シロキサン系複合化合物の製造方法
【課題】 フラーレンを高濃度で含有するフラーレン−シロキサン系複合化合物の調製方法を提供する。
【解決手段】 フラーレンと、ヒドロシランと、をヒドロシリル化して、フラーレン−シリル誘導体を生成させるヒドロシリル化工程と、前記フラーレン−シリル誘導体と、四官能性シランと、を加水分解して、重縮合する重縮合工程と、を備えた。
【解決手段】 フラーレンと、ヒドロシランと、をヒドロシリル化して、フラーレン−シリル誘導体を生成させるヒドロシリル化工程と、前記フラーレン−シリル誘導体と、四官能性シランと、を加水分解して、重縮合する重縮合工程と、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光リミッティング材料として広く用いられるフラーレンと、シロキサン化合物との複合化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラーレンは炭素原子がサッカーボール状に共有結合した物質であり、ラジカル捕捉性、超伝導性等の性質を有する。またフラーレンは、π電子共役構造を有する超微粒子であるため、光リミッティング効果(非線形光学効果)を有する。ここで、光リミッティング効果とは、強いレーザー光の電磁界と物質の電子分極の関係が非線形となる現象をいう。光リミッティング効果は、テイラーの展開近似式の光電場E(ω)により物質に誘起される分極P(ω)の式によって表される。
【数1】
【0003】
電場があまり強くない場合には、第二項以降の非線形分極を無視することができ、分極Pは、電場Eに比例するとみなせるが、レーザー光のような強い電磁波に対しては光の振幅に比例しないため、第2項以降の非線形分極を無視することができなくなる。各項の係数χ(n)をn次の非線形感受率(n=2以上)といい、ミラーの法則からπ電子共役系が大きい物質程非線形感受率は大きくなる。
【0004】
上記のような分極の非線形性のために、入射光強度の変化に対して透過光強度がヒステリシスを示す。このような非線形光学材料は将来の光通信、光情報処理システムの実現に欠くことのできない材料であり、π共役分子や半導体超微粒子が有望な非線形光学材料として注目されている。一方、フラーレンの形状を活かしたナノカーボン分子やナノポア吸着体への応用も検討されている(非特許文献1参照)。しかし、フラーレンの有機溶媒への溶解性は低く、有機ポリマーや無機ポリマー等のマトリックス相と混和しにくく、フラーレンを複合材料として応用開発をする上で障害となっている(非特許文献2参照)。
【0005】
フラーレンを複合化するために、フラーレンのπ電子を利用したπ−π相互作用によりフラーレンをマトリックス相に導入する方法が報告されている(非特許文献3参照)。具体的には、フラーレンにナフチル基のような縮合多環炭化水素を付加させたフラーレン付加体を、メチルトリエトキシシラン(MTES)と反応させることにより、四官能性シラン中に均一に分散させる方法である。また、シランカップリング剤を付加させたフラーレン付加体を無機ポリマーからなるマトリックス相に分散させる方法も開示されている(非特許文献4参照)。
【非特許文献1】P.Innocenzi et al. J. Sol−Gel. Sci. and Tech.,19,263−266(2000)
【非特許文献2】T.Gunji, M.Ozawa, Y.Abe J. Sol−Gel. Sci. and Tech.,22,219−224(2001)
【非特許文献3】A.Kraus, M.Schneider, A.Gugel, K.Mullen, J. Mater.Chem.,7(5),763−765(1997)
【非特許文献4】P.Innocenzi et al. J. Non−Crystalline Solids.,265,68−74(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、フラーレンやフラーレン付加体の溶解性およびシロキサンポリマーとの混和性は低く、非特許文献3,4に記載の方法では、マトリックス相中に均一に分散させることは可能でも、フラーレンの濃度は、わずか0.1%程度であるため、これらの方法により得られた複合化合物の光リミッティング性は低く実用的ではない。
【0007】
以上の課題に鑑み、本発明ではフラーレンとアルコキシヒドロシランとのヒドロシリル化反応により、有機溶媒への溶解性を向上させたフラーレン−シリル誘導体を作成することによって、フラーレンとシロキサンネットワークの間に共有結合を有し、フラーレンを高濃度で含有するフラーレン−シロキサン系複合化合物を調製することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は具体的に以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) フラーレンと、ヒドロシランと、をヒドロシリル化して、フラーレン−シリル誘導体を生成させるヒドロシリル化工程と、前記フラーレン−シリル誘導体と、四官能性シランと、を加水分解して、重縮合する重縮合工程と、を有するシロキサン系複合化合物の製造方法。
【0010】
(2) 前記ヒドロシランは、トリアルコキシシランであり、前記四官能性シランは、テトラアルコキシシランである(1)に記載のシロキサン系複合化合物の製造方法。
【0011】
(3) ケイ素と前記フラーレンのモル比(Si/フラーレン)は、1000から10である(1)又は(2)に記載のシロキサン系複合化合物の製造方法。
【0012】
(4) 前記重縮合工程は、ゾルゲル法により行なう工程である(1)から(3)いずれかに記載のシロキサン系複合化合物の製造方法。
【0013】
(5) 前記重縮合工程は、窒素雰囲気下で行なう工程である(1)から(4)いずれかに記載のシロキサン系複合化合物の製造方法。
【0014】
(1)から(5)の発明によれば、ヒドロシリル化工程を備えたことによってフラーレンの有機溶媒への溶解性を向上させることが可能となった。具体的には、ヒドロシリル化反応によりフラーレンの炭素−炭素結合の一部がシランに置換されたフラーレン−シリル誘導体が生成する。このフラーレン−シリル誘導体は、エトキシ基を9個有している。この部分が、四官能性シランが重縮合反応を行なう際の架橋点となり、共加水分解重縮合を進行させることが可能となるため、フラーレンを高濃度でシロキサンネットワーク中に均一に分散させることができるのである。
【0015】
また(2)の発明において、ヒドロシランをトリアルコキシシランとしたことによって、フラーレン−シリル誘導体を高濃度でシロキサンネットワーク中に均一に分散させることを可能としている。ヒドロシランのうち、トリクロロシラン(5分子)やジフェニルクロロシラン(混合物)やフェニルジクロロシラン(4分子)を用いてもフラーレンとのヒドロシリル化反応が生じるが、これらの物質を用いた場合は、フラーレン−シリル誘導体のクロロ基の加水分解速度が非常に速く、フラーレンシリル誘導体同士が結合して沈殿を生じてしまう。従ってクロロ基の加水分解速度よりも遅いエトキシ基から成るトリアルコキシシランを付加することが好ましい。中でも、トリエトキシシランを用いることが特に好ましい。
【0016】
更に、四官能性シランをテトラアルコキシシランとしたことによってフラーレンをシロキサンネットワーク中により均一に分散させることが可能となる。なお、テトラアルコキシシランのうち、安価で透明性がよく、耐熱性や耐候性に優れているテトラエトキシシランを用いることがより好ましい。
【0017】
また(5)の発明において、重縮合工程を窒素雰囲気下で行なったことによって、系外に水と触媒を排出することができるため、フラーレン−シリル誘導体同士が大気中の水分によって加水分解を起こし、ゲル化することを防ぐことができる。また、重縮合工程においてゲルを生成する際に、π−π相互作用によるフラーレン−シリル誘導体の凝集を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、フラーレンとアルコキシヒドロシランとのヒドロシリル化反応により、有機溶媒への溶解性を向上させたフラーレン−シリル誘導体を作成することができる。また、フラーレン−シリル誘導体と四官能性シランとを反応させることによってフラーレンが高濃度で含有するフラーレン−シロキサン系複合化合物を調製することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0020】
本発明は、フラーレンとアルコキシヒドロシランとのヒドロシリル化反応させるヒドロシリル化工程を有する。ここで、「フラーレン」とは、C60やC70をはじめとする一群の球殻状の炭素分子の総称をいう。本発明では、C60、C70、C76、C78、C80、C82、C84、C86、C88、C90、C92、C94、C96のいずれかを用いてもよいがC60、を用いることが特に好ましい。ここで、「アルコキシヒドロシラン」とは、下記の化学式(1)で示される組成物をいう。ここで、R1からR3はそれぞれ独立して、官能基又は置換基を有してもよいアルキル基であることが好ましい。
【化1】
【0021】
具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソアミル基、n−へキシル基等の直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基が挙げられる。また、官能基を有していてもよいアルキル基としては、アルキル基又はアリール基で置換されたシリル基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0022】
また、置換基を有していてもよいアルキル基としては、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、無置換もしくは置換アリール基、アラルキル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数1から6の直鎖状、分枝鎖状または環状のアルコキシ基が挙げられる。ハロアルキル基としては、上記したアルキル基の一つまたは二つ以上の水素原子が、ハロゲン原子で置換されたものが挙げられ、例えばクロロメチル基、クロロエチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。ハロアルコキシ基としては、アルコキシ基の一つまたは二つ以上の水素原子が、上記したハロゲン原子で置換されたものが挙げられ、例えばクロロメトキシ基、クロロエトキシ基、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
【0023】
中でもR1からR3がエチル基であるトリエトキシヒドロシランを用いることがより好ましい。
【0024】
また、ヒドロシリル化反応は公知の方法を用いて行なう。反応温度は、0℃から50℃で行なうことが好ましく、室温付近で行なうことがより好ましい。反応圧力は、特に限定されず、通常0.5気圧から2気圧で行なわれるが、常圧のもとで行われることがより好ましい。反応時間は、1時間から100時間、通常は10時間から50時間であることが好ましい。また反応溶媒は、反応後は蒸留、抽出、クロマトグラフィー、再結晶などの一般的操作により、生成物を分離することができる。
【0025】
また、ヒドロシリル化反応において用いる溶媒は、特に限定されないが、具体的にはペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、クメン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、メシチレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン等の芳香族系炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒等が挙げられるが、ヘキサン、トルエンを用いて行なうことがより好ましい。さらに、塩化白金酸六水和物のような触媒を併せて用いることがより好ましい。
【0026】
また、本発明は、ヒドロシリル化工程によって生成したC60−シリル誘導体と、四官能性シランと、を重縮合する重縮合工程を有する。ここで、「四官能性シラン」とは、化学式(2)で示される組成物をいう。ここで、R4からR7はそれぞれ独立して、官能基又は置換基を有してもよいアルキル基であることが好ましい。具体的には、上記化学式(1)で示されるアルコキシヒドロシランが有するR1からR3と同様の官能基を用いることが好ましい。
【化2】
【0027】
また、加水分解及び重縮合反応は、窒素雰囲気下で公知の方法を用いて行なう。反応温度は、0℃から150℃で行なうことが好ましく、50℃から100℃で行なうことがより好ましい。反応圧力は、特に限定されず、通常0.5気圧から2気圧で行なわれるが、常圧のもとで行われることがより好ましい。反応時間は、1時間から10時間、通常は2時間から5時間であることが好ましい。また反応溶媒は、反応後は蒸留、抽出、クロマトグラフィー、再結晶などの一般的操作により、生成物を分離することができる。
【0028】
また、加水分解及び重縮合反応において用いる溶媒は、C60−シリル誘導体と、四官能性シランとの加水分解を十分に進行させることが可能なものを用いることが好ましい。具体的には、水と塩酸を過剰に用いることが好ましい。これによってC60−シリル誘導体同士がゲル化することを防ぐことができ、かつ、ゾルの段階でC60とシロキサンネットワークの間を結合させた縮合安定性の高い複合化合物を得ることができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明に係るシロキサン系複合化合物の製造方法の有効性について検討した結果を示す。
【0030】
<C60−シリル誘導体の合成>
まず、トルエン溶媒に触媒として塩化白金酸エタノール溶液を加え、硫酸カルシウムで乾燥した後、C60とトリエトキシシラン(以下、TESとする)を加え、室温で4日間反応させた。次いで、触媒をろ別濃縮し、ジエチルエーテルで未反応のC60を除いた後、再度濃縮することにより茶褐色粘性液体C60−シリル誘導体(以下、TES−C60とする)を得た。このときの収率はおよそ30%であり、このときの反応スキームを以下に示す。
【化3】
【0031】
次いで、TES−C60の核磁気共鳴(以下、NMRとする)、赤外吸収スペクトル(以下、IRスペクトルとする)を図1から4に示す。図1のプロトンNMRでは、TESのSi−Hに帰属されるシグナルがTES−C60では消失していることが示された。また、図2に示す炭素NMRではC60−Hに帰属されるシグナルが観測された。更に、図3に示すケイ素NMRでは、TESのシグナルがTES−C60では低磁場側シフトしていることが示された。更に、図4に示すIRスペクトルでは、Si−H伸縮振動と変角振動の吸収がTES−C60では消失し、新たにSi−C伸縮振動の吸収が確認された。以上の結果からC60とTESとのヒドロシリル化によりTES−C60が合成されたことが示された。
【0032】
このTES−C60を、高速原子衝撃質量スペクトル(以下、FABmassとする)測定及び紫外吸収測定を行なうことにより、TES−C60の立体構造を検討した。図5から8は、TES−C60の紫外吸収測定(以下、UV−VISとする)を行なった結果を示した図である。なお、図6と図8はそれぞれ図5と図7の430nm付近の拡大図を示したものである。C60とTES−C60の最大吸収波長におけるモル吸光係数は、TES−C60では3500であり、C60の56700よりも低下しているのは、C60にTESが付加したことにより、C60の対称性が低下したためであると考えられる。
【0033】
またTES−C60では、濃度を増加させた場合、435nm付近にC60にはない吸収が観測された。この吸収は、C60の6−6縮環部にTESが付加していることが示唆された(図8囲み部分参照)。これらの結果とFABmass測定の結果より、TES−C60は、C60にTESが3分子付加したものであることがわかった。
【0034】
さらに、TES−C60の溶解性を検討した。TES−C60を0.02gを量り取り、所定の溶媒を適宜加え、室温でよく撹拌し、不溶物の有無を目視で確認した。不溶物が見られるときは,さらに溶媒を加えて同様の操作を繰り返した。試料0.02gを溶解するのに必要な溶媒の量が1ml以下のときを易溶、1mlから5mlのときを可溶、5mlから10mlのときを溶、10ml以上のときを不溶と評価した。その結果を表1に示す。これよりTES−C60はほぼすべての有機溶媒に溶解し、C60に比べて著しく溶解性が向上していることが示された。
【表1】
【0035】
<C60−シリル誘導体の合成>
エタノールに溶解させたTES−C60にテトラエトキシシラン(以下、TEOSとする)を氷冷しながら加え、さらに水と塩酸触媒を一定の比率で混合したものを滴下した。その後室温で10分放置した後、80℃で、窒素流量360ml/min、攪拌速度150rpm、4時間、開放系にて共加水分解重縮合反応を行った。得られた淡黄色高粘性ゾル(以下、PEOS−C60ゾルとする)をエタノール溶媒で50質量%に希釈し、アクリルシャーレにキャストした後に80℃で約7日間熟成させることにより、本発明にかかるシロキサン系複合化合物(以下、PEOS−C60とする)を調製した。このときの合成スキームを以下に示す。
【化4】
【0036】
このPEOS−C60におけるケイ素に対するC60のモル比の変化が与える影響について検討を行なった。試料は、ケイ素とC60の比率を変化させた状態で、上記の方法により得られたPEOS−C60を用いた。
【0037】
その結果を表2に示す。これよりケイ素に対するC60のモル比が大きくなると収率が減少し、重量平均分子量は顕著に増加したことが示された。これより、TES−C60が架橋点となって加水分解重縮合が進行し、シロキサンの架橋密度が増加したことが示唆された。また得られたPEOS−C60ゾルから調製したゲルは熟成期間およそ7日間でいずれも均一性がよくC60の含有量が多くなるにつれて透明から茶褐色へと変化したことが確認された。なお、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCとする)により測定した。
【0038】
【表2】
【0039】
次いで、PEOS及びPEOS−C60のNMRスペクトルを図9及び10に示す。ポリエトキシシロキサン(以下、PEOSとする)では、エトキシ基のシグナルのみが観測されたが、PEOS−C60ではC60−H結合に帰属されるシグナルが58.3ppm付近に観測された。このシグナルはTES−C60の63.9ppmに観測されたC60−H結合に由来するシグナルであり、PEOS−C60では低磁場側にシフトしている。これは炭素の電気陰性度がケイ素に比べて大きく、ケイ素がC60に電子を供与したためにC60の電子密度が増加し、高磁場側にシフトしたためであると考えられる。
【0040】
次いで、PEOSとPEOS−C60ゾルのケイ素NMRを図11、表3及び表4に示す。試料には、上記表2に用いた試料と同じものを用いた。なお、ケイ素NMRからPEOS−C60のシロキサンの単位構造であるT構造のピークはシグナルが弱く、T構造の割合を算出することができなかったのでQ構造のみを示している。PEOSとPEOS−C60を比較すると、PEOS−C60では、Q2,Q3構造によるシグナルが低磁場側にシフトしていることが示された。これは、ケイ素の電気陰性度が炭素の電気陰性度に比べ、小さいためであると考えられる。また、C60の含有量が増加するにつれてQ3,Q4構造が増加していることから、単独重合のPEOSゾルよりもPEOS−C60ゾルではシロキサン縮合度が増加して3次元的な架橋構造で構成されていることが示唆された。図9から図11の結果より、TES−C60とTEOSは単なる混合物ではなく、共重合体であることが示された。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
次いで、PEOSとPEOS−C60の溶解性を上記と同様の方法で検討した結果、表5に示すように、ほとんどの有機溶媒に対して高い溶解性を示したが、C60の濃度が増加するに伴って、ヘキサン及びクロロホルムへの溶解性が減少していることが示された。これは分子量やシロキサンの架橋度が増大したためこのような現象が生じたものと考えられる。
【0044】
【表5】
【0045】
次にPEOS−C60の縮合安定性について検討を行なった結果を図12及び図13に示す。図12は、Si/C60=100の構成比で、各種溶媒を加えて40質量%となるようPEOS−C60ゾルを調製し、0℃のもと保存した場合における保存時間と分子量との関係を示した図である。また、図13も同様の条件でPEOS−C60ゾルを調製し、20℃のもと保存した場合における保存時間と分子量との関係を示した図である。
【0046】
これより、0℃で保存した試料は、いずれも保存開始から60日経過しても分子量はほとんど変化なく縮合安定性がよいことが示された。これに対し、25℃で保存した試料は、テトラヒドロフランを添加した場合(図中、THF Soln.参照)、テトラヒドロフランが塩基性溶媒であるため、分子量が著しく増加している。また、溶媒を添加していない試料(図中、Neat参照)とエタノールを添加した試料(図中、EtOH Soln.参照)とを比較した場合、溶媒が存在しない試料の方が、シラノール基やエトキシ基の脱離基間の距離が小さいため縮合が生じ、分子量が増加したと考えられる。
【0047】
また、図14は、得られたPEOS−C60ゾルから調製したPEOS−C60ゲルの写真である。PEOS−C60ゲルはC60の含有量が増加するにつれて、無色透明から茶褐色に変化し、いずれもC60のπ−π相互作用による、C60の凝集体がなく、C60が均一に分散したC60−シロキサン系複合化合物が得られたことが示された。
【0048】
なお、使用した測定機器及び測定条件は以下の通りである。プロトンNMR及び炭素NMRスペクトルには、日本電子社製JNM−ECP500型を用い、ケイ素NMRスペクトルには、日本電子社製JMX−EX400型を用い、それぞれ重クロロホルム中で測定した。また、フーリエ変換赤外吸収(FT−IR)スペクトルは、日本電子社製JIR−5300型により四塩化炭素の溶液法により測定した。スペクトルは4cm−1の分解能で4000cm−1から250cm−1の範囲で取得した。また、高速原子衝撃質量(FABmass)スペクトルは、日本電子社製The MStation JMS 700型を用いた。マトリックスはm−ニトロベンジルアルコールで測定を行った。
【0049】
紫外−可視(UV−VIS)吸光スペクトルは、島津製作所社製フォトダイオードアレイ分光光度計Multi Spec−1500を用いて測定した。また、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)は、島津製作所社製LC−10Advp送液ポンプ、RID−10A示差屈折率検出器を使用した。分離カラムにはポリマーサイエンス社製5μ−Mixed Dのカラムを2本直列にして用いた。移動相は流速1.0ml/minのTHFを用いた。また分子量の計算には市販の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0050】
<光学試験>
[光リミテッィング効果の検討]
上記のPEOS−C60ゲルの光リミッティング効果の検討を行なった。試験は、高エネルギーレーザー(パルス幅:10nsec,周波数:10Hz)を短時間で出力することができるNd:YAGレーザー(コンティニューム社製:532nm)を用いて行なった。
【0051】
具体的には、上記Nd:YAGレーザーから出力されたレーザー光を、二枚の合わせ鏡により二倍波の(波長:532nm,パルス幅:10nsec,周波数:10Hz)のレーザー光のみを反射させ、高エネルギーレーザーとした。次いで、この高エネルギーレーザーを、サンプルの前に置かれたレンズ(駿河精機社製、焦点距離f=10cm)に透過させ、ビーム直径0.9mmとなったレーザー光をサンプルに入射させた。なお、透過光強度はパワーメーター(オフィル社製 Laser power meter model AN/Z型)を用いて測定し、入射光強度はスイッチを調整することで変化させた。
【0052】
その結果を図15に示す。PEOSゲルフィルムでは、入射光強度と透過光強度はLambert−Beerの法則に従い透過率90%で直線的に増加した。一方、PEOS−C60ハイブリッドゲルフィルムは、Lambert−Beerの法則に従わず、光リミッティング機能を発現した。C60をS/C60が1000から10で含有するPEOS−C60ハイブリッドゲルフィルムの透過率は、89%から11%と減少し、Si/C60が1000では、入射光強度1163mJ/cm2、Si/C60が500では入射光強度990mJ/cm2、Si/C60が300では入射光強度644mJ/cm2、Si/C60が100では入射光強度534mJ/cm2、Si/C60が50では入射光強度340mJ/cm2、Si/C60が10では入射光強度130mJ/cm2であり、C60の濃度増加に伴って、入射光強度のしきい値と飽和透過光強度が低下して光リミッティング機能を発現した。
【0053】
<力学試験>
[引張試験]
次にPEOS−C60ハイブリッドゲルフィルムの機械的強度を検討した。PEOS−C60複合化合物をエタノールに20質量%になるよう溶解させ、アクリルシャーレにキャストした後に80℃で約7日間熟成させて得られた厚さ0.2mmのフィルムを、チャック間距離40mm、幅2mmとなるようにカットしたものを試料に用いた。この試料を引張強度試験機(オリエンテック社製 TENSILON/UTM−II−20型)を用いて測定した(クロスヘッドスピード20mm/min)。この結果を表6に示す。
【0054】
【表6】
【0055】
これよりC60の含有量が高くなる程、引張強度及びヤング率が増加し、伸長率が減少していることから、非常に硬い材質であることが示された。架橋剤の役割をするTES−C60の含有量が多い程、PEOS−C60の加水分解重縮合が進行するため分子量が増大し、3次元的な架橋構造でPEOS−C60複合化合物ゲルフィルムが構成されたことが示唆される。
【0056】
[硬度測定]
次にPEOS−C60複合化合物コーティング膜の硬度測定の検討を行なった。試料は、PEOS−C60複合化合物ゾルをエタノール溶媒で20質量%に希釈したものをコーティング溶液とし、各有機基板、無機基板表面にディップコーティング(1回)を行なった。このときの巻き上げ速度は80mm/minである。その後80℃で24h乾燥させ、更に100℃で所定時間乾燥することによりコーティング膜を調製した。
【0057】
コーティングフィルムの付着力は,JIS K5400に従い、碁盤目法により測定した。試験片上の塗膜を貫通して素地面に達する切り傷を碁盤目状(1cm2中に100目)につけた。次いで、この碁盤目の上にセロハン粘着テープを貼り軽く押し付けて引き剥がした。その後、残存する塗膜片の数を目視により数え、0点から10点の範囲で採点した。
【0058】
また、コーティングフィルムの鉛筆硬度は,JIS K5400に従い、手かき法により測定した。試験片を水平な台の上に固定した後、約45°の角度で鉛筆を持ち、芯が折れない程度にできる限り強く塗面に押し付けながら、前方に約1cm/sの一定速度で1cm押し出して塗膜を引っかいた。1回引っかくごとに鉛筆の芯の先端を新たに研ぎ、同一の濃度記号で5回ずつ試験を繰り返し、塗膜の擦り傷が3回以上になる鉛筆の濃度記号より1段階下位の濃度記号を示した。測定には財団法人日本塗料協会により検査済みの三菱鉛筆Uni(商品名)を用いた。このときの結果を表7に示す。
【0059】
【表7】
【0060】
これより、コーティングフィルムは基板の種類によらず良い付着力を示すことがわかった。特に、無機基板の方が早い時間で硬化していることが示された。PEOS−C60のシラノール基と無機基板表面のOH基がメタロキサン型の結合を形成したためであると考えられる。また付着力および鉛筆硬度の結果より、C60の濃度が増加するに伴って付着力および鉛筆硬度の高いものが得られたことがわかった。その理由として、架橋剤の役割をするTES−C60の含有量が多いほど加水分解重縮合反応が進行し、分子量が高く3次元的な架橋構造が形成されたためであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】TES−C60及びTESのプロトンNMR測定結果を示した図である。
【図2】TES−C60及びTESの炭素NMR測定結果を示した図である。
【図3】TES−C60及びTESのケイ素NMR測定結果を示した図である。
【図4】TES−C60及びTESのIR測定結果を示した図である。
【図5】TES−C60及びTESのUVスペクトルを示した図である。
【図6】TES−C60及びTESのUVスペクトルを示した図である。
【図7】TES−C60及びTESのUVスペクトルを示した図である。
【図8】TES−C60及びTESのUVスペクトルを示した図である。
【図9】PEOSの炭素NMR測定結果を示した図である。
【図10】PEOS−C60の炭素NMR測定結果を示した図である。
【図11】PEOS−C60及びPEOSのケイ素NMR測定結果を示した図である。
【図12】PEOS−C60に各種溶媒を加えて0℃のもと保存した場合における保存時間と分子量との関係を示した図である。
【図13】PEOS−C60に各種溶媒を加えて20℃のもと保存した場合における保存時間と分子量との関係を示した図である。
【図14】PEOS−C60ゾルから調製したPEOS−C60ゲルを示した図である。
【図15】PEOS−C60ゾルから調製したPEOS−C60ゲルの光リミッティング効果を示した図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は光リミッティング材料として広く用いられるフラーレンと、シロキサン化合物との複合化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラーレンは炭素原子がサッカーボール状に共有結合した物質であり、ラジカル捕捉性、超伝導性等の性質を有する。またフラーレンは、π電子共役構造を有する超微粒子であるため、光リミッティング効果(非線形光学効果)を有する。ここで、光リミッティング効果とは、強いレーザー光の電磁界と物質の電子分極の関係が非線形となる現象をいう。光リミッティング効果は、テイラーの展開近似式の光電場E(ω)により物質に誘起される分極P(ω)の式によって表される。
【数1】
【0003】
電場があまり強くない場合には、第二項以降の非線形分極を無視することができ、分極Pは、電場Eに比例するとみなせるが、レーザー光のような強い電磁波に対しては光の振幅に比例しないため、第2項以降の非線形分極を無視することができなくなる。各項の係数χ(n)をn次の非線形感受率(n=2以上)といい、ミラーの法則からπ電子共役系が大きい物質程非線形感受率は大きくなる。
【0004】
上記のような分極の非線形性のために、入射光強度の変化に対して透過光強度がヒステリシスを示す。このような非線形光学材料は将来の光通信、光情報処理システムの実現に欠くことのできない材料であり、π共役分子や半導体超微粒子が有望な非線形光学材料として注目されている。一方、フラーレンの形状を活かしたナノカーボン分子やナノポア吸着体への応用も検討されている(非特許文献1参照)。しかし、フラーレンの有機溶媒への溶解性は低く、有機ポリマーや無機ポリマー等のマトリックス相と混和しにくく、フラーレンを複合材料として応用開発をする上で障害となっている(非特許文献2参照)。
【0005】
フラーレンを複合化するために、フラーレンのπ電子を利用したπ−π相互作用によりフラーレンをマトリックス相に導入する方法が報告されている(非特許文献3参照)。具体的には、フラーレンにナフチル基のような縮合多環炭化水素を付加させたフラーレン付加体を、メチルトリエトキシシラン(MTES)と反応させることにより、四官能性シラン中に均一に分散させる方法である。また、シランカップリング剤を付加させたフラーレン付加体を無機ポリマーからなるマトリックス相に分散させる方法も開示されている(非特許文献4参照)。
【非特許文献1】P.Innocenzi et al. J. Sol−Gel. Sci. and Tech.,19,263−266(2000)
【非特許文献2】T.Gunji, M.Ozawa, Y.Abe J. Sol−Gel. Sci. and Tech.,22,219−224(2001)
【非特許文献3】A.Kraus, M.Schneider, A.Gugel, K.Mullen, J. Mater.Chem.,7(5),763−765(1997)
【非特許文献4】P.Innocenzi et al. J. Non−Crystalline Solids.,265,68−74(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、フラーレンやフラーレン付加体の溶解性およびシロキサンポリマーとの混和性は低く、非特許文献3,4に記載の方法では、マトリックス相中に均一に分散させることは可能でも、フラーレンの濃度は、わずか0.1%程度であるため、これらの方法により得られた複合化合物の光リミッティング性は低く実用的ではない。
【0007】
以上の課題に鑑み、本発明ではフラーレンとアルコキシヒドロシランとのヒドロシリル化反応により、有機溶媒への溶解性を向上させたフラーレン−シリル誘導体を作成することによって、フラーレンとシロキサンネットワークの間に共有結合を有し、フラーレンを高濃度で含有するフラーレン−シロキサン系複合化合物を調製することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は具体的に以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) フラーレンと、ヒドロシランと、をヒドロシリル化して、フラーレン−シリル誘導体を生成させるヒドロシリル化工程と、前記フラーレン−シリル誘導体と、四官能性シランと、を加水分解して、重縮合する重縮合工程と、を有するシロキサン系複合化合物の製造方法。
【0010】
(2) 前記ヒドロシランは、トリアルコキシシランであり、前記四官能性シランは、テトラアルコキシシランである(1)に記載のシロキサン系複合化合物の製造方法。
【0011】
(3) ケイ素と前記フラーレンのモル比(Si/フラーレン)は、1000から10である(1)又は(2)に記載のシロキサン系複合化合物の製造方法。
【0012】
(4) 前記重縮合工程は、ゾルゲル法により行なう工程である(1)から(3)いずれかに記載のシロキサン系複合化合物の製造方法。
【0013】
(5) 前記重縮合工程は、窒素雰囲気下で行なう工程である(1)から(4)いずれかに記載のシロキサン系複合化合物の製造方法。
【0014】
(1)から(5)の発明によれば、ヒドロシリル化工程を備えたことによってフラーレンの有機溶媒への溶解性を向上させることが可能となった。具体的には、ヒドロシリル化反応によりフラーレンの炭素−炭素結合の一部がシランに置換されたフラーレン−シリル誘導体が生成する。このフラーレン−シリル誘導体は、エトキシ基を9個有している。この部分が、四官能性シランが重縮合反応を行なう際の架橋点となり、共加水分解重縮合を進行させることが可能となるため、フラーレンを高濃度でシロキサンネットワーク中に均一に分散させることができるのである。
【0015】
また(2)の発明において、ヒドロシランをトリアルコキシシランとしたことによって、フラーレン−シリル誘導体を高濃度でシロキサンネットワーク中に均一に分散させることを可能としている。ヒドロシランのうち、トリクロロシラン(5分子)やジフェニルクロロシラン(混合物)やフェニルジクロロシラン(4分子)を用いてもフラーレンとのヒドロシリル化反応が生じるが、これらの物質を用いた場合は、フラーレン−シリル誘導体のクロロ基の加水分解速度が非常に速く、フラーレンシリル誘導体同士が結合して沈殿を生じてしまう。従ってクロロ基の加水分解速度よりも遅いエトキシ基から成るトリアルコキシシランを付加することが好ましい。中でも、トリエトキシシランを用いることが特に好ましい。
【0016】
更に、四官能性シランをテトラアルコキシシランとしたことによってフラーレンをシロキサンネットワーク中により均一に分散させることが可能となる。なお、テトラアルコキシシランのうち、安価で透明性がよく、耐熱性や耐候性に優れているテトラエトキシシランを用いることがより好ましい。
【0017】
また(5)の発明において、重縮合工程を窒素雰囲気下で行なったことによって、系外に水と触媒を排出することができるため、フラーレン−シリル誘導体同士が大気中の水分によって加水分解を起こし、ゲル化することを防ぐことができる。また、重縮合工程においてゲルを生成する際に、π−π相互作用によるフラーレン−シリル誘導体の凝集を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、フラーレンとアルコキシヒドロシランとのヒドロシリル化反応により、有機溶媒への溶解性を向上させたフラーレン−シリル誘導体を作成することができる。また、フラーレン−シリル誘導体と四官能性シランとを反応させることによってフラーレンが高濃度で含有するフラーレン−シロキサン系複合化合物を調製することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0020】
本発明は、フラーレンとアルコキシヒドロシランとのヒドロシリル化反応させるヒドロシリル化工程を有する。ここで、「フラーレン」とは、C60やC70をはじめとする一群の球殻状の炭素分子の総称をいう。本発明では、C60、C70、C76、C78、C80、C82、C84、C86、C88、C90、C92、C94、C96のいずれかを用いてもよいがC60、を用いることが特に好ましい。ここで、「アルコキシヒドロシラン」とは、下記の化学式(1)で示される組成物をいう。ここで、R1からR3はそれぞれ独立して、官能基又は置換基を有してもよいアルキル基であることが好ましい。
【化1】
【0021】
具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソアミル基、n−へキシル基等の直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基が挙げられる。また、官能基を有していてもよいアルキル基としては、アルキル基又はアリール基で置換されたシリル基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0022】
また、置換基を有していてもよいアルキル基としては、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、無置換もしくは置換アリール基、アラルキル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数1から6の直鎖状、分枝鎖状または環状のアルコキシ基が挙げられる。ハロアルキル基としては、上記したアルキル基の一つまたは二つ以上の水素原子が、ハロゲン原子で置換されたものが挙げられ、例えばクロロメチル基、クロロエチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。ハロアルコキシ基としては、アルコキシ基の一つまたは二つ以上の水素原子が、上記したハロゲン原子で置換されたものが挙げられ、例えばクロロメトキシ基、クロロエトキシ基、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
【0023】
中でもR1からR3がエチル基であるトリエトキシヒドロシランを用いることがより好ましい。
【0024】
また、ヒドロシリル化反応は公知の方法を用いて行なう。反応温度は、0℃から50℃で行なうことが好ましく、室温付近で行なうことがより好ましい。反応圧力は、特に限定されず、通常0.5気圧から2気圧で行なわれるが、常圧のもとで行われることがより好ましい。反応時間は、1時間から100時間、通常は10時間から50時間であることが好ましい。また反応溶媒は、反応後は蒸留、抽出、クロマトグラフィー、再結晶などの一般的操作により、生成物を分離することができる。
【0025】
また、ヒドロシリル化反応において用いる溶媒は、特に限定されないが、具体的にはペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、クメン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、メシチレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン等の芳香族系炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒等が挙げられるが、ヘキサン、トルエンを用いて行なうことがより好ましい。さらに、塩化白金酸六水和物のような触媒を併せて用いることがより好ましい。
【0026】
また、本発明は、ヒドロシリル化工程によって生成したC60−シリル誘導体と、四官能性シランと、を重縮合する重縮合工程を有する。ここで、「四官能性シラン」とは、化学式(2)で示される組成物をいう。ここで、R4からR7はそれぞれ独立して、官能基又は置換基を有してもよいアルキル基であることが好ましい。具体的には、上記化学式(1)で示されるアルコキシヒドロシランが有するR1からR3と同様の官能基を用いることが好ましい。
【化2】
【0027】
また、加水分解及び重縮合反応は、窒素雰囲気下で公知の方法を用いて行なう。反応温度は、0℃から150℃で行なうことが好ましく、50℃から100℃で行なうことがより好ましい。反応圧力は、特に限定されず、通常0.5気圧から2気圧で行なわれるが、常圧のもとで行われることがより好ましい。反応時間は、1時間から10時間、通常は2時間から5時間であることが好ましい。また反応溶媒は、反応後は蒸留、抽出、クロマトグラフィー、再結晶などの一般的操作により、生成物を分離することができる。
【0028】
また、加水分解及び重縮合反応において用いる溶媒は、C60−シリル誘導体と、四官能性シランとの加水分解を十分に進行させることが可能なものを用いることが好ましい。具体的には、水と塩酸を過剰に用いることが好ましい。これによってC60−シリル誘導体同士がゲル化することを防ぐことができ、かつ、ゾルの段階でC60とシロキサンネットワークの間を結合させた縮合安定性の高い複合化合物を得ることができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明に係るシロキサン系複合化合物の製造方法の有効性について検討した結果を示す。
【0030】
<C60−シリル誘導体の合成>
まず、トルエン溶媒に触媒として塩化白金酸エタノール溶液を加え、硫酸カルシウムで乾燥した後、C60とトリエトキシシラン(以下、TESとする)を加え、室温で4日間反応させた。次いで、触媒をろ別濃縮し、ジエチルエーテルで未反応のC60を除いた後、再度濃縮することにより茶褐色粘性液体C60−シリル誘導体(以下、TES−C60とする)を得た。このときの収率はおよそ30%であり、このときの反応スキームを以下に示す。
【化3】
【0031】
次いで、TES−C60の核磁気共鳴(以下、NMRとする)、赤外吸収スペクトル(以下、IRスペクトルとする)を図1から4に示す。図1のプロトンNMRでは、TESのSi−Hに帰属されるシグナルがTES−C60では消失していることが示された。また、図2に示す炭素NMRではC60−Hに帰属されるシグナルが観測された。更に、図3に示すケイ素NMRでは、TESのシグナルがTES−C60では低磁場側シフトしていることが示された。更に、図4に示すIRスペクトルでは、Si−H伸縮振動と変角振動の吸収がTES−C60では消失し、新たにSi−C伸縮振動の吸収が確認された。以上の結果からC60とTESとのヒドロシリル化によりTES−C60が合成されたことが示された。
【0032】
このTES−C60を、高速原子衝撃質量スペクトル(以下、FABmassとする)測定及び紫外吸収測定を行なうことにより、TES−C60の立体構造を検討した。図5から8は、TES−C60の紫外吸収測定(以下、UV−VISとする)を行なった結果を示した図である。なお、図6と図8はそれぞれ図5と図7の430nm付近の拡大図を示したものである。C60とTES−C60の最大吸収波長におけるモル吸光係数は、TES−C60では3500であり、C60の56700よりも低下しているのは、C60にTESが付加したことにより、C60の対称性が低下したためであると考えられる。
【0033】
またTES−C60では、濃度を増加させた場合、435nm付近にC60にはない吸収が観測された。この吸収は、C60の6−6縮環部にTESが付加していることが示唆された(図8囲み部分参照)。これらの結果とFABmass測定の結果より、TES−C60は、C60にTESが3分子付加したものであることがわかった。
【0034】
さらに、TES−C60の溶解性を検討した。TES−C60を0.02gを量り取り、所定の溶媒を適宜加え、室温でよく撹拌し、不溶物の有無を目視で確認した。不溶物が見られるときは,さらに溶媒を加えて同様の操作を繰り返した。試料0.02gを溶解するのに必要な溶媒の量が1ml以下のときを易溶、1mlから5mlのときを可溶、5mlから10mlのときを溶、10ml以上のときを不溶と評価した。その結果を表1に示す。これよりTES−C60はほぼすべての有機溶媒に溶解し、C60に比べて著しく溶解性が向上していることが示された。
【表1】
【0035】
<C60−シリル誘導体の合成>
エタノールに溶解させたTES−C60にテトラエトキシシラン(以下、TEOSとする)を氷冷しながら加え、さらに水と塩酸触媒を一定の比率で混合したものを滴下した。その後室温で10分放置した後、80℃で、窒素流量360ml/min、攪拌速度150rpm、4時間、開放系にて共加水分解重縮合反応を行った。得られた淡黄色高粘性ゾル(以下、PEOS−C60ゾルとする)をエタノール溶媒で50質量%に希釈し、アクリルシャーレにキャストした後に80℃で約7日間熟成させることにより、本発明にかかるシロキサン系複合化合物(以下、PEOS−C60とする)を調製した。このときの合成スキームを以下に示す。
【化4】
【0036】
このPEOS−C60におけるケイ素に対するC60のモル比の変化が与える影響について検討を行なった。試料は、ケイ素とC60の比率を変化させた状態で、上記の方法により得られたPEOS−C60を用いた。
【0037】
その結果を表2に示す。これよりケイ素に対するC60のモル比が大きくなると収率が減少し、重量平均分子量は顕著に増加したことが示された。これより、TES−C60が架橋点となって加水分解重縮合が進行し、シロキサンの架橋密度が増加したことが示唆された。また得られたPEOS−C60ゾルから調製したゲルは熟成期間およそ7日間でいずれも均一性がよくC60の含有量が多くなるにつれて透明から茶褐色へと変化したことが確認された。なお、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCとする)により測定した。
【0038】
【表2】
【0039】
次いで、PEOS及びPEOS−C60のNMRスペクトルを図9及び10に示す。ポリエトキシシロキサン(以下、PEOSとする)では、エトキシ基のシグナルのみが観測されたが、PEOS−C60ではC60−H結合に帰属されるシグナルが58.3ppm付近に観測された。このシグナルはTES−C60の63.9ppmに観測されたC60−H結合に由来するシグナルであり、PEOS−C60では低磁場側にシフトしている。これは炭素の電気陰性度がケイ素に比べて大きく、ケイ素がC60に電子を供与したためにC60の電子密度が増加し、高磁場側にシフトしたためであると考えられる。
【0040】
次いで、PEOSとPEOS−C60ゾルのケイ素NMRを図11、表3及び表4に示す。試料には、上記表2に用いた試料と同じものを用いた。なお、ケイ素NMRからPEOS−C60のシロキサンの単位構造であるT構造のピークはシグナルが弱く、T構造の割合を算出することができなかったのでQ構造のみを示している。PEOSとPEOS−C60を比較すると、PEOS−C60では、Q2,Q3構造によるシグナルが低磁場側にシフトしていることが示された。これは、ケイ素の電気陰性度が炭素の電気陰性度に比べ、小さいためであると考えられる。また、C60の含有量が増加するにつれてQ3,Q4構造が増加していることから、単独重合のPEOSゾルよりもPEOS−C60ゾルではシロキサン縮合度が増加して3次元的な架橋構造で構成されていることが示唆された。図9から図11の結果より、TES−C60とTEOSは単なる混合物ではなく、共重合体であることが示された。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
次いで、PEOSとPEOS−C60の溶解性を上記と同様の方法で検討した結果、表5に示すように、ほとんどの有機溶媒に対して高い溶解性を示したが、C60の濃度が増加するに伴って、ヘキサン及びクロロホルムへの溶解性が減少していることが示された。これは分子量やシロキサンの架橋度が増大したためこのような現象が生じたものと考えられる。
【0044】
【表5】
【0045】
次にPEOS−C60の縮合安定性について検討を行なった結果を図12及び図13に示す。図12は、Si/C60=100の構成比で、各種溶媒を加えて40質量%となるようPEOS−C60ゾルを調製し、0℃のもと保存した場合における保存時間と分子量との関係を示した図である。また、図13も同様の条件でPEOS−C60ゾルを調製し、20℃のもと保存した場合における保存時間と分子量との関係を示した図である。
【0046】
これより、0℃で保存した試料は、いずれも保存開始から60日経過しても分子量はほとんど変化なく縮合安定性がよいことが示された。これに対し、25℃で保存した試料は、テトラヒドロフランを添加した場合(図中、THF Soln.参照)、テトラヒドロフランが塩基性溶媒であるため、分子量が著しく増加している。また、溶媒を添加していない試料(図中、Neat参照)とエタノールを添加した試料(図中、EtOH Soln.参照)とを比較した場合、溶媒が存在しない試料の方が、シラノール基やエトキシ基の脱離基間の距離が小さいため縮合が生じ、分子量が増加したと考えられる。
【0047】
また、図14は、得られたPEOS−C60ゾルから調製したPEOS−C60ゲルの写真である。PEOS−C60ゲルはC60の含有量が増加するにつれて、無色透明から茶褐色に変化し、いずれもC60のπ−π相互作用による、C60の凝集体がなく、C60が均一に分散したC60−シロキサン系複合化合物が得られたことが示された。
【0048】
なお、使用した測定機器及び測定条件は以下の通りである。プロトンNMR及び炭素NMRスペクトルには、日本電子社製JNM−ECP500型を用い、ケイ素NMRスペクトルには、日本電子社製JMX−EX400型を用い、それぞれ重クロロホルム中で測定した。また、フーリエ変換赤外吸収(FT−IR)スペクトルは、日本電子社製JIR−5300型により四塩化炭素の溶液法により測定した。スペクトルは4cm−1の分解能で4000cm−1から250cm−1の範囲で取得した。また、高速原子衝撃質量(FABmass)スペクトルは、日本電子社製The MStation JMS 700型を用いた。マトリックスはm−ニトロベンジルアルコールで測定を行った。
【0049】
紫外−可視(UV−VIS)吸光スペクトルは、島津製作所社製フォトダイオードアレイ分光光度計Multi Spec−1500を用いて測定した。また、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)は、島津製作所社製LC−10Advp送液ポンプ、RID−10A示差屈折率検出器を使用した。分離カラムにはポリマーサイエンス社製5μ−Mixed Dのカラムを2本直列にして用いた。移動相は流速1.0ml/minのTHFを用いた。また分子量の計算には市販の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0050】
<光学試験>
[光リミテッィング効果の検討]
上記のPEOS−C60ゲルの光リミッティング効果の検討を行なった。試験は、高エネルギーレーザー(パルス幅:10nsec,周波数:10Hz)を短時間で出力することができるNd:YAGレーザー(コンティニューム社製:532nm)を用いて行なった。
【0051】
具体的には、上記Nd:YAGレーザーから出力されたレーザー光を、二枚の合わせ鏡により二倍波の(波長:532nm,パルス幅:10nsec,周波数:10Hz)のレーザー光のみを反射させ、高エネルギーレーザーとした。次いで、この高エネルギーレーザーを、サンプルの前に置かれたレンズ(駿河精機社製、焦点距離f=10cm)に透過させ、ビーム直径0.9mmとなったレーザー光をサンプルに入射させた。なお、透過光強度はパワーメーター(オフィル社製 Laser power meter model AN/Z型)を用いて測定し、入射光強度はスイッチを調整することで変化させた。
【0052】
その結果を図15に示す。PEOSゲルフィルムでは、入射光強度と透過光強度はLambert−Beerの法則に従い透過率90%で直線的に増加した。一方、PEOS−C60ハイブリッドゲルフィルムは、Lambert−Beerの法則に従わず、光リミッティング機能を発現した。C60をS/C60が1000から10で含有するPEOS−C60ハイブリッドゲルフィルムの透過率は、89%から11%と減少し、Si/C60が1000では、入射光強度1163mJ/cm2、Si/C60が500では入射光強度990mJ/cm2、Si/C60が300では入射光強度644mJ/cm2、Si/C60が100では入射光強度534mJ/cm2、Si/C60が50では入射光強度340mJ/cm2、Si/C60が10では入射光強度130mJ/cm2であり、C60の濃度増加に伴って、入射光強度のしきい値と飽和透過光強度が低下して光リミッティング機能を発現した。
【0053】
<力学試験>
[引張試験]
次にPEOS−C60ハイブリッドゲルフィルムの機械的強度を検討した。PEOS−C60複合化合物をエタノールに20質量%になるよう溶解させ、アクリルシャーレにキャストした後に80℃で約7日間熟成させて得られた厚さ0.2mmのフィルムを、チャック間距離40mm、幅2mmとなるようにカットしたものを試料に用いた。この試料を引張強度試験機(オリエンテック社製 TENSILON/UTM−II−20型)を用いて測定した(クロスヘッドスピード20mm/min)。この結果を表6に示す。
【0054】
【表6】
【0055】
これよりC60の含有量が高くなる程、引張強度及びヤング率が増加し、伸長率が減少していることから、非常に硬い材質であることが示された。架橋剤の役割をするTES−C60の含有量が多い程、PEOS−C60の加水分解重縮合が進行するため分子量が増大し、3次元的な架橋構造でPEOS−C60複合化合物ゲルフィルムが構成されたことが示唆される。
【0056】
[硬度測定]
次にPEOS−C60複合化合物コーティング膜の硬度測定の検討を行なった。試料は、PEOS−C60複合化合物ゾルをエタノール溶媒で20質量%に希釈したものをコーティング溶液とし、各有機基板、無機基板表面にディップコーティング(1回)を行なった。このときの巻き上げ速度は80mm/minである。その後80℃で24h乾燥させ、更に100℃で所定時間乾燥することによりコーティング膜を調製した。
【0057】
コーティングフィルムの付着力は,JIS K5400に従い、碁盤目法により測定した。試験片上の塗膜を貫通して素地面に達する切り傷を碁盤目状(1cm2中に100目)につけた。次いで、この碁盤目の上にセロハン粘着テープを貼り軽く押し付けて引き剥がした。その後、残存する塗膜片の数を目視により数え、0点から10点の範囲で採点した。
【0058】
また、コーティングフィルムの鉛筆硬度は,JIS K5400に従い、手かき法により測定した。試験片を水平な台の上に固定した後、約45°の角度で鉛筆を持ち、芯が折れない程度にできる限り強く塗面に押し付けながら、前方に約1cm/sの一定速度で1cm押し出して塗膜を引っかいた。1回引っかくごとに鉛筆の芯の先端を新たに研ぎ、同一の濃度記号で5回ずつ試験を繰り返し、塗膜の擦り傷が3回以上になる鉛筆の濃度記号より1段階下位の濃度記号を示した。測定には財団法人日本塗料協会により検査済みの三菱鉛筆Uni(商品名)を用いた。このときの結果を表7に示す。
【0059】
【表7】
【0060】
これより、コーティングフィルムは基板の種類によらず良い付着力を示すことがわかった。特に、無機基板の方が早い時間で硬化していることが示された。PEOS−C60のシラノール基と無機基板表面のOH基がメタロキサン型の結合を形成したためであると考えられる。また付着力および鉛筆硬度の結果より、C60の濃度が増加するに伴って付着力および鉛筆硬度の高いものが得られたことがわかった。その理由として、架橋剤の役割をするTES−C60の含有量が多いほど加水分解重縮合反応が進行し、分子量が高く3次元的な架橋構造が形成されたためであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】TES−C60及びTESのプロトンNMR測定結果を示した図である。
【図2】TES−C60及びTESの炭素NMR測定結果を示した図である。
【図3】TES−C60及びTESのケイ素NMR測定結果を示した図である。
【図4】TES−C60及びTESのIR測定結果を示した図である。
【図5】TES−C60及びTESのUVスペクトルを示した図である。
【図6】TES−C60及びTESのUVスペクトルを示した図である。
【図7】TES−C60及びTESのUVスペクトルを示した図である。
【図8】TES−C60及びTESのUVスペクトルを示した図である。
【図9】PEOSの炭素NMR測定結果を示した図である。
【図10】PEOS−C60の炭素NMR測定結果を示した図である。
【図11】PEOS−C60及びPEOSのケイ素NMR測定結果を示した図である。
【図12】PEOS−C60に各種溶媒を加えて0℃のもと保存した場合における保存時間と分子量との関係を示した図である。
【図13】PEOS−C60に各種溶媒を加えて20℃のもと保存した場合における保存時間と分子量との関係を示した図である。
【図14】PEOS−C60ゾルから調製したPEOS−C60ゲルを示した図である。
【図15】PEOS−C60ゾルから調製したPEOS−C60ゲルの光リミッティング効果を示した図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラーレンと、ヒドロシランと、をヒドロシリル化して、フラーレン−シリル誘導体を生成させるヒドロシリル化工程と、
前記フラーレン−シリル誘導体と、四官能性シランと、を加水分解して、重縮合する重縮合工程と、を有するシロキサン系複合化合物の製造方法。
【請求項2】
前記ヒドロシランは、トリアルコキシシランであり、前記四官能性シランは、テトラアルコキシシランである請求項1に記載のシロキサン系複合化合物の製造方法。
【請求項3】
ケイ素と前記フラーレンのモル比は、1000から10である請求項1又は2に記載のシロキサン系複合化合物の製造方法。
【請求項4】
前記重縮合工程は、ゾルゲル法により行なう工程である請求項1から3いずれかに記載のシロキサン系複合化合物の製造方法。
【請求項5】
前記重縮合工程は、窒素雰囲気下で行なう工程である請求項1から4いずれかに記載のシロキサン系複合化合物の製造方法。
【請求項1】
フラーレンと、ヒドロシランと、をヒドロシリル化して、フラーレン−シリル誘導体を生成させるヒドロシリル化工程と、
前記フラーレン−シリル誘導体と、四官能性シランと、を加水分解して、重縮合する重縮合工程と、を有するシロキサン系複合化合物の製造方法。
【請求項2】
前記ヒドロシランは、トリアルコキシシランであり、前記四官能性シランは、テトラアルコキシシランである請求項1に記載のシロキサン系複合化合物の製造方法。
【請求項3】
ケイ素と前記フラーレンのモル比は、1000から10である請求項1又は2に記載のシロキサン系複合化合物の製造方法。
【請求項4】
前記重縮合工程は、ゾルゲル法により行なう工程である請求項1から3いずれかに記載のシロキサン系複合化合物の製造方法。
【請求項5】
前記重縮合工程は、窒素雰囲気下で行なう工程である請求項1から4いずれかに記載のシロキサン系複合化合物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−290833(P2006−290833A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116135(P2005−116135)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年1月7日にフラーレン・ナノチューブ研究会が発行した刊行物である「第28回フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム講演要旨集」115頁にて発表。
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年1月7日にフラーレン・ナノチューブ研究会が発行した刊行物である「第28回フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム講演要旨集」115頁にて発表。
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】
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