説明

シワ改善剤、脂肪分解促進剤、皮膚外用組成物及び飲食物組成物

【課題】皮膚を皮膚科学的及び美容的に健やかな状態に保つ効果を有するシワ改善剤、該シワ改善剤を配合した皮膚外用組成物、並びに、肥満の抑制もしくは防止に有効な皮膚外用組成物及び飲食品組成物の提供。
【解決手段】一般式(1)


[式中、Rは、水素原子又は炭素数2〜20のアシル基である]で示される化合物、あるいは、ギニアショウガより得られる抽出物及び/又は該抽出物のアシル化処理物を有効成分として配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老化に伴い、特に露光部位に発生するシワの改善効果に優れ、皮膚を皮膚科学的及び美容的に健やかな状態に保つ効果を有するシワ改善剤、及び該シワ改善剤を配合した皮膚外用組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、全身もしくは局所の脂肪組織の減少を促進することによる肥満体質の改善、又は同組織の増大を防止することによる肥満の抑制もしくは防止に有効な皮膚外用組成物及び飲食品組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトをはじめとするすべての生物の臓器は、誕生して成長した後、加齢と伴に徐々に衰え、やがて機能停止し、機能停止した部分がある一定以上になると死に至る。その機能が徐々に衰えて行く状態を老化と呼んでいる。皮膚は、まわりの環境から直接影響を受けており、生体内部の環境を維持する重要な機能を持っているため全てが機能停止に至ることはあまりないが、シワ、シミ、くすみ、タルミなど老化徴候が顕在化しやすい臓器であり、日光に暴露される露光部位ではそれが特に顕著である。
【0004】
皮膚の老化が進行すると、酸化ストレスなどの刺激に対する防御能が弱まり、それが皮膚内部環境を乱す原因となり、さらに老化を進める。特に、露光部位は紫外線照射などが原因となる強い酸化ストレスに常に曝されていることから、老化の進行が顕著である。このような皮膚の変化を光老化と呼んでおり、そのような皮膚では、真皮の大多数を占める構成成分であるコラーゲンが減少することにより皮膚表面でシワが深く大きくなるなど、美容上も好ましくない状態が生じる。
【0005】
光老化が進行した結果生じるシワに対して改善効果を有する物質として、米国ではレチノイン酸が処方箋薬として用いられているが、副作用が強く安全性にも問題があるため、我が国では承認に至っていない。また、体内に吸収された後レチノイン酸に転換され効果を発揮すると言われているレチノール(ビタミンA)や、抗酸化及びコラーゲン合成促進効果を持つアスコルビン酸(ビタミンC)、抗酸化効果の強いトコフェロール(ビタミンE)などがシワ改善物質として提案されているが、これらには十分に満足する効果が得られないという欠点があった。従って、これまでは、シワを改善する物質として、十分に満足な効果を示し、安全性も有するものはなかった。
【0006】
また、従来のシワ改善剤は、化学合成によるものが多く、安全性の面からも多くの問題があった。一方、安全性の問題の生じにくい天然物質については、ビタミン類を除きほとんど知られておらず、しかも充分に効果を発揮するものは得られていなかった。さらに、レチノールなどの天然のシワ改善剤は、光安定性に著しく欠けるものが多く、たとえ効果を有していても、製剤中で速やかに分解されるなど、製剤への配合が困難な物質がほとんどであった。
【0007】
一方、体脂肪は、消費エネルギーに対する摂取エネルギーの過剰分が、内臓周囲や皮下に存在する白色脂肪組織の中に脂肪として蓄積されることにより形成されるものである。体脂肪が過剰に蓄積した、いわゆる肥満は、美容上好ましくないばかりでなく、動脈硬化等の様々な疾病を引き起こし、健康上も好ましくない。最近、過食、運動不足、ストレス等による肥満が増加しており、体脂肪の減少又は蓄積の防止が重要な問題となっている。特に女性においては外見上からもスリムで引き締まった身体を切望する傾向が強い。
【0008】
肥満防止作用を有する物質としては、トウガラシ等に含まれるカプサイシン類が、血中のアルブミンと結合し、副腎からのエネルギー代謝を促進するホルモンの分泌を促し、肝臓や脂肪細胞における脂肪分解を活発化させることが知られている(非特許文献1参照)。しかしながら、カプサイシン類は強い刺激を有しているため、その用途や使用量が制限されるという問題があった。
【0009】
本発明者等は、ラズベリーケトンやジンゲロン及びその誘導体が脂肪組織に蓄積された脂肪の分解を促進し、肥満の抑制、又は肥満体質の改善に有効であることを見出した(特許文献1参照)。しかしながら、ラスベリーケトンやジンゲロンは特有の芳香を有しているために、配合量や汎用性の点で必ずしも満足できるものではなかった。
【0010】
一方、ショウガ科植物であるギニアショウガ(Aframomum melegueta)は、西アフリカを中心とした熱帯地方に自生し、「マニゲット」又は「グレインオブパラダイス」などの名前で、香辛料として利用されている。ギニアショウガは、料理の風味付けやフレーバーとしての利用はされているが、その抽出物を用いた、シワ改善剤や皮膚外用組成物についての検討はなされていなかった。
【0011】
パラドール[1−(4′−ヒドロキシ−3′−メトキシフェニル)−3−デカノン]は、上記ギニアショウガの種子抽出物の特定画分に含まれている成分として報告されており、化学式:
【化1】


で示される既知物質である(特許文献2参照)。特許文献2では、パラドールは、他の類縁化合物と共にシロアリ防除剤としての提案がなされているが、シワの改善効果、脂肪分解促進効果もしくは痩身効果などについては記載されておらず、これらの効果についてはこれまで何の検討もなされていなかった。
【0012】
これまでショウガ抽出物中のジンゲロール、ショーガオールに関しては、これらを有効成分とした角層修復促進剤が提案されている(特許文献3参照)。しかしながら本発明におけるパラドールは前述のように、特定のショウガ科植物に含まれている成分であり、一般的なショウガ(生姜)にはほとんど含まれていないため、一般的なショウガの有効成分としては提案されていなかった。
【0013】
上記事情において、老化により、特に露光部位で顕著に顕在化するシワの改善効果に優れ、美容的にも健やかな皮膚に保つ効果に優れ、安全性や安定性にも優れたシワ改善剤及び皮膚外用組成物の開発が求められていた。また、有効な脂肪分解促進効果を有し、かつ刺激や特有の芳香を持たず、配合量や用途の設定が自由な脂肪分解促進剤、並びに脂肪分解効果に優れ、香味や芳香等の嗜好性の点でも優れた皮膚外用組成物及び飲食品組成物の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−169325号公報
【特許文献2】特開平10−152404号公報
【特許文献3】特許第3164455号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】岩井和夫及び中谷延二著、「香辛料成分の食品機能」、97頁、1989年
【0016】
本発明者らは、上記事情に鑑みて鋭意研究を行った結果、ショウガ科植物であるギニアショウガ(Aframomum melegueta)、特にその種子から得られる抽出物及びそのアシル化処理物、ならびに該抽出物に含まれる成分であるパラドール及びそのアシル化誘導体が、老化に伴い、特に露光部位に発生するシワの改善効果に優れ、皮膚を皮膚科学的及び美容的に健やかな状態に保つ効果を有すると共に安全性や安定性にも優れていること、そして、全身もしくは局所の脂肪組織の減少を促進することによる肥満体質の改善、又は同組織の増大を防止することによる肥満の抑制もしくは防止に有効であり、また嗜好性を損なう刺激や芳香が抑えられた優れた素材であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の概要】
【0017】
即ち、本願発明は、下記一般式(1)
【化2】


[式中、Rは、水素原子又は炭素数2〜20のアシル基である]
で示される化合物を有効成分とするシワ改善剤、ならびにギニアショウガより得られる抽出物及び/又は該抽出物のアシル化処理物を有効成分とするシワ改善剤に関する。
【0018】
本願発明は、また上記一般式(1)で示される化合物を有効成分とする脂肪分解促進剤、ならびにギニアショウガより得られる抽出物及び/又は該抽出物のアシル化処理物を有効成分とする脂肪分解促進剤に関する。
【0019】
本願発明は、また上記一般式(1)で示される化合物を含有する、皮膚外用組成物、ならびにギニアショウガより得られる抽出物及び/又は該抽出物のアシル化処理物を含有する、皮膚外用組成物に関する。
【0020】
本願発明は、さらにまた上記一般式(1)で示される化合物を含有する、飲食品組成物、ならびにギニアショウガより得られる抽出物及び/又は該抽出物のアシル化処理物を含有する飲食品組成物に関する。
【0021】
本発明のシワ改善剤及び皮膚外用組成物は、老化に伴い、特に露光部位に発生するシワの改善効果に優れ、皮膚を皮膚科学的及び美容的に健やかな状態に保つ効果を有すると共に安全性や安定性にも優れている。また、本発明の脂肪分解促進剤、皮膚外用組成物、及び飲食品組成物は、全身もしくは局所の脂肪組織の減少を促進することによる肥満体質の改善、又は同組織の増大を防止することによる肥満の抑制もしくは防止に有効であり、また嗜好性を損なう刺激や芳香が抑えられているため、痩身効果に優れるだけでなく、使用感や嗜好性の点においても顕著に優れている。また、本発明において使用されるパラドールは、ギニアショウガ等の天然物素材から容易に抽出精製することができるため、安全性の面からも優れた組成物を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】精製パラドールのマススペクトルを示す図である。
【図2】精製パラドールの13C−NMRスペクトル(100 MHz、CDCl3)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳説する。本発明に用いるショウガ科植物であるギニアショウガ(Aframomum melegueta)は、西アフリカを中心とした熱帯地方に自生し、「マニゲット」又は「グレインオブパラダイス」などの名前で知られており、香辛料として利用されている。本発明において用いる抽出物は、ギニアショウガの植物体、特に種子を抽出材料として、公知の方法により抽出することにより得ることができる抽出物である。抽出に用いる溶媒としては、特に限定はないが、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の低級アルコール又は含水低級アルコール、或いは1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール又は含水多価アルコール、或いはアセトン、酢酸エチル、ヘキサン等の各種有機溶媒を用いることができる。
【0024】
抽出素材として用いる植物体の部位は、特に限定はないが、より効率的に目的とする抽出物が得られることから、種子を用いるのが好ましい。
【0025】
得られた抽出物は、そのまま使用しても良いし、必要に応じて、濃縮又は乾固、或いは希釈等の操作により、望ましい形態や性状とすることが可能である。
【0026】
また、抽出物のアシル化処理物は、抽出物をアシル化したもので、後述の一般式(1)で示される化合物の製法において記載するようなアシル化反応を用いることによりギニアショウガ抽出物から得ることができる。
【0027】
本発明に用いる上記一般式(1)で示される化合物のうちRが水素原子である化合物であるパラドール[1−(4′−ヒドロキシ−3′−メトキシフェニル)−3−デカノン]は、前述したように、式:
【化3】


で示される化合物であって、ギニアショウガの抽出物に含まれる成分である。本発明で用いるパラドールは、ジンゲロンからの一般的な有機合成法を用いて合成する他、ショーガオールを水素添加することにより得ることができるが(東化理科報I,16,589,1927)、特に合成方法に限定はない。
【0028】
また、パラドールは、ギニアショウガ、特にその種子を抽出材料として、公知の方法により抽出、精製することにより得ることができる。上述したように、ギニアショウガは西アフリカを中心とした熱帯地方に自生し、香辛料として入手が可能である。抽出溶媒としては、上記と同様に、有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の低級アルコール及び含水低級アルコール或いは、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール等及び含水多価アルコール、或いはアセトン、酢酸エチル、ヘキサン等の各種有機溶媒を用いることができる。特に抽出物中のパラドール濃度を挙げるためには、低極性溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタンなどを使用するのがより好ましい。
【0029】
得られたギニアショウガ抽出物からパラドールを精製するには、公知の精製手段を用いればよく、例えばシリカゲルクロマトグラフィーなどを使用して精製することが可能である。
【0030】
また、上記一般式(1)で示される化合物のうちRが炭素数2〜20のアシル基である化合物においては、炭素数2〜20のアシル基とは、基R′−CO−を意味し、ここでR′は、不飽和結合を有していてもよい炭素数1〜19の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基、又はフェニル、ナフチルなどのアリール基、もしくは窒素原子、イオウ原子及び酸素原子から選択されるヘテロ原子を環員として含むピリジル、イミダゾリル、チエニル、フリルなどのヘテロアリール基を表す。これらの基は、アミノ基等の官能基を有するものであってもかまわない。炭素数2〜20のアシル基として具体的には、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ヘキサノイル、ラウロイル、パルミトイル、オレオイル等を挙げることができるが、特にアセチルであることが望ましい。このようなRが炭素数2〜20のアシル基である式(1)の化合物は、フェノール化合物のアシル化として既に公知の方法を用いて合成することができる。例えば、上述したような方法により得られたパラドール[1−(4′−ヒドロキシ−3′−メトキシフェニル)−3−デカノン]と、所望のアシル基を有する酸クロリド又は酸無水物とを、ピリジン中において反応させることにより、容易に得ることができる。また、触媒量の塩基の存在下、カルボン酸と反応させても良い。
【0031】
さらに、パラドールを公知の方法により誘導体化したもの、例えば芳香環の4位の水酸基の部分で配糖体化したもの、ケトン基を還元したもの等も、パラドールに準ずるものとして、本願発明において利用することが可能である。
【0032】
本願発明においては、上記一般式(1)で示される化合物、ならびにギニアショウガ、特にその種子より得られる抽出物及び/又は該抽出物のアシル化処理物は、シワ改善剤として用いることができる。抽出物を用いる場合は、そのまま使用しても良いし、必要に応じて、濃縮又は乾固、或いは希釈等の操作により、望ましい形態や性状とすることが可能である。
【0033】
本願発明において一般式(1)で示される化合物、ならびにギニアショウガ、特にその種子より得られる抽出物及び/又は該抽出物のアシル化処理物をシワ改善剤として皮膚外用組成物に配合する場合、その配合量は、皮膚外用組成物の総量を基準として、パラドールに換算した場合の配合量が0.001〜10.0質量%(以下、単に%と記する)が好ましく、特に好ましくは、0.01〜8.0%、更に特に好ましくは0.05〜5%、最も好ましくは0.1〜3%である。0.001%未満の配合量では、本発明の目的とする効果が十分でなく、一方、10.0%を越えて配合しても、その増加分に見合った効果の上昇がなく好ましくない。
【0034】
またシワ改善剤として皮膚外用組成物に配合する場合、従来シワ改善効果が知られているレチノール、アスコルビン酸、トコフェロール等の成分を併用すると、シワ改善効果を相補したり、相乗効果が期待できるので好ましい。
【0035】
本願発明においては、上記一般式(1)で示される化合物、ならびにギニアショウガ、特にその種子より得られる抽出物及び/又は該抽出物のアシル化処理物は、脂肪分解を促進する脂肪分解促進剤として、皮膚外用組成物や飲食品組成物に配合することが可能である。
【0036】
一般式(1)で示される化合物、ならびにギニアショウガ、特にその種子より得られる抽出物及び/又は該抽出物のアシル化処理物を、脂肪分解促進剤として皮膚外用組成物及び飲食品組成物に配合する場合、その配合量は製剤の形態によっても種々異なり一概に規定できるものではないが、例えば、該組成物の総量を基準として、パラドールに換算して、0.001〜10.0質量%(以下、単に%と記する)が好ましく、特に好ましくは、0.01〜8.0%、更に特に好ましくは0.05〜5%、最も好ましくは0.1〜3%である。0.001質量%未満では本発明の効果を奏しない場合があり、10質量%を越えて配合すると、刺激感が強くなり、官能特性や嗜好性が損なわれる場合がある。また、特に飲食品組成物においては、成人1人当たりの摂取量は、パラドールに換算して20〜1000mg、好ましくは100〜200mgである。
【0037】
また、本発明の脂肪分解促進剤としての皮膚外用組成物又は飲食品組成物には、他の肥満抑制又は防止作用を有する成分であるラズベリーケトン、ジンゲロン、4−(3′,4′−ジヒドロキシフェニル)−2−ブタノンやシネフリン等を適宜組み合わせて配合し、その効果を増強あるいは補強させるなどしてもよい。
【0038】
また、本発明の脂肪分解促進剤としての皮膚外用組成物及び飲食品組成物には、ブトパミン、イソプロテレノール等のβアドレナリン作用興奮剤、ヨヒンビン、エルゴトキシン等のα2アドレナリン作用抑制剤、テオフィリン、カフェイン等のキサンチン誘導体、ミルリノン、アムリノン等のビピリジン誘導体等も配合することができる。
【0039】
さらに本発明の皮膚外用組成物及び飲食品組成物には、必要に応じて本願発明の効果を損なわない範囲で、通常用いるところの各種成分を配合することができる。皮膚外用組成物の場合、例えば油分、顔料、香料、界面活性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、抗炎症剤、殺菌剤、色素、防腐剤、抗酸化剤等の通常皮膚外用組成物に配合される成分を配合することができ、飲食品組成物の場合、例えば賦型剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料等の成分を配合することができる。
【0040】
本発明の皮膚外用組成物としては、皮膚化粧料はもとより、医薬品や入浴剤等も相当する。剤型は特に限定されるものではないが、皮膚外用組成物の場合には、化粧水(ローション)、皮膚塗布用、浴用又は洗浄用等のクリーム、乳液、ジェル、パック、スティック、シート、パップ、粉末、液体、顆粒等が挙げられる。飲食品組成物の場合には、錠剤、錠菓、丸剤、糖衣錠、粉末状、顆粒状、茶状、ティバッグ状、ハードカプセル、ソフトカプセル、チューインガム、チョコレート、キャンディ、グミゼリー、飲料、スープ、アイスクリーム、麺類、ベーカリー食品等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例に基いて本願発明を詳説するが、これら実施例によって本願発明が限定される訳ではない。尚、実施例中の%は、特に断らない限り、全て質量%である。
【0042】
製造例1(ギニアショウガ抽出物の製造)
ギニアショウガ(Aframomum melegueta)の乾燥種子2gをミキサーにて粉砕した後、アセトン20mlに24時間浸漬して抽出した。得られた抽出液を減圧下にて濃縮、乾固させ、ギニアショウガの種子より得られる抽出物を0.1g得た。本抽出物を、以下「ギニアショウガ抽出物」と称す。HPLCによる分析の結果、このギニアショウガ抽出物は、パラドールを55%含有していた。
【0043】
製造例2(パラドールの製造)
ギニアショウガ(Aframomum melegueta)の乾燥種子100gをミキサーにて粉砕した後、ヘキサン2Lに24時間浸漬させた。得られた抽出液を減圧下にて濃縮、乾固させ、抽出物を2.0g得た。さらに抽出物を、関東化学社製シリカゲル60N(100−210μm)を用いたシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(9:1))により分画し、精製パラドールを約500mg得た。
(パラドールの同定)
精製したパラドールは、GC−MS及び13C−NMR(100 MHz、CDCl3)により確認し、以下の結果を得た。
GC−MSにより、分子イオンピーク(M)[m/z;278]を確認した(図1参照)。13C−NMRにより、次のシグナル[δ(ppm);14.0、22.5、23.7、29.1、29.4、31.2、43.0、44.5、55.7、111.1、114.3、120.6、133.0、143.8、146.4、210.7]を検出した(図2参照)。
【0044】
製造例3(アセチル化ギニアショウガ抽出物の製造)
製造例1で得られたギニアショウガ抽出物1.0gとピリジン1.0ml及び無水酢酸30mlを混合し、室温下で24時間攪拌した。その後、水を加えたのち、酢酸エチルにて抽出し、アセチル化処理した抽出物を1.2g得た。本処理物を、以下「アセチル化ギニアショウガ抽出物」と称す。
【0045】
製造例4(パラドールの製造)
バニリン10g(6.5mmol)と2−ノナノン9.3g(6.5mmol)をヘキサン30ml、ジエチルエーテル20ml中で撹拌し、溶解させた。さらに、酢酸3.9gを加えた後、ピペリジン4.6ml(6.5mmol)を加え、6時間撹拌した。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液にて未反応のバニリンを除去し、ジエチルエーテルにて抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、粗生成物20.2gを得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO2/CHCl3)で精製し、(E)−1−(4′−ヒドロキシ−3′−メトキシ−フェニル)デカ−1−エン−3−オンを得た(17.94g、収率90%)。
さらに、得られた(E)−1−(4′−ヒドロキシ−3′−メトキシ−フェニル)デカ−1−エン−3−オン10g(36mmol)をエタノール100mLに溶かし、この溶液にパラジウムカーボン(5%パラジウム)1gを加えて、水素雰囲気下(常圧)、常温で一晩攪拌した。不溶物を濾過した後、ろ液を減圧下で濃縮し、粗生成物9.8g得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO2/CHCl3)で精製し、1−(4′−ヒドロキシ−3′−メトキシ−フェニル)−3−デカノンを(5.6g、収率58%)得た。
【0046】
実施例1〜3(ギニアショウガ抽出物、パラドール、アセチル化ギニアショウガ抽出物のシワ改善効果)
製造例1〜3で得られたギニアショウガ抽出物、パラドール又はアセチル化ギニアショウガ抽出物を、50%エタノール水溶液を基剤として、それぞれ1.0%配合した試料を調製し(実施例1、2又は3)、光老化させた皮膚に対するシワ改善効果を以下の試験方法により調べた。
【0047】
(試験方法)
1.試験動物
試験開始時10週齢のヘアレスマウス1群10匹を用いた。
2.シワ改善効果の評価方法
2−1.光老化条件
光老化は、UVAとUVBを1日1回、週5回、8週間照射することで誘発させた。照射量は、UVAが20J/cm2、25J/cm2、30J/cm2、UVBが20J/cm2、30J/cm2、40J/cm2と、1週毎に照射量を増量し、3週目以降は最大量を照射した。
2−2.評価方法
シワ改善効果はシワスコア及び真皮コラーゲン量により評価した。シワスコアは、Bissettらの方法(Photochem Photobiol,46:367-378,1987)に従って採点した。即ち、シワの大きさ及び深さを肉眼で総合的に評価し、「大きく深いシワが確認できる」を3、「シワが確認できる」を2、「シワが確認できない」を1、「正常なキメが観察される」を0と4段階で採点した。真皮コラ−ゲン量は、全層皮膚を採取してポリトロンホモジナイザー(KINEMATICA社製)で破砕後、コラーゲン画分を抽出して酸加水分解後、ヒドロキシプロリン含有量をアミノ酸分析装置(日本分光製)を用いて定量することにより測定した。1cm2当たりのヒドロキシプロリン量を真皮コラーゲン量の相対的指標とした。
3.試験操作
50%エタノール水溶液を基剤として、ギニアショウガ抽出物(製造例1)、パラドール(製造例2)又はアセチル化ギニアショウガ抽出物(製造例3)を、それぞれ1.0%(パラドール濃度としては0.55%、0.8%、アセチルパラドール濃度として0.5%)となるように配合した試料を調製した(実施例1、2又は3)。尚、基剤のみのものを比較例とした。これら評価試料0.1mlをヘアレスマウスの背部皮膚(直径約2.5cm)に1日1回、1週間に5回の頻度で、UV照射開始後5週目から照射終了後4週目まで塗布した。そして、最終塗布終了後にシワスコアを採点した。屠殺後、皮膚を採取し、コラーゲン含有量(1cm2当たりのヒドロキシプロリン量)を測定した。
【0048】
(試験結果)
実施例1〜3のシワ改善剤のシワ改善効果を、シワスコア値及び真皮コラーゲン量により評価した結果を以下に示す。
【0049】
(シワスコア評価結果1)
【表1】

【0050】
(シワスコア評価結果2)
【表2】

実施例1〜3のギニアショウガ抽出物、パラドール又はアセチル化ギニアショウガ抽出物を有効成分とするシワ改善剤塗布群は、比較例1又は2の基剤のみ塗布群と比較して、低いシワスコア値を示し、本願シワ改善剤が有効であることを示した。
【0051】
(コラーゲン含有量評価結果)
【表3】

【0052】
実施例1のギニアショウガ抽出物を有効成分とするシワ改善剤塗布群は、基剤のみの比較例1塗布群と比較して、高いコラーゲン含有量(ヒドロキシプロリン量)を示し、光老化により減少する真皮コラーゲン量に対し、本願シワ改善剤が有効であることを示した。
【0053】
以上の試験の結果から、実施例1〜3のギニアショウガ抽出物、パラドール、アセチル化ギニアショウガ抽出物を有効成分とする本願シワ改善剤が、光老化によるシワを改善する効果を有することが明らかである。
【0054】
また、製造例2で得たパラドールに替えて製造例4で得たパラドールを用いて上記と同様の方法で試験を行ったところ、同等の効果が得られた。
【0055】
実施例4 辛味の評価
製造例2で製造、精製されたパラドールの辛味について、官能評価を行なった。比較対象として唐辛子の辛味成分であるカプサイシンを用いた。パラドールとカプサイシンを蒸留水で希釈し、10-8mol/Lから10-3mol/Lの試験液を作成した。これらを濃度の低いほうから順に官能評価し、辛味を感じる濃度を閾値とした。下記の結果から分かるようにカプサイシンの閾値は10-7mol/L付近であるのに対し、パラドールは10-4mol/Lであり、パラドールの辛味はカプサイシンの辛味の1000分の1程度の弱い辛味であることが分かった。この結果は、本発明の飲食品組成物が、飲食に適していることを示している。
【0056】
【表4】


また、製造例2で得たパラドールに替えて製造例4で得たパラドールを用いて上記と同様の方法で試験を行ったところ、同等の効果が得られた。
【0057】
実施例5 脂肪分解促進効果
(試験方法)
大日本製薬(株)より購入したマウス3T3−L1細胞を、24穴培養プレートにEnslerらの方法に準じて(Ensler K. et al., Biochim. Biophys. Acta., 1581:36-48(2002))、5%(v/v)CO2雰囲気下、37℃で培養し、これを成熟脂肪細胞として試験に使用した。牛血清アルブミン及びノルエピネフリン(最終濃度3×10-8mol/L)を添加したDMEM培地に被験試料を所定濃度で添加した被験培地を調製し、前記成熟脂肪細胞を被験培地中で90分間反応させた。反応後、培地中に遊離したグリセロールをFキット・グリセロール(ロッシュ社製)を用いた酵素免疫測定法により定量した。
グリセロールの定量値をもとに、下式に従って脂肪分解促進率を算出し、脂肪分解促進効果の指標とした。
脂肪分解促進率(%)=[A/B]×100
(A:被験試料添加時のグリセロール量、B:コントロール(被験試料無添加)のグリセロール量)
【0058】
(試験結果)
製造例1及び2で製造したギニアショウガ抽出物及びパラドールの脂肪分解促進効果を、上記の脂肪分解試験にて評価した結果を以下に示す。比較対照としてジンゲロン及びカフェインを用いた。
【0059】
【表5】

【0060】
製造例1で得たギニアショウガ抽出物及び製造例2で得たパラドールの脂肪分解促進率は、比較例として用いたジンゲロン及びカフェインに比べはるかに高く、ギニアショウガ抽出物及びパラドールが高い脂肪分解促進作用を有することが明らかにされた。
また、製造例2で得たパラドールに替えて製造例4で得たパラドールを用いて上記と同様の方法で試験を行ったところ、同等の効果が得られた。
【0061】
実施例6 体重増加抑制試験
(試験方法)
ICR系マウス(雄性、4週齢)6匹を1群とする2群を用い、対照群には下記配合組成の高脂肪飼料を、試験群には高脂肪飼料に製造例1で得たギニアショウガ抽出物を1質量%配合した被験試料を、それぞれ6週間与えて飼育した。試験開始時及び開始後6週目に体重を測定し、体重増加量を指標にして、群間における差を評価し、体重増加抑制効果を判定した。尚、飼料及び水は自由摂取させた。
【0062】
(高脂肪飼料配合組成)
【表6】

【0063】
(試験結果)
結果を以下に示す。
【表7】

【0064】
上記の結果から明らかなように、高脂肪食摂取による体重増加量が、本発明の脂肪分解促進剤であるギニアショウガ抽出物を高脂肪飼料に配合することにより、有意に低下することが示された。
【0065】
本発明においては、一般式(1)で示される化合物、ギニアショウガ、特にその種子より得られる抽出物及び/又は該抽出物のアシル化処理物を配合することにより、各種の皮膚外用剤・飲食品組成物を提供することができる。以下にその例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
実施例7、8、比較例3(スキンローション)
下記組成のスキンローションを常法に従って調製し、それを試料として次の操作によって、シワ改善効果を評価した。目尻にシワのある健常人(女性、41〜65歳、実施例7又は実施例8のそれぞれに対して10名ずつ)を被検者として、実施例7若しくは8、及び比較例3のスキンローションそれぞれを、左右のどちらか一方に決めて、朝洗顔後、及び夕方入浴後の1日2回、2ヵ月間(60日)連続で目尻のシワの部分(各試料ごとに目尻を中心に約4cm2、2×2cm)に約0.2mlずつ塗布してもらった。そして最終塗布後に左右の目尻部分の皮膚(シワ)の状態に関しアンケートに答えてもらった。
【0067】
(組成)
【表8】

【0068】
アンケート結果をもとに、皮膚(シワ)の状態に関する各評価項目において、比較例3より実施例7又は8のスキンローションのほうが有効であると回答した人数を以下に示す。
【表9】

【0069】
本試験結果から、実施例7及び8のスキンローションは、比較例3と比較して明らかにシワを改善しており、さらに光老化により悪化する柔軟性や色調までもが改善されていた。また、本発明のスキンローションによる刺激や痒み等の皮膚の異常は認められなかった。
【0070】
また、製造例2で得たパラドールに替えて製造例4で得たパラドールを用いて上記と同様の方法で試験を行ったところ、同等の効果が得られた。
【0071】
実施例9(スキンクリーム)
下記組成のギニアショウガ抽出物及びパラドール又はアセチル化ギニアショウガ抽出物を配合したスキンクリームを常法により調製し、事前アンケートで目尻のシワを肌悩みとして挙げた20名の健常人(女性、50〜55歳)に、1日当たり約0.5g、1週間以上使用してもらい、アンケート調査を行った。
【0072】
(組成)
【表10】

【0073】
アンケート調査の結果を以下に示す。尚、結果は、各項目ごとに使用前と比較して使用後にそう思うと回答した人数で示した。
【表11】

【0074】
本試験結果により、実施例9のスキンクリームでは、ほぼ全員の被験者が、使用前と比較してシワが目立たなくなったと実感していることが示され、その要因としてシワの数よりもシワの大きさを軽減することで、光老化によるシワを改善したことが示された。また、本発明のスキンクリームによる刺激や痒み等の皮膚の異常は認められなかった。
【0075】
また、製造例2で得たパラドールに替えて製造例4で得たパラドールを用いて上記と同様の方法で試験を行ったところ、同等の効果が得られた。
【0076】
実施例10、11、比較例4〜7(チューインガム)
下記組成のチューインガムを製造し、20代で体脂肪率35%以上の女性各群30名にチューインガム(15g/日)を1ヶ月摂取させ、体脂肪率が元の体脂肪率よりも5%以上低下した場合を体脂肪減少者として評価した。
【0077】
【表12】

【0078】
【表13】


また、製造例2で得たパラドールに替えて製造例4で得たパラドールを用いて上記と同様の方法で試験を行ったところ、同等の効果が得られた。
【0079】
実施例12(錠菓)
下記組成で錠菓を製造し、1日3錠(0.5g/錠)を、上記実施例10及び11と同様の条件で被験者に摂取させて評価した。
【表14】

【0080】
【表15】

【0081】
上記評価結果から明らかなように、上記実施例の飲食品組成物(チューインガム及び錠菓)は、顕著な体脂肪率低下作用を示した。さらに本願飲食品組成物は摂取しやすく、嗜好性に優れ、長期でも飽きがこない、連食に適した飲食品組成物でもあった。
また、製造例2で得たパラドールに替えて製造例4で得たパラドールを用いて上記と同様の方法で試験を行ったところ、同等の効果が得られた。
【0082】
実施例13、14、比較例8、9(ジェル状痩身用皮膚化粧料)
以下に示す組成で、常法に従い、A、B各成分を個別に混合溶解後、B成分をA成分に添加し攪拌することにより、ジェル状痩身用皮膚化粧料を調製した。
【0083】
【表16】

【0084】
【表17】

【0085】
上記ジェル状痩身用皮膚化粧料を、被験者パネル各群20名の腹部及び大腿部それぞれに、約2gを1日2回、3週間連用塗布してもらい、痩身効果についてアンケートを行なった。上記評価結果に示すように、連用前と比較して、腹部、大腿部が引き締まったと回答した者の人数は、本発明のジェル状痩身用皮膚化粧料を用いたパネルではるかに多かった。また、使用時の芳香等の嗜好性、刺激等に関しても本発明のゲル状痩身用皮膚化粧料では特に問題はなかった。
【0086】
また、製造例2で得たパラドールに替えて製造例4で得たパラドールを用いて上記と同様の方法で試験を行ったところ、同等の効果が得られた。
本実施例で用いた香料の組成を下記表1に示す。
【表18】

【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明により、老化に伴い、特に露光部位に発生するシワの改善効果に優れ、皮膚を皮膚科学的及び美容的に健やかな状態に保つ効果を有すると共に安全性や安定性にも優れたシワ改善剤、及び該シワ改善剤を配合した皮膚外用組成物、ならびに全身もしくは局所の脂肪組織の減少を促進することによる肥満体質の改善、又は同組織の増大を防止することによる肥満の抑制もしくは防止に有効であり、また嗜好性を損なう刺激や芳香が抑えられた脂肪分解促進剤、該脂肪分解促進剤を配合した皮膚外用組成物及び飲食品組成物が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化4】


[式中、Rは、水素原子又は炭素数2〜20のアシル基である]
で示される化合物を有効成分とするシワ改善剤。
【請求項2】
Rが、水素原子である、請求項1に記載のシワ改善剤。
【請求項3】
ギニアショウガより得られる抽出物及び/又は該抽出物のアシル化処理物を有効成分とするシワ改善剤。
【請求項4】
下記一般式(1)
【化5】


[式中、Rは、水素原子又は炭素数2〜20のアシル基である]
で示される化合物を有効成分として含有する、シワ改善用皮膚外用組成物。
【請求項5】
Rが、水素原子である、請求項4に記載のシワ改善用皮膚外用組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の化合物を含有するギニアショウガより得られる抽出物及び/又は該抽出物のアシル化処理物を有効成分として含有する、シワ改善用皮膚外用組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−16827(P2011−16827A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198531(P2010−198531)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【分割の表示】特願2006−532660(P2006−532660)の分割
【原出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】