説明

シワの取れない和紙、シワの取れない和紙製のバッグ

【課題】手提げバッグ等に使用して独特の風合いを呈する、シワの取れない和紙及びシワの取れない和紙製のバッグを提供することを目的としてなされたものである。
【解決手段】芯鞘ポリオレフィン繊維60〜80重量%、木材パルプ20〜40重量%からなる配合割合からなり、前記芯鞘ポリオレフィン繊維が、芯の部分がポリプロピレン、鞘の部分がポリエチレンで構成されていて、鞘の部分のポリエチレンが約130℃の加熱温度で溶解して芯の部分のポリプロピレンに対するバインダとなっていることを特徴とするシワの取れない和紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシワの取れない和紙に関するもので、とりわけ、手提げバッグ等に使用して独特の風合いを呈する、シワの取れない和紙及びシワの取れない和紙製のバッグを提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、和紙等の紙類はさまざまな用途に使用されているが、一般に前記紙類についてはシワの付きにくい素材を使用することが求められてきた。
例えば、特開2008−50724号公報(特許文献1参照)、特開2005−280088号公報(特許文献2参照)、特開2004−238748号公報(特許文献3参照)、特開2004−154959号公報(特許文献4参照)、特開2002−67230号公報(特許文献5参照)、特開平9−158097号公報(特許文献6参照)等に、合成繊維と木材パルプとを混抄したり積層して、シワの発生しにくい和紙風の素材を得ることが示されている。
【0003】
またこれとは別に、木材パルプとポリオレフィン繊維を混抄して引裂強度に優れた柔軟な基材を提供するという提案が、特開平3−82892号公報(特許文献7参照)、特開平3−113091号公報(特許文献8参照)、特開2000−345498号公報(特許文献9参照)等においてなされている。
【0004】
ちなみに、特開平3−82892号公報(特許文献7参照)においては木材パルプに対して30〜70重量%のポリオレフィン繊維を混抄し、特開平3−113091号公報(特許文献8参照)においては90〜20重量%の木材パルプに対して10〜80重量%のポリプロピレン繊維を混抄し、特開2000−345498号公報(特許文献9参照)においては2層の抄き合せ紙のうちの1層が20〜70重量%の共重合ポリエステル繊維、5〜35重量%のポリオレフィン繊維、5〜40重量%の木材パルプを混抄することにより、それぞれ構成された、ヒートシール性や成形性、引裂強度等に優れた素材が提案されている。
【特許文献1】特開2008−50724号公報
【特許文献2】特開2005−280088号公報
【特許文献3】特開2004−238748号公報
【特許文献4】特開2004−154959号公報
【特許文献5】特開2002−67230号公報
【特許文献6】特開平9−158097号公報
【特許文献7】特開平3−82892号公報
【特許文献8】特開平3−113091号公報
【特許文献9】特開2000−345498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜6のそれぞれに記載されたシワの発生しにくい素材においても、また特許文献7〜9のそれぞれに記載されたヒートシール性や成形性、引裂強度等に優れた素材においても、本発明によって得られたようなシワの取れない和紙及びシワの取れない和紙製のバッグを提供することはできなかった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて、手提げバッグ等に使用して独特の風合いを呈する、シワの取れない和紙及びシワの取れない和紙製のバッグを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係るシワの取れない和紙は、芯鞘ポリオレフィン繊維60〜80重量%、木材パルプ20〜40重量%からなる配合割合からなり、前記芯鞘ポリオレフィン繊維が、芯の部分がポリプロピレン、鞘の部分がポリエチレンで構成されていて、鞘の部分のポリエチレンが約130℃の加熱温度で溶解して芯の部分のポリプロピレンに対するバインダとなっていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係るシワの取れない和紙は、前記シワの取れない和紙が、その嵩が坪量75.9g/m2、厚みが約200〜350μmであることをも特徴とするものである。
【0009】
本発明に係るシワの取れない和紙製のバッグは、芯鞘ポリオレフィン繊維60〜80重量%、木材パルプ20〜40重量%からなる配合割合からなり、前記芯鞘ポリオレフィン繊維が、芯の部分がポリプロピレン、鞘の部分がポリエチレンで構成されていて、鞘の部分のポリエチレンが約130℃の加熱温度で溶解して芯の部分のポリプロピレンに対するバインダとなっている和紙を用いて袋状に製作されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
以上説明した本発明によれば、手提げバッグ等に使用してシワの付された和紙素材が独特の風合いを呈する、シワの取れない和紙及びシワの取れない和紙製のバッグを提供することが可能となった。
しかも、和紙素材としての特性においても、乾燥状態(DRY)と湿潤状態(WET)における引張強さ、引裂強さ、破裂強さのいずれにおいても、特に湿潤状態(WET)において従来の紙素材と比較して顕著な効果を発揮する、極めて品質の良いシワの取れない和紙が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明のシワの取れない和紙、シワの取れない和紙製のバッグの実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明のシワの取れない和紙の1実施例における引張強さ・引裂強さを、従来の各種袋素材の引張強さ・引裂強さと比較した物性比較グラフ、図2は本発明のシワの取れない和紙の1実施例における破裂強さを、従来の各種袋素材の破裂強さと比較した物性比較グラフ、図3はそれらを数値化した物性比較表、図4はクラフト紙を濡らした後に乾燥した状態を示す写真、図5は上記実施例で用いた和紙を濡らした後に乾燥した状態を示す写真である。
【0012】
本発明の実施の形態におけるシワの取れない和紙は、芯鞘ポリオレフィン繊維60〜80重量%、木材パルプ20〜40重量%からなる配合割合で通常の抄紙機を用いて抄紙されたものである。
なお、前記芯鞘ポリオレフィン繊維は、芯の部分がポリプロピレン、鞘の部分がポリエチレンで構成されていて、鞘の部分のポリエチレンが約130℃の加熱温度で溶解して芯の部分のポリプロピレンに対するバインダとなっている。
すなわち、抄造過程で木材パルプや芯鞘ポリオレフィン繊維がフィビル化状態で絡み合っており、乾燥工程において鞘の部分のポリエチレンが約130℃の加熱温度で溶解して芯の部分のポリプロピレンに融着することにより結合力を高め、かつ強度保持されたものである。
【0013】
前記芯鞘ポリオレフィン繊維はその種類を問わないが、鞘の部分の低融点のポリオレフィン素材が約130℃の加熱温度で溶解して芯の部分の融点の高いポリオレフィン素材に融着するものであることが望ましい。
そしてこの芯鞘ポリオレフィン繊維は60〜80重量%配合することが必要であり、したがって木材パルプは20〜40重量%配合される。このように芯鞘ポリオレフィン繊維を60〜80重量%配合することにより、手提げバッグ等に使用してシワの付された和紙素材が独特の風合いを呈し、しかも、和紙素材としての特性においても、特に湿潤状態(WET)において従来の紙素材と比較して顕著な効果を発揮する、極めて品質の良いシワの取れない和紙が得られるのである。
【0014】
図1に、芯の部分がポリプロピレン、鞘の部分がポリエチレンからなる芯鞘ポリオレフィン繊維70重量%と、和紙用の通常の木材パルプ30重量%とを配合して抄造し、150℃の熱風で乾燥することにより、鞘の部分のポリエチレンが約130℃の加熱温度で溶解して芯の部分のポリプロピレンに融着させた和紙(ソフトナオロン:株式会社大直製)と、従来のクラフト紙、ラミクラフト紙(クラフト紙とフィルムとの積層構造)、紙袋とを引張強さ、引裂強さ(Dry,Wet)の面で比較した物性比較グラフを示す。
本実施例で得た和紙(ソフトナオロン:株式会社大直製)における引張強さはDry,Wetのいずれの場合においてもほとんど変化がない。また引裂強さはWet状態で粘りが出て強くなる−破れ難い−という結果が得られた。
【0015】
また図2に、図1と同様に芯の部分がポリプロピレン、鞘の部分がポリエチレンからなる芯鞘ポリオレフィン繊維70重量%と、和紙用の通常の木材パルプ30重量%とを配合して抄造し、150℃の熱風で乾燥することにより、鞘の部分のポリエチレンが約130℃の加熱温度で溶解して芯の部分のポリプロピレンに融着させた和紙(ソフトナオロン:株式会社大直製)を用意し、これを従来のクラフト紙、ラミクラフト紙(クラフト紙とフィルムとの積層構造)、紙袋とを破裂強さ(Dry,Wet)の面で比較した物性比較グラフを示す。
本実施例で得た和紙(ソフトナオロン:株式会社大直製)における破裂強さはDry,Wetのいずれの場合においてもまったく変化がない。逆に、クラフト紙、ラミクラフト紙、紙袋の場合にはいずれもWet状態で直ぐに破裂してしまい、測定不能であった。
【0016】
次に、図3に上記図1及び図2の物性比較グラフにおける引張強さ、引裂強さ、破裂強さ(Dry,Wet)を数値化した物性比較表を示す。図における(−)は測定不能を示すものである。
【0017】
図4はクラフト紙を濡らした後に乾燥した状態を示す写真、図5は上記実施例で用いた和紙(ソフトナオロン:株式会社大直製)を濡らした後に乾燥した状態を示す写真である。
クラフト紙の場合は平板状の素材が、濡らした後に乾燥するとシワシワの状態になることがわかる。他方、上記実施例で用いた和紙(ソフトナオロン:株式会社大直製)においては、濡らした後に乾燥してもまったく型崩れしていないことがわかる。
【0018】
上記実施例で得た和紙(ソフトナオロン:株式会社大直製)の素材をもちいて、上端に手提げ紐の付いた買物袋を作製した。この買物袋は製造工程において平板状の原紙が不規則なシワを全面に備えた状態となり、独特の風合いを有する付加価値の高いものとなった。
そしてこのシワは濡れたりしてもほとんど変化することがなく、濡れた場合に買物袋等の商品価値が大幅に低下してしまうという心配のない、優れた製品を提供することが可能となった。
【0019】
なお、本発明のシワの取れない和紙にあっては、芯鞘ポリオレフィン繊維を60〜80重量%配合し、木材パルプを20〜40重量%配合することが必要である。
芯鞘ポリオレフィン繊維が60重量%以下、木材パルプが40重量%以上の配合である場合には、不規則なシワを全面に備えた状態となるものの、細かいシワが大量に発生し、独特の風合いの例えば買物袋を得ることはできなかった。
また、引張強さ、引裂強さ、破裂強さ(Dry,Wet)において、特にWet状態の強度が不十分なものとなりやすかった。
【0020】
他方、芯鞘ポリオレフィン繊維が60重量%以上、木材パルプが40重量%以下の配合である場合には、不規則なシワが全面に見えるものの、明瞭なシワにはなりにくく、やはり独特の風合いの例えば買物袋を得ることはできなかった。
また本発明におけるシワの取れない和紙の厚みとして、約200〜350μmが好ましいことを述べているが、これは買物袋として利用する場合の厚みであって、その他の用途に用いる場合には異なる厚みのものを利用してもよいことはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上説明した本発明によれば、非常に品質の良いシワの取れない和紙が得られ、上記買物袋以外にも、ファッション性や耐久性に優れた和紙製の各種バッグ類を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のシワの取れない和紙の1実施例における引張強さ・引裂強さを、従来の各種袋素材の引張強さ・引裂強さと比較した物性比較グラフである。
【図2】本発明のシワの取れない和紙の1実施例における破裂強さを、従来の各種袋素材の破裂強さと比較した物性比較グラフである。
【図3】それらを数値化した物性比較表である。
【図4】クラフト紙を濡らした後に乾燥した状態を示す写真である。
【図5】上記実施例で用いた和紙を濡らした後に乾燥した状態を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯鞘ポリオレフィン繊維60〜80重量%、木材パルプ20〜40重量%からなる配合割合からなり、前記芯鞘ポリオレフィン繊維が、芯の部分がポリプロピレン、鞘の部分がポリエチレンで構成されていて、鞘の部分のポリエチレンが約130℃の加熱温度で溶解して芯の部分のポリプロピレンに対するバインダとなっていることを特徴とするシワの取れない和紙。
【請求項2】
前記シワの取れない和紙が、その嵩が坪量75.9g/m2、厚みが約200〜350μmであることを特徴とする請求項1記載のシワの取れない和紙。
【請求項3】
芯鞘ポリオレフィン繊維60〜80重量%、木材パルプ20〜40重量%からなる配合割合からなり、前記芯鞘ポリオレフィン繊維が、芯の部分がポリプロピレン、鞘の部分がポリエチレンで構成されていて、鞘の部分のポリエチレンが約130℃の加熱温度で溶解して芯の部分のポリプロピレンに対するバインダとなっている和紙を用いて袋状に製作されたことを特徴とするシワの取れない和紙製のバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−299197(P2009−299197A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151146(P2008−151146)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(593146109)株式会社大直 (2)
【Fターム(参考)】