説明

シンクライアントコンピュータ装置

【課題】シンクライアン端末として用いるためのOSと、汎用の一般的なOSとの切り替えを容易に行えるシンクライアントコンピュータ装置を提供する。
【解決手段】シンクライアントコンピュータ装置10を汎用コンピュータとして動作させるための第1のOS14aが記憶された第1の記憶装置14と、前記第1の記憶装置14とは物理的に独立して設けられ、シンクライアントコンピュータ装置10をシンクライアント端末として動作させるための第2のOS15aが記憶された第2の記憶装置15と、前記第1のOS14aと第2のOS15aのいずれかを選択して切り替えるためのOS切り替え手段(BIOS12)と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のOS(オペレーティングシステム)を備えたコンピュータ装置に関するものであり、特に、コンピュータ装置をシンクライアントシステム用のクライアント装置として用いるためのOSと、汎用の一般的なOSとを、物理的に独立した記憶装置に記憶しておき、コンピュータ装置の初期立ち上げ時に、何れかのOSのみ有効にするようにしたシンクライアントコンピュータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、コンピュータ装置やマイクロコンピュータにより制御される各種の電子機器は、予め1つのOS(オペレーティングシステム)が組み込まれ、当該OSにより各部の動作制御が行われる。ところで、パーソナルコンピュータなどのコンピュータ装置にはいくつかの異なるOSが提供されている。ユーザによっては、所有するコンピュータ装置に複数の異なるOSを搭載して、任意にOSを切り替えて使用したいという要求を有する者も少なくない。また、OSがバージョンアップされ、新たに提供されるようなった場合に、旧バージョンのOSを搭載したまま、新しいバージョンのOSを追加したいという要求を持つユーザもいる。
【0003】
異なる複数のOSを搭載した電子機器は、例えば、下記の特許文献1(特開平2−135528号公報)に開示されている。この電子機器は、あらかじめ前記複数のOSのうちの1つを起動時に選択する起動OS選択情報を、前記非破壊記憶手段に格納し、前記装置の起動時に前記プログラム制御手段が、前記非破壊記憶手段から読出した起動OS選択情報に基づき前記OSを選択し、選択されたOSを記憶手段からイニシアルプログラムローデイング(IPL)するようにしたものである。
【0004】
また、下記の特許文献2(特開2008−262419号公報)には、複数のオペレーティングシステムOS1、OS2を並行して実行可能な情報処理装置が開示されている。この情報処理装置は、複数のオペレーティングシステム上で実行されるアプリケーションプログラムAP1、AP2のAP特性情報を記憶しておき、各オペレーティングシステムの負荷状況を測定して、負荷状況とAP特性情報とに基づいてアプリケーションプログラムを実行するオペレーティングシステムを選択するようにしたものである。
【0005】
一方、小型で軽量なパソコンが普及するにつれて、パソコンを会社から離れた遠隔地に持ち出して利用したいというニーズが高まりつつある。それに伴って、機密情報が社外に漏洩をすることを防止するために、データの保管は専ら本社にあるサーバ上でのみ行い、パソコン内にハードディスクなどの記憶装置を備えず、サーバ上のデータを利用して計算指示および計算結果の表示を行うための画面情報のみを通信によってサーバとの間で送受信するシンクライアントパソコンが知られている。
【0006】
例えば、下記の特許文献3(特開2005−228227号公報)には、シンクライアント端末上に表示されるGUI(グラフィックユーザインタフェース)での操作をサーバ上で実行されるアプリケーションへ送信し、この操作に基づいてアプリケーションが実行され、実行結果がシンクライアント端末に送信され、シンクライアント端末上に表示されるGUIに反映させる技術が開示されている。
【0007】
また、下記の特許文献4(特開2008−269210号公報)には、シンクライアントコンピュータに用いるOSをリムーバブルメモリユニットに記憶して提供するようにしたリムーバブルメモリユニットおよびコンピュータ装置が開示されている。このリムーバブルメモリユニットおよびコンピュータ装置は、リムーバブル(USB)メモリユニットが、マスタブートレコード(MBR)とOS本体が記憶されたCD−ROM記憶領域と、CD−ROMデバイス情報を記憶したCD−ROMデバイス情報記憶部と、を備え、CD−ROMデバイス情報に基づいてコンピュータ装置からCD−ROMとして認識されるように構成され、CD−ROM記憶領域に記憶されたマスタブートレコードがコンピュータ装置に搭載されたBIOSにより読み出され、マスタブートレコードに基づいてOS本体をリムーバブルメモリユニット上で起動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−135528号公報
【特許文献2】特開2008−262419号公報
【特許文献3】特開2005−228227号公報
【特許文献4】特開2008−269210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
シンクライアントシステムにおけるクライアント装置であるシンクライアントコンピュータ装置を提供する場合、コンピュータ装置にシンクライアントシステムに対応するOSのみをインストールして提供する方法が最も単純な方法である。しかしながらこの方法では、コンピュータ装置はシンクライアントシステムのクライアント装置としてしか用いることができない。
【0010】
一方、特許文献4に開示されたシステムのように、シンクライアントシステムに対応するためのOSをUSBメモリのような可搬型の記憶媒体に記憶しておき、コンピュータ装置から、当該USBに記憶されているOSを起動し、USBメモリ上で当該OSを動作させる方法を採ることもできる。この方法であれば、通常のOSがインストールされたコンピュータ装置を所望の時にシンクライアントコンピュータ装置として使用することができるようになる。
【0011】
図5は、上記特許文献4に開示されたシンクライアントコンピュータ装置の概略構成を示している。コンピュータ装置200は、パワースイッチ211、BIOS(基本入出力システム)212、ハードウエア部216を備えている。ハードウエア部216は、マイクロプロセッサなどのCPU217、RAMなどのメモリ218、プリンタや表示デバイスあるいはネットワークへの入出力を行う入出力デバイス219などから構成される。コンピュータ装置200をシンクライアントコンピュータ装置として動作させるためのOS310、アプリケーションプログラム312は、USBメモリ300等の可搬型の記憶媒体に記憶されており、コンピュータ装置200にUSBメモリ300を接続し、BIOS212によってUSBメモリ300上でOS310を起動するように構成される。このような構成では、コンピュータ装置200は必ずしもハードディスク等の記憶装置213を備える必要はない。
【0012】
なお、OS310をUSBメモリ上で動作させる構成の他、USBメモリ300に記憶されたOS310(コンピュータ装置200のハードディスクなどの記憶装置213に一時的に読み込んで展開し、記憶装置213上でOS310を起動する構成を採ることもできる。
【0013】
コンピュータ装置200が記憶装置213を備える場合、USBメモリ300に記憶したシンクライアントコンピュータ装置として動作させるOS310(第2OS)の他に、記憶装置213に一般の汎用コンピュータ装置としてのOS(第1OS)をインストールしておき、いずれかのOSを選択して使用するように構成することもできる。その場合、BIOS212は、まず記憶装置213のOS(第1OS)の所定の領域(例えば、先頭の所定のバイト数の領域)に記憶されたマスタブートレコード(MBR)を読出して第1OSを選択するか、あるいは、USBメモリ300に記憶されたOS310(第2OS)を選択するかの切り替えを行う。
【0014】
しかしながら、この方法ではシンクライアントコンピュータとして使用する場合には、シンクライアントシステムに対応するOSが記憶されたUSBメモリが必要であり、ユーザはUSBメモリを管理しなければならないという煩雑さが生じる。
【0015】
そこで、上記特許文献1や特許文献2に開示されたマルチOSを有するコンピュータ装置のような構成とすることが考慮される。すなわち、通常の一般的な汎用OSがインストールされたコンピュータ装置に、シンクライアントシステムに対応するためのOSをインストールしてマルチOSとすることができる。しかしながら、一般的なコンピュータ装置は、単一のハードディスクを記憶媒体として備えたものであり、ハードディスクを複数の区画に区切り、一つの区画に第1のOSをインストールし、他の区画に第2のOSをインストールすることになる。コンピュータ装置をパワーオンして立ち上げる時に、第1のOSと第2のOSのいずれを起動するかを切り替え選択する方法は上記特許文献1、2に開示された方法を適用することもできる。
【0016】
図6は、ハードディスクに複数のOSをインストールした上記のようなコンピュータ装置100の概略構成を示す図である。コンピュータ装置100は、パワースイッチ111、BIOS(基本入出力システム)112、ハードディスク等の記憶装置113、ハードウエア部116を備えている。ハードウエア部116は、マイクロプロセッサなどのCPU117、RAMなどのメモリ118、プリンタや表示デバイスあるいはネットワークへの入出力を行う入出力デバイス119などから構成される。
【0017】
記憶装置113は第1区画114、第2区画115に区画分けされており、第1区画114には、第1のOS114a、第1OS114aで利用されるアプリケーションプログラム群114bがインストールされ、第2区画115には、第2のOS115a、第2OS115aで利用されるアプリケーションプログラム群115bがインストールされている。ここで、OSの一方、例えば第2OSを、コンピュータ装置100をシンクライアントコンピュータ装置として動作させるためのOSとし、いずれかのOSを選択して起動すれば、コンピュータ装置100を汎用のコンピュータ装置100とし、あるいは、シンクライアントコンピュータ装置として使用することができる。
【0018】
図6のような構成のコンピュータ装置100におけるOSの切り替え選択は次のようにして行われる。すなわち、図7に示すように、BIOS112は、まず記憶装置113の第1区間114に記憶された第1OS114aの所定の領域(例えば、先頭の所定のバイト数の領域)に記憶された第1OSのマスタブートレコード(MBR)を読出して第1OSブートローダ画面122を表示し、この表示画面で第1OSを選択するか、あるいは、第2区画に記憶された第2OSを選択するかをユーザに選択させることでOSの切り替えが行われる。
【0019】
しかしながら、インストールされたOSの一方がシンクライアントシステムに対応するためのOS(第2のOS)、他方が一般的なOS(第1のOS)である場合、これら2つのOSは、区画に分けられてはいるものの、同じハードディスク装置にインストールされたものであるから、第1のOSが起動された時に、当該第1のOSのハードディスク参照機能を用いて第2のOS(シンクライアントシステムに対応するOS)が記憶された第2区画115を見ることができる状態になり、専門的な知識を有する者がこれを意図的に操作する恐れがあり、セキュリティーの面で問題を生ずる。
【0020】
また、通常1つのハードディスクの異なる区画に複数のOSがインストールされている場合、図7を参照して説明したように、コンピュータ装置の電源が投入されるとBIOSにより自動的に一方のOSが起動され、他方のOSに切り替える場合には、起動されたOSの機能を用いて他方のOSに切り替える操作が必要になり、OSの選択操作が煩雑であるという問題点もある。
【0021】
そこで、本発明は上記の問題点を解消することを課題とし、シンクライアントシステムに対応するOSと、一般的な汎用のOSとを搭載し、かつそれら2つのOSを完全に分離してセキュリティーを高めたシンクライアントコンピュータ装置を提供することを目的とするものである。また、本発明は、シンクライアントシステム用のクライアント装置として用いるためのOSと、汎用の一般的なOSとの切り替えを容易に行えるシンクライアントコンピュータ装置を提供することを他の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
シンクライアントコンピュータ装置を汎用コンピュータとして動作させるための第1のOSが記憶された第1の記憶装置と、前記第1の記憶装置とは物理的に独立して設けられ、シンクライアントコンピュータ装置をシンクライアント端末として動作させるための第2のOSが記憶された第2の記憶装置と、前記第1のOSと第2のOSのいずれかを選択して切り替えるためのOS切り替え手段と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明において、
前記OS切り替え手段は、シンクライアントコンピュータ装置に電源が投入された際に実行されるBIOSに組み込まれ、表示手段に表示したOS選択画面上で選択されたOSのMBRを読み出してOSを切り替えるように構成されたことを特徴とする。
【0024】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項2にかかる発明において、前記BIOSは、選択されないOSが記憶された記憶装置の電源供給をディスエーブル状態に制御することを特徴とする。
【0025】
また、本願の請求項4にかかる発明は、請求項1にかかる発明において、
前記OS切り替え手段は、前記第1の記憶装置に電源を供給する第1のパワースイッチをと、前記第2の記憶装置に電源を供給する第2のパワースイッチにより構成され、BIOSは、前記第1のパワースイッチまたは第2のパワースイッチの操作に応じて電源が供給された記憶装置にインストールされたMBRを読み出してOSを切り替えるように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1にかかる発明においては、
シンクライアントコンピュータ装置を汎用コンピュータとして動作させるための第1のOSが記憶された第1の記憶装置と、前記第1の記憶装置とは物理的に独立して設けられ、シンクライアントコンピュータ装置をシンクライアント端末として動作させるための第2のOSが記憶された第2の記憶装置と、前記第1のOSと第2のOSのいずれかを選択して切り替えるためのOS切り替え手段と、を備えた。従って、第2OSがインストールされている第2記憶装置は、第1OSがインストールされている第1記憶装置とは物理的に分けられているので、第1OSが第2記憶装置を参照することはできないから、シンクライアントコンピュータ装置のセキュリティーを高めることができる。
【0027】
請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかる発明において、OS切り替え手段は、シンクライアントコンピュータ装置に電源が投入された際に実行されるBIOSに組み込まれ、表示手段に表示したOS選択画面上で選択されたOSのMBRを読み出してOSを切り替えるように構成される。従って、ユーザは容易に第1OS、第2OSのいずれかを選択して切り替えすることができるようになる。
【0028】
請求項3にかかる発明においては、請求項2にかかる発明において、前記BIOSは、選択されないOSが記憶された記憶装置の電源供給をディスエーブル状態に制御する。すなわち、起動されないOS、例えば、第2OSが記憶された第2記憶装置の電源をディスエーブルの状態に制御するから、起動されたOS、例えば、第1OSから、第2OSが記憶された記憶装置を完全に参照できなくするものであるから、シンクライアントコンピュータ装置のセキュリティーを完全に保つことができるようになる。
【0029】
請求項4にかかる発明においては、請求項1にかかる発明において、OS切り替え手段は、前記第1の記憶装置に電源を供給する第1のパワースイッチをと、前記第2の記憶装置に電源を供給する第2のパワースイッチにより構成され、BIOSは、前記第1のパワースイッチまたは第2のパワースイッチの操作に応じて電源が供給された記憶装置にインストールされたMBRを読み出してOSを切り替えるように構成される。従って、ユーザは容易に第1OS、第2OSのいずれかを選択して、切り替えすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1にかかるシンクライアントコンピュータ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のシンクライアントコンピュータ装置におけるOS選択のための画面の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施例1にかかるシンクライアントコンピュータ装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図2のシンクライアントコンピュータ装置におせるOS選択手段の構成を示すブロック図である。
【図5】従来のシンクライアントコンピュータ装置の構成を示すブロック図である。
【図6】従来の一般的なマルチOSコンピュータ装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示すコンピュータ装置におけるOS選択画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのシンクライアントコンピュータ装置を例示するものであって、本発明をこのシンクライアントコンピュータ装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のシンクライアントコンピュータ装置にも等しく適用し得るものである。
【実施例1】
【0032】
図1は、本発明の実施例1にかかるシンクライアントコンピュータ装置10の構成を示すブロック図である。本実施例1にかかるシンクライアントコンピュータ装置10は、図1に示すように、パワースイッチ11、BIOS(基本入出力システム)12、第1記憶装置14、第1OS14a、アプリケーションプログラム群14b、第2記憶装置15、第2OS15a、アプリケーションプログラム群15b、ハードウエア部16を備えている。ハードウエア部16は、マイクロプロセッサなどのCPU17、RAMなどのメモリ18、プリンタや表示デバイスあるいはネットワークへの入出力を行う入出力デバイス19などから構成される。
【0033】
第1記憶装置14には、第1のOSがインストールされている。ここでは、第1OS14aは、シンクライアントコンピュータ装置10を一般的な汎用のコンピュータ装置として動作させるためのOSであり、例えば、ウィンドウズ(登録商標)などの一般的な汎用コンピュータ用のOSがインストールされる。また、第1記憶装置14には、第1OS14aのもとで動作する各種のアプリケーションプログラム群14bがインストールされる。第1記憶装置14は、汎用OSをインストールするため、通常のコンピュータ装置が備えているハードディスクのような記憶装置であってよい。
【0034】
第2記憶装置15には、第2のOSがインストールされている。ここでは、第2OS15aは、シンクライアントコンピュータ装置10をシンクライアントコンピュータ装置として動作させるためのOSがインストールされる。また、第2記憶装置15には、第2OS15aのもとで動作する各種のアプリケーションプログラム群15bがインストールされる。第2記憶装置15は、シンクライアントコンピュータ装置として動作させるOSがインストールされるものであり、半導体メモリのような記憶装置であってよい。OS起動時に半導体メモリに記憶されたOSをRAM上に展開して動作させるように構成することもできる。
【0035】
パワースイッチ11はシンクライアントコンピュータ装置10の電源スイッチであり、パワースイッチ11をオンすると、各部への電源が供給される。パワースイッチ11がオンされると、BIOS(Basic Input Output System:基本入出力システム)12が起動される。
【0036】
従来の一般的なマルチOSのコンピュータ装置において、複数のOSがインストールされる記憶装置は、図6で説明したように、単一のハードディスクを複数の区画に区分し、1つの区画を1つのOSとそのアプリケーションプログラムをインストールし、他の区画に他のOSとそのアプリケーションプログラム群がインストールされるようにされる。
【0037】
これに対して、本発明にかかるシンクライアントコンピュータ装置10において、第1OSと第2OSか記憶される記憶装置が、物理的に別々の第1記憶装置14と第2記憶装置15とから構成されている点で異なる。従って、第1OS14aが起動されている状態で第1OS14aが参照できる記憶装置は第1記憶装置14のみであり、第2記憶装置15を参照することはできず、コンピュータ装置に関する高度な知識を有するユーザであっても、第2記憶装置15に記憶された第2OS15aやそのアプリケーションプログラム群15bの内容を参照することはできない。このため、シンクライアントコンピュータ装置10のセキュリティーを高めることができる。
【0038】
また、本実施例1にかかるシンクライアントコンピュータ装置10においては、以下に説明するようにBIOS12が起動されないOSが記憶された記憶装置の電源をディスエーブルに制御することで、起動されたOSから起動されていないOSが記憶された記憶装置を完全に参照することができないように構成することで、シンクライアントコンピュータ装置10のセキュリティーを完全に保つように構成している。
【0039】
また、従来のマルチOS型のコンピュータ装置では、電源が投入され、BIOSが起動されると、図7で説明したように、BIOSは、まず記憶装置の第1区画に記憶されたOSの所定の領域に記憶された第OSのマスタブートレコード(MBR)を読出してOSブートローダ画面を表示し、この表示画面で第1OSを選択するか、あるいは、第2区画に記憶された第2OSを選択するかをユーザに選択させることで行われる。
【0040】
これに対して、本発明にかかるシンクライアントコンピュータ装置10においては、BIOS12にOS切り替え手段が組み込まれており、BIOS12が起動されると、図2に示すOS選択画面22がコンピュータのデスクトップ画面に表示される。この画面でユーザがどちらかのOSを選択すると、BIOS12は選択されたOSのマスタブートレコード(MBR)を読み出して、選択されたOSを起動し、そのデスクトップ画面を表示する。例えば、第2OS15aが選択されると、BIOS12は第2記憶装置15に記憶された第2OS15aを起動し、その先頭領域からマスタブートレコードを読み出して第2OS15aのデスクトップ画面を表示する。これによりシンクライアントコンピュータ装置10はシンクライアントシステムのクライアント端末として動作するようになる。
【0041】
一方、第1OS14aが選択されると、BIOS12は第1記憶装置14に記憶された第1OS14aを起動し、その先頭領域からマスタブートレコードを読み出して第1OS14aのデスクトップ画面を表示する。これによりシンクライアントコンピュータ装置10は通常の一般的な汎用コンピュータとして動作するようになる。この状態では第2OS15aがインストールされている第2記憶装置15は、第1OS14aがインストールされている第1記憶装置とは物理的に分けられているので、第1OS14aが第2記憶装置15を参照することはできないから、シンクライアントコンピュータ装置10のセキュリティーを高めることができる。
【0042】
また、先に説明したように、シンクライアントコンピュータ装置10においては、起動されない第2OS15aが記憶された第2記憶装置15の電源をディスエーブルの状態に制御するから、起動された第1OS14aから第2OS15aが記憶された記憶装置15を完全に参照できなくしている。従って、シンクライアントコンピュータ装置10のセキュリティーを完全に保つことができる。
【0043】
ここで、第2OS15aによるシンクライアントコンピュータ装置10の動作は、シンクライアントコンピュータ装置10上に表示されるGUI(グラフィックユーザインタフェース)での操作をサーバ上で実行されるアプリケーションへ送信し、この操作に基づいてアプリケーションが実行され、実行結果がシンクライアントコンピュータ装置10に送信され、シンクライアントコンピュータ装置10上に表示されるGUIに反映させるものである。
【0044】
従って、シンクライアントコンピュータ装置10で行われるデータ処理は、全てサーバ上で行われ、シンクライアントコンピュータ装置10にデータが保存されることはない。シンクライアントシステムではユーザに種々のアクセス権限を設定できる。例えば、ユーザ毎に、データの種別毎に、参照のみ許可、書換えを許可、印刷を許可など、各種の権限レベルを設定することができる。このような処理は、一般的なシンクライアント端末装置、シンクライアントシステム(例えば、上記特許文献3)と同様であり、詳細説明は省略する。
【0045】
以上、説明したように、本発明の実施例1にかかるシンクライアントコンピュータ装置10は、OSがインストールされる記憶装置を物理的に区分し、BIOSにOS切り替え手段が組み込まれており、BIOSにより表示されるOS選択画面によりいずれかのOSをユーザが選択するように構成したので、一方の記憶装置に記憶されたOSが選択、起動された際に、起動されたOSにより他のOSがインストールされた他の記憶装置を参照することはできず、シンクライアントコンピュータ装置10のセキュリティーを高めることができる。
【実施例2】
【0046】
図3は、本発明の実施例2にかかるシンクライアントコンピュータ装置10の構成を示すブロック図である。実施例2にかかるシンクライアントコンピュータ装置10は、パワースイッチが、パワースイッチA(12a)とパワースイッチB(12b)とに分けられ、それぞれのパワースイッチが、それぞれのOSが記憶された記憶装置に対して電源供給するように記憶装置への電源供給が独立している点で実施例1にかかるシンクライアントコンピュータ装置10と相違し、また、BIOS13がOS切り替え手段を有していない点で相違する。なお、パワースイッチA(12a)とパワースイッチB(12b)のいずれがオンしてもハードウエア部16にはともに電源が供給されることはいうまでもない。
【0047】
本発明の実施例2にかかるシンクライアントコンピュータ装置10は、図3に示すように、パワースイッチ12a、12b、BIOS(基本入出力システム)13、第1記憶装置14、第1OS14a、アプリケーションプログラム群14b、第2記憶装置15、第2OS15a、アプリケーションプログラム群15b、ハードウエア部16を備えている。ハードウエア部16は、マイクロプロセッサなどのCPU17、RAMなどのメモリ18、プリンタや表示デバイスあるいはネットワークへの入出力を行う入出力デバイス19などから構成される。
【0048】
第1記憶装置14には、第1のOSがインストールされている。ここでは、第1OS14aは、シンクライアントコンピュータ装置10を一般的な汎用のコンピュータ装置として動作させるためのOSであり、例えば、ウィンドウズ(登録商標)などの一般的な汎用コンピュータ用のOSがインストールされる。また、第1記憶装置14には、第1OS14aのもとで動作する各種のアプリケーションプログラム群14bがインストールされる。第1記憶装置14は、実施例1と同様にハードディスクであってよい。
【0049】
第2記憶装置15には、第2のOSがインストールされている。ここでは、第2OS15aは、シンクライアントコンピュータ装置10をシンクライアントコンピュータ装置として動作させるためのOSがインストールされる。また、第2記憶装置15には、第2OS15aのもとで動作する各種のアプリケーションプログラム群15bがインストールされる。第2記憶装置15は、実施例1と同様に半導体メモリであってよい。
【0050】
パワースイッチ12a、12bはそれぞれ、シンクライアントコンピュータ装置10の電源スイッチであり、パワースイッチ12aをオンすると、第1記憶装置14と、その他の各部への電源が供給される。また、パワースイッチ12bがオンされると、第1記憶装置14と、その他の各部への電源が供給される。いずれかのパワースイッチ12aまたは12bがオンされると、BIOS(Basic Input Output System:基本入出力システム)13が起動される。BIOS13は電源が供給されている記憶装置、例えば、パワースイッチ12aがオンされた場合は、記憶装置14から第1OS14aのマスタブートレコードを読み出して第1OS14aのデスクトップ画面を表示し、第1OS14aを起動する。これによりシンクライアントコンピュータ装置10は、一般の汎用コンピュータ装置として動作する。
【0051】
一方、パワースイッチ12bがオンされた場合は、記憶装置15から第2OS15aのマスタブートレコードを読み出して第2OS15aのデスクトップ画面を表示し、第2OS14bを起動する。これによりシンクライアントコンピュータ装置10はシンクライアントシステムのクライアント端末として動作するようになる。これによりシンクライアントコンピュータ装置10はシンクライアントシステムのクライアント端末として動作するようになる。
【0052】
従って、パワースイッチ12aがオンされ、第1OS14aが起動されたシンクライアントコンピュータ装置10が通常の一般的な汎用コンピュータとして動作する場合には、第2OS15aがインストールされている第2記憶装置15には電源が供給されておらず、第1OS14aが第2記憶装置15を参照することはできないから、シンクライアントコンピュータ装置10のセキュリティーを高めることができる。
【0053】
以上、説明したように、本発明の実施例2にかかるシンクライアントコンピュータ装置10は、OSがインストールされる記憶装置を物理的に区分するとともに、パワースイッチを複数設けてそれぞれのOSがインストールされた記憶装置に電源を供給することで、パワースイッチをOS選択手段として機能させ、いずれかのパワースイッチをユーザが選択、操作するように構成したので、一方の記憶装置に記憶されたOSが選択、起動された際に、起動されたOSにより他のOSがインストールされた他の記憶装置を参照することはできず、シンクライアントコンピュータ装置10のセキュリティーを高めることができる。
【符号の説明】
【0054】
10・・・・シンクライアントコンピュータ装置
11・・・・パワースイッチ
12・・・・BIOS(基本入出力システム)
14・・・・第1記憶装置
14a・・・第1OS
14b・・・アプリケーションプログラム群
15・・・・第2記憶装置
15a・・・第2OS
15b・・・アプリケーションプログラム群
16・・・・ハードウェア部
17・・・・CPU
18・・・・メモリ
19・・・・入出力デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンクライアントコンピュータ装置を汎用コンピュータとして動作させるための第1のOSが記憶された第1の記憶装置と、前記第1の記憶装置とは物理的に独立して設けられ、シンクライアントコンピュータ装置をシンクライアント端末として動作させるための第2のOSが記憶された第2の記憶装置と、前記第1のOSと第2のOSのいずれかを選択して切り替えるためのOS切り替え手段と、を備えたことを特徴とするシンクライアントコンピュータ装置。
【請求項2】
前記OS切り替え手段は、シンクライアントコンピュータ装置に電源が投入された際に実行されるBIOSに組み込まれ、表示手段に表示したOS選択画面上で選択されたOSのMBRを読み出してOSを切り替えるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のシンクライアントコンピュータ装置。
【請求項3】
前記BIOSは、選択されないOSが記憶された記憶装置の電源供給をディスエーブル状態に制御することを特徴とする請求項2に記載のシンクライアントコンピュータ装置。
【請求項4】
前記OS切り替え手段は、前記第1の記憶装置に電源を供給する第1のパワースイッチと、前記第2の記憶装置に電源を供給する第2のパワースイッチにより構成され、BIOSは、前記第1のパワースイッチまたは第2のパワースイッチの操作に応じて電源が供給された記憶装置にインストールされたMBRを読み出してOSを切り替えるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のシンクライアントコンピュータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−37956(P2012−37956A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175194(P2010−175194)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(503172138)株式会社応用電子 (23)
【Fターム(参考)】