説明

シロール誘導体及びシロール誘導体を含んでなる有機電子素子

【課題】溶液状態及び固体状態の両状態において高い発光量子効率を示す化合物の提供。
【解決手段】下式1で表される化合物。


(式中、Qは、フッ素原子、ニトロ基、又は式2で表される1価の基である。)


(式中、Xは、ホウ素原子又は窒素原子である。R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロール誘導体及びシロール誘導体を含んでなる有機電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という。)に用いられる発光材料として、シロール誘導体が注目されている(特許文献1)。とりわけ、下記式:
【0003】
【化1】

で表される、置換基としてジフェニルホスフィノイル基を有するジチエノシロール誘導体は、高い発光量子効率を示すことが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/02886号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Organometallics,26,6591−6595(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの化合物は、溶液状態にあるか固体状態にあるかといった、状態の違いに依存して発光量子効率が変化しやすく、その結果、かかる化合物を有機EL素子の発光材料として用いる場合、その発光量子効率は、加工プロセスの影響を少なからず受け、不安定となりやすいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、溶液状態及び固体状態の両状態において高い発光量子効率を示す化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、下記の構成を有する化合物により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、下記〔1〕〜〔10〕を提供する。
〔1〕下記式(1)で表される化合物。
【化2】

(式(1)中、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基である。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は有機基である。RとRは結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環構造を形成してもよく、RとRが結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに形成する環構造は置換基を有していてもよい。RとRは結合して、それぞれが結合する珪素原子とともに環構造を形成してもよく、RとRが結合して、それぞれが結合する珪素原子とともに形成する環構造は置換基を有していてもよい。
は、水素原子、ハロゲン原子又は有機基である。
Aは、−O−で表される基、−S−で表される基、−N(R)−で表される基、−C(R−で表される基、−Si(R−で表される基、又は、−P(R)−で表される基である。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。2個のRは、互いに同じでも異なっていてもよく、結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環構造を形成してもよく、2個のRは、互いに同じでも異なっていてもよく、結合して、それぞれが結合する珪素原子とともに環構造を形成してもよい。
は、フッ素原子、ニトロ基、又は下記式(2)で表される基である。)
【化3】

(式(2)中、
Xは、ホウ素原子又は窒素原子である。
10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。R12は、有機基である。R10とR11は結合して、それぞれが結合するXとともに環構造を形成してもよい。
nは、Xが窒素原子のとき0であり、Xがホウ素原子のとき0又は1である。)
〔2〕前記式(1)で表される化合物が、下記式(4)で表される化合物である、〔1〕に記載の化合物。
【化4】

(式(4)中、
、R、R、A及びQは、前記と同じ意味を表す。
は、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、スルホ基、−OP(=O)(OH)で表される基、−OP(OH)で表される基、前記式(2)で表される基又は有機基である。
2個のRは、互いに同じでも異なっていてもよく、2個のAは、互いに同じでも異なっていてもよい。
mは1又は0である。)
〔3〕前記式(4)で表される化合物が、下記式(3)で表される化合物である、〔2〕に記載の化合物。
【化5】

(式(3)中、R、R、Q及びQは、前記と同じ意味を表す。)
〔4〕R及びRが、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基であり、
が、前記式(2)で表される基であり、
が、前記式(2)で表される基、又は、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルチオ基である、〔2〕又は〔3〕に記載の化合物。
〔5〕Qが、前記式(2)で表される基であり、Xがホウ素原子であり、R10とR11が同一の基であり、nが0である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の化合物。
〔6〕Qが、前記式(2)で表される基であり、Xがホウ素原子であり、R10とR11が同一の基であり、nが0である、〔2〕〜〔5〕のいずれかに記載の化合物。
〔7〕Qが、炭素原子数が1〜8のヒドロカルビルチオ基である、〔2〕〜〔5〕のいずれかに記載の化合物。
〔8〕R及びRが、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいチエニル基である、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の化合物。
〔9〕〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の化合物を含む、組成物。
〔10〕〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の化合物、又は〔9〕に記載の組成物を用いてなる、有機電子素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、溶液状態及び粉体状態の両状態において高い発光量子効率を示す化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
本明細書において、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、n−Buはノルマルブチル基を表し、n−Hexはノルマルヘキシル基を表し、Phはフェニル基を表し、Mesは2,4,6−トリメチルフェニル基(「メシチル基」ともいう。)を表す。
【0013】
<シロール誘導体>
本発明の化合物(以下、「シロール誘導体」とも言う。)は、前記式(1)で表される構造を有する。
【0014】
前記式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基である。
【0015】
及びRがとり得るハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子としては、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子であり、より好ましくはフッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくはフッ素原子である。
【0016】
及びRが有機基である場合、RとRは結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環構造を形成してもよく、形成しなくてもよいが、本発明の化合物の共役長が延びて発光量子効率がより高くなるので、RとRは結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環構造を形成することが好ましい。RとRが結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに形成する環構造は置換基を有していてもよい。該置換基としては、後述する置換基の何れであってもよいが、発光量子効率がより安定になるので、後述するR及びQが好ましい。
とRが結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに形成する環構造については、式(4)を参照して後述する。
【0017】
とRが結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環構造を形成しない場合、R及びRは、水素原子又は有機基であることが好ましく、有機基であることがより好ましい。
【0018】
及びRがとり得る有機基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素原子数が1〜30のヒドロカルビル基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルチオ基、及び炭素原子数が1〜30の置換シリル基(置換シリル基が有する置換基は、さらに置換基を有していてもよい)が挙げられる。なお、該炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
これらの有機基の中でも、炭素原子数が1〜18のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜18のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数が1〜18のヒドロカルビルチオ基、又は炭素原子数が1〜18の置換シリル基が好ましく、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビルチオ基、又は炭素原子数が1〜12の置換シリル基がより好ましく、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビル基、又は炭素原子数が1〜12のヒドロカルビルオキシ基が更に好ましく、炭素原子数が1〜6のヒドロカルビル基が特に好ましい。
前記ヒドロカルビル基、前記ヒドロカルビルオキシ基及び前記ヒドロカルビルチオ基はそれぞれ、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
【0019】
及びRがとり得る「置換基を有していてもよいヒドロカルビル基」におけるヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基及びコロニル基が挙げられる。
これらのヒドロカルビル基の中でも、好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、又は9−フェナントリル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、又はフェニル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、又は2−エチルヘキシル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0020】
及びRがとり得る「置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基」におけるヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロパノキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジロキシ基、2−フェネチルオキシ基、1−フェネチルオキシ基、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基及び2−ナフチルオキシ基が挙げられる。
これらのヒドロカルビルオキシ基の中でも、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基又は3,7−ジメチルオクチルオキシ基であり、より好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
【0021】
及びRがとり得る「置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオ基」におけるヒドロカルビルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、シクロプロピルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、1−アダマンチルチオ基、2−アダマンチルチオ基、ノルボルニルチオ基、ベンジルチオ基、α,α−ジメチルベンジルチオ基、2−フェネチルチオ基、1−フェネチルチオ基、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基及び2−ナフチルチオ基が挙げられる。
これらのヒドロカルビルチオ基の中でも、好ましくはメチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基又は3,7−ジメチルオクチルチオ基であり、より好ましくはメチルチオ基又はエチルチオ基である。
【0022】
及びRがとり得る「置換シリル基」における置換シリル基とは、シリル基における水素原子の1個、2個又は3個が、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1個、2個又は3個の基で置換されたシリル基をいう。置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、ジメチル−イソプロピルシリル基、ジエチル−イソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ドデシルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基及びジメチルモノフェニルシリル基が挙げられる。
これらの置換シリル基の中でも、好ましくはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基又はtert−ブチルジメチルシリル基であり、更に好ましくはトリメチルシリル基である。
【0023】
及びRがとり得る有機基が、置換基を有する場合、該置換基(以下、「R及びRにおける任意の置換基」という場合がある。)としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、スルホ基、−OP(=O)(OH)で表される基(「リン酸基」ともいう。)、−OP(OH)で表される基(「亜リン酸基」ともいう。)、ニトロ基、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルチオ基、及び炭素原子数が1〜30の置換シリル基が挙げられる。R及びRにおける任意の置換基はまた、前記式(2)と同じ構造の置換基であってもよい。
【0024】
これらの置換基の中でも、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜18のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜18のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数が1〜18のヒドロカルビルチオ基、炭素原子数が1〜18の置換シリル基、又は前記式(2)と同じ構造の置換基が好ましく、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビルチオ基、炭素原子数が1〜12の置換シリル基、又は前記式(2)と同じ構造の置換基がより好ましく、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビルオキシ基、又は前記式(2)と同じ構造の置換基が更に好ましく、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビル基、又は炭素原子数が1〜12のヒドロカルビルオキシ基が特に好ましい。
及びRにおける任意の置換基として用いられる、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基はそれぞれ、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
【0025】
及びRにおける任意の置換基が前記式(2)と同じ構造の置換基である場合、該置換基中のX、R10、R11、R12及びnの好ましい例は、後述のX、R10、R11、R12及びnの好ましい例と同様である。
【0026】
及びRにおける任意の置換基がハロゲン原子である場合、該ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。R及びRにおける任意の置換基として用いられるハロゲン原子としては、好ましくはフッ素原子、塩素原子又は臭素原子であり、より好ましくはフッ素原子又は塩素原子であり、更に好ましくはフッ素原子である。
【0027】
及びRにおける任意の置換基がヒドロカルビル基である場合、該ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基及びコロニル基が挙げられる。
及びRにおける任意の置換基として用いられるヒドロカルビル基としては、好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基又は9−フェナントリル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基又はフェニル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基又は2−エチルヘキシル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、tert−ブチル基又は2−エチルヘキシル基であり、とりわけ好ましくはメチル基である。
【0028】
及びRにおける任意の置換基がヒドロカルビルオキシ基である場合、該ヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロパノキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジロキシ基、2−フェネチルオキシ基、1−フェネチルオキシ基、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基及び2−ナフチルオキシ基が挙げられる。
及びRにおける任意の置換基として用いられるヒドロカルビルオキシ基としては、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基又は3,7−ジメチルオクチルオキシ基であり、より好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
【0029】
及びRにおける任意の置換基がヒドロカルビルチオ基である場合、該ヒドロカルビルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、シクロプロピルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、1−アダマンチルチオ基、2−アダマンチルチオ基、ノルボルニルチオ基、ベンジルチオ基、α,α−ジメチルベンジルチオ基、2−フェネチルチオ基、1−フェネチルチオ基、フェニルチオ基、アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基及び2−ナフチルチオ基が挙げられる。
及びRにおける任意の置換基として用いられるヒドロカルビルチオ基としては、好ましくはメチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基又は3,7−ジメチルオクチルチオ基であり、より好ましくはメチルチオ基、又はエチルチオ基である。
【0030】
及びRにおける任意の置換基が置換シリル基である場合、該置換シリル基は、シリル基における水素原子の1個、2個又は3個が、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1個、2個又は3個の基で置換されたシリル基をいう。R及びRにおける任意の置換基として用いられる置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、ジメチル−イソプロピルシリル基、ジエチル−イソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ドデシルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基及びジメチルモノフェニルシリル基が挙げられる。
及びRにおける任意の置換基として用いられる置換基シリル基としては、好ましくはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基又はtert−ブチルジメチルシリル基であり、より好ましくはトリメチルシリル基である。
【0031】
前記式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は有機基であり、有機基であることが好ましい。
【0032】
及びRが有機基である場合、RとRは結合して、それぞれが結合する珪素原子とともに環構造を形成してもよく、RとRが結合して、それぞれが結合する珪素原子とともに形成する環構造は置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、上述したR及びRにおける任意の置換基が挙げられ、発光量子効率がより安定になるので、後述するQが好ましい。
とRが結合して、それぞれが結合する珪素原子とともに形成する環構造については、式(6)を参照して後述する。
【0033】
及びRがとり得る有機基としては、Rがとり得る有機基として説明した有機基と同じものが挙げられる。本発明の化合物の中心となる珪素原子に嵩高い置換基が結合した化合物は安定な発光量子効率を示すので、R及びRがとり得る有機基としては、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロシクリル基が好ましい。
【0034】
及びRがとり得る「置換基を有していてもよいアリール基」におけるアリール基としては、炭素原子数が6〜30(該炭素原子数に、置換基の炭素原子数は含まれない。)のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基及び9−アントラセニル基が挙げられる。
これらのアリール基の中でも、好ましくは、フェニル基、1−ナフチル基又は2−ナフチル基であり、より好ましくは、フェニル基である。
【0035】
及びRがとり得る「置換基を有していてもよいヘテロシクリル基」におけるヘテロシクリル基としては、複素環式化合物を構成する炭素原子に結合した水素原子を1個除いた残りの原子団を意味し、炭素原子数2〜30(該炭素原子数に、置換基の炭素原子数は含まれない。)のヘテロシクリル基が好ましく、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ホスホリル基、ピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、トリアジル基、キナゾリニル基及びイミダゾリル基が挙げられる。
これらのヘテロシクリル基の中でも、好ましくは、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ホスホリル基又はピリジル基であり、より好ましくは、チエニル基、ピロリル基、フリル基又はピリジル基であり、更に好ましくは、チエニル基である。
【0036】
及びRがとり得る「置換基を有していてもよいアリール基」及び「置換基を有していてもよいヘテロシクリル基」における、置換基の例及び好ましい例は、R及びRにおける任意の置換基と同じである。
【0037】
及びRは、発光量子効率がより安定になるので、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいチエニル基であることが好ましい。
【0038】
とRは、互いに同じでも異なっていてもよいが、発光量子効率がより安定になるので、互いに同じであることが好ましい。
【0039】
前記式(1)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子又は有機基であり、水素原子又はハロゲン原子が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0040】
がハロゲン原子である場合、Rがとり得るハロゲン原子の例及び好ましい例は、Rがとり得るハロゲン原子のそれらと同じである。
【0041】
がとり得る有機基の例及び好ましい例は、Rがとり得る有機基のそれらと同じである。
【0042】
がとり得る有機基が置換基を有する場合、該置換基(以下、「Rにおける任意の置換基」という場合がある。)としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、−OP(=O)(OH)で表される基、−OP(OH)で表される基、ニトロ基、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルチオ基、及び炭素原子数が1〜30の置換シリル基が挙げられる。
中でも、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜18のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜18のヒドロカルビルオキシ基、又は炭素原子数が1〜18のヒドロカルビルチオ基が好ましく、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビルオキシ基、又は炭素原子数が1〜12のヒドロカルビルチオ基がより好ましく、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビル基、又は炭素原子数が1〜12のヒドロカルビルオキシ基が更に好ましい。
における任意の置換基として用いられる、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルチオ基はそれぞれ、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
【0043】
における任意の置換基として用いられる、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、及び置換シリル基の例及び好ましい例は、R及びRにおける任意の置換基として説明したヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基及び置換シリル基のそれらと、それぞれ同じである。
【0044】
前記式(1)において、Aは、−O−で表される基、−S−で表される基、−N(R)−で表される基、−C(R−で表される基、−Si(R−で表される基、又は−P(R)−で表される基である。これらの基の中でも、本発明の化合物の発光量子効率が高くなるので、−O−で表される基、−S−で表される基、−C(R−で表される基、−Si(R−で表される基、又は−P(R)−で表される基が好ましく、−O−で表される基、−S−で表される基、又は−P(R)−で表される基がより好ましく、−O−で表される基、又は−S−で表される基が更に好ましく、−S−で表される基が特に好ましい。
【0045】
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基であり、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基が好ましい。
【0046】
、R、R及びRがとり得る「置換基を有していてもよいヒドロカルビル基」におけるヒドロカルビル基としては、炭素原子数1〜30(該炭素原子数に、置換基の炭素原子数は含まれない。)のヒドロカルビル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基及びコロニル基が挙げられる。
これらのヒドロカルビル基の中でも、好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基又は9−フェナントリル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基又は9−アントリル基であり、更に好ましくはフェニル基、1−ナフチル基又は2−ナフチル基であり、特に好ましくはフェニル基である。
【0047】
、R、R及びRがとり得る「置換基を有していてもよいヒドロカルビル基」における置換基の例及び好ましい例は、Rにおける任意の置換基と同じである。
【0048】
前記式(1)において、Aが−C(R−で表される基である場合、2個のRは、互いに同じでも異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。また、2個のRは結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環構造を形成してもよいが、環構造を形成しないことが好ましい。
前記式(1)において、Aが−Si(R−で表される基である場合、2個のRは、互いに同じでも異なっていてもよいが、同じ構造であることが好ましい。また、2個のRは結合して、それぞれが結合する珪素原子ともに環構造を形成してもよいが、環構造を形成しないことが好ましい。
【0049】
前記式(1)において、Qは、フッ素原子、ニトロ基、又は前記式(2)で表される基であり、発光量子効率がより安定になるので、フッ素原子又は前記式(2)で表される基であることが好ましく、前記式(2)で表される基であることがより好ましい。
【0050】
発光量子効率がより安定になるので、前記式(1)において、R及びRが、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基であり、且つ、Qが、前記式(2)で表される基であることが好ましい。
【0051】
前記式(2)で表される基において、Xは、ホウ素原子又は窒素原子であり、ホウ素原子であることが好ましい。
【0052】
前記式(2)で表される基において、Xがホウ素原子であることにより、本発明のシロール誘導体は、センサー材料としての特性を示す。具体的には、本発明のシロール誘導体に対して特定の非共有電子対を有する化合物を添加することによって、本発明のシロール誘導体の吸収スペクトル又は発光スペクトルが変化し、特に吸収スペクトルが大きく変化する。該特定の非共有電子対を有する化合物としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の3級ホスフィン化合物;ハロゲン化物イオンを有する化合物、カルボキシラート部位を有する化合物、アニオン性炭素原子を有する化合物、アニオン性窒素原子を有する化合物等の電荷を帯びた化合物;が挙げられる。これらの中では、ハロゲン化物イオンを有する化合物が好ましく、フッ素アニオンを有する化合物がより好ましい。
【0053】
前記式(2)で表される基において、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基であり、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基が好ましい。
10とR11は結合して、それぞれが結合するXとともに環構造を形成してもよい。
【0054】
10及びR11がとり得る「置換基を有していてもよいヒドロカルビル基」におけるヒドロカルビル基としては、炭素原子数1〜50(該炭素原子数に、置換基の炭素原子数は含まれない。)のヒドロカルビル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、1−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基及びドコシル基等の炭素原子数が1〜30のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基及びアダマンチル基等の炭素原子数が3〜30の環状飽和ヒドロカルビル基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基及び2−ドデセニル基等の炭素原子数が2〜30のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基(メシチル基)、2−イソプロピルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−(2−エチルヘキシル)フェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基及び9−フルオレニル基等の炭素原子数が6〜30のアリール基;並びにフェニルメチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基及び6−フェニル−1−ヘキシル基等の炭素原子数が7〜50のアリールアルキル基が挙げられる。
これらのヒドロカルビル基の中でも、発光量子効率がより安定になるので、アルキル基又はアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、又は4−ヘキシルフェニル基が好ましく、フェニル基又は2,4,6−トリメチルフェニル基がより好ましい。
【0055】
10及びR11がとり得る「置換基を有していてもよいヒドロカルビル基」における置換基の例及び好ましい例は、Rにおける任意の置換基と同じである。
【0056】
発光量子効率がより安定になるので、前記式(2)で表される基において、R10とR11とは、同一の基であることが好ましい。例えば、R10がフェニル基である場合、R11もフェニル基であることが好ましく、R10が2,4,6−トリメチルフェニル基である場合、R11も2,4,6−トリメチルフェニル基であることが好ましい。
【0057】
前記式(2)で表される基において、R12は、有機基である。R12がとり得る有機基としては、例えば、−R14で表される基、−P(R15で表される基、−O=P(R16で表される基、−S=P(R17で表される基、−N(R18で表される基、−O=C(R19で表される基、及び−O(R20)で表される基が挙げられる。
中でも、−R14で表される基、−P(R15で表される基、又は−N(R18で表される基が好ましく、−R14で表される基、又は−P(R15で表される基が更に好ましく、−P(R15で表される基がより好ましい。
【0058】
14は、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいヘテロシクリル基であり、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基が好ましい。
【0059】
14がとり得る「置換基を有していてもよいアリール基」におけるアリール基としては、炭素原子数が6〜30(該炭素原子数に、置換基の炭素原子数は含まれない。)のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基及び4−フェニルフェニル基が挙げられる。
これらのアリール基の中でも、フェニル基、1−ナフチル基又は2−ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0060】
14がとり得る「置換基を有していてもよいヘテロシクリル基」におけるヘテロシクリル基としては、炭素原子数が2〜30(該炭素原子数に、置換基の炭素原子数は含まれない。)のヘテロシクリル基が好ましく、例えば、ピロリル基、ピラジニル基、ピリジル基、インドリル基、イソインドリル基、フリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、1,7−フェナントロリニル基、1,8−フェナントロリニル基、1,9−フェナントロリニル基、1,10−フェナントロリニル基、2,9−フェナントロリニル基、2,8−フェナントロリニル基、2,7−フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、オキサゾリル基、フラザニル基及びチエニル基が挙げられる。
これらのヘテロシクリル基の中でも、ピラジニル基、ピリジル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフラニル基、キノリル基、イソキノリル基又はオキサゾリル基が好ましく、ピリジル基又はキノリル基がより好ましい。
14がとり得る「置換基を有していてもよいヘテロシクリル基」がXに結合する部位は、該ヘテロシクリル基のヘテロ原子であることが好ましい。
【0061】
14がとり得る「置換基を有していてもよいアリール基」及び「置換基を有していてもよいヘテロシクリル基」における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、−OP(=O)(OH)で表される基、−OP(OH)で表される基、ニトロ基、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルチオ基、及び炭素原子数が1〜30の置換シリル基が挙げられる。
これらの置換基の中でも、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜18のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜18のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数が1〜18のヒドロカルビルチオ基、又は炭素原子数が1〜18の置換シリル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビルチオ基、又は炭素原子数が1〜12の置換シリル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜12のヒドロカルビル基、又は炭素原子数が1〜12のヒドロカルビルオキシ基が更に好ましく、ハロゲン原子が特に好ましい。
14において、置換基として用いられる、ハロゲン原子、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基及び置換シリル基の例及び好ましい例は、Rにおいて置換基として説明したハロゲン原子、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基及び置換シリル基のそれらと、それぞれ同じである。
【0062】
15、R16及びR17は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。R15、R16及びR17がとり得る「置換基を有していてもよいヒドロカルビル基」におけるヒドロカルビル基としては、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基及びコロニル基が挙げられる。
これらのヒドロカルビル基の中でも、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基又は9−フェナントリル基が好ましく、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基又は9−フェナントリル基がより好ましく、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基又は9−アントリル基が更に好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0063】
15、R16及びR17がとり得る「置換基を有していてもよいヒドロカルビル基」における置換基の例及び好ましい例は、Rにおける任意の置換基と同じである。
【0064】
18は、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基であり、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基が好ましい。但し、R18の少なくとも1個は、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。R18がとり得る「置換基を有していてもよいヒドロカルビル基」の例及び好ましい例は、Rにおいて説明した「置換基を有していてもよいヒドロカルビル基」のそれらと同じである。
【0065】
19及びR20は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。R19及びR20がとり得る「置換基を有していてもよいヒドロカルビル基」の例及び好ましい例は、Rにおいて説明した「置換基を有していてもよいヒドロカルビル基」のそれらと同じである。
2個のR19は結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環構造を形成してもよい。
【0066】
前記式(2)で表される基において、R12−X間の結合は、共有結合でも配位結合でもよい。
【0067】
前記式(2)で表される基において、nは、Xが窒素原子のとき0であり、Xがホウ素原子のとき0又は1である。好ましくは、nは0である。
【0068】
前記式(1)において、RとQの結合位置は、A、R及びQが存在する環において、RよりもQがAから近い炭素原子に結合することが好ましい。
【0069】
本発明の化合物の共役長が延びて発光量子効率が高くなるので、前記式(1)において、RとRは結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環構造を形成することが好ましい。RとRが結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環構造を形成する場合、前記式(1)で表される化合物としては、前記式(4)で表される化合物が好ましい。
【0070】
式(4)において、mは0又は1であり、好ましくは1である。
【0071】
式(4)において、R、R、R、A及びQの例及び好ましい例は、前記式(1)において説明したR、R、R、A及びQのそれらと、それぞれ同じである。
【0072】
式(4)において、Qは、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、スルホ基、−OP(=O)(OH)で表される基、−OP(OH)で表される基、前記式(2)で表される基又は有機基である。好ましくはハロゲン原子、ヒドロキシ基、メルカプト基、前記式(2)で表される基又は有機基であり、より好ましくはハロゲン原子、前記式(2)で表される基又は有機基であり、更に好ましくは前記式(2)で表される基又は有機基であり、特に好ましくは前記式(2)で表される基である。
【0073】
がとり得るハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子、塩素原子又は臭素原子であり、より好ましくはフッ素原子又は塩素原子であり、更に好ましくはフッ素原子である。
【0074】
がとり得る有機基としては、例えば、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルチオ基又は炭素原子数が1〜30の置換シリル基が挙げられる。中でも、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルオキシ基、又は炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルチオ基が好ましく、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルチオ基がより好ましい。Qがとり得る有機基において、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、及び置換シリル基の例及び好ましい例は、R及びRにおける任意の置換基として説明したヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基及び置換シリル基のそれらと、それぞれ同じである。
【0075】
2個のAは、互いに同じでも異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0076】
とQの結合位置は、A、R及びQが存在する環において、RよりもQがAから近い炭素原子に結合することが好ましい。
【0077】
とQの結合位置は、A、R及びQが存在する環において、RよりもQがAから近い炭素原子に結合することが好ましい。
【0078】
上記式(4)で表される化合物としては、発光量子効率がより高くなるので、前記式(3)で表される化合物が好ましい。
【0079】
式(3)において、R、R、Q及びQの例及び好ましい例は、前記式(1)において説明したR、R及びQ、並びに前記式(4)において説明したQのそれらと、それぞれ同じである。
【0080】
発光量子効率がより安定になるので、式(3)において、R及びRが、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基であり、Qが、前記式(2)で表される基であり、Qが、前記式(2)で表される基、又は、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルチオ基であることが好ましい。
【0081】
とRは結合して、それぞれが結合する珪素原子とともに環構造を形成してもよく、形成しなくてもよい。RとRが環構造を形成しない場合、前記式(3)で表される化合物としては、下記式(5)で表される化合物が好ましい。RとRが結合して、それぞれが結合する珪素原子とともに環構造を形成する場合、前記式(3)で表される化合物としては、下記式(6)で表される化合物が好ましい。
【0082】
【化6】

【0083】
式(5)中、Q、R10、R11、R12、X及びnは前記と同じ意味を表す。
Arは、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基である。2個のArは、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0084】
式(6)中、Q、R10、R11、R12、X及びnは前記と同じ意味を表す。
は、−O−で表される基、−S−で表される基、−N(R)−で表される基、−C(R−で表される基、−Si(R−で表される基、−P(R)−で表される基、又は−C(R13)=C(R13)−で表される基である。2個のAは、互いに同じでも異なっていてもよい。R、R、R及びRは前記と同じ意味を表す。R13は、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。2個のR13は、互いに同じでも異なっていてもよい。
は、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、スルホ基、リン酸基、亜リン酸基、又は有機基である。Qが複数個存在する場合、それらは互いに同じでも異なっていてもよい。
yは、0、1又は2である。2個のyは、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0085】
式(5)において、Qの例及び好ましい例は、前記式(4)において説明したQのそれらと、それぞれ同じである。R10、R11、R12、X及びnの例及び好ましい例は、前記式(2)において説明したR10、R11、R12、X及びnのそれらと、それぞれ同じである。
【0086】
式(5)において、Arがとり得る「置換基を有していてもよいアリール基」におけるアリール基の例及び好ましい例は、Rにおいて説明した「置換基を有していてもよいアリール基」におけるアリール基のそれらと同じであり、Arがとり得る「置換基を有していてもよいアリール基」における置換基の例及び好ましい例は、R及びRにおける任意の置換基と同じである。
【0087】
式(5)において、Arがとり得る「置換基を有していてもよいヘテロシクリル基」におけるヘテロシクリル基の例及び好ましい例は、Rにおいて説明した「置換基を有していてもよいヘテロシクリル基」におけるヘテロシクリル基のそれらと同じであり、Arがとり得る「置換基を有していてもよいヘテロシクリル基」における置換基の例及び好ましい例は、R及びRにおける任意の置換基と同じである。
【0088】
式(5)において、Arは置換基を有していてもよいアリール基であることが好ましい。
【0089】
式(6)において、Qの例及び好ましい例は、前記式(4)において説明したQのそれらと、それぞれ同じである。R10、R11、R12、X及びnの例及び好ましい例は、前記式(2)において説明したR10、R11、R12、X及びnのそれらと、それぞれ同じである。
【0090】
式(6)において、2個のAは、好ましくは−O−で表される基、−S−で表される基、−P(R)−で表される基、又は−C(R13)=C(R13)−で表される基であり、より好ましくは−O−で表される基、−S−で表される基、又は−C(R13)=C(R13)−で表される基であり、更に好ましくは−S−で表される基、又は−C(R13)=C(R13)−で表される基であり、特に好ましくは−S−で表される基である。
2個のAは、互いに同じでも異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0091】
式(6)において、Aが−C(R13)=C(R13)−で表される基である場合、2個のR13は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基であり、水素原子が好ましい。R13がとり得る「置換基を有していてもよいヒドロカルビル基」におけるヒドロカルビル基の例及び好ましい例は、R及びRにおいて説明した「置換基を有していてもよいヒドロカルビル基」におけるヒドロカルビル基のそれらと同じである。R13がとり得る「置換基を有していてもよいヒドロカルビル基」における置換基の例及び好ましい例は、Rにおける任意の置換基と同じである。
【0092】
式(6)において、Qは、好ましくはハロゲン原子、ニトロ基、前記式(2)で表される基又は有機基であり、より好ましくはハロゲン原子、前記式(2)で表される基又は有機基であり、更に好ましくは前記式(2)で表される基又は有機基であり、特に好ましくは前記式(2)で表される基である。Qが複数個存在する場合、それらは互いに同じでも異なっていてもよい。
【0093】
がとり得るハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子、塩素原子又は臭素原子であり、より好ましくはフッ素原子又は塩素原子であり、更に好ましくはフッ素原子である。
【0094】
がとり得る有機基としては、例えば、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビル基、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルチオ基又は炭素原子数が1〜30の置換シリル基が挙げられる。中でも、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビル基、又は炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルオキシ基が好ましく、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビル基がより好ましい。Qがとり得る有機基において、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、及び置換シリル基の例及び好ましい例は、R及びRにおける任意の置換基として説明したヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、及び置換シリル基のそれらと、それぞれ同じである。
【0095】
が、前記式(2)で表される基である場合、QにおけるR10、R11、R12、X及びnは、式(6)中に示されているR10、R11、R12、X及びnとは、互いに同じでも異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0096】
におけるXと、式(6)中に示されているXは、互いに同じでも異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0097】
式(6)において、yが1である場合、Qは、Aに直接結合する炭素原子と結合することが好ましい。
【0098】
式(6)において、yは、好ましくは0又は1であり、更に好ましくは1である。2個のyは、それぞれ同じでも異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0099】
式(5)及び式(6)のそれぞれについて、R12−X間の結合は、共有結合でも配位結合でもよい。R12−X間の結合が複数存在する場合、それぞれ独立に、共有結合又は配位結合であってよい。
【0100】
式(5)及び式(6)のそれぞれについて、nが0であることが好ましい。Qが前記式(2)で表される基である場合、Qにおけるnも、0であることが好ましい。
【0101】
式(5)について、本発明の化合物の発光量子収率がより優れるので、Xがホウ素原子であることが好ましい。Qが前記式(2)で表される基である場合、QにおけるXも、ホウ素原子であることが好ましい。
式(6)について、本発明の化合物の発光量子収率がより優れるので、式(6)におけるXはホウ素原子であることが好ましい。Qが前記式(2)で表される基である場合、QにおけるXも、ホウ素原子であることが好ましい。
【0102】
式(5)及び式(6)のそれぞれについて、R10及びR11は、同一の基であることが好ましい。Qが前記式(2)で表される基である場合、QにおけるR10及びR11も、式(5)及び式(6)のそれぞれに記載されているR10及びR11と同一の基であることが好ましい。
【0103】
式(5)及び式(6)のそれぞれについて、Xがホウ素原子であり、R10とR11とが同一の基であり、nが0であることが好ましい。
【0104】
式(5)及び式(6)のそれぞれについて、Qが、前記式(2)で表される基であり、Xがホウ素原子であり、R10とR11が同一の基であり、nが0であるか、又は、Qが、炭素原子数が1〜8のヒドロカルビルチオ基であることが好ましい。
【0105】
式(6)について、上記の通り、2個のyがどちらも1であることが好ましいが、この場合、2個のQがどちらも、前記式(2)で表される基であり、Xがホウ素原子であり、R10とR11が同一の基であり、nが0であるか、又は、2個のQがどちらも、炭素原子数が1〜8のヒドロカルビルチオ基であることが好ましい。
【0106】
式(5)で表される化合物及び式(6)で表される化合物の中でも、高い発光量子効率をより安定に示すので、前記式(5)で表される化合物が好ましい。
【0107】
本発明の化合物として、例えば、以下の化合物(式1−1〜式1−4、式4−1〜式4−4、式3−1〜式3−3、式5−1〜式5−7、式6−1〜式6−10)が挙げられる。
高い発光量子効率をより安定に示すので、式4−1〜式4−4、式3−1〜式3−3、式5−1〜式5−7、式6−1〜式6−10のいずれかで表される化合物が好ましく、式3−1〜式3−3、式5−1〜式5−7、式6−1〜式6−10のいずれかで表される化合物がより好ましく、式5−1〜式5−6、式6−1〜式6−10のいずれかで表される化合物が更に好ましく、式5−1、式5−3、式6−1又は式6−5で表される化合物が特に好ましい。
【0108】
【化7】

【0109】
【化8】

【0110】
本発明の化合物の構造は、融点測定、分子量測定、H NMR測定、13C NMR測定、11B NMR測定、及びCHN元素分析等の分析手法によって確認することができる。
【0111】
本発明の化合物は、一般に知られている反応を組み合わせることで合成することができ、特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す方法により好適に製造することができる。
【0112】
すなわち、一形態において、前記式(1)で表される化合物は、下記式(7):
【化9】

(式中、R、R、R及びAは前記と同じ意味を表す。Qは、前記Qであるか、又はQ前駆体である。)
で表される化合物に、2当量の有機リチウム化合物(例えば、n−ブチルリチウム)を加えてジアニオンを生成させた後、下記式(8):
【化10】

(式中、R及びRは前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物を加えることにより、得ることができる。
【0113】
前記式(8)で表される化合物は、テトラクロロシランに対し、R−Li又はR−MgClと、R−Li又はR−MgClとを1当量ずつ加えて反応させることによって合成できる。なお、RとRは、互いに結合して、それぞれが結合する珪素原子とともに環構造を形成していてもよい。RとRが互いに結合して、それぞれが結合する珪素原子とともに環構造を形成している場合、例えば、テトラクロロシランに対し、RとRが互いに結合した構造(以下、RとRとから水素原子がそれぞれ1つ除かれて、RとRが結合した構造をR−Rと表す。)のジアニオンである、Li−R−R−Li又はMgCl−R−R−MgClを1当量反応させることで合成できる。
【0114】
前記式(7)中のQがQ前駆体である場合、Q前駆体の構造は、一般的に知られている反応によってQの構造に変換可能である各種の形態をとることができる。
【0115】
前駆体の構造の一形態としては、例えば、トリメチルシリル基が挙げられる。トリメチルシリル基は、例えば、臭素と反応することで、トリメチルシリル基がブロモ基に変換される。更に、ブロモ基は、例えば、ブロモ基に対して1当量の有機リチウム化合物(例えば、n−ブチルリチウム)を加えてアニオンを生成させた後、下記式(9):
【化11】

(式中、R10及びR11は前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物を加えることにより、前記式(2)においてXがホウ素原子であり、nが0である基に変換することができる。更に、ホウ素原子に対してR12を結合することが可能な各種試薬と反応させることによって、前記式(2)においてnが1である基に変換することができる。例えば、前記試薬としてトリフェニルホスフィンを用いることによって、前記式(2)においてR12がトリフェニルホスフィノ基(PPh)であり、nが1である基に変換することができる。
【0116】
上述のQ前駆体からの反応で得られたブロモ基はまた、触媒(例えば、酢酸パラジウム(II)及びトリ(tert−ブチル)ホスフィン)の存在下、下記式(10):
【化12】

(式中、R10及びR11は前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物と反応することにより、前記式(2)においてXが窒素原子である基に変換することができる。
こうして、所望のQを有する前記式(1)で表される化合物を合成することができる。
【0117】
このようにして得られた式(1)で表される化合物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製、再結晶、再沈殿等の処理を行うことによって、単離精製することができる。
【0118】
上述の合成例において、前記式(7)で表される化合物として、下記式(11):
【化13】

(式中、R、A、Q、Q及びmは前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物を用いることにより、前記式(4)で表される化合物を合成することができる。
【0119】
また、前記式(11)で表される化合物として下記式(12):
【化14】

(式中、Q及びQは前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物を用いることにより、前記式(3)で表される化合物を合成することができる。
【0120】
<組成物>
本発明の化合物は、単独で用いてもよいし、その他の成分と混合して組成物として用いてもよく、好ましくは組成物として用いる。組成物を形成するために用いられる前記その他の成分としては、本発明の組成物を用いて得られる素子の駆動電圧を低減することができるので、電荷輸送材料が好ましい。従って、一実施形態において、本発明の組成物は、本発明の化合物と、電荷輸送材料とを含む。この組成物は、有機電子素子を構成する有機膜の材料として用いることができ、25℃において、液状又は固形状である。
【0121】
電荷輸送材料とは、有機EL素子等の有機電子素子において電荷の運搬を担う材料をいい、例えば、正孔輸送材料及び電子輸送材料が挙げられる。電荷輸送材料は、例えば、低分子有機化合物、高分子有機化合物(高分子化合物)及びオリゴマーのいずれであってもよい。低分子有機化合物、高分子有機化合物及びオリゴマーは、いずれも共役していることが好ましい。
【0122】
前記正孔輸送材料としては、例えば、フルオレン及びその誘導体、芳香族アミン及びその誘導体、カルバゾール誘導体及びポリパラフェニレン誘導体等の、有機EL素子等の有機電子素子の正孔輸送材料として用いられる公知の材料が挙げられる。
【0123】
前記電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、トリアジン誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、並びに8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体等の、有機EL素子等の有機電子素子の電子輸送材料として用いられる公知の材料が挙げられる。
【0124】
本発明の組成物において、本発明の化合物の含有量は、発光強度が優れるので、電荷輸送材料100質量部に対して、通常、0.01質量部〜200質量部であり、好ましくは0.1質量部〜50質量部である。
【0125】
組成物を形成するために用いられる前記その他の成分としては、溶媒又は分散媒も好ましい。
【0126】
溶媒又は分散媒としては、本発明の化合物を均一に溶解又は分散することができる公知の溶媒を使用してよい。このような溶媒としては、例えば、下記が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒:トルエン、キシレン(各異性体又はそれらの混合物)、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、2−フェニルブタン、tert−ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ネオペンチルベンゼン、イソアミルベンゼン、ヘキシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、3−プロピルトルエン、4−プロピルトルエン、1−メチル−4−プロピルベンゼン、1,4−ジエチルベンゼン、1,4−ジプロピルベンゼン、インダン、及びテトラリン(1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン)等。
脂肪族炭化水素系溶媒:n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、及びデカリン等。
芳香族エーテル系溶媒:アニソール、エトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、ブチロキシベンゼン、ペンチルオキシベンゼン、シクロペンチルオキシベンゼン、ヘキシルオキシベンゼン、シクロヘキシルオキシベンゼン、ヘプチルオキシベンゼン、オクチルオキシベンゼン、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、4−エチルアニソール、4−プロピルアニソール、4−ブチルアニソール、4−ペンチルアニソール、4−ヘキシルアニソール、ジフェニルエーテル、4−フェノキシトルエン、3−フェノキシトルエン、1,3−ジメトキシベンゼン、2,6−ジメチルアニソール、2,5−ジメチルアニソール、2,3−ジメチルアニソール、及び3,5−ジメチルアニソール等。
脂肪族エーテル系溶媒:テトラヒドロフラン、ジオキサン、及びジオキソラン等。
ケトン系溶媒:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及びアセトフェノン等。
エステル系溶媒:酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、及びエチルセルソルブアセテート等。
塩素系溶媒:塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、及びo−ジクロロベンゼン等。
アルコール系溶媒:メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、及びシクロヘキサノール等。
多価アルコール及びその誘導体:エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、及び1,2−ヘキサンジオール等。
非プロトン性極性溶媒:ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ニトロメタン、炭酸プロピレン、N,N−ジメチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミド等。
【0127】
溶媒は、単独溶媒でも混合溶媒でもよいが、成膜性が良好になるので、混合溶媒を用いることが好ましい。溶媒は、洗浄、蒸留及び吸着剤への接触等の精製方法により精製したものを用いてもよい。
【0128】
溶媒又は分散媒を含む本発明の組成物によれば、本発明の化合物を含む有機膜を容易に製造することができ、有機EL素子等の有機電子素子を容易に製造することができる。例えば、溶媒又は分散媒を含む本発明の組成物を基板上に塗布して、加熱、送風又は減圧によって溶媒又は分散媒を留去することにより、本発明の化合物を含む有機膜が得られる。溶媒の留去の条件は、使用される溶媒に応じて変更することができる。該条件としては、例えば、40〜150℃程度の雰囲気温度(加熱雰囲気)、及び10-3Pa程度の減圧雰囲気が挙げられる。
【0129】
溶媒又は分散媒を含む組成物中の本発明の化合物の含有量は、通常、0.01〜20質量%であり、0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0130】
本発明の組成物において、本発明の化合物及び前記電荷輸送材料は、各々、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0131】
<有機膜>
本発明の化合物は、有機膜の形状で用いることが好ましい。該有機膜は本発明の化合物を含有し、例えば、溶媒又は分散媒を含む組成物を用いて、スピンコート法等の塗布法により、塗布成膜することができる。
【0132】
前記有機膜は、有機電子素子において、例えば、発光性膜(発光層)、導電性膜(電極)、及び有機半導体膜(活性層)として使用できる。
【0133】
前記有機膜の厚さは、通常、1nm〜500nmであり、好ましくは5nm〜200nmである。
【0134】
<有機電子素子>
本発明の有機電子素子は、本発明の化合物又は本発明の組成物を用いてなる。本発明の有機電子素子としては、例えば、本発明の化合物又は本発明の組成物を用いてなる機能層を備える発光素子、スイッチング素子及び光電変換素子が挙げられる。
以下、その代表的なものとして、本発明の有機電子素子が発光素子である場合(以下、「本発明の発光素子」ともいう。)について説明する。
【0135】
[発光素子]
本発明の発光素子は、陽極及び陰極からなる電極間に、発光層を有する。発光層は、発光する機能を有する層である。
【0136】
本発明の発光素子は、発光効率及び耐久性を向上させるために、発光層以外の層を含んでいてもよい。発光層以外の層としては、例えば、電荷輸送層、電荷注入層及び電荷阻止層が挙げられる。なお、各層は、1層からなるものでも2層以上からなるものでもよい。
【0137】
電荷輸送層は、電荷(正孔又は電子)を輸送する機能を有する層であり、その中でも、正孔を輸送する機能を有する層を正孔輸送層といい、電子輸送する機能を有する層を電子輸送層という。電荷注入層は、電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、発光素子の駆動電圧を下げる効果を奏する層であり、その中でも、陽極からの正孔注入効率を改善する機能を有する層を正孔注入層といい、陰極からの電子注入効率を改善する機能を有する層を電子注入層という。電荷阻止層は、電荷を発光層に閉じ込める機能を有する層であり、その中でも、電子を輸送し正孔を発光層に閉じ込める機能を有する層を正孔阻止層といい、正孔を輸送し電子を発光層に閉じ込める機能を有する層を電子阻止層という。なお、正孔輸送層及び/又は正孔注入層が電子の輸送を堰き止め電子を発光層に閉じ込める機能を有する場合には、これらの層が電子阻止層を兼ねてもよい。
また、電子輸送層及び/又は電子注入層が正孔の輸送を堰き止め正孔を発光層に閉じ込める機能を有する場合には、これらの層が正孔阻止層を兼ねてもよい。
【0138】
本発明の発光素子の構造としては、例えば、以下のa)〜q)の構造が挙げられる。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/発光層/正孔阻止層/陰極
e)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
f)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
g)陽極/発光層/電子注入層/陰極
h)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
i)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
j)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
k)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
l)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
n)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
o)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
p)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
q)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
ここで、記号「/」は、これを挟んで両側に記載された各層が隣接して積層されていることを示す。なお、発光層、正孔輸送層及び電子輸送層は、それぞれ独立に、2層以上用いてもよい。
【0139】
本発明の発光素子は、電極との密着性向上のために、又は、電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して絶縁層を更に有していてもよい。上記絶縁層に用いる材料としては、例えば、金属フッ化物、金属酸化物、及び有機絶縁材料が挙げられる。絶縁層の厚さは、通常、2nm以下である。絶縁層を有する発光素子としては、例えば、陰極に隣接して上記絶縁層を有する発光素子、及び陽極に隣接して上記絶縁層を有する発光素子が挙げられる。本発明の発光素子はまた、界面の密着性向上や混合の防止のために、互いに隣接する各層間に薄いバッファー層が挿入されていてもよい。バッファー層としては、例えば、陽極に隣接して導電性高分子化合物を含む層が挙げられる。
【0140】
本発明の発光素子の発光層は、本発明の化合物又は本発明の組成物を用いてなる。該発光層は、本発明の組成物における一成分として、その他の発光材料を含んでいてもよい。
その他の発光材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系色素、キサンテン系色素、クマリン系色素及びシアニン系色素等の色素類、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、並びにテトラフェニルブタジエン及びその誘導体が挙げられる。
【0141】
発光層はまた、本発明の組成物の一成分として、本発明の化合物をゲスト材料とするホスト材料を含有してもよい。ホスト材料としては、例えば、フルオレン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物、ジアリールアミン骨格を有する化合物、ピリジン骨格を有する化合物、ピラジン骨格を有する化合物、トリアジン骨格を有する化合物及びアリールシラン骨格を有する化合物が挙げられる。ホスト材料のT1(最低三重項励起状態のエネルギーレベル)は、ゲスト材料のT1より大きいことが好ましく、その差が0.2eVよりも大きいことが更に好ましい。ホスト材料は、低分子化合物及び高分子化合物のいずれでもよい。前記ホスト材料と、本発明の化合物又は本発明の組成物とを混合して塗布するか、又は蒸着することによって、発光層を形成してよい。
【0142】
発光層中の本発明の化合物の含有量は、発光層全体の質量を100質量部としたとき、通常、0.01〜100質量部であり、0.1〜70質量部であることが好ましく、1〜30質量部であることがより好ましい。
【0143】
発光層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率とが適度な値となるように選択すればよい。発光層の厚さは、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは1nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmである。
【0144】
正孔輸送層に用いる材料としては、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン残基を有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、並びにポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体が挙げられる。
【0145】
正孔輸送層の厚さは、発光効率と駆動電圧とが適度な値となるように設定され、用いる材料によって最適値が異なるが、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmである。
【0146】
電子輸送層に用いる材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、トリアジン誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、並びにポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0147】
電子輸送層の厚さは、発光効率と駆動電圧とが適度な値となるように設定され、用いる材料によって最適値が異なるが、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmである。
【0148】
正孔注入層の材料としては、例えば、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー及びポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマーが挙げられる。
【0149】
正孔注入層の厚さは、発光効率と駆動電圧とが適度な値となるように設定され、用いる材料によって最適値が異なるが、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmである。
【0150】
電子注入層の材料は、電極の材料及び/又は該電子注入層と隣接する層の材料との関係に応じて選択すればよい。電子注入層の材料としては、例えば、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン、並びにカーボンが挙げられる。
【0151】
電子注入層の厚さは、通常、1nm〜100nmであり、好ましくは1nm〜50nmであり、より好ましくは1nm〜10nmである。
【0152】
上記各層は隣接する層又は基板上に形成される。上記各層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法(抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法等)、スパッタリング法、LB法、分子積層法及び塗布法が挙げられ、製造プロセスをより簡便にできるので、塗布法が好ましい。
【0153】
上記各層を形成するために用い得る塗布法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、ディップコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法及びインクジェット印刷法が挙げられ、ロールコート法、スプレーコート法、フレキソ印刷法及びインクジェット印刷法が好ましい。
【0154】
本発明の発光素子は、通常、基板を用いて形成される。基板の一方の面に電極が形成され、更に発光素子の各層が形成される。上記基板としては、例えば、ガラス、プラスチック、及びシリコン等の材質の基板、高分子フィルムの基板が挙げられる。
【0155】
本発明の発光素子に含まれる陽極及び陰極は、通常、透明又は半透明のものであるが、陽極が透明又は半透明のものであることが好ましい。
【0156】
陽極に用いる材料としては、例えば、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜、及び透明の有機導電膜が挙げられ、好ましくは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)等、アンチモンスズ酸化物、NESA、金、白金、銀、銅、ポリアニリン及びその誘導体、並びにポリアミノフェン及びその誘導体である。
【0157】
陽極の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法及びメッキ法が挙げられる。2層以上の積層構造の陽極を形成してもよい。
【0158】
陽極の厚さは、光の透過性と電気伝導度とを考慮して調整され、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、より好ましくは40nm〜500nmである。
【0159】
陰極に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム及びイッテルビウム等の金属;それらの金属からなる群から選ばれる2つ以上の金属の合金;それらの金属からなる群から選ばれる1種以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン及び錫からなる群から選ばれる1種以上の金属との合金;グラファイト;及びグラファイト層間化合物が挙げられる。
【0160】
陰極の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、及び、金属薄膜を熱圧着するラミネート法が挙げられる。また、2層以上の積層構造の陰極を形成してもよい。
【0161】
陰極の厚さは、電気伝導度と耐久性とを考慮して調整され、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、より好ましくは50nm〜500nmである。
【0162】
本発明の発光素子では、素子を外部から保護して長期安定的に使用するために、陰極形成後、発光素子を保護する保護層又は保護カバーを設けることが好ましい。保護層に用いる材料としては、例えば、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物及び金属ホウ化物が挙げられる。保護カバーとしては、例えば、ガラス板、及び、表面に低透水率処理を施したプラスチック板が挙げられる。これらのうち、保護カバーを、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を用いて素子と貼り合わせて、素子を密閉することが好ましい。
【0163】
本発明の発光素子は、例えば、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置のバックライト、照明に有用である。
【0164】
[光電変換素子]
本発明の化合物又は本発明の組成物は、光電変換素子に用いることもできる。
【0165】
光電変換素子は、通常、陽極、陰極及び電荷分離層を有する。電荷分離層は、陽極と陰極との間に位置する。光電変換素子は、陽極と陰極との間に、電荷分離層以外の任意の層を有していてもよい。本発明の化合物又は本発明の組成物は、電荷分離層の作製に用いてもよいし、電荷分離層以外の任意の層の作製に用いてもよい。
【0166】
陰極及び陽極の材料及び例は、発光素子の項で説明した陰極及び陽極の材料及び例と同じである。陽極及びは陰極の形状は、限定されず、櫛型であってもよい。陽極及び陰極は、透明又は半透明のいずれでもよい。
【0167】
光電変換素子の電荷分離層には、通常、電子供与性化合物と電子受容性化合物とが含まれている。
【0168】
電子供与性化合物としては、例えば、共役高分子化合物が挙げられる。該共役高分子化合物としては、例えば、チオフェンジイル基を含む共役高分子化合物及びフルオレンジイル基を含む共役高分子化合物が挙げられる。
【0169】
電子受容性化合物としては、例えば、フラーレン及びフラーレン誘導体が挙げられる。
【0170】
光電変換素子は、通常、基板を用いて形成される。基板の例は、発光素子の項で説明した基板の例と同じである。
【0171】
光電変換素子は、太陽電池であることが好ましい。
【実施例】
【0172】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0173】
<実施例1>
シロール誘導体5−1の合成
【化15】

【0174】
滴下ロート、還流管及び三方コックを備えた二口ナス形フラスコに2,6−ジブロモ−4,4−ジフェニルジチエノシロール(0.32g、0.64mmol)を入れ、装置内の気体をアルゴンガスで置換した。次いで、ジエチルエーテル10mLを加え−80℃に冷却し、n−ブチルリチウムのへキサン溶液(1.65mol/L)を0.8mL加え、室温に戻して1時間撹拌した。その後、反応液を−80℃に冷却し、ジメシチルフルオロボラン(0.33g、1.28mmol)のジエチルエーテル溶液を加え、室温に戻して1時間撹拌した。その後、反応液に水を加えて抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。ろ液から溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:へキサン/クロロホルム=3/1(体積基準))で精製し、シロール誘導体5−1を0.36g(収率66%)得た。
【0175】
得られたシロール誘導体5−1の融点、ESI−MS、H NMR、13C NMR、11B NMR、及びCH元素分析のデータを下記に示す。
【0176】
融点 316.0〜317.8℃;
ESI−MS(m/z) 865.4([M+Na]);
H NMR(in CDCl):δ(ppm)=2.14(s,24H),2.30(s,12H),6.82(s,8H),7.32−7.44(m,6H),7.56−7.59(m,4H),7.62(s,2H);13C NMR(in CDCl):δ(ppm)=21.24,23.59,128.16,128.21,130.43,131.38,135.40,138.56,140.79,143.97,144.96,154.77,162.34;
11B NMR(in CDCl from BF・EtO):δ(ppm)=67.47(broad);
Anal.Calcd for C5656Si:C,79.80;H,6.70. Found:C,79.81;H,6.72.
【0177】
なお、シロール誘導体5−1のESI−MSスペクトルは、Thermo Fisher Scientific社製のLTQ Orbitrapを用いて測定した。H NMRスペクトルは、Varian社製400MRを用いて測定した。13C NMR及び11B NMRスペクトルは、Varian社製System500を用いて測定した。
【0178】
また、2,6−ジブロモ−4,4−ジフェニルジチエノシロールは、Organometallics 18,1453−1459(1999)に記載の方法に従って合成した。
【0179】
<合成例1>
2,2’,6,6’−テトラブロモ−4,4’−スピロビス(ジチエノシロール)の合成
【化16】

【0180】
2,2’,6,6’−テトラキス(トリメチルシリル)−4,4’−スピロビス(ジチエノシロール)(4.00g、6.20mmol)をジエチルエーテル60mLに溶解させた後、−80℃に冷却して、臭素(3.69g、24.8mmol)を加えた。その後、反応液を室温に戻し、30分撹拌した。その後、反応液から溶媒を留去し、残渣をn−へキサンで洗い、2,2’,6,6’−テトラブロモ−4,4’−スピロビス(ジチエノシロール)を3.40g(収率82%)得た。
【0181】
得られた2,2’,6,6’−テトラブロモ−4,4’−スピロビス(ジチエノシロール)の融点、H NMR、13C NMR、及びCH元素分析のデータを下記に示す。
【0182】
融点 >300℃;
H NMR(in CDCl):δ(ppm)=6.87(s);
13C NMR(in CDCl):δ(ppm)=112.85,132.18,132.22,153.27;
Anal. Calcd for C14BrSi:C,28.29;H,0.60. Found:C,28.53;H,0.65.
【0183】
なお、2,2’,6,6’−テトラブロモ−4,4’−スピロビス(ジチエノシロール)のH NMR及び13C NMRスペクトルは、日本電子社製LA−400を用いて測定した。
【0184】
また、2,2’,6,6’−テトラキス(トリメチルシリル)−4,4’−スピロビス(ジチエノシロール)は、特開第2005−255573号公報に記載の方法で合成した。
【0185】
<実施例2>
シロール誘導体6−1の合成
【化17】

【0186】
滴下ロート、還流管及び三方コックを備えた二口ナス形フラスコに2,2’,6,6’−テトラブロモ−4,4’−スピロビス(ジチエノシロール)(0.50g、0.74mmol)を入れ、装置内の気体をアルゴンガスで置換した。次いで、ジエチルエーテル70mLを加え−80℃に冷却し、sec−ブチルリチウムのへキサン溶液(1.0mol/L)を3.0mL加え、−80℃のまま30分撹拌した。その後、−80℃において、ジメシチルフルオロボラン(0.80g、3.0mmol)のジエチルエーテル溶液を加え、室温に戻して一晩撹拌した。その後、反応液をろ過し、ろ液に水を加えて抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過し、ろ液から溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:へキサン/クロロホルム=3/1(体積基準))で精製し、シロール誘導体6−1を32mg(収率3%)得た。
【0187】
得られたシロール誘導体6−1のFAB−MS、及びH NMRのデータを下記に示す。
【0188】
FAB−MS(m/z) 1348(M+);
H NMR(in CDCl):δ(ppm)=2.12(s,48H),2.28(s,24H),6.80(s,16H),7.24(s,4H).
【0189】
なお、シロール誘導体6−1のFAB−MSスペクトルは、日本電子社製SX102A型二重収束質量分析計を用いて測定した。H NMRスペクトルは、Varian社製System500を用いて測定した。
【0190】
<実施例3>
シロール誘導体5−7の合成
【化18】

【0191】
滴下ロート、還流管及び三方コックを備えた二口ナス形フラスコに2−ジブロモ−6−メチルチオ−4,4−ジフェニルジチエノシロール(0.35g、0.74mmol)を入れ、装置内の気体をアルゴンガスで置換した。次いで、ジエチルエーテル20mLを加え−80℃に冷却し、n−ブチルリチウムのへキサン溶液(1.65mol/L)を0.45mL加え、室温に戻して1時間撹拌した。その後、反応液を0℃に冷却し、ジメシチルフルオロボラン(0.20g、0.75mmol)のジエチルエーテル溶液を加え、室温に戻して一晩撹拌した。その後、反応液に水を加えて抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。ろ液から溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:へキサン/クロロホルム=20/1(体積基準))で精製し、シロール誘導体5−7を0.082g(収率18%)得た。
【0192】
得られたシロール誘導体5−7の融点、Exact−MS、H NMR、13C NMR、及び11B NMRのデータを下記に示す。
【0193】
融点 222.7〜224.3℃;
Exact−MS Calcd for C3937BSSi(M):640.19142. Found:640.19141.
H NMR(in CDCl):δ(ppm)=2.16(s,12H),2.30(s,6H),2.51(s,3H),6.83(s,4H),7.21(s,1H),7.33−7.43(m,6H),7.56−7.60(m,5H);13C NMR(in CDCl):δ(ppm)=21.23,22.45,23.57,128.19,128.21,130.48,131.23,133.97,135.38,138.42,141.17,141.77,143.41,144.06,151.71,162.94;
11B NMR(in CDCl from BF・EtO):δ(ppm)=66.81(broad).
【0194】
なお、シロール誘導体5−7のExact−MSは、Thermo Fisher Scientific社製のLTQ Orbitrap XLを用いて測定した。H NMRスペクトルは、Varian社製400MRを用いて測定した。13C NMR及び11B NMRスペクトルは、Varian社製System500を用いて測定した。
【0195】
また、2−ジブロモ−6−メチルチオ−4,4−ジフェニルジチエノシロールは、Organometallics 25,1511−1516(2006)に記載の方法に従って合成した。
【0196】
[光学特性]
シロール誘導体5−1の発光量子効率は、クロロホルム溶液(濃度:5.2×10−6mol/L)の状態で90%、固体(粉体)の状態で83%であった。
【0197】
シロール誘導体5−7の発光量子効率は、クロロホルム溶液(濃度:5.0×10−6mol/L)の状態で83%、固体(粉体)の状態で58%であった。
なお、発光量子効率は、浜松ホトニクス社製のC9920−01を用いて測定した。
【0198】
<比較例1>
【化19】

【0199】
上述の非特許文献1に記載されている、置換基としてジフェニルホスフィノイル基を有するシロール誘導体2aの発光量子効率は、クロロホルム溶液の状態では85%と高い値を示すが、固体(粉体)の状態では41%となり、溶液状態の半分以下の値に低下する。
【0200】
<測定例1>
シロール誘導体5−1のTHF溶液(濃度:5.0×10−6mol/L)を調製した。この溶液の吸収スペクトルを測定したところ、440nm及び418nmに吸収ピークを示した。この溶液に、テトラブチルアンモニウムフルオリドをシロール誘導体5−1に対して4当量添加したところ、吸収ピークは455nmのみとなった。これにより、シロール誘導体5−1が、センサー材料としての特性を示すことが明らかとなった。
【0201】
なお、測定例1における吸収スペクトルの測定は、SHIMADZU社製のUV−3150を用いた。
【0202】
これらの結果から、本発明の化合物は、溶液状態及び粉体状態の両状態で安定して、高い発光量子効率を示す。よって、本発明の化合物は、加工プロセスによらず安定な品質を示すので、有機電子素子材料として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】

(式(1)中、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基である。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は有機基である。RとRは結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環構造を形成してもよく、RとRが結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに形成する環構造は置換基を有していてもよい。RとRは結合して、それぞれが結合する珪素原子とともに環構造を形成してもよく、RとRが結合して、それぞれが結合する珪素原子とともに形成する環構造は置換基を有していてもよい。
は、水素原子、ハロゲン原子又は有機基である。
Aは、−O−で表される基、−S−で表される基、−N(R)−で表される基、−C(R−で表される基、−Si(R−で表される基、又は−P(R)−で表される基である。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。2個のRは、互いに同じでも異なっていてもよく、結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環構造を形成してもよく、2個のRは、互いに同じでも異なっていてもよく、結合して、それぞれが結合する珪素原子とともに環構造を形成してもよい。
は、フッ素原子、ニトロ基、又は下記式(2)で表される基である。)
【化2】

(式(2)中、
Xは、ホウ素原子又は窒素原子である。
10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。R12は、有機基である。R10とR11は結合して、それぞれが結合するXとともに環構造を形成してもよい。
nは、Xが窒素原子のとき0であり、Xがホウ素原子のとき0又は1である。)
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物が、下記式(4)で表される化合物である、請求項1に記載の化合物。
【化3】

(式(4)中、
、R、R、A及びQは、前記と同じ意味を表す。
は、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、スルホ基、−OP(=O)(OH)で表される基、−OP(OH)で表される基、前記式(2)で表される基又は有機基である。
2個のRは、互いに同じでも異なっていてもよく、2個のAは、互いに同じでも異なっていてもよい。
mは0又は1である。)
【請求項3】
前記式(4)で表される化合物が、下記式(3)で表される化合物である、請求項2に記載の化合物。
【化4】

(式(3)中、R、R、Q及びQは、前記と同じ意味を表す。)
【請求項4】
及びRが、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基であり、
が、前記式(2)で表される基であり、
が、前記式(2)で表される基、又は、炭素原子数が1〜30のヒドロカルビルチオ基である、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項5】
が、前記式(2)で表される基であり、Xがホウ素原子であり、R10とR11が同一の基であり、nが0である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
が、前記式(2)で表される基であり、Xがホウ素原子であり、R10とR11が同一の基であり、nが0である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
が、炭素原子数が1〜8のヒドロカルビルチオ基である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
及びRが、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいチエニル基である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物を含む、組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項9に記載の組成物を用いてなる、有機電子素子。

【公開番号】特開2013−60415(P2013−60415A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−17517(P2012−17517)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】