説明

シロスタゾールを含む制御放出製剤及びその製造方法

本発明は、シロスタゾールを含む制御放出製剤及び前記製剤の製造方法に関する。シロスタゾール又はその薬学的に許容される塩、可溶化剤、膨潤剤、膨潤調節剤及び気体発生物質を含む本発明の制御放出製剤は、シロスタゾールが胃腸で長期間滞留しながら徐々に放出されて血中のシロスタゾール濃度を一定に維持させて、シロスタゾールの主要吸収部位である小腸におけるシロスタゾールの吸収を高めるだけでなく、速放性放出による副作用を最小化して患者の服薬を容易にするという利点を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロスタゾールを含む制御放出製剤及び前記製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シロスタゾールは、代表的な細胞内cAMP PDE(環状AMPホスホジエステラーゼ)阻害剤であって、PDE活性の阻害を通じて血小板の凝固を低減させるとともに、血管を拡張させることによって血液凝固抑制、中心血液循環促進、消炎及び抗潰瘍作用、ぜん息及び脳梗塞の予防及び治療、脳循環改善において重要な役割をすると知られている。
【0003】
シロスタゾールは低い水溶解度(1μg/ml以下)を有し、かつ経口投与されたシロスタゾールは主に上部消化管で吸収され、下部消化管に移動するにつれてその吸収が減少すると立証されている。従って、シロスタゾールの制御放出製剤では吸収時間的な制約があるため、現在利用可能なシロスタゾール製剤は速放性タブレット剤形態である。しかし、かかるシロスタゾールの速放性製剤は経口投与の際に血中薬物濃度の急激な上昇を誘発して頭痛のような副作用を起こし、持続的な薬理活性を維持するためには前記速放性製剤を50〜100mgの範囲の量で1日2回服用しなければならないために、服用が不便である。
【0004】
従って、前記問題点を解決するために徐放性又は制御放出製剤を開発するための多数の試みがあった。
【0005】
例えば、特許文献1は主マトリックスとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いる少なくとも2個以上の小型タブレット剤を含む多重ユニット形態のシロスタゾールの徐放性製剤を開示しており、特許文献2はシロスタゾールとエチレンビニルアルコール共重合体を含む直径2,000μm未満の粒径を有する樹脂粒子形態の徐放性製剤を開示している。しかし、かかる徐放性製剤は制限された吸収部位を有する難溶性シロスタゾールが非常に徐々に放出されるために低い薬物吸収度を示す。この問題を解決するために、特許文献3及び特許文献4は上部消化管(小腸)で徐々に薬物を放出する外層と、小腸下部及び大腸で薬物を迅速に放出するコアーとを含む製剤を提示している。しかし、この製剤は、小腸下部及び大腸における急激な薬物放出のために、腸粘膜損傷を起こす可能性があり、水分含量が相対的に低い小腸下部及び大腸での難溶性薬物の吸収速度が不規則になるので、その製造工程が非常に複雑であり、かつ製剤の一日服用量の体積がかさばって患者が服用しづらいという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特許公開第WO97/48382号
【特許文献2】国際特許公開第WO96/21448号
【特許文献3】国際特許公開第WO00/57881号
【特許文献4】米国特許公開第2002/0058066号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的はシロスタゾール又はその薬学的に許容される塩を含む、改善された制御放出製剤を提供することである。
本発明の他の目的は、前記製剤の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施様態によって、シロスタゾール又はその薬学的に許容される塩、可溶化剤、膨潤剤、膨潤調節剤、及び気体発生物質を含む、制御放出製剤が提供される。
【0009】
本発明の他の実施様態によって、
1)シロスタゾール又はその薬学的に許容される塩、可溶化剤、膨潤剤、膨潤調節剤及び気体発生物質を混合し、前記得られた混合物を顆粒化する段階;及び
2)前記得られた混合物をカプセル又はタブレット剤の形態に剤形化する段階
を含む前記制御放出製剤の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシロスタゾールを含む制御放出製剤は、シロスタゾールが胃腸で長期間滞留しながら徐々に放出されて血中のシロスタゾール濃度を一定に維持させ、これによってシロスタゾールの主要吸収部位として知られている小腸におけるシロスタゾールの吸収を高めるだけでなく、速放性放出による副作用を最小化させて患者の服薬導守の向上という長所がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の制御放出製剤は、膨潤剤、膨潤調節剤及び気体発生物質の組み合わせ作用によって上部消化管、即ち、胃腸で膨脹及び浮遊して滞留時間を延長するように設計され、膨潤剤の使用により生じる薬剤放出における遅延を防ぐ可溶化剤の作用により、小腸に位置する吸収部位での効果的な薬物放出速度を維持するように設計される。
従って、本発明の制御放出製剤は、シロスタゾールが胃腸で長期間滞留しながら徐々に放出されて血中のシロスタゾール濃度を一定に維持し、これによって、シロスタゾールの主要吸収部位として知られている小腸におけるシロスタゾールの吸収を高めるだけでなく、速放性放出による副作用を最小化して患者の服薬導守を向上させるという長所がある。
【0012】
以下、本発明の制御放出製剤の構成成分を詳しく説明する。
【0013】
1.活性成分(シロスタゾール)
本発明の制御放出製剤において、シロスタゾール又はその薬学的に許容される塩が活性成分として用いられる。シロスタゾールは制御放出製剤の総重量を基準として10〜80重量%、好ましくは30〜50重量%の量で用いられ得る。前記含量が10重量%未満であれば、シロスタゾールの1日勧奨服用量である200mgを含む製剤の大きさがかさばり過ぎて患者が服用し難く、80重量%を超過すれば、前記薬物の制御された放出を達成できない。
【0014】
2.可溶化剤
本発明の制御放出製剤は、前記製剤が胃腸内の胃液中に浮遊するようにする膨潤剤を含み、これは難溶性シロスタゾールの放出を抑制する。よって、シロスタゾールの望ましい放出速度をコントロールするために前記製剤に可溶化担体が含まれる。
前記可溶化剤は、ポリビニルピロリドン、コポビドン、ポリエチレングリコール、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン及び界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の成分であってもよい。前記界面活性剤は陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤又はこれらの混合物、好ましくはポリ(オキシエチレン)ソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリ(オキシエチレン)、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル、ポリグリコール化グリセリド、ポリ(オキシエチレン)ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ポロキサマー、脂肪酸塩、肝汁酸塩、アルキル硫酸塩、レシチン、肝汁酸塩とレシチンとの混合ミセル、糖エステル、ビタミンE(ポリエチレングリコール1000)コハク酸エステル(TPGS)、ラウリル硫酸ナトリウム及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の成分であってもよいが、これに制限されない。
前記可溶化剤は本発明の制御放出製剤の総重量を基準として0.1〜50重量%、好ましくは5〜20重量%の範囲の量で用いられ得る。
【0015】
3.膨潤剤
本発明の制御放出製剤は、制限的な吸収部位を有するシロスタゾールの吸収を増進させるため、経口投与の際に本発明の製剤を膨脹させて胃腸における滞留時間を延長させ得る膨潤剤を含む。
一般的に膨潤剤は外部流体又は水と接触した際に迅速に水和して水を吸収し、これによって本発明の製剤を膨脹させて薬物を徐々に放出させるようにする。本発明において、前記膨潤剤は公知の親水性ポリマーのうち一つであってもよく、好ましくはヒドロゲルであり、これらは周辺条件から薬物を保護することはもちろん、気体発生物質によって生成される気体の部分的蓄積手段として作用して、本発明の製剤が胃腸内の胃液中に浮遊されるようにする。
【0016】
本発明に用いられ得る膨潤剤の例としては、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボポール、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、セルロースガム、ジェランガム、トラガカントガム、カラヤガム、グアーガム及びアカシアガムからなる群から選ばれる少なくとも一つ以上を含む。本発明において、前記ポリエチレンオキシドは、好ましくは1,000,000〜7,000,000の分子量を有し、前記ヒドロキシアルキルセルロースは、好ましくはヒドロキシエチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロースであり、前記ヒドロキシプロピルアルキルセルロースは、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0017】
前記膨潤剤は、本発明の制御放出製剤の総重量を基準として5〜80重量%、好ましくは10〜50重量%の範囲の量で用いられ得る。
【0018】
4.膨潤調節剤
通常の膨潤性胃貯留製剤は、投与後遅延された膨潤作用によって十分でない胃腸滞留及び薬物吸収を示す。前記問題を解消するために、本発明は膨潤調節剤を用いるが、前記膨潤調節剤はマトリックスの崩壊以前に膨脹するように助ける膨潤剤の作用によって製剤の膨脹を加速化させ、また外部流体が製剤内へ速かに浸透されるようにして気体発生物質を通じて気体発生を促進する。よって、本発明の制御放出製剤は経口投与の際に所望の胃腸滞留時間及び薬物吸収速度を満たすことができる。
【0019】
前記膨潤速度調節剤は膨潤性重合体の何れか一つであってもよく、その代表的な例としては、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースカルシウム、架橋カルボキシメチルセルロース、でんぷんグリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルでんぷん、カルボキシメチルでんぷんナトリウム、メタクリル酸カリウム−ジビニルベンゼン共重合体、アミロース、架橋アミロース、でんぷん誘導体、微結晶セルロース、セルロース誘導体、シクロデキストリン、デキストリン誘導体、又はその混合物が挙げられる。
【0020】
前記膨潤調節剤は、本発明の制御放出製剤の総重量を基準として0.5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%の範囲の量で用いられ得る。
【0021】
5.気体発生物質
本発明の制御放出製剤が胃液と接触した際に、気体発生物質が製剤表面及び内部に気体を発生させて本発明の製剤が胃腸の胃液中に浮遊できるようにする。かかる本発明の製剤の浮遊は、経口投与後5分以内に速かに起こり、これは投与後に十分な膨脹に到逹せずに幽門を通過する制御放出製剤の問題点を最小化する。
【0022】
本発明に用いられる気体発生物質は胃液と接触した際に気体を発生させ得る公知の気体発生物質の何れか一つであってもよい。気体発生物質の例としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及び炭酸グリシンナトリウムのような炭酸の1価又は2価の塩基性塩(即ち、炭酸及び重炭酸);及び亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム及びメタ重亜硫酸ナトリウムのような亜硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の成分を含む。
【0023】
また、本発明の制御放出製剤は前記気体発生物質が周辺のpHと無関係に気体を発生し得るように酸性化合物をさらに含み得る。かかる酸性化合物は、有機酸、有機酸塩又はこれらの混合物であってもよく、その例としてはクエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、マロン酸、クエン酸モノナトリウム、アスコルビン酸、グルタミン酸及びこれらの塩が挙げられる。
【0024】
前記気体発生物質は、本発明の制御放出製剤の総重量を基準として0.1重量%〜50重量%、好ましくは5重量%〜20重量%の範囲の量で用いられ得る。
【0025】
6.薬学的に許容される添加剤
本発明の制御放出製剤は、例えば、色相、安全性、制御放出、過多放出抑制及び味遮蔽などにおいて望ましい特性を本発明の製剤に与えるために、希釈剤、結合剤、潤滑剤、コーティング剤及び可塑剤のような薬学的に許容される添加剤をさらに含み得る。
【0026】
(1)希釈剤
希釈剤の例としては、ラクトース、デキストリン、マンニトール、ソルビトール、でんぷん、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、糖類、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
(2)結合剤
結合剤の例としては、ポリビニルピロリドン、コポビドン、ゼラチン、でんぷん、スクロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルアルキルセルロース、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
(3)潤滑剤
潤滑剤の例としては、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、コーンスターチ、カナウバワックス、軽質無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、硬化油、白鉛、酸化チタン、微結晶セルロース、マクロゴール4000及び6000、ミリスチン酸イソプロピル、リン酸水素カルシウム及びこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
(4)コーティング剤
コーティング剤の例としては、エチルセルロース、セラック、アンモニオメタクリル酸塩共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシペンチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルブチルセルロース、ヒドロキシプロピルペンチルセルロース、フタル酸ヒドロキシアルキルセルロース、酢酸フタル酸セルロースナトリウム、アセチルフタル酸セルロース、フタル酸セルロースエーテル、メタクリル酸及びメタクリル酸メチル又はエチルエステルとの陰イオン性共重合体、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アセチルコハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アセチルフタル酸セルロース及びオパドライ(商標)(Colorcon社製)からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の成分を含み、アンモニオメタクリル酸塩共重合体の例としては、ユードラジッド(Eudragit)RS(商標)又はユードラジッドRL(商標)を含み得る。
【0030】
(5)可塑剤
可塑剤の例としては、ヒマシ油、脂肪酸、置換されたトリグリセリド及びグリセリド、クエン酸トリエチル、300〜50,000の分子量を有するポリエチレングリコール及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の成分を含む。
【0031】
本発明の制御放出製剤は着色剤、抗酸化剤、タルク、二酸化チタン、香味剤、及びこれらの混合物をさらに含み得る。
【0032】
本発明の制御放出製剤は、活性成分としてシロスタゾール又はその薬学的に許容される塩、可溶化剤、膨潤剤、膨潤調節剤、及び気体発生物質を混合し、前記得られた混合物を顆粒化する段階;及び前記得られた混合物をカプセル又はタブレット剤の形態で剤形化する段階を含む方法によって製造され得る。
【0033】
また、本発明の制御放出製剤はシロスタゾール及び可溶化剤を混合し、得られた混合物を顆粒化する段階;さらに混合するか、あるいは前記得られた顆粒を膨潤剤、膨潤調節剤及び気体発生物質とさらに混合し、前記得られた混合物を顆粒化する段階;及び前記混合物をカプセル又はタブレット剤で剤形化する段階を含む方法によって製造され得る。
前記方法で、顆粒化段階は乾式顆粒化、湿式顆粒化、溶融顆粒化、流動層顆粒化のような通常の顆粒化方法;直接圧縮;モルディング;及び圧出成形を通じて、好ましくは、流動層顆粒化、湿式顆粒化、溶融顆粒化及び乾式顆粒化を通じて行われ得、前記方法のうち2種以上が本発明で一緒に用いられ得る。また、前記顆粒化段階は、通常の湿式顆粒化方法、又は溶融、溶媒による溶解又は分散後に冷却又は乾燥する段階を含む通常の固体分散法によって行われ得る。
【0034】
前記方法は顆粒化工程遂行の前に前記混合物に結合剤及び希釈剤のような薬学的に許容される添加剤を添加する段階をさらに含むか、或いは顆粒化工程遂行後に前記顆粒混合物に潤滑剤のような薬学的に許容される添加剤を添加する段階をさらに含み得る。
【0035】
また、前記方法で得られたタブレット剤は、本発明でコーティング剤、可塑剤又はこれらの混合物を含むコーティング溶液によってコーティングされ得る。
【0036】
前記コーティング剤又は結合剤はこれらを水又は有機溶媒に溶かして製造された溶液として用いられ得、前記有機溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、クロロホルム、クロロメタン又はその混合物であってもよい。
【0037】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。但し、これらの実施例は本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の権利範囲はこれらによって制限されない。
【実施例】
【0038】
(実施例1及び比較例1〜3)
シロスタゾールを含むマトリックスタブレット剤の製造
表1に示す成分を用いて、次のように実施例1及び比較例1〜3のシロスタゾールマトリックスタブレット剤を製造した。
表1
【表1】

シロスタゾール、ラウリル硫酸ナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム又は架橋ポリビニルピロリドン、及びラクトースの混合物を顆粒化し、これにヒドロキシプロピルセルロース−Lのエタノール溶液を添加して混合した。得られた顆粒を14メッシュを用いて分画化し、通過した粒子を乾燥した後、また18メッシュを用いて分画化し、メッシュを通過した顆粒をポリエチレンオキシド(分子量:5,000,000)及び軽質無水ケイ酸(比較例1〜3);又はポリエチレンオキシド(分子量:5,000,000)、軽質無水ケイ酸、クエン酸及び重炭酸ナトリウム(実施例1)と混合した。これにステアリン酸マグネシウムを添加した後、得られた混合物を潤滑し、製剤装置を用いてタブレット剤に剤形化して制御放出製剤を得た。そうして得られた実施例1及び比較例1〜3の制御放出製剤を表1に示す。
【0039】
(試験例1)
溶出試験
実施例1及び比較例1〜3で得られたマトリックスタブレット剤をそれぞれUSP溶出試験装置を用いて薬物溶出試験を行った。薬物溶出率の経時変化を0.5%ラウリル硫酸ナトリウム及び0.71%塩化ナトリウムを含む溶液を用い、100rpm/900mlで行われるパドル式下で決定された。前記結果は表2に示す。
表2
【表2】

表2に表されたように、比較例1のマトリックスタブレット剤は実施例1、比較例2及び比較例3のマトリックスタブレット剤と比較してわずかに高い溶出率を示した。比較例1のマトリックスタブレット剤の場合、90%の薬物放出が約17時間で観察され、実施例1、比較例2及び比較例3のマトリックスタブレット剤はそれぞれ約20時間で観察された。また、実施例1及び比較例1〜3のタブレット剤はいずれも0次放出に近い初期速度を有する類似した制御放出パターンを示した。
これは、本発明の製剤の制御放出パターンの薬物放出が膨潤剤、膨潤調節剤及び気体発生物質の含量を変化させることによって容易に制御され得ることを示唆する。
【0040】
(試験例2)
膨脹試験
実施例1及び比較例1〜3で得たマトリックスタブレット剤をそれぞれUSP溶出試験装置で膨脹及び膨脹維持試験を行った。タブレット剤の大きさの経時変化を特定試験条件(pH1.2の人工胃液、50rpm/500mlでパドル法)下で画像撮影を通じて分析した。前記結果は表3に示す。
表3
【表3】

表3に表わしたように、比較例1のマトリックスタブレット剤は初期にはやや膨脹したが、2時間後急激に収縮し、一方、実施例1、比較例2及び3のマトリックスタブレット剤は120%以上まで膨脹して12時間以後まで膨脹された大きさを維持した。特に、実施例1のマトリックスタブレット剤は気体発生物質成分の作用によって5分以内に試験液中に浮遊した。これは本発明の制御放出製剤の優れた初期膨脹挙動を示す。
前記制御放出製剤の膨脹又は膨脹維持力は膨潤剤、膨潤調節剤及び気体発生物質の含量、特に気体発生物質の含量を調節することで極大化され得る。
【0041】
(実施例2〜11)
シロスタゾールを含むマトリックスタブレット剤の製造
表4a及び4bに提示された成分を用いて、次のように実施例2〜11のシロスタゾールマトリックスタブレット剤を製造した。
表4a
【表4】

表4b
【表5】

シロスタゾール、ラウリル硫酸ナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム及びラクトースの混合物を顆粒化し、これにヒドロキシプロピルセルロース−Lのエタノール溶液を添加して混合した。得られた顆粒を14メッシュを用いて分画化し、通過した粒子を乾燥させ、18メッシュを用いてさらに分画化し、前記メッシュを通過した顆粒をポリエチレンオキシド(分子量:5,000,000)、軽質無水ケイ酸、クエン酸、及び重炭酸ナトリウムと混合した。これにステアリン酸マグネシウムを添加した後、得られた混合物を潤滑し、製剤装置を用いてタブレット剤に剤形化して制御放出製剤を得た。得られた前記実施例2〜11の制御放出製剤を表4a及び4bに示す。
【0042】
(試験例3)
溶出試験
実施例2〜11で得られたマトリックスタブレット剤をそれぞれUSP溶出試験装置を用いて薬物溶出試験を行った。薬物溶出率の経時変化は0.5%ラウリル硫酸ナトリウム及び0.71%塩化ナトリウムを含む溶液を用いて100rpm/900mlで行われるパドル法下で決定された。前記結果は表5a及び5bに示す。
表5a
【表6】

表5b
【表7】

表5a及び5bに示されているように、本発明の制御放出製剤は気体発生物質の含量が増加するほどより高い溶出率を示した。これはマトリックス内部構造が緩くなって外部流体浸透を加速化するためである。しかし、膨潤調節剤及びラクトースの含量は薬物溶出に対して影響を及ぼさなかった。また、実施例2〜11のマトリックスタブレット剤はいずれも5分以内に試験溶液中に浮遊しており、前記浮遊は試験完了時まで維持された。
【0043】
(試験例4)
膨脹試験
実施例2〜11で得たマトリックスタブレット剤をそれぞれUSP溶出試験装置で膨脹試験を行った。タブレット剤の大きさの経時変化を特定試験条件(pH1.2の人工胃液、50rpm/500mlでパドル法)下で画像撮影を通じて分析した。前記結果は表6a及び6bに示す。
表6a
【表8】

表6b
【表9】

表6a及び6bに表わされているように、本発明の制御放出製剤の膨脹、特に初期膨脹は、膨潤調節剤、気体発生物質及び親水性添加剤(ラクトース)の相対的含量の調節によって影響を受ける。
【0044】
(試験例5)
吸収試験
シロスタゾール制御放出製剤の生物学的な利用可能性を確認するために、実施例11で得たマトリックスタブレット剤及び比較タブレット剤として市販のタブレット剤のうち一つであるプレタール(登録商標)(シロスタゾール100、大塚製薬社製)をそれぞれビーグル犬(Beijing Marshall Biotechnology Co. Ltd.、雄5.5ヶ月齢、6.94〜8.88kg)に投与した。投与後、一定の時間間隔で血液試料を取って血中薬物濃度の経時変化を分析した。分析結果に基づき、各タブレット剤の最高血中濃度(Cmax)、最高血中濃度到達時間(Tmax)及び血漿濃度曲線の下部面積(AUC)を計算した。前記結果は表7に示す。
表7
【表10】

表7に表わしているように、本発明の制御放出製剤は比較タブレット剤の2倍以上のTmax値を示し、これは本発明の製剤が十分な徐放性放出パターンを示すことを提示する。また、本発明の制御放出製剤は比較タブレット剤に比べて170%以上のAUC値を示した。これは本発明の制御放出製剤が比較タブレット剤の投与によって達成し得る治療効果の2倍を提供するということを示唆する。
従って、本発明の制御放出製剤は消化管における滞留時間延長及び徐放性薬物放出特性を達成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
上記のとおり、本発明の制御放出製剤は胃腸で長期間滞留しながらシロスタゾールを徐々に放出させてシロスタゾールの血中薬物濃度を一定に維持させ、これはシロスタゾールの主要吸収部位として知られている小腸におけるシロスタゾールの吸収を最大化して、通常の製剤に関連する上述した問題を最小化することができるという点に利点がある。
本発明を上記の特定の実施例により説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば本発明の技術思想及び特許請求の範囲を逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であることはもちろんのことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロスタゾール又はその薬学的に許容される塩、可溶化剤、膨潤剤、膨潤調節剤、及び気体発生物質を含む、制御放出製剤。
【請求項2】
前記製剤の総重量を基準として、10〜80重量%の範囲の量のシロスタゾール又はその薬学的に許容される塩、0.1〜50重量%の範囲の量の可溶化剤、5〜80重量%の範囲の量の膨潤剤、0.5〜50重量%の範囲の量の膨潤調節剤、及び0.1〜50重量%の範囲の量の気体発生物質を含む、請求項1に記載の制御放出製剤。
【請求項3】
前記可溶化剤が、ポリビニルピロリドン、コポビドン、ポリエチレングリコール、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン、界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1に記載の制御放出製剤。
【請求項4】
前記界面活性剤が、ポリ(オキシエチレン)ソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリ(オキシエチレン)、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル、ポリグリコール化グリセリド、ポリ(オキシエチレン)ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ポロキサマー、脂肪酸塩、肝汁酸塩、アルキル硫酸塩、レシチン、肝汁酸塩とレシチンとの混合ミセル、糖エステル、ビタミンE(ポリエチレングリコール1000)コハク酸(TPGS)、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項3に記載の制御放出製剤。
【請求項5】
前記膨潤剤が、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボポール、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、セルロースガム、ジェランガム、トラガカントガム、カラヤガム、グアーガム、アカシアガム、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1に記載の制御放出製剤。
【請求項6】
前記膨潤調節剤が、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースカルシウム、架橋カルボキシメチルセルロース、でんぷんグリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルでんぷん、カルボキシメチルでんぷんナトリウム、メタクリル酸カリウム−ジビニルベンゼン共重合体、アミロース、架橋アミロース、でんぷん誘導体、微結晶セルロースとセルロース誘導体、シクロデキストリンとデキストリン誘導体、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1に記載の制御放出製剤。
【請求項7】
前記気体発生物質が、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、グリシン炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1に記載の制御放出製剤。
【請求項8】
前記気体発生物質が、有機酸、有機酸塩、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる酸性化合物とともに用いられる、請求項7に記載の制御放出製剤。
【請求項9】
前記酸性化合物が、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、マロン酸、クエン酸モノナトリウム、アスコルビン酸、グルタミン酸、これらの塩、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項8に記載の制御放出製剤。
【請求項10】
前記制御放出製剤が薬学的に許容される添加剤をさらに含む、請求項1に記載の制御放出製剤。
【請求項11】
前記薬学的に許容される添加剤が、希釈剤、結合剤、潤滑剤、コーティング剤、可塑剤、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項10に記載の制御放出製剤。
【請求項12】
前記希釈剤が、ラクトース、デキストリン、マンニトール、ソルビトール、でんぷん、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、糖類、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項11に記載の制御放出製剤。
【請求項13】
前記結合剤が、ポリビニルピロリドン、コポビドン、ゼラチン、でんぷん、スクロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルアルキルセルロース、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項11に記載の制御放出製剤。
【請求項14】
前記潤滑剤が、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、コーンスターチ、カルナウバワックス、軽質無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、硬化油、白鉛、酸化チタン、微結晶セルロース、マクロゴール4000とマクロゴール6000、ミリスチン酸イソプロピル、リン酸水素カルシウム、糖類、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項11に記載の制御放出製剤。
【請求項15】
前記コーティング剤が、エチルセルロース、セラック、アンモニオメタクリル酸塩共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシペンチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルブチルセルロース、ヒドロキシプロピルペンチルセルロース、フタル酸ヒドロキシアルキルセルロース、酢酸フタル酸セルロースナトリウム、アセチルフタル酸セルロース、フタル酸セルロースエーテル、メタクリル酸とメタクリル酸メチル又はエチルエステルとの陰イオン性共重合体、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アセチルコハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アセチルフタル酸セルロース、オパドライ、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項11に記載の制御放出製剤。
【請求項16】
前記可塑剤が、ヒマシ油、脂肪酸、置換されたトリグリセリド及びグリセリド、クエン酸トリエチル、300〜50,000の分子量を有するポリエチレングリコールとその誘導体、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項11に記載の制御放出製剤。
【請求項17】
シロスタゾール又はその薬学的に許容される塩、可溶化剤、膨潤剤、膨潤調節剤及び気体発生物質を混合し、得られた混合物を顆粒化する段階と、得られた顆粒混合物をカプセル又はタブレット剤の形態に剤形化する段階を含む、請求項1に記載の制御放出製剤の製造方法。
【請求項18】
前記混合及び顆粒化段階がシロスタゾール又はその薬学的に許容される塩と可溶化剤を混合して顆粒化し、得られた顆粒を膨潤剤、膨潤調節剤及び気体発生物質とさらに混合し、得られた混合物を顆粒化して行われる、請求項17に記載の製造方法 。
【請求項19】
前記顆粒化工程を行う前の混合物に結合剤及び希釈剤を添加する段階、又は顆粒化工程遂行後に顆粒混合物に潤滑剤を添加する段階をさらに含む、請求項17に記載の製造方法 。
【請求項20】
コーティング剤、可塑剤、又はこれらの混合物を含むコーティング溶液で前記タブレット剤をコーティングする段階をさらに含む、請求項17に記載の製造方法 。

【公表番号】特表2010−519201(P2010−519201A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549533(P2009−549533)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【国際出願番号】PCT/KR2008/000902
【国際公開番号】WO2008/100107
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(505118718)アモーレパシフィック コーポレイション (21)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【出願人】(509231086)パシフィック ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】PACIFIC PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【Fターム(参考)】