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シワの形成し易さの評価方法
説明

シワの形成し易さの評価方法

【課題】 皮膚角層中の酸化タンパク質とシワ形成性との関係を解明するとともに、通常は加齢に伴って増加する角層中の酸化タンパク質を強制的に増加させ、当該部位においてシワを強制的に再現し、その結果生じる皮膚形状の変化を測定することにより、皮膚のシワ形成のし易さを適切に評価できる方法を提供する。
【解決手段】 被検者の皮膚の所定部位に酸化剤を適用し、次いで前記酸化剤適用部位を含む皮膚表面を圧縮する及び/又は屈曲させることにより強制的にシワを形成させ、形成されたシワの深さを測定することを特徴とする、シワの形成し易さの評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚におけるシワのしわ形成し易さを評価する方法に関する。より詳細には、本発明は、皮膚を圧縮して及び/又は屈曲させて形成したシワを測定することにより得られるパラメータを用いて、しわの形成し易さを評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮紋よりマクロな形態変化としてみられるシワは、皮膚老化が外観に現れる最も顕著な変化の一つであり、目の周囲、額、口の周囲などの顔面や首その他の身体各部に現れ、年齢を重ねるに従って増加し深くなってゆく傾向があり、美容上の大きな関心事となっている(非特許文献1)。
【0003】
目尻や額にできる直線的なシワ(線状シワ)や、頬やうなじに見られる交差した溝で三角形や四角形を形成したシワ(図形シワ)は、表情の変化を含む筋肉の動きによって繰り返し皮膚に変形が加わり、徐々にシワとして固定されていくものと考えられている。その過程には、老化、酸化、日光(紫外線)などの影響によって起こる皮膚の構造・機能・物性の変化が深く関わっていると考えられる。
【0004】
医薬品、医薬部外品、あるいは化粧料において、シワを改善する効果を有するもの(抗シワ剤)が多数提案されているが、それらの有効性を評価するためには、抗シワ剤を適用する前後におけるシワの状態を評価する必要がある。例えば、特許文献1には、皮膚にテープストリッピングを施す、あるいは石鹸又は洗浄剤で処置することにより角層のバリア機能を低下させ、当該箇所に候補物質を適用して抗シワ作用の有効性を評価する方法が記載されている。
【0005】
一方、近年の研究により、皮膚の角層におけるタンパク質の酸化が、皮膚の加齢による老化や紫外線照射による光老化と関連していることが示唆され、角層中の酸化されたタンパク質(以下「酸化タンパク質」)が、皮膚の透明性、保水性、柔軟性や弾力性を評価する指標となりうることが示されている(特許文献2及び3)。しかしながら、角層中の酸化タンパク質とシワ形成との関係については未だ解明されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−68832号公報
【特許文献2】特開2005−249672号公報
【特許文献3】特開2006−349372号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「新化粧品学」第2版、光井武夫編、2001年、第45〜47頁、南山堂
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって本発明における課題は、皮膚角層中の酸化タンパク質とシワ形成性との関係を解明するとともに、通常は加齢に伴って増加する角層中の酸化タンパク質を強制的に増加させ、当該部位においてシワを強制的に再現し、その結果生じる皮膚形状の変化を測定することにより、皮膚のシワ形成のし易さを適切に評価できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、皮膚に酸化処理を施すことによって角層酸化タンパク質を人為的に増加させた場合に、シワが形成し易くなり、なおかつシワが固定され易くなる現象を確認した。そして、酸化処理した皮膚を圧縮及び/又は屈曲させて強制的に形成させたシワの形状を測定することにより、シワになり易さを評価することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、皮膚の所定部位に酸化剤を適用し、次いで前記酸化剤を適用した部位を含む皮膚を圧縮及び/又は屈曲させてシワを形成させ、形成されたシワの形状を測定することにより得られるパラメータにより、シワの形成し易さを評価する方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によれば、例えば同一人の酸化した皮膚及び酸化していない皮膚において圧縮及び/又は屈曲によりシワを形成し、形成されたシワ形状を測定することによって当該人における将来のシワ形成のし易さを評価することができるため、例えば化粧品等の販売におけるカウンセリングサービスを実施する上での貴重な情報が得られる。さらに、抗シワ剤を適用した皮膚に本発明の方法を実施することにより、当該抗シワ剤の有効性を評価することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の評価方法において、(a)圧縮によりシワを形成する、(b)屈曲によりシワを形成する工程を説明する模式図である。
【図2】実施例1において、圧縮によるシワ形成前後の皮膚表面形状を示すパラメータ(Ra及びRmax)の変化を示すグラフである。
【図3】実施例1において、圧縮によるシワ形成前後の皮膚表面の形状を示す写真である。
【図4】実施例1において、屈曲によるシワ形成前後の皮膚表面形状を示すパラメータ(Ra及びRmax)の変化を示すグラフである。
【図5】実施例1において、屈曲によるシワ形成前後の皮膚表面の形状を示す写真である。
【図6】実施例1において、酸化処理有無の皮膚における酸化タンパク質量、柔軟性、弾力性の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の評価方法を詳細に説明する。
本発明にあっては、まず、皮膚の所定部位に酸化剤を適用して酸化させ、角層酸化タンパク質を増加させる。本発明で使用される酸化剤は当業者に知られたものであってよく、例えば、次亜塩素酸ナトリウム;リノール酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、スクワレン等の不飽和脂肪酸またはその過酸化物;アクロレイン等のアルデヒド類などを挙げることができる。
【0014】
本発明の酸化剤は、例えば、上記したような酸化剤を含浸させたパッチの形態で皮膚の所定部位に貼り付けるようにしてもよいし、皮膚の所定部位に直接塗布するようにしてもよいが、皮膚に対して所定時間に渡って酸化剤を作用させるために、酸化剤パッチの形態で適用するのが好ましい。
【0015】
本発明で使用する酸化剤パッチは、特に限定されないが、例えば直径1インチ程度のパッチに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を含浸させたもの等が好ましく使用される。
本発明において酸化剤を適用する時間(前記「所定時間」)は、角層タンパク質を酸化するのに十分な時間であれば特に限定されず、連続的でも間欠的でもよい。
例えば、1日に約10分間ずつ洗浄した皮膚の所定部位に酸化剤パッチを貼り付けた後に皮膚を洗浄する操作を2日間繰り返すことにより本発明の酸化処理を好適に実施することができる。
【0016】
本発明の方法では、次に、酸化した部位を含む皮膚に強制的にシワを形成させる。シワを形成させる方法としては、皮膚を圧縮してシワ形成する方法と、皮膚を屈曲させた状態で所定時間固定してシワ形成する方法とがある。
【0017】
皮膚を圧縮してシワ形成する方法の一例を、図面を参照して説明する。
まず、図1(a)に示すように、2枚の平板(1、2)を酸化剤パッチでの酸化部位(10)を挟むように配置する。図1の例では、平板(1、2)は、可動に設けられた支持材(3、4)によって互いに連結され、横方向にずれることなく並進可能なようにされている。
当該2枚の平板(1、2)を皮膚に押しつけた状態で、一方又は両方の平板を互いに近づく方向に並進させることにより、平板(1、2)に挟まれた皮膚がシワを形成される。
【0018】
次いで、圧縮されてシワが形成された状態(図1(a)における右側の状態)において、平板(1、2)及び支持材(3、4)に囲まれた部分の皮膚表面形状のレプリカを採取し、当該レプリカを用いてシワ形状を測定する。
レプリカを用いたシワ形状の測定は、例えば、「化粧品機能評価法ガイドライン」(日本香粧品学会誌、第30巻、第4号別冊、2006年、第316〜332頁)に記載されている手法により行うことができるが、簡便性の観点から、ISO標準表面粗さパラメータの測定を採用するのが好ましい。本発明では、当該測定によって得られるRa(平均深さ)及びRmax(最大深さ)の値を、シワの程度を表すパラメータとして採用する。
この圧縮によるシワ形成は、顔面でいえば表情の変化によって一過性に形成されるシワを再現したものと擬制することができる。
【0019】
次に、皮膚を屈曲させてシワを形成する方法の一例を説明する。
図1(b)に示すように、酸化部位(10)を挟む皮膚を両側からつまんで屈曲させた(折り畳んだ)状態で粘着テープ21を貼り付けて固定する。固定した状態で所定時間(例えば1時間)経過後、前記テープを剥がし、屈曲させた部位の皮膚表面形状のレプリカを採取して、上記と同様にして測定を行い、パラメータRa及びRmaxを得る。
この屈曲によるシワ形成は、一過性のシワ形成が繰り返されることにより固定化された定着シワを再現したものと擬制することができる。
【0020】
本発明の評価方法は、同一被験者の酸化していない皮膚に対しても、上記した圧縮及び/又は屈曲によるシワ形成を実施し、形成されるシワの程度を測定して、酸化した皮膚で得られたパラメータ(Ra及びRmax)と酸化しない皮膚で得られたパラメータ(Ra及びRmax)とを比較することを更に含むのが好ましい。
【0021】
酸化の有無によりパラメータに顕著な差が生じる場合、当該被検者の皮膚は、加齢等による皮膚の変化(酸化タンパク質の増加を含む)によってシワを形成し易くなる傾向があると考えることができる。将来的にシワが現れやすい部位や形状などが推定できれば、当該被検者は、該当部位を例えば日光(紫外線)を含む外的刺激から保護するように注意することができ、それにより抗シワ剤等を用いなくてもシワの予防に役立てることも可能となる。
【0022】
また、本発明の評価方法は、酸化剤の適用の前又は後に、抗シワ剤となりうる候補物質を適用することを含んでいてもよい。候補物質の有無により得られるパラメータの増減に基づいて、使用した候補物質の抗シワ剤としての有効性を評価することが可能である。
【0023】
本発明の評価方法は、ヒトの皮膚の任意の部位において実施することができるが、簡便性を考慮すると、例えば前腕内側の皮膚において実施するのが好ましい。また、酸化した場合と酸化しない場合とを比較する方法にあっては、例えば、右腕において酸化剤を用いた方法を実施し、左腕の対応部位において酸化剤を用いない(コントロールの)方法を実施することができる。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
無作為に抽出した10名の被検者について、両方の腕の前腕内側の皮膚を洗浄した後、皮膚表面(角層)の酸化タンパク質量、水分量、水分蒸散量(TEWL)、及びキュートメーターによる粘弾性測定(以下、まとめて「機器測定」と呼ぶ)を行った。
次いで、一方の腕の当該部分に直径1インチの酸化剤パッチ(次亜塩素酸ナトリウム水溶液含浸パッチ)を貼り付け、10分経過後にパッチを剥がして洗浄した(day0)。次の日に、同被検者に対してday0と同じ処理(洗浄、機器測定、酸化剤貼り付け御剥離、洗浄)を実施した(day1)。
【0025】
更に次の日(day2)に、day0と同じ機器測定をした後、図1(a)に示したような器具を用いて圧縮シワを形成し、皮膚の表面形状を測定してパラメータ(Ra及びRmax)を得た。引き続き、同一部位の皮膚を図1(b)に示すように屈曲させてテーピングテープにて固定したまま1時間保持し、テープを剥離した直後の皮膚表面形状を測定してパラメータ(Ra及びRmax)を得た。
【0026】
図6に示したように、酸化剤パッチを貼り付けた皮膚では酸化タンパク質量が増加しており、酸化していない皮膚(コントロール)に比較して、皮膚の柔軟性及び弾力性が低下していた。
【0027】
本発明の方法における圧縮によるシワ形成を実施した結果を図2に示す。酸化した皮膚では、酸化しない皮膚(コントロール)に比較して、圧縮により形成されるシワの平均深さ(Ra)及び最大深さ(Rmax)ともに増大した。図3は、それらの皮膚の外観を示す写真である。酸化処理した皮膚の方が明らかに顕著なシワが形成されている。
【0028】
また、屈曲によるシワ形成を実施した結果を図4に示す。圧縮した場合と同様に、酸化した皮膚では、酸化しない皮膚(コントロール)に比較して、屈曲により形成、固定されるシワの平均深さ(Ra)及び最大深さ(Rmax)ともに増大した。図5は、それらの皮膚の外観を示す写真である。酸化処理した皮膚の方が波打つようなシワが形成されている。
【0029】
以上の結果から、皮膚表面(角層)が酸化されることにより、一過性のシワが形成され易くなり、なおかつ形成されたシワが固定化、定着され易くなることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の評価方法によれば、酸化の有無による皮膚表面形状の変化のし易さ、その定着し易さを測定することができる。従って、本発明の方法は、将来定着シワが現れやすい部位や定着シワの程度を推定するのに用いることもできる。従って、各個人に適した美容処理のための基礎情報を獲得するために使用することができる。さらに、本発明の方法を用いれば、将来生じ得るシワを適切に改善するための抗シワ剤の評価に用いることもできる。また、抗シワ剤となる候補薬剤を適用する工程を加えることにより、当該薬剤の抗シワ効果の有効性評価にも使用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1、 2:平板、3、4:支持材、10:酸化部位、20:粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の皮膚の所定部位に酸化剤を適用し、次いで前記酸化剤適用部位を含む皮膚表面を圧縮する及び/又は屈曲させることにより強制的にシワを形成させ、形成されたシワの深さを測定することを特徴とする、シワの形成し易さの評価方法。
【請求項2】
前記圧縮によるシワ形成が、前記酸化剤適用部位を挟むように平行に配置した2枚の平板を皮膚に押し付けながら平板の一方又は両方を互いに接近する方向に並進させることにより実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記屈曲によるシワ形成が、前記酸化剤適用部位を含む皮膚をつまんで折り畳んだ状態で固定し、所定時間経過後に折り畳みを解除することにより実施されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化剤の適用が、酸化剤を含浸させたパッチを皮膚に貼り付けることにより実施される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化剤が次亜塩素酸であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
同一被験者の皮膚の酸化していない部位に対して、当該部位の皮膚表面を圧縮する及び/又は屈曲させることにより強制的にシワを形成させ、形成されたシワの深さを測定することを更に含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シワを形成する部位に、抗シワ剤を適用することを更に含み、抗シワ剤を適用した場合に形成されるシワの深さが適用しない場合のしわの深さより小さい場合、当該抗シワ剤が有効であるとすること特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−101663(P2011−101663A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256662(P2009−256662)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】