬活性を大幅に高めることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0011】
したがって、本発明は、
(1)シロアリの卵を模した基材に卵認識フェロモンの構成成分としてβ−グルコシダーゼ、その塩、その生物学的フラグメントまたはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドを含有せしめた擬似卵;
(2)(1)記載の擬似卵にリゾチーム、その塩、その生物学的フラグメントまたはリゾチーム関連ペプチドを基材に含有せしめた擬似卵;
(3)(1)または(2)記載の擬似卵に害虫の卵から抽出した成分を基材に含有せしめた擬似卵;
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の擬似卵にセルラーゼ、その塩、その生物学的フラグメントまたはセルラーゼ関連ペプチドを基材に含有せしめた擬似卵;
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の擬似卵にグリセロールを基材に含有せしめた擬似卵;
(6)(1)ないし(5)のいずれかに記載の擬似卵に殺虫活性成分、孵化阻害物質、生殖阻害物質、発育阻害活性成分、または昆虫病原菌からなる群より選択される1またはそれ以上の成分を含有せしめた擬似卵;
(7)(6)記載の擬似卵をシロアリに与え、卵運搬行動を利用して巣内に運搬させることを特長とする、シロアリの駆除方法;
(8)(1)ないし(6)のいずれかに記載の擬似卵を必須として含む生物学研究ツール
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、昆虫、特にシロアリの卵認識フェロモンの成分としてβ−グルコシダーゼを添加することにより、擬似卵の運搬活性を大幅に高めることに成功した。本発明の擬似卵の運搬活性は本物のシロアリ卵の抽出物よりも高かった(48時間後のデータ、実施例参照)。本発明によれば、害虫、特にシロアリの卵運搬本能を利用して殺虫活性成分を含有せしめた擬似卵を巣内に運搬させることにより、害虫を効果的に駆除・防除することができる。また、本発明の擬似卵は簡単に昆虫の卵運搬行動を誘発し、観察することができるため、昆虫の行動やフェロモンについて学習・研究するための生物学研究ツールとしても適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
シロアリなどの卵を運搬する性質のある昆虫は、卵を巣内に運搬して山積みにし、卵の表面を舐めるなどして世話をする、あるいは個体間で栄養交換を行う性質をもつ。この性質を利用して害虫の駆除、防除を行うことができる。例えば、シロアリは、本来の卵に似る大きさと形状をもち、表面に卵認識フェロモンを含有する擬似卵を卵として認識して巣内にある自らの卵塊中に運搬する。そこでシロアリは擬似卵表面をなめる等の世話行動を行い、個体間で栄養交換を行う。したがって、この擬似卵に活性物質、例えば、殺虫活性成分、孵化阻害物質、生殖阻害物質、発育阻害活性成分などの活性成分を含有せしめて卵塊中に運搬させることにより、効率的にコロニーの生殖中枢を破壊することが可能である。
【0014】
上述のごとく、本発明者らは、擬似卵の運搬活性をさらに向上させ、安定化するため、シロアリの卵認識フェロモンの構成成分としてリゾチーム以外の物質も卵認識に関与している可能性を検討し、シロアリの消化酵素として知られるβ−グルコシダーゼ(EC3.2.1.21)、その生物学的フラグメントあるいはその関連ペプチドを添加することにより、擬似卵の運搬活性を大幅に高めることに成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明において、シロアリの消化酵素としてしか知られていなかったβ−グルコシダーゼ、その生物学的フラグメントあるいはその関連ペプチドが卵認識フェロモンとして初めて用いられ、好結果が得られたのである。
【0015】
それゆえ、本発明は、第1の態様において、シロアリの卵を模した基材に卵認識フェロモンの構成成分としてβ−グルコシダーゼ、その塩、その生物学的フラグメントまたはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドを含有せしめた擬似卵を提供する。
【0016】
本発明の擬似卵を運搬し、本発明の方法により駆除することのできる害虫は、卵運搬本能を有するものであって、β−グルコシダーゼ、その塩、その生物学的フラグメントまたはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドを卵認識フェロモンとするものであれば、いずれの害虫であってもよい。本発明の擬似卵および方法が好ましく適用される害虫はシロアリである。本発明により駆除されるシロアリはいずれの種類のシロアリであってもよく、日本のみならず世界中のシロアリが対象となりうる。本発明により駆除される典型的なシロアリとしてはヤマトシロアリ属、イエシロアリ属などのシロアリが挙げられるが、これらに限定されない。なお、本明細書において、害虫の駆除という場合には防除も包含するものとする。本明細書において、害虫とはヒトや家畜、農産物、財産などにとって有害な作用をもたらす昆虫をいう。その典型例はシロアリである。
【0017】
本発明の卵認識フェロモンはβ−グルコシダーゼ、その生物学的フラグメントまたは関連ペプチドである。β−グルコシダーゼは微生物、植物、動物に広く分布する。本発明に用いるβ−グルコシダーゼはいずれの種に由来するものであってもよく、例えば、アーモンド、ソテツなどの植物、シロアリ、食材性ゴキブリ、カタツムリなどの動物、そして麹菌、酵母、腸球菌、バチルス属菌などの微生物がその起源として例示されるがこれらに限らない。本発明に用いるβ−グルコシダーゼは精製されていなくてもよく、精製されていてもよい。さらに本発明に用いるβ−グルコシダーゼは遺伝子組み換え法により製造されるものであってもよい。遺伝子組み換え法による蛋白、ポリペプチドあるいはペプチドの製造は当業者によく知られている。一般的には、所望蛋白の遺伝子をベクターに連結し、大腸菌や酵母などの適当な宿主細胞に導入して、これを増殖せしめることにより所望蛋白を得ることができる。ベクターや宿主細胞の種類、ベクター導入条件、宿主細胞の培養条件、所望蛋白の分離・精製方法などについては当業者が公知の材料および方法から適宜選択することができる。
【0018】
本発明に使用するβ−グルコシダーゼは塩の形態であってもよい。β−グルコシダーゼの塩は、有機酸との塩、無機酸との塩、有機塩基との塩、無機塩基との塩など、塩を形成することのできるあらゆる物質との塩であってよい。また例えば、β−グルコシダーゼを構成するアスパラギン酸またはグルタミン酸のβ−またはγ−カルボキシル基とナトリウム、カリウムなどの金属とが塩を形成してもよい。また例えば、β−グルコシダーゼを構成する塩基性アミノ酸の側鎖において塩が形成されていてもよい。本発明においては、β−グルコシダーゼの生物学的フラグメントまたはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドが塩の形態であってもよい。
【0019】
さらに本発明において、β−グルコシダーゼの生物学的フラグメントを卵認識フェロモンとして使用してもよい。β−グルコシダーゼの生物学的フラグメントは、β−グルコシダーゼの部分アミノ酸配列を有するポリペプチドまたはペプチドであって、β−グルコシダーゼと同様の卵認識活性を有するものをいう。かかるフラグメントは短鎖であるため、遺伝子組み換え法による大量生産に好適である。
【0020】
さらに本発明において、β−グルコシダーゼ関連ペプチドを卵認識フェロモンとして使用してもよい。β−グルコシダーゼ関連ペプチドは、β−グルコシダーゼと同様の卵認識活性を有する蛋白、ポリペプチドまたはペプチドをいい、β−グルコシダーゼおよびβ−グルコシダーゼの生物学的フラグメントとは異なるものをいう。β−グルコシダーゼ関連ペプチドは天然由来のものであってもよく、合成品であってもよい。β−グルコシダーゼ関連ペプチドは、例えば部位特異的突然変異法などの手法により天然のβ−グルコシダーゼとは異なるアミノ酸配列を有するものであってもよい。例えば、シロアリがさらに好むようなアミノ酸配列を有するβ−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼの生物学的フラグメントあるいはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドを作成して本発明に使用してもよい。また例えば、特定の種類のシロアリに特異性が高いアミノ酸配列を有するβ−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼの生物学的フラグメントあるいはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドを作成して本発明に使用してもよい。
【0021】
β−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼの生物学的フラグメントあるいはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドの基材への含有量は、使用するβ−グルコシダーゼの種類、性質、量など、害虫の種類、活性物質の種類や量、所望の効果の種類や程度などの諸因子に応じて決定されうる。
【0022】
本発明の擬似卵は、形状、サイズおよび性質が、駆除しようとする害虫の卵の形状、サイズおよび性質に類似したものでなくてはならない。本発明に使用する擬似卵の形態およびサイズは害虫の実際の卵の形態およびサイズを模して作成される。シロアリの場合には擬似卵の形態は長卵形または球形とすることができる。長卵形のシロアリの擬似卵の場合には、その短径を駆除しようとするシロアリの卵の短径と同程度あるいはそれよりも少し大きめにすることが好ましい。例えば、短径約0.25〜約0.45ミリメートルの短径を有するシロアリの卵の長卵形擬似卵の短径は、約0.25〜約0.6ミリメートルであってもよく、好ましくは約0.4〜約0.55ミリメートル、さらに好ましくは約0.45ミリメートルであってもよい。また、球形のシロアリの擬似卵の場合には、その直径を駆除しようとするシロアリの卵の短径と同程度あるいはそれよりも少し大きめにすることが好ましい。例えば、短径約0.25〜約0.45ミリメートルの短径を有するシロアリの卵の球形擬似卵の直径は、約0.25〜約0.6ミリメートルであってもよく、好ましくは約0.4〜約0.6ミリメートル、さらに好ましくは約0.45〜約0.55ミリメートルであってもよい。形成の容易さの点からは球形の擬似卵が好ましい。
【0023】
本発明の擬似卵は、上記のような形状およびサイズ、さらには重さや硬さなどの物理的性質のみならず、化学的性質、特に卵認識フェロモンも害虫の本来の卵と同じであるか類似している必要がある。すなわち、擬似卵の基材にβ−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼの生物学的フラグメントあるいはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドを含有させた場合に、基材表面にこれらの物質が現れていることが必要である。
【0024】
本発明の擬似卵の基材としては、害虫の本来の卵の形状および性質に類似した擬似卵を作成できるものであればいずれの材料であってもよい。本発明の擬似卵も作成に好ましい基材材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂、あるいは尿素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタンなどの熱硬化性樹脂、シリカゲル、ゼオライトなどの多孔質材料、セラミックス、ガラスなどが挙げられる。
【0025】
β−グルコシダーゼ、その塩、その生物学的フラグメントまたはβ−グルコシダーゼ関連ペプチド、ならびに活性成分を基材に含有させて本発明の擬似卵とする。基材へのこれらの物質の含有方法としては種々のものが当業者に公知である。基材の製造時にこれらの物質を混入させてもよく、基材を作成してからこれらの物質を基材に含有させてもよい。例えば、基材製造時にこれらの物質を混合あるいは練り込んでもよく、出来上がった基材にこれらの物質をまぶす、浸す、塗布する、あるいは噴霧してもよい。また、固体支持体への蛋白、ポリペプチドあるいはペプチドの固定化方法が公知であるので、これらの方法を適用してもよい。かかる固定化方法には、例えば、吸着法、共有結合法、イオン結合法、包括法などがある。
【0026】
本発明の擬似卵の基材へのβ−グルコシダーゼ、その塩、その生物学的フラグメントまたはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドの適用量は、それらの種類(由来生物)、物理化学的性質など、害虫の種類、活性物質の種類や量、所望の効果の種類や程度などの諸因子に応じて、当業者が容易に決定することができる(例えば、本願実施例参照)。
【0027】
β−グルコシダーゼ、その塩、その生物学的フラグメントまたはβ−グルコシダーゼ関連ペプチド、ならびに活性成分を基材に含有させる形式の好ましい具体例としては、表面コート型、基材添加型、カプセル溶解型などが挙げられる。表面コート型の例は、基材表面に活性成分をコートし、その上にβ−グルコシダーゼ、その塩、その生物学的フラグメントまたはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドをコートするものである。基材添加型の例は、活性成分を混合した基材表面にβ−グルコシダーゼ、その塩、その生物学的フラグメントまたはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドをコートするものである。カプセル溶解型の例は、膜状の基材をカプセル状とし、その内部に活性成分を封入し、基材表面にβ−グルコシダーゼ、その塩、その生物学的フラグメントまたはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドをコートするものである。
【0028】
本発明の擬似卵および駆除方法に使用することのできる活性物質は、害虫の駆除または防除を達成しうるものであればよい。例えば、活性物質は、害虫の行動を攪乱し、コロニーを破壊に至らしめるものであってもよい。害虫の駆除や防除に適した活性物質としては、殺虫活性成分、孵化阻害物質、生殖阻害物質または発育阻害活性成分などが挙げられる。本発明の擬似卵および方法に使用することのできる活性物質の種類および量は、活性物質の種類や害虫の種類、ならびに所望活性(害虫に与えるべき損傷)の種類や程度などの諸因子に応じて選択することができる。通常は、活性物質の種類および量は、所望の害虫に対して十分に所望の効果を発揮しうるように選択されるが、害虫の擬似卵運搬率を損なわないように、そして本発明の擬似卵および駆除方法を使用するヒトおよび周囲の家畜や益虫に悪影響を及ぼさないように選択することも考慮される。
【0029】
本発明の擬似卵および駆除方法に使用する活性成分は1種であっても、2種以上であってもよい。例えば、ピレスロイド化合物、有機リン化合物、カーバメイト化合物、N−アリールジアゾール化合物、ヒドラゾン化合物、スルホンアミド化合物、天然殺虫成分などの殺虫活性成分を用いることができる。このほか、キチン合成阻害剤、幼若ホルモン様活性化合物、脱皮ホルモン様活性化合物などの昆虫成長制御剤を活性成分として用いることができる。本発明に使用しうる活性成分は上記化合物に限定されないことはいうまでもない。
【0030】
本発明の擬似卵において、活性成分が遅効性であることが好ましい。上述のように、シロアリなどの害虫は、本来の卵に似る大きさと形状をもち、表面に卵認識フェロモンを含有する擬似卵を卵として認識し、巣内にある自らの卵塊中に運搬する。そして害虫は擬似卵表面をなめる等の世話行動を通じて活性成分を摂取する。そしてコロニーの一部の個体が活性成分を摂取すると、口移しおよび肛門食による高頻度の栄養交換を通じて活性成分がコロニー全体に行き渡る。したがって、本発明に使用する活性成分は、擬似卵の運搬時や害虫に摂取された直後には効果を発揮しないか、あるいは擬似卵運搬や栄養交換などの行動に影響しない程度の効果しか発揮せず、擬似卵が巣内に運搬されて栄養交換が多くの個体間で行われてから効果を発揮するものであることが好ましい。このような遅効性の活性成分を用いることにより、ターゲットのコロニー中の多くの個体を効率的に駆除することができ、活性成分の使用量も少なくてすむ。したがって、他の生態系への影響も少なくてすむ。本発明の擬似卵に使用可能な遅効性活性成分としては、ヒドラメチルノンなどの遅効性殺虫成分のほか、遅効性孵化阻害成分、遅効性生殖阻害成分、遅効性生育阻害成分などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の擬似卵において、基材が除放性材料でできているものも好ましい。基材が除放性材料でできていることによって、巣内に運搬されてから活性物質が徐々に放出され、害虫に取り込まれるような擬似卵が好ましい。かかる擬似卵としては、基材が害虫の唾液により分解される材料からできているものが挙げられる。好ましくは、基材内部に活性成分を含有させておき(混入、混合あるいは充填などにより)、擬似卵が巣内に運搬されてから害虫の唾液により基材が分解し、内部の活性成分が放出されるようにする。特に、上記の基材添加型、カプセル溶解型などの場合において、害虫の唾液により分解されうる基材を用いることが好ましい。害虫の唾液で分解される基材の材料は、害虫の唾液中の消化酵素の種類に応じて選択することができる。例えば、害虫の唾液にセルラーゼが含まれている場合には、セルロース性材料からできた基材を使用することができる。
【0032】
本発明の擬似卵の特に好ましい形態は、上記のカプセル溶解型のものである。具体的には、β−グルコシダーゼ、その塩、β−グルコシダーゼの生物学的フラグメントあるいはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドを含有させた膜状基材を実際の卵に似せた形状に成形し(すなわち、カプセル状として)、該カプセル内部に活性成分を含有させることにより、本発明の擬似卵を作成することができる。このようなカプセルの成形方法は当業者に公知である。膜の材料としては、酸化膜、セスロース膜などが例示される。膜状基材が除放性であるものが好ましく、例えば害虫の唾液によって分解されうるセルロース膜などを用いることが好ましい。このようなカプセル封入タイプの擬似卵は、野外の大型のコロニーの駆除にも好適である。
【0033】
このような除放性材料でできた基材を含む擬似卵は、活性成分が遅効性である場合においても有効であるが、活性物質が遅効性でない場合において特に有効である。
【0034】
本発明の擬似卵の基材に、β−グルコシダーゼ、その塩、β−グルコシダーゼの生物学的フラグメントあるいはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドに加えて、他の卵認識フェロモンを1種またはそれ以上含有させてもよい。他の卵認識フェロモンの種類や量は、対照とする害虫の種類に応じて適宜選択することができる。例えば害虫がシロアリの場合には、リゾチーム、その塩、リゾチームの生物学的フラグメントあるいはリゾチーム関連ペプチドを本発明の擬似卵の基材に含有させてもよい。リゾチーム、その塩、リゾチームの生物学的フラグメントあるいはリゾチーム関連ペプチドはいずれの生物に由来するものであってもよく、例えば、卵白リゾチーム、その塩、その生物学的フラグメントあるいはその関連ペプチドであってもよい。なお、本発明の擬似卵において、β−グルコシダーゼ、その塩、β−グルコシダーゼの生物学的フラグメントあるいはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドに加えて用いる卵認識フェロモンは必ずしも高純度品を使用する必要はない。これらの卵認識フェロモンの基材への含有量は、使用するβ−グルコシダーゼの種類、性質、量など、害虫の種類、活性物質の種類や量、所望の効果の種類や程度などの諸因子に応じて決定されうる。
【0035】
リゾチームの塩は、有機酸との塩、無機酸との塩、有機塩基との塩、無機塩基との塩など、塩を形成することのできるあらゆる物質との塩であってよい。また例えば、リゾチームを構成するアスパラギン酸またはグルタミン酸のβ−またはγ−カルボキシル基とナトリウム、カリウムなどの金属とが塩を形成してもよい。また例えば、リゾチームを構成する塩基性アミノ酸の側鎖において塩が形成されていてもよい。本発明においては、リゾチームの生物学的フラグメントまたはリゾチーム関連ペプチドが塩の形態であってもよい。リゾチームの生物学的フラグメントは、リゾチームの部分アミノ酸配列を有するポリペプチドまたはペプチドであって、リゾチームと同様の卵認識活性を有するものをいう。リゾチーム関連ペプチドは、リゾチームと同様の卵認識活性を有する蛋白、ポリペプチドまたはペプチドをいい、リゾチームおよびリゾチームの生物学的フラグメントとは異なるものをいう。リゾチーム関連ペプチドは天然由来のものであってもよく、合成品であってもよい。リゾチーム関連ペプチドは、例えば部位特異的突然変異法などの手法により天然のリゾチームとは異なるアミノ酸配列を有するものであってもよい。
【0036】
また例えば、本発明の擬似卵の基材に、ターゲットとする害虫の卵から抽出した成分を含有させることも好ましい。そうすることによって、より高い卵運搬効果を得ることができる。卵からの粗抽出物を基材に含有させてもよく、抽出物を精製したものを基材に含有させてもよい。これらの粗抽出物あるいはその精製物の基材への含有量は、使用するベータ−グルコシダーゼ、その塩、β−グルコシダーゼの生物学的フラグメントあるいはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドの種類、性質、量など、害虫の種類、所望の効果の種類や程度などの諸因子に応じて決定されうる。卵からの有効成分の抽出方法および精製方法は当該分野において公知のものを用いることができる。
【0037】
本発明の擬似卵におけるβ−グルコシダーゼ、その塩、その生物学的フラグメントまたはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドの卵認識フェロモンとしての活性を維持あるいは安定化し、基材表面に保持しておくために、基材にグリセロールを含有させてもよい。また、同じ目的で、セルラーゼ、その塩、その生物学的フラグメントまたはセルラーゼ関連ペプチドを基材に含有せしめてもよい。本発明に用いるセルラーゼ、その塩、その生物学的フラグメントまたはセルラーゼ関連ペプチドはいずれの生物に由来するものであってもよく、合成品であってもよい。
【0038】
セルラーゼの塩は、有機酸との塩、無機酸との塩、有機塩基との塩、無機塩基との塩など、塩を形成することのできるあらゆる物質との塩であってよい。また例えば、セルラーゼを構成するアスパラギン酸またはグルタミン酸のβ−またはγ−カルボキシル基とナトリウム、カリウムなどの金属とが塩を形成してもよい。また例えば、セルラーゼを構成する塩基性アミノ酸の側鎖において塩が形成されていてもよい。本発明においては、セルラーゼの生物学的フラグメントまたはセルラーゼ関連ペプチドが塩の形態であってもよい。セルラーゼの生物学的フラグメントは、セルラーゼの部分アミノ酸配列を有するポリペプチドまたはペプチドであって、セルラーゼと同様の活性および作用を有するものをいう。セルラーゼ関連ペプチドは、セルラーゼと同様の活性および作用を有する蛋白、ポリペプチドまたはペプチドをいい、セルラーゼおよびセルラーゼの生物学的フラグメントとは異なるものをいう。セルラーゼ関連ペプチドは天然由来のものであってもよく、合成品であってもよい。セルラーゼ関連ペプチドは、例えば部位特異的突然変異法などの手法により天然のセルラーゼとは異なるアミノ酸配列を有するものであってもよい。
【0039】
グリセロール、セルラーゼは必ずしも高純度品を使用する必要はない。グリセロール、セルラーゼの基材への含有量は、使用するβ−グルコシダーゼの種類、性質、量など、害虫の種類、活性物質の種類や量、所望の効果の種類や程度などの諸因子に応じて決定されうる。
【0040】
本発明は、もう1つの態様において、本発明の擬似卵を害虫に与えることを特長とする害虫の駆除方法を提供する。本発明の方法により駆除あるいは防除される害虫は、卵運搬本能を有するものであって、β−グルコシダーゼ、その塩、その生物学的フラグメントまたはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドを卵認識フェロモンとするものであれば、いずれの害虫であってもよい。本発明の擬似卵をシロアリに適用して、卵運搬および卵保護行動を誘発し、巣内の卵塊中に運搬させることができる。単に擬似卵を巣内の育室に運搬させるだけでなく、表面を舐める等の世話行動を誘発することができる。この擬似卵に殺虫活性成分、発育阻害成分などの活性化合物を含有せしめることにより、害虫をきわめて効率的に駆除することができる。
【0041】
本発明の駆除方法が好ましく適用される害虫はシロアリである。シロアリを駆除する場合には、本発明の擬似卵を蟻道または巣材の一部に置くことができる。ドリルで蟻道に穴を開け、そこに本発明の擬似卵を注入することができる。また、本発明の擬似卵をセロファンなどの保護膜で包み、野外での耐久性を維持するようにしてもよい。この場合、保護膜に木材抽出液、腐朽木材抽出液などの摂食促進物質を添加してもよい。本発明の害虫駆除方法にモニタリングステーションを用いることも有効である。
【0042】
本発明の擬似卵は簡単に昆虫の卵運搬行動を誘発し、観察することができるため、昆虫の行動やフェロモンについて学習・研究するための生物学研究ツールとしても適している。したがって、本発明は、さらにもう1つの態様において、本発明の擬似卵を必須として含む生物学研究ツールを提供する。本発明のツールは、本発明の擬似卵そのものであってもよく、これに実験に必要な器具類を組み合わせたものであってもよく、例えば実験キットであってもよい。本発明のツールを用いて、昆虫の行動やフェロモンについて研究することができ、あるいは昆虫の卵運搬行動やグルーミング行動などの社会行動についても研究することができる。
【0043】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的かつ詳細に説明するが、実施例はあくまでも例示説明であり、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0044】
実施例1:擬似卵の調製およびβ−グルコシダーゼの卵認識活性の確認
シロアリ卵抽出物、β−グルコシダーゼ、卵白リゾチーム、セルラーゼ、卵白リゾチームとセルラーゼの混合物、卵白リゾチームとβ−グルコシダーゼの混合物、卵白リゾチームとβ−グルコシダーゼおよびセルラーゼの混合物、および対照として50%グリセリン水溶液の卵認識活性を、ヤマトシロアリワーカー(職蟻)を用いて調べた。
各試験標品を以下のようにして調製した。
エッペンドルフチューブ中のヤマトシロアリの卵400mgに800μLの超純水を添加し、ホモジナイズし、5分間超音波処理し、15000rpmで30分の遠心分離を行った。上清を凍結乾燥し、凍結乾燥粉末5.0mgを100μLの30%グリセリン水溶液に溶解させた(シロアリ卵抽出物)。アーモンド由来のβ−グルコシダーゼ(Product#:G0395−5KU,Lot#:047K4037,SIGMA−ALDRICH)1.0mgを10μLの50%グリセリン水溶液に溶解させた(β−グルコシダーゼ)。ニワトリ卵白リゾチーム(Product#:L7651−10G,Lot#:056K16901,SIGMA−ALDRICH)を透析膜SnakeSkin(7000MWCO,Product#:68700,PIERCE)を用いて脱塩し、脱塩したニワトリ卵白リゾチーム2.0mgを10μLの50%グリセリン水溶液に溶解させた(卵白リゾチーム)。Trichoderma viridae由来のセルラーゼ(Product#:C1794−5KU,Lot#:074K1304,SIGMA−ALDRICH)1.0mgを10μLの50%グリセリン水溶液に溶解させた(セルラーゼ)。卵白リゾチーム2.0mgおよびセルラーゼ1.0mgを10μLの50%グリセリン水溶液に溶解させた(卵白リゾチームとセルラーゼの混合溶液)。卵白リゾチーム2.0mgおよびβ−グルコシダーゼ1.0mgを10μLの50%グリセリン水溶液に溶解させた(卵白リゾチームとβ−グルコシダーゼの混合物)。卵白リゾチーム2.0mg、β−グルコシダーゼ1.0mg、およびセルラーゼ1.0mgを10μLの50%グリセリン水溶液に溶解させた(卵白リゾチームとβ−グルコシダーゼおよびセルラーゼの混合物)
直径0.5mmのガラスビーズ100個等量に上記の各試験標品2.0μLを加えてよく混和し、ガラスビーズ表面に試験標品をコートした。50%グリセリン水溶液のみでコートしたガラスビーズを対照区とした。
直径30mmのシャーレ上にシロアリの卵10個と上記手順によって得た擬似卵20個をランダムに置き、これにヤマトシロアリの職蟻(ワーカー)10個体を入れて25℃の恒温室内で静置し、実験開始から24時間後および48時間後に、卵塊中への擬似卵の運搬率を調べた(各試験標品につき同じ手順で実験を行った)。各処理区について8回の繰り返しを行った。運搬率をアークサインルート変換し、両側T検定により対照区との統計比較を行った。職蟻はシャーレ上に散在した卵を集めて卵塊を形成し、保護行動を示した。各試験標品をコートした擬似卵の24時間後の、卵塊への運搬率を図1に示す。48時間後の運搬率を図2に示す。
β−グルコシダーゼを添加することによる卵認識活性の増加は顕著であり、24時間後、48時間後のいずれの観察時にも、β−グルコシダーゼを加えないリゾチームとセルラーゼのみの処理区よりも、β−グルコシダーゼ加えた処理区の方が、有意に卵認識活性が高かった(P<0.001、両側T検定)。なかでも、β−グルコシダーゼ、リゾチームおよびセルラーゼを含む擬似卵の運搬活性が高かった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、効果的な害虫の駆除・防除、特にシロアリの駆除・防除を提供するものであり、殺虫剤製造の分野、害虫駆除産業の分野、建築業の分野、造園業の分野などにおいて利用可能である。さらに本発明は、生物学的研究の分野においても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、実験開始から24時間後の卵認識活性(運搬率)を調べた結果を示す図である。各略号はそれぞれ、L:卵白リゾチーム、C:セルラーゼ、LC:卵白リゾチームとセルラーゼの混合溶液、B:β−グルコシダーゼ、LB:卵白リゾチームとβ−グルコシダーゼの混合溶液、LBC:卵白リゾチームとβ−グルコシダーゼおよびセルラーゼの混合溶液、E:シロアリ卵抽出物を表す。n.s.:対照区と有意差なし。**有意水準1%で有意差あり。***有意水準0.1%で有意差あり(両側T検定)。図のエラーバーは標準誤差を表す。
【図2】図2は、実験開始から48時間後の卵認識活性(運搬率)を調べた結果を示す図である。略号・記号は図1と同じである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロアリの卵を模した基材に卵認識フェロモンの構成成分としてβ−グルコシダーゼ、その塩、その生物学的フラグメントまたはβ−グルコシダーゼ関連ペプチドを含有せしめた擬似卵。
【請求項2】
請求項1記載の擬似卵に殺虫活性成分、孵化阻害物質、生殖阻害物質、発育阻害活性成分、または昆虫病原菌からなる群より選択される1またはそれ以上の成分を含有せしめた擬似卵。
【請求項3】
請求項2記載の擬似卵をシロアリに与え、卵運搬行動を利用して巣内に運搬させることを特長とする、シロアリの駆除方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の擬似卵を必須として含む生物学研究ツール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−62080(P2011−62080A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144663(P2008−144663)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【特許番号】特許第4258785号(P4258785)
【特許公報発行日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構「シロアリの卵運搬本能を利用した駆除技術の開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】