説明

シングルドームテント

【課題】テント本体内部での結露発生を抑制する。
【解決手段】合成繊維または天然繊維で構成された薄い柔軟性のある生地に、コーティング加工による耐水圧・透湿加工素材のシートを一体に接合縫着した耐水・透湿層シートでテント本体生地とし、このテント本体生地を用いて、テント底部3を除くテント前後面部1aおよびテント左右側面部1bを形成する。テント底部周縁部に帯状の縁まわりテープを一体に介在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング加工による耐水圧・透湿加工素材のテント本体生地を用いて、テント本体のテント前後面部およびテント左右側面部の裾部周辺に取り巻き形成されている幅広の帯状の底部立上り部(バスタブ)を構成しないことにより大きな結露の発生源をなくしたシングルドームテントに関する。
【背景技術】
【0002】
登山、キャンプ等で使用される携帯用小型テントは、就寝、休憩などの他、例えば悪天候の際に、風雨を防いで人体を保護するために欠かせない用具である。この種のテントでは、携帯の便を図る上で、軽量かつコンパクト性が求められている。今日、この軽量化およびコンパクト化は、テント生地、ポール材質等のかなりの部分で達成されている。
【0003】
ところで、このテントは、設営場所を選ばず、誰でも簡単に組み立てて設営することが要望される。テントの設営においては、迅速な組み立て、特に天候の急変など、緊急を要する場合には無駄な時間を費やさず、スピーディに組み立てられることが要望される。このため、テントが張り上がると同時に完成する自立式テントが好適である。
【0004】
この自立式テントは、テントの緊張の仕方により3つの方式に大別される。1つは吊り下げ式テントと呼ばれ、テントは張設したポールからループなどの適当な支持要素を介して吊り下げた状態で張られる。他の1つは、ポール差し込み式テントと呼ばれ、テントの外周にポールが挿通される細いチューブ状の筒体が稜線に沿って備えられ、ポールがこのチューブ状の筒体を通ったときテントがポールの弾性で張られる外張り方式のものである。
【0005】
さらに、別の1つは、ドライエッケン式と呼ばれるものである。緊張手段としてのロープによって本体のロープをポールに巻き込み半円形に沿って均等にポールとテントとが結ばれ、ロープの張力でテントが支えられ、理想的な設営ができるものである。ところで、多く野外用テントとして現在一般的に使用されるドーム型テント構成材は、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維或いは綿を素材として薄く織成した生地に防水、撥水加工を施したものが使用されている。
【0006】
このテント素材は、キャンプ設営場所での風雨、露、雪などを防ぎ、夏期または酷暑地域での使用において蒸れや汗ばみを防止し、冬期または酷寒地域での使用において高い保温効果を発揮するという、矛盾する要求がなされている。ドームテントとして現在市販されているテント素材はテント本体部が撥水加工され、テント本体底部並びにこれに続く幅広の帯状の立上り部(バスタブ)が防水加工された生地が使用される。このドームテントの上にさらに防水加工されたフライシートとの組み合わせが一般に普及している。
【0007】
このテント生地は三層構造のもので、フライシート素材は耐水圧2000ミリ、本体は撥水生地で、底部立上り部(バスタブ)は耐水圧3000ミリとなっており、このようなコーティング防水素材を使用しているため、厚手の感があり、底部立上り部(バスタブ)が設けられているためテント内に結露が発生する。特に、テント外の外気温度が低い場合には、テント内部との温度差が大きくなりテント内面に細かい水滴が付着する結露現象が顕著となる。また、この結露現象は特に完全防水加工を施してある、底部シート並びにこれに続く底部立上り部(バスタブ)などに集中的に発生する。
【0008】
この底部シート並びに底部立上り部(バスタブ)は、完全防水性の生地により底部から一体に連続するように取付られている。このため、この底部立上り部は、テント本体生地のテント左右側面部およびテント前後面部の裾部の一部をなし、この底部立上り部の上端部で前記テント本体生地に接合されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
図8は、このような従来の底部立上り部(バスタブ)が設けられたテントを張設した一例を示す斜視図である。このテントはポール差し込み式のドームテントであり、テント本体11の稜線に沿って形成された細いチューブ状の筒部13a、13bに、2本のポール12a、12bを挿通して地面に設営される。
【0010】
これらのポール12a、12bは、テント本体11の頂部で交差するように各筒部13a、13b内に挿通されている。また、各ポール12a、12bの各端部は、筒部13a、13b下端部付近から外部へ露出され、テント本体11下端の四隅に突設されたポール係止片14のポール係止孔14aに挿入され、その張力で保持される。
【0011】
この状態で、ポール12a、12bに弾性的な突っ張り力が発生し、この突っ張り力を受けてテント本体が緊張状態に立ち上げられ、テントの設営が可能となる。
【0012】
このドームテントは、テント本体生地が防水加工を施したナイロン、テトロンなどの3層構造の合繊生地を加工したもので構成される。この場合、底部15及び底部立上り部17は、その防水加工を施した合繊生地(テント本体生地)のテント前後面部16aおよびテント左右側面部16bの下端に連続する底部立ち上り部17に、連続的に形成されている。
【0013】
つまり、底部15および底部立上り部17は、例えば3層構造の完全防水性の合繊生地により容器型(バスタブ型)に形成され、これがテント前後面部16a,16aおよびテント左右側面部16b,16bの下端部に接着または縫合などの手段を介して接合されている。(特許第3300689号公報)
【特許文献1】特許第3300689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の底部立上り部(バスタブ)17を設けたテントは、テント本体生地のテント前後面部16a,16aおよびテント左右側面部16b,16b自体には防水加工および蒸れ防止加工が施されているのに対し、これらに連続する底部立上り部17および底部15は完全防水処理が施されている。底部立上り部(バスタブ)17の容量はテント全体の容積に対して約30%以上占めている。
このため、テント内外の温度差によって、底部立上り部17を中心に結露が顕著に発生するだけでなく、テント前後面部16aおよびテント左右側面部16bの内面にも結露が発生する。
【0015】
特に、底部立上り部17と底部15の境には縫合部や接着部がなく一体であるため、地面へとしっかり安定せず、常に緩やかな円弧状が連続する。このため、図9に示すように、テントを設営すると、底部15から底部立上り部17と地面の境が円弧部Pを形成することになり地面と底部の間に冷たい外風Sがその円弧部Pからテント底部15の下面へ侵入し、底部立上り部17(バスタブ)および底部15が冷却されることになる。従って、この底部15及び底部立上り部17(バスタブ)の内面側においてもテント内部に占める底部立上がり部分の面積が大きいため、大きく結露の発生源になるという問題があった。
【0016】
テント本体を合成繊維または天然繊維で織成された薄い柔軟性のある生地に、コーティング加工による耐水圧・透湿加工素材のシートを一体に接合した耐水・透湿層シートで形成してるので、従来の3層構造の生地より軽量となる。
【0017】
また更に、図9に示すように、従来のテントは、テント四隅にポールを装着するポール係止片14が取り付けられ、ポール係止片14の先端にポール12b,12bを係止するポール係止孔14aが設けられている。このためポール12b,12bの先端を装着してテントを張設するので、テント隅部とポールを支持するポール係止片14の間に隙間ができ、地面と接地するテントの底地部分が地面へしっかりと安定せず底回りが弱く、縫着部分がなく上部の方のみが頭が大きくて、強風には弱かった。土台の無い家の構造に似ている。すなわち、底部立上がり部は、約30cm位の帯状にして風呂敷に布団を包んだようなふくらみで底部の形状が分からないような状態であるから、テント底部へ強風が当たるとテントが安定せず、テントの原型を保ち続けるのが不可能で風雨にも弱い。このため外風Sで、テント各側面部の底部立上り部(バスタブ)17と共にテント隅部も立ち上り、この方向からも外風Sが侵入することになり、このため底部立上り部(バスタブ)17および底部15の結露が加速されることになる。
【0018】
更に近年、テント本体生地として、米国のゴア社が開発したゴアテックスと呼ばれる合繊生地が広く使用されている。この合繊生地は、ゴアテックス・メンブレンと呼ばれる微細の特殊膜を繊維にフィルム加工した3層構造のナイロン素材からなる。このゴアテックスは、雨や雪などによる水滴の浸入を防ぎ、汗水の蒸気だけを外へ放出するという機能と、保温性を持つことができる。
【0019】
しかし、この3層構造のナイロン素材(ゴアテックス)においても、保温性が良好であるため、底部立上り部が防水生地で形成されていると、その分テント内部に結露が発生することは避けられない。また、テント本体11がナイロン生地やテトロン生地からなるものに比べて少々重くなっており、かつ、三層構造であることから嵩張るだけでなく、高価になるという問題があった。
【0020】
本発明は、前記従来の問題を解決するものであり、底部を除くテント前後面部およびテント左右側面部の全体を、柔軟性がある生地に耐水・透湿層を一体に持つコーティング加工を施した素材シートをテント本体生地に使用すると共に、テントから底部立上り部(バスタブ)を取り払うことにより、テント本体内面での結露発生を抑制することができるテントを提供するものである。また、本発明は、結露発生の防止を、軽量で嵩張らず、しかも安価な素材を用いて実現できるテントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の請求項1の発明に係るシングルドームテントは、合成繊維または天然繊維で織成された薄い柔軟性のある生地に、コーティング加工による耐水圧・透湿加工素材のシートを接合して一体にした耐水・透湿層シートでテント本体生地を形成し、該テント本体生地を張設してテント前後面部及びテント左右側面部をテント底部まで延出し、該テント前後面部および該テント左右側面部の下端縁部にテント底部を配設し、当該両接合部に沿って帯状の縁まわりテープを介在させると共に、該帯状の縁まわりテープが突き合う四隅部にポール係止片を形成すると共にポール係止孔を穿設し、前記帯状の縁まわりテープを介在させた状態で前記テント前後面部及び前記テント左右側面部を前記テント底部に縫合または接着により一体に接合すると共に、該テント底部周縁部内側で前記テント前後面部および前記テント左右側面部並びに前記帯状の縁まわりテープと前記底部内側を覆う位置に防水性の目止めテープを接合してなり、前記ポール係止孔にテントポールを装着してテント本体を張設する張力で前記帯状の縁まわりテープを前記底部周縁部で緊張させることを特徴とする。
【0022】
請求項1の発明によれば、テント本体生地が、合成繊維または天然繊維で織成された薄い柔軟性のある生地に、コーティング加工による耐水圧・透湿加工素材のシートを接合して一体にした耐水・透湿層シートを使用するので、耐水性、透湿性に富み、軽量なテント生地を構成することができる。
【0023】
また、テント前後面部およびテント左右側面部の下端部と底部周辺部とが接合縫着する部位には、帯状の縁まわりテープが底部の周縁部でほぼ直線状底部の周縁部に内側に片上がりした周縁部線上に張設されるので、この縁まわりテープが張られると従来の底部立上り部が設けられたテントに形成される円弧部Pが生じない。この円弧部Pが生じないので、外風Sがテント底部に進入する機会が減少する。これによって、テント内外の温度差が極端に大きくなることを回避でき、結露の発生を押えることができる。
【0024】
更に、テントの下端裾部周囲に取り巻き状の底部立上り部、すなわち完全防水部分が設けられていないので、テント本体が冷たい外風を受けた場合にも、テント内外の温度差が極端に大きくなることを回避でき、結露の発生を最大限に押えることができる。
【0025】
更にまた、帯状の縁まわりテープを底部周縁部に装着することで、テント設営時のテントポールの緊張に対するテント本体生地が張りあがりテントを立体的に設営する。縁周りテープで底部の周縁部もともに補強されて、生地が伸びたり、歪んだりすることが無くなる。また、一方底部は地面の凹凸に対応するゆとりも付けられている。
【0026】
従って、テント内面での結露発生を抑制できるだけでなく、底部上面周辺に置かれたザックや衣料等が結露した水滴に触れて濡れることを防止できる。また、テント前後面部およびテント左右側面部は完全防水ではないため、これらの内外温度差は大きくならず、これら各部における結露発生を抑制することができる。
【0027】
また、テント四隅には、帯状の縁まわりテープが突き当たる位置にポールを係止するポール係止孔が穿設されているので、テント四隅のポール係止孔にポール先端を装着すると、縁まわりテープがポール係止孔間で緊張される。このため、設営地面とテント底部との隙間がほとんどなく、外風がテント底部に進入する機会が減少する。これによって、テント内外の温度差が極端に大きくなることを回避できる。
【0028】
さらにまた、テント本体を張設する張力で前記帯状の縁まわりテープを緊張させるので、テント底部が設営地面から浮上するのを抑止し、外気が入るのを阻止するようになる。
テント本体を合成繊維または天然繊維で織成された薄い柔軟性のある生地に、コーティング加工による耐水圧・透湿加工素材のシートを一体に接合した耐水・透湿層シートで形成してるので、従来の3層構造の生地より軽量となる。
【0029】
請求項2の発明に係るシングルドームテントは、前記テント底部と前記テント前後面部および前記テント左右側面部との接合が、前記テント前後面部および前記テント左右側面部と、前記テント底部との重ね合せ部に厚手の織物地に防水加工を施した帯状の縁まわりテープを介在させた状態で前記各両端部を内側に折り曲げて重ね合わせ、前記テント前後面部および前記テント左右側面部に縫着または接着により一体に接合すると共に、前記テント前後面部および前記テント左右側面部と前記テント底部との接合部に沿って該テント底部の折り返し部に防水状の目止めテープを当接して接合させたことを特徴とする。
【0030】
請求項3の発明に係るシングルドームテントは、前記テント底部と前記テント前後面部および前記テント左右側面部との接合が、前記各両端部を重ね合せて突出させると共に、その重ね合せ部に厚手の織物地に防水加工を施した帯状の縁まわりテープ両端部を内側に折り返して額片を形成(バインダー加工)した断面略U字状に形成し、該縁まわりテープの額片を前記本体両端合せ部に沿って被着しこれを縫着または接着により一体に接合すると共するに、前記テント前後面部および前記テント左右側面部と、前記テント底部との接合内側部に沿って防水性の目止めテープを接合させたことを特徴とする。
【0031】
請求項4の発明に係るシングルドームテントは、前記テント底部と前記テント前後面部および前記テント左右側面部との接合が、前記各両端部を重ね合せて突出させると共に、その重ね合せ部に厚手の織物地に防水加工を施した帯状の縁まわりテープテープテープ両端部を折り曲げて断面略U字状に形成し、この縁まわりテープを前記各両端合せ部に沿って被着しこれを縫着または接着により一体に接合すると共するに、前記テント前後面部および前記テント左右側面部と、前記テント底部との接合内側部に沿って防水性の目止めテープを接合させたことを特徴とする。
【0032】
請求項2〜4の発明によれば、テントポールを用いてテントを設営した後は、帯状の縁まわりテープの突っ張り力で、テント底部がテントが設営される地面に接触させることができる。従って、冷たい外気がテント底部の下に侵入するのを回避でき、テント底部およびテント前後面部やテント左右側面部の下端付近でテント内外の温度差が大きくなることを防止できる。これによって、テント底部とテント前後面部およびテント左右側面部の下端付近でのテント内の結露発生を効果的に回避できる。
【0033】
更に、テント前後面部およびテント左右側面部と、テント底部との接続部の接合内面部分に沿って防水性の目止めテープを当接させているので、接合部から水が侵入することがない。防水効果も十分に得られる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、テント底部を除くテント前後面部およびテント左右側面部の全体を、合成繊維または天然繊維に耐水・透湿層を持つコーティング加工の素材シートで構成されているため、底部立上り部を形成する必要が無く、テント内外の温度差が大きくなるのを防止できる。すなわち、テント本体の生地の薄さと耐水度を考慮に入れて製作されているので、とくにテントの底地の部分は耐水度を保つようにするため、縫着部分を少なくしている。底地の部分はドーム型テントの構造として2本のポールの交差している4隅のみを縫着している。
また、テント設営時に、底部とテント前後面部およびテント左右側面部の境目に帯状の縁まわりテープを緊張させることで、設営地面とテント底部への外気の侵入を押えることができる。
従って、その温度差を原因とするテント前後面部やテント左右側面部の内面に結露が発生することを抑制することができる。これにより、テント内に置かれた衣料品などが水滴によって濡れることを防止できる。
テント本体を合成繊維または天然繊維で織成された薄い柔軟性のある生地に、コーティング加工による耐水圧・透湿加工素材のシートを一体に接合した耐水・透湿層シートで形成してるので、従来の3層構造の生地より軽量で、強度もあり安価である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図について説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るシングルドームテントの一例を示す斜視図、図2は図1に示すテント底部の平面説明図、図3は図1に示すポール係止孔と帯状の縁まわりテープの緊張関係を示す要部拡大説明図、図4〜5は本発明に係る帯状の縁まわりテープとテント底部の接合の一例を示す説明図、図6は本発明に係る帯状の縁まわりテープとテント底部の接合の他例を示す断面説明図、図7は本発明に係る帯状の縁まわりテープとテント底部の接合の他例を示す説明図である。
【0036】
図1において、本発明に係るテントの全体は、テント本体1と、このテント本体1外の上部において互いに交差するように配置され、テント本体1を立ち上げた状態にて支持する2本のポール2a、2bと、テント前後面部1a,1aおよびテント左右側面部1b,1bとテント底部3なるテント本体と、このテント底部3の周縁部に介在する帯状の縁まわりテープ4などから構成されている。図中、5はテント本体の四隅に形設されるテントポール差しのポール係止片を示す。
【0037】
このテント本体1は、上面の対角線上(テント前後面部1aとテント左右側面部1bとの縫い目に沿った線上または稜線上)に、複数個のロープ支持部材6が略等間隔に取り付けられている。前記対角線上の複数箇所に設けられたロープ支持部材6には、ロープ7が摺動可能に支持されている。このロープ7の複数部分が前記ポール2a、2bの上部を跨ぐように、テント稜線に沿って設けられているロープ支持部材6に引っ掛けられることで、ポール2a、2bに対しテント本体1が、図1に示すように支持される。図中、8はテント出入り口の開閉シートを示す。
【0038】
テント本体1は、図1及び図2に示すように、合成繊維または天然繊維で織成された薄い柔軟性のある生地に、耐水・透湿層シートを一体に接合縫着してコーティング加工の素材シートとしたテント本体生地で形成される。このテント本体生地を張設してテント前後面部1a,1a及びテント左右側面部1b,1bを形成する。このテント前後面部1a,1aおよびテント左右側面部1b,1bの下端部には角形状のテント底部3を配設する。本発明において、このテント前後面部1a,1aおよびテント左右側面部1b,1bをテント底部3まで延出し、その下端部がテント底部3の周縁部に帯状の縁まわりテープ4を介在させ両者を直接接合させる。このため、従来のテントに在るテント底部3からの底部立上り部が形成されない。
【0039】
図2に示すように、このテント底部3の周縁部で、テント前後面部1a,1aおよびテント左右側面部1b,1bの間に、帯状の縁まわりテープ4が介在される。そして、テント四隅部で、テント稜線6の先端と帯状の縁まわりテープ4の突合せ部に、テントポールを装着するポール係止孔(グロメット)5aとテントポール差しのポール係止片5とが取り付けられている。このポール係止孔(グロメット)5aは、テント稜線6の先端で、帯状の縁まわりテープ4の突合せ部に位置し、ポール2a,2bを挿着すると、張力が働き帯状の縁まわりテープ4が直線方向に緊張する。この緊張によって、底部と地面との隙間が無くなり、テント底部3から外風の進入が少なくなり、結露の発生が抑止される。
【0040】
また、該テント底部3の周縁部内側には、図4から図7に示すように、帯状で防水性の目止めテープ9が接合部分に被着される。目止めテープ9は、帯状の縁まわりテープ4を介在させた状態でテント前後面部1a,1a及び前記テント左右側面部1b,1bを前記テント底部3に縫合または接着により一体に接合する内側で、接合部を密閉して接合部からの水の浸入を防止する。
【0041】
テント前後面部1aの一方には入口7が設けられ、この入口7には、図5に示すように、ジッパー等により開閉可能な開閉部(開閉蓋)8が設けられている。入口7の下部には、入口開放時に巻上げられた開閉部8を結束する結束部品10が取り付けられている。
【0042】
また、テント四隅のポール係止孔(グロメット)5aの先端には、図3に示すように、テント前後面部1a,1aとテント左右側面部1b,1bの接続部(隅部)下端に対応する位置に、テントポール差しのポール係止片5が取り付けられている。このポール係止片5は、テント前後面部1aとテント左右側面部1bの稜線6上の位置で、各帯状の縁まわりテープ4の先端が交差する位置に突出した形で配設される。
【0043】
上記各帯状の縁まわりテープ4の先端が突き合わされて交差する位置(突合せ部)には、テントポール2a、2bの下端を挿入状態で保持するポール係止孔5aが設けられている。このポール係止孔5aは、各帯状の縁まわりテープ4が交差する部位に穿設され、テントポール2a,2bを挿入することで、テントポール2a,2bの弾性によって、縁まわりテープ4に緊張を付与し、縁まわりテープ4を直線状に強力に張る。これによって、テント本体を設営したとき、帯状の縁まわりテープ4がテント設置地面に沿うように敷設することができる。
【0044】
また、ポール係止孔5aは、帯状の縁まわりテープ4が交差する部位にあるので、外風で浮上することがない。これによって、テント本体1を設営したとき、帯状の縁まわりテープ4がテント設置地面に沿うように敷設することができるのと併せて、浮き上がりを防止する。これによってテント底部3に冷風Sの進入が阻止され、温度差が生じる現象が抑えられ、テント内の結露の発生が押えられる。
【0045】
次に、テント前後面部1a,1a並びにテント左右側面部1b,1bと、テント底部3の接続構造を説明する。
【0046】
図4〜5は、請求項2に示す接合構造を示すものである。この接合は、図4に示すように、テント前後面部1a,1aおよびテント左右側面部1b,1bとテント底部3とを縫着9b又は接着9aなどにより接合する際に、縁まわりテープ4を屈曲して挟み込んで縫着9b又は接着9aで内側から接合する。更に目止めテープ9を内側から当接して接着剤などの接合手段で一体とする。このように、前記接合面部に防水性の目止めテープ9を当接させているので、接合部から水や風がテント内に浸入することがない。
接合方法は防水性の上から接着が好適である。
【0047】
図5は、接合構造のポール係止片(グロメット)5の部分を示すものである。図5に示すように、テントの四隅部は、ポール係止孔5aが穿設されているポール係止片(グロメット)5が配設されている。テント前後面部1a,1aおよびテント左右側面部1b,1bとテント底部3とを縫着9b又は接着9aなどにより接合する際に、帯状の縁まわりテープ4とポール係止片(グロメット)5を挟み込んで縫着9b又は接着9aで接合する。内側には、目止めテープ9を内側から当接して接合手段で一体とする。このように、ポール係止片(グロメット)5と帯状の縁まわりテープ4とが四隅部で強固に一体になっている。
帯状の縁まわりテープ4の突出幅は、テントの大きさにもよるが、約2〜5cm幅を残して介在されている。
【0048】
図6は、請求項3に示す接合構造の他例を示すものである。この接合方法は、図6に示すように、テント底部3とテント前後面部1a,1aおよびテント左右側面部1b,1bとの接合が、前記各両端面縁部を重ね合せて突出させる。その重ね合せ部に帯状の縁まわりテープ4の両端縁部を折り曲げて、縁部を内側に折り返し、断面が略U字状の額片4aを形成し、この縁まわりテープ4を前記本体両端面部突き合せ部に沿って被覆した状態で、それぞれ縫合4d又は接着4cなどの手段により接合して一体とする。テント前後面部1a,1aおよびテント左右側面部1b,1bと、テント底部3との接合内側部に沿って被覆する形で防水性の目止めテープ9を当接させ、接着9aして接合する。このように、防水性の目止めテープを当接させているので、接合部から水がテント内に浸入することがない。
【0049】
図7は、請求項4に示す接合構造の他例を示すものである。この接合方法は、図7に示すように、テント底部3とテント前後面部1a,1aおよびテント左右側面部1b,1bとの接合が、前記各両端面縁部を重ね合せて突出させる。その重ね合せ部に帯状の縁まわりテープ4の両端縁部を折り曲げて断面が略U字状に形成した状態で、この縁まわりテープ4を前記各両端合せ部に沿って被覆し、この状態で縫合4d又は接着4cなどの手段により接合して一体とする。テント前後面部1a,1aおよび前記テント左右側面部1b,1bと、テント底部3との接合内側部に沿って被覆する形で防水性の目止めテープ9を当接させ、接着9aして接合する。このように、防水性の目止めテープを当接させているので、接合部から水がテント内に浸入することがない。
【0050】
本発明では、帯状の縁まわりテープ4をテント底部周辺に配設することによって、テントポール2a、2bは両端がポール挿入孔5aに挿入され、かつ保持された状態では、自身の突っ張り作用により、それぞれ交差部が最上位となるように、円弧状に持ち上げられる。このため、このテントポール2a、2bの突っ張り力を受けて、各グロメット5、5間の帯状の縁まわりテープ4に緊張力が作用する。この結果、帯状の縁まわりテープ4は直線状に緊張し、テント設営中は地面に接して浮き上がらない。従来の立ち上り部17およびこれに連続するテント底部15周辺のように円弧部Pを形成して地面から浮き上がることがない。
【0051】
これらの実施の形態では、テント本体1のテント前後面部1a,1aおよびテント左右側面部1b,1bの全体が耐水・透湿層シートを一体に接合したコーティング加工の素材シートのテント本体生地で作られ、テント底部3のみが完全防水性の加工素材で形成されている。耐水・透湿層シートを底部まで一体に接合して底部材料として使用することも可能である。
【0052】
前記テント本体生地素材としては、ナイロンやテトロンの合繊生地や天然繊維生地に、耐水・透湿処理を施したコーティング加工の素材シートの生地が用いられる。従って、テント前後面部1a,1aおよびテント左右側面部1b,1bを完全防水処理した場合とは異なり、テント内外の温度差を少なめに抑えて、前記結露の発生を抑えることができる。
【0053】
また、冷たい外風Sがテント本体1に吹付ける場合においても、帯状の縁まわりテープ4が設営地面に沿うようにテント底部外周に配設されているため、テント底部3と地面との隙間が発生し難く、図9に示すような外風Sが流れ難くなる。従って、テント前後面部1a,1aおよびテント左右側面部1b,1bの下端部と、テント底部3の周辺部のみが集中的に冷却されるのを回避できる。この結果、従来型のテントのような完全防水性の立上り部17を設けた場合に比べて、対応部位の内面に結露が発生し難くなる。
【0054】
更に、テント底部3は、テント前後面部1a,1a及びテント左右側面部1b,1bと同様のコーティング加工による耐水性・透湿加工素材のテント本体生地に防水処理を施したもの等で形成されている。この接合部の内側に当接されている防水性の目止めテープ9で、接合部分からの水の浸入が防止される。
このようにテント本体の生地の薄さと耐水度を考慮に入れて製作されているので、とくにテントの底地の部分は耐水度を保つようにするため、素材に高密度ナイロン40d、防水地対水圧3000mmの生地を使用する。に加えて縫着部分を地面に接して設けている。
この点、従来のテント底部は、図9に示すように、底部の立ち上がりを約30cm位にして風呂敷に布団を包んだようなふくらみで底部の形状が分からないような状態であるから、テント底部へ強風が当たるとテントが安定せず弱いところがあり、テントの原型を保ち続けるのが不可能で、風雨にも弱いのが現状であった。
本発明に係る縁まわりテープを底部周辺に取り巻き装着することによって、強度を増し、テント底部がテント設置地面に沿うように敷設できるため、風の侵入が阻止サレ、テント底部の浮き上がりを防止し、テント内の温度差と、結露も最小限に抑えることが可能になった。
【0055】
また、外から雨水が入りやすいため、テント生地の縫着部分の加工技術が難しいため、できる限りテント底部の縫製箇所を少なくするのが課題であった。旧来のフライシート付テントの場合、フライシートに雨が連続して長時間降られて濡れると、フライシートの生地が濡れて水分を含んでたるみが出て撥水のテント本体生地に重なり、通気と防水が悪くなってしまう欠点が解消された。併せて本体底部立上り部(バスタブ)の完全防水処理の素材的欠点により、大きく結露が発生する原因も解消された。
【0056】
本テント1では、従来型のテントにおけるようなテント底部立ち上がり部(バスタブ)17を無くすることで、テント前後面部1a,1a及びテント左右側面部1b,での結露の発生量を大きく抑えることが出来る。従って、テント内に設置した衣類などがテント前後面部1a及びテント左右側面部lbの内側に通常付着する水滴により濡れるのを効果的に防ぐことが出来る。コーティング加工による耐水圧・透湿加工素材のシートを一体に接合縫着した耐水・透湿シートでテント本体生地を形成し、本素材をテント底部まで延出することにより完全防水生地素材の素材的欠点の大きな結露発生原因となる生地素材の使用をしないで済んだ。底部立ち上がり部(バスタブ)を無くし底の周りに縁回りテープが出来た為、結露を大きく抑え外部とテント内部の温度コントロールが可能となり、テント内の温度・湿度が安定して居住快適性に優れた環境が生まれ、快適なテント生活が出来るようになった。さらにまた底部周囲の帯状の縁回りテープによりテント底部全体が地面にしっかり密着し特に良く安定する為、テント底部と地面の間に外風が入るのを防いでテント内の温度と外気温度差が大きくならない様にする効果が大きい。この為テント内外温度差が大きくならず、テント内部に於ける結露発生を最大限抑制可能となり、テント生活がより快適となる効果が高くなった。
【0057】
更に、テント底部3は、テント前後面部1a,1a及びテント左右側面部1b,1bと同様のテント本体生地に、防水処理を施したもの等で形成されている。この接合部の内側の防水性の目止めテープ9で、接合部分からの水の浸入が防止される。この目止めテープ9は、耐水性と、引っ張り強度の高いベルト状部材から構成される。
【0058】
山岳用テントでは、従来型のテントにおけるような立上り部(バスタブ)17を無くすることで、テント前後面部1aおよびテント左右側面部1bでの結露の発生量を少なめに抑えることができる。従って、テント内に設置した衣類などがテント前後面部1aやテント左右側面部1bの内側に付着した水滴により濡れるのを、効果的に防ぐことができる。
【0059】
前記構成のテント本体1は、より以上の居住空間と、雨天の時などの快適な使用条件を目的として、使用時期に合せてナイロン又はテトロン素材に防水加工及び撥水加工を施したフライシートか或いは寒冷な冬期においては外張りを併用することで、テント本体の温度及び湿度を適切にコントロールすることができる。
【0060】
このように、本発明では、合成繊維または天然繊維で構成された薄い柔軟性のある生地に、所定の耐水圧および透湿性能を持つ耐水・透湿層を一体に設けてテント本体生地とし、このテント本体生地で、テント底部3を除くテント前後面部1aおよびテント左右側面部1bを形成した。
【0061】
これにより、テント前後面部1aおよびテント左右側面部1bの下部とテント底部3周辺とが連続する部位に、完全防水性の立ち上り部を設ける必要がなくなり、テント本体1が冷たい外風を受けた場合にも、この風を受けた部位を中心として、テント全体における内外の温度差が極端に大きくなるのを回避できる。
【0062】
従って、テント内面における結露発生を抑制し、テント底部3周辺のザックや衣料等が水滴に触れて濡れることを防止できる。また、軽量で嵩張らないため、山岳用テントとしての利用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態に係るシングルドームテントの斜視図。
【図2】図1に示すテント底部の平面図。
【図3】図1に示すポール係止孔と縁まわりテープの緊張関係を示す拡大図。
【図4】本発明に係る縁まわりテープとテント底部の接合の一例を示す拡大断面図。
【図5】図4に示すポール係止孔と縁まわりテープの緊張関係を示す拡大断面図。
【図6】本発明に係る縁まわりテープとテント底部の接合の他例を示す断面図。
【図7】本発明に係る縁まわりテープとテント底部の接合の他例を示す断面図。
【図8】従来のテントを示す斜視図である。
【図9】図8に示すテントの立ち上り部(A)の拡大説明図。
【符号の説明】
【0064】
1…テント本体、1a…テント前後面部,1b…テント左右側面部、2a,2b…テントポール、3…テント底部、4…帯状の縁まわりテープ、5…ポール係止片、5a…ポール係止孔、7…ロープ、6…ロープ支持部材、8…開閉シート、9…目止めテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維または天然繊維で織成された薄い柔軟性のある生地に、コーティング加工による耐水圧・透湿加工素材のシートを接合して一体にした耐水・透湿層シートでテント本体生地を形成し、
該テント本体生地を張設してテント前後面部及びテント左右側面部をテント底部まで延出し、該テント前後面部および該テント左右側面部の下端縁部にテント底部を配設し、当該両接合部に沿って帯状の縁まわりテープを介在させると共に、
該帯状の縁まわりテープが突き合う四隅部にポール係止片を形成すると共にポール係止孔を穿設し、前記帯状の縁まわりテープを介在させた状態で前記テント前後面部及び前記テント左右側面部を前記テント底部に縫合または接着により一体に接合すると共に、
該テント底部周縁部内側で前記テント前後面部および前記テント左右側面部並びに前記帯状の縁まわりテープとの前記底部内側を覆う位置に防水性の目止めテープを接合してなり、
前記ポール係止孔にテントポールを装着してテント本体を張設する張力で前記帯状の縁まわりテープを前記底部周縁部で緊張させることを特徴とするシングルドームテント。
【請求項2】
前記テント底部と前記テント前後面部および前記テント左右側面部との接合が、前記テント前後面部および前記テント左右側面部と、前記テント底部との重ね合せ部に厚手の織物地に防水加工を施した帯状の縁まわりテープを介在させた状態で前記各両端部を内側に折り曲げて重ね合わせ、前記テント前後面部および前記テント左右側面部に縫着及び/又は接着により一体に接合すると共に、前記テント前後面部および前記テント左右側面部と前記テント底部との接合部に沿って該テント底部の折り返し部に防水状の目止めテープを当接して接合させたことを特徴とする請求項1に記載のシングルドームテント。
【請求項3】
前記テント底部と前記テント前後面部および前記テント左右側面部との接合が、前記各両端部を重ね合せて突出させると共に、その重ね合せ部に厚手の織物地に防水加工を施した帯状の縁まわりテープ両端部を内側に折り返して額片を形成(バインダー加工)した断面略U字状に形成し、該縁まわりテープの額片を前記本体両端合せ部に沿って被着しこれを縫着及び/又は接着により一体に接合すると共するに、前記テント前後面部および前記テント左右側面部と、前記テント底部との接合内側部に沿って防水性の目止めテープを当接して接合させたことを特徴とする請求項1に記載のシングルドームテント。
【請求項4】
前記テント底部と前記テント前後面部および前記テント左右側面部との接合が、前記各両端部を重ね合せて突出させると共に、その重ね合せ部に厚手の織物地に防水加工を施した帯状の縁まわりテープテープテープ両端部を折り曲げて断面略U字状に形成し、この縁まわりテープを前記各両端合せ部に沿って被着しこれを縫着及び/又は接着により一体に接合すると共するに、前記テント前後面部および前記テント左右側面部と、前記テント底部との接合内側部に沿って防水性の目止めテープを当接して接合させたことを特徴とする請求項1に記載のシングルドームテント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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