説明

シロアリ防除用塗料組成物

【課題】シロアリ防除効果が効率よくかつ長期間にわたって発揮される塗膜を形成するためのシロアリ防除用塗料組成物を提供すること。
【解決手段】樹脂エマルション(例えば、アクリル変性シリコーン樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション、これらの混合物など)と、無機系フィラー(例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン微粒子など)と、25℃の飽和蒸気圧が1.0×10-6Pa未満であるか、または、40℃で6ヶ月間開放保存後の残存率が55%以上であるシロアリ防除成分(例えば、クロチアニジンなど)と、を配合して、シロアリ防除用塗料組成物を調製する。上記シロアリ防除成分は、必要に応じて、マイクロカプセル化剤、粉剤または粒剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロアリ防除用塗料組成物に関し、詳しくは、建物の基礎部などにシロアリの防除効果に優れた塗膜を形成するためのシロアリ防除用塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物をシロアリによる食害から防護するために、種々の対策が検討されている。
上記対策の一例として、例えば、シロアリ防除成分が配合された塗料組成物を建物の基礎部分などに塗布して、塗膜を形成し、得られた塗膜によってシロアリの侵入を防止する方法が挙げられる。
また、特許文献1には、酢酸ビニル共重合体などの共重合体を塗料主要素とする塗料に、食害防止剤を配合してなる食害防止用塗料組成物が記載されている。
【0003】
特許文献2には、コロイダルシリカ、シラン系撥水剤、水性樹脂エマルションおよび他の無機物質などからなる無機系通気型撥水塗料に、防蟻剤を配合した白蟻防除用コーティング材が記載されており、さらに、この白蟻防除用コーティング材を塗布することにより、優れた通気性と、撥水性と、防蟻剤の徐放効果とを有する塗膜が形成されることが記載されている。また、同文献において、上記防蟻剤の好適態様としては、ピレスロイド系またはピレスロイド様化合物が挙げられている。
【0004】
特許文献3には、常温硬化性シーリング材に防蟻剤を配合した床下構造および/または布基礎の開口部分の隙間充填用組成物が記載されている。
特許文献4には、防蟻剤が配合された防蟻塗料であって、調製時および50℃の環境下で14日経過後の常温での粘度が3000〜9000mPa・sの範囲内であるものが記載されており、上記防蟻剤の好適態様としては、植物から抽出された防蟻作用を持つ精油(ヒバ油)が挙げられている。
【特許文献1】特開昭61−204285号公報
【特許文献2】特開平11−256076号公報
【特許文献3】特開2001−247850号公報
【特許文献4】特開2005−75967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、シロアリ防除成分が配合された塗料組成物を塗布した場合には、シロアリ防除成分が塗膜中に埋没して、所期のシロアリ防除効果が得られにくくなる。特に、特許文献1に記載の食害防止用塗料組成物には、このような傾向が顕著にみられ、シロアリ防除効果を向上させるためには、シロアリ防除成分を多量に配合しなければならないといった不具合がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載のシロアリ防除用コーティング材を用いた場合には、コロイダルシリカなどの微多孔質の成分によって防蟻剤が吸着保持されることから、防蟻剤が塗膜の表面に露出される割合が高くなるものの、その効果は十分ではない。また、防蟻剤は、徐放され、散逸することが前提であることから(同文献の段落[0003])、長期にわたってシロアリ防除効果を発揮させることが困難である。
【0007】
特許文献3に記載の隙間充填用組成物は、常温で硬化反応して、緻密な分子ネットワーク構造を形成することから、防蟻剤がその分子ネットワーク構造中に組み込まれることにより、充分な効果が発揮されなくなる。さらには、貯蔵中にも硬化反応が徐々に進行するため、シェルフライフ(有効期間)が比較的短時間になることを余儀なくされるという問題もある。
【0008】
特許文献4に記載の防蟻塗料については、同文献中において、長期間の貯蔵によって粘度が上昇することが示唆されており、長期間の貯蔵後には、その使用に支障をきたす程度の粘度上昇が生じているおそれがある。さらに、同文献に記載の防蟻塗料に使用される有効成分は、環境に優しいものの、防蟻性が不十分である。
そこで、本発明の目的は、シロアリ防除効果が効率よくかつ長期間にわたって発揮される塗膜を形成するためのシロアリ防除用塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために、シロアリ防除の有効成分を含有する塗料組成物について、鋭意検討したところ、樹脂エマルションに無機系フィラーを高濃度に配合させることにより、有効成分の塗膜表面上への露出が多くなりシロアリ防除効果を上げることが可能となり、また、特に、シロアリ防除成分として、ネオニコチノイド系化合物、なかでもクロチアニジンを用いると、水への溶解性、蒸気圧共に低いのでシロアリ防除効果が効率よくかつ長期間にわたって発揮されることが可能であり、上記の課題を解決できるとの知見を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1) 樹脂エマルションと、無機系フィラーと、シロアリ防除成分と、を含有し、前記シロアリ防除成分が、(i)25℃の飽和蒸気圧が1.0×10-6Pa未満であるか、または、(ii)40℃で6ヶ月間開放保存後の残存率が55%以上であることを特徴とする、シロアリ防除用塗料組成物、
(2) 前記シロアリ防除用塗料組成物中の前記無機系フィラーの含有量が、前記シロアリ防除用塗料組成物中の固形分100重量部に対し、10〜98重量部であることを特徴とする、前記(1)に記載のシロアリ防除用塗料組成物、
(3) 前記シロアリ防除用塗料組成物中の前記無機系フィラーの含有量が、前記シロアリ防除用塗料組成物中の固形分100重量部に対し、50〜98重量部であることを特徴とする、前記(1)に記載のシロアリ防除用塗料組成物、
(4) 前記シロアリ防除成分が、マイクロカプセル化剤であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のシロアリ防除用塗料組成物、
(5) 前記シロアリ防除成分が、粉状または粒状であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のシロアリ防除用塗料組成物、
(6) シロアリ防除剤が、シロアリに対して接触毒性を示すもの、または、接触毒性と摂食毒性とを示すものであることを特徴とする、前記(1)〜(5)のいずれかに記載のシロアリ防除用塗料組成物、
(7) 前記シロアリ防除成分が、ネオニコチノイド系化合物であることを特徴とする、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のシロアリ防除用塗料組成物、
(8) 前記ネオニコチノイド系化合物が、クロチアニジンであることを特徴とする、前記(7)に記載のシロアリ防除用塗料組成物、
(9) 前記樹脂エマルションが、アクリル変性シリコーン樹脂エマルションであることを特徴とする、前記(1)〜(8)のいずれかに記載のシロアリ防除用塗料組成物、
(10) 前記樹脂エマルションが、アクリル樹脂エマルションであることを特徴とする、前記(1)〜(8)のいずれかに記載のシロアリ防除用塗料組成物、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシロアリ防除用塗料組成物によれば、多孔性または高透湿性の塗膜を形成することができ、なおかつ、シロアリ防除成分を、単に、塗膜表面に吸着させるのではなく、塗膜表面に露出された状態で、塗膜にしっかりと固定させることができる。
それゆえ、本発明のシロアリ防除用塗料組成物によれば、シロアリ防除成分の徐放、散逸が抑制され、かつ、表面においてシロアリ防除成分とシロアリとが直接に接触され易い塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のシロアリ防除用塗料組成物は、無機系フィラーを配合した樹脂エマルションと、シロアリ防除成分とを含有している。
シロアリ防除用塗料組成物による防除の対象となるシロアリとしては、シロアリ(等翅)目に属する昆虫であること以外は、特に限定されないが、具体的には、例えば、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)、ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)などのミゾガシラシロアリ科に属するもの、アメリカカンザイシロアリ、ダイコクシロアリなどのレイビシロアリ科に属するものなどが挙げられる。
【0013】
シロアリ防除用塗料組成物に含有される樹脂エマルションとしては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法などの常法により、モノマーから合成したものが挙げられる。また、上記樹脂を溶剤に溶解させた溶液または上記樹脂を溶融させて液状としたものを、水中で強制乳化または転相乳化によりエマルションとし、界面活性剤でコロイド状態を安定化させたものであってもよい。
【0014】
また、樹脂エマルションを形成する樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これら樹脂は、単独で用いることができ、また、2種以上を混合して用いることもできる。
シリコーン樹脂としては、例えば、アルキル基および/またはアリール基を有するポリシロキサン、例えば、ポリシロキサンのシラノール基(−SiOH)と、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂などのヒドロキシル基(−OH)またはカルボキシル基(−COOH)とを反応させて得られる変性シリコーン樹脂などが挙げられる。なかでも好ましくは、ポリシロキサンのシラノール基と、アクリル系樹脂のヒドロキシル基またはカルボキシル基とを反応させて得られる、アクリル変性シリコーン樹脂が挙げられる。
【0015】
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸アルキル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなど。)、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなど。)などのモノマーの1種以上を付加重合したポリマーが挙げられる。
【0016】
スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂(スチレンと、上記アクリル樹脂を形成するモノマーの1種以上の共重合体)、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。
【0017】
酢酸ビニル系樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合樹脂などが挙げられる。
塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂などが挙げられる。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合樹脂などが挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂、環状脂肪族系エポキシ樹脂、長鎖脂肪族系エポキシ樹脂などが挙げられる。
ウレタン樹脂としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネートと、ブタンジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールなどのジオールとを重付加して得られるポリウレタン、例えば、上記ポリウレタンのエマルション中で、アクリル樹脂を形成するモノマー類(1種以上)を重合させて得られるアクリル変性ポリウレタンなどが挙げられる。
【0019】
上記例示の樹脂から形成される樹脂エマルションは、単独で用いることができ、また、2種以上を混合して用いることもできる。
樹脂エマルションとしては、上記例示のなかでも、好ましくは、シリコーン樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション、アクリル−スチレン樹脂エマルション、シリコーン樹脂エマルションとアクリル樹脂エマルションとの混合物、アクリル変性シリコーン樹脂エマルション、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルション、ウレタン−アクリル樹脂エマルションが挙げられ、より好ましくは、アクリル変性シリコーン樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルション、ウレタン−アクリル樹脂エマルションが挙げられる。
【0020】
シロアリ防除用塗料組成物中での樹脂エマルションの含有量は、固形分として、シロアリ防除用塗料組成物中の固形分100重量部に対し、好ましくは、2〜40重量部であり、より好ましくは、5〜30重量部である。
シロアリ防除用塗料組成物に含有される無機系フィラーとしては、例えば、シリカ、マイカ、タルク、石粉、珪藻土、クレー、火山灰、石炭灰、ベントナイト、グラファイト、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、アルミニウム末、鉄粉、二硫化モリブデン、硫酸バリウム、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄などが挙げられる。なかでも、好ましくは、炭酸カルシウム、酸化チタンが挙げられる。
【0021】
無機系フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは、0.001〜100μmであり、より好ましくは、0.1〜50μmである。無機系フィラーの粒子径および平均粒子径は、例えば、市販されているレーザ回折/散乱式粒度分布装置を用いて、粒子径の大きさとその分布状態(粒度分布)を測定することにより、求めることができる。
無機系フィラーの平均粒子径は、シロアリ防除用塗料組成物を用いて形成される塗膜の平滑性を維持し、かつ、シロアリ防除成分をしっかりと固定させることが可能な、多孔性または高透湿性の塗膜を形成するという観点より、上記範囲に設定されていることが好適である。
【0022】
シロアリ防除用塗料組成物中での無機系フィラーの含有量は、特に限定されないが、例えば、シロアリ防除用塗料組成物中の固形分100重量部に対し、好ましくは、10〜98重量部であり、より好ましくは、20〜90重量部であり、さらに好ましくは、50〜90重量部であり、特に好ましくは、60〜90重量部である。
無機系フィラーの含有量は、シロアリ防除用塗料組成物を用いて形成される塗膜の平滑性を維持し、かつ、シロアリ防除成分をしっかりと固定させることが可能な、多孔性または高透湿性の塗膜を形成するという観点より、上記範囲に設定されていることが好適である。
【0023】
シロアリ防除用塗料組成物には、上記無機系フィラーを適宜選択して配合することで、適宜の色に着色することができる。
シロアリ防除用塗料組成物の着色に用いることができる無機系フィラーとしては、例えば、白色系に着色するための酸化チタン、黄色系に着色するための黄色酸化鉄、赤色系に着色するための赤色酸化鉄、黒色系に着色するためのカーボンブラックなどが挙げられる。
【0024】
また、シロアリ防除用塗料組成物には、必要に応じて、保存剤(例えば、スライムコントロール剤、防腐剤、防かび剤、防藻剤など)、増粘剤、消泡剤、分散剤、揺変剤、保湿剤、可塑剤、老化防止剤などの添加剤を配合してもよい。
保存剤としては、例えば、ハロゲン化窒素硫黄化合物(例えば、商品名「スラオフ」シリーズ、日本エンバイロケミカルズ(株)製など)などのスライムコントロール剤、例えば、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート(慣用名:IPBC)、パラクロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール(商品名:IF−1000、長瀬産業(株)製)、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボナート(商品名:サンプラス、三共ライフテック(株)製)などの有機ヨウ素系防腐・防カビ・防藻剤、例えば、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:プロピコナゾール)、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:テブコナゾール)、α−(4−クロロフェニル)−α−(1−シクロプロピル−エチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:シプロコナゾール)などのトリアゾール系防腐・防カビ・防藻剤、例えば、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(一般名:DCMU)などのウレア系防藻剤、例えば、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−S−チアジン(商品名:イルガロール1051、チバガイギー社製)などのチアジン系防藻剤などが挙げられる。
【0025】
シロアリ防除用塗料組成物に含有されるその他の添加剤の含有量は、特に限定されないが、シロアリ防除用塗料組成物中の固形分100重量部に対し、好ましくは、1〜10重量部であり、より好ましくは、1〜5重量部である。
シロアリ防除用塗料組成物は、樹脂エマルション中または水中に分散した後、残りの原料を攪拌混合することにより製造することができる。
【0026】
シロアリ防除用塗料組成物に顔料を含有させる場合には、予め顔料をビーズミルなどの分散器中で樹脂エマルション中または水中に分散した後、残りの原料を攪拌混合すればよい。
シロアリ防除用塗料組成物に含有されるシロアリ防除成分としては、(i)25℃の飽和蒸気圧が1.0×10-6Pa未満であるか、または、(ii)40℃で6ヶ月間開放保存後の残存率が55%以上であるものが挙げられる。
【0027】
すなわち、シロアリ防除用塗料組成物に含有されるシロアリ防除成分は、上記(i)および(ii)のいずれかの条件を満たしていることが必要である。上記シロアリ防除成分が、上記(i)または(ii)の条件を満たすことで、シロアリ防除成分を塗膜の表面に保持させやすく(すなわち、シロアリ防除成分の揮散、消失を抑制し)、シロアリ防除効果を長期にわたって発揮させることができる。
【0028】
シロアリ防除成分の25℃の飽和蒸気圧は、上記範囲の中でも、好ましくは、1.0×10-6Pa未満であり、より好ましくは、5.0×10-7Pa以下である。
シロアリ防除成分の40℃で6ヶ月間開放保存後の残存率は、シロアリ防除成分を、気温が40±2℃に保たれた開放系内に放置し、試験開始当初と、6ヶ月経過後とでのシロアリ防除成分の重量変化に基づいて、揮発せずに残存した割合(%)を求めたものである。
【0029】
シロアリ防除成分の40℃で6ヶ月間開放保存後の残存率は、上記範囲の中でも、好ましくは、60%以上であり、より好ましくは、70〜100%である。
また、シロアリ防除剤は、シロアリに対して接触毒性を示すもの(接触毒となるもの)であるか、または、接触毒性と摂食毒性とを示すもの(接触毒であり、かつ、摂食毒であるもの)であることが好ましい。
【0030】
シロアリに対して接触毒性と摂食毒性とを示すシロアリ防除剤としては、例えば、後述するネオニコチノイド系化合物、後述するフェニルピラゾール系化合物、後述するカルバメート系化合物、後述する有機リン系化合物などが挙げられる。
また、上記(i)または(ii)の条件を満たすシロアリ防除成分としては、例えば、ネオニコチノイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カルバメート系化合物、ピロール系化合物、フェニルピラゾール系化合物、オキサダイアジン系化合物、セミカルバゾン系化合物、植物、植物の処理物または誘導体などが挙げられる。
【0031】
ネオニコチノイド系化合物としては、例えば、(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン)、N−アセチル−N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N−メトキシカルボニル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリン−2−イリデンアミン(一般名:イミダクロプリド)、3−(2−クロロ−チアゾール−5−イルメチル)−5−[1,3,5]オキサジアジナン−4−イルインデン−N−ニトロアミン(一般名:チアメトキサム)、(RS)−1−メチル−2−ニトロ−3−(テトラヒドロ−3−フリルメチル)グアニジン(一般名:ジノテフラン)などが挙げられる。これらネオニコチノイド系化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
また、上記例示のなかでも、好ましくは、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム、ジノテフランが挙げられ、より好ましくは、クロチアニジンが挙げられる。これらは、いずれも、飽和蒸気圧が極めて小さい薬剤である。それゆえ、これらを単体で(すなわち、例えば、後述するようなマイクロカプセル化の処理を経ずに)、塗料組成物中に配合した場合であっても、開放保存後の残存率を高い値で維持することができる。
【0033】
有機塩素系化合物としては、例えば、ケルセンなどが挙げられる。
有機リン系化合物としては、例えば、ホキシム、ピリダフェンチオン、フェニトロチオン、テトラクロルビンホス、ジクロフェンチオン、プロペタンホスなどが挙げられる。これら有機リン系化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
カルバメート系化合物としては、例えば、カルバリル、フェノブカルブ、プロポクスルなどが挙げられる。これらカルバメート系化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記例示のなかでも、好ましくは、フェノカルブが挙げられる。
【0034】
ピロール系化合物としては、例えば、クロルフェナピルなどが挙げられる。
フェニルピラゾール系化合物としては、例えば、フィプロニルなどが挙げられる。
オキサダイジン系化合物としては、例えば、インドキサカルブなどが挙げられる。
セミカルバゾン系化合物としては、例えば、α−(α,α,α−トリフルオロ−m−トルオイル)−p−トリニトリル4−(p−トリフルオロメトキシフェニル)セミカルバゾンなどが挙げられる。
【0035】
シロアリ防除成分としての植物、および、その処理物またはその誘導体としては、例えば、特開2002−307406号公報、特開2003−252708号公報、特開2005−74776号公報に記載されたものが挙げられる。
上記例示のシロアリ防除成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記例示のシロアリ防除成分のなかでは、ネオニコチノイド系化合物、カルバメート系化合物、フェニルピラゾール系化合物が好ましく、ネオニコチノイド系化合物、フェニルピラゾール系化合物がより好ましく、ネオニコチノイド系化合物が特に好ましい。また、ネオニコチノイド系化合物のなかでも、特に、クロチアニジンが好ましい。
【0036】
塗膜形成をした場合、土壌処理剤のように層形成による厚みでシロアリ防除を行なうのでははく、シロアリに対する忌避作用または接触毒作用によってシロアリが塗膜上を歩けないようにするか、シロアリが塗膜上を歩いた場合に、接触毒作用または摂食毒作用により、シロアリを確実に死に至らしめることが必要である。
しかし、シロアリ防除成分が、シロアリに対し、主として忌避性や摂食毒性を示すものである場合には、シロアリの生態上、シロアリが塗膜上を歩くことを完全に抑制することは非常に困難であることが明らかとなった。シロアリ防除成分が、主として摂食毒性のみを示す場合に、摂食毒作用を発現させるには、シロアリが塗膜を噛んで、シロアリ防除成分を体内に取り込むことが必要となるため、シロアリが塗膜上を歩くことを抑制することは非常に困難であることが明らかとなった。
【0037】
さらに、本発明においては、例えば、ネオニコチノイド系化合物や、フェニルピラゾール系化合物のように、忌避性を有していないが、接触毒性、または、接触毒性と摂食毒性を有しているシロアリ防除成分が好適であり、このようなシロアリ防除成分を用いることで、シロアリが塗膜上を歩くことを抑制し、かつ、シロアリを確実に死に至らしめることができることが明らかとなった。
【0038】
シロアリ防除用塗料組成物に含有されるシロアリ防除成分の量は、特に限定されないが、シロアリ防除用塗料組成物中の固形分100重量部に対し、好ましくは、0.01〜5重量部であり、より好ましくは、0.02〜2.5重量部である。
また、上記シロアリ防除成分は、その製剤形態について限定されず、例えば、粉状物、粒状物、マイクロカプセル化剤、液剤、フロアブル剤または乳剤などとして調製される。
【0039】
なかでも、マイクロカプセル化剤には、シロアリ防除成分を開放状態で保存した場合の残存率を向上させる作用があることから、本発明において好適である。
具体的に、例えば、シロアリ防除成分の25℃の飽和蒸気圧が、上記(i)の条件(1.0×10-6Pa未満)から外れている場合であっても、そのシロアリ防除成分をマイクロカプセル化することによって、40℃で6ヶ月間開放保存した後の残存率を、上記(ii)に示す範囲に設定することができる。
【0040】
シロアリ防除成分のマイクロカプセル化剤は、例えば、界面重合法、in situ重合法(界面反応法)、コアセルベーション法、液中乾燥法、融解分散冷却法、液中硬化皮膜法、コーティング法(気中懸濁法)、スプレードライ法、静電合体法、真空蒸着法などにより調製できる。シロアリ防除成分のマイクロカプセル化の具体的手法としては、例えば、特開昭61−249904号公報、特公平6−92282号公報、特公平6−92283号公報、特開平10−114608号公報、特開2000−247821号公報に記載の方法が挙げられる。また、シロアリ防除成分が、例えば、難溶解性のネオニコチノイド系化合物である場合には、例えば、特開2000−247821号公報に記載の方法により、ネオニコチノイド系化合物をマイクロカプセル化することが好ましい。
【0041】
マイクロカプセル化剤は、その平均粒子径を、6〜100μm、好ましくは、10〜30μmに調整することが好ましい。マイクロカプセル化剤の粒子径および平均粒子径は、例えば、市販されているレーザ回折/散乱式粒度分布装置を用いて、粒子径の大きさとその分布状態(粒度分布)を測定することにより、求めることができる。
シロアリ防除成分をマイクロカプセル化剤として調製した場合には、得られたマイクロカプセル化剤を含む水分散液に、上記の樹脂エマルションを配合し、さらに、必要により、分散剤、界面活性剤、沈降防止剤などを適宜配合して、得られた水懸濁液を乾燥させることにより、シロアリ防除剤を得ることができる。
【0042】
シロアリ防除成分が粉状または粒状であるものは、例えば、シロアリ防除成分を適当な溶媒に溶解、分散させて、スプレードライ法などの手段で粉剤化または粒状化させるなど、公知の方法により調製できる。
粉状物または粒状物は、その平均粒子径を、0.1〜2000μm、好ましくは、1〜500μmに調整することが好ましい。粉状物または粒状物の粒子径および平均粒子径は、例えば、マイクロカプセル化剤の場合と同様にして、求めることができる。
【0043】
シロアリ防除成分を粉状物または粒状物として調製した場合には、得られた粉状物または粒状物と、上記の樹脂エマルションとを配合して、攪拌、混合することにより、シロアリ防除剤を得ることができる。
シロアリ防除成分の液剤、フロアブル剤または乳剤は、シロアリ防除成分を適当な溶媒(水または有機溶媒)に、必要に応じて、界面活性剤や乳化剤とともに、溶解、懸濁または乳化させることにより調製できる。
【0044】
シロアリ防除成分を液剤、フロアブル剤または乳剤として調製した場合には、得られた液剤、フロアブル剤または乳剤と、上記の水蒸気透過型塗膜成分とを配合して、公知の方法により、攪拌、混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得ることができる。
上記シロアリ防除用塗料組成物を塗布する対象物としては、特に限定されないが、例えば、建物の基礎部に用いられるコンクリートなどが挙げられる。
【0045】
上記シロアリ防除用塗料組成物の使用方法は、特に限定されないが、例えば、公知の塗布方法(例えば、はけ塗り、スプレーなど。)によって、例えば、建物基礎部のコンクリートの表面、基礎に立設される外壁や内壁の表面などに塗布すればよい。より具体的には、例えば、有効成分としてのシロアリ防除成分が0.001〜5重量%の割合で含有されたシロアリ防除用塗料組成物の場合、建物基礎部のコンクリートの表面に対して、50〜500g/m2で塗布すればよい。
【実施例】
【0046】
次に、本発明を参考例、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
下記の参考例で使用した成分は、次のとおりである。
・アクリル変性シリコーン樹脂エマルション:不揮発分48%、商品名「塗料用モビニール(登録商標)7220」、ニチゴー・モビニール(株)製
・アクリル樹脂エマルション:不揮発分47%、商品名「塗料用モビニール(登録商標)LDM7156」、ニチゴー・モビニール(株)製
・エチレン−酢ビ樹脂エマルション:不揮発分55%、商品名「エバーディックEV−15」、大日本インキ化学工業(株)製
・ウレタン−アクリル樹脂エマルション:不揮発分45%、商品名「ボンコート(登録商標)CC−5050」、大日本インキ化学工業(株)製
・無機系フィラー:炭酸カルシウム、白石カルシウム(株)製
・無機系フィラー:酸化チタン微粒子、平均粒子径0.25μm、商品名「CR−97」、石原産業(株)製
・保存剤:スライムコントロール剤、(有効成分)ハロゲン化窒素硫黄化合物、商品名「スラオフ WB」、日本エンバイロケミカルズ(株)製
・増粘剤:(有効成分)ヒドロキシエチルセルロース、商品名「SP−600」、ダイセル化学工業(株)製
・消泡剤:(有効成分)パラフィン系ミネラルオイルと疎水性成分との混合物。シリコン含有。商品名「BYK−034」、ビックケミー・ジャパン(株)製
・分散剤:(有効成分)ブロック共重合物、商品名「Disper byk−184」、ビックケミー・ジャパン(株)製
・保湿剤:(有効成分)プロピレングリコール、商品名「PG」、旭硝子(株)製
<塗料形成用組成物の調製>
参考例1
下記表1に示す成分を同表に示す割合で配合して、攪拌、混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物形成用の塗料組成物1(塗料用組成物1)を得た。
【0047】
なお、表1および下記の表2〜6において、各配合成分の「固形分の重量割合」は、四捨五入された値である。このため、「固形分の重量割合」の合計値は、必ずしも100にならない。
【0048】
【表1】

参考例2
下記表2に示す成分を同表に示す割合で配合して、攪拌、混合することにより、塗料用組成物2を得た。
【0049】
【表2】

参考例3
下記表3に示す成分を同表に示す割合で配合して、攪拌、混合することにより、塗料用組成物3を得た。
【0050】
【表3】

参考例4
下記表4に示す成分を同表に示す割合で配合して、攪拌、混合することにより、塗料用組成物4を得た。
【0051】
【表4】

参考例5
下記表5に示す成分を同表に示す割合で配合して、攪拌、混合することにより、塗料用組成物5を得た。
【0052】
【表5】

参考例6
下記表6に示す成分を同表に示す割合で配合して、攪拌、混合することにより、塗料用組成物6を得た。
【0053】
【表6】

シロアリ防除成分を市販されている製剤の希釈時濃度を参考として希釈し、希釈液3gをけい砂12gに混合し、6Kガラス瓶にいれ、蓋をせず、40℃環境中に保存し、6ヶ月後の残存率を測定した。保存は、危険物乾燥機(商品名「セーフベンドライヤN50−S5」、佐竹化学機械工業(株)製、平均循環風量20m3/分)内に保管することにより行った。シロアリ防除成分の飽和蒸気圧とシロアリ防除成分の床下残存率および40℃保存時の残存率を表7に示す。
【0054】
【表7】

表7に示した飽和蒸気圧のうち、イミダクロプリドとペルメトリンについては、温度20℃での測定値であり、ジノテフランについては、温度30℃での測定値であり、エトフェンプロックスについては、温度100℃での測定値である。なお、25℃での飽和蒸気圧は、通常、20℃での測定値よりも若干大きくなり、30℃での測定値よりも若干小さくなるが、1/10も変化することはない。また、エトフェンプロックスの飽和蒸気圧は100℃でのデータであるが、25℃での値は、1.0×10-6未満とはならないと予想される。
【0055】
実施例1
「タケロックMC50E」(有効成分クロチアニジン(表7に示すシロアリ防除成分「A−1」)を5重量%含有するマイクロカプセル剤、日本エンバイロケミカルズ(株)製)を、上記表1に示す塗料用組成物1で50倍希釈し、攪拌混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0056】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、クロチアニジンの含有量は、0.1重量部であり、樹脂エマルション(アクリル変性シリコーン樹脂およびアクリル樹脂)の固形分の含有量は、20.1重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、76.4重量部であった。
実施例2
「タケロックCLMN10」(有効成分クロチアニジンを10重量%含有するN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液、日本エンバイロケミカルズ(株)製)を、上記表1に示す塗料用組成物1で100倍希釈し、攪拌混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0057】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、クロチアニジンの含有量は、0.1重量部であり、樹脂エマルション(アクリル変性シリコーン樹脂およびアクリル樹脂)の固形分の含有量は、20.3重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、77.2重量部であった。
実施例3
「ハチクサンFL」(有効成分イミダクロプリド(表7に示すシロアリ防除成分「A−2」)を20重量%含有するフロアブル剤、バイエルクロップサイエンス(株)製)を、上記表1に示す塗料用組成物1で200倍希釈し、攪拌混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0058】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、イミダクロプリドの含有量は、0.1重量部であり、樹脂エマルション(アクリル変性シリコーン樹脂およびアクリル樹脂)の固形分の含有量は、20.3重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、77.6重量部であった。
実施例4
チアメトキサム(表7に示すシロアリ防除成分「A−3」)を5重量%含有するNMP混合液(和光純薬工業(株)製)を、上記表1に示す塗料用組成物1で50倍希釈し、攪拌混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0059】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、チアメトキサムの含有量は、0.1重量部であり、樹脂エマルション(アクリル変性シリコーン樹脂およびアクリル樹脂)の固形分の含有量は、20.1重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、76.4重量部であった。
実施例5
「ミケブロック」(有効成分ジノテフラン(表7に示すシロアリ防除成分「A−4」)を20重量%含有する顆粒水溶剤、三共ライフテック(株)製)を、上記表1に示す塗料用組成物1で100倍希釈し、攪拌混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0060】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、ジノテフランの含有量は、0.2重量部であり、樹脂エマルション(アクリル変性シリコーン樹脂およびアクリル樹脂)の固形分の含有量は、20.3重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、76.4重量部であった。
実施例6
「バックトップMC」(有効成分フェノカルブ(表7に示すシロアリ防除成分「A−5」)を15重量%含有するマイクロカプセル剤、住友化学工業(株)製)を、上記表1に示す塗料用組成物1で20倍希釈し、攪拌混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0061】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、フェノカルブの含有量は、0.75重量部であり、樹脂エマルション(アクリル変性シリコーン樹脂およびアクリル樹脂)の固形分の含有量は、19.5重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、74.1重量部であった。
実施例7
「グレネードMC」(有効主成分フィプロニル(表7に示すシロアリ防除成分「A−6」)を2.5重量%含有するマイクロカプセル剤、住友化学工業(株)製)を、上記表1に示す塗料用組成物1で125倍希釈し、攪拌混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0062】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、フィプロニルの含有量は、0.02重量部であり、樹脂エマルション(アクリル変性シリコーン樹脂およびアクリル樹脂)の固形分の含有量は、20.3重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、77.38重量部であった。
実施例8
「タケロックMC50E」(有効成分クロチアニジンを5重量%含有するマイクロカプセル剤、日本エンバイロケミカルズ(株)製)を、上記表2に示す塗料用組成物2で50倍希釈し、攪拌混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0063】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、クロチアニジンの含有量は、0.1重量部であり、樹脂エマルション(アクリル変性シリコーン樹脂およびアクリル樹脂)の固形分の含有量は、12.8重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、83.2重量部であった。
実施例9
「タケロックMC50E」を、上記表3に示す塗料用組成物3で50倍希釈し、攪拌混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0064】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、クロチアニジンの含有量は、0.1重量部であり、樹脂エマルション(アクリル変性シリコーン樹脂)の固形分の含有量は、7.15重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、89.5重量部であった。
実施例10
「タケロックMC50E」を、上記表4に示す塗料用組成物4で50倍希釈し、攪拌混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0065】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、クロチアニジンの含有量は、0.1重量部であり、樹脂エマルション(アクリル樹脂)の固形分の含有量は、7.06重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、89.6重量部であった。
実施例11
「タケロックMC50E」を、上記表5に示す塗料用組成物5で50倍希釈し、攪拌混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0066】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、クロチアニジンの含有量は、0.1重量部であり、樹脂エマルション(エチレン−酢酸ビニル樹脂)の固形分の含有量は、8.13重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、88.6重量部であった。
実施例12
「タケロックMC50E」を、上記表6に示す塗料用組成物6で50倍希釈し、攪拌混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0067】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、クロチアニジンの含有量は、0.1重量部であり、樹脂エマルション(ウレタン−アクリル樹脂)の固形分の含有量は、6.76重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、90.0重量部であった。
実施例13
クロチアニジン1gを100mlのアセトンに溶解し、タルク100g(粒径10μm)に混合しながら乾燥し粉状物を得た。上記表1に示す塗料用組成物1で100倍希釈し、攪拌混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0068】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、クロチアニジンの含有量は、0.99重量部であり、樹脂エマルション(アクリル変性シリコーン樹脂およびアクリル樹脂)の固形分の含有量は、20.3重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、77.2重量部であった。
実施例14
クロチアニジン1重量部と、タルク(粒径10μm)98重量部と、ポリビニルアルコール(PVA−217((株)クラレ製)1重量部とを混合し、得られた混合物に、60℃の温水10重量部を加え、混合、乾燥後、篩い分けにより、粒径300μmの粒状物を得た。次に、上記粒状物を、上記表1に示す塗料用組成物1で100倍希釈し、攪拌混合することによりシロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0069】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、クロチアニジンの含有量は、0.01重量部であり、樹脂エマルション(アクリル変性シリコーン樹脂およびアクリル樹脂)の固形分の含有量は、20.3重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、77.2重量部であった。
比較例1
ペルメトリン(表7に示すシロアリ防除成分「B−1」、ヘルベルト−ハインツ−ヴィンクラーGmbH製)をNMPで希釈して、5重量%NMP混合液を調製し、さらに、得られたペルメトリンのNMP混合液を、上記表1に示す塗料用組成物1で50倍希釈し、攪拌混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0070】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、ペルメトリンの含有量は、0.1重量部であり、樹脂エマルション(アクリル変性シリコーン樹脂およびアクリル樹脂)の固形分の含有量は、20.1重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、76.4重量部であった。
比較例2
エトフェンプロックス(表7に示すシロアリ防除成分「B−2」、和光純薬工業(株)製)をNMPで希釈して、4重量%NMP混合液を調製し、さらに、得られたエトフェンプロックスのNMP混合液を、上記表1に示す塗料用組成物1で20倍希釈し、攪拌混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0071】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、エトフェンプロックスの含有量は、0.2重量部であり、樹脂エマルション(アクリル変性シリコーン樹脂およびアクリル樹脂)の固形分の含有量は、19.5重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、74.1重量部であった。
比較例3
ビフェントリン(表7に示すシロアリ防除成分「B−3」、和光純薬工業(株)製)をNMPで希釈して、2重量%NMP混合液を調製し、さらに、得られたビフェントリンのNMP混合液を、上記表1に示す塗料用組成物1を用いて200倍希釈し、攪拌混合することにより、シロアリ防除用塗料組成物を得た。
【0072】
上記シロアリ防除用塗料組成物の固形分100重量部中において、ビフェントリンの含有量は、0.01重量部であり、樹脂エマルション(アクリル変性シリコーン樹脂およびアクリル樹脂)の固形分の含有量は、20.4重量部であり、無機系フィラー(炭酸カルシウムおよび酸化チタン微粒子)の含有量は、77.6重量部であった。
評価試験
(1) 貫通試験
図1は、貫通試験に用いた試験装置を示す斜視図である。
【0073】
直径9cmのシャーレ1中に、無処理の含水ケイ砂(水分含有量10%)を敷き詰めて、厚さ1cmの含水ケイ砂層2を形成し、得られた含水ケイ砂層2の中心部に、内径約3.5cm、高さ9cmの円筒3を設置した。さらに、円筒3の内部に無処理のケイ砂を敷き詰めて、厚さ3cmのケイ砂層4を形成した。一方、実施例1のシロアリ防除用塗料組成物3gと、無処理のケイ砂12gとを混合し、得られた混合物(供試試料)を、円筒3内のケイ砂層4上に敷き詰めて、供試試料層5を形成した。さらに、供試試料層5上に、木口1cm×1cm、長さ2cmのマツの餌木6を設置した。
【0074】
その後、シャーレ1と円筒3との間の無処理の含水ケイ砂層2上に、イエシロアリの職蟻150頭と、兵蟻15頭とを放虫した。放虫後、イエシロアリ7が、円筒3内のケイ砂層4と供試試料層5とを貫通して、餌木6に到達できるか否かを、3週間観察した。
また、実施例2〜14および比較例1〜3のシロアリ防除用塗料組成物についても、同様にして供試試料層5を形成し、上記と同様にして、供試試料層5の貫通の可否を観察した。
【0075】
上記観察の結果、実施例1〜14および比較例1〜3のいずれのシロアリ防除用塗料組成物を用いた場合であっても、放虫から3週間経過後において、供試試料層5の貫通は観察されなかった。
なお、シロアリ防除用塗料組成物と無処理のケイ砂との混合物に代えて、無処理のケイ砂15gのみを用いて供試試料層5を形成したこと以外は、上記と同様にして貫通試験を行った場合には、イエシロアリ7が、放虫から1日後に、餌木6に到達したことが観察された。
【0076】
(2) 這い上がり試験
図2は、這い上がり試験に用いた試験装置を示す正面図である。
底面の直径が約8cmのポリカップ(内容量500mL)10に、無処理の含水ケイ砂(水分含有量10%)を敷き詰めて、厚さ3cmの含水ケイ砂層11を形成し、得られた含水ケイ砂層11の中心部に、直方体(底面30mm四方、高さ60mm)のコンクリートブロック12を設置した。このコンクリートブロック12の側面には、天面側の端縁から底面側へ幅50mmの領域に、上記実施例で得られたシロアリ防除用塗料組成物を塗布して、塗膜13を形成し、40℃環境中に3ヶ月間保管したものである。なお、シロアリ防除用塗料組成物の塗布量は、300g/m2となるように調整した。また、コンクリートブロック12の側面のうち、底面側の端縁から天面側へ幅10mmの領域については、シロアリ防除成分などが含水ケイ砂層11に溶出することを防止するために、無処理とした。
【0077】
さらに、コンクリートブロック12の上に、木口1cm×1cm、長さ2cmのマツの餌木14を2個配置した。
次いで、含水ケイ砂層11上に、イエシロアリの職蟻200頭と、兵蟻20頭とを放虫し、ポリカップ10の開口部をラップで封止した。放虫後、シロアリ7の挙動を3日間観察した。
【0078】
なお、この試験では、試験開始から数時間は、シロアリ7が環境の変化に驚いて、コンクリートブロック12の側面をよじ登り、餌木14に到達する行動が観察された。しかし、1日経過することにより、シロアリ7の行動が落ち着き、その結果、シロアリ防除用塗料組成物による影響が観察できるようになった。
実施例1〜14および比較例1〜3の製剤を用いた場合の観察の結果を表8に示す。
【0079】
なお、コンクリートブロック12の側面にシロアリ防除用塗料組成物の塗膜13を形成しなかった場合(無処理;対照)には、含水ケイ砂層11と餌木14との間を行き来するシロアリ7を多数観察することができた。
【0080】
【表8】

表8の「シロアリ防除成分」、「剤形」欄は、シロアリ防除成分の剤形を示しており、「MC」は、マイクロカプセルを、「NMP」は、N−メチル−2−ピロリドン溶液を、「FL」は、フロアブル剤を、「G」は、顆粒剤を、「D」は、粉剤を、それぞれ示している。
【0081】
表8の「塗料用組成物」欄において、「倍率」は、シロアリ防除成分を、塗料用組成物で何倍に希釈したかを示している。
また、表8の「這い上がり試験結果」欄において、「忌避」は、シロアリが、シロアリ防除用塗料組成物からなる塗膜に触れないように移動することをいう。また、「数頭 移動」は、コンクリートブロック13の側面を登ったり、下ったりしたことを示している。
【0082】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明のシロアリ防除用塗料組成物は、例えば、建物の基礎部に用いられるコンクリートなど(具体的には、建物基礎部のコンクリートの表面、基礎に立設される外壁や内壁の表面など)に、シロアリ防除効果を有する塗膜を形成する用途において、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】貫通試験に用いた試験装置を示す斜視図である。
【図2】這い上がり試験に用いた試験装置を示す正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂エマルションと、無機系フィラーと、シロアリ防除成分と、を含有し、
前記シロアリ防除成分が、
(i) 25℃の飽和蒸気圧が1.0×10-6Pa未満であるか、または、
(ii) 40℃で6ヶ月間開放保存後の残存率が55%以上である
ことを特徴とする、シロアリ防除用塗料組成物。
【請求項2】
前記シロアリ防除用塗料組成物中の前記無機系フィラーの含有量が、前記シロアリ防除用塗料組成物中の固形分100重量部に対し、10〜98重量部であることを特徴とする、請求項1に記載のシロアリ防除用塗料組成物。
【請求項3】
前記シロアリ防除用塗料組成物中の前記無機系フィラーの含有量が、前記シロアリ防除用塗料組成物中の固形分100重量部に対し、50〜98重量部であることを特徴とする、請求項1に記載のシロアリ防除用塗料組成物。
【請求項4】
前記シロアリ防除成分が、マイクロカプセル化剤であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のシロアリ防除用塗料組成物。
【請求項5】
前記シロアリ防除成分が、粉状または粒状であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のシロアリ防除用塗料組成物。
【請求項6】
シロアリ防除剤が、シロアリに対して接触毒性を示すもの、または、接触毒性と摂食毒性とを示すものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のシロアリ防除用塗料組成物。
【請求項7】
前記シロアリ防除成分が、ネオニコチノイド系化合物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のシロアリ防除用塗料組成物。
【請求項8】
前記ネオニコチノイド系化合物が、クロチアニジンであることを特徴とする、請求項7に記載のシロアリ防除用塗料組成物。
【請求項9】
前記樹脂エマルションが、アクリル変性シリコーン樹脂エマルションであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のシロアリ防除用塗料組成物。
【請求項10】
前記樹脂エマルションが、アクリル樹脂エマルションであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のシロアリ防除用塗料組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−146159(P2007−146159A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299389(P2006−299389)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】