説明

シロアリ防除剤

【課題】 シロアリの防除作用がコロニー内のシロアリに伝播され易く、シロアリを効率よく防除することができるシロアリ防除剤を提供すること。
【解決手段】 ビニル重合性モノマーを重合することにより得られる合成樹脂微粒子と、シロアリ防除成分(例えば、クロチアニジンなど。)と、を含み、必要に応じて、シロアリ防除成分をマイクロカプセル化する。また、必要に応じて、シロアリ防除成分を含む合成樹脂微粒子分散液を、スプレードライにより乾燥させて、粉剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロアリ防除剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物をシロアリによる食害から防護するために、種々のシロアリ防除剤が使用されている。また、これらシロアリ防除剤は、例えば、建物の基礎部分やその周囲に処理されるものであることから、その効力が長期にわたって維持されることが求められている。
そこで、薬剤の効力持続性の向上などを目的として、有効成分を微小樹脂粒子に担持させることが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、シロアリは社会性昆虫であって、コロニー内での活動に際して、本能的に、触角による相互接触や、グルーミングによる「相互検査」(アログルーミング)を行うことが知られている。そこで、従来、一部のシロアリにシロアリ防除剤が付着された場合であっても、その防除効果を他のシロアリに伝播させることで、シロアリを効率よく防除することが提案されている。
【特許文献1】特開昭61−236702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の殺虫性微小樹脂粒子粉末は、例えば、樹脂粒子の成分としてポリビニルアルコール、ジメチルエタノールアミンなどを含んでいたり、コロイダルシリカなどを含んでいたりするものであって、吸湿性である。
それゆえ、例えば、シロアリに、特許文献1に記載の殺虫性微小樹脂粒子が付着された場合には、該樹脂粒子は吸湿に伴って凝集してしまう、また、土壌上の粉末も吸水により凝集しその上を通ったシロアリに付着することない。そのため、殺虫性微小樹脂粒子が直接に付着されたシロアリについては殺虫効果が期待できるものの、他のシロアリへの伝播効果が得られにくく、効率的な防除が得られなくなる。
【0005】
本発明は、このような不具合に鑑みなされたもので、その目的とするところは、シロアリの防除作用がコロニー内のシロアリに伝播され易く、シロアリを効率よく防除することができるシロアリ防除剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために、シロアリ防除の有効成分を担持させる材料について、鋭意検討したところ、合成樹脂微粒子を有効成分の担体として用いれば、上記の課題を解決できるとの知見を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) 合成樹脂微粒子とシロアリ防除成分とを含有するシロアリ防除剤、
(2) 合成樹脂微粒子が、ビニル重合性モノマーを重合することにより得られる合成樹脂微粒子である前記(1)記載のシロアリ防除剤、
(3) ビニル重合性モノマーが、炭化水素またはハロゲン化炭化水素からなるビニル重合性モノマーを主成分とするビニル重合性モノマーである前記(2)記載のシロアリ防除剤、
(4) 合成樹脂微粒子が疎水性である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のシロアリ防除剤、
(5) シロアリ防除成分が、ネオニコチノイド系化合物である前記(1)〜(4)のいずれかに記載のシロアリ防除剤、
(6) ネオニコチノイド系化合物が、クロチアニジンである前記(5)記載のシロアリ防除剤、
(7) シロアリ防除成分が、マイクロカプセルに内包されていることを特徴とする、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のシロアリ防除剤、
(8) 合成樹脂微粒子とシロアリ防除成分とを含む分散液を、スプレードライに付すことにより乾燥させた粉剤であることを特徴とする、前記(1)〜(7)のいずれかに記載のシロアリ防除剤、
を提供するものである。
【0007】
本発明において、合成樹脂微粒子としては、「疎水性」であるものが好ましい。疎水性合成樹脂微粒子としては、実質的に水分(湿気)を吸収しないか、水分(湿気)を吸収しても、合成樹脂微粒子の表面に粘着性を生じさせない程度である合成樹脂微粒子をいう。
また、本発明において、合成樹脂微粒子としては、「非発泡性」であるものが好ましい。「非発泡性」とは、合成樹脂微粒子が実質的に発泡剤を含んでおらず、合成樹脂微粒子を加熱してもその体積が実質的に増加しないことをいう。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシロアリ防除剤によれば、従来のような、吸湿により凝集するというようなことがない。それゆえ、本発明のシロアリ防除剤が付着したシロアリが死に至るまでの間に、他のシロアリへの伝播効果を十分に発揮させることができ、また、土壌上の本発明のシロアリ防除剤の粉体も吸湿により凝集することがないので、この上を通ったシロアリは触角や脚部に粉体が新たに付着し、そのため伝播効果を十分に発揮させることができる。従って、本発明のシロアリ防除剤は、シロアリ防除の効率を格段に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のシロアリ防除剤は、合成樹脂微粒子と、シロアリ防除成分とを含んでいる。
シロアリ防除剤による防除の対象となるシロアリとしては、シロアリ(等翅)目に属する昆虫であること以外は、特に限定されないが、具体的には、例えば、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)、ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)などのミゾガシラシロアリ科に属するもの、アメリカカンザイシロアリ、ダイコクシロアリなどのレイビシロアリ科に属するものなどが挙げられる。
【0010】
合成樹脂微粒子としては、熱硬化性樹脂微粒子および熱可塑性樹脂微粒子が挙げられる。
合成樹脂微粒子を形成する熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、架橋剤により架橋させたビニル重合性モノマー重合体よりなる樹脂などが挙げられ、なかでも、好ましくは、架橋剤により架橋させたビニル重合性モノマー重合体からなる樹脂が挙げられる。
【0011】
合成樹脂微粒子を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ビニル重合性モノマー重合体よりなる樹脂などが挙げられ、なかでも、好ましくは、ビニル重合性モノマー重合体からなる樹脂が挙げられる。
ビニル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、酢酸ビニル系モノマー、アクルロニトリル系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、ビニルケトン系モノマー、炭化水素のみからなるモノマー類、ハロゲン化炭化水素のみからなるモノマー類などが挙げられる。
【0012】
上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどが挙げられる。酢酸ビニル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。アクリロニトリル系モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。ビニルエーテル系モノマーとしては、例えば、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。ビニルケトン系モノマーとしては、例えば、メチルビニルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどが挙げられる。炭化水素のみからなるモノマー類としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン、スチレン、α―メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。ハロゲン化炭化水素のみからなるモノマー類としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレンなどが挙げられる。これらビニル重合性モノマーは、単独で用いられていてもよく、2種以上が混合して用いられていてもよい。
【0013】
また、上記ビニル重合性モノマーから得られる合成樹脂微粒子が、溶媒への溶解性の高い樹脂である場合には、架橋剤によって架橋されていることが好ましい。
架橋剤の具体例としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールアリロキシジメタクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジメタクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリメタクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパンジアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパンジメタクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼンなどが挙げられ、なかでも、好ましくは、ジビニルベンゼンが挙げられる。
【0014】
本発明においては、合成樹脂微粒子は、「疎水性」であることが好ましい。疎水性合成樹脂微粒子を得るためには、ビニル重合性モノマーとして、炭化水素のみからなるモノマー類、ハロゲン化炭化水素のみからなるモノマー類が主成分となる樹脂組成が好ましく、特に好ましくは、エチレン、プロピレン、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、四フッ化エチレンなどを主成分とする樹脂組成が挙げられる。また、これら疎水性合成樹脂微粒子を得るためのビニル重合性モノマーは、単独で用いられていてもよく、2種以上が混合して用いられていてもよい。
【0015】
合成樹脂微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、コロニー内への防除作用の伝播効果を向上させるという観点から、好ましくは、0.1〜200μm、より好ましくは、1〜60μm、さらに好ましくは、1〜50μmである。
合成樹脂微粒子の製造方法は、特に限定されるものではない。すなわち、合成樹脂微粒子は、例えば、乳化重合や懸濁重合により、微粒子として製造されたものであってもよく、高温高圧化で合成樹脂を溶融して、水中に強制微分散することにより、微粒子として製造されたものであってもよく、非水系溶媒に溶解された合成樹脂の溶液を、水中に強制微分散させた後、溶媒を留去することにより、微粒子として製造されたものであってもよく、また、合成樹脂そのものを、微粉砕することによって微粒子として製造されたものであってもよい。これらの方法は、いずれも、公知の方法に準じて行うことができる。
【0016】
シロアリ防除成分としては、例えば、ネオニコチノイド系化合物、ピレスロイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カルバメート系化合物、ピロール系化合物、フェニルピラゾ−ル系化合物、オキサダイアジン系化合物、セミカルバゾン系化合物、植物またはその処理物あるいはその誘導体などが挙げられる。なかでも、好ましくは、ネオニコチノイド系化合物が挙げられる。
【0017】
ネオニコチノイド系化合物は、塩素原子置換含窒素複素環とニトロ置換イミノ基(C=N−NO)含有化合物とが2価の炭化水素基を介して結合している化合物の総称であって、具体的には、例えば、(E)−1−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン)、N−アセチル−N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N−メトキシカルボニル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリン−2−イリデンアミン(一般名:イミダクロプリド)、3−(2−クロロ−チアゾール−5−イルメチル)−5−[1,3,5]オキサジアジナン−4−イルインデン−N−ニトロアミン(一般名:チアメトキサム)などが挙げられる。
【0018】
これらネオニコチノイド系化合物は、単独で使用してもよく、また2種類以上併用してもよい。また、好ましくは、(E)−1−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン)が挙げられる。
ピレスロイド系化合物としては、例えば、アレスリン、ペルメトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、アクリナトリン、アルファシペルメトリン、シフルトリン、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、フェンバレレート、などが挙げられる。
【0019】
有機塩素系化合物としては、例えば、ケルセンなどが挙げられる。
有機リン系化合物としては、例えば、ホキシム、ピリダフェンチオン、フェニトロチオン、テトラクロルビンホス、ジクロフェンチオン、プロペタンホスなどが挙げられる。
カルバメート系化合物としては、例えば、カルバリル、フェノブカルブ、プロポクスルなどが挙げられる。
【0020】
ピロール系化合物としては、例えば、クロルフェナピルなどが挙げられる。フェニルピラゾ−ル系化合物としては、例えば、フィプロニルなどが挙げられる。オキサダイジン系化合物としては、例えば、インドキサカルブなどが挙げられる。セミカルバゾン系化合物としては、例えば、α−(α,α,α−トリフルオロ−m−トルオイル)−p−トリニトリル4−(p−トリフルオロメトキシフェニル)セミカルバゾンなどが挙げられる。
【0021】
植物またはその処理物あるいはその誘導体としては、例えば、特開2002−307406号公報、特開2003−252708号公報、特開2005−74776号公報に記載されたものが挙げられる。
上記例示のシロアリ防除成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記例示のシロアリ防除成分の中では、特に、ネオニコチノイド系化合物、フェニルピラゾール系化合物などの忌避性を有しない化合物を用いることが好ましく、ネオニコチノイド系化合物を用いることがより好ましい。
【0022】
シロアリ防除剤は、例えば、上記した合成樹脂微粒子に、上記シロアリ防除成分を担持させることにより、製造することができる。
合成樹脂微粒子にシロアリ防除成分を担持させるには、シロアリ防除成分を適当な溶剤に溶解または均一に分散させて、さらに、得られた溶液または分散液に合成樹脂微粒子を配合し、混合した後、あるいは合成樹脂微粒子を調製した懸濁液に添加した後、これを乾燥して、溶剤を揮散させればよい。
【0023】
上記溶剤は、シロアリ防除成分を溶解または均一に分散させることができ、かつ、合成樹脂微粒子を溶解させないものであればよく、さらに、好ましくは、揮発性の高い溶剤である。この溶剤は、使用するシロアリ防除成分の種類によって適宜選択されるものであって、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノールなどのアルコール類、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などが挙げられる。
【0024】
乾燥処理は、例えば、シロアリ防除成分および合成樹脂微粒子の混合液を加温(約60℃前後)して、上記溶剤を揮散させればよい。また、シロアリ防除成分および合成樹脂微粒子の混合液を、スプレードライにより乾燥させてもよい。
スプレードライにより乾燥させる方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、シロアリ防除成分が溶解または懸濁した合成樹脂微粒子懸濁液を、微細な霧状として、40〜160℃の熱風中に噴出させればよい。これにより、シロアリ防除成分の粉剤を得ることができる。また、シロアリ防除成分を含む合成樹脂微粒子懸濁液を微細な霧状にする方法としては、例えば、回転円盤を用いた遠心噴霧による方法や、圧力ノズルを用いた加圧噴霧による方法など、公知の種々の方法を採用することができる。
【0025】
合成樹脂微粒子とシロアリ防除成分との総量に対するシロアリ防除成分の含有量(有効成分濃度)は、シロアリ防除成分の種類、シロアリ防除剤の適用条件などに応じて適宜設定されるものであって、特に限定されないが、好ましくは0.01〜20重量%であり、より好ましくは、0.01〜10重量%であり、最も好ましくは、0.01〜1重量%である。
【0026】
また、上記シロアリ防除成分は、マイクロカプセルに内包されたものであってもよい。この場合において、シロアリ防除剤は、上記した合成樹脂微粒子に、上記シロアリ防除成分のマイクロカプセルを担持させたものであってもよく、上記シロアリ防除成分のマイクロカプセルに、上記した合成樹脂微粒子を担持させたものであってもよい。
シロアリ防除成分のマイクロカプセル化は、例えば、いわゆる、界面重合法、in situ重合法(界面反応法)、コアセルベーション法、液中乾燥法、融解分散冷却法、液中硬化皮膜法、コーティング法(気中懸濁法)、スプレードライ法、静電合体法、真空蒸着法などが挙げられる。シロアリ防除成分のマイクロカプセル化の具体的手法としては、例えば、特開昭61−249904号公報、特公平6−92282号公報、特公平6−92283号公報、特開平10−114608号公報、特開2000−247821号公報に記載の方法が挙げられる。
【0027】
シロアリ防除成分のマイクロカプセル化は、一般的には、シロアリ防除成分を溶媒に溶解させた後、得られた溶液を、上記溶媒と相溶しない媒体(例えば、水など。)中に添加して、攪拌し、懸濁させる。
次いで、懸濁液を攪拌しながら、マイクロカプセルの壁膜を形成させて、微細な粒状のマイクロカプセルを生成させればよい。
【0028】
マイクロカプセルの壁膜を形成させるための壁膜形成物質は、懸濁液の成分としてあらかじめ添加しておいてもよく、後で添加してもよい。これにより、シロアリ防除成分を内包したマイクロカプセルを得ることができる。
また、シロアリ防除成分が、例えば、難溶解性のネオニコチノイド系化合物である場合には、例えば、特開2000−247821号公報に記載の方法により、ネオニコチノイド系化合物をマイクロカプセル化することが好ましい。
【0029】
すなわち、シロアリ防除成分をマイクロカプセル化するには、まず、有効成分(シロアリ防除成分)を含むスラリーを調製し、これを公知の方法でマイクロカプセル化すればよい。また、上記スラリーを調製するには、有効成分を分散媒に配合して、撹拌混合すればよい。
上記分散媒としては、通常、シロアリ防除成分のマイクロカプセル化に用いられる、公知の有機溶媒が挙げられる。また、そのような有機溶媒としては、例えば、沸点が200℃以上の高沸点芳香族系有機溶媒が好ましく用いられる。高沸点芳香族系有機溶媒を用いることにより、マイクロカプセル化された有効成分の残効性を向上させることができる。
【0030】
上記の高沸点芳香族系有機溶媒としては、例えば、アルキルベンゼン類、アルキルナフタレン類、アルキルフェノール類、ジフェニルアルカン類などが挙げられ、より具体的には、石油留分より得られる種々の市販の有機溶媒、例えば、アルケンL(アルキルベンゼン、蒸留範囲285〜309℃、新日本石油化学(株)製)、KMC−113(ジイソプロピルナフタレン、沸点300℃、呉羽化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0031】
また、その他の有機溶媒として、例えば、ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素類、例えば、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、例えば、アセトンなどのケトン類、例えば、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、例えば、ヘキサノールなどのアルコール類、例えば、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類、例えば、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、例えば、ピリジン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどの含窒素化合物類などが挙げられる。
【0032】
これら有機溶媒は、単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合には、上記した高沸点芳香族系有機溶媒を少なくとも含むことが好ましく、その割合としては、例えば、分散媒中に、50重量%以上、さらには70重量%以上となるような割合であることが好ましい。
有効成分を上記分散媒に分散させる際には、必要により、分散剤を配合してもよい。この分散剤としては、例えば、3級アミンを含む分子量1000以上の分散剤が挙げられる。このような分散剤を用いることにより、例えば、ネオニコチノイド系化合物を、増粘させることなく湿式粉砕することができ、良好なスラリーを得ることができる。
【0033】
このような分散剤としては、3級アミンを含有するカチオン系の高分子重合体、例えば、3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、3級アミン含有変性ポリウレタン系高分子重合体などが挙げられる。より具体的には、市販されているものとして、例えば、Disperbyk−164(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量10000〜50000、ビッグケミー(株)製)などが挙げられる。このような分散剤は、単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。
【0034】
次いで、このようにして得られたスラリーは、必要により、湿式粉砕がされた後に、マイクロカプセル化することができる。
湿式粉砕は、例えば、ビーズミル、ボールミル、またはロッドミルなどの公知の粉砕機を用いて所定の時間行えばよい。湿式粉砕することにより、分散媒中にシロアリ防除成分を微細な粒子として分散させることができ、カプセル化率の向上、製剤安定性の向上、および、効力の増強を図ることができる。このような湿式粉砕において、シロアリ防除成分の平均粒子径を、例えば、5μm以下、さらには2.5μm以下とすることが好ましい。平均粒子径がこの値より大きいと、有効成分をマイクロカプセル内に良好に封入できない場合がある。
【0035】
次いで、このように湿式粉砕されたスラリーをマイクロプセル化するには、例えば、界面重合法、in−situ重合法、コアセルベーション法、液中乾燥法、スプレードライング法、融解分散冷却法、オリフィス法、気中懸濁被覆法、無機質壁マイクロカプセル化法などの公知の方法を用いればよい。好ましくは、界面重合法が用いられる。
界面重合法では、例えば、得られたスラリーに油溶性膜形成物質を配合し、これを、水中に分散させた後、水溶性膜形成物質を添加すればよい。
【0036】
油溶性膜形成物質としては、マイクロカプセル化のために通常用いられる公知のものでよく、例えば、ポリイソシアネート、ジカルボン酸ジクロライド、ジスルホン酸ジクロライドなどが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられ、さらに、これらの変性体、例えば、これらポリイソシアネートの誘導体であるダイマー、トリマーなどにより変性される誘導体変性ポリイソシアネートや、例えば、トリメチロールプロパンなどの低分子量ポリオールを予め反応させて得られるポリオール変性ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0037】
また、ジカルボン酸ジクロライドとしては、例えば、セバシン酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライドなどが挙げられ、また、ジスルホン酸ジクロライドとしては、例えば、ベンゼンスルホニルジクロライドなどが挙げられる。
これら油溶性膜形成物質は、単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。好ましくは、ポリイソシアネートが挙げられ、さらに好ましくは、脂肪族および脂環族のポリイソシアネート、とりわけ、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートのトリマー変性体(例えば、タケネートD−170N(ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマー変性体、三井武田ケミカル(株)製)など。)やポリオール変性体が挙げられる。
【0038】
そして、油溶性膜形成物質が配合されたスラリーを水中に分散させるには、例えば、このスラリーを水中に加えて、常温下、微小滴になるまでホモミキサーなどにより攪拌すればよい。スラリーを分散させるための水には、分散性を向上させるために予め分散安定剤を20重量%以下、好ましくは、5重量%以下の割合で配合しておくことが好ましい。このような分散安定剤としては、例えば、アラビヤガムなどの天然多糖類、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースなどの半合成多糖類、ポリビニルアルコールなどの水溶性合成高分子、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、これら分散安定剤は、単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。好ましくは、ポリビニルアルコール(例えば、クラレポバール217、クラレ(株)製など。)が用いられる。
【0039】
次いで、スラリーの水中分散後に、水溶性膜形成物質を添加するには、例えば、水溶性膜形成物質を水溶液として滴下させればよい。水溶性膜形成物質は、マイクロカプセル化のために通常用いられる公知のものでよく、例えば、ポリアミンやポリオールなどが挙げられる。
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、フェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ピペラジンなどが挙げられる。また、ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0040】
これら水溶性膜形成物質は、単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。好ましくは、ポリアミン、なかでも、エチレンジアミンが好ましく用いられる。また、このような水溶性膜形成物質を水溶液とするには、約50重量%以下の濃度とすることが好ましく、このような水溶液を、例えば、水溶性膜形成物質が、油溶性膜形成物質に対してほぼ等しい当量(例えば、ポリイソシアネートとポリアミンとが用いられる場合では、イソシアネート基/アミノ基の当量比がほぼ1となる割合)となるような量となるまで滴下することが好ましい。
【0041】
このような水溶性膜形成物質の添加により、水溶性膜形成物質と油溶性膜形成物質とが、分散媒と水(油と水)との界面で反応することにより、シロアリ防除成分が封入されたマイクロカプセルを得ることができる。この反応を促進するために、例えば、水溶性膜形成物質の添加後に、約25〜85℃、好ましくは、約40〜70℃で、約30分〜24時間、好ましくは、約1〜3時間攪拌しつつ加熱することが好ましい。
【0042】
マイクロカプセルは、平均粒子径を6〜100μm、好ましくは10〜30μmに調整することが好ましい。マイクロカプセルの平均粒子径および粒子径は、例えば、市販されているレーザ回折/散乱式粒度分布装置を用いて、粒子径の大きさとその分布状態(粒度分布)を測定することにより、求めることができる。
シロアリ防除成分をマイクロカプセル化した場合には、得られたマイクロカプセルを含む水分散液に、上記の合成樹脂微粒子を配合し、さらに、必要により、分散剤、界面活性剤、沈降防止剤などを適宜配合して、得られた水懸濁液を乾燥させることにより、シロアリ防除剤を得ることができる。
【0043】
本発明のシロアリ防除剤は、上記水懸濁液を乾燥させた状態で用いてもよく、また、上記水懸濁液をスプレードライによって粉剤に製剤化して用いてもよい。また、例えば、粒剤などの公知の剤型に製剤化して用いてもよい。
シロアリ防除剤の使用方法は、特に限定されるものではないが、例えば、公知の散布方法によって処理対象の木材に散布すればよい。より具体的には、例えば、有効成分としてのシロアリ防除成分が0.05〜10重量%の割合で担持された合成樹脂微粒子の場合、動力噴霧器または手動噴霧器を用いて、木材の表面に対して50〜300g/mで散布すればよい。
【0044】
このようなシロアリ防除剤は、合成樹脂微粒子が吸湿性を有しないものであることから、シロアリに付着した場合に、その行動を阻害することがなく、シロアリの防除作用を効率よく発揮することができる。
【実施例】
【0045】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
実施例1
ポリ四フッ化エチレン(PTFE)パウダー(平均粒子径 10μm、TFW−1000、(株)セイシン企業製)100gに、クロチアニジンのメタノール溶液(0.5%(w/v))2mLを撹拌しながら配合して、乾燥させることにより、PTFEパウダーに有効成分(クロチアニジン)が0.01重量%の割合で配合された粉体を得た。
【0046】
実施例2
KMC−113(ジイソプロピルナフタレン、沸点300℃、呉羽化学工業(株)製)610gと、アルケンL(アルキルベンゼン、蒸留範囲285〜309℃、新日本石油化学(株)製)360gと、Disper byk−164(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系高分子重合体、分子量10000〜50000、ビッグケミー(株)製)10gとを配合して、均一になるまで攪拌した。得られた混合溶液にクロチアニジン20gを加えて、T.K.オートホモディスパー(特殊機化工業(株)製)にて攪拌することにより、スラリー(1)を得た。さらに、スラリー(1)をビーズミル(ダイノーミル KDL A型、ガラスビーズ径1.5mm)にて20分間湿式粉砕した。湿式粉砕後のスラリー(1)中のクロチアニジンの平均粒子径は840nmであった。
【0047】
次に、湿式粉砕後のスラリー(1)112.5gに、タケネートD−170N(ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマー変性体、三井武田ケミカル(株)製)28.3gを加えて、均一になるまで攪拌することにより、スラリー(2)を得た。さらに、スラリー(2)を、1.5重量%ポリビニルアルコール(クラレポバール217、クラレ(株)製)含有水溶液125g中に加えて、常温下で微少滴になるまでT.K.オートホモミキサーで数分間攪拌した。この時のミキサーの回転数は、毎分5000回転であった。また、攪拌中に、エチレンジアミン4.16gを含む水溶液20gを滴下した。
【0048】
次いで、得られた水分散液を、60℃の恒温槽中で6時間緩やかに攪拌させながら反応させることにより、マイクロカプセルを含む水分散液を得た。さらに、得られた水分散液に0.1N−HCl水溶液を滴下して、pH7に中和した後、純水を加えて全体の重量が300gになるように調整し、有効成分(クロチアニジン)濃度0.75重量%の防除剤(A)を得た。防除剤(A)のマイクロカプセルの平均粒径は、25μmであった。
【0049】
さらに、防除剤(A)を70℃に加温、攪拌して、全体の重量が約35%減少するまで乾燥させることにより、防除剤(B)を得た。防除剤(B)の有効成分濃度は、約1.2重量%であった。
次に、ガンツパール1105のスラリー(懸濁重合架橋ポリスチレン微粒子、平均粒子径10μm、ガンツ化成(株)製)100重量部と、防除剤(B)8.5重量部とを配合して、撹拌、混合しながら乾燥させた。これにより、防除剤(B)のマイクロカプセルにガンツパール1105が付着された、有効成分濃度約0.1%の粉体を得た。得られた粉体の平均粒子径は、40μmであった。
【0050】
なお、上記ガンツパールは、特開平7−292231号公報の比較例1に記載の方法で製造することができる。
実施例3
実施例2の「ガンツパール1105」に代えて、ポリプロピレン樹脂(PP)パウダー(平均粒子径6.8μm、商品名「PPW−5」、(株)セイシン企業製)100重量部を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、有効成分濃度約0.1%の粉体を得た。得られた粉体の平均粒子径は、35μmであった。
【0051】
実施例4
実施例2の「ガンツパール1105」に代えて、ポリエチレン樹脂(PE)パウダー(平均粒子径7.8μm、商品名「PEW−5」、(株)セイシン企業製)100重量部を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、有効成分濃度約0.1%の粉体を得た。得られた粉体の平均粒子径は、35μmであった。
【0052】
実施例5
実施例2の「ガンツパール1105」に代えて、PTFEパウダー(TNF−1000)100重量部を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、有効成分濃度約0.1%の粉体を得た。得られた粉体の平均粒子径は、20μmであった。
実施例6
実施例2におけるスラリー(1)112.5gに代えて、KMC−113を68.4g、アルケンLを38.5gおよびDisper byk−164を1.1g用い、さらに、クロチアニジンに代えて、フェノカルブ4.5gを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、有効成分濃度約0.2%の粉体を得た。得られた粉体の平均粒子径は、40μmであった。
【0053】
実施例7
実施例2におけるスラリー(1)112.5gに代えて、KMC−113を68.4g、アルケンLを38.5gおよびDisper byk−164を1.1g用い、さらに、クロチアニジンに代えて、シフルトリン4.5gを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、有効成分濃度約0.2%の粉体を得た。得られた粉体の平均粒子径は、40μmであった。
【0054】
実施例8
スチレン99.6重量部、ジビニルベンゼン(純度58%品)0.4重量部およびベンゾイルパーオキシド0.5重量部を含有する混合溶液に、水150重量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.01重量部を加えて、撹拌下、さらに、リン酸三カルシウム10重量部を加えた。次に、得られた混合物をホモミキサー(特殊機化工業(株)製)にて、毎分6000回転で20分間攪拌し、モノマー滴を水相中に分散させることにより、モノマー分散液を調製した。このモノマー分散液を、撹拌器と還流冷却器を備えた反応器に移し、窒素気流下にて撹拌しながら、90℃に昇温して重合を開始した。5時間の反応後、40℃に冷却した(特開平7−292231号公報の比較例1参照)。
【0055】
こうして得られた架橋ポリスチレン粒子の分散液100gと、防除剤(A)9.1gとを配合して、撹拌、混合した後、スプレードライヤー(L−8型、大川原化工業(株)製、温度110℃、アトマイザ調速50Hz、投入速度1L/時間)にてスプレードライした。これにより、防除剤(A)のマイクロカプセルに架橋ポリスチレンの粉体が付着された、有効成分濃度約0.1重量%の粉体を得た。得られた粉体の平均粒子径は、40μmであった。
【0056】
実施例9
実施例8で作製された架橋ポリスチレン粒子の分散液100gに、クロチアニジンのメタノール溶液(0.5%(w/v))0.5mLを撹拌しながら配合した後、スプレードライヤー(L−8型、大川原化工業(株)製、温度110℃、アトマイザ調速50Hz、投入速度1L/時間)にてスプレードライすることにより、架橋ポリスチレンに有効成分(クロチアニジン)が付着された、有効成分濃度0.01重量%の粉体を得た。
【0057】
比較例1
サイリシア310P(コロイド状シリカ、平均粒子径2.7μm、富士シリシア化学(株)製)100gに、クロチアニジンのメタノール溶液(0.1%(w/v))10mLを撹拌しながら配合し、乾燥させることにより、コロイド状シリカ微粒子に有効成分(クロチアニジン)が付着された、有効成分濃度0.01重量%の粉体を得た。
【0058】
比較例2
水和剤用珪藻土(平均粒子径10μm、ネオライト興産(株)製)100gに、クロチアニジンのメタノール溶液(0.1%(w/v))10mLを撹拌しながら配合し、乾燥させることにより、珪藻土微粒子に有効成分(クロチアニジン)が付着された、有効成分濃度0.01重量%の粉体を得た。
【0059】
試験例
実施例1〜9および比較例1〜2で得られた粉体について、シロアリに対する防除効力を確認した。
長さ約13cm、幅約6cm、深さ約3cmの蓋付きプラスチック容器のうち、一方のつま面(6cm×3cmの面)の中央下部に直径約3mmの貫通孔(以下、「連結孔」という)を設けた。このプラスチック容器を2個用意して、2つの連結孔が互いに繋がるように、上記連結孔を備えるつま面(以下、「接合面」という。)同士を重ね合わせて、接着した。次いで、それぞれのプラスチック容器内に、含水率が12%に調整されたケイ砂5号を、約2mmの厚みで敷き詰めた。
【0060】
次に、上記プラスチック容器内に、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)300頭を放し、さらに、餌として、直径約12mmのろ紙(2種(No.2);JIS P 3801−1995)が折り畳まれたものを、各プラスチック容器の他方のつま面(接合面と相対する面)側のケイ砂上に、それぞれ3つずつ載置した。さらに、各プラスチック容器の蓋を閉めて、一方のプラスチック容器の蓋のうち、上記接合面から離れた位置にある角部に、直径約3mmの貫通孔(以下、「粉体投入孔」という。)を設けた。この貫通孔は、セロハンテープで塞いでおいた。
【0061】
イエシロアリを放してから2日経過後、イエシロアリが、プラスチック容器の連結孔を通って、各プラスチック容器間を自由に行き来していることを確認した。さらに、粉体投入孔からセロハンテープを取り外して、この粉体投入孔から、イエシロアリにおよび土壌上に、上記粉体を振り掛けた。粉体は、イエシロアリ3頭に対して、それぞれの体表面が覆われる程度に、土壌上に2cm×2cm程度の面積で、振り掛けた。その後、さらに1週間放置して、イエシロアリの挙動を観察した。
【0062】
その結果、実施例1〜9で得られた粉体を用いた場合には、粉体が振り掛けられたイエシロアリは、その後約15分間は自由に動き回り、粉体が他のシロアリに伝播していく様子が観察された。さらに土壌上の粉体を通ったシロアリは触角や脚部に粉体が新たに付着する様子が認められた。また、1週間経過後には、プラスチック容器内の全てのイエシロアリについて、死亡が確認された。
【0063】
一方、比較例1および2で得られた粉体を用いると、粉体が振り掛けられたイエシロアリについては、約15分後の観察でも動いていたが体表面で吸水により粉体が凝集している様子が認められた。また、土壌上の粉体も吸水により凝集しておりその上を通っても新たにシロアリに付着する様子は認められなかった。このため、粉体が振り掛けられたイエシロアリについては、死亡が確認されたが、他のイエシロアリへの粉体の伝播は進行しておらず、1週間経過後においても、約60%のイエシロアリが、蓋に粉体投入孔が設けられていないプラスチック容器内で生息している様子が観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂微粒子とシロアリ防除成分とを含有するシロアリ防除剤。
【請求項2】
合成樹脂微粒子が、ビニル重合性モノマーを重合することにより得られる合成樹脂微粒子である請求項1に記載のシロアリ防除剤。
【請求項3】
ビニル重合性モノマーが、炭化水素またはハロゲン化炭化水素からなるビニル重合性モノマーを主成分とするビニル重合性モノマーである請求項2記載のシロアリ防除剤。
【請求項4】
合成樹脂微粒子が疎水性である請求項1〜3のいずれかに記載のシロアリ防除剤。
【請求項5】
シロアリ防除成分が、ネオニコチノイド系化合物である請求項1〜4のいずれかに記載のシロアリ防除剤。
【請求項6】
ネオニコチノイド系化合物が、クロチアニジンである請求項5記載のシロアリ防除剤。
【請求項7】
シロアリ防除成分が、マイクロカプセルに内包されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のシロアリ防除剤。
【請求項8】
合成樹脂微粒子とシロアリ防除成分とを含む分散液を、スプレードライに付すことにより乾燥させた粉剤であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のシロアリ防除剤。

【公開番号】特開2007−31334(P2007−31334A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216272(P2005−216272)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】