説明

シロキサン化合物及びこれを用いた液状組成物

【課題】各種成分との相溶性にも優れ、単独或いは他成分と配合して有用であり、しかも貯蔵安定性に優れた硬化性組成物を供するシロキサン化合物を得る。
【解決手段】以下の示性式で表されるシロキサン化合物を含有する液状組成物が硬化してなる硬化物。
SiO(OH)(OR(OR
(ただし、1.0≦a≦1.6、0≦b<0.3、b=4−(2a+c+d)、0≦c≦2.0、0<d≦2.0、Rはメチル基又はエチル基、RはRと相異なる有機基)

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサン化合物並びにこれを含有する液状組成物及びこれらの硬化物に関する。
【従来技術】
【0002】
有機樹脂にアルコキシシリル基を導入することにより、塗膜の硬度、耐酸性、耐候性等の改善が従来より試みられている。更に近年、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン、及びこれらを部分加水分解縮合したオリゴマーを単独でコーティング剤として用いたり、或いはこれらを樹脂と配合して用いることが検討されている。本発明者らは先に、それ自身で、或いは各種の樹脂、シランカップラー等の有機成分と配合して極めて有用な硬化組成物を供することのできる、下記の示性式に示すシロキサン化合物を用いた組成物を提案している(特願平7−157897)。
(化2)
SiO(OH)(OR(OR
(ただし0.8≦a≦1.6、0.3≦b≦1.3、0.2≦c+d≦1.9、b=4−(2a+c+d)、Rはメチル基又はエチル基、RはR以外の有機基)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このシロキサン化合物は、外観上は安定な液状を長期間保つものの、一定期間以上の保存をした液は、硬化して得られる塗膜の硬度、耐沸騰水性等の特性が低下してくる場合があることが判った。これは、この物の有する反応性官能基の経時変化が徐々に進行するためと考えられ、より一層の安定化が図れれば、非常に有用であると考えられた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明者らは更に鋭意検討したところ、官能基の経時変化が少なくかつ安定に液状で存在する、特定示性式で表されるシロキサン化合物を得ることに成功し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、
(1)以下の示性式で表されるシロキサン化合物、
【0005】
(化3)
SiO(OH)(OR(OR
(ただし1.0≦a≦1.6、0≦b<0.3、b=4−(2a+c+d)、0≦c≦2.0、0≦d≦2.0、Rはメチル基又はエチル基、RはRと相異なる有機基)
(2)上記シロキサン化合物を含有する液状組成物、
及び(3)上記シロキサン化合物と相溶しうる有機化合物を配合してなる液状組成物、に存する。
【発明の実施の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明のシロキサン化合物は、以下の示性式で表されるものである。
(化4)
SiO(OH)(OR(OR
(ただし1.0≦a≦1.6、0≦b<0.3、b=4−(2a+c+d)、0≦c≦2.0、0≦d≦2.0、Rはメチル基又はエチル基、RはRと相異なる有機基)
【0007】
ここで、b<0.3であることが重要である。何故ならば、bが0.3を超えると塗膜化した場合の塗膜特性の劣化を起こし易い。これは、bが0.3を超えた場合、シラノール基はアルコキシ基との脱アルコール縮合反応によるシロキサンの生成、又はシラノール基相互の脱水縮合反応によるシロキサンの生成を誘発し、官能基の経時的な減少を引き起こしているためではないかと考えられる。ここで、特に本発明のシロキサン化合物においては、特にb<0.3とすることにより、液での貯蔵安定性を大きく向上させることができることが見出されたものである。
好ましくはb≦0.2、更に好ましくはb≦0.1である。これにより、液の貯蔵安定性が極めて優れたものとすることができる上、得られる塗膜の特性を優れたものとして保持できる。
【0008】
また、1.0≦a≦1.6である。a<1.0では、重合度が十分でなく、このシロキサン化合物自身を塗膜化、又はこのシロキサン化合物と後述する有機高分子等の有機化合物と配合して得られる液状組成物を塗膜化した場合の耐擦傷性、耐溶剤性等の向上効果の発現が乏しい。
a>1.6では、得られたシロキサン化合物の高分子量化が進み過ぎゲル化し易く、貯蔵安定性の悪いものになってしまう。
【0009】
ここで、Rはメチル基又はエチル基である。特にメチル基の場合、反応性が高く高重合化し易いため、特に得られる硬化物の硬度、耐薬品性等の特性に優れる。
しかしながら、上記示性式の係数aで表されるシロキサン化合物のシロキサン重合度が高くなると、後述する有機高分子等の有機化合物と配合して用いる場合に「相溶性の低下」から使用上、問題を生じることがある。このときの「相溶性の低下」とは、シロキサン化合物と有機化合物が配合時に白濁又は分液もしくは何れかが析出する様な状況であり、このような場合には均一かつ透明な混合液が得られないため、これを塗膜化しても、透明な均一膜を得ることは困難となる。
【0010】
そこで、本発明者らの更なる検討によりRの一部もしくは全部を、例えばRよりも有機性の高い官能基であるRで置換することにより、種々の有機高分子等の有機化合物との相溶性を改良できることが見出されたものである。つまり、シロキサン化合物に有機化合物を配合する場合には、以下説明するRを適宜選択することにより、シロキサン化合物と有機化合物との相溶性を向上させることができるのである。
すなわち、RはR以外の有機基である。好ましくはRをエステル交換して得られる有機基であればよく、具体的には1価もしくは2価のアルコール類とエステル交換して得られる有機基、例えばアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基、1−メトキシ−2−エチル基、1−エトキシ−2−プロピル基、1−メトキシ−2−プロピル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、COCOC−、CHOC−、COC−、CHOC−等が挙げられ、例えば特開平2−256687号公報に記載されている様な活性水素含有化合物を用いてRの一部または全部を置換したものでもよい。更に、Rとして複数種類の基を導入することも可能である。
【0011】
通常、これらRの導入は、シロキサン化合物の官能基がRだけでは配合する有機化合物及びその溶剤成分と相溶しない場合に行うことができる。このときのRの種類及びRとの比率は、配合する有機化合物との相溶性および所望の硬化物の特性等から適宜選択すればよい。
【0012】
ここで、0.5≦(c+d)≦2.0の範囲が好ましい。(c+d)<0.5では得られたシロキサン化合物がゲル化し易い。一方(c+d)>2.0ではシロキサン化合物自身を塗膜化した場合、又はこのシロキサン化合物と有機高分子等の有機化合物と配合して得られる液状組成物を塗膜化した場合の耐擦傷性、耐溶剤性等の向上効果の発現が乏しい傾向にある。シロキサン化合物の重合度が十分でないためと考えられる。
【0013】
このような本発明のシロキサン化合物を得るための方法は特に限定されず、いずれの方法で得られた物も該当するが、例えば、以下に述べる本発明の方法により本発明のシロキサン化合物を得ることができる。
すなわち、Si(ORで表されるテトラアルコキシシランに、通常1.1〜1.6モル倍量程度の水を加え、所望の程度まで加水分解縮合反応を進行させる。この反応は、触媒及び溶媒の存在下で行うことが好ましく、溶媒としてはROHを用いることが反応の制御のし易さから好ましい。反応自体は、溶媒の還流下の様な加熱系又は室温下で行ってもよく、通常、用いる触媒にもよるが還流下で2〜4時間、室温で1〜3日間でb<0.3とすることが可能である。
【0014】
また、Si(OR)のRをRに置換する場合は、引き続きこの液に所定量のROHを添加した後、加温し副生するROH及び/又は溶媒のROHを留去しながらエステル交換反応を進行させればよい。このとき、用いるROHはROHよりも高沸点のものが留去によるロスが少なく、反応制御し易いため好ましい。尚、溶媒がROHの場合で、これを留去することでシロキサン化合物が高粘度になり過ぎ安定性が問題となる場合は、エステル交換しないような溶媒をエステル交換反応の前もしくは後に添加して、安定化を図ることも可能である。
【0015】
このように、比較的単純且つ容易な方法で、しかも様々な用途に有用な本発明のシロキサン化合物を得ることができるのである。例えば、このような方法により得られる本発明のシロキサン化合物は、通常、重合度の異なる化合物の混合物からなる液状シロキサン化合物であるが、この液状シロキサン化合物の示性式は、例えば以下の方法で求めることができる。
(1)29Si−NMRにより、Si原子に結合しているO原子の数を求め、係数aの値を求める。
(2)13C−NMR又はH−NMRにより、Si原子に結合しているメトキシ基等のアルコキシ基の数を求め、係数cを求める。
(3)b=4−(2a+c)より、本発明の示性式における、係数bを求める。尚、d=0の場合は、反応の前提を以下の通りとして計算を行うことができる。
(化5)
Si(OR + H
→ SiO(OH)(OR +(4−c)ROH
また、d=0でない場合は、反応の前提を以下の通りとして計算を行うことができる。
(化6)
Si(OR + HO + ROH
→ SiO(OH)(OR(OR +(4−c)ROH
【0016】
なお、上述した製造方法は、本発明のシロキサン化合物を得るための代表的な手法であり、他の方法で本発明のシロキサン化合物を得てもよいことは言うまでもない。
【0017】
こうして得られる本発明のシロキサン化合物は、高重合度でありながら貯蔵安定性は1年以上、透明且つ組成変化のない液状態を保つことが可能である。
このように、従来存在したシロキサン化合物とは違った特徴を有する本発明のシロキサン化合物は、様々な用途に用いることができる。例えばこれを含有する液状組成物を粉体処理、塗布液、各種基材への含浸、添加剤、変性剤等として用いることができる。また、本発明のシロキサン化合物を例えば加水分解溶液としてハードコートに用いることも可能である。また、樹脂等の有機化合物を配合した液状組成物として用いることで、得られる塗膜は、配合前の樹脂等の有機化合物だけの塗膜に比べ、耐擦傷性、親水性付与、耐汚染性、耐酸性、耐候性、耐熱性等の特性向上に優れた効果を発現する。勿論、本発明のシロキサン化合物自体、あるいはこれに樹脂を配合した組成物を更に各種の溶媒等で希釈して塗布液等の用途に用いることも可能である。
【0018】
ここで本発明のシロキサン化合物に配合する有機化合物は、本発明のシロキサン化合物と相溶可能なものが好ましい。相溶可能であるとは、これらを配合した時に白濁又は分液もしくは何れかが析出する様なことがなく、外観上均一かつ透明な混合液が得られることをいう。すなわち、シロキサン化合物が完全に溶解しているものに限られるものではない。
【0019】
このような有機化合物としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基等を有するものが挙げられ、具体的には、例えば
(I)シランカップラー(一般にはRSiX :Xは加水分解性基、Rは有機基)
(II)アルキルアルコキシシリコーン類
(III)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等のポリマー類
(IV)1,4ブタンジオール、グリセリン、カテコール、レゾルシン等の多価アルコール等が挙げられる。
【0020】
より具体的には、例えば(I)のシランカップラーとしては、
(化7)

等のメチルアクリレート系、
【0021】
(化8)

等のエポキシ系、
【0022】
(化9)
NCSi(OC
NCNHCSi(OCH
NCONHCSi(OC
等のアミン系、
【0023】
(化10)
CH=CHSi(OC
CH=CHSi(OCH
CH=CHSi(OCOCH
等のビニル系、
【0024】
(化11)
HS−CSi(OCH
HS−CSi(OC
HS−CSi(OCOCH
等のメルカプト系、
等が挙げられる。
【0025】
これらはいずれも好適に用いることができるが、例えばコーティングを施す場合には基材の種類又は目的とする膜特性等により適宜、適応するシランカップラーを選択することで、より密着性の優れたコーティングを得ることができる。
【0026】
また、(II)のアルキルアルコキシシリコーン類としては、
(化12)
(CHO)Si−{OSi(CH}−{OSi(OCH}−OCH
n,m=1〜10
等が挙げられる。
【0027】
(III)のポリマー類としては、
(1)アクリル樹脂
(a)
(化13)

【0028】
(b)上記(a)構造にγーMTS(γーメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)を付加したもの
【0029】
(2)エポキシ樹脂
(化14)

【0030】
(3)ポリエステル樹脂
(化15)

(4)ポリウレタン樹脂
(化16)

等が挙げられる。
【0031】
これらは、本発明のシロキサン化合物と配合し得る有機化合物の例示であり、本発明で用いることのできる有機化合物はこれらに限られるものではなく、上述した本発明のシロキサン化合物と相溶し得るものであれば、いずれも用いることができる。
又、上記の有機化合物は、目的に応じて2種以上を併用することもできる。
【0032】
例えば、エポキシ樹脂とエポキシ系シランカップラー、アクリル樹脂とアクリル系シランカップラー、ポリエステル樹脂とエポキシ系シランカップラー等、樹脂成分とシランカップラーとを併用することにより、コーティング材として用いた場合の基材との密着性が向上し、又樹脂成分とシロキサン化合物との相溶性が更に向上し得られるコーティング膜の特性がより優れたものとなる等、目的に応じ適時選択することができる。尚、併用に際しては、2種以上を予め配合しても、各々をシロキサン化合物に添加してもよい。
【0033】
また、シロキサン化合物と有機化合物との配合は室温下または場合によっては加熱下で行っても構わない。更に、必要に応じて、溶媒、分散媒、硬化触媒等を添加することができる。
【0034】
有機化合物とシロキサン化合物との配合割合は、不揮発成分として通常、シロキサン化合物100重量部に対して、有機化合物1〜5000重量部と広い範囲での使用で効果を発揮する。例えば、本発明のシロキサン化合物の有する硬度、高耐熱性等の特性の発現を重視する場合は、有機化合物は1〜400重量部の範囲が好ましい。この時の、配合液の不揮発成分中のSiO換算濃度は10〜95%の範囲が好ましい。一方、有機化合物特に有機樹脂による柔軟性、厚膜化等の特性を維持しながら、シロキサン化合物を添加剤的に用いることにより有機化合物が主成分である塗膜等に低汚染性、耐候性等を付与することを重視する場合は、有機化合物は500〜5000重量部の範囲で配合することが好ましい。この時の、配合液の不揮発成分中のSiO2換算濃度は1〜10%が好ましい。
なお、配合液中の各成分、特にシロキサン化合物と上述の有機化合物は、縮合した状態で液中に存在してもよいし、あるいは単に混合している状態で存在してもよい。用途及び有機化合物の種類に応じ、適宜選択すればよい。加熱、及び/又は副生するアルコールを系外に除去することにより縮合反応を促進させることもできる。
なお、本発明のシロキサン化合物と上述の有機化合物とを相溶状態とするには、各種の溶媒又は分散媒を添加した液状組成物とすることにより、相溶状態とすることも可能である。また、有機化合物の種類によっては本発明のシロキサン化合物と配合した後に一定時間放置、攪拌することにより相溶状態とすることもできる。
本発明のシロキサン化合物又は本発明の液状組成物を用いて各種粉体を処理する場合の処理方法は、一般的な湿式法又は乾式法で行うことができる。例えば、乾式法の場合はヘンシェルミキサー等の混合攪拌機付きで且つ乾燥可能な機器を用いれば好適である。
【0035】
原料粉体と所定量のシロキサン化合物とを仕込み、原料粉体表面が充分濡れるまで室温で攪拌し、次に、攪拌を続けながら100〜150℃に加熱しシロキサン化合物の架橋反応を促進させ、且つ水分等の揮発成分を蒸発させることにより表面処理された粉体を得ることができる。尚、所定量のシロキサン化合物で原料粉体が均一に濡れにくい場合は、シロキサン化合物を水等で希釈して用いてもよい。また、特にマトリクスとの親和性を高める場合、原料粉体をシロキサン化合物、特に本発明のシロキサン化合物あるいはこれを水等で希釈した液で予め原料粉体を表面処理し、必要に応じて乾燥等を行った後、更に本発明の液状組成物で処理することもできる。
【0036】
本発明のシロキサン化合物或いは液状組成物は様々な基材との親和性に優れるので、処理の対象となる原料粉体も特に制限されず、例えばガラス、セメント、コンクリート、鉄、銅、ニッケル、金、銀、アルミニウム、希土類、コバルト等の金属、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、活性炭、炭素中空球等の炭素材、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化ベリリウム、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸カルシウム等の硫酸塩、タルク、クレー、マイカ、ケイ酸カルシウム、ガラス、ガラス中空球、ガラス繊維等のケイ酸塩、その他チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、窒
化アルミニウム、炭化ケイ素、硫化カドミニウム等の各種無機粉体、木粉、デンプン、各種有機顔料、ポリスチレン、ナイロン等の有機物充填材等、汎用充填材であると導電性・電磁波シールド性、磁性・遮音性・熱伝導性・遅燃性・難燃性。耐磨耗性等付与の為の機能性充填材であるとを問わず、本発明のポリシロキサン化合物或いは珪素含有組成物で処理することができる。そして、これらの原料粉体を本発明のポリシロキサン化合物或いは珪素含有組成物で処理してなる表面処理の成された粉体は、例えば油性塗料、合成樹脂塗料、水溶性樹脂塗料、エマルジョン塗料、骨材入りエマルジョン塗料、トラフィックペイント、パテ・コーキング等の塗料、靴底、電線、タイヤ、工業用品、ベルト、ホース、ゴム引布、ゴム糊、粘着テープ、ラテックス、バックサイジング等のゴム製品、塗工用、内
填用、合成紙等の紙用途、PVC、ポリオレフィン、エポキシ・フェノール、不飽和ポリエステル等の合成樹脂製品、電気溶接棒、ガラス、酸中和、医薬品、食品、製糖、歯磨、クレンザー、バンカーサンド、農薬、配合飼料、建材等の各種充填材等に用いたり、充填材として繊維及び樹脂成分に配合して成型し、FRP(Fiber Reinforced Plastic)とすることもできる。
【0037】
また、本発明のシロキサン化合物或いは液状組成物を紙等の多孔質素材に含浸する場合は、これら素材をシロキサン化合物或いは液状組成物にティッピングした後乾燥すればよい。常温或いは加熱下、架橋反応を進行させれば、難燃性、平滑性等の特性を付与することができる。本発明のシロキサン化合物或いは液状組成物を接着用途に用いる場合は、被接着面にシロキサン化合物或いは液状組成物を塗布し完全に硬化する前に被接着面同士を圧着する。又は、予め被接着面を本発明のシロキサン化合物又はその加水分解液等でプリコートしておけば、更に接着強度が上がる。
さらに、これらの本発明の液状組成物、あるいは本発明のシロキサン化合物はそれ自体で、あるいは更に顔料を添加して塗料としたり、無機、有機の各種充填材を配合してなる硬化性組成物とし、硬化させて複合材とすることもできる。
顔料としては、無機系顔料として鉛白等の鉛化合物、亜鉛華、リトポン等の亜鉛化合物、酸化チタン等のチタン化合物、オーレオリン、コバルトグリーン、セルリアンブルー2、コバルトブルー、コバルトバイオレット等のコバルト化合物、酸化鉄等の鉄化合物、酸化クロム、クロム酸鉛、クロム酸バリウム等のクロム化合物、硫酸カドミウム、硫セレン化カドミウム等のカドミウム化合物、カーボンブラック等が挙げられる。また、有機系顔料として水に不溶のフタロシアニン系、ジオキサジン系、アントラキノン系、キノフタロン系等の有色化合物、又はこれらの金属含有化合物などが挙げられる。以上、列記した化合物以外でも本発明の液状組成物を着色する目的で使用できる物であれば、何れも用いることができることは言うまでもない。これらは、単独で用いたり、又は2種類以上を併用
することも可能である。
充填材としては、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維等の炭素材、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸カルシウム等の硫酸鉛、タルク、クレー、マイカ、珪酸カルシウム、ガラス繊維等の珪酸化合物などの無機物充填材、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等の有機高分子化合物、木粉、デンプンなどの有機物充填材等が挙げられる。これらは、単独で用いたり、又は2種類以上を併用することも可能である。
本発明のシロキサン化合物あるいは液状組成物にさらに顔料を添加した塗料とする場合は、予め有機化合物に分散しておけば、均一に顔料分散した珪素含有塗膜を容易に得ることができる。
このように、本発明のシロキサン化合物及び液状組成物、並びにこれらを硬化してなる硬化物は、様々な使用分野で種々の優れた特性を発揮する、非常に有用なものである。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
実施例1
〔シロキサン化合物−1の合成〕
攪拌器、ジムロートコンデンサー、温度計を備えたガラス製2リットル四ツ口丸底フラスコにテトラメトキシシラン506.8g、メタノール421.3gを仕込み5分攪拌した後、0.1規定塩酸水6.8gと水65.3gの混合液を添加した。この時の、テトラメトキシシランに対する水の量は1.2モル倍に相当する。
その後、還流状態(65℃)となるまで加熱し、還流下で4時間反応させた。このものを、室温まで放冷したのち取り出して液状で無色透明なシロキサン化合物−1、998.0gを得た。
【0039】
このシロキサン化合物−1の示性式
(化17)
SiO(OH)(OCH
を、以下の方法により求めた。
(1)29Si−NMRにより、Si原子に結合しているO原子の数を求め、係数aの値を求める。
(2)13C−NMRにより、Si原子に結合しているメトキシ基等のアルコキシ基の数を求め、係数cを求める。
(3)b=4−(2a+c)より、上記の示性式における、係数bを求める。尚、反応の前提を以下の通りとして計算を行った。
【0040】
(化18)
Si(OCH + H
→ SiO(OH)(OCH + (4−c)CHOH
この方法で、シロキサン化合物−1を示性式で表すと、
SiO1.15(OH)0.05(OCH1.65
であった。
又、このシロキサン化合物−1について、密閉下で50℃、45日間(室温換算約1年間相当)の加速保存試験を実施したが、液粘度は当初の1.1cpから1.2cp程度しか上昇せず、貯蔵安定性良好な液状物であった。
【0041】
実施例2
〔シロキサン化合物−2の合成〕
攪拌器、ジムロートコンデンサー、温度計を備えたガラス製2リットル四ツ口丸底フラスコにテトラメトキシシラン506.8g、メタノール409.3gを仕込み5分攪拌した後、0.1規定塩酸水6.8gと水77.3gの混合液を添加した。この時の、テトラメトキシシランに対する水の量は1.4モル倍に相当する。
その後、還流状態(65℃)となるまで加熱し、還流下で4時間反応させた。このものを、室温まで放冷したのち取り出して液状で無色透明なシロキサン化合物−2、997.0gを得た。
【0042】
このシロキサン化合物−2を、実施例1と同様にNMR法で解析したところ、示性式は、
(化19)
SiO1.35(OH)0.06(OCH1.24
であった。
又、このシロキサン化合物−2について、密閉下で50℃、45日間(室温換算約1年間相当)の加速保存試験を実施したが、液粘度は当初の1.3cpから1.6cp程度しか上昇せず、貯蔵安定性良好な液状物であった。
【0043】
実施例3
〔シロキサン化合物−3の合成〕
攪拌器、ジムロートコンデンサー、温度計を備えたガラス製2リットル四ツ口丸底フラスコにテトラメトキシシラン506.8g、メタノール397.3gを仕込み5分攪拌した後、0.1規定塩酸水6.8gと水89.3gの混合液を添加した。この時の、テトラメトキシシランに対する水の量は1.6モル倍に相当する。
その後、還流状態(65℃)となるまで加熱し、還流下で4時間反応させた。このものを、室温まで放冷したのち取り出して液状で無色透明なシロキサン化合物−3、998.7gを得た。
【0044】
このシロキサン化合物−3を、実施例1と同様にNMR法で解析したところ、示性式は、
(化20)
SiO1.46(OH)0.08(OCH1.00
であった。
又、このシロキサン化合物−3について、密閉下で50℃、30日間(室温換算約8ヶ月相当)の加速保存試験を実施したが、液粘度は当初の2.3cpから2.7cp程度しか上昇せず、貯蔵安定性良好な液状物であった。
【0045】
実施例4
〔シロキサン化合物−4の合成〕
ガラス製500ml四ツ口丸底フラスコに攪拌器、温度計、リービッヒコンデンサーを取り付けた簡単な単蒸留装置に、実施例1で得られたシロキサン化合物130.0gとキシレン103.3gを仕込み攪拌しながら徐々に加熱して、留出温度が約65℃でメタノールを留去させた。最終的には内温を146℃、留出温度約144℃まで昇温した後、冷却してメタノール含有量1wt%以下、キシレン56.2wt%の液状で無色透明なシロキサン化合物−4、232.4gを得た。
【0046】
このシロキサン化合物−4を、実施例1と同様にNMR法で解析したところ、示性式は、
(化21)
SiO1.17(OH)0.04(OCH1.62
であった。
又、このシロキサン化合物−4について、密閉下で50℃、45日間(室温換算約1年間相当)の加速保存試験を実施したが、液粘度は当初の2.0cpから2.6cp程度しか上昇せず、貯蔵安定性良好な液状物であった。
【0047】
実施例5
〔シロキサン化合物−5の合成〕
攪拌器、ジムロートコンデンサー、温度計を備えたガラス製1リットル四ツ口丸底フラスコにテトラメトキシシラン304.0g、メタノール96.0gを仕込み5分攪拌した後、0.1規定塩酸水4.0gと水39.0gの混合液を添加した。この時の、テトラメトキシシランに対する水の量は1.2モル倍に相当する。
その後、還流状態(65℃)となるまで加熱し、還流下で4時間反応させた。このものを、室温まで放冷してジムロートコンデンサーをリービッヒコンデンサーに取り替えた後、キシレン300.0g及び2−フェノキシエタノール221.0g及びテトライソプロポキシチタン0.12gを仕込み、攪拌しながら徐々に加熱して、留出温度が約65℃でメタノールを留去させながらエステル交換反応を進行させた。最終的には内温を146℃、留出温度約144℃まで昇温した後、冷却してキシレン119.5gを加えて、メタノール含有量0.3wt%、未反応の2−フェノキシエタノール含有量1.9wt%、キシレン40.5wt%の液状で無色透明なシロキサン化合物−5、590.2gを得た。
【0048】
このシロキサン化合物−5の示性式
(化22)
SiO(OH)(OCH(OCOC
を、実施例1と同様にNMR法で解析し、反応の前提を以下の通りとして計算を行った。
【0049】
(化23)
Si(OCH + HO + COCOH
→SiO(OH)(OCH(OCOC+(4−C)CHOH
【0050】
この方法で、シロキサン化合物−5を示性式で表すと
(化24)
SiO1.11(OH)0.16(OCH)0.89(OCOC)0.73
であった。
又、このシロキサン化合物−5について、密閉下で50℃、45日間(室温換算約1年間相当)の加速保存試験を実施したが、液粘度は当初の7.8cpから8.4cp程度しか上昇せず、貯蔵安定性良好な液状物であった。
【0051】
比較例1
〔シロキサン化合物−6の合成〕
テトラメトキシシラン・オリゴマー(「MKCシリケートMS51」、三菱化学(株)製)38.46g、エタノール53.0gを混合した液に、アルミニウムトリスアセチルアセトネート0.38g、を加え、室温下で攪拌して溶解した。次いで、水8.15gを添加し室温密閉化で3日間放置してシロキサン化合物−6、99.9gを得た。
【0052】
このシロキサン化合物−6の示性式
(化25)
SiO(OH)(OCH(OC
を、実施例1と同様にNMR法で解析し、反応の前提を以下の通りとして計算を行った。
【0053】
(化26)
SiO0.8(OCH2.4 + HO +COH
→SiO(OH)(OCH(OC+(2.4−c)CHOH
この方法で、シロキサン化合物−6の示性式を求めると
SiO1.15(OH)0.68(OCH0.37(OC0.65
であった。
又、このシロキサン化合物−6について、密閉下で50℃での加速保存試験を実施したが、10日目にゲル化してしまった。
【0054】
比較例2
〔シロキサン化合物−6の溶媒置換〕
ガラス製200ml四ツ口丸底フラスコに攪拌器、温度計、リービッヒコンデンサーを取り付けた簡単な単蒸留装置に、比較例1で得られたシロキサン化合物−6、50.0gとキシレン40.0gを仕込み攪拌しながら徐々に加熱して、留出温度が約65℃でメタノールを留去させていたところ、内液が白濁すると共に全体がゲル化してしまった。
【0055】
実施例6〜11
実施例1〜5及び比較例1で得られたシロキサン化合物−1〜6と、有機高分子化合物とを配合した各々の硬化性組成物の相溶性を表1に、またそれらの塗膜物性を表2に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
(塗膜作製条件)
・基板・・・・ガラス及びアルミニウム
・塗工・・・・150μmアプリケーター
・硬化条件・・150℃、2時間硬化
(塗膜物性評価方法)
・外 観 :目視観察及びヘイズメータによる△H値測定(ガラス基板使用
・鉛筆硬度:JIS K 5400塗料一般試験方法参照
・耐溶剤性:キシレンを含浸させた綿布で、塗膜表面を往復100回ラビングした後 、キズ又は溶出等を目視評価。
○:変化なし △:若干のキズ ×:キズ又は溶出
・耐屈曲性:JIS K 5400塗料一般試験方法参照
【0060】
(発明の効果)
本発明のシロキサン化合物は、高重合度でありながら貯蔵安定性は1年以上、透明且つ組成変化のない液状態を保つことが可能である。例えば加水分解溶液としてハードコートに用いたり、樹脂等の各種の有機化合物との相溶性に優れるため、これと配合して得られる液状組成物を硬化して得られる塗膜に、親水性付与、耐汚染性、耐酸性、耐薬品性、耐候性、耐熱性等の向上、あるいは鋳物用砂型等のバインダー用途等、様々な用途への適用が可能であり、極めて有用な液状組成物を供することのできる新規なシロキサン化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の示性式で表されるシロキサン化合物を含有する液状組成物が硬化してなる硬化物。
SiO(OH)(OR(OR
(ただし、1.0≦a≦1.6、0≦b<0.3、b=4−(2a+c+d)、0≦c≦2.0、0<d≦2.0、Rはメチル基又はエチル基、RはRと相異なる有機基)
【請求項2】
0.5<(c+d)≦2.0であることを特徴とする請求項1記載の硬化物。
【請求項3】
がメチル基であることを特徴とする請求項1又は2記載の硬化物。
【請求項4】
該シロキサン化合物に、これと相溶しうる有機化合物を配合してなる液状組成物が硬化してなる請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載の硬化物。
【請求項5】
該シロキサン化合物に、粉体を配合してなる液状組成物が硬化してなる請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載の硬化物。
【請求項6】
該シロキサン化合物に、これと相溶しうる有機化合物を配合し、さらに粉体を配合してなる液状組成物が硬化してなる請求項4記載の硬化物。

【公開番号】特開2006−328424(P2006−328424A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237719(P2006−237719)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【分割の表示】特願平8−290148の分割
【原出願日】平成8年10月31日(1996.10.31)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】