説明

シワ検出方法、シワ検出装置およびシワ検出プログラム、並びに、シワ評価方法、シワ評価装置およびシワ評価プログラム

【課題】被験者の顔を撮影した画像からシワを検出する際に誤検出を低減することができるシワ検出方法を提供する。
【解決手段】被験者の顔データを取得し、取得された顔データの所定の部位に解析領域を設定し、設定された解析領域に対して、顔の所定の部位毎に予め設定されたシワの延びやすい角度範囲内の一方向若しくは互いに異なる複数の角度で延びるシワ成分をそれぞれ抽出した複数のシワ成分抽出データを生成し、複数のシワ成分抽出データのそれぞれに対してシワ成分を強調した複数のシワ成分強調データを生成し、複数のシワ成分強調データを互いに合成した合成データを生成し、合成データにおいて所定の閾値以上の強度を有するシワ成分を被験者のシワとして検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シワ検出方法、シワ検出装置およびシワ検出プログラム、並びに、シワ評価方法、シワ評価装置およびシワ評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
シワは、顔の額、眉間、口元および目尻などの部位に多く発生し、発生する面積や数も人によって様々である。そこで、化粧品の分野では、各人のシワ状態に応じた化粧品を提供するために、顔の各部位に発生したシワを正確に検出することが試みられている。
例えば、特許文献1に提案されたシワの検出方法では、被験者のシワを転写したレプリカをカメラで撮影し、撮影された画像データに基づいてシワを検出している。このように、レプリカにシワを転写することにより、安定してシワの画像データを得ることが可能となる。しかし、被験者の顔にレプリカ剤を直接塗布してシワを転写する必要があり、被験者の負担が大きいため、被験者に直接接触することなくシワを検出することが望まれている。
【0003】
そこで、被験者に直接接触することなくシワを検出する技術として、例えば特許文献2に開示されているように、被験者の顔を撮影した画像データを、予め抽出された被験者のシワ情報に基づいて解析することが提案されている。また、非特許文献1には、非接触の3次元計測により、シワ周辺部の凹凸を示す高度データを解析することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−116146号公報
【特許文献2】特開2010−119431号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「シワ評価ガイドライン」、日本香粧品学会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に示される方法では、予め多くの被験者のシワ情報を抽出しておくことができれば、被験者のシワを高精度に検出することができるが、このシワ情報を予め取得するために多くの労力を要する。また、被験者の顔を撮影した画像には、顔の凹凸、目尻の影、肌の色ムラおよびシミなどの影響により、シワ以外にも暗い部分が多く存在するため、シワ以外の部分をシワとして誤検出してしまうおそれがある。
非特許文献1に示される方法においても、シワ以外の凹凸が多く存在するため、シワ以外の部分をシワとして誤検出してしまうおそれがある。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、被験者の顔を撮影した画像からシワを検出する際に誤検出を低減することができるシワ検出方法及び装置を提供することを目的とする。
また、この発明は、このようなシワ検出方法で検出されたシワを評価するシワ評価方法および装置を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るシワ検出方法は、被験者の顔データを取得し、取得された顔データの所定の部位に解析領域を設定し、設定された解析領域に対して、顔の所定の部位毎に予め設定されたシワの延びやすい角度範囲内の一方向若しくは互いに異なる複数の角度で延びるシワ成分をそれぞれ抽出した複数のシワ成分抽出データを生成し、前記複数のシワ成分抽出データのそれぞれに対して前記シワ成分を強調した複数のシワ成分強調データを生成し、前記複数のシワ成分強調データを互いに合成した合成データを生成し、前記合成データにおいて所定の強度を有するシワ成分を被験者のシワとして検出するものである。
【0009】
ここで、前記顔データは、被験者の顔を撮影して得られた画像データを輝度画像に変換し、前記輝度画像における顔の位置を検出することで取得され、検出された顔の所定の部位に解析領域を設定し、設定された解析領域に対して、顔の所定の部位毎に予め設定されたシワの延びやすい角度範囲内の一方向若しくは互いに異なる複数の角度で延びるシワ成分をそれぞれ抽出した複数のシワ成分抽出画像を前記複数のシワ成分抽出データとして生成し、前記複数のシワ成分抽出画像のそれぞれに対して前記シワ成分を強調した複数のシワ成分強調画像を前記複数のシワ成分強調データとして生成し、前記複数のシワ成分強調画像を互いに合成した合成画像を前記合成データとして生成し、前記合成画像において所定の閾値以上の強度を有するシワ成分を被験者のシワとして検出するのが好ましい。
【0010】
また、前記複数のシワ成分抽出画像は、前記角度範囲内の互いに角度の異なる複数のシワ方向エッジフィルタで前記解析領域を処理することにより得られ、前記複数のシワ成分強調画像は、前記複数のシワ方向エッジフィルタに対してそれぞれ直交する複数のシワ直交方向エッジフィルタで前記解析領域を処理して得られた複数のシワ直交成分抽出画像を用いて前記複数のシワ成分抽出画像から前記シワ成分に直交するシワ直交成分を低減することにより得ることができる。
また、前記複数のシワ成分抽出画像は、前記角度範囲内の互いに角度の異なる複数のシワ方向エッジフィルタで前記解析領域を処理することにより得られ、前記複数のシワ成分強調画像は、対応する前記シワ成分抽出画像内の前記シワ成分の間の標準偏差を求めて標準偏差が所定値以上の部分の強調率を増加することにより得ることもできる。
【0011】
前記解析領域は、額、眉間、口元、または目尻に設定することができる。また、被験者の顔は正面および左右から撮影され、前記解析領域は、正面から撮影された前記輝度画像に基づいて額、眉間、および口元に設定され、左右から撮影された前記輝度画像に基づいて目尻に設定されるのが好ましい。
また、前記複数のシワ方向エッジフィルタは、前記解析領域が額および眉間に設定された場合には70度から110度の角度範囲の間で3方向に、前記解析領域が目尻に設定された場合には0度から45度および115度から165度の角度範囲の間で8方向に、前記解析領域が口元に設定された場合には45度から60度および120度から140度の角度範囲の間で6方向にそれぞれ設定されるのが好ましい。
【0012】
また、前記シワ成分を強調した前記複数のシワ成分強調画像を生成した後、予め設定されたシワの形状情報に基づいて前記複数のシワ成分強調画像から、それぞれノイズを除去し、さらにノイズが除去された前記複数のシワ成分強調画像を互いに合成することができる。また、前記シワ成分を強調した前記複数のシワ成分強調画像を生成した後、多重解像度法により前記複数のシワ成分強調画像からそれぞれノイズを除去し、さらにノイズが除去された前記複数のシワ成分強調画像を互いに合成することもできる。
また、顔の所定の部位に前記解析領域が設定された後、ガウシアンフィルタ処理、あるいは、背景の輝度分布を2次曲面近似することで前記解析領域のノイズを除去し、ノイズが除去された前記解析範囲に対して前記シワ成分をそれぞれ抽出した前記複数のシワ成分抽出画像を生成することもできる。
【0013】
この発明に係るシワ評価方法は、上記のいずれかに記載のシワ検出方法で検出されたシワを評価するシワ評価方法であって、検出されたシワの面積、本数、長さ、面積率、幅、深さなどの特徴量を算出し、算出された面積、本数、長さ、面積率、幅、深さなどの特徴量のそれぞれ、もくしは複数の指標による総合値について被験者の年齢における平均値と比較することでシワの進行を評価するものである。
【0014】
この発明に係るシワ検出装置は、被験者の顔を撮影して得られた画像を輝度画像に変換する輝度画像変換部と、前記輝度画像における顔の位置を検出する顔検出部と、検出された顔の所定の部位に解析領域を設定する解析領域設定部と、設定された解析領域に対して、顔の所定の部位毎に予め設定されたシワの延びやすい角度範囲内の互いに異なる複数の角度で延びるシワ成分をそれぞれ抽出した複数のシワ成分抽出画像を生成するシワ抽出部と、前記複数のシワ成分抽出画像のそれぞれに対して前記シワ成分を強調した複数のシワ成分強調画像を生成すると共に前記複数のシワ成分強調画像を互いに合成した合成画像を生成するシワ強調部と、前記合成画像において所定の閾値以上の強度を有するシワ成分を被験者のシワとして検出するシワ判定部とを備えたものである。
この発明に係るシワ評価方法は、上記に記載のシワ検出装置と、前記シワ検出装置で検出されたシワの面積、本数、長さを算出すると共に算出された面積、本数、長さのそれぞれについて被験者の年齢における平均値と比較することでシワの進行を評価するシワ評価部とを備えたものである。
【0015】
この発明に係るシワ検出プログラムは、被験者の顔データを取得するステップと、取得された顔データの所定の部位に解析領域を設定するステップと、設定された解析領域に対して、顔の所定の部位毎に予め設定されたシワの延びやすい角度範囲内の一方向若しくは互いに異なる複数の角度で延びるシワ成分をそれぞれ抽出した複数のシワ成分抽出データを生成するステップと、前記複数のシワ成分抽出データのそれぞれに対して前記シワ成分を強調した複数のシワ成分強調データを生成するステップと、前記複数のシワ成分強調データを互いに合成した合成データを生成するステップと、前記合成データにおいて所定の閾値以上の強度を有するシワ成分を被験者のシワとして検出するステップとをコンピュータに実行させるためのものである。
また、この発明に係るシワ評価プログラムは、上記のシワ検出プログラムで検出されたシワを評価するためのシワ評価プログラムであって、前記シワ検出プログラムで検出されたシワの特徴量を算出するステップと、算出された特徴量のそれぞれについて被験者の年齢における平均値と比較することでシワの進行を評価するステップとをコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、被験者の顔を撮影した輝度画像から顔の部位毎に予め設定されたシワが延びやすい角度に基づいてシワ成分を抽出した複数のシワ成分抽出画像を生成すると共に生成された複数のシワ成分抽出画像のそれぞれに対してシワ成分が強調されるので、被験者の顔を撮影した画像からシワを検出する際に誤検出を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施の形態に係るシワ検出方法を行うシワ検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】シワの抽出方法およびシワの強調方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に、この発明の一実施の形態に係るシワ検出方法を行うシワ検出装置の構成を示す。シワ検出装置は、カメラ1および2を備え、このカメラ1および2に前処理部3、シワ検出部4、およびシワ評価部5が順次接続されている。
カメラ1は被験者の顔Fに対して正面に、カメラ2は被験者の顔Fに対して側方にそれぞれ配置されている。
【0019】
前処理部3は、カメラ1および2に接続された輝度画像変換部6を有し、この輝度画像変換部6に顔検出部7、解析領域設定部8、およびノイズ除去部9が順次接続されている。
輝度画像変換部6は、カメラ1および2で撮影された画像をそれぞれ輝度画像に変換する。顔検出部7は、輝度画像変換部6で生成された輝度画像から被験者の顔Fの位置を検出すると共に目、眉、口および鼻などの特徴部分をそれぞれ検出する。解析領域設定部8は、顔検出部7で検出された被験者の顔Fに対し、額、眉間、口元、目尻などのシワが発生しやすい所定の部位に解析領域を設定する。ノイズ除去部9は、輝度画像に含まれるノイズを除去するもので、例えば、輝度画像をガウシアンフィルタ処理して平滑化すること、あるいは、背景の輝度分布を2次曲面近似することで被験者の顔Fを撮影した際に生じた照射むらを除去することができる。
【0020】
シワ検出部4は、前処理部3のノイズ除去部9に接続されたシワ抽出部10を有し、このシワ抽出部10にシワ強調部11およびシワ判定部12が順次接続されている。
シワ抽出部10は、顔の部位毎に設定されたシワが延びやすい角度範囲を予め格納したメモリを内蔵し、解析領域設定部8で解析領域が設定された部位に対応する角度範囲をメモリから読み出す。続いて、読み出した角度範囲内の互いに異なる複数の角度で延びるシワ成分を、その異なる角度毎に解析領域からそれぞれ抽出した複数のシワ成分抽出画像が生成される。複数のシワ成分抽出画像は、例えばメモリから読み出された角度範囲の間で互いに角度の異なる複数のシワ方向エッジフィルタを用いて解析領域をそれぞれ処理することにより、解析領域内のシワ成分の強度を角度方向毎にそれぞれ増加させることで得ることができる。
シワ強調部11は、シワ抽出部10により生成された複数のシワ成分抽出画像のそれぞれに対してシワ成分を強調した複数のシワ成分強調画像の生成を行う。この時、例えば、シワ抽出部10においてシワ成分の抽出に用いられた複数のシワ方向エッジフィルタに対してそれぞれ直交する複数のシワ直交方向エッジフィルタで解析領域を処理することにより、解析領域内においてシワ成分と直交するシワ直交成分の強度を角度方向毎に増加させた複数のシワ直交成分抽出画像を生成し、この複数のシワ直交成分抽出画像を用いて複数のシワ成分抽出画像からシワ成分に直交するシワ直交成分をそれぞれ低減することにより複数のシワ成分抽出画像を得ることができる。さらに、シワ強調部11は、生成した複数のシワ成分強調画像を互いに合成し、解析領域において一体として強調されたシワ成分を有する合成画像の生成を行う。
シワ判定部12は、合成画像における強度が所定の閾値以上であるか否かを画素毎に判定し、所定の閾値以上の強度を有するシワ成分を被験者のシワとして検出する。
【0021】
シワ評価部5は、シワ検出部4により検出されたシワの面積、本数、長さを算出し、算出された面積、本数、長さのそれぞれについて被験者の年齢における平均値と比較することでシワの進行の評価を行う。
なお、シワ抽出部10で用いられるシワ方向エッジフィルタおよびシワ強調部11で用いられるシワ直交方向エッジフィルタは、画像中のエッジ情報を方向毎に抽出するためのもので、Sobelフィルタ、一次微分フィルタおよびDogフィルタなどを用いることができる。例えば、Dogフィルタを用いた場合には、スケールσの異なる2種類のガウシアン画像をそれぞれ1次元化し、1次元化した2種類のガウシアン画像の間で差分をとることで1次元のDogフィルタ、すなわち一定の方向性を有するDogフィルタを生成する。続いて、生成されたDogフィルタをシワ方向あるいはシワ直交方向に適用することで、それぞれの方向のエッジ情報を画像中から抽出することができる。
【0022】
次に、シワ検出装置により行われるシワ検出方法について説明する。
まず、被験者の顔Fが正面からカメラ1により、側方からカメラ2によりそれぞれ撮影される。カメラ1および2によりそれぞれ撮影された正面および側方からの画像データは、前処理部3の輝度画像変換部6にそれぞれ出力され、輝度画像変換部6により正面輝度画像および側方輝度画像に変換される。正面輝度画像および側方輝度画像は輝度画像変換部6から顔検出部7に出力され、顔検出部7が正面輝度画像および側方輝度画像から顔Fを検出すると共に、正面輝度画像から顔Fの特徴部分である目、眉、口および鼻を検出し且つ側方輝度画像から顔Fの特徴部分である目を検出する。
続いて、顔検出部7による検出結果に基づいて、解析領域設定部8が顔Fにおいてシワが発生しやすい所定の部位に解析領域を設定する。解析領域設定部8は、例えば、正面輝度画像に対して額、眉間および口元に、側方輝度画像に対して目尻にそれぞれ解析領域を設定することができる。このようにして、顔Fの各部位に設定された解析領域は、それぞれノイズ除去部9に出力されてノイズが除去された後、シワ検出部4のシワ抽出部10に出力される。
【0023】
シワ抽出部10は、内蔵するメモリに顔Fの所定の部位毎に設定されたシワが延びやすい角度範囲を予め格納しており、このメモリから解析領域設定部8で解析領域が設定された部位に対応する角度範囲を読み出す。例えば、解析領域が額および眉間に設定されている場合には70度から110度の角度範囲が、解析領域が目尻に設定されている場合には0度から45度および115度から165度の角度範囲が、解析領域が口元に設定されている場合には45度から60度および120度から140度の角度範囲がそれぞれメモリから読み出される。このようにして読み出された角度範囲の間で、シワをなす任意の一方向もしくは、互いに角度の異なる複数のシワ方向エッジフィルタを用いて解析領域の処理を行う。
例えば、解析領域が目尻に設定されている場合には、図2に示すように、0度、45度および135度の3方向に設定されたシワ方向エッジフィルタで解析領域を処理することができる。この処理の結果、0度、45度および135度の角度方向に延びたシワ成分の強度がそれぞれ増加され、0度の角度方向に延びたシワ成分が抽出されたシワ成分抽出画像A1、45度の角度方向に延びたシワ成分が抽出されたシワ成分抽出画像A2、および135度の角度方向に延びたシワ成分が抽出されたシワ成分抽出画像A3がそれぞれ生成される。このようにして、それぞれのシワ方向エッジフィルタの角度方向に延びたシワ成分を抽出したシワ成分抽出画像A1,A2およびA3が生成される。
このように、解析領域においてシワが延びる典型的な角度方向に絞ってシワ方向エッジフィルタで処理することにより、シワ成分の抽出における労力を低減することができる。生成されたシワ抽出画像A1,A2およびA3は、生成前の輝度画像と共にシワ強調部11に出力される。
【0024】
シワ強調部11は、入力されたシワ抽出画像A1,A2およびA3からシワ成分に直交した成分であるシワ直交成分をそれぞれ低減することで、相対的にシワ成分を強調したシワ成分強調画像B1,B2およびB3の生成を行う。
具体的には、シワ成分抽出画像A1,A2およびA3を生成する前の輝度画像を用い、シワ抽出部10においてシワ成分を抽出した0度、45度および135度のシワ方向エッジフィルタに対してそれぞれ直交する90度、135度および45度のシワ直交方向エッジフィルタで解析領域の処理を行うことで、それぞれのシワ成分に直交して対応するシワ直交成分を抽出したシワ直交成分抽出画像C1,C2およびC3をそれぞれ生成する。続いて、0度方向のシワ成分を抽出したシワ成分抽出画像A1と90度方向のシワ直交成分を抽出したシワ直交成分抽出画像C1との間で対応画素毎に減算処理を行うことで、0度方向のシワ成分から90度方向のシワ直交成分を差し引く。同様にして、45度方向のシワ成分を抽出したシワ成分抽出画像A2と135度方向のシワ直交成分を抽出したシワ直交成分抽出画像C2との間、135度方向のシワ成分を抽出したシワ成分抽出画像A3と45度方向のシワ直交成分を抽出したシワ直交成分抽出画像C3との間でそれぞれ減算処理を行う。
【0025】
これにより、図2に示すように、シワ成分抽出画像A1,A2およびA3からシワ成分に直交するシワ直交成分の強度がそれぞれ低減されたシワ成分強調画像B1,B2およびB3を生成することができる。すなわち、シワ成分抽出画像A1,A2およびA3に含まれるシワが延びにくい角度方向からなるシワ直交成分の強度をそれぞれ低減することで、シワが延びやすい角度方向からなるシワ成分を相対的に強調したシワ成分強調画像B1,B2およびB3をそれぞれ生成することができる。
このようにしてシワ成分がそれぞれ強調されたシワ成分強調画像B1,B2およびB3は互いに合成され、解析領域において一体として強調されたシワ成分を有する合成画像が生成される。なお、合成画像を生成する前に、予め設定された円形度などのシワの形状情報に基づいてシワ成分強調画像B1,B2およびB3からそれぞれノイズを除去し、あるいは、多重解像度法によりシワ成分強調画像B1,B2およびB3からそれぞれノイズを除去し、ノイズが除去されたシワ成分強調画像B1,B2およびB3を互いに合成することもできる。
【0026】
合成画像はシワ判定部12に出力され、合成画像において強度が所定の閾値以上であるか否かが画素毎に判定されると共に、所定の閾値以上の強度を有するシワ成分が被験者のシワとして検出される。
このように、シワの判定を行う前に、シワが延びにくい角度方向からなるシワ直交成分、すなわちシワ以外の成分が合成画像から除去されているため、シワの誤検出を抑制することができる。
【0027】
さらに、被験者のシワとして検出されたシワ成分はシワ評価部5に出力され、シワの面積、本数、長さ、面積率、幅、深さなどの特徴量が算出された後、算出された特徴量のそれぞれについて被験者の年齢における平均値と比較することで、シワの進行が評価される。
このように、シワの誤検出が抑制されたシワの検出結果に基づいてシワの進行を算出しているので、シワの評価をより正確に行うことができる。
【0028】
なお、上記のようなシワの検出は、入力手段、CPUおよびメモリなどから構成されるコンピュータをシワ検出プログラムにより機能させることで実行することができる。すなわち、シワ検出プログラムがコンピュータを機能させることにより、入力手段が被験者の顔を撮影した画像を取得し、取得された画像に基づいて、CPUが、前処理部3およびシワ検出部4を実行させてシワの検出を行う。
また、シワの評価についても、コンピュータをシワ評価プログラムにより機能させることで実行することができる。すなわち、シワ評価プログラムがコンピュータを機能させることにより、CPUが、シワ評価部5を実行させてシワの検出を行う。
【0029】
なお、上記の実施の形態では、シワ強調部11はシワ抽出部10において生成された複数のシワ成分抽出画像からシワ直交成分をそれぞれ除去した後に合成画像を生成したが、合成画像からシワ直交成分を減少できればこれに限るものではなく、合成画像を生成した後でシワ直交成分を除去してもよい。
また、シワ強調部11はシワ抽出部10において生成された複数のシワ成分抽出画像からシワ直交成分を除去することによりシワ成分を強調した複数のシワ成分強調画像を生成したが、これに限るものではない。例えば、シワ成分抽出画像内の間の標準偏差を求めると、シワ成分において標準偏差が高くなる。そこで、複数のシワ成分強調画像は、対応するシワ成分抽出画像内のシワ成分の間の標準偏差を求め、標準偏差が所定値以上の部分の強調率を増加することにより得ることもできる。このようにして生成された複数のシワ成分強調画像は互いに合成されることで、解析領域において一体として強調された合成画像が生成される。
【0030】
また、シワ抽出部10は、解析領域設定部8において解析領域が額および眉間に設定された場合には、70度から110度の角度範囲の間で3方向に設定されたシワ方向エッジフィルタで解析領域を処理するのが好ましく、解析領域が目尻に設定された場合には0度から45度および115度から165度の角度範囲の間で8方向に設定されたシワ方向エッジフィルタで解析領域を処理するのが好ましく、解析領域が口元に設定された場合には45度から60度および120度から140度の角度範囲の間で6方向にそれぞれ設定されたシワ方向エッジフィルタで解析領域を処理するのが好ましい。さらに、複数のシワ方向エッジフィルタは、解析領域の処理に偏りが生じないように、角度範囲の間で等間隔に処理方向が設定されるのが好ましい。なお、シワ直交方向エッジフィルタは、解析領域の処理に用いられたシワ方向エッジフィルタに直交して対応させればよい。
【0031】
また、上記の実施の形態では、被験者の顔Fの正面および側方にそれぞれカメラ1および2を配置したが、これに限るものではなく、顔Fの正面と両側方にそれぞれカメラを配置する等、被験者の顔Fの周りに2つ以上のカメラを配置することができる。また、カメラ1および2のうち一方のみを配置することもでき、さらに1つのカメラを被験者の顔Fの回りに移動して撮影することもできる。
【0032】
また、上記の実施の形態では、カメラ1および2で撮影された画像データに基づいてシワの検出を行ったが、シワを検出するための顔データが取得できればこれに限るものではなく、例えば非接触の3次元計測により被験者の顔Fの凹凸を計測した顔の計測データを用いることができる。この顔の計測データに基づいて、顔Fのシワが発生しやすい所定の部位に解析領域を設定し、ノイズが除去された後、上記と同様にしてシワの検出が行われる。すなわち、設定された解析領域に対して、顔Fの所定の部位毎に予め設定されたシワの延びやすい角度範囲内の一方向若しくは互いに異なる複数の角度で延びるシワ成分をそれぞれ複数のシワ方向エッジフィルタを用いて抽出した複数のシワ成分抽出データを生成する。続いて、複数のシワ成分抽出データのそれぞれに対して、複数のシワ直交方向エッジフィルタで処理することにより、シワ成分を強調した複数のシワ成分強調データを生成し、生成された複数のシワ成分強調データを互いに合成した合成データを生成する。そして、この合成データにおいて所定の閾値以上の強度を有するシワ成分を被験者のシワとして検出することができる。
【符号の説明】
【0033】
1,2 カメラ、3 前処理部、4 シワ検出部、5 シワ評価部、6 輝度画像変換部、7 顔検出部、8 解析領域設定部、9 ノイズ除去部、10 シワ抽出部、11 シワ強調部、12 シワ判定部、F 被験者の顔、A1,A2,A3 シワ成分抽出画像、B1,B2,B3 シワ成分強調画像、C1,C2,C3 シワ直交成分抽出画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の顔データを取得し、
取得された顔データの所定の部位に解析領域を設定し、
設定された解析領域に対して、顔の所定の部位毎に予め設定されたシワの延びやすい角度範囲内の一方向若しくは互いに異なる複数の角度で延びるシワ成分をそれぞれ抽出した複数のシワ成分抽出データを生成し、
前記複数のシワ成分抽出データのそれぞれに対して前記シワ成分を強調した複数のシワ成分強調データを生成し、
前記複数のシワ成分強調データを互いに合成した合成データを生成し、
前記合成データにおいて所定の閾値以上の強度を有するシワ成分を被験者のシワとして検出するシワ検出方法。
【請求項2】
前記顔データは、被験者の顔を撮影して得られた画像データを輝度画像に変換し、前記輝度画像における顔の位置を検出することで取得され、
検出された顔の所定の部位に解析領域を設定し、
設定された解析領域に対して、顔の所定の部位毎に予め設定されたシワの延びやすい角度範囲内の一方向若しくは互いに異なる複数の角度で延びるシワ成分をそれぞれ抽出した複数のシワ成分抽出画像を前記複数のシワ成分抽出データとして生成し、
前記複数のシワ成分抽出画像のそれぞれに対して前記シワ成分を強調した複数のシワ成分強調画像を前記複数のシワ成分強調データとして生成し、
前記複数のシワ成分強調画像を互いに合成した合成画像を前記合成データとして生成し、
前記合成画像において所定の閾値以上の強度を有するシワ成分を被験者のシワとして検出する請求項1に記載のシワ検出方法。
【請求項3】
前記複数のシワ成分抽出画像は、前記角度範囲内の互いに角度の異なる複数のシワ方向エッジフィルタで前記解析領域を処理することにより得られ、
前記複数のシワ成分強調画像は、前記複数のシワ方向エッジフィルタに対してそれぞれ直交する複数のシワ直交方向エッジフィルタで前記解析領域を処理して得られた複数のシワ直交成分抽出画像を用いて前記複数のシワ成分抽出画像から前記シワ成分に直交するシワ直交成分を低減することにより得られる請求項2に記載のシワ検出方法。
【請求項4】
前記複数のシワ成分抽出画像は、前記角度範囲内の互いに角度の異なる複数のシワ方向エッジフィルタで前記解析領域を処理することにより得られ、
前記複数のシワ成分強調画像は、対応する前記シワ成分抽出画像内の前記シワ成分の間の標準偏差を求めて標準偏差が所定値以上の部分の強調率を増加することにより得られる請求項2に記載のシワ検出方法。
【請求項5】
前記解析領域は、額、眉間、口元、または目尻に設定される請求項3または4に記載のシワ検出方法。
【請求項6】
被験者の顔は正面および左右から撮影され、
前記解析領域は、正面から撮影された前記輝度画像に基づいて額、眉間、および口元に設定され、左右から撮影された前記輝度画像に基づいて目尻に設定される請求項5に記載のシワ検出方法。
【請求項7】
前記複数のシワ方向エッジフィルタは、前記解析領域が額および眉間に設定された場合には70度から110度の角度範囲の間で3方向に、前記解析領域が目尻に設定された場合には0度から45度および115度から165度の角度範囲の間で8方向に、前記解析領域が口元に設定された場合には45度から60度および120度から140度の角度範囲の間で6方向にそれぞれ設定される請求項5または6に記載のシワ検出方法。
【請求項8】
前記シワ成分を強調した前記複数のシワ成分強調画像を生成した後、予め設定されたシワの形状情報に基づいて前記複数のシワ成分強調画像からそれぞれノイズを除去し、ノイズが除去された前記複数のシワ成分強調画像を互いに合成する請求項2〜7のいずれか一項に記載のシワ検出方法。
【請求項9】
前記シワ成分を強調した前記複数のシワ成分強調画像を生成した後、多重解像度法により前記複数のシワ成分強調画像からそれぞれノイズを除去し、ノイズが除去された前記複数のシワ成分強調画像を互いに合成する請求項2〜8のいずれか一項に記載のシワ検出方法。
【請求項10】
顔の所定の部位に前記解析領域が設定された後、ガウシアンフィルタ処理、あるいは、背景の輝度分布を2次曲面近似することで前記解析領域のノイズを除去し、ノイズが除去された前記解析範囲に対して前記シワ成分をそれぞれ抽出した前記複数のシワ成分抽出画像を生成する請求項2〜9のいずれか一項に記載のシワ検出方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のシワ検出方法で検出されたシワを評価するシワ評価方法であって、
検出されたシワの特徴量を算出し、
算出された特徴量のそれぞれについて被験者の年齢における平均値と比較することでシワの進行を評価するシワ評価方法。
【請求項12】
被験者の顔を撮影して得られた画像を輝度画像に変換する輝度画像変換部と、
前記輝度画像における顔の位置を検出する顔検出部と、
検出された顔の所定の部位に解析領域を設定する解析領域設定部と、
設定された解析領域に対して、顔の所定の部位毎に予め設定されたシワの延びやすい角度範囲内の互いに異なる複数の角度で延びるシワ成分をそれぞれ抽出した複数のシワ成分抽出画像を生成するシワ抽出部と、
前記複数のシワ成分抽出画像のそれぞれに対して前記シワ成分を強調した複数のシワ成分強調画像を生成すると共に前記複数のシワ成分強調画像を互いに合成した合成画像を生成するシワ強調部と、
前記合成画像において所定の閾値以上の強度を有するシワ成分を被験者のシワとして検出するシワ判定部とを備えたシワ検出装置。
【請求項13】
請求項12に記載のシワ検出装置と、
前記シワ検出装置で検出されたシワの特徴量を算出すると共に算出された特徴量のそれぞれについて被験者の年齢における平均値と比較することでシワの進行を評価するシワ評価部とを備えたシワ評価装置。
【請求項14】
被験者の顔データを取得するステップと、
取得された顔データの所定の部位に解析領域を設定するステップと、
設定された解析領域に対して、顔の所定の部位毎に予め設定されたシワの延びやすい角度範囲内の一方向若しくは互いに異なる複数の角度で延びるシワ成分をそれぞれ抽出した複数のシワ成分抽出データを生成するステップと、
前記複数のシワ成分抽出データのそれぞれに対して前記シワ成分を強調した複数のシワ成分強調データを生成するステップと、
前記複数のシワ成分強調データを互いに合成した合成データを生成するステップと、
前記合成データにおいて所定の閾値以上の強度を有するシワ成分を被験者のシワとして検出するステップとをコンピュータに実行させるためのシワ検出プログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のシワ検出プログラムで検出されたシワを評価するためのシワ評価プログラムであって、
前記シワ検出プログラムで検出されたシワの特徴量を算出するステップと、
算出された特徴量のそれぞれについて被験者の年齢における平均値と比較することでシワの進行を評価するステップとをコンピュータに実行させるためのシワ評価プログラム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−69122(P2013−69122A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207296(P2011−207296)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】