説明

シロアリ防除剤

【課題】従来の液剤では処理しきれなかった空隙にも容易に薬剤が行き渡り、しかも周辺を汚損することなく効果的な防除が可能で、また、薬剤の使用量も従来の方法に比べ、少量で十分な性能を発揮できることから、居住空間や周辺の汚染、汚損等が極めて少なく、しかも価格的な利点も期待でき、さらに、乾材シロアリに対しても効果的なシロアリ防除剤を提供すること。
【解決手段】蒸気圧が1×10−3Pa/25℃以上の低温蒸散型及び/又は常温蒸散型の殺虫成分より選ばれる化合物の少なくとも1つを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロアリ防除剤に関するもので、特に、有効成分に低温蒸散型及び/又は常温蒸散型の化合物を使用することで、これらを含有する防除剤を処理した後に、シロアリが食害あるいは生息する木材中の空間内に、薬剤が低温及び/又は常温で蒸散し、ガス化したものにシロアリが触れることでこれを死に至らしめるシロアリ防除剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるシロアリの防除処理は、殺蟻性能を有する有効成分を各種有機溶媒に溶解あるいはこれに界面活性剤又は極性の溶媒を添加することで水により乳化又は溶解させ、これをシロアリの食害を受けている木材及び木質材料等やシロアリの食害を受ける危険性を有する箇所、さらには、使用する予定の木材及び木質材料等に適用するようにしていた。
【0003】
また、この種のシロアリ防除剤を適用するに当たっては、塗布、吹付けあるいは木材及び木質材料等を薬液に浸漬するようにしたり、木材及び木質材料等を耐圧シリンダーに入れ、そこに殺蟻性能を有する水溶性の銅化合物等の含金化合物、ホウ素化合物等の無機化合物を水に溶解した薬剤又は有機系の殺虫成分を各種有機溶媒に溶解あるいはこれに界面活性剤若しくは両極性の溶媒を添加することで水により乳化若しくは溶解させた薬剤を投入し、0.5〜1.5MPaの圧力をかけることで薬剤を木材及び木質材料等に深くまで浸透させることでシロアリの食害を阻止する機能をよりいっそう長期間保持するための処理を行ってきた(社団法人日本木材保存協会認定薬剤一覧及び日本工業規格JIS K 1570−2004参照)。
【0004】
ところで、これらの処理に使用されるシロアリ防除剤は、いずれも薬剤処理された木材及び木質材料等にシロアリが接触及び/又はその部分を喫食することにより、防除効果を発現してきた。
また、処理を必要とする箇所が、家屋、木製構造物等、いわゆる長期間の効力持続を必要とすることから、防除剤の有効成分には蒸散性の著しく低い化合物が良いとされてきた。
このような薬剤処理は、通常、被害箇所やシロアリの侵入経路が特定でき、また被害箇所が予測できるようなヤマトシロアリ、イエシロアリ等に代表される地下生息シロアリに対し、しかも軸組み工法、大壁構造、枠組み壁工法等に代表される従来工法に対しては有効な方法であった。
【0005】
しかしながら、近年高気密高断熱工法や外断熱工法に代表される新工法住宅のような密閉構造を有する住宅では、シロアリによる食害を受けた壁体内等に容易に液状の薬剤を散布できない構造となっている上、壁体内や壁外周に使用されている発泡樹脂製断熱材にこれらの有機溶媒を含む液剤が付着することにより浸食が発生する危険性が極めて高いこと、特に、アメリカカンザイシロアリに代表される乾材シロアリのように、被害箇所の特定が容易でない上、しかも被害を受けやすい部位が家屋の天井裏、家具、建具等に集中しやすく、このような場所に大量の液状薬剤を散布した場合、居住空間へのたれ落ち、汚損等支障の出やすいため、現状防除処理に困難を極めていること、しかもこのような従来種とは異なるシロアリ種による被害が拡大の傾向にあること等から、従来の液状薬剤によるしかも従来の処理方法による防除では十分な効果が期待できないという問題が生じていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来のシロアリの防除方法の有する問題点に鑑み、従来の液剤では処理しきれなかった空隙にも容易に薬剤が行き渡り、しかも周辺を汚損することなく効果的な防除が可能で、また、薬剤の使用量も従来の方法に比べ、少量で十分な性能を発揮できることから、居住空間や周辺の汚染、汚損等が極めて少なく、しかも価格的な利点も期待でき、さらに、乾材シロアリに対しても効果的なシロアリ防除剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のシロアリ防除剤は、蒸気圧が1×10−3Pa/25℃以上の低温蒸散型及び/又は常温蒸散型の殺虫成分より選ばれる化合物の少なくとも1つを含有することを特徴とする。
【0008】
この場合において、低温蒸散型及び/又は常温蒸散型の殺虫成分より選ばれる化合物の少なくとも1つを有機溶媒に溶解してなることができる。
【0009】
また、有機溶媒に溶解させた後に界面活性剤を加えてなることができる。
【0010】
また、低温蒸散型及び/又は常温蒸散型の防虫成分より選ばれる化合物の少なくとも1つを、粉体若しくは微粒体又は両者の混合物、あるいは粉体若しくは微粒体又は両者の混合物を元に作られた成形品又は造粒品に含有させてなることができる。
【0011】
また、低温蒸散型及び/又は常温蒸散型の防虫成分より選ばれる化合物の少なくとも1つを樹脂に包埋又は成形品に含浸させてなることができる。
ここで、樹脂には、合成樹脂及び天然樹脂を用いることができ、成形品には、合成、天然及び再生素材を用いることができる。
【0012】
また、本発明のシロアリ防除剤は、乾材シロアリ用の防除剤として用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシロアリ防除剤は、シロアリにより被害を受けた場所あるいは受けていると考えられる場所に低温蒸散型及び/又は常温蒸散型の化合物を有効成分とする薬剤を注入、又は薬剤を含有する成形品等を挿入、設置することにより、含有する薬剤の有効成分が蒸散し、ガス状になることで従来の液剤では処理しきれなかった空隙にも容易に薬剤が行き渡り、しかも周辺を汚損することなく効果的な防除が可能になる。
また、薬剤の使用量も従来の方法に比べ、少量で十分な性能を発揮できることから、居住空間や周辺の汚染、汚損等が極めて少なく、しかも価格的な利点も期待できる。
さらに、従来困難であった、乾材シロアリに対しても効果的な防除が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のシロアリ防除剤の実施の形態について説明する。
【0015】
本発明に使用される防虫成分には、例えば、(EZ)−(RS)−1−エチニル−2−メチルペント−2−エチル(1RS,3RS,1RS,3SR)−2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロプ−1−エチル)シクロプロパンカルボキシラート(一般名:EZ−エンペントリン)、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル(1R,3S)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート(一般名:トランスフルトリン)、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル(EZ)−(1RS,3RS,1RS,3SR)−2,2−ジメチル−3−(プロプ−1−1−エンイル)シクロプロパンカルボキシレート(一般名:プロフルトリン)、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル(EZ)−(1RS,3RS,1RS,3SR)−2,2−ジメチル−3−(プロプ−1−エチル)シクロプロパンカルボキシラート(一般名:メトフルトリン)等の合成ピレスロイド系化合物、ジメチル2,2−ジクロルビニルホスフェイト(一般名:ジクロルボス)等の有機リン系化合物、パラジクロロベンゼン、ナフタレン等の芳香族系化合物等が挙げられるが、蒸気圧が1×10−3Pa/25℃以上の低温蒸散型及び/又は常温蒸散型の化合物であるならば、特にこれらに限定されるものではなく、これらを2種類以上を組み合わせて使用したり、蒸散性の低いあるいは非蒸散性の防虫化合物と組み合わせて使用することもできる。
その際に使用される薬剤の濃度としては、低温蒸散型及び/又は常温蒸散型の化合物として、0.001〜100重量%が望ましい。
さらに合成ピレスロイド系化合物について特定するならば、0.001〜10重量%が望ましく、さらに価格的な点を配慮した場合、0.001〜2重量%がさらに望ましいが、これに限定されるものではなく、使用場面、使用用途、使用空間容積に鑑みて決定されるものである。
【0016】
本発明において、防虫成分を溶解するために使用される有機溶媒には、エチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒、灯油、潤滑油、パラフィン、ナフテン等の脂肪族炭化水素系溶媒、キシロール等の芳香族炭化水素系溶媒、エチルグリコール、プロピレングリコール等のグリコール系溶媒、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒等があるが、特にこれらに限定されるものではなく、これらを2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0017】
本発明において、乳化型製剤のために使用される界面活性剤には、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤があるが、特にこれらに限定されるものではなく、これらを2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0018】
本発明においては、防虫性能を有する低温蒸散型及び/又は常温蒸散型の化合物を単独で又は2種類以上を組み合わせて、さらには、蒸散性の低い又は非蒸散性の防虫化合物と2種類以上を組み合わせて、これらを粉状又は微粒状の担持体に一旦含浸させ、これをそのままで又は一定の形状に成形して使用することも可能である。
この場合、担持材料には二酸化珪素、タルク、クレー、炭酸カルシウム等の無機系材料、木粉、シクロデキストリン、小麦粉等の有機材料等が使用できるが、特にこれらに限定されるものではなく、これらを2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
また、成形剤として、デンプン、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース等が使用できるが、特にこれらに限定されるものではなく、これらを2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
成形する形状には、棒状、球状、ペレット状、カプセル状があるが、特にこれらの形状に限定されるものではなく、使用場面や用途に応じて自由に形状を決定できるものである。
【0019】
本発明においては、防虫性能を有する低温蒸散型及び/又は常温蒸散型の化合物を単独で又は2種類以上を組み合わせて、さらには、蒸散性の低い又は非蒸散性の防虫化合物と2種類以上を組み合わせ、これを樹脂(合成樹脂又は天然樹脂)に包埋させて成形又は予め高濃度の薬剤を含有するマスターバッチを作り、これを原料樹脂ペレットと混合し成形したものを使用することも可能である。
この場合、使用される樹脂には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等があるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0020】
本発明においては、防虫性能を有する低温蒸散型及び/又は常温蒸散型の化合物を単独で又は2種類以上を組み合わせて、さらには、蒸散性の低い又は非蒸散性の防虫化合物と2種類以上を組み合わせ、これを成形品(合成、天然又は再生素材)に含浸させたものを使用することも可能である。
この場合、使用される成形品には、ポリプロピレン樹脂等による不織布、ポリエステル等の合成繊維織布、綿、麻等の天然繊維織布、紙、ビニロン等の再生繊維織布等があるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0021】
次に、本発明のシロアリ防除剤を実施例により例証する。
【実施例1】
【0022】
エンペントリン(住友化学社製、純度96%以上)をプロピレングリコール(和光純薬工業社製、試薬1級、純度98%以上)に0.1重量%溶解させたものを準備し、これを実施例1とした。
内容量500mlの広口ポリプロピレン製容器及び長さ10、30、50、100cmに裁断した外径1cmのガラス管を準備した。ポリプロピレン製容器については、底部より2cmの部分に直径1cmの穴を穿った。この穴に各長さのガラス管を挿入することで2個のポリプロピレン製容器を連結し、H型の試験装置を作製した。次に一方のポリプロピレン製容器に、アメリカカンザイシロアリの職蟻(和歌山県串本産)を10頭と餌として木口1×1cm、長さ3cmに調製されたスギ辺材片1個を投入しフタをした。他方の容器には、底部に外径3.2cm、高さ1.5cmのガラス製シャーレを設置し、その中に実施例1を5ml滴下し、同様にフタをした。これをガラス管の長さごとに3組作製した。
試験装置はそのまま温度28℃に調整された暗所に7日間設置し、シロアリの健康状態を定期的に観察した。
また、エンペントリンに代えて蒸散性が低い3−フェノキシベンジルdl−シス/トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート(一般名:ペルメトリン、住友化学社製、純度96%以上)をプロピレングリコール(和光純薬工業社製、試薬1級、純度98%以上)に0.1重量%溶解させたものを準備し、これを比較例1として同様に試験を行った。
また、全く薬剤を含有しないプロピレングリコール(和光純薬工業社製、試薬1級、純度98%以上)のみのものを比較例2とし、実施例と同様に試験を行った。
表1に試験結果の概要を示す。
【0023】
【表1】

【0024】
表1からも明らかなように、実施例1のとおり、常温蒸散性のエンペントリンを使用することで、シロアリが直接薬剤に触れることがなくても、優れた殺虫効果をしかも速攻的に示すことが確認できた。
一方、比較例2のとおり、蒸散性の極めて低いペルメトリンを使用した場合は、わずかにシロアリの健康状態に影響を与えたが、7日間の試験中に死亡に至った固体を確認しなかった。
また、比較例3は、溶媒だけを用いて試験したが、全くシロアリの健康状態に影響を及ぼさなかった。
【実施例2】
【0025】
トクシールNR(トクヤマ製、有効成分:二酸化珪素)30重量部に対して、ポリビニルアルコール(クラレ社製、クラレポバールPVA−117、純度94%以上)を25重量%になるように加え、均一になるように混合した。これに水45重量部を加え、十分に攪拌、混合し、自社製作の回転押し出し式成形装置にて直径1cmの円筒状成形品を作った。これを60±2℃に調整された循環式乾燥機にて48時間乾燥し、長さ3cmに裁断した。一方、プロフルトリン(住友化学社製、純度93%以上)をメチルアルコールに1重量%になるように溶解したものを準備し、これを予め作製した成形物に対し、成形物重量の20%に相当する量を含浸させた後、室内に1昼夜放置、乾燥させることで実施例2を作製した。
実施例2について、実施例1と同様にシロアリに対する殺虫試験を実施した。なお、1試験あたり5個を1組として試験に供した。
また、エンペントリンに代えて蒸散性が低い2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル=3−フェノキシベンジル=エーテル(一般名:エトフェンプロックス、三井化学社製、純度96%以上)をメチルアルコールに1重量%になるように溶解したものを用いて実施例2と同様に試作したものを比較例3とし、実施例2と同様に試験を行った。
表2に試験結果の概要を示す。
【0026】
【表2】

【0027】
表2からも明らかなように、実施例2のとおり、常温蒸散性のプロフルトリンを使用することで、シロアリが直接薬剤に触れることがなくても、優れた殺虫効果をしかも速攻的に示すことが確認できた。
一方、比較例3のとおり、蒸散性の極めて低いエトフェンプロックスを使用した場合は、7日間の試験中に健康に異常をきたした固体を確認しなかった。
実施例1に比べ、実施例2ではややシロアリに対する反応が遅効的であったが、これは両者化合物の蒸散性の影響かと思われる。なお、一般に、プロフルトリンの蒸散性は、エンペントリンの2/5といわれている。
【実施例3】
【0028】
メトフルトリン(住友化学社製、純度96%以上)が15重量%含有するポリプロピレン樹脂(クラレ社製)のマスターバッチを、クラレリビング社に委託して製造した。
このマスターバッチと薬剤を含有しないポリプロピレン樹脂ペレットを重量比で9:1になるように混合し、射出成形(水冷式)することで、厚さ0.2mm、幅10cm、長さ10cmのシートを試作し、これを実施例3とした。これを、密閉性の高い1辺が1mの立方体容器(底部を除き、すべてガラス貼り)の上部中央に上から10cmの位置にシートの上縁がくるように吊した。
一方、容器底部の中央部には、アメリカカンザイシロアリ職蟻10頭と木口1×1cm、長さ3cmに調製されたスギ辺材片1個を入れた直径10cmのガラス製シャーレを設置し、一定期間放置した後のシロアリの健康状態を観察した。なお、試験は3回繰り返して行った。
メトフルトリンに代えて、3−フェノキシベンジルd−シス/トランス−クリサンテマート(一般名:フェノトリン、住友化学社製、純度96%以上)を使って同様な試験体を作製したものを比較例4とし、実施例3と同様に試験を行った。
表3に試験結果の概要を示す。
【0029】
【表3】

【0030】
表3からも明らかなように、実施例3のとおり、常温蒸散性のメトフルトリンを使用することで、シロアリが直接薬剤に触れることがなくても、優れた殺虫効果を示すことが確認できた。
一方、比較例4のとおり、蒸散性の極めて低いフェノトリンを使用した場合は、7日間の試験中に健康に異常をきたした固体を確認しなかった。
実施例1及び実施例2に比べ、実施例3ではシロアリに対する反応が遅行的であったが、これは空間容積が実施例1及び実施例2に比べて大きく、蒸散した薬剤が空間内に均一に拡散するために時間を要したためと考えられる。
【実施例4】
【0031】
メトフルトリン(住友化学社製、純度96%以上)0.01gを脱脂綿(白十字社製、シルキー綿球、直径約2cm)に含浸させたものを準備し、これを実施例4とした。
和歌山県田辺市にて採取されたアメリカカンザイシロアリ被害材(スギ丸太、直径約7cm、長さ約50cm)を入手し、予め白蟻探知機ターマトラック(オーストラリアTERATRAC社製)を用いて、それぞれシロアリの存在を確認した。この被害材の両端をエポキシ系樹脂でシールし、十分硬化させた後、被害材のほぼ中央部に直径1cm、深さ約3.5cmの穴を穿ち、その中に実施例4を3個詰め込み、さらに穴の口を固形ワックスでシールしものを2本準備した。
これらを約10日間放置し、一定期間ごとにターマトラックにて、シロアリの生存の有無を確認した。
メトフルトリンに代えて、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリン−2−インデンアミン(一般名:イミダクロプリド、バイエル社製、純度98%以上)をアセトンに溶解し、これをイミダクロプリドとして0.01gになるように脱脂綿(白十字社製、シルキー綿球、直径約2cm)に含浸させ、アセトンを完全に揮散させたものを比較例5とし、実施例4と同様に試験を行った。
表4に試験結果の概要を示す。
【0032】
【表4】

【0033】
表4からも明らかなように、実施例4のとおり、常温蒸散性のメトフルトリンを使用することで、シロアリが直接薬剤に触れることがなくても、蒸散した薬剤により優れた殺虫効果を示すことが確認できた。
一方、比較例5のとおり、蒸散性の極めて低いイミダクロプリドを使用した場合は、薬剤に接触する可能性の高い部位に生息するシロアリのみに対して死亡や生存密度の低下が見られたが、薬剤から離れた部分においては影響が見られなかった。
【0034】
以上、本発明のシロアリ防除剤について説明したが、本発明は上記の実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のシロアリ防除剤は、従来の液剤では処理しきれなかった空隙にも容易に薬剤が行き渡り、しかも周辺を汚損することなく効果的な防除が可能で、また、薬剤の使用量も従来の方法に比べ、少量で十分な性能を発揮できることから、居住空間や周辺の汚染、汚損等が極めて少なく、しかも価格的な利点も期待できるという特性を有していることから、乾材シロアリ用の防除剤の用途に好適に用いることができるほか、その他のシロアリ用の防除剤の用途にも広く用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気圧が1×10−3Pa/25℃以上の低温蒸散型及び/又は常温蒸散型の殺虫成分より選ばれる化合物の少なくとも1つを含有することを特徴とするシロアリ防除剤。
【請求項2】
低温蒸散型及び/又は常温蒸散型の殺虫成分より選ばれる化合物の少なくとも1つを有機溶媒に溶解してなることを特徴とする請求項1記載のシロアリ防除剤。
【請求項3】
有機溶媒に溶解させた後に界面活性剤を加えてなることを特徴とする請求項2記載のシロアリ防除剤。
【請求項4】
低温蒸散型及び/又は常温蒸散型の防虫成分より選ばれる化合物の少なくとも1つを、粉体若しくは微粒体又は両者の混合物、あるいは粉体若しくは微粒体又は両者の混合物を元に作られた成形品又は造粒品に含有させてなることを特徴とする請求項1記載のシロアリ防除剤。
【請求項5】
低温蒸散型及び/又は常温蒸散型の防虫成分より選ばれる化合物の少なくとも1つを樹脂に包埋又は成形品に含浸させてなることを特徴とする請求項1におけるシロアリ防除剤。
【請求項6】
乾材シロアリ用の防除剤であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のシロアリ防除剤。

【公開番号】特開2011−6350(P2011−6350A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150931(P2009−150931)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(500423307)三和インセクティサイド株式会社 (2)
【Fターム(参考)】