説明

シロイノシトール誘導体を含む組成物およびタンパク質凝集障害を治療するための方法

【課題】シロイノシトール誘導体を含む組成物およびタンパク質凝集障害を治療するための方法の提供。
【解決手段】本発明は、タンパク質の折り畳み及び/又は凝集、及び/又はアミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続における障害のような障害及び/又は疾患の治療において有益な効果をもたらす、シロイノシトール化合物を含む組成物、方法及び使用を提供する。本発明は又、1種以上の薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルと共に、シロイノシトール化合物、特に純粋なシロイノシトール化合物、より具体的には実質的に純粋なシロイノシトール化合物を含む、有益な効果、特に持続する有益な効果をもたらすために被験体に投与することを目的とした薬学組成物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にシロイノシトール化合物及び組成物、及び該組成物の方法及び使用に関しており、特に異常なタンパク質の折り畳み又は凝集、或いはアミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続によって特徴付けられる疾患の治療のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミロイドβ−ペプチド(Aβ)の神経毒性のオリゴマー/線維凝集体の蓄積が、アルツハイマー病(AD)の原因における中心的事象であることは、多数の証拠が示唆している[1,2]。これは、Aβの生成を(β−又はγ−セクレターゼ阻害剤により)阻害する、その除去を促進する、又はその凝集及び毒性を予防することに基づく治療法を開発する試みをもたらす。ADの抗Aβ治療の潜在的な有用性は、AD被験体の小集団における臨床的及び神経病理学的改善を示唆するワクチンの臨床試験から暫定的な裏付けが得られている[非特許文献1,非特許文献2]。しかし、一部の被験体では、抗Aβワクチンが媒介髄膜脳炎も誘発するため、前記の特定のワクチンが広範な臨床的使用に不適当となる原因となっている[非特許文献3]。
【0003】
それにもかかわらず、一部のマウスのモデルでは、AβワクチンがAβ線維形成及び毒性の抗体媒介阻害を通じて作用することが示されている[6〜8]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Nicoll,J.A.R.ら、「Neuropathology of human Alzheimer disease after immunization with amyloid−β peptide;a case report」、Nat.Med.(2003)9,448−452
【非特許文献2】Hock C.ら、「Antibodies against beta−amyloid sloe cognitive decline in Alzheimer’s disease」、Neuron(2003)38,547−554
【非特許文献3】Orgogozo,J.M.ら、「Subacute meningoencephalitis in a subset of patients with AD after Aβ42 immunization」、Neurology(2003)61,46−54
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、免疫療法の潜在的な危険を回避する、小分子のAβ凝集阻害剤を同定することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、組成物、とりわけ本明細書に開示される障害及び/又は疾患、特にタンパク質の折り畳み及び/又は凝集、及び/又はアミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続による疾患における障害の治療に有益な効果をもたらすシロイノシトール化合物を含む薬学組成物を提供する。一態様では、本発明が、有益な効果、特に治療後に持続する有益な効果をもたらす1種以上のシロイノシトール化合物を含む薬学組成物を提供する。本発明の組成物によってもたらされる有益な効果には、強化された治療効果、特に持続する治療効果が含まれる。
【0007】
本発明は又、場合により1種以上の薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルと共に、シロイノシトール化合物、特に純粋なシロイノシトール化合物、より具体的には実質的に純粋なシロイノシトール化合物を含む、有益な効果、特に持続する有益な効果をもたらすために被験体に投与することを目的とした薬学組成物も提供する。
【0008】
本発明は又、持続する有益な効果をもたらすシロイノシトール化合物の治療上有効な量を薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクル中に含む、障害及び/又は疾患の治療のための薬学組成物も提供する。
【0009】
一態様では、障害及び/又は疾患を治療する上で持続する有益な効果をもたらすために被験体に投与されるように適応されている、シロイノシトール化合物を含む薬学組成物が提供される。一実施態様では、該組成物が、Aβ線維の集合又は凝集、Aβ毒性、異常なタンパク質の折り畳み又は凝集、アミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続、及び/又はアミロイド脂質の相互作用、及び/又は既に形成された繊維の分解促進を引き起こす障害及び/又は疾患を発症する被験体に投与するような形態となっている。特に該組成物は、特に治療中止後に持続した時間の間に、凝集したAβ又はAβオリゴマーの分解、長期増強作用の増加又は回復、シナプス機能の維持;及び/又はアミロイドβの脳への蓄積の低下、脳アミロイドプラーク沈着、脳内の可溶性Aβオリゴマー、グリア活性、炎症、及び/又は認知機能低下の減少を引き起こす形態となっている。
【0010】
本発明は、障害及び/又は疾患、特にアミロイド沈着、より具体的にはアルツハイマー病の治療において、有益な効果、特に持続する有益な効果をもたらすシロイノシトール化合物を含む組成物に関する。
【0011】
別の態様では、本発明が、特に治療中止後に持続した時間の間に、該被験体においてAβ又はAβオリゴマーの凝集を阻害し、長期増強作用を増加又は回復させ、及び/又はシナプス機能を維持し、及び/又はアミロイドβの脳への蓄積、脳アミロイドプラーク沈着、脳内の可溶性Aβオリゴマー、グリア活性、炎症、及び/又は認知機能低下を減少させる上で有効な投与量のシロイノシトール化合物を含む組成物を特徴とする。該組成物は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクル中に含まれてもよい。
【0012】
本発明は更に、有益な効果、好ましくは治療後に持続する有益な効果をもたらすように適応された1種以上のシロイノシトール化合物を含む安定した医薬組成物の調製方法を提供する。本発明は更に、有益な効果、好ましくは治療後に持続する有益な効果をもたらすように適応された、1種以上の純粋な、特に実質的に純粋なシロイノシトール化合物の治療上有効な量を含む医薬組成物の調製方法を提供する。組成物は、調製された後、適切な容器に入れ、所定の病状の治療のために標示される。本発明の組成物の投与の場合、当該標示には、投与量、投与回数及び投与方法が含まれる。
本発明で使用するシロイノシトール化合物は、in vivoにおいて活性化合物に変換されるプロドラッグの形態となる場合がある。例として、シロイノシトール化合物は、被験体に投与された後に開裂して活性(例えば、治療上活性な)化合物、又はそれに続いて活性化合物を生成する中間体化合物を得る、開裂可能な基からなる場合がある。開裂可能な基は、酵素又は非酵素の何れかにより除去することができるエステルとなる場合がある。
【0013】
本発明で使用するシロイノシトール化合物は、場合により該化合物と相互作用する担体を含む場合がある。担体には、ポリマー、炭水化物又はペプチド、又はそれらの混合物が含まれる場合がある。担体は、例えば1種以上のアルキル、ハロ、チオール、ヒドロキシル又はアミノ基により置換される場合がある。
【0014】
一態様では、1種以上のシロイノシトール化合物又はその栄養学的に許容可能な誘導体を含む栄養補助剤を提供する。一態様では、本発明が、シロイノシトール化合物又はその栄養学的に許容可能な誘導体を含む、記憶力を向上させる目的からほ乳類、特にヒトが消費する栄養補助剤を提供する。別の態様では、本発明が、該栄養補助剤を摂取した個人の心理作用の悪化を遅らせ、記憶力、特に短期記憶を向上させることを目的とした、シロイノシトール化合物又はその栄養学的に許容可能な誘導体を含む栄養補助剤を提供する。本発明の栄養補助剤は、好ましくは心地よい味をしており、体内に効率的に吸収され、大きな治療効果をもたらす。
本発明は又、シロイノシトール化合物を含有する市販の製剤を製造する方法を提供する。
【0015】
一態様では、シロイノシトール化合物、特に純粋又は実質的に純粋なシロイノシトール化合物、及び本発明の組成物が、本明細書に開示される障害及び/又は疾患、特にアミロイドの形成、凝集又は沈着に関連する障害及び/又は疾患を治療するために治療的又は予防的に投与される場合がある。特定の理論に束縛されるものではないが、該化合物及び組成物は、以下の機序の1種以上を限定されることなく使用して、疾患の進行を改善するように作用する場合がある:即ち、Aβ線維又はAβオリゴマーの集合又は凝集、Aβ毒性、Aβ42レベル、異常なタンパク質の折り畳み又は凝集、アミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続、及び/又はアミロイド相互作用を予防、減少、拮抗及び/又は阻害する機序;Aβにより誘導される神経変性又は細胞毒性を予防、減少、拮抗及び/又は阻害する機序;既に形成された線維の分解を促進する機序;凝集したAβ又はAβオリゴマーを破壊又は分解する機序;長期増強作用を増加又は回復させる機序;シナプス機能を維持する機序;脳からのAβのクリアランスを向上させる機序;Aβの分解を向上させる機序;及び/又はアミロイドβの脳への蓄積、脳アミロイドプラーク沈着、脳内の可溶性Aβオリゴマーの沈着、グリア活性、炎症及び/又は認知機能低下の予防、減少、拮抗及び/又は阻害。
【0016】
本発明は又、障害及び/又は疾患を予防及び/又は治療する薬剤を調製するために、少なくとも1種のシロイノシトール化合物を含む組成物を使用すること意図する。本発明は更に、障害及び/又は疾患を予防及び/又は治療する薬剤を調製するために本発明の薬学組成物を使用する方法を提供する。
【0017】
本発明は、有益な効果をもたらす1種以上のシロイノシトール化合物の治療上有効な量を被験体に投与することを含む、被験体の障害及び/又は疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。一態様では、本発明が、治療後に持続する有益な効果をもたらす治療を提供する。
【0018】
本発明には又、シロイノシトール化合物、又はシロイノシトール化合物若しくはその栄養学的に許容可能な誘導体を含む栄養補助剤、並びに許容可能な担体をヒトに投与することにより、健康なヒトの食餌を補うレジメンも含まれる。本発明には更に、シロイノシトール化合物又はその栄養学的に許容可能な誘導体をヒトに投与することにより健康なヒトの食餌を補うレジメンも含まれる。
【0019】
本発明は又、1種以上のシロイノシトール化合物又は本発明の薬学組成物を含むキットも提供する。一態様では、本発明が、1種以上のシロイノシトール化合物、容器及び取扱説明書を含む組成物を含む、障害及び/又は疾患を予防及び/又は治療するキットを提供する。該キットの組成物は更に、薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルを含んでもよい。
【0020】
本発明の前記及びその他の実施態様、特徴及び利点は、以下の図面及び詳細な説明から当業者に明らかになるはずである。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
式Ia又はIbの1種以上のシロイノシトール化合物、又は、立体配置が保持されたまま1種、2種又は3種のヒドロキシル基が置換基により置換されている、式Ia又はIbの化合物、又はそれらの薬学的に許容可能な塩を、異常なタンパク質の折り畳み及び/又は凝集、及び/又はアミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続によって特徴付けられる疾患の治療において有益な効果をもたらす治療上有効な量を含む、薬学組成物。
【化1】


(項目2)
1種、2種又は3種の前記ヒドロキシル基が水素、アルキル、アシル、アルケニル、シクロアルキル、ハロゲン、−NHR(Rは水素、アシル、アルキル又は−Rであり、R及びRは同一であるか又は異なっており、アシル又はアルキルを表す);−PO;−SR(Rは水素、アルキル又は−OHである);及び−OR(Rは水素、アルキル又は−SOHである)により置換されている、式Ia又はIbの化合物を含む、項目1に記載の薬学組成物。
(項目3)
1種、2種又は3種の前記ヒドロキシル基がアルキル、アシル、アルケニル、−NHR(Rは水素、アシル、アルキル又は−Rであり、R及びRは同一であるか又は異なっており、アシル又はアルキルを表す);−SR(Rは水素、アルキル又は−OHである)、又は−OR(Rは水素、アルキル又は−SOHである)により置換されている、式Ia又はIbの化合物を含む、項目1に記載の薬学組成物。
(項目4)
1種以上の前記ヒドロキシル基が−SR(Rは水素、アルキル、−OH又は−SOHである)により置換されている、式Ia又はIbの化合物を含む、項目1に記載の薬学組成物。
(項目5)
前記化合物が、該化合物と相互作用する担体を含む、項目1〜4の何れかに記載の薬学組成物。
(項目6)
前記化合物がプロドラッグの形態である、項目1〜5の何れかに記載の薬学組成物。
(項目7)
前記有益な効果には、以下の1種以上が含まれる、項目1〜7の何れかに記載の薬学組成物:Aβ線維の集合又は凝集、Aβ毒性、Aβ42レベル、異常なタンパク質の折り畳み又は凝集、アミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続の減少、拮抗又は阻害、及び/又はアミロイド脂質の相互作用、及び/又は既に形成された線維の分解促進。
(項目8)
前記有益な効果には以下の1種以上が含まれる、項目1〜7の何れかに記載の薬学組成物:凝集したAβ又はAβオリゴマーの分解;長期増強作用の増加又は回復;シナプス機能の維持;Aβ誘発性進行性認知機能低下及び脳アミロイドプラーク病変の減少又は拮抗;認識の向上;寿命の延長:Aβの脳への蓄積の減少;脳アミロイドプラーク沈着の減少:脳内可溶性Aβオリゴマーの減少;グリア活性の減少;炎症の減少;及び/又は認知機能低下。
(項目9)
前記疾患が、タンパク質、タンパク質断片、及びβシート構造のペプチド、線維、及び/又は凝集体又はオリゴマーの沈着を引き起こす、中枢神経系又は末梢神経系又は全身器官の病状である、項目1〜8の何れかに記載の薬学組成物。
(項目10)
前記疾患がアミロイド沈着によって特徴付けられる、項目8に記載の薬学組成物。
(項目11)
前記疾患が、アルツハイマー病、ダウン症候群、ボクサー認知症、多系統萎縮症、封入体筋炎、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳内出血、ニーマンピック病C型、脳β−アミロイド血管症、皮質基底変性に関連する認知症、2型糖尿病のアミロイドーシス、慢性炎症のアミロイドーシス、悪性及び家族性地中海熱のアミロイドーシス、多発性骨髄腫及びB−細胞疾患のアミロイドーシス、プリオン病のアミドイドーシス、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−ストロイスラー症候群、クールー、及びスクラピー、手根管症候群、老人性心臓アミロイドーシス、家族性アミロイド神経障害、又は内分泌腫瘍に関連するアミロイドーシスである、項目1に記載の薬学組成物。
(項目12)
経口投与に使用される、項目1〜11の何れかに記載の薬学組成物。
(項目13)
前記疾患がアルツハイマー病である、項目1〜12の何れかに記載の薬学組成物。
(項目14)
アルツハイマー病の治療のために1種以上のシロイノシトール化合物を経口投与するための、項目1〜13の何れかに記載の薬学組成物。
(項目15)
薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルを含む、前記項目の何れかに記載の薬学組成物。
(項目16)
異常なタンパク質の折り畳み及び/又は凝集、及び/又はアミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続によって特徴付けられる疾患の治療を目的とした、項目1、2、3又は4に定義される式Ia又はIbの実質的に純粋なシロイノシトール化合物を含む、安定な経口薬学組成物。
(項目17)
微生物プロセス手順を使用して生成されたシロイノシトール化合物を含む、項目1〜16の何れかに記載の薬学組成物。
(項目18)
被験体における、異常なタンパク質の折り畳み及び/又は凝集、及び/又はアミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続によって特徴付けられる疾患の治療方法であって、有益な効果、好ましくは治療後に持続する有益な効果をもたらすために、項目1〜17の何れかに定義される1種以上のシロイノシトール化合物の治療上有効な量を被験体に投与することを含む、方法。
(項目19)
前記疾患がアミロイド沈着によって特徴付けられる、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記有益な効果には以下の1種以上が含まれる、項目18に記載の方法:凝集したAβ又はAβオリゴマーの分解;長期増強作用の増加又は回復;シナプス機能の維持;Aβ誘発性進行性認知機能低下及び脳アミロイドプラーク病変の減少又は拮抗;認識の向上;寿命の延長:Aβの脳への蓄積の減少;脳アミロイドプラーク沈着の減少:脳内可溶性Aβオリゴマーの減少;グリア活性の減少;炎症の減少;及び/又は認知機能低下。
(項目21)
異常なタンパク質の折り畳み及び/又は凝集、及び/又はアミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続によって特徴付けられる疾患の進行を遅延する方法であって、項目1〜20の何れかに定義されるシロイノシトール化合物、又は項目1〜20の何れかに記載の組成物の治療上有効な量を投与することを含む、方法。
(項目22)
被験体における、認知機能障害及びアミロイドプラーク神経病理の発症後のアミロイド沈着及び神経病理を減少、拮抗又は阻害する方法であって、前記項目の何れかに定義されるシロイノシトール化合物、又は前記項目の何れかに記載の組成物の治療上有効な量を被験体に投与することを含む、方法。
(項目23)
アルツハイマー病を発症する被験体における認知機能障害を改善する方法であって、前記項目の何れかに定義されるシロイノシトール化合物、又は前記項目の何れかに記載の組成物の治療上有効な量を被験体に投与することを含む、方法。
(項目24)
被験体におけるシナプス機能を向上又は維持させる方法であって、前記項目の何れかに定義される1種以上のシロイノシトール化合物、又はそれらの薬学的に許容可能な塩、又は前記項目の何れかに記載の組成物の治療上有効な量を被験体に投与することを含む、方法。
(項目25)
組成物が経口投与用に製剤化されている、前記項目の何れかに記載の方法。
(項目26)
異常なタンパク質の折り畳み及び/又は凝集、及び/又はアミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続によって特徴付けられる疾患の予防及び/又は治療のために薬剤を調製するための、前記項目の何れかに定義されるシロイノシトール化合物、又は前記項目の何れかに記載の組成物の使用。
(項目27)
治療後に1種以上の有益な効果をもたらす、項目26に記載の使用。
(項目28)
前記有益な効果には以下の1種以上が含まれる、項目27に記載の使用;凝集したAβ又はAβオリゴマーの分解;長期増強作用の増加又は回復;シナプス機能の維持;Aβ誘発性進行性認知機能低下及び脳アミロイドプラーク病変の減少又は拮抗;認識の向上;寿命の延長:Aβの脳への蓄積の減少;脳アミロイドプラーク沈着の減少:脳内可溶性Aβオリゴマーの減少;グリア活性の減少;炎症の減少;及び/又は認知機能低下。
(項目29)
異常なタンパク質の折り畳み及び/又は凝集、及び/又はアミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続によって特徴付けられる疾患の治療のために経口投与によって使用される薬学組成物の調製のための、前記項目の何れかに定義されるシロイノシトール化合物化合物、又は前記項目の何れかに記載の組成物の使用。
(項目30)
微生物プロセス手順を使用して調製されたシロイノシトール化合物を含む、前記項目の何れかに記載の使用。
(項目31)
前記項目の何れかに記載の1種以上のシロイノシトール化合物、又は前記項目の何れかに記載の薬学組成物、容器、及び取扱説明書を含むキット。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明は、以下の図面を参照することでより理解が深まる:
【図1−1】5ヶ月齢で開始し、28日間の処置をした6ヶ月齢のマウスにおいて空間基準試験を実施した(n=10匹/処置群)。エピ−シクロヘキサンヘキソール処置TgCRND8マウスの性能は、未処置TgCRND8同腹子とは異なっておらず(p=0.27;図1A)、非−Tg同原子に関しては障害が残っていた(F1.14=11.7;p=0.004;図1C)。対照的に、シロ−シクロヘキサンヘキソール処置TgCRND8マウスは、未処置TgCRND8同腹子よりも有意に良好であり(p=0.01;図1B)、非−Tg同腹とは区別が付かなかった(F1.13=2.9;p=0.11;図1D)。
【図1−2】環状交差指数を使用したプローブ試験では、シロ−シクロヘキサンヘキソール処置マウスが非−Tg同腹子と統計的な差がないことを証明した(p=0.64;図1E)。垂直線は標準誤差を表す。
【図1−3】1ヶ月のシロ−シクロヘキサンヘキソール処置の後に、マウスは、海馬における高いプラーク負荷を有する対照動物に比べて、低いプラーク負荷を有していた(図1F、図1G)。プラーク負荷は抗Aβ抗体(褐色)を使用して同定され、星状細胞はGFAP抗体(赤色)を使用して標識付けされた。スケールバーは300μmである。
【図2A】シロ−シクロヘキサンヘキソール及びエピ−シクロヘキサンヘキソール処置TgCRND8マウス、及び未処置TgCRND8マウスにおける可溶性オリゴマーAβのドットブロット解析である(図2A)。予防試験からの4ヶ月及び6ヶ月齢の代表的な未処置及び処置TgCRND8マウス4匹から分離された、及び5ヶ月齢の未処置及び処置の治療群から分離された可溶性タンパク質をニトロセルロースに塗布し、オリゴマー特異的抗体で探査した後、6E10で探査した。合成Aβ42、単量体(底部列:レーン1及び2)及び繊維(レーン3及び4)を、可溶性凝集物のみを認識するオリゴマー特異的抗体の陰性対照として使用した。6E10は、全てのAβ種を認識する(底部列、右側4レーン)。
【図2B】長期増強作用は可溶性Aβオリゴマーによって遮断され(図2B;緑色の四角形)、シロ−シクロヘキサンヘキソールの処置によって障害が回復される(図2B;青色の円)。
【図2C】LTPは、シロ−シクロヘキサンヘキソールで処置された、Aβオリゴマーを含む7PA2培地(図2C;赤色の四角形;図2Bと同じデータ)、及びオリゴマーを含まない単純なCHO培地(図2C;青色の円)による影響を受けない。
【図3A】長期増強作用の誘発のAβ依存性阻害に対するAZD−103の効果を示すグラフである。反復刺激(強縮:複数の矢印)に続いて、単一の刺激(単一の矢印)後の電場電位の範囲は広がる。これは、電場電位の勾配(EPSP勾配)の変化率に従って定量化することができる。図3は、1.25μMのAZD−103+CHO CM(馴化培地)(CHO細胞はAβオリゴマーを分泌しない)、又は1.25μMのAZD−103+CHO CM(Aβオリゴマーを分泌する)の前培養した混合物、並びに7PA2 CM細胞単独による海馬切片の灌流後の、EPSP勾配の時間変化率を示し(何れの場合も、CM及びAZD103は灌流前に30分間一緒に前培養した)(図3A)。
【図3B】エピ−イノシトール又はキロ−イノシトールと7PA2 CMの前培養した混合物による海馬切片の灌流後の、EPSP勾配の時間変化率を示した(図3B)。
【図3C】切片を、7PA2 CM単独、又は1.25μMのAZD−103、エピ−イノシトール及びキロ−イノシトールとの混合物、並びにCHO CMとAZD103及びキロ−イノシトールの混合物により前培養した場合の、強縮から60分後におけるEPSP勾配の変化率の比較(図3C)を示す。
【図4】AZD−103の7PA2 CMへの適用がAβ三量体の検出能を減少させることを示すウェスタンブロットである。
【図5】LTPの誘導に対するAβの阻害効果を防止する能力を評価する、AZD−103の用量応答曲線である。4種の異なる濃度のAZD−103(0.125、0.5、1.25及び5.0μM)を7PA2 CMに加えた後、海馬を混合物で灌流した。
【図6A】図6Aは、LTPの誘導に対する7PA2 CMとAZD103の前培養時間の効果を示すグラフである。グラフは、LTPの阻害グラフは、4種の前培養時間(15分、30分、120分及び240分)におけるEPSP勾配の時間変化率を示す。
【図6B】図6Bは、7PA2 CMと15、30、120及び240分間前培養した0.5μMのAZD−103に関する、、強縮から60分後におけるEPSP勾配の変化率を示す棒グラフである。
【図6C】図6Cは、マウスの脳切片を7PA2 CM単独で灌流した後、20分後に0.5μMのAZD−103で灌流した、EPSP勾配の時間変化率を示すグラフである。
【図7A】図7A及び7Bは、AZD−103を馴化直前に7PA2細胞に添加した場合(事前馴化)と、AZD−103を7PA2 CMに添加した場合(事後馴化)の、Aβオリゴマーに対するAZD−103の効果を示すウェスタンブロットである。
【図7B】図7A及び7Bは、AZD−103を馴化直前に7PA2細胞に添加した場合(事前馴化)と、AZD−103を7PA2 CMに添加した場合(事後馴化)の、Aβオリゴマーに対するAZD−103の効果を示すウェスタンブロットである。
【図7C】図7Cは、直接評価したオリゴマーに対するAZD−103の効果を示すグラフである。
【図7D】図7Dは、APPのレベルに規格化したオリゴマーに対するAZD−103の効果を示すグラフである。
【図7E】図7Eは、Aβ単量体のレベルに規格化したオリゴマーに対するAZD−103の効果を示すグラフである。
【図8】0.5μMのAZD−103と培養(事前馴化)した7PA2細胞由来のCMによる脳切片の灌流後の、EPSP勾配の時間変化率を示すグラフである。
【図9】AZD103と共にAβを前培養することによる、Aβ誘発性急性認知機能障害の軽減を示すグラフである。100%エラー率は、ベースラインにおいて動物により発生したエラー数により設定された。Aβ単独、Aβ+AZD103、及びAZD103単独注入直後のエラー率を示す。
【図10】AZD103の経口投与によるAβ誘発性認知機能障害の軽減を示すグラフである。100%エラー率は、ベースラインにおいて動物により発生したエラー数により設定された。エラー率は、0、30、100及び300gm/kg/日のAZD103を使用して経口処置した時にAβのicv注入を受ける動物について示される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
用語解説
評価項目によって本明細書に列挙される数値範囲には、その範囲内に包含される全ての数及び端数が含まれる(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4及び5が含まれる)。全ての数及びその端数は、「約」という用語によって修飾されると推測されることも理解される。「約」という用語は、基準が構成される数字の0.1〜50%、5〜50%、又は10〜40%、好ましくは10〜20%、更に好ましくは10%又は15%の範囲であることを意味する。更に、内容を別途明確に指示しない限り、「a」、「an」及び「the」には複数の対象が含まれることも理解される。従って、例えば、「a compound(化合物)」を含有する組成物の言及には、2種以上の化合物の混合物が含まれる。
【0023】
「投与する」及び「投与」という用語は、本明細書で意図する化合物又は組成物の治療上有効な量を、予防及び/又は治療の目的のために被験体に送達するプロセスを意味する。組成物は、被験体の臨床状態、投与部位及び投与方法、投与量、被験体の年齢、性別、体重及び医師が知るその他の因子を考慮の上、良質の医療のための原則に従って投与される。
【0024】
「治療する」という用語は、障害及び/又は疾患の進行、又は当該用語に適用される、当該障害及び/又は疾患の1種以上の症状の進行を拮抗、緩和又は阻害することを指す。被験体の病状によっては、該用語が又、疾患を予防することも指し、疾患の発症を予防する、又は疾患に伴う症状を予防することを含む。治療は、急性状態又は慢性状態の何れにおいても実施される場合がある。該用語は又、疾患による苦痛の発生前に当該疾患に伴う症状の重篤性を軽減することも指す。このように苦痛発生前に疾患の重篤性を予防又は軽減することとは、投与時に疾患による苦しみがない被験体に本発明の化合物又は組成物を投与することを指す。又、「予防」とは、疾患、又は当該疾患に関連する1種以上の症状の再発を防止することを指す。「治療」及び「治療的に」という用語は、前述の「治療する」と同じように、治療する行為を指す。
【0025】
「被験体」、「個人」又は「患者」という用語は、本明細書で置き換え可能なように使用され、本明細書に開示される障害及び/又は疾患に悩まされる、又はこれらを有する又は発症しやすい疑いがあるほ乳類等の温血動物を含む動物を指す。ほ乳類には、任意のほ乳類のメンバーが含まれるが、これらに限定されない。本発明の一態様では、該用語がヒトを指す。該用語には又、馬、牛、羊、家禽、魚、豚、猫、犬、及び動物園の動物、山羊、類人猿(例えば、ゴリラ又はチンパンジー)、及びラット及びマウス等の齧歯動物を含む、食用又はペットして育てられている家畜が含まれる。治療の代表的な被験体には、本明細書に開示される障害及び/又は疾患を発症しやすい、発症している、又は発症したことがあるヒトが含まれる。被験体は、アルツハイマー病等の、本明細書に開示される障害及び/又は疾患の遺伝性素因を有している場合もあれば、有していない場合もある。一部の態様では、被験体が、認知機能障害及びアミロイドプラーク神経病理の兆候を示す。本発明の一実施態様では、被験体がアルツハイマー病に発症しやすい傾向にあるか、発症している。
【0026】
本明細書で使用される「健康な被験体」という用語は、被験体、とりわけ障害及び/又は疾患を有していない、特に障害、疾患、病気、又は損傷又は記憶力の減退として知られる病気と診断されていないほ乳類を意味する。
【0027】
「薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクル」という用語は、活性成分の有効性又は活性を抑止せず、投与された宿主に対する毒性を持たない培地を指す。担体、賦形剤又はビヒクルには、希釈剤、結合剤、接着剤、滑沢剤、崩壊剤、充填剤、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、及び特定の組成物を調製する上で必要となる場合がある吸収剤等の種々雑多な物質が含まれる。担体等の例には、食塩水、食塩緩衝液、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。活性物質として当該培地及び試薬を使用する方法は当業界で周知である。
本明細書で使用される「栄養学的に許容可能な誘導体」とは、所期の効果を実現するために同様の様式で作用し、構造的に同様であり、生理的適合性を有する、所定の化学種の誘導体又は置換基を指す。置換基の例には、所定の化合物の塩、エステル、水和物又は複合体が含まれるが、これらに限定されない。該置換基は又、後にin vivoで反応が進行して所定の化学物質又はその置換体を生成する、所定の化学物質の前駆体又はプロドラッグであってもよい。
【0028】
「純粋」という用語は、一般的に、90%、92%、95%、97%、98%又は99%以上純粋であることを意味し、「実質的に純粋」とは、本発明の組成物又は治療投与量が考慮された化合物が、従来の精製プロセスによっては容易に又は合理的に除去することができない不純物のみを有するように合成された化合物を意味する。
【0029】
「薬学的に許容可能な塩」とは、薬学的に許容可能であり、所望の薬理学的性質を有する塩を意味する。薬学的に許容可能な塩は、必要以上の毒性、炎症、アレルギー応答等を発生することなく被験体又は患者の組織と接触して使用する上で適しており、相応の合理的な危険性-受益性割合を有する塩を意味する。薬学的に許容可能な塩については、例え
ば、S. M. Berge, et al., J. Pharmaceutical
Sciences, 1977, 66: 1に説明されている。適切な塩には、化合物中の酸性プロトンが無機又は有機塩基と反応することができるように形成される場合がある塩が含まれる。適切な無機塩基には、アルカリ金属、例えば、ナトリウム及びカリウム、マグネシウム、カルシウム及びアルミニウムにより形成されるものが含まれる。適切な有機塩には、アミン塩基、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン等の有機塩基により形成されるものが含まれる。適切な塩には又、無機酸(例えば、塩酸及び臭化水素酸)及び有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、並びにメタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸等のアルカン−及びアレーン−スルホン酸)により形成される酸付加塩が含まれる。2種の酸性基が存在する場合には、薬学的に許容可能な塩がモノ−酸−モノ−塩又はジ−塩となる場合があり、同様に、2種以上の酸性基が存在する場合には、当該基の一部又は全てが加塩されてもよい。
【0030】
「併用療法」とは、治療中の被験体に活性成分が同時に投与されることを意味する。併用投与される場合、各成分は同時に投与される場合もあれば、異なる時点に任意の順序で連続して投与される場合もある。従って、所望の効果、特に有益な効果、相加効果又は相乗効果をもたらすために、各成分は個別であるものの、実質的に時間的に接近して投与される場合がある。第一の化合物は、第二の化合物を使用する治療法を更に含むレジメンで投与される場合がある。種々の態様では、該用語が、シロイノシトール化合物及び第二の治療薬を1年以内に任意に投与することを指し、化合物が1種の製剤中に混合されているか、別個の製剤中に含まれるかにかかわらず、それぞれ1種の化合物を含有する各薬剤を別々に、及び同時に投与することを含む。
【0031】
「検出可能な物質」には、放射性同位元素(例えば、H、14C、35S、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光物質)、ルミノール等の発光標識;酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ)、ビオチニル基(標識付けされたアビジン、例えば、光学的又は比色法によって検出することができる蛍光マーカー又は酵素活性を含有するストレプトアビジン)、第二のレポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、又はエピトープタグ)が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施態様では、標識が種々の長さのスペーサアームにより付着し、潜在的な立体障害を減少させている。
【0032】
「有益な効果」とは、本発明の特定の態様における本発明の化合物又はその組成物の効果、例えば、有利な薬理学的及び/又は治療効果、及び/又は向上した生物学的活性を指す。本発明の種々の態様では、有益な効果に、Aβ繊維集合又は凝集、Aβ毒性、Aβ42レベル、異常なタンパク質の折り畳み又は凝集、アミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続、及び又はアミロイド脂質の相互作用の予防、減少、拮抗又は阻害、及び/又は既に形
成された繊維の分解の促進が含まれるが、これらに限定されない。本発明の特定の実施態様では、有益な効果に以下の1種以上の効果が含まれるが、これらに限定されない:即ち
、凝集したAβ又はAβオリゴマーの分解;長期増強作用の増加又は回復;シナプス機能の維持;Aβ誘発性進行性認知機能低下及び脳アミロイドプラーク病変の阻害、減少又は拮抗;認識の向上;寿命の延長:Aβの脳への蓄積の減少;脳アミロイドプラーク沈着の減少:脳内可溶性Aβオリゴマー(例えば、Aβ42)の減少;グリア活性の減少;炎症の減少;及び/又は認知機能低下。一態様では、有益な効果が、安定性の向上、半減期の延長、及び/又は摂取及び血液脳関門を横切る輸送の向上を含む、本発明の組成物/製剤の有利な特性となる。一部の態様では、本発明の組成物の有益な効果が、急速な脳への浸透、特に投与1〜6、1〜5、1〜4、1〜3又は1〜2時間以内の脳への浸透となる。
【0033】
有益な効果は、化合物によらない効果に対するシロイノシトール化合物の効果の統計的解析の点から見た、統計的に有意な効果となる場合がある。「統計的に有意」又は「有意に異なる」効果又はレベルは、標準よりも高いか低いレベルを表す。本発明の一実施態様では、この相違が、シロイノシトール化合物なしで得られる効果と比べて1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25又は50倍高い又は低い場合がある。
【0034】
「治療上有効な量」とは、本発明の活性化合物又は組成物が、1種以上の有益な効果、特に1種以上の持続する有益な効果をもたらす又は導く量又は投与量に関連する。物質の治療上有効な量は、病状、年齢、性別、及び個人の体重、及び個人における所望の応答を誘発する物質の能力等の因子に応じて変化することがある。投与量のレジメンは、最適な治療反応(例えば、1種以上の有益な効果、特に持続する有益な効果)をもたらすように調整される場合がある。例えば、複数に分けた投与量が毎日投与される場合もあれば、治療状態の緊急性に比例的して投与量を減少させる場合もある。
【0035】
「シロイノシトール化合物」とは、本明細書に記載の1種以上の有益な効果を完全又は部分的に、直接又は間接的にもたらす何れかの化合物を意味するものとして理解される。本発明で使用可能なシロイノシトール化合物は、以下の式Ia又はIbの塩基構造を有する。
【0036】
【化2】

シロイノシトール化合物には、式Ia又はIbの化合物の機能的誘導体が含まれる。「機能的誘導体」とは、式Ia又はIbのシロイノシトールの生物学的活性とほぼ同様の生物学的活性(機能的又は構造的)を有する化合物を指す。「機能的誘導体」という用語は、シロイノシトール化合物の「変異体」、「類似体」又は「化学的誘導体」を含むものとして意図される。「変異体」という用語は、シロイノシトール又はその一部と構造的及び機能的にほぼ同様の分子を指すものとして意図される。両方の分子がほぼ同様の構造を有するか、両方の分子が同様の生物学的活性を有する場合に、分子はシロイノシトールと「ほぼ同様」となる。「類似体」という用語は、シロイノシトール分子と機能的にほぼ同様の分子を指す。「化学的誘導体」という用語は、通常塩基分子の一部ではない追加の化学的部分を含有する分子を指す。
【0037】
本発明のシロイノシトール化合物には、多形として存在することがある化合物の結晶形態が含まれる。水又は一般的な有機溶媒により形成される化合物の溶媒和化合物は又、本発明に包含されるものとして意図される。更に、シロイノシトール化合物の水和物及びその塩も本発明の範囲内に含まれる。
シロイノシトール化合物には、立体配置が保持されたまま、1種、2種又は3種のヒドロキシル基が置換基、特に一価の置換基により置換されている、式Ia又はIbの化合物が含まれる。適切な置換基には、水素、アルキル、アシル、アルケニル、シクロアルキル、ハロゲン、−NHR(Rは水素、アシル、アルキル又は−Rであり、R及びRは同一であるか又は異なっており、アシル又はアルキルを表す);−PO;−SR(Rは水素、アルキル又は−OHである);及び−OR(Rは水素、アルキル又は−SOHである)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の一態様では、シロイノシトール化合物に、1種以上のリン酸基により置換されるシロイノシトールが含まれていない。
【0038】
本発明の特定の態様は、1種以上のヒドロキシル基が、アルキル、アシル、アルケニル、−NHR(Rは水素、アシル、アルキル又は−Rであり、R及びRは同一であるか又は異なっており、アシル又はアルキルを表す)、−SR(Rは水素、アルキル又は−OHである)、及び−OR(Rは水素、アルキル又は−SOHである)、より具体的には−SR(Rは水素、アルキル、又は−OH若しくは−SOHである)により置換されている、式Ia又はIbのシロイノシトール化合物を使用する。
【0039】
実施態様では、シロ−シクロヘキサンヘキソール(即ち、シロイノシトール)、特に純粋又は実質的に純粋なシロ−シクロヘキサンヘキソールが、本明細書に開示される組成物、方法及び使用において使用される。
「アルキル」とは、好ましくは1〜20個又は1〜10個の炭素原子、更に好ましくは1〜6個の炭素原子を有する一価のアルキル基を指す。前記用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、n−ヘキシル等の基によって例示される。アルキル基は置換アルキルであってもよい。
【0040】
「置換アルキル」とは、1〜5種の置換基、好ましくは1〜3種の置換基、例えば、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アシル、アミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、カルボキシルアルキル、ケト、チオケト、チオール、チオアルコキシ、アリール、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ及びニトロを有する、好ましくは1〜10個の炭素原子を含むアルキル基を指す。
【0041】
「アルケニル」とは、少なくとも1個、好ましくは1〜2箇所のアルケニル不飽和を有する、好ましくは2〜10個の炭素原子、更に好ましくは2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基を指す。好ましいアルケニル基には、エテニル(−CH=CH)、n−プロペニル(−CHCH=CH)、イソ−プロペニル(−C(CH)=CH)等が含まれる。
【0042】
「置換アルケニル」とは、例えば、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、ケト、チオケト、チオール、チオアルコキシ、アリール及びニトロ等の1〜3種の置換基を有する、上で定義したようなアルケニル基を指す。
【0043】
「アシル」とは、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール及び複素環が本明細書で定義された通りとなる、アルキル−C(O)−、置換アルキル−C(O)−、シクロアルキル−C(O)−、置換シクロアルキル−C(O)−、アリール−C(O)−、ヘテロアリール−C(O)−及び複素環−C(O)−を指す。
【0044】
「アリール」とは、単環(例えばフェニル)、又は縮合(融合)多環(例えば、ナフチル又はアントリル)を有する、6〜14個の炭素原子からなる不飽和芳香族カルボン酸基を指す。好ましいアリールには、フェニル、ナフチル等が含まれる。アリール基は、1〜8種、1〜6種、1〜4種、又は1〜3種の置換基、例えば、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アシル、アミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、ケト、チオケト、チオール、チオアルキル、アリール、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ及びニトロ等を有する、本明細書で定義されたようなアリール基を含む、置換アリール基となる場合がある。
「シクロアルキル」とは、単環又は縮合多環を有する3〜12個の炭素原子からなる環状アルキル基を指す。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル等の単環構造、又はアダマンタニル等の多環構造が含まれる、シクロアルキルは置換シクロアルキルであってもよい。
「置換シクロアルキル」とは、アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、ケト、チオケト、チオール、チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、及びニトロからなる群から選択される1〜5種(特に1〜3種)の置換基を有するシクロアルキル基を指す。
【0045】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指し、好ましくはフッ素又は塩素である。
【0046】
「ヘテロアリール」とは、1〜15個の炭素原子、及び少なくとも1種の環(複数の環がある場合)中の酸素、窒素及び硫黄から選択される1〜4種のヘテロ原子からなる芳香族基を指す。当該ヘテロアリール基は、場合により、1〜5種の置換基、例えば、アシルオキシ、ヒドロキシ、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリール、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、カルボキシルアルキル、シアノ、ハロ、ニトロ、ヘテロアリール、複素環、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、及びチオヘテロアリールオキシにより置換されている場合がある。当該ヘテロアリール基は、単環(例えば、ピリジル又はフリル)又は縮合多環(例えば、インドリジニル又はベンゾチエニル)を有していてもよい。
【0047】
「複素環」とは、単環又は縮合多環、1〜15個の炭素原子、及び環中の窒素、硫黄又は酸素から選択される1〜4種のヘテロ原子を有する、一価の飽和又は不飽和基を指す。
【0048】
複素環基は、単環又は縮合多環を有してもよい。複素環基は、場合により、1〜5種の置換基、例えば、アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、ケト、チオケト、チオール、チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ又はニトロにより置換されている場合がある。
【0049】
複素環及びヘテロアリールの例には、ピロール、フラン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、モルホリノ、ピペリジニル、テトラヒドロフラニル、及び複素環を含有するN−アルコキシ窒素が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
シロイノシトール化合物は、従来のプロセスを使用して調製することもできれば、販売供給元から得ることもできる。シロイノシトール化合物は、化学及び/又は微生物プロセスを使用して調製されてもよい。本発明の態様では、シロイノシトール化合物が、M. Sarmah and Shashidhar, M., Carbohydrate Research, 2003, 338, 999−1001又はHusson, C., et al., Carbohydrate Research 307 (1998) 163−165に記載された;又はWO05035774(北興化学工業(株))に記載されたプロセス手順を使用してシロイノシトールを調製することによって生成される。本発明の組成物及び方法の特定の態様では、シロイノシトール化合物が、Husson, C., et al., Carbohydrate Research 307 (1998) 163−165に記載された化学プロセス手順を使用して調製される。本発明の組成物及び方法の他の態様では、シロイノシトール化合物が、WO05035774(北興化学工業(株))に記載された微生物プロセス手順を使用して調製される。誘導体は、当業者に周知の方法を使用してシロイノシトールに置換基を導入することによって生成される場合がある。
【0051】
シロイノシトール化合物は更に、1種以上のポリマー、炭水化物、ペプチド又はその誘
導体を含むが、これらに限定されない担体を含む場合もある。担体は、1種以上のアルキル、アミノ、ニトロ、ハロゲン、チオール、チオアルキル、硫酸塩、スルホニル、スルフェニル、スルフィニル、スルホキシド、ヒドロキシル基を含むが、これらに限定されない、本明細書に記載の置換基により置換されている場合がある。担体は、本発明の化合物に直接又は間接的に共有結合してもよい。本発明の態様では、担体が、アラニン、グリシン、プロリン、メチオニン、セリン、スレオニン又はアスパラギン等のアミノ酸となる。他の態様では、担体が、アラニル−アラニル、プロリル−メチオニル、又はグリシル−グリシル等のペプチドとなる。
【0052】
担体には又、特定の組織又は器官を本発明の化合物の標的とする分子も含まれる。特に担体は、能動輸送又は受動輸送によって本発明の化合物を脳に輸送することを促進又は向上させる場合がある。
【0053】
本明細書で使用される「ポリマー」とは、同一の繰り返しサブユニット又は異なる繰り返しサブユニットの何れかとなる2種以上のモノマーサブユニットからなる分子を指す。モノマーは一般的に、炭素を含有する単純な構造の低分子量分子からなる。ポリマーは場合により置換されてもよい。本発明で使用することのできるポリマーの例は、ビニル、アクリル、スチレン、炭水化物誘導性ポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレン、ポリメチレングリコール、ポリ−トリメチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、及びコポリマー、塩、及びそれらの誘導体である。本発明の特定の態様では、ポリマーが、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル、1−プロパンスルホン酸−コアクリロニトリル、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸−コ−スチレン)、ポリ(ビニルスルホン酸);ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム);及びそれから誘導される硫酸塩及びスルホン酸塩;ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メチルメタクリレート)、及びポリ(ビニルアルコール)である。
【0054】
本明細書で使用される「炭水化物」とは、ポリヒドロキシアルデヒド、又はポリヒドロキシケトン及びそれらの誘導体を指す。最も単純な炭水化物は、官能基を除いて各炭素に通常1個付加された多くのヒドロキシル基を有する、小さな直鎖状のアルデヒド及びケトンである単糖類である。単糖類の例には、エリトロース、アラビノース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、トレオース、キシロース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、アルドヘキソース、フルクトース、ケトヘキソース、リボース及びアルドペントースが含まれる。その他の炭水化物は、単糖類単位の数によって二糖類、オリゴ糖類又は多糖類等の単糖類単位からなる。二糖類は、共有結合のグリコシド結合によって結合した2種の単糖類単位からなる。二糖類の例は、ショ糖、乳糖及びマルトースである。オリゴ糖類及び多糖類は、グリコシド結合によって結合した、長い鎖状の単糖類単位からなる。オリゴ糖類は一般的に3〜9個の単糖類単位を含有し、多糖類は10個を超える単糖類単位を含有する。炭水化物基は、式Ia又はIbの化合物に結合する部位を除く1、2、3又は4箇所において置換されている場合がある。例えば、炭水化物は、場合により置換されている1種以上のアルキル、アミノ、ニトロ、ハロ、チオール、カルボキシル又はヒドロキシル基によって置換されている場合がある。具体的な置換炭水化物はグルコサミン又はガラクトサミンである。
【0055】
本発明の態様では、炭水化物が糖、特にヘキソース又はペントースとなり、又、アルドース又はケトースとなる場合がある。糖は、D体又はL体となる場合があり、又、アミノ糖類、デオキシ糖及びそれらのウロン酸誘導体を含んでもよい。炭水化物がヘキソースである本発明の一実施態様では、ヘキソースが、グルコース、ガラクトース又はマンノース、又はヘキソサミン、ガラクトサミン、グルコサミン、特にD−グルコサミン(2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコース)又はD−ガラクトサミン(2−アミノ−2−デオキシ−D−ガラクトース)のようなアミノ糖残基等の置換ヘキソース糖残基からなる群から選択される。適切なペントース糖には、アラビノース、フコース及びリボースが含まれる。
【0056】
「炭水化物」という用語には又、レクチン(例えば、コンカナバリンA、コムギ胚芽凝集素、ピーナッツアグルチニン、セロムコイド及びオロソムコイド)、及びセレブロシド及びガングリオシド等の糖脂質が含まれる。
【0057】
本発明の実施に当たって担体として使用する「ペプチド」には、ペプチド結合によって共有結合した1、2、3、4又は5種又はそれ以上のアミノ酸が含まれる。ペプチドは、1種以上の天然アミノ酸、及び類似体、誘導体及びそれらの同族体からなってもよい。ペプチドは、安定性、バイオアベイラビリティ、溶解性等を向上させるために修飾されてもよい。本明細書で使用される「ペプチド類似体」及び「ペプチド誘導体」には、ペプチドの化学構造を模倣し、ペプチドの機能特性を維持する分子が含まれる。本発明の態様では、担体が、アラニン、グリシン、プロリン、メチオニン、セリン、スレオニン、ヒスチジン又はアスパラギンのようなアミノ酸となる。他の態様では、担体が、アラニル−アラニル、プロリル−メチオニル、又はグリシル−グリシルのようなペプチドとなる。更に他の態様では、担体が、アルブミン、アンチトリプシン、マクログロブリン、ハプトグロビン、セルロプラスミン、トランスフェリン、α−又はβ−リポタンパク質、β−又はγ−グログリン、又はフィブリノーゲンのようなポリペプチドとなる。
【0058】
ペプチド類似体、誘導体及び模倣体を設計する手法は、先行技術で公知である。例えば、Farmer, P. S. in Drug Design (E. J. Ariens, ed.) Academic Press, New York, 1980, vol. 10, pp. 119−143; Ball. J. B. and Alewood, P. F. (1990) J Mol. Recognition
3:55; Morgan, B. A. and Gainor, J. A. (1989) Ann. Rep. Med. Chem. 24:243; 及びFreidinger, R. M. (1989) Trends Pharmacol. Sci. 10:270を参照されたい。又、Sawyer, T. K. (1995) “Peptidomimetic Design and Chemical Approaches to Peptide Metabolism” in Taylor, M. D. and Amidon, G. L. (eds.) Peptide−Based Drug Design: Controlling Transport and Metabolism, Chapter 17; Smith, A.
B. 3rd, et al., (1995) J. Am. Chem. Soc. 117: 11113−11123; Smith, A. B. 3rd, et
al., (1994) J. Am. Chem. Soc. 116: 9947−9962;及びHirschman, R., et al., (1993) J.
Am. Chem. Soc. 115: 12550−12568を参照されたい。
【0059】
ペプチド類似体、誘導体及びペプチド模倣体の例には、1種以上のベンゾジアゼピン分子により置換されたペプチド(例えば、James, G. L., et al., (1993) Science 260: 1937−1942)を参照)、メチル化アミド結合を有するペプチド及び「レトロインベルソ」ペプチド(Sistoによる米国特許第4,522,752号を参照)が含まれる。
【0060】
ペプチド誘導体の例には、アミノ酸側鎖、ペプチド骨格、又はアミノ−又はカルボキシ−末端が誘導体化されているペプチド(例えば、メチル化アミド結合を有するペプチド化合物)が含まれる。
【0061】
模倣体、特にペプチド模倣体という用語は、アイソスターを含むものとして意図される。「アイソスター」という用語は、第一の立体構造の立体配置が第二の構造の特異的な結合部位に適合するために第二の化学構造立体についても置換することができる化学構造を指す。該用語には具体的に、当業者に周知のペプチド骨格の修飾(即ち、アミド結合模倣体)が含まれる。当該修飾には、アミド窒素、α−炭素、アミドカルボニルの修飾、アミド結合の完全な置換、伸長、欠失、又は骨格架橋が含まれる。アイソスターのその他の例には、1種以上のベンゾジアゼピン分子により置換されたペプチドが含まれる(例えば、James G. L., et al., (1993) Science 260:
1937−1942を参照)。
【0062】
その他の可能な修飾には、N−アルキル(又はアリール)置換([CONR])、ラクタム及びその他の環状構造を構成する骨格架橋、化合物(「インベルソ)化合物)内の全てのL−アミノ酸の全てのD−アミノ酸の置換、又はレトロインベルソアミノ酸の取り込み([NHCO])が含まれる。「インベルソ」とは、配列のL−アミノ酸のD−アミノ酸への置換を意味し、「レトロインベルソ」又は「エナンチオレトロ」とは、アミノ酸配列の逆転(レトロ)、及びL−アミノ酸のD−アミノ酸への置換を意味する。例えば、親ペプチドがThr−Ala−Tyrである場合、レトロ修飾形態はTyr−Ala−Thrとなり、インベルソ形態はthr−ala−tyrとなり、レトロインベルソ形態はtyr−ala−thrとなる(小文字はD−アミノ酸を意味する)。親ペプチドに比べて、レトロインベルソペプチドは逆の骨格を有するが、元の側鎖の空間立体立体肺座をほぼ維持しており、親ペプチドとよく似たトポロジーを有するレトロインベルソ異性体となる。Goodman, et al., “Perspectives in Peptide Chemistry” pp. 283−294 (1981)を参照されたい。又、「レトロインベルソ」ペプチドの記載については、Sistoによる米国特許第4,522,752号を参照されたい。
【0063】
ペプチドは、特定のアミノ酸(例えばセリン)の側鎖上の官能基、又はその他の適切な官能基を通じて、本発明の化合物に結合してもよい。本発明の一実施態様では、担体が、側鎖上の官能基を通じて3種以上のアミノ酸と結合している基を有する、4種以上のアミノ酸からなる場合がある。別の実施態様では、担体が1種のアミノ酸、特にアミノ酸のスルホン酸誘導体、例えば、システイン酸となる。
【0064】
「障害及び/又は疾患」、「障害」及び「疾患」は、本明細書で置き換え可能なように使用され、且つこれらには、異常なタンパク質の折り畳み又は凝集又は異常なアミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続、又はアミロイド脂質の相互作用によって特徴付けられる病状が含まれる。一部の態様では、該用語に、異常なタンパク質の折り畳み又は凝集、又はアミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続によって特徴付けられる病状が含まれる。特定の態様では、疾患が、中枢又は末梢神経系又は全身器官の病状となる。更に具体的な態様では、該用語に、アミロイドタンパク質からなる、又はAβアミロイド、AAアミロイド、ALアミロイド、IAPPアミロイド、PrPアミロイド、α−ミクログロブリンアミロイド、トランスサイレチン、プレアルブミン、及びプロカルシトニン、特にAβアミロイド及びIAPPアミロイドからなる群から選択される、アミロイド又はアミロイド線維の形成、沈着、蓄積又は存続に伴う病状が含まれる。障害及び/又は疾患は、異常に凝集したタンパク質を解離すること、及び/又は既に形成された又は既に沈着したアミロイド又はアミロイド線維を溶解又は崩壊させることが望ましい病状となる場合もある。
【0065】
本発明の特定の態様では、疾患がアミロイドーシスとなる。「アミロイドーシス」とは、後天性又は先天性の原因の種々の疾患群を指し、アミロイドと呼ばれる同様の性質を有する持つ数種類のタンパク質線維の内の1種類の蓄積によって特徴付けられる。アミロイドは、単一の器官に蓄積することもあれば、身体の全体にわたって分散することもある。該疾患は、心臓、脳、腎臓及び消化管を含む患部において重大な問題を引き起こし得る。アミロイド沈着の線維状組成物は、種々のアミロイド疾患を同定する特徴である。主としてβアミロイドペプチド(β−AP)の線維からなる脳内及び脳血管の沈着物は、アルツハイマー病(家族性及び散発性型の両方)の特徴であり;島状タンパク質ペプチド(IAPP、アミリン)は、II型糖尿病に伴う膵臓島細胞アミロイド沈着の特徴であり;β−2−ミクログロブリンは、長期間の血液透析治療の結果として形成されるアミロイド沈着物の主要な成分である。クロイツフェルト−ヤコブ病、スクラピー、牛海綿状脳症等のプリオンが関連する疾患は、プロテアーゼ耐性型プリオンタンパク質(AScr ro Prp−27として命名)の蓄積によって特徴付けられる。
【0066】
特定の疾患は、既存の又は共存する疾患の証拠がない、原発性アミロイドーシスとされる。原発性アミロイドーシスは一般的に、「アミロイド軽鎖型」(AL型)タンパク質線維の存在によって特徴付けられる。続発性アミロイドーシスにおいては、潜在的な慢性的炎症又は感染症状態(例えば、リウマチ様関節炎、若年性慢性関節炎、強直性せきつい炎、乾癬、ライター症候群、成人性スティル病、ベーチェット症候群、クローン病;骨髄炎、結核及びハンセン病のような慢性微生物感染症、ホジキンリンパ腫、腎癌、腸、肺及び尿生殖路の癌、基底細胞癌及び毛様細胞癌のような悪性新生物)が存在する。続発性アミロイドーシスは、血清アミロイドAタンパク質(ApoSSA)由来のAA型線維の沈着によって特徴付けられる。家族遺伝性アミロイドーシスは、ATTRトランスサイレチン型の神経障害性、腎性又は心血管沈着と関連する場合もあり、これらには、異なるアミロイド成分を有するその他の症候群(例えば、AA繊維により特徴付けられる家族性地中海熱)が含まれる。その他の形態のアミロイドーシスには、分離された器官に発生する、局所性の、しばしば腫瘍様を呈する沈着によって特徴付けられる局所形態が含まれる。更に、アミロイドーシスは加齢と関連しており、通常は、心臓又は脳に形成されるプラークによって特徴付けられる。アミロイドーシスには、成人発症性糖尿病、長期間の血液透析、及び慢性炎症又はプラズマ細胞疾患の結果からの合併症のような全身性疾患が含まれる。
【0067】
本発明の化合物、組成物及び方法を使用して治療及び/又は予防することのできるアミロイド疾患には、アルツハイマー病、ダウン症候群、ボクサー認知症、多系統萎縮症、封入体筋炎、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳内出血、ニーマンピック病C型、脳β−アミロイド血管症、皮質基底変性に関連する認知症、2型糖尿病のアミロイドーシス、慢性炎症のアミロイドーシス、悪性及び家族性地中海熱のアミロイドーシス、多発性骨髄腫及びB−細胞疾患のアミロイドーシス、蕁麻疹及び難聴を伴う腎障害(マックル−ウェルズ症候群)、全身性炎症疾患に関連するアミロイドーシス、骨髄腫又はマクログロブリン血症に関連する特発性原発性アミロイドーシス;免疫細胞疾患に関連するアミロイドーシス;単クローン性免疫グロブリン血症;潜在的疾患;慢性炎症疾患に関連する局所性結節状アミロイドーシス;複数の免疫細胞疾患に関連するアミロイドーシス;家族性アミロイド多発性神経障害;アミロイドーシスアルツハイマー病及びその他の神経変性疾患を伴う遺伝性脳内出血、長期の血液透析に関連するアミロイドーシス、II型糖尿病、インスリノーマ、プリオン病のアミロイドーシス、(伝染性海綿状脳症プリオン病)、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−ストロイスラー症候群、クールー、及びスクラピー、手根管症候群に関連するアミロイドーシス、老人性心臓アミロイドーシス、家族性アミロイド神経障害、及び内分泌腫瘍に関連するアミロイドーシス;特にアルツハイマー病及び2型糖尿病が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
本発明の態様では、障害及び/又は疾患に、アミロイド線維、特にAβアミロイド、AAアミロイド、ALアミロイド、IAPPアミロイド、PrPアミロイド、α−ミクログロブリンアミロイド、トランスサイレチン、プレアルブミン及びプロカルシトニン;特にAβアミロイド及びIAPPアミロイドから選択されるアミロイドタンパク質の線維の形成、沈着、蓄積又は存続に関連する病状が含まれる。当該疾患の例には、アルツハイマー病、ダウン症候群、ボクサー認知症、多系統萎縮症、封入体筋炎、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳内出血、ニーマンピック病C型、脳β−アミロイド血管症、皮質基底変性に関連する認知症、2型糖尿病のアミロイドーシス、慢性炎症のアミロイドーシス、悪性及び家族性地中海熱のアミロイドーシス、多発性骨髄腫及びB−細胞疾患のアミロイドーシス、プリオン病のアミロイドーシス、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−ストロイスラー症候群、クールー、及びスクラピー、手根管症候群に関連するアミロイドーシス、老人性心臓アミロイドーシス、家族性アミロイド神経障害、又は内分泌腫瘍に関連するアミロイドーシス;特にアルツハイマー病及び2型糖尿病が含まれる。
【0069】
本発明の他の態様では、本発明の化合物、組成物及び方法を使用して治療及び/又は予防することのできる障害及び/又は疾患に、タンパク質、タンパク質断片、及びβシート構造のペプチド、線維、及び/又は凝集体又はオリゴマーの沈着を引き起こす、中枢又は末梢神経系又は全身器官の病状が含まれる。特に該疾患は、初老性及び老人性型アルツハイマー病;アミロイド血管障害、軽度の認知機能障害;アルツハイマー病関連痴呆症(例えば、血管性又はアルツハイマー痴呆症);タウオパシー(例えば、銀親和性グレイン痴呆症、大脳皮質基底核変性症、ボクサー認知症、石灰化を伴う広汎性神経原線維の混乱、パーキンソン症を伴う前頭痴呆症、プリオン関連疾患、ハレルフォルデン−スパッツ病、筋緊張性ジストロフィー、ニーマンピック病C型、神経原線維の混乱を伴う非グアム型運動ニューロン疾患、ピック病、脳炎後パーキンソニスム、脳性アミロイド血管障害、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎、及び混乱のみの痴呆症)、α−サイヌクレイノパシー(例えば、レーヴィ小体を伴う痴呆症、グリア細胞質内封入体を伴う多発性萎縮症、シャイ−ドレーガー症候群、脊髄小脳失調症(例えば、DRPLA又はマチャド−ジョセフ病)、線条体黒質系変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、脳内鉄蓄積I型を伴う神経変性、嗅覚機能障害、及び筋萎縮性側索硬化症);パーキンソン病(例えば、家族性又は非家族性);筋萎縮性側索硬化症;痙性対麻痺(例えば、シャペロン及び/又はトリプルAタンパク質の機能欠損関連);ハンチントン舞踏病、脊髄脳症失調症、フロイドリッチ失調症;ポリグルタミンを有するタンパク質の細胞内及び/又は神経細胞内凝集に関連する神経変性疾患、対応する遺伝子内のトリ−又はテトラヌクレオチド成分の病理的膨張から生じるポリアラニン又はその他の反復;脳血管疾患;ダウン症候群;アミロイドβペプチドの外傷後蓄積を伴う頭蓋骨損傷;プリオン関連疾患(クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−ストロイスラー症候群、及び変形クロイツフェルト−ヤコブ病);家族性イギリス型痴呆症;家族性デンマーク型痴呆症;痙攣性失調症を伴う初老性痴呆症;イギリス型脳性アミロイド血管障害;デンマーク型の痙攣性失調症脳性アミロイド血管障害を伴う初老性痴呆症;ニューロセルピン封入体を伴う脳障害(FENIB);アミロイド多発性神経障害(例えば、老人性アミロイド多発性神経障害又は全身性アミロイドーシス);アミロイドβペプチドによる封入体筋炎;家族性フィンランド型アミロイドーシス;多発性骨髄腫に関連する全身性アミロイドーシス;家族性地中海熱;慢性感染及び炎症;及び膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)に関連するII型真性糖尿病である。
【0070】
本発明の態様、特に併用療法では、該障害及び/又は疾患が、神経障害(例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、病原性精神病状態、精神分裂病、食料摂取障害、睡眠覚醒、エネルギー代謝の恒常状態の調整障害、自律神経機能の障害、ホルモンバランス障害、調節障害、体液、高血圧、発熱、睡眠調節不全、拒食症、うつ病に関連する不安関連障害、てんかん等の発作、薬剤禁断症状及びアルコール依存症、認知機能障害及び痴呆症を含む神経変性障害)となる。
【0071】
又、本発明の化合物は又、α−サイヌクレイン/NAC線維形成の阻害又は防止、α−サイヌクレイン/NAC線維成長の阻害又は防止、及び/又は既に形成されたα−サイヌクレイン/NAC線維及びα−サイヌクレイン/NAC関連タンパク質沈着の分解、破壊及び/又は脱凝集の作用をもたらす場合もある。本発明の化合物又は組成物を使用した治療に適したサイヌクレイン疾患又はサイヌクレイノパシー(synucleionpathies)の例は、サイヌクレイン線維、特にα−サイヌクレイン線維の形成、沈着、蓄積又は存続に関連する疾患であり、パーキンソン病、家族性パーキンソン病、レーヴィ小体病、アルツハイマー病のレーヴィ小体変形症、レーヴィ小体を伴う痴呆症、多発性萎縮症、オリーブ橋小脳萎縮症、脳内鉄蓄積I型を伴う神経変性、嗅覚機能障害、及びグアムのパーキンソン認知症症候群が含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
本発明の態様では、疾患が、神経フィラメント及び/又はスーパーオキシドジスムターゼのフィラメント及び凝集を伴う運動ニューロン疾患、シャペロン及び/又はトリプルAタンパク質の機能障害に関連する痙性対麻痺、又はDRPLA又はマチャド−ジョセフ病等の脊髄小脳失調症となる。
【0073】
本発明の他の態様では、疾患が、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−ストロイスラー症候群、及び変形クロイツフェルト−ヤコブ病、及び老人性アミロイド多発性神経障害又は全身性アミロイドーシスを含むアミロイド多発性神経障害となる。
【0074】
本発明の実施態様では、疾患が、家族型及び非家族型を含むアルツハイマー病又はパーキンソン病となる。
【0075】
本発明の特定の態様では、疾患が、アミロイド形成性タンパク質又はペプチドによるマクロファージの存在による炎症作用によって特徴付けられる場合がある。本発明の方法は、マクロファージ活性の阻害及び/又は炎症作用の阻害を伴う場合がある。又、方法は、被験体におけるマクロファージの浸潤又は炎症の過程又は程度を減少、遅延、改善又は拮抗することを含む場合もある。
【0076】
疾患は、本発明の化合物を使用して崩壊又は分解させることのできる分子の相互作用に関連する病状となる場合がある。「本発明の化合物を使用して崩壊又は分解させることのできる分子の相互作用」には、アミロイドタンパク質及びタンパク質又は糖タンパク質からなる相互作用が含まれる。アミロイドタンパク質からなる相互作用には、アミロイドタンパク質とアミロイドタンパク質の相互作用、アミロイドとプロテオグリカンの相互作用、アミロイドとプロテオグリカン/グリコサミノグリカン(GAG)の相互作用、及び/又はアミロイドタンパク質とグリコサミノグリカンの相互作用が含まれる。相互作用タンパク質は、細胞表面、分泌又は細胞外タンパク質となる場合がある。
【0077】
本発明の化合物又は組成物を使用して治療又は予防することのできる疾患には、アミロイドタンパク質、及びタンパク質又は糖タンパク質等の相互作用化合物からなる分子の相互作用の崩壊又は分解によって効果が表れる疾患が含まれる。本発明の化合物又は組成物を使用して治療又は予防することのできる疾患の例には、細菌、ウィルス、プリオン及び真菌によって引き起こされる感染症が含まれる。当該障害及び/又は疾患の例には、単純ヘルペスウィルス、仮性狂犬病ウィルス、ヒトサイトメガロウィルス、ヒト免疫不全ウィルス、百日咳菌、クラミジア・トラコマティス、インフルエンザ菌、ピロリ菌、ボレリア・バーグドフェリ、淋菌、結核菌、黄色ブドウ球菌、ミュータンス連鎖球菌、ストレプトコッカス・スイス、耐熱性マラリア原虫、リーシュマニア・アマゾネンシ、クルーズ・トリパノゾーマ、リステリア菌、マイコプラズマ肺炎菌、腸管毒素原性大腸菌、尿路疾患性大腸菌、及び緑膿菌等の病原体に関連するものが挙げられる。
【0078】
組成物
シロイノシトール化合物は、被験体に投与する薬学組成物又は栄養補助剤中に製剤化される場合がある。本発明の薬学組成物又はその画分は一般的に、所期の投与形態、通常の薬学的慣習に基づき選択される、適切な薬学的に許容可能な担体、賦形剤及びビヒクルからなる。本発明の特定の組成物は、純粋又は実質的に純粋なシロイノシトール化合物を含有してもよい。
【0079】
適当な薬学的担体、賦形剤及びビヒクルは、標準校訂本、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st
Edition. University of the Sciences in Philadelphia (Editor), Mack Publishing Companyに記載されている。例として、カプセル又は錠剤の形態での経口投与の場合、該活性成分は、乳糖、デンプン、ショ糖、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、グルコース、硫酸カルシウム、リン酸二カルシウム、マンニトール、ソルビトール等のような、経口用の、非毒性の、薬学的に許容可能な不活性担体と混合されてもよい。液体形態での経口投与の場合、該薬剤成分は、エタノール、グリセロール、水等のような、経口用の、非毒性の、薬学的に許容可能な不活性担体と混合される場合がある。又、適切な結合剤(例えば、ゼラチン、デンプン、コーンシロップ;グルコース等の天然の糖;天然及び合成粘性物質、及びワックス)、滑沢剤(例えば、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及び塩化ナトリウム)、崩壊剤(例えば、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、及びキサンタンゴム)、着香剤、及び着色剤は又、組成物又はその成分と混合される場合もある。本明細書に記載の組成物は更に、湿潤剤又は乳化剤又はpH緩衝剤からなってもよい。
【0080】
本発明は、シロイノシトール化合物、特に純粋又は実質的に純粋なシロイノシトール化合物を含有する、丸剤、錠剤、カプレット、軟及び硬ゼラチンカプセル、トローチ剤、サッシェ、カシェ剤、ベジキャップ、液状ドロップ、エリキシル、懸濁剤、乳剤、溶液、シロップ、エアゾール(固体として、又は液体培地中)、座薬、無菌注射剤溶液、及び/又は無菌パッケージ紛薬を含むが、これらに限定されない、市販の製剤を提供する。
【0081】
組成物は、液体溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル、除法性製剤又は紛薬であってもよい。該組成物は、従来の結合剤、及びトリグリセリド等の担体と共に座薬として製剤化されてもよい。経口製剤には、医薬グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等のような標準的担体が含まれてもよい。種々の送達系が知られており、本発明の組成物の投与、例えばリポソーム、微小粒子、マイクロカプセル等のカプセル封入に使用されてもよい。
【0082】
本発明の態様では、疾患及び/又は障害の治療として1種以上のシロイノシトール化合物を経口投与するために薬学組成物が提供される。特定の態様では、異常なタンパク質の折り畳み及び/又は凝集、及び/又はアミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続によって特徴付けられる疾患及び/又は障害(例えば、アルツハイマー病)の治療に使用される、式Ia又はIbの実質的に純粋なシロイノシトール化合物からなる、安定した経口薬学組成物が提供される。
【0083】
非経口投与用の製剤には、水溶液、シロップ、綿実油、ココナッツ油又はピーナッツ油のような食用油を含む水性又は油性の懸濁液及び乳剤が含まれる場合がある。水性懸濁液に使用することのできる分散又は懸濁剤には、トラガントゴム、アルギン酸塩、アラビアゴム、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような合成又は天然のゴムが含まれる。
非経口投与用の組成物には、水、等張食塩水、等張グルコース溶液、緩衝剤溶液、又は治療的活性薬剤の非経口投与に都合よく使用されるその他の溶媒のような、無菌の水性又は非水性溶媒が含まれる場合がある。非経口投与を目的とした組成物には又、安定剤、緩衝剤、又は保存剤、例えば、メチルヒドロキシ安息香酸又は同様の添加剤等の抗酸化剤のような従来の添加剤が含まれる場合もある。
【0084】
本発明の組成物は、本明細書に記載されるような、薬学的に許容可能な塩として製剤化されてもよい。
【0085】
本発明の態様では、組成物に、少なくとも一種の緩衝剤試薬又は溶液が含まれるが、これらに限定されない。緩衝剤試薬の例には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フランカルボン酸、クエン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸、パモン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。又、1種以上のα化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、乳糖、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、ジャガイモデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、硬化食用油脂、レシチン、アラビアゴム、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、分画植物油、メチル、プロピル−p−ヒドロキシ安息香酸、ソルビン酸、及びそれらの混合物のような追加の試薬が含まれる場合もある。緩衝剤試薬は更に、1種以上のジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクチド、ポリグリコライド及びそれらの混合物からなる場合もある。一実施態様では、緩衝剤試薬が、懸濁液、溶液又は乳剤を含むが、これらに限定されない、少なくとも1種の培地として製剤化されてもよい。他の実施態様では、緩衝剤試薬が更に、薬学的に許容可能な担体、賦形剤、懸濁剤、安定剤又は分散剤を含むが、これらに限定されない製剤化試薬からなる場合もある。
【0086】
本発明の組成物は、例えば、細菌保持フィルターによるろ過、組成物への滅菌剤の添加、組成物の照射殺菌、又は組成物の加熱によって滅菌される場合がある。更に、本発明の化合物又は組成物は、無菌固形製剤、例えば、使用直前に無菌溶媒に容易に溶解される凍結乾燥紛薬として供給される場合もある。
【0087】
薬学組成物は、調製された後、適切な容器に入れ、所定の病状の治療のために標示される。本発明の組成物の投与の場合、当該標示には、投与量、投与回数及び投与方法が含まれる。
【0088】
シロイノシトール化合物には、場合により、栄養補助剤として投与する上で適した形態にしてよい。本発明の補助剤は、希釈剤又は充填材、粘度改質剤、保存剤、調味料、着色剤、又は当業界で従来使用されるその他の添加剤のような不活性成分が含まれる場合がある。単なる一例として、みつろう、レシチン、ゼラチン、グリセリン、キャラメル及びカーミンのような従来の成分が含まれる場合もある。
【0089】
本発明の栄養補助剤組成物は、場合により第二の活性成分からなる場合がある。一実施態様では、第二の活性成分が、ピニトール、又はその活性誘導体又は代謝物となる。ピニトールは、アルファルファ、ブーゲンビリアの葉、ガルバンソー、パイントリー、及び大豆を含むが、これらに限定されない植物原料から生成してもよい。ピニトールは市販もされており、例えばInzitolTM(Humanetics Corporation[米国ミネソタ州])がある。ピニトールの誘導体及び代謝物の例には、ピニトールグリコシド、ピニトールリン脂質、エステル化ピニトール、脂質結合ピニトール、ピニトールリン酸塩、ピニトールフィチン酸塩、及びd−キロイノシトール等の加水分解ピニトールが含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
栄養補助剤は、液体栄養補助剤(例えば、分配可能な液体)として供給される場合もあれば、或いは該組成物が、顆粒、カプセル又は座薬として製剤化される場合もある。該液体補助剤には、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、保存剤、着色剤等の、複数の適切な担体及び添加剤が含まれる場合がある。カプセル、顆粒又は座薬の形態では、本発明の組成物が、薬学的に許容可能な担体と混合されて製剤化される。
【0091】
一態様では、本発明の栄養補助剤が、飲料として製剤化されるが、顆粒、カプセル又は座薬の形態で製剤化される場合もある。
【0092】
補助剤は、従来の方法を使用して調製されるソフトゲルの形態で供給される場合がある。ソフトゲルには一般的に、少量の補助剤を封入したゼラチン層が含まれる。補助剤は又、従来の方法を使用して製造される、液体入り及び密封ゼラチンカプセルの形態となる場合もある。
【0093】
カプセル、顆粒又は座薬の形態で本発明の栄養補助剤を調整するには、本発明の1種以上の組成物を、従来の製剤技法に従って、薬学的に許容可能な担体と均一に混合される場合がある。カプセル及び顆粒等の固体経口製剤の場合、デンプン、糖類、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等の適切な担体及び添加剤が含まれる場合がある。
【0094】
本発明の別の態様によれば、キットが提供される。一態様では、該キットが本発明の化合物又は薬学組成物からなる。該キットは、本発明の化合物を含有する容器を収容し、被験体に組成物を投与するための取扱説明書も収納する筐体であってもよい。
【0095】
本発明の実施態様では、有益な効果、特に持続する有益な効果をもたらすために本発明の薬学組成物の1種以上の成分を充填した、1種以上の容器からなる、医薬品パック又はキットが提供される。当該容器と共に、取扱説明書等の種々の資料、又は、ヒトへの投与のために調製、使用又は販売するに当たっての行政機関の認可を示す、医薬品又は生物学的製剤の標識付け、製造、使用又は販売を規制する行政機関によって規定された形式の通知が含まれてもよい。
【0096】
用途
本発明は、有益な効果をもたらすために1種以上のシロイノシトール化合物を使用する組成物及び方法に関する。特に本発明は、障害及び/又は疾患を治療する、特に本明細書に記載の障害及び/又は疾患の疾患重篤度、病徴及び/又は再発の周期性を予防及び/又は改善するために、本発明の組成物を使用することを意図する。本発明は又、本発明の組成物又は治療法を使用して障害及び/又は疾患をほ乳類において予防又は治療することを意図する。本発明は実施態様において、溶解度、安定性、効果、効力及び/又は有用性の向上、特に溶解度及び安定性の向上等の有益な効果をもたらす化合物からなる組成物を提供する場合がある。
【0097】
一態様では、本発明が、1種以上のシロイノシトール化合物、又は1種以上のシロイノシトール化合物及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルからなる組成物の有効量を投与することによって、健康な被験体又は年齢による記憶障害を有する被験体の記憶力を改善する方法を提供する。
【0098】
別の態様では、本発明が更に、1種以上のシロイノシトール化合物又はその薬学的に許容可能な塩、或いは1種以上のシロイノシトール化合物及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルからなる組成物の有効量を投与することによって、記憶力、特に短期間の記憶力及び老化作用に伴うその他の精神障害を改善する方法にも関する。
【0099】
一実施態様では、記憶力が害されるか、又はその他により減少することが知られている疾患、障害、虚弱又は不快と診断されてない、記憶力の改善が必要なほ乳類を治療する方法が提供されており、これには、1種以上のシロイノシトール化合物、その薬学的に許容可能な塩、又は、1種以上のシロイノシトール化合物又はその栄養学的に許容可能な塩からなる栄養補助剤の記憶力を改善する有効量を該ほ乳類に投与する手順が含まれる。
【0100】
本発明の別の態様では、被験体において、異常なタンパク質の折り畳み、アミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続における障害と関連する中枢又は末梢神経系又は全身器官の病状を治療する方法が提供されており、これには、1種以上のシロイノシトール化合物、その薬学的に許容可能な塩、又は、1種以上のシロイノシトール化合物及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルからなる組成物の治療上有効な量を該被験体に投与することが含まれる。
【0101】
更なる態様では、本発明が、1種以上のシロイノシトール化合物又はその薬学的に許容可能な塩、又は1種以上のシロイノシトール化合物及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルからなる組成物の治療上有効な量を被験体に投与することを含む、アミロイドの形成、沈着、蓄積及び/又は存続を阻害する、及び/又は既に形成されたアミロイドの溶解/分解を引き起こす方法を提供する。従って、本発明の化合物及び組成物は、アミロイド沈着が起こる障害におけるアミロイドーシスを阻害するために使用される場合がある。
【0102】
別の態様では、本発明が、本発明の化合物を使用して崩壊又は破壊させることのできるアミロイド相互作用に関連する被験体の病状を治療する方法を提供しており、これには、1種以上のシロイノシトール化合物、その薬学的に許容可能な塩、又は1種以上のシロイノシトール化合物及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルからなる組成物の治療上有効な量を該被験体に投与することが含まれる。
【0103】
一態様では、本発明が、被験体における、アミロイドタンパク質の集合を予防、拮抗、減少又は阻害し、アミロイド沈着のクリアランスを向上させ、アミロイドの沈着を遅延化する方法を提供しており、これには、1種以上のシロイノシトール化合物、その薬学的に許容可能な塩、又は、1種以上のシロイノシトール化合物及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルからなる組成物の治療上有効な量を投与することが含まれる。
【0104】
一態様では、本発明が、被験体におけるアミロイド線維形成、組織特異的機能障害、又は細胞毒性を予防、拮抗、減少又は阻害する方法を提供しており、これには、1種以上のシロイノシトール化合物、その薬学的に許容可能な塩、又は、1種以上のシロイノシトール化合物及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルからなる組成物の治療上有効な量を該被験体に投与することが含まれる。
【0105】
別の態様では、本発明が、動物において立体配置的に変化したタンパク質の集合又は凝集を予防又は拮抗する方法を提供しており、これには、タンパク質を立体配置的に変えるための、その類似体又は誘導体を含めた1種以上のシロイノシトール化合物を導入することが含まれる。
【0106】
本発明の更なる態様では、動物において立体配置的に変化したタンパク質の集合又は凝集を予防又は拮抗する方法が提供されており、これには、タンパク質を立体配置的に変えるための1種以上のシロイノシトール化合物を導入することが含まれる。
【0107】
本発明の更に別の態様では、動物において立体配置的に変化したタンパク質の集合又は凝集を治療する方法が提供されており、これには、本発明の組成物の治療上有効な量を投与することが含まれる。
【0108】
一態様では、本発明が、被験体におけるシナプス機能を向上又は維持する方法を提供しており、これには、1種以上のシロイノシトール化合物、その薬学的に許容可能な塩、又は、1種以上のシロイノシトール化合物及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルからなる組成物の治療上有効な量を投与することが含まれる。
【0109】
本発明は、アミロイド沈着によって特徴付けられる障害及び/又は疾患、特にアミロイドーシス、より具体的にはアルツハイマー病を治療する特定の用途を有する。従って、本発明は、1種以上のシロイノシトール化合物、その薬学的に許容可能な塩、又は、シロイノシトール化合物及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルからなる組成物の治療上有効な量を投与することを含む、アミロイド沈着によって特徴付けられる疾患、特にアルツハイマー病を治療の症状を有する被験体に投与することによって有益な効果、好ましくは持続する有効な効果をもたらす方法に関する。一実施態様では、有益な効果が、以下の1種以上によって証明される:即ち、凝集したAβ又はAβオリゴマーの分解、長期増強作用の向上又は回復、及び/又は向上したシナプス機能の維持、及び/又はAβ脳内の蓄積、脳内アミロイドプラークの沈着、脳内の可溶性Aβ、グリア活性、炎症及び又は認知機能低下の減少。
【0110】
一態様では、本発明が、疾患(例えば、アルツハイマー病)を発症する被験体において、障害及び/又は疾患の進行を改善する、又は疾患のより重篤度の低い段階を得るための方法を提供しており、これには、1種以上のシロイノシトール化合物、その薬学的に許容可能な塩、又は1種以上のシロイノシトール化合物及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルからなる組成物の治療上有効な量を投与することが含まれる。
【0111】
別の態様では、本発明が、障害及び/又は疾患(例えば、アルツハイマー病)の進行を遅延する方法に関しており、これには、1種以上のシロイノシトール化合物、その薬学的に許容可能な塩、又は、1種以上のシロイノシトール化合物及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルからなる組成物の治療上有効な量を投与することが含まれる。
更なる態様では、本発明が、障害及び/又は疾患を発症する被験体の生存率を向上する方法に関しており、これには、1種以上のシロイノシトール化合物、その薬学的に許容可能な塩、又は、1種以上のシロイノシトール化合物及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルからなる組成物の治療上有効な量を投与することが含まれる。
一実施態様では、本発明が、障害及び/又は疾患(例えば、アルツハイマー病)を発症する被験体の寿命を向上する方法に関しており、これには、1種以上のシロイノシトール化合物、その薬学的に許容可能な塩、又は、1種以上のシロイノシトール化合物及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルからなる組成物の治療上有効な量を投与することが含まれる。
【0112】
一態様では、本発明が、軽度認識障害(MCI)の治療方法を提供しており、これには、1種以上のシロイノシトール化合物、その薬学的に許容可能な塩、又は、1種以上のシロイノシトール化合物及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルからなる組成物の治療上有効な量を投与することが含まれる。
【0113】
一実施態様では、本発明が、被験体における、認知機能障害及びアミロイドプラーク神経病理の発症後のアミロイド沈着及び神経病理を減少又は拮抗する方法を提供しており、1種以上のシロイノシトール化合物、その薬学的に許容可能な塩、又は、1種以上のシロイノシトール化合物及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルからなる組成物の治療上有効な量を該被験体に投与することが含まれる。
【0114】
別の実施態様では、本発明が、被験体における認知機能障害及びアミロイドプラーク神経病理の発症後のアミロイド沈着及び神経病理を減少又は拮抗する方法を提供しており、これには、認知機能障害及びアミロイドプラーク神経病理の発症後のアミロイド沈着及び神経病理を減少又は拮抗するために、1種以上のシロイノシトール化合物、その薬学的に許容可能な塩、又は、1種以上のシロイノシトール化合物及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤又はビヒクルからなる組成物の治療上有効な量を該被験体に投与することが含まれる。
【0115】
本発明の態様は、障害及び/又は疾患(例えば、アルツハイマー病)の持続的治療のために1種以上のシロイノシトール化合物を使用する改良された方法及び組成物を提供する。本発明は一実施態様において、効果、効力及び有用性の向上を達成する、1種以上のシロイノシトール化合物からなる組成物を提供する。例えば、効果の向上は、治療中止後に及び/又は改善の持続及び/又は生存率の向上をもたらす治療によってアルツハイマー病における認知機能低下及び/又は生存率を改善又は拮抗するによって示される。
【0116】
本発明の一態様では、式Ia又はIbの化合物が、アルツハイマー病の治療において使用される。従って、アルツハイマー病は、式Ia又はIbの化合物の治療上有効な量を投与することによって治療される場合がある。当該治療は、特に中枢神経系の悪化、精神的融通の損失、短期記憶力の損失及び失見当識を含むが、これらに限定されないアルツハイマー病の退行性効果を遅延する上で有効な場合がある。
【0117】
疾患がアルツハイマー病である一実施態様では、本発明の化合物又は組成物又は治療法の有益な効果が、以下の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15種又は全て、特に以下の5又は10種又はそれ以上、より具体的には15種以上として明らかにすることができる:
a)アルツハイマー病の症状を有する被験体への投与後における、本明細書に記載の化合物の非存在下のレベルと比較した、長期増強作用の向上又は回復。本発明の一態様では、化合物が、被験体において少なくとも約0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%の長期増強作用の向上をもたらす。
【0118】
b)アルツハイマー病の症状を有する被験体への投与後における、本明細書に記載の化合物の非存在下のレベルと比較した、シナプス機能の向上又は維持。本発明の態様では、化合物が、被験体において少なくとも約0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、100%、125%、150%、175%又は200%のシナプス機能の向上をもたらす。
【0119】
c)シナプトフィジンの増加。本発明の態様では、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、100%、125%、150%、175%又は200%のシナプトフィジンの増加が見られる。
【0120】
d)シナプトフィジン反応性神経繊維末端及び細胞体の増加。本発明の態様では、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、100%、125%、150%、175%又は200%、より具体的には約100〜150%、又は140〜150%のシナプトフィジン反応性神経繊維末端及び細胞体の増加が見られる。
【0121】
e)アルツハイマー病の症状を有する被験体への投与後における、炎症症状、特にAβ誘発性炎症応答の減少又は非存在。
【0122】
f)アルツハイマー病の症状を有する被験体におけるシロイノシトール化合物の非存在下で測定したレベルと比較した、アミロイドβの脳内蓄積の減少。本発明の態様では、化合物が、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%のアミロイドβの脳内蓄積の減少をもたらす。
【0123】
g)アルツハイマー病の症状を有する被験体におけるシロイノシトール化合物の非存在下で測定したレベルと比較した、脳内アミロイドプラークの沈着の減少。本発明の態様では、化合物が、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%の脳内アミロイドプラークの沈着の減少をもたらす。
【0124】
h)プラーク数の減少。本発明の態様では、化合物が、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%のプラーク数の減少をもたらす。特定の実施態様では、化合物は、5〜15%、又は10〜15%のプラーク数の減少をもたらす。
【0125】
i)プラークサイズの減少。本発明の態様では、化合物が、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%のプラークサイズの減少をもたらす。特定の態様では、化合物が、5〜15%又は10〜15%のプラークサイズの減少をもたらす。
【0126】
j)プラークで覆われる脳の領域の割合の減少。本発明の態様では、化合物が、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%のプラークで覆われる脳の領域の割合の減少をもたらす。特定の態様では、化合物が、5〜15%又は10〜15%のプラークで覆われる脳の領域の割合の減少をもたらす。
【0127】
k)アルツハイマー病の症状を有する被験体における本明細書に記載のシロイノシトール化合物の非存在下で測定したレベルと比較した、脳内の可溶性Aβオリゴマーの減少。本発明の態様では、化合物が、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%の可溶性Aβオリゴマーの減少をもたらす。
【0128】
l)Aβ40の脳内レベルの減少。本発明の態様では、化合物が、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%のAβ40の減少をもたらす。特定の態様では、化合物が、10〜50%、20〜45%又は25〜35%のAβ40の脳内レベルの減少をもたらす。
【0129】
m)Aβ42の脳内レベルの減少。本発明の態様では、化合物が、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%のAβ40の減少をもたらす。特定の態様では、化合物が、10〜50%、15〜40%又は20〜25%のAβ42の脳内レベルの減少をもたらす。
【0130】
n)アルツハイマー病の症状を有する被験体における本明細書に記載のシロイノシトール化合物の非存在下で測定したレベルと比較した、脳内のグリア活性の減少。好ましくは、化合物が、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%のグリア活性の減少をもたらす。
【0131】
o)長期間、特に治療後少なくとも約5週間、6週間、8週間、10週間、12週間、14週間、16週間、20週間、24週間、30週間、40週間、52週間、又は78週間、より具体的には、2〜4週間、2〜5週間、3〜5週間、2〜6週間、2〜8週間、2〜10週間、2〜12週間、2〜16週間、2〜20週間、2〜24週間、2週間〜12ヶ月、又は2週間〜24ヶ月にわたるほぼ正常なシナプス機能の維持。
【0132】
p)アルツハイマー病を有する被験体の疾患の進行速度の低下又は遅延。特にアルツハイマー病を有する被験体における認知機能低下の減少又は遅延。
【0133】
q)認知機能低下の減少又は遅延。
【0134】
r)アミロイド血管障害の減少又は遅延。
【0135】
s)死亡率加速の減少。
【0136】
t)アルツハイマー病の症状を有する被験体の生存率の増加。
【0137】
本発明の態様では、本発明の組成物又は治療の有益な効果が、(a)及び(b);(a),(b)及び(c);(a),(b),(e),(f)及び(g);(a),(b),(e),(f)〜(h);(a),(b),(e),(f)〜(i);(a),(b),(e),(f)〜(j);(a),(b),(e),(f)〜(k);(a),(b),(e),(f)〜(l);(a),(b),(e),(f)〜(m);(a),(b),(e),(f)〜(n);(a),(b),(e),(f)〜(o);(a),(b),(e),(f)〜(p);(a),(b),(e),(f)〜(q);(a),(b),(e),(f)〜(r);(a),(b),(e),(f)〜(s);(a),(b),(e),(f)〜(t);(a)〜(d);(a)〜(e);(a)〜(f);(a)〜(g);(a)〜(h);(a)〜(i);(a)〜(j);(a)〜(k);(a)〜(l);(a)〜(m);(a)〜(n);(a)〜(o);(a)〜(p);(a)〜(q);(a)〜(r);(a)〜(s);及び(a)〜(t)として明らかにすることができる。
【0138】
本発明の化合物、薬学組成物及び方法は、統計的に有意な有益な効果、特に上記(a)〜(t)の1種以上の効果を有するように選択することができる。本発明の化合物、薬学組成物及び方法は、持続する有益な効果、特に統計的に持続する有益な効果を有するように選択することができる。一実施態様では、統計的に有意な持続する有益な効果、特に上記(a)〜(t)の1種以上の持続する有益な効果を有する薬学組成物が提供されており、これには、1種以上のシロイノシトール化合物の治療上有効な量が含まれる。本発明の態様では、1種以上の有益な効果が、従来の治療法と比べて向上した治療効果をもたらす。
【0139】
いくつかの態様における本発明の治療の向上した効果及び効力は、有害な副作用及び毒性を減らして、治療の治療可能比を向上させる場合がある。本発明の選択された方法は又、症状の発現からかなり後に治療を開始した時でさえ、長期にわたるアルツハイマー病を改善する場合がある。長期間の有効な治療は、本発明の化合物又は組成物の投与後に本発明に従って達成することができる。
【0140】
一態様では、本発明が、アルツハイマー病を治療する方法に関しており、これには、被験体において、1種以上のシロイノシトール化合物、又はシロイノシトール化合物からなる組成物の治療上有効な量を、Aβ、Aβ凝集物、又はAβオリゴマー、特にAβ40又はAβ40凝集物又はオリゴマー、及び/又はAβ42又はAβ42凝集物又はオリゴマーと接触させることが含まれる。
【0141】
別の態様では、本発明が、投与後長期間にわたり凝集したAβ又はAβオリゴマーを崩壊させる上で十分な量の1種以上のシロイノシトール化合物からなる組成物を与えることによって、アルツハイマー病を治療する方法を提供する。
【0142】
更なる態様では、本発明が、治療を必要とする被験体のアルツハイマー病を治療する方法を提供しており、これには、長期増強作用を向上又は維持する及び/又はシナプス機能を維持する上で十分な濃度で1種以上のシロイノシトール化合物を与える組成物を個人に投与することが含まれる。別の態様では、投与後長期間にわたりAβの脳内蓄積、脳内アミロイドプラークの沈着、脳内の可溶性Aβオリゴマー、グリア活性、及び/又は炎症を減少させるために、一定量のシロイノシトール化合物をほ乳類に、好ましくは経口的又は全身的に投与することを含む、アルツハイマー病の治療方法を本発明が提供する。
【0143】
本発明は一実施態様において、特に投与後長期間にわたり認知機能低下を減少させる上で十分な量の1種以上のシロイノシトール化合物からなる組成物を、治療が必要なほ乳類に投与し、それによってアルツハイマー病を治療することを含む、アルツハイマー病の治療方法を提供する。
【0144】
本発明は一実施態様において、特に投与後長期間にわたりシナプス機能を向上させる上で十分な量の1種以上のシロイノシトール化合物からなる組成物を、治療が必要なほ乳類に投与し、それによってアルツハイマー病を治療することを含む、アルツハイマー病の治療方法を提供する。
【0145】
別の態様では、特に投与後長期間にわたり凝集したAβ又はAβオリゴマーを崩壊させる上で十分な量の1種以上のシロイノシトール化合物からなる組成物を、予防及び/又は治療が必要なほ乳類に投与して、凝集したAβ又はAβオリゴマーの量を測定し、それによってアルツハイマー病を治療することを含む、アルツハイマー病の予防及び/又は治療方法を本発明が提供する。凝集したAβ又はAβオリゴマーの量は、検出可能な物質で標識付けされたAβ又はシロイノシトールに特異的な抗体を使用して測定される場合がある。
【0146】
本発明には又、以下が含まれるが、これらに限定されない1種以上の治療薬との併用療法において本発明の組成物の使用する方法が含まれる:即ち、β−セクレターゼ阻害剤、γ−セクレターゼ阻害剤、ε−セクレターゼ阻害剤、βシート凝集/線維形成/ADDL形成のその他の阻害剤(例えば、アルツメド)、NMDAアンタゴニスト(例えば、メマンチン)、非ステロイド性抗炎症化合物(例えば、イブプロフェン、セレブレクス)、抗酸化剤(例えば、ビタミンE)、ホルモン(例えば、エストロゲン)、栄養及び食料補助剤(例えば、銀杏)、スタチン及びその他のコレステロール低下剤(例えば、ロバスタチン及びシンバスタチン)、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネゼピル)、ムスカリンアゴニスト(例えば、AF102B(セビメリン、EVOXAC)、AF150(S)及びAF267B),抗精神病薬(例えば、ハロペリドール、クロザピン、オランザピン)、三環系及びセロトニン再取り込み阻害剤等の抗うつ薬(例えば、セルトラリン及びシタロプラムHbr)、スタチン及びその他のコレステロール低下剤(例えば、ロバスタチン及びシンバスタチン)、免疫療法薬及びAβに対する抗体(例えば、ELAN
AN−1792)、ワクチン、TAUタンパク質をリン酸化するキナーゼ(CDK5、GSK3α、GSK3β)の阻害剤(例えば、塩化リチウム)、Aβ生成を調節するキナーゼ(GSK3α、GSK3β、Rho/ROCKキナーゼ)の阻害剤(例えば、塩化リチウム及びイブプロフェン);ネプリリシン(Aβを分解する酵素)をアップレギュレートする薬剤;インスリン分解酵素(Aβを分解する酵素)をアップレギュレートする薬剤、疾患から引き起こされる、又は疾患に関連する合併症の治療に使用される薬剤、又は、副作用を治療又は予防する一般的な薬剤。本発明には又、以下が含まれるが、これらに限定されない1種以上の追加の治療法との併用療法において本発明の組成物を使用する方法が含まれる:即ち、ネプリリシン(Aβを分解する酵素)をアップレギュレートする遺伝子治療及び/又は薬剤に基づく手法、インスリン分解酵素(Aβを分解する酵素)をアップレギュレートする遺伝子治療及び/又は薬剤に基づく手法、又は幹細胞及びその他の細胞をベースとする治療。
【0147】
シロイノシトール化合物と治療薬又は治療法の併用は、予想しない追加の効果、又は追加の効果を超える効果、即ち相乗効果をもたらすように選択される場合がある。その他の治療薬及び治療法は、異なる機序を介して作用し、本発明による追加/相乗効果を有する場合がある。
【0148】
1種以上のシロイノシトール化合物、及び最大の治療効果を達成するための異なる機序を使用した治療薬からなる組成物又は方法(即ち併用療法)は、高濃度又は長期間の単独療法(即ち、各化合物を単独で使用した治療)からもたらされる副作用のリスクが低い治療に対する耐性を改善する場合がある。併用療法は又、各化合物の有害な毒性効果が減少するように、各化合物の低濃度での使用が可能な場合がある。次善の投与量は、更に高い安全域をもたらす場合があり、又、予防及び治療を達成する上で必要な薬剤の費用を削減する場合もある。更に、単一の併用投与を使用した治療は、更に高い好都合をもたらし、コンプライアンスの向上をもたらす場合がある。併用療法のその他の利点には、分解及び代謝に対する安定性の向上、長期の及ぶ作用の継続、及び/又は特に低濃度での作用又は効果のより長期に及ぶ継続が含まれる。
【0149】
一態様では、本発明が、障害及び/又は疾患を治療するに当たって薬剤を調製するために、少なくとも1種のシロイノシトール化合物からなる組成物を使用することを意図する。本発明は又、障害及び/又は疾患を予防及び/又は治療するための薬剤を調製するために、少なくとも1種のシロイノシトール化合物からなる組成物を使用することを意図する。本発明は更に、障害及び/又は疾患を予防及び/又は治療するために薬剤を調製するに当たって、本発明の組成物を使用する方法を提供する。該薬剤は、有益な効果、好ましくは治療後の持続する有益な効果をもたらす。該薬剤は、薬が使用される状況と関係なく、アミロイドの形成、沈着、蓄積及び/又は存続を阻害するために、丸剤、錠剤、カプレット、軟及び硬ゼラチンカプセル、トローチ剤、サッシェ、カシェ剤、ベジキャップ、液状ドロップ、エリキシル、懸濁剤、乳剤、溶液、シロップ、エアゾール(固体として、又は液体培地中)、座薬、無菌注射剤溶液、及び/又は無菌パッケージ紛薬のような、被験体によって消費される形態となる場合がある。
【0150】
一実施態様では、本発明が、障害及び/又は疾患の治療において治療効果、特に有効な効果、好ましくは持続する有益な効果をもたらす薬剤を調製するために、本発明の少なくとも1種のシロイノシトール化合物又は組成物の治療上有効な量を使用することに関する。
【0151】
別の実施態様では、本発明が、アルツハイマー病の治療を継続又は持続させる薬剤を調製するために、本発明の1種以上のシロイノシトール化合物又は組成物を使用する方法を提供する。
【0152】
更なる実施態様では、本発明が、異常なタンパク質の折り畳み及び/又は凝集、及び/又はアミロイドの形成、沈着、蓄積又は存続によって特徴付けられる障害の治療のために経口投与によって使用される薬学組成物を調製するために、シロイノシトール化合物を使用する方法を提供する。
【0153】
本発明の組成物及び方法の治療効果及び毒性は、ED50(母集団の50%において治療効果がある濃度)又はLD50(母集団の50%の致死量)のような統計的パラメータを計算する等、細胞培養における又は実験動物を使用した標準的な薬学的手段によって決定される場合がある。治療指数は、毒性効果に対する治療効果の濃度比であり、ED50/LD50として表すことができる。大きな治療指数を示す薬学組成物が好ましい。1種以上の治療効果、好ましくは、本明細書に記載の有益な効果は、被験体又は疾患モデルにおいて証明することができる。例えば、有益な効果は、本明細書の実施例に開示されたモデルにおいて証明される場合があり、特に有益な効果は、アルツハイマー病の病状を有するTgCRND8マウスにおいて証明される場合がある。
【0154】
本発明の方法は更に、マーカーとしてAβを測定することを含む。一態様では、本発明が、被験体における、アミロイドの形成によって特徴付けられる疾患、特にアルツハイマー病の治療効果を評価する方法に関しており、これには、薬剤で治療する前に検出可能な物質で標識付けしたシロイノシトール化合物を使用して、該被験体由来の試料中のAβ40及び/又はAβ42を検出することが含まれる。該薬剤で治療した後の該被験体由来の試料中のAβ40及び/又はAβ42の量は、Aβ40及び/又はAβ42のベースライン量と比較される。該ベースライン量と比べた、治療後に測定のAβ40及び/又はAβ42の量の間の減少は、陽性の結果を示す。Aβ40及び/又はAβ42の量は、薬剤投与後に長い間隔で測定することができる。Aβ40及び/又はAβ42の持続的(例えば、3、6、12、18又は24ヶ月以上の持続)な減少は、薬剤が持続する有益な効果をもたらすことを示す。被験体の試料中のAβ40及び/又はAβ42の量は又、治療薬によって疾患の症状の改善又は解放を経験した被験体の集団から測定した対照値と比較することもできる。対照値と少なくとも同等である被験体の値は、治療に対する陽性反応を示す。
【0155】
投与
本発明のシロイノシトール化合物及び組成物は、治療効果、特に有益な効果、特に持続する有益な効果をもたらすために、活性薬剤が被験体又は患者の体内の薬剤の作用部位と接触するような任意の手段によって投与することができる。該活性成分は、所望の有益な効果をもたらすために、同時に、又は時間的に異なる時点において任意の順序で逐次的に投与することができる。本発明の化合物及び組成物は、局所的又は全身的に送達するために、持続的に放出するように製剤化することができる。治療効果、特に有益な効果、よりに具体的には持続する有益な効果をもたらすように本発明の組成物及び治療法の効果を最適にする投与の形態及び経路を選択することは、熟練した医師又は獣医師の能力の範囲内である。
【0156】
該化合物及び組成物は、錠剤、カプセル(徐放又は持続放出製剤を含む)、丸剤、紛薬、顆粒、エリキシル、チンキ、懸濁液、シロップ及び乳剤のような経口投与形態で投与される場合がある。又、静脈注射(急速静注又は輸液)、腹腔内注射、皮下注射又は筋肉内注射等の、薬学の技術分野の当業者に周知の全ての利用される投与形態で投与される場合もある。本発明の組成物は、適切な鼻腔内賦形剤の局所使用による経鼻投与、又は経皮経路により、例えば、通常の経皮皮膚パッチを使用して投与される場合がある。経皮送達システムを使用した投与のための投与量プロトコールは、投薬計画を通して断続的ではなく連続的となる場合がある。徐放製剤は治療薬に使用してもよい。
【0157】
本発明の態様では、該化合物及び組成物が、末梢投与、特に静脈投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、経口投与、局所投与、経粘膜投与、又は肺投与によって投与される。
【0158】
本発明の投与レジメンは、薬剤及びその投与方法及び投与経路の薬力学的特性、即ち、被験体の種、年齢、性別、健康状態、病状及び体重、症状の種類及び程度、同時に行われる治療の種類、治療の回数、投与形態、被験体の腎臓及び肝臓の機能、及び所望の効果のような既知の因子によって変化する。
【0159】
効果、特に有益な効果、より具体的には持続する有益な効果をもたらすように特定の障害及び/又は疾患を治療するに当たって有効となる、シロイノシトール化合物又は該化合物からなる組成物の量は、該障害及び/又は疾患の性質により異なり、標準的な臨床技術によって決定することができる。製剤中で使用される正確な量は又、投与経路及び疾患の重篤度によっても異なるため、医師及び各被験体の環境の判断に基づいて決定する。
【0160】
特に、投与に適切な投与量の範囲は、治療効果、特に有益な効果、より具体的には持続する有益な効果をもたらすように選択される。投与量の範囲は一般的に、所望の生体応答を誘発するために効果的である。投与量範囲は一般的に、被験体の体重1kg当たり、約0.5mg〜約2g、約1mg〜約1g、約1mg〜約200mg、約1mg〜約100mg、約1mg〜約50mg、約10mg〜約100mg、又は約30mg〜70mgである。
【0161】
本発明の組成物又は治療法は、有益な効果、特に本明細書の(a)〜(t)に記載された有益な効果の1種以上をもたらす、少なくとも1種のシロイノシトール化合物の単位投与量からなる場合がある。「単位投与量」又は「投与量単位」とは、単位、即ち、被験体に投与することができる単一の投与量であり、それ自体として、又は1種以上の固体又は液体の薬学的賦形剤、担体又はビヒクルとの混合物として活性薬剤を含む物理的及び化学的に安定した単位投与量として維持しながら、容易に取り扱い及び包装することができる単一の投与量を指す。
【0162】
被験体は、シロイノシトール化合物又は組成物又はそれらの製剤を使用して、所望されるほぼ何れのスケジュールで治療される場合がある。本発明の組成物は、1日に1回以上、特に1日に1回又は2回、週に1回、1ヶ月に1回、又は連続して投与される場合がある。一方、回数を減らして、例えば、1日おき、週に1回又は更に回数を減らして被験体を治療する場合もある。
【0163】
本発明のシロイノシトール化合物、組成物又は製剤は、約又は少なくとも約1週間、2週間〜4週間、2週間〜6週間、2週間〜8週間、2週間〜10週間、2週間〜12週間、2週間〜14週間、2週間〜16週間、2週間〜6ヶ月、2週間〜12ヶ月、2週間〜18ヶ月、2週間〜24ヶ月の間、定期的に、又は連続して被験体に投与される場合がある。
【0164】
一態様では、本発明が、シロイノシトール化合物又はその栄養学的に許容可能な誘導体からなる補助剤をヒトに投与することを含む、ヒトの食餌を補うレジメンを提供する。被験体は、少なくともほぼ毎日、又は回数を減らして、例えば1日おき、又は週に1回、補助剤により治療される場合がある。本発明の補助剤は、毎日摂取される場合もあるが、回数を減らして、例えば、週に数回、又は投与量を均等に分割して消費しても有益な場合がある。
【0165】
特定の態様では、本発明が、式Ia又はIbで表わされる約25〜約200mgの化合物、又はそれらの栄養学的に許容可能な誘導体を日常的にヒトに投与することを含む、ヒトの食餌を補うレジメンを提供する。他の態様では、式Ia又はIbで表わされる約50〜100mgの化合物が日常的にヒトに投与される。
【0166】
本発明の補助剤は、食餌と共に摂取される場合もあれば、食後に摂取される場合もある。従って、補助剤は、ヒトの朝食時及び/又はヒトの昼食時に摂取される場合がある。一部を食事の直前に投与する場合もあれば、食事の最中又は直後に投与する場合もある。毎日消費する場合は、補助剤の一部をヒトの朝食の直前、最中又は直後に消費し、補助剤の残りの部分をヒトの昼食の直前、最中又は直後に消費する場合もある。朝の量及び昼の量はそれぞれ、シロイノシトール化合物の凡そ等量としてもよい。本明細書に記載の補助剤及びレジメンは、一般的に受け入れられる栄養のガイドライン、及び週に数回の少量から中程度の運動のプログラムに基づくバランスのとれた食餌と併用した時に、最も効果的となる場合がある。
【0167】
一実施態様では、補助剤1g当たり約5mg〜約30mgの1種以上のシロイノシトール化合物又はその栄養学的に許容可能な誘導体からなる補助剤をヒトに投与することを含む、ヒトの食餌を補うレジメンが提供される。一実施態様では、補助剤の一部がヒトの朝食時に投与され、補助剤の残りの部分がヒトの昼食時に投与される。
【0168】
本発明を特定の実施例によって更に詳細に開示する。以下の実施例は、説明の目的のために提供されており、如何なる場合にも本発明を限定するものではない。当業者は、基本的に同様の結果をもたらすために変更又は修正できる、重要でないパラメータを容易に理解するであろう。
【実施例】
【0169】
(実施例1)
以下の方法は、実施例に記載される試験において使用された。
【0170】
マウス: 最初に、C3H/B6非近交系の経歴におけるTgCRND8マウス[17,18]の実験群を、30mg/日のエピ−又はシロ−シクロヘキサンヘキソールの何れかを使用して治療した。この初期投与量は、種々の精神障害に対してヒト被験体に一般的に投与される、ミオ−シクロヘキサンヘキソール(6〜18グラム/日/成体、又は86〜257mg/Kg/日)の投与量に基づき選択された[36]。これらの投与量においては、ミオ−シクロヘキサンヘキソールが、ヒト又は動物において毒性を有さなかった。本明細書に記載の試験は、5mg/Kg/日〜100mg/Kg/日の投与量を使用して繰り返され、これらの他の濃度は同様の結果を生じた(データ掲載なし)。5ヶ月齢の動物のコホート(処置群当たり、n=10匹のマウス)を試験に使用し、治療の1ヶ月後に結果を解析した。体重、毛の特徴、及びケージ内における行動を観察した。カロリー摂取量における潜在的な変化のための陰性対照として、マンニトールを使用した。全ての実験は、カナダ動物管理協会(Canadian Council on Animal Care)のガイドラインに従って行った。
【0171】
行動試験: モリス水迷路試験は、既に説明されている通りに実施した[18]。非空間的予備訓練の後、マウスは、一般的な動機付け、学習障害及び運動疾患を除外するために指示された可視プラットホームに続く、1日4回5日間の弁別訓練を行い、次いで記憶力を評価するプローブ試験を行った。データは、「被験体間の」因子として処置(未処置、エピ−又はシロ−シクロヘキサンヘキソール)及び遺伝子型(非Tgに対するTgCRND8)を使用した反復測定分散分析(ANOVA)の混合モデルに付された。運動活性のオープンフィールド試験は、既に説明されている通りに実施した[41]。歩行、休止及び毛づくろいの持続時間は、自発的な歩行運動活性の指数として解析した。感覚運動機能は、他の文献で説明されている通りに[42]、EconomexTM加速ロタロッド(Columbus Instruments[米国オハイオ州コロンバス])を使用して試験した。該ロッドは、最初に0.2r.p.m./秒から始めて、5r.p.m.の一定速度で加速するように設定した。落下の潜伏期間は、30分間隔で行う4日間の試験で記録した。全てのマウスには、試験前の7日間にわたり訓練を施した。4日間の試験の落下の潜伏期間を合計することによって、各動物の日々の試験成績を得た。
【0172】
脳内アミロイド負荷: 脳を取り出し、1種の半球を4%パラホルムアルデヒドで固定し、正中矢状面にパラフィンワックス包埋した。系統的で一様な無作為切片一式を作製するため、5μmの連続切片を全半球にわたって収集し、50mm間隔の切片一式を分析に使用した(10〜14切片/式)。ギ酸により抗原回復処理を行い、抗Aβ一次抗体(Dako M−0872)に続いて二次抗体(Dako StreptABC複合体/西洋ワサビキット)により培養した後、プラークを同定した。最終生成物は、DABにより視覚化し、ルクソールファーストブルーにより対比染色した。アミロイドプラーク負荷は、ライカ顕微鏡及び日立KP−M1U CCDビデオカメラと接続したLeco IA−3001画像解析ソフトウェアを使用して評価した。続いて、Openlab画像化ソフトウェア(Improvision[米国マサチューセッツ州レキシントン])を使用して、プラーク数及び面積の測定のため、顕微鏡写真をバイナリーイメージに変換した。血管アミロイド負荷は、血管由来又は血管周辺のアミロイドとして定義し、同様に解析した。
【0173】
血漿及び脳内Aβ含量: 半脳の試料を緩衝ショ糖溶液中で均質化し、次いで、可溶性Aβレベルの場合は0.4%ジエチルアミン/100mM NaClを、又は全Aβの単離の場合は冷ギ酸の何れかを加えた。中和後、試料を希釈し、市販のキット(BIOSOURCE International)を使用してAβ40及びAβ42に関する分析を行った。各半球を3重に分析し、平均値±標準誤差を報告した。Aβ種の分析のために尿素ゲルを使用して、ウェスタンブロット分析を全画分で行なった[43]。そして、6E10(BIOSOURCE International)及びEnhanced Chemiluminenscence(Amersham)を使用してAβを検出した。グリオーシスの定量化: 5個の無作為に選択し、均等に間隔を空けた矢状切片を、処置マウス及び対照マウスのパラホルムアルデヒドで固定して凍結させた半球から収集した。切片は、星状細胞については抗ラットGFAP IgG2a(Dako;希釈1:50)を使用して、小グリア細胞については抗ラットCD68 IgG2b(Dako;1:50)を使用して免疫標識付けした。そして、Zeiss, Axioscope 2 Plus顕微鏡に取り付けたCoolsnapデジタルカメラ(Photometrics[米国アリゾナ州トゥーソン])を使用して、デジタル画像を取り込み、Openlab
3.08画像化ソフトウェア(Improvision[米国マサチューセッツ州レキシントン])を使用して、画像を解析した。
【0174】
生存率調査: 生存確率は、死の発生毎に生存確率を計算して、それによって小さい試料サイズに適合させるKaplan−Meier技法[44]により評価した。生存率の分析を行うに当たっては、各処置群に35匹のマウスを使用した。そして、Tarone−Ware検定を使用して、処置の効果を評価した。
脳内APPの分析: マウスの半脳の試料を、0.4%DEA(ジメチルアミン)/100mM NaClと混合した、20mMトリスpH7.4、0.25Mショ糖、1mM EDTA及び1mM EGTA及びプロテアーゼ阻害剤カクテル中で均質化し、109,000×gで遠心ろ過した。そして、既に説明されている通りに[17,18]、上清のAPPレベルをmAb 22C11によるウェスタンブロットによって分析し、一方でペレットのAPPホロタンパク質をmAb C1/6.1によって分析した。
【0175】
可溶性Aβオリゴマーの分析: 可溶性Aβオリゴマーのレベルを、抗オリゴマー特異的抗体を使用したドットブロットアッセイにより測定した[24]。即ち、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)の存在下で、PBSの半脳1個由来のオリゴマーを可溶化した。4℃で1時間78,500×gで遠心ろ過した後、上清を分析した。タンパク質含量は、BCAタンパク質アッセイ(Pierce)により測定した。2μgの総タンパク質をニトロセルロース上にスポットし、ビオチン化オリゴマー特異的抗体と培養する前に、TBS中の10%脱脂乳を使用して阻害した。そして、ストレプタビジン−HRP及びECL化学ルミネッセンスキットによりブロットを培養した。陰性対照としては可溶性及び線維性Aβ42を使用し、陽性対照としては合成オリゴマーAβ42を使用した[23]。オリゴマー抗体を除去して、抗Aβ抗体6E10により再プロービングした後、対照試料を再度同定した。
【0176】
長期増強作用: 標準手順[45,46]によってマウス海馬のCA1領域における電場電位を記録した。P16とP26の年齢間のSwiss Websterマウスを、イソフルランを使用して麻酔した。脳は速やかに取り出し、248mMショ糖、2mM KCl、2mM MgSO、1.24mM NaHPO、1mM CaCl、26mM NaHCO、10mM D−グルコースを含有する、氷冷し、酸素添加したショ糖−CSF(pH7.4、〜315mOsmol)に入れた[47]。各半球の海馬を単離し、350μmの冠状切片を作製した。該切片を、NaCl−CSF(124mM NaCl、2mM KCl、2mM MgSO、1.25mM NaHPO、2mM
CaCl、26mM NaHCO、10mM D−グルコース、pH7.4、〜315mOsmol)を含有する保持チャンバーに移し、1時間以上再生させた。チャンバーに入れた切片は、15mlのACSFを含有する閉ループによって連続して灌流され、オリゴマーAβが保存される。安定したベースラインで20分が経過した後、1mlの15倍濃縮7PA2馴化培地±1.25μMシロ−シクロヘキサンヘキソールを灌流ループに加えた。そして、バイポーラ刺激電極(World Precision Inst.)をシェーファー側枝中に入れて、ベースライン刺激及び強縮を起こした。ACSFを含有するホウケイ酸塩ガラス記録用電極(2〜4MΩ)は、刺激電極から約75〜200μmに配置した。刺激強度は、最大電場電位応答の25〜40%が得られるように設定した(通常10〜20μA)。試験刺激は0.05Hzで起こした。LTPを誘導するため、強縮(100Hz、1秒間)は5分間隔で4回起こした。そして、Axopatch 200Bを使用して、電場電位応答を10倍に増幅し、データを10kHzでサンプリングし、2kHzでフィルターにかけた。形跡はpClamp 9.2を使用して解析し、電場電位の勾配は全応答の約10〜60%を使用して評価した。
【0177】
シナプトフィジンの定量化: パラホルムアルデヒドで固定した処置及び対照マウスの、均等に間隔を空けた3個の矢状切片で、シナプトフィジン免疫組織化学染色を行った。切片は、抗シナプトフィジンIgG(1:40;Roche,Laval,PQ)を使用して、シナプトフィジンについて免疫標識付けした。デジタル画像は前述の通り取り込み、分析した。各切片中で、海馬のCA1領域の無作為に選択した100μmの領域3カ所のシナプトフィジン反応細胞体及び神経繊維末端を計数した。結果は、100μm当たりの反応細胞体数及び神経繊維末端数の平均として表した[48,49]。
【0178】
(結果)
in vivoにおける有効性を評価するため、イノシトール化合物をアルツハイマー病の健康なマウスモデル(TgCRND8)に投与した[17,18]。TgCRND8マウスは、ヒトにおけるADを引き起こす2種のミスセンス突然変異(KM670/671NL及びV717F)を有するヒトアミロイド前駆体タンパク質導入遺伝子(APP695)を発現する。約3ヶ月齢では、マウスが、脳内Aβレベルの上昇、及び脳細胞外アミロイドプラークの数の増加の両方によって起こる進行性空間学習障害を示す[17]。6ヶ月齢付近では、TgCRND8マウスのAβレベル、並びに脳内のアミロイドプラークの形態、密度及び分布が、既知のADを発症するヒトの脳内のものと同様となる[17]。ADを発症するヒトと同じように、マウスモデルの生化学的、行動的及び神経病理的特徴は、加速度的な死亡率に伴って起こる[17,18]。
【0179】
TgCRND8マウス及び非トランスジェニックの同腹子を、治療薬としてのシクロヘキサンヘキソール立体異性体の有効性を試験するために使用される、性別及び年齢が一致したコホートとして割り当てた(処置は5ヶ月齢まで遅延し、6ヶ月齢までの1ヶ月間続く)。マウスを、活性化合物(1,2,3,4,5/6−(エピ−)シクロヘキサンヘキソール又は1,3,5/2,4,6−(シロ−)シクロヘキサンヘキソールを経口投与)の投与、偽の治療(マンニトール)、又は無治療に無作為に割り当てた。指標は、認知機能、脳のAβレベル、及び神経病理であった。試験的なin vivo試験が有意な利点を示さなかったので(データ掲載なし)、以前のin vivo試験[16]がミオ−シクロヘキサンヘキソールが弱い効果のみであることを示したため、1,2,3,5/4,6−(ミオ−)シクロヘキサンヘキソールは、この試験に含まれていない。これらの実験の経過を通じて、観察者は、遺伝型か処置群であるかに気付かなかった。
【0180】
シクロヘキサンヘキソールは、定着したアミロイド沈着を分解する。
【0181】
ほとんどのAD被験体は、症状を示すようになった後にのみ、即ち、Aβオリゴマー化、沈着、毒性及びプラーク形成がかなり促進された時に、治療を求める。シクロヘキサンヘキソール立体異性体が、かなり定着したAD様表現型を抑止することができるかどうかを評価するため、TgCRND8マウスの処置の開始を5ヶ月齢まで遅らせた。この月齢においては、TgCRND8は、有意な行動障害を有しており、大量のAβペプチド及びプラーク負荷を伴っている[17]。TgCRND8及び非−Tg同腹子のコホート(コホート当たり10匹のマウス)を、エピ−シクロヘキサンヘキソール又はシロ−シクロヘキサンヘキソールの何れかで28日間処置するか、未処置のままにした。化合物の投与量及び経口投与、実験に使用する神経化学的及び神経病理学的アッセイは、最初の治療実験において使用されるものと同じであった。試験の短さが重要なデータを生成するように未処置TgCRND8マウスにおいて余りに少数の死しかもたらさなかったため、死亡率曲線は、この動物のコホートについて生成されなかった。
【0182】
28日間、エピーシクロヘキサンヘキソール又はシロ−シクロヘキサンヘキソールで処置するか、又は処置しなかった、6ヶ月齢のTgCRND8マウスの間で、これらのマウスにおける空間学習を比較した。エピ−シクロヘキサンヘキソールで28日間処置した6ヶ月齢のTgCRND8マウスの性能は、未処置TgCRND8同腹子のものとは有意に異なっておらず(F1.15=3.02;p=0.27;図1A)、これらの非−Tgの同腹子の性能よりも有意に劣っていた(F1.14=11.7;p=0.004;図1C)。更に、該プローブ試験は、エピ−シクロヘキサンヘキソール処置TgCRND8マウスが、未処置TgCRND8マウスと統計的に有意に異なっていないことを確認した(p=0.52;図1E)。動物における、脳内のAβ40又はAβ42レベル、プラークで覆われた脳の領域の割合、又は既に存在する疾患に有意に影響しなかった(表1)。
【0183】
5ヶ月齢のTgCRND8マウスのシロ−シクロヘキサンヘキソールによる28日間の処置は、未処置TgCRND8マウスと比べて、有意に良好な行動性能をもたらした(p=0.01)。実際は、これらのシロ−シクロヘキサンヘキソール処置TgCRND8マウスの認識能力は、非−Tgの同腹子のものとは識別不能であった(F1.13=2.9;p=0.11;図1B,D)。シクロヘキサンヘキソール処置が非−Tgマウスの認識能力に影響を及ぼさなかったため、このシクロヘキサンヘキソール処置の有益な効果は、行動、運動又は知覚系における非特異的な効果によるものではなかった(F2.19=0.98;p=0.39)。該プローブ試験では、環状交差指数により、非−Tg同原子とは統計的に異なる、シロ−シクロヘキサンヘキソール処置TgCRND8マウスについての記憶力における有意な改善が示された(p=0.64;図1E)。代わりの測定としての標的四分円における、別のマウスのコホート及び使用された時間の割合において、シロ−シクロヘキサンヘキソール処置TgCRND8マウスは、非−Tg同腹子と統計的な差がなかった(p=0.28;データ掲載なし)。シロ−シクロヘキサンヘキソールの有益な効果は、感覚運動の堂々の変化によるものではなかった。シロ−シクロヘキサンヘキソールは、オープンフィールド試験において、未処置TgCRND8マウス(F1.9=0.25;p=0.63)及び非−Tg同腹子(F1.12=0.02;p=0.89)の両方と比較して、TgCRND8マウスの毛づくろい又は活性に影響しなかった(補充データ)。同様に、ロタロッド試験は、オープンフィールド試験において、シロ−シクロヘキサンヘキソール処置及び未処置TgCRND8マウスの間(p=0.42)、又は未処置TgCRND8マウスマウス、及び処置又は未処置非−Tg同腹子の間(p=0.79)に相違を示さなかった。又、予防試験の結果と一致し、5ヶ月齢におけるシロ−シクロヘキサンヘキソールの28日間の処置は、1)Aβ40及びAβ42の脳内レベルを減少し(例えば、不溶性Aβ40=29±2.3%の減少、p<0.05:不溶性Aβ42=23±1.4%の減少、p<0.05);及び2)プラーク数、プラークサイズ及びプラークで覆われた脳の面積の割合を有意に減少した(プラーク数=13±0.3%の減少、p<0.05;プラークサイズ=16±0.4%の減少、p=0.05;プラークで覆われた脳の面積の割合=14±0.5%の減少、p<0.05;表1;図1C〜D)。これらの結果は6ヶ月齢の予防試験の結果と事実上同程度であった。
【0184】
要するに、データは、シロ−シクロヘキサンヘキソール、及び程度の差はあっても、エピ−シクロヘキサンヘキソールが、TgCRND8マウスにおけるAD様表現型を予防及び拮抗し、認知機能障害、アミロイドプラーク、アミロイド血管障害、Aβ誘発性炎症応答、及び加速的な死亡率曲線を減少することができることを示す。これらの効果は、CNS内における化合物の直接の効果であると思われる。何故なら、1)該化合物は、促進輸送によって、血液脳関門を横切って輸送され[20,22];及び2)ガスクロマトグラフィー−質量分光分析によって、処置されたマウスの脳組織内におけるそれらの存在を証明することができる[23](データ掲載なし)からである。
【0185】
処置及び未処置TgCRND8マウス由来の脳ホモジネートのAPPホロタンパク質、APPグリコシル化、APPs−α又はAPPs−β、又はAP種分化(即ち、Aβ1−38のレベル)のレベルに変化はなかった(データ掲載なし)。同様に、血漿Aβ42レベルによって測定したAβの末梢分布は、処置及び未処置TgCRND8マウスの間で異なっていなかった。5ヶ月齢で、シクロヘキサンヘキソールで28日間処置したTgCRND8マウスのコホートにおける血漿Aβ42のレベルは;未処置=1144±76pg/mL;エピ−シクロヘキサンヘキソール=1079±79pg/mL;シロ−シクロヘキサンヘキソール=990±73pg/mL;p=0.87であった。Aβ免疫療法後に強い抗体応答及び明らかな臨床的改善を発現した被験体においても血漿Aβレベルは変わらなかったため、末梢/血漿Aβ42の変化の欠如は関連性がある可能性がある。
【0186】
シクロヘキサンヘキソール立体異性体が、in vivoで明らかに有する活性である脳内のAβのオリゴマー化[15,16]を阻害する可能性を直接取り扱うため、ドットブロットイムノアッセイ[24]を使用して、処置及び未処置TgCRND8マウスの脳内Aβオリゴマーのレベルを測定した。このアッセイは、オリゴマーAβ種を選択的に同定する抗体を使用する[24]。処置マウスの脳内では可溶性Aβオリゴマーのレベルが有意に減少しているが、前記減少は、前記化合物によって誘発される行動的及び神経病理学的向上の程度と比例している(図2)。既存の病状を有する5ヶ月齢のTgCRND8マウスにおけるエピ−シクロヘキサンヘキソールによる1ヶ月の処置の後、Aβオリゴマーは有意に減少した(未処置TgCRND8マウスでは56±4ピクセル、エピ−シクロヘキサン処置TgCRND8マウスでは47±2ピクセル、p=0.12)。5ヶ月齢における、シロ−シクロヘキサンヘキソールによる、更なる28日間の処置は又、可溶性Aβ−オリゴマーの30%の減少を引き起こした(未処置TgCRND8マウスでは63±3ピクセル、シロ−シクロヘキサン処置TgCRND8マウスでは45±2ピクセル、p=0.008)。ドットブロットは、τ、α−シヌクレイン及びチューブリンに対する交差反応性について陰性であり、TgCRND8の脳のホモジネートにおいてAβについての抗体の特異性が証明された。これらの結果は、シロ−シクロヘキサンヘキソールが脳内の可溶性Aβオリゴマーの量を減少するが、エピ−シクロヘキサンヘキソールは減少しないことを、直接に証明した。
【0187】
シロ−シクロヘキサノールがAβオリゴマー誘発性神経毒性を阻害する可能性を解決するため、その活性を、海馬切片中の長期増強(LTP)、及びTgCRND8マウスの脳内のシナプトフィジン免疫反応性のレベルによって測定された、シナプスの密度によって測定した。海馬のLTPはシナプスの柔軟性の程度であり、天然の細胞誘発性オリゴマーAβ種によって崩壊されると思われる[26]。以前にラットにおいて報告したように[26,27]、CHOの馴化培地中に分泌された可溶性Aβオリゴマーは、野生型マウスの海馬切片においてLTPを阻害する、ヒトAPPV717F(7PA2細胞)に安定に形質移入する(図2B)。しかし、7PA2−馴化培地が、試験管内でシロ−シクロヘキサンヘキソールと前処理された場合、7PA2馴化培地単独に比べて、有意なLTPの回復があった(p=0.003;図2B)。ヒトAPPで形質移入されなかった、単純なCHO細胞由来のシロ−シクロヘキサンヘキソール処置培地、及びこれらの細胞由来の未処置培地が、シロ−シクロヘキサンヘキソール処置7PA2培地と区別がつかなかったため、シロ−シクロヘキサンヘキソールは、LTPにおいて直接の効果を有しなかった(図2C)。即ち、3種の試料はLTPを可能にした。シロ−シクロヘキサンは、潜在的強縮の欠如において、シナプス応答を変化させなかったため、LTP効果はベースラインの透過を変化させなかった(データ掲載なし)。この切片培養の保護を、シナプス機能におけるin vivo効果と関連させるために、シロ−シクロヘキサンヘキソール処置又は未処置マウス内の海馬のCA1領域においてシナプトフィジン免疫反応性のレベルを測定した。シナプトフィジン免疫反応性は、シナプス密度の程度である。シナプトフィジンのレベルは有意に増加した。従って、シロ−シクロヘキサンヘキソールは、海馬のCA1領域におけるシナプトフィジン反応性神経繊維末端及び細胞体の数を予防試験群について148%(未処置TgCRND8マウスでは1610±176/100μm、シロ−シクロヘキサンヘキソール処置TgCRND8マウスでは2384±232/100μm;p=0.03)、遅延治療試験について150%増加させた(未処置マウスでは1750±84/100μm、シロ−シクロヘキサンヘキソール処置TgCRND8マウスでは2625±124/100μm:p<0.001)。又、LTP及びシナプトフィジンの試験の結果は、シロ−シクロヘキサンヘキソールが、脳内において、自然に分泌されたヒトAβオリゴマーによって誘発されるLTPの阻害を回復し、シナプス機能の維持を可能にすることを示した。
【0188】
シロ−イノシトールは又、TgCRND8に2ヶ月間、7ヶ月齢まで投与した。処置された動物において、認知及び症状の両方の持続的効果が観察された。
【0189】
(実施例2)
細胞誘導性AβオリゴマーにおけるAZD−103の効果、海馬の長期増強における効果の試験
この試験の目的は、アルツハイマー病の原因において重要な役割を果たしていると思われる、可溶性Aβオリゴマーを中和するために、AZD−103の潜在的治療効果を調べることである。APP751V717Fを安定に過剰発現するCHO細胞系である、7PA2細胞によって生産された、小さな可溶性Aβオリゴマーにおけるシロ−イノシトール化合物(即ち、AZD−103、シロ−シクロヘキサンヘキソール)の効果を調べた。これらの細胞は、ウェスタンブロットによって検出されるように、Aβオリゴマーのシリーズを生産する。これらのAβオリゴマーは、齧歯動物の海馬において、長期増強(実験動物におけるシナプス効率及び柔軟性を測定する方法)(LTP)を大いに阻害するように見える。従って、この試験の主要な目的は、AZD−103が、ウェスタンブロット(脱凝集又はエピトープマスキングの何れかの表示)により検出される、Aβオリゴマーのパターンに影響を及ぼすかどうかを決定することであり、第二の目標は、AZD−103がAβオリゴマーの有害な効果からLTPの障害を回復するかどうかを調べることであった。
【0190】
目的:
1)LTP実験を実施する直前の7PA2馴化培地への1.25μMのAZD−103の緊急適用の効果を試験した。この実験の目的は、AZD−103が完全に集合したAβオリゴマーからLTPを障害を回復することができるかどうかを決定することであった。
【0191】
2)1.25μmMの、AZD−103のキロ及びエピ鏡像異性体の緊急適用の効果を試験した。この実験の目的は、効果が、より少ないか不活性な化合物でなく、AZD−103に特異的であるかどうかを決定することであった。
【0192】
3)LTPパラダイムを使用したAZD−103の用量反応曲線を実施した。この実験の目的は、7PA2 CMに関して、AZD−103についてのIC50を確立することであった。
【0193】
4)LTP実験パラダイムにおける、低濃度のAZD−103を使用した培養時間曲線を確立した。この実験は、LTPの障害の回復を向上するAZD−103及び7PA2 CMのより長い共同培養の期間を決定するために計画された。
【0194】
5)7PA2 CMに既にさらされた海馬切片に対して高レベルのAZD−103の適用が、まだLTPの障害を回復することができるかどうかを試験した。この試験の目的は、AZD−103が脳組織内に浸透した後に、Aβオリゴマーの効果を拮抗できるかどうかを確立することであった。
【0195】
6)AZD−103の連続的希釈により処置された(馴化後)7PA2 CMにおけるIP/ウェスタンブロット分析を実施した。馴化の前に7PA2細胞に直接AZD−103を添加(馴化前)して同じ実験を実施した。この実験は、オリゴマー生成に対するオリゴマーの安定性におけるAZD−103の効果を比較するために計画された。
【0196】
7)馴化後よりも馴化前に適用した場合に、LTPの障害の回復において、相対的に低濃度のAZD−103がより大きい効果であるかどうかを試験した。
【0197】
(方法)
電気生理学: 電気生理学的方法の詳細な記述は、Walsh, et al., Journal of Neuroscience 25: 2455−242に見出すことができる。即ち、350μmの冠状断面を、Swiss Websterマウスの脳のp16−p28から調製した。電場電位記録は海馬のCA1領域で調製され、シェーファー側枝を刺激した。人工脳髄液(ACSF)における20分間の記録を実施し、安定したベースラインを確立した。この間隔の間、15倍濃縮7PA2 CMの1mLのアリコートを37℃で5分間溶解し、18.75μMのAZD−103を、この馴化培地に加え、混合し、に加え、混合し、37℃に戻した。15分後、7PA2 CM/AZD−1−3混合物を15mLのACSFで、最終濃度が1倍7PA2 CM及び1.25μM AZD−103になるように希釈した。次に、15mLを更に20分間連続して脳切片に再循環し、組織中へAβを浸透させた。LTPを誘発するため、4回の100Hzの強縮を各5分づず送達した。強縮後1時間、誘起したEPSPの勾配を続けた。これは、Aβオリゴマーによって非常に影響されるLTPの初期段階であるため、1時間のポイントは分析の中心である。
【0198】
馴化培地の調製: CHO−又は7PA2細胞を〜90%密集度まで増殖した。細胞を1倍血清を含まないDMEM培地で洗浄し、10cmのシャーレ中で、4mLの、血清を含まないDMEM、pen/strep、1−グルタミン酸塩、AZD−103有/無中で、一晩(〜15時間)培養した。次の日、馴化培地(CM)を収集し、1000×gで遠心ろ過して、生化学実験のために完全プロテアーゼ阻害剤(1mg/mL ロイペプチン、1mg/mL ペプスタチン、0.1mg/mL アプロチニン、40mg/mL EDTA、及び2mMの1/10 フェナントロリン)により、又、電気生理学実験のために細胞培養適合性プロテアーゼ阻害剤(Sigma P1860 1:1000)により処理した。「バッチ」、通常は〜300mLを達成するために、十分な容量が収集されるまで、−80℃にてCMを保存した。次に、これらの試料を、15倍CMに濃縮するために、YM−3 centriconろ過ユニットで遠心ろ過した。得られた濃縮物を収集し、1mLずつに分画して、−80℃にて保存した。細胞の密集度及び継代数における小さな相違等のいくつかの因子による、バッチ毎に発生する7PA2 CM中にある種の可変性がある(通常の阻害は、ベースラインの120%〜150%、CHO対照の200%〜220%)。従って、任意の実験(即ち、用量応答曲線、時間曲線等)で、単一のバッチを調製し、バッチ内で7PA2単独と比較する。
【0199】
IP/ウェスタンブロット: 8mLの7PA2 CMを、40μLのプロテインAアガロースで30分間、前もって精製した。ビーズを沈降させ、60μLのポリクローナル抗Aβ抗体R1282を、更なる40μLのプロテインAアガロースと共に上清に加えた。これらの試料を4℃にて一晩置いた。ビーズを0.5STEN緩衝剤(塩化ナトリウム、トリス、EDTA、NP−40)、SDS STEN、STENにより連続して洗浄した。2倍トリシン試料緩衝剤を、洗浄したビーズに加えて、煮沸し、遠心ろ過した後、得られた上清を10〜20%トリシンゲルに載せた。次に、タンパク質をニトロセルロースに転写し、抗Aβ抗体6E10を使用して調べた。
【0200】
(結果)
培地を脳切片に塗布する15分前にCM(馴化後)に直接塗布した1.25μMのAZD−103は、Aβオリゴマーの効果からLTPの障害を完全に回復する(図3A、3B及び3C、表2)。120分において(強縮60分後)、EPSPの勾配は、CHO−/AZD−103対照におけるベースラインの218%であることが分かった(これはCHO−単独でも一般的である)。予想通り、7PA2 CMは、60分の強縮後にLTPを有意に阻害した(ベースラインの150%)。しかし、1.25μMのAZD−103を7PA2 CMと共に15分間培養すると、LTPの障害を十分に回復した。AZD−103のエピ鏡像異性体は又、LTPの回復において効果的であることも分かったが(尤も、おそらくはnが小さいために、これが統計的に重要ではないことも判明したが)、キロ鏡像異性体は1.25μM濃度では効果的でなかった。
【0201】
最初の実験では、AZD−103のCM(馴化後)への適用がウェスタンブロットによるAβ三量体の検出能を減ずることが示された(図4)。それにもかかわらず、二量体は実験1に影響しないように思われた(図4)。最初の実験では、AZD−103の2種類の異なる濃度が試験された。高濃度(1.25μM)のAZD−103は三量体を減少させ、より小さなバンドを僅かに増加させ、単量体を減少させ、二量体は影響されないと思われた(実験2、図4)。第二の実験では、1.25μMのAZD−103が三量体も減少させるが、二量体及び単量体は影響しないままであった。馴化前に加えた時に、オリゴマーの生成を減少することが以前示されたため、RS0406化合物を陽性対照として使用した。
【0202】
AZD−103の用量応答曲線を実施し、LTPの障害を回復する効果のあるAZD−103の濃度範囲を確立した(図5、表3)。4種の異なる濃度のAZD−103(0.125、0.5、1.25及び5.0μM)を、7PA2 CM馴化後に加えた。7PA2のこのバッチは、LTPの阻害において僅かに効果的であり(7PA2単独について113%ベースライン)、1.25μMのAZD−103が以前の試験ほど効果的でなかったことに留意すべきである。それにもかかわらず、〜μMのIC50を有する明らかな用量応答が見られた(7PA2 CMのバッチ間で僅かに変化するという注意付きで)。
【0203】
AZD−103/7PA2 CMの同時培養の長時間は、LTPにおける効果を変化させなかった(図6A及び6B、及び表4)。より長い培養(15、30、120、240分)が、LTPの障害の回復の向上を示すかどうかを確認するために、相対的に低濃度のAZD−103(0.5μM)が選択される。より長い培養、又は7PA2単独では、有意な相違は示されなかった。しかし、15分を除いた全ての時間は、CHO−と比較して重要性を失った。これは、図5に示すように、LTP阻害の軽減における、0.5μMの部分的効果と一致している。
【0204】
切片を無傷のオリゴマーにより灌流すると、AβオリゴマーによるLTPの阻害の拮抗においてAZD−103は効果がなかった(図6C)。7PA2 CMにより灌流した20分後に、相対的に高濃度のAZD−103(10μM)を、マウスの脳切片に適用した。次いで、切片を、AZD−103/7PA CMと更に10分間7PA2 CMにより灌流した。60分の強縮後のLTPの阻害は、7PA対照と有意に異なっていなかった。それにもかかわらず、相対的に低濃度のAZD−103(0.5μM)を直接適用した7PA2細胞(馴化前)は、これらの細胞由来のCMをマウスの脳切片に塗布した時、LTPの障害を首尾よく回復した。従って、AZD−103は、馴化後よりも馴化前に適用した場合、LTPの障害の回復において更に効果的であることが証明された。
【0205】
用量応答曲線を実施し、ウェスタンブロットによるアッセイのように、どの濃度のAZD−103が効果的にAβオリゴマーを減少するかを調べた。これらの実験について、AZD−103を、馴化前に直接7PA2細胞、及び馴化後に7PA2 CMに加えた。全てのオリゴマーは、馴化前及び馴化後の両方によって効果的に減少した。これらの実験における一つの挑戦は、IP洗浄の間の試料間の変動を減少することである。従って、Aβ三量体及び二量体の絶対測定量(図7C)、及びAPP又はAβ単量体にて規格化した測定量(図7D及び7E)が含まれた。全てのAZD−103の濃度は、絶対的に測定し、単量体に規格化した場合に、二量体及び三量体レベルを減少すると思われる。APPに規格化した場合、AZD103の効果は用量応答性であることを示す。
【0206】
図7において、AZD103を7PA2 CMと培養した場合(馴化後)と比較し、7PA2細胞に直接加えた場合、オリゴマーにおけるAZD103の効果に相違は観察されなかった。それにもかかわらず、細胞をAZD−103と前もって処置した(馴化前)場合、LTPパラダイムにおける7PA2 CMの効果を試験した。馴化後のレジメンを使用した部分的な効果のみを示す、相対的に低い濃度(0.5μM)を使用した。馴化前に、細胞に直接に適用された0.5μMのAZD103は、LTPを阻害するためのCMの能力における完全な効果を有していた。120分における勾配の変化率は、オリゴマー(CHO−)非存在における観察と同じであった(図8;図6の0.5μMの馴化後のレジメンと比較)。これらの結果は、オリゴマー生産細胞に直接適用した場合に、馴化後よりも低い濃度で追加の利点を有することを示唆する。
【0207】
(結論)
該試験からの主要な結論は、AZD−103が、マウスの海馬におけるシナプス機能におけるAβオリゴマーの短期効果の中和において高い効果を示すことである。
【0208】
長期増強(LTP)の標準的アッセイは文献に広範に開示されており、脳におけるシナプス効果及び柔軟性の測定として広く受け入れられている。LTPの細胞性及び分子的基礎は、ヒトにおける学習及び記憶力に必要であるのと同じ機序を使用していると考えられる。従って、LTPを抑止するAβオリゴマーの性能は、アルツハイマー病被験体において記憶力を傷害するのと同様の過程をほとんど模倣している。この仮説を基礎として、マウスの海馬におけるLTPを回復するAZD−103の主要な効果は、AZD−103が同じ機能を有し、アルツハイマー病被験体に同様の利点をもたらすという仮説と一致する。
【0209】
この試験の第二の関心は、AZD−103が、どのようにしてLTPに対して無力にならしめるかについての見識を得ることであった。最初の実験(これらのいくつかは図4に含まれる)は、AZD−103が、阻害において特に影響を及ぼすAβ三量体を遮断するか脱凝集することを示した。図7に示す投与実験は一般的に、この結論を支持する。
【0210】
AZD−103は、7PA2 CM(馴化後)よりも、むしろ7PA2細胞に直接適用する(馴化前)場合に、更なる効果を示した。AZD−103は、二量体及び三量体を直接に減少することができるが、それは、オリゴマーを分泌する細胞と培養した場合に、向上し/更なる効果を有する。
【0211】
AZD−103は、脳切片を7PA2 CMにより灌流した後に加えた場合に、LTPを回復しなかった(図6)。しかし、AZD−103は、たとえ予め存在する脳の損傷を拮抗することができなくても、新しく生成されたAβオリゴマーを効果的に中和し、更なる損傷を予防する可能性がある。これにより、その他の回復機序は、分析評価によって測定できるよりも長い期間にわたって更に効果的に作用し、予後を改善する可能性がある。
【0212】
この試験のため、野生のマウス、及び細胞誘導性Aβオリゴマーの加えられた外来性の源を使用した。この実験方法の利点は、シナプス機能におけるAβの急速な効果を試験することができ、Aβ毒性、及び初期Aβ損傷の二次及び三次的結果を抑止する可能性がある補整効果を減少する。第二の利点は、細胞誘導性CMが、合成Aβを使用して再生することが困難な、非常に安定したオリゴマーを多種類含んでいることである。最終的に、LTPを損傷させる上で必要なAβレベルは非常に低く(初期の推定値は高いピコモル範囲にある)、アルツハイマー病被験体に見られるAβレベルに非常に接近している。従って、これは、シナプス機能におけるAβオリゴマーの有害な効果を抑止するAZD−103の性能を試験するための識別システムである。
【0213】
AZD−103の毒性の直接的書庫は観察されなかった(7PA2細胞は、AZD−103の存在下で正常であるらしい;Aβ三量体が減少した場合であっても、APPの発現は正常であった;又、CHO−/AZD−103条件下のLTPに対する有害な効果は観察されなかった(図3を参照)。
【0214】
要約
ヒトアミロイドβ−タンパク質(Aβ)の天然の細胞誘導性オリゴマーは、in vivoにおいて齧歯動物の海馬における長期増強作用(LTP)を著しく阻害する。前記オリゴマーは又、ラットにおける学習行動の回復を障害し、Aβの可溶性の低−nオリゴマーが記憶力を障害し、アルツハイマー病の初期症状に寄与することのできるという仮説を見出した。
【0215】
この試験における主要な目的は、シクロヘキサンヘキソール、AZD−103が、シナプス機能におけるヒトAβオリゴマーの阻害効果を中和することによる治療的利点をもたらすことができるかどうかを決定することであった。野生型マウスの海馬切片を、AZD−103で処置し、分泌したAβオリゴマーを含む(低いnM濃度で)馴化培地(CM)により灌流した。〜1〜2μM濃度で、AZD−103は、完全にLTPの障害を回復したのに対して、不活性鏡像異性体は効果がなかった。Aβ分泌細胞に直接適用した場合、更に低い濃度であっても、AZD−103は効果的であった。IP/ウェスタンによるCM中のAβオリゴマーの解析では、AZD−103がそれらのレベルを減少することが示された。
【0216】
AZD−103は、既に形成されたオリゴマーを減少することによって、可溶性Aβの阻害効果から、海馬のLTPの障害を回復する。従って、AZD−103は、ADにおける初期発病過程を抑止する。
【0217】
(実施例3)
アミロイド−βオリゴマー誘発性認知機能障害におけるAZD103の効果
目的:
アルツハイマー病(AD)のAlernating Lever Cyclic Ratioラットモデルにおいて、AZD103を含む、種々の化合物を試験した。この非常に敏感なモデルは、アミロイド−β(Aβ)オリゴマーのラット脳内への直接注入による認知機能障害を検出することができる。小分子量の化合物を、認識力に有害な効果を及ぼすことが知られているAβオリゴマーと同時に投与し、オリゴマー誘発性の認識力の認識力の減少に作用する能力を評価した。
【0218】
Aβオリゴマーは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)を過剰生産する遺伝子で軽質移入された細胞によって自然に生産される。APPは、セクレターゼによって開裂され、細胞は、2から10個のアミロイドタンパク質(二量体〜12量体)のオリゴマーAβ分子を構築し、それを培養細胞の培地(CM)中に分泌する[5]。更に、オリゴマーAβは、Swedish APP突然変異で形質移入されたトランスジェニックマウス(Tg2576)から撮られた脳ホモジネートから抽出される[51]。Aβオリゴマーは可溶性であり、繊維/プラークを形成せず、溶液中で安定である。CMからであろうと、脳ホモジネートからであろうと、オリゴマーは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、認知に有害な影響を及ぼす特異的分子量カテゴリーに精製される[50]。ADにおいて見られるものと関連する生理的濃度において、精製されたAβのオリゴマー形態は、動物が起きて動いている間に、留置カテーテルを通してラットの側脳室に注入される。注入の2時間後、ラットを、高感度認知アッセイで試験する。
【0219】
該アッセイ、Alernating Lever Cyclic Ratio(ALCR)試験は、認知機能における薬剤の効果について以前に公開された方法よりも高感度である[52,53]。この課題において、ラットは2種のレバーを有する実験チャンバー内の餌強化を獲得するために、レバーを押す必要の複雑な順序を学習しなければならない。被験体は、餌の報酬を得るために、第一のレバーを押した後に他のレバーに切り替えることによって、2個のレバーの間を行き来しなければならない。各餌を得るために必要な押圧の正確な回数は変化し、固形飼料につき、最初は2から各固形飼料について56回まで増え、次いで、固形飼料につき2回まで減少する。中間の値は、二次式、x−xに基づく。一サイクルは、レバーを押す必要の完全な上昇及び下降である(例えば、餌を得る度に、2、6、12、20、30、42、56、56、42、30、20、12、6及び2回)。毎日の活動の間に、6回の、当該完全なサイクルがある。
被験体が餌を得るために押圧した後にレバーを繰り返した場合にエラーが記録される。即ち、変化しない(繰り返しエラー)、又は被験体がレバーについての応答要求を完了する前に切り替える場合(切換エラー)。
【0220】
方法:
オリゴマーAβ: 軽質移入されたチャイニーズハムスター卵巣細胞(7PA2細胞)から調製した。これらの細胞は、生理的レベルで培地(CM)中にオリゴマーAβを分泌する。Aβオリゴマーは又、Tg2576マウスの脳から誘導され、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製される。オリゴマーAβの試料をウェスタンブロット分析によって特徴付けをおこなった。適当な対照化合物を調製し、各活性Aβオリゴマー立体配置について試験した。
ラット: エラー率が安定するまで、約3ヶ月間、ALCRについて40匹のラットを訓練した。訓練の期間は、各週に5日行った。
【0221】
手術: 訓練の後、全てのラットに、一本の28ゲージのカニューレを、側脳室を目標にし、頭蓋骨に取り外せないように添付した(右及び左を均等に分けた)。ラットを、手術から回復するために5日間放置した。
投与: ラットへのAZD103のin vivo投与は、飲料水へのAZD103の溶解によって実施した。種々の濃度を調整し、特定の平均的な毎日の投与レベルを標的にするため、平均的な水摂取量を使用した。従って、これらの濃度は概算であった。
【0222】
試験: 認知機能を崩壊することが知られているAβオリゴマーに対してAZD103の試験を行った。2種の一般的な過程を導入した。
【0223】
1.ALCRにおける作用を評価する前に、AZDを、Aβオリゴマーを含有する注入液培地で培養した。培養していない(未処置)Aβオリゴマーを含有する適切な対照注入薬を、AZD103と同様にICV注入した。
【0224】
2.ALCRの存在下、認知機能に影響を及ぼすことが知られているAβオリゴマー調製物のICV注入試験の少なくとも3〜4日前に、飲料水中で投与して、ラットをAZD103で処置した。
【0225】
処置を以下の順序で評価した。
【0226】
1.ICV 7PA2 CM単独
2.ICV AZD103単独
3.ICV ex vivoで培養した7PA2 CM及びAZD103
全てのラットは、無作為の順序で処置1〜3を受けた。
【0227】
4.ICV 7PA2 CM処置4日後に、30mg/kg/日のAZD103を経口投与
5.ICV 7PA2 CM処置4日後に、100mg/kg/日のAZD103を経口投与
6.ICV 7PA2 CM処置4日後に、300mg/kg/日のAZD103を経口投与
7.ICV 7PA2 CM処置4日後に、処置なし。
【0228】
エラー割合の分析: AZDの下での全てのエラー率を、注入前に少なくとも3〜4日間処置しなかったラットを含むベースラインエラー割合と比較した。これは、エラー割合の変化を検出するために最大出力を発生する主題の設計の範囲内の反復測定である。
【0229】
組織像: 試験の完了によって、20匹のラットの脳を貯蔵した。他の20匹の脳を、炎症、グリオーシス及びカニューレ配置について組織学的に評価した。これら20匹からの灌流固定した脳を、ホルマリン中に滴下固定し、右及び左の半球を別々に処理した。連続的なヘマトキシリン及びエオシン染色切片を、カニューレ配置についての評価のために使用した。これらの同じ半脳を、標準的なヘマトキシリン及びエオシン染色、並びに必要に応じてゴリオーシスの特異的マーカーを使用して、炎症(好中球/リンパ球/マクロファージ)、グリオーシス(ミクログリアル及び星状細胞)及びニューロン損失について評価した。
【0230】
反対側の半球を、共焦点免疫組織化学蛍光顕微鏡写真(GFAP、Neu−N、DAPI、ヨウ化プロピジウム)のためにホルマリン中に保存し、炎症の変化は、H及びE分析について重要であると考えるべきである。
【0231】
結果
結果を表5に示す。両方のタイプのエラーは、Aβオリゴマーの注入によって増加した(切り替えエラー及び保続エラーについて、それぞれベースラインエラーの120%及び135%(p=0.011及び0.007))。注入前にオリゴマーをAZD103と培養した場合、エラーの数はベースラインに回復した(切り替えエラー及び保続エラーについて、それぞれベースラインエラーの95%及び100%(p=0.50及び0.99))。従って、認知機能障害の原因となるAβオリゴマーを予防することができる。オリゴマー無しのAZD103の投与は性能に影響を及ぼさず、薬剤が、非特異的な認知向上をもたらさないことを証明した。
【0232】
次いで、経口投与したAZD103のアミロイド誘発性急性認知機能障害を予防する能力を調べた。ラットに、AZD103(30、100及び300mg/kg/日、飲料水中)を、各濃度レベルについて4日間投与した。次いで、カニューレを通じて脳内にAβオリゴマーを注入した。2時間後、ラットのALCR試験を行った。Aβオリゴマーは、動物を処置した時に、エラーの有意な増加を引き起こした(切り替えエラー:ベースラインエラーの130%、p=0.003;保続エラー:ベースラインエラーの169%、p=0.009)。しかし、エラー率は、AZD103の全ての濃度レベルによってベースラインレベルまで回復した(30、100及び300mg/kg/日投与量について、ベースラインエラー率は、それぞれ、切り替えエラーについて109%、100%、109%であり;保続エラーについて120%、120%、99%であった)(図10)。
【0233】
従って、ラットの脳内においてアミロイドに急性的にさらされることにより引き起こされる認知機能障害を軽減する上で効果的である。ex vivo培養は、AZD103がラットにおけるAβの有害な効果を中和し得ることを証明する。従って、in vivo投与データは、AZD103が、ラットにおいて、治療的可能性を発現するのに、経口に次いで十分な脳の浸透剤であることを示す。試験は、アミロイド−誘発性認知機能障害を治療するためのAZDの可能性を証明する。
【0234】
当該実施態様は、本発明の一面の単なる説明であり、任意の機能的に同等の実施態様は本発明の範囲内であるため、本発明は、本明細書に記載の特定の実施態様によって範囲を限定されない。実際、本明細書に示され、開示された実施態様に加えた、本発明の種々の改良は、前述の開示及び添付した図面から当業者に明らかになるであろう。当該改良は、添付した請求の範囲の範囲内にあることを意図する。
【0235】
本明細書で言及された全ての刊行物、特許、特許出願は、個々の刊行物、特許又は特許出願が、参考文献として全体が具体的及び個別に組み入れられるのと同じように、参考文献として本明細書に組み入れられる。本明細書の参考文献の引用は、当該参考文献が本発明の先行技術として利用できるという承認ではない。
【0236】
【表1】

【0237】
【表2】

【0238】
【表3】

【0239】
【表4】

【0240】
【表5】

以下は、本明細書に対して引用される刊行物の列挙である。
【0241】
【数1】

【0242】
【数2】

【0243】
【数3】

【0244】
【数4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図1−3】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図7D】
image rotate

【図7E】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−214516(P2012−214516A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−178707(P2012−178707)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2007−541601(P2007−541601)の分割
【原出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(505321031)
【Fターム(参考)】