説明

シングルプログラムトランスポートストリームをマルチプログラムトランスポートストリームに多重化するためのデジタルビデオ装置

【課題】複数のシングルプログラムトランスポートストリーム(SPTS)に関するデジタルマルチメディア受信信号を伝送する装置を提供する。
【解決手段】各SPTSは、所定数のトランスポートストリームパケットからなる一連のグループとして伝送される。パケットを受信する入力バッファは、どの任意時点でも所定数のパケットのみを保持するよう構成される。デーブルビルダーは、入力バッファからパケットを受信して各SPTSのパケットに一組のユニークなパケット識別子を割り当て、前記パケット内の各番組マップテーブルを再構成し、そしてマルチプログラムトランスポートストリーム(MPTS)についての番組関連テーブルを作成する。テーブルビルダーはデータパケット内の番組参照クロックを変更せずに維持する。ファーストイン・ファーストアウトバッファは、テーブルビルダーから受信したパケットを結合してMTPSを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ番組などのデジタルマルチメディア信号を顧客装置へ伝送するための装置及び方法に関し、より詳細には、複数のシングルプログラムトランスポートストリームを一つのマルチプログラムトランスポートストリームに変換する音声画像番組分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、テレビ番組は、シリアル伝送のために圧縮デジタル音声画像情報をパケット化する方法及びデータ形式を記述するISO/IEC13818−1標準規格により定義されたMPEG2プロトコルを用いてデジタル処理され分配されている。MPEG2プロトコルによれば、圧縮された画像及び音声番組データは、共通長さ188バイトを有するトランスポートパケットに分割される。同一番組のトランスポートパケットによってシングルプログラムトランスポートストリーム(SPTS)が形成され、そして一以上のSPTS即ち一以上の番組からのパケットが同一回路上で多重化され、その結果マルチプログラムトランスポートストリーム(MPTS)が得られる。
【0003】
各トランスポートパケットには、番組信号データの他に、与えられた番組についてのトランスポートパケットの各種類を他の種類から区別する(例えば画像パケットと音声パケットを区別する)値を含むパケット識別子(PID)フィールドが含まれる。MPEG2トランスポートパケットには、さらに、番組関連テーブル、番組マップテーブル及び番組基準クロックを含む番組特定情報(PSI)が含まれる。番組マップテーブル(PMT)には一つのシングルプログラムトランスポートストリームについてのパケット識別子が記載されている。番組関連テーブル(PAT)には、与えられたマルチプログラムトランスポートストリームに多重化された各シングルプログラムトランスポートストリームについての番組マップテーブルを含むパケットに関するパケット識別子が記載されている。番組基準クロック(PCR)には、デコーダを用いて異なるパケット中の番組内容を同一番組について同期させる(例えば音声トラックを関連画像とマッチさせる)ためのタイミング情報が含まれる。
【0004】
図1に示すような従来のケーブルテレビ番組分配装置10において、MPEG2番組コンテンツは、地球周回軌道衛星、地上波放送局及び他のコンテンツプロバイダを介するテレビ網などの複数のMPEG2番組発信源11−12から、装置のヘッドエンドにおいて取得される。MPEG2番組発信源11−12は、多くの場合オンデマンド映画及び自治体又は学区などのローカル番組を含む。当然ながら、ヘッドエンドはしばしば百以上の番組を受信し、その各々がMPEG2パケットからなるシングルプログラムトランスポートストリームを表わす。
【0005】
本明細書に記載の「番組」とは、テレビ番組、一連のビデオ画像、ビデオゲーム、コンピュータシステムにより作成されたビデオ画像及び記憶媒体から作成されたビデオ画像、しかしこれらに限定されない、を含む。
【0006】
ヘッドエンドにあるインターネットプロトコル(IP)ネットワークインターフェース14により、同一番組についてのMPEG2パケットからなるグループがインターネットプロトコルパケット内に置かれ、その後このインターネットプロトコルパケットが伝送のためにイーサネット(登録商標)フレーム内に挿入される。イーサネット(登録商標)フレームはIPネットワーク16の光ファイバーケーブルを介してヘッドエンドから送られる。
【0007】
図3は一つのイーサネット(登録商標)フレーム形式をグラフで示したものである。番組発信源11−12のうちの一つからの7個のMPEG2トランスポートストリーム(TS)パケットからなるグループにより、ユーザデータグラムプロトコル(UDP)フレームのデータフィールドが形成される。UDPフレームにはさらにヘッダが含まれ、このUDPフレームのヘッダには、とりわけUDPデータの発生源である番組発信源つまり付随するTSパケットの発信源を示す識別子が含まれる。UDPフレームは、従来のIPヘッダを有する標準インターネットプロトコルパケット内に置かれる。そして、IPパケットが標準イーサネット(登録商標)フレーム内に置かれて従来のイーサネット(登録商標)フレームのヘッダ及び従来のイーサネット(登録商標)フレームのフッタによって該フレーム内に結合される。各SPTSは、各番組に関するデータを伝送する一連の上記イーサネット(登録商標)フレームを有する。
【0008】
再び図1を参照すると、IPネットワーク16の光ファイバーケーブルはエンドユーザの一群で終わる。この一群は例えば約500世帯を有する市町村の一部又は大きなホテルである。IPネットワーク16の遠隔終端において、IPエッジマルチプレクサ18(一般的に「エッジQAM」と呼ばれる)は、イーサネット(登録商標)フレームから各番組のMPEG2TSパケットを抽出し、このTSパケットを用いて、与えられたテレビチャンネルについて、関連する番組を伝送する無線周波数(RF)キャリアを変調する。得られた複数の変調されたRFキャリアは、結合されて、通常同軸ケーブルを用いてエンドユーザの一群により定められたサービスエリアの全域にわたってテレビ番組を顧客端末に分配するRFネットワーク20上に与えられる。
【0009】
顧客端末において、RFネットワーク20は別々に設けられたデコーダ21、22又は23に接続され、これにより、その端末にいる人は、デコーダを対応するテレビチャンネルに調整して特定の番組を選択することができる。デコーダ21−23は、受信したチャンネル上のRFテレビ信号を、別の予め定められた共通出力チャンネル(例えばチャンネル3)に変換する又はRFテレビ信号を複合音声画像信号に変換する。どちらの変換の場合にも、各デコーダ21、22又は23からの出力が、この場合はデジタルテレビ受信機である関連表示装置24、25又は26に、それぞれ与えられる。
【0010】
図2を参照すると、従来のIPエッジマルチプレクサ18は、IPネットワーク16の光ファイバーケーブルが接続されたIPネットワークインターフェース30を有し、該IPネットワークインターフェース30は光信号をイーサネット(登録商標)フレームを伝送する電気信号に変換する。電気信号は、その後、各イーサネット(登録商標)フレームからMPEG2トランスポートストリーム(TS)パケットを再生するIPスタック32に与えられる。これらのTSパケットは次に入力バッファ34に与えられ、関連番組を識別するような様式で該入力バッファ内に一時的に保存される。さらなる処理のために具体的な番組に関するデータが必要な際には、一以上の関連TSパケットが入力バッファから読み取られ、ルータ36によって、各番組を伝送するよう指定された特定のテレビチャンネルについてのチャンネル回路38に送られる。当然ながら、一つの与えられたテレビチャンネルは、複数のデジタルテレビ番組を異なるサブチャンネルにのせて同時に伝送することができる。各チャンネル回路38は、それらの個々のテレビ番組のSPTSのパケットをMPTSに多重化して、その後このMPTSを用いて各テレビチャンネルについてのRFキャリアを変調する。
【0011】
説明を簡素化するために、IPエッジマルチプレクサ18を介する番組データの伝送について一つのSPTSとの関連で記載し、複数の番組のTSパケットも同様にして順に処理されるとの理解の下で記載する。各イーサネット(登録商標)フレームが受信されると、そのTSパケットからなるグループが抽出されて入力バッファ34内に置かれる。従来の入力バッファ34は、多数のイーサネット(登録商標)フレームからのトランスポートストリームパケット、即ち複数の別番組についてのトランスポートストリームパケットからなるグループを同時に保存する。入力バッファ34は非常に大きなランダムアクセスメモリによって実行され、これにより、入ってくる全TSパケットを、各パケットが各チャンネル回路38によって処理されるまで保存することができる。伝送される音声画像コンテンツの番組特定情報、具体的には番組関連テーブル及び番組マップテーブルをIPエッジマルチプレクサによって作成するための時間を提供するためには、比較的大量のバッファメモリが必要とされる。入力バッファのサイズは、チャンネル回路38によって処理されるまで保存する必要がある入力データの量に応じて、動的に変化する。
【0012】
IPスタック32及び入力バッファ34は、各番組についてのTSパケットの伝送において大きな遅延を生じさせる。具体的には、IPスタック32によって不確定且つ変化するマイクロ秒領域の遅延が生じ、その後入力バッファ34によってさらに最大3から4秒の別の遅延が生じる。任意の時点で生じるこれらの遅延の大きさと不確定さが原因で、信号処理中にかなりの遅延時間が生じる。
【0013】
特定の番組のTSパケットが入力バッファ34から最終的に読み出されると、ルータ36は、そのパケットを、各番組を伝送する予め定められたテレビチャンネルに関する適切なチャンネル回路38に送る。各チャンネル回路は類似した構成を有し、そのうちの一つの詳細を図2に示す。具体的には、チャンネル回路38は、テレビチャンネル出力信号の作成に必要とされる適正タイミング割合で入力バッファ34からデータを要求するよう構成されたマルチプレクサ40を有する。標準的なテレビチャンネルに関するRF信号は多重デジタルテレビ番組を同時に伝送可能であるので、マルチプレクサの機能は、これらの多重番組に関するTSパケットを含むトランスポートストリームを作成することである。したがって、マルチプレクサは、シングルプログラムトランスポートストリームに関するTSパケットを取得して、これらを各テレビチャンネルに関するマルチプログラムトランスポートストリームの中に挿入する。上記した処理過程において、マルチプレクサは、各番組のSPTS内に組み込まれたPCRタイミング情報を利用して、いつTSパケットを多重バッファ42に挿入するかを決定する。IPスタック32及び入力バッファ34において比較的大きく且つしばしば不確定で動的に変化する遅延が存在することから、内部のマルチプレクサ40は新しい番組基準クロック(PCR)を用いてTSパケットを再スタンプしなければならない。さらにマルチプレクサ40は、MPTSを確実に適正に構成するために新しい番組マップテーブル及び新しい番組関連テーブルを作成する。
【0014】
MPTSの適正なタイミングを作成するために、マルチプレクサはしばしば必要に応じてTSパケット間にヌル(null)パケットを出力し、これにより、出力段44は、マルチプレクサ40がSPTSパケットを受信した割合よりも高い一定割合でデータを得ることができる。マルチプレクサ40から得られた一連のパケットは多重バッファ42内に置かれ、これによりシングルTSパケットとマルチヌルパケットのグループが入り交じったマルチプログラムトランスポートストリームが構成される。図2においてチャンネル回路の下側に示すデータストリームを参照されたい。多重バッファ42もまた、出力段44が、マルチプレクサ40がSPTSパケットを受信した割合よりも高い一定割合でデータを得ることができることを可能にする。
【0015】
出力段44は、多重バッファ42から一定割合で出力されるデータパケットの時間を記録(clock)し、その後そのデータを用いて指定されたテレビチャンネルに関する適切なRFキャリアを変調する。そのようなテレビ信号の作成は直交振幅変調を利用するので、このタイプのIPエッジマルチプレクサはしばしば「エッジQAM」と呼ばれる。
【0016】
標準IPエッジマルチプレクサ18により生じる規模の遅延は、特に一方向放送ネットワークを介して伝送される標準テレビ番組の場合、一般的に時間的に制約がないと考えられる音声画像コンテンツの伝送において許容可能である。
【0017】
しかしながら、近年では、ケーブルテレビシステムの多くが、ビデオゲームのプレー、グラフィックメニューシステム並びにユーザによる一時停止及び番組送信速度低下機能を備えたオンデマンド映画などの双方向機能を提供するために、双方向ネットワークに転換している。残念ながらこれまでのIPエッジマルチプレクサの大半はそのような種類の番組をヘッドエンドからほぼリアルタイムで伝送するには十分高速でなかった。従来のマルチプレクサが直面する遅延が原因で、視聴者による制御入力が上流に送られてテレビセット上で視覚的な反応が生じるまでの間に許容できない時間のずれが生じた。
【0018】
そのため、番組パケットを光ファイバーから受信して番組データを無線周波数チャンネル信号として顧客装置に通じる同軸ケーブル上に与えるまでの遅延時間が小さいIPマルチプレクサの提供が望まれる。
【発明の概要】
【0019】
複数のシングルプログラムトランスポートストリームをマルチプログラムトランスポートストリームに多重化するための装置を提供する。各シングルプログラムトランスポートストリームは所定数のデータパケットからなる一連のグループにより形成され、各データパケットにはパケット識別子が含まれる。各シングルプログラムトランスポートストリームは、各シングルプログラムトランスポートストリームに関するパケット識別子を識別する番組マップテーブルを有する。マルチプログラムトランスポートストリームは、マルチプログラムトランスポートストリームに多重化された複数のシングルプログラムトランスポートストリームに関する番組マップテーブルを識別する番組関連テーブルを有する。
【0020】
前記装置は、複数のシングルプログラムトランスポートストリームのデータパケットを受信する入力バッファであってどの任意時点でも所定数のデータパケットのみを保持するよう構成された入力バッファを有する。MPTSテーブルビルダーは、前記入力バッファからデータパケットを受信し、各シングルプログラムトランスポートストリームからのデータパケットにユニークな一組のパケット識別子を再割り当てし、各シングルプログラムトランスポートストリームについての前記ユニークなパケット識別子を用いて前記データパケット内の各番組マップテーブルを再構成し、そして、複数のシングルプログラムトランスポートストリームについての番組マップテーブルを識別する番組関連テーブルを作成する。但しMPTSマップビルダーはデータパケット内の番組基準クロックを変更せずに維持する。MPTSテーブルビルダーから受信されたデータパケットを結合してマルチプログラムトランスポートストリームにするために、ファーストイン・ファーストアウトバッファが操作可能に接続される。例えばファーストイン・ファーストアウトバッファはリングタイプのバッファ(リングバッファ)である。
【0021】
前記装置の特定の実施形態は、マルチプログラムトランスポートストリームを受信して該マルチプログラムトランスポートストリームを用いてキャリア信号を変調する出力段を有する。あるケースでは、このキャリア信号はテレビチャンネルに関連する。
【0022】
本発明の一側面では、本発明のインターネットプロトコルエッジマルチプレクサは、TSパケットがファーストイン・ファーストアウトの様式で記録される(clocked in)固定サイズのバッファを採用することにより、これらのパケットの処理において一定且つ確定した遅延時間を提供する。また、信号処理は、IPネットワークからTSパケットが受信された割合から導き出されたタイミングに依存し、そのTSパケットをこのTSパケットが受信された順序と同じ順序で処理することで、同じプログラムSPTSに関するパケットにわたって発生タイミングを維持する。後者の特徴により、従来のエッジマルチプレクサでは必要であったTSパケットに関する番組基準クロックの再計算が不要となる。これらの特徴により、従来のエッジマルチプレクサに比べて処理遅延が大幅に減少し、これによりユーザによる入力と双方向システムの表示変更の間の反応時間がより速くなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来のデジタルテレビ番組分配システムのブロック図である。
【図2】従来のデジタルテレビ番組分配システムに使用されているインターネットプロトコルエッジマルチプレクサのブロック図である。
【図3】番組分配システムの一部を介してテレビ番組のデータを送るイーサネット(登録商標)フレームをグラフで表わした図である。
【図4】本発明のインターネットプロトコルエッジマルチプレクサのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図4を参照すると、新しいインターネットプロトコルエッジマルチプレクサ60は、IPネットワーク16から各SPTSを一連のイーサネット(登録商標)フレームの形で受信する。イーサネット(登録商標)フレームはIPネットワークインターフェース62に与えられ、IPネットワークインターフェース62は光学ネットワーク信号を電気信号に変換する。得られた電気信号はパケットフィルタ64に与えられ、パケットフィルタ64は、RFネットワーク20に送られる番組データを含むイーサネット(登録商標)フレームを選択する。具体的には、パケットフィルタ64は、入ってくるイーサネット(登録商標)フレームを検査して、エッジ装置により処理されるよう構成されたUDPヘッダ内に番組識別子が含まれてないイーサネット(登録商標)フレームを破棄する。IPネットワークは電子メールや他のインターネットコンテンツなどの他のタイプのデータを送ることもできる。IPエッジマルチプレクサ18と関連するパケット識別子は構成データベース65内に保存される。入ってくる各イーサネット(登録商標)フレームが受信されると、その中に含まれる番組識別子が取得され、この番組識別子が構成データベース65の中に記載されているか否かを調べるために構成データベース65が検査される。もし記載されている場合には、イーサネット(登録商標)フレームはパケットフィルタ64によりTSパケット抽出部66に伝えられ、TSパケット抽出部66は7個のTSパケットをUPDフレームから取り出してこれらを入力バッファ68に送る。
【0025】
入力バッファ68は7個のTSパケット分のみの幅しかなく、即ち入力バッファ68は一つのイーサネット(登録商標)フレームに含まれる7個のTSパケットからなるグループからのデータのみを収容可能な固定サイズを有する。当然ながら、本発明は、7個以上又は7個以下のパケットからなるグループでパケットを伝送するトランスポートストリームと共に用いられてもよい。TSパケットからなるグループは、IPエッジマルチプレクサの下流成分がそのデータを処理する準備が整うまでおよそ1ミリ秒間入力バッファ68内に保持される。したがって、記憶容量が非常に大きく多数のイーサネット(登録商標)フレーム及び多数の異なる番組からのTSパケットからなるグループが同時に保持される従来のエッジマルチプレクサの入力バッファとは異なり、新しいIPエッジマルチプレクサ60は一度に7個のTSパケットのみを保持する入力バッファ68を有している。また、入力バッファ68は、約1ミリ秒よりも長い期間はTSパケットを一つも保持せず、この期間は従来のエッジQAM入力バッファに比べ非常に短い(1000倍以上小さい)。
【0026】
IPエッジマルチプレクサ60の下流部分が新しいデータを処理する準備が整うと、7個のTSパケットからなるグループが、入力バッファ68から出る時刻が記録(clocked out)されてルータ70に与えられる。ルータ70の機能は、特定の番組についてのSPTSを、その番組を送るよう構成された特定のテレビチャンネルに関する適切なチャンネル回路72に送ることである。TSパケットがパケットフィルタ64からTSパケット抽出部66及び入力バッファ68に受信時と同じ順序で送られるので、構成データベース65は、パケットフィルタによってイーサネット(登録商標)フレームから抽出された番組識別子を使用して、入力バッファから現在受信されたTSパケットをどのチャンネル回路72に送るかについてルータ70に指示を与えることができる。したがって、与えられたSPTSに関する7個のパケットが入力バッファ68から出た時刻が記録されると、ルータ70はこれらのパケットを適切なチャンネル回路72のグループとして送信する。
【0027】
各チャンネル回路72の回路構成は同じであり、そのうちの一つの詳細を図4に示す。ルータ70からのTSパケットストリームは、様々な機能を実行するMPTSテーブルビルダー74に与えられる。はじめに、MPTSテーブルビルダー74は、各SPTSのTSパケットを新規のユニークなパケット識別子(PID)のセットを用いて再スタンプし、これによりその番組データを従来のMPTS出力に正しく多重化することが可能となる。ここで、各SPTSにより使用されるパケット識別子のセットの割り当ては、その特定のMPEG2番組発信源11−12により、他の番組発信源によりそれらのSPTSに割り当てられたパケット識別子を知ることなく行われる。その結果、同じMPTS上で多数の番組が伝送された際に、そのうちの二個が一以上の同じPIDを使用することが可能となる。この可能性は、MPTSテーブルビルダー74が、受信された各SPTSについてのTSパケットに新しいPIDを再割り当てすることにより、排除される。さらに、MPTSテーブルビルダー74は、その後、関連する番組マップテーブル(PMT)を新しく割り当てられたPIDを用いて再定義し、そして新しい番組関連テーブルを作成し、全てMPEG2標準規格に従う。
【0028】
MPTSテーブルビルダー74による処理のカギは、従来のIPエッジマルチプレクサでは変更されたTSパケットに関する番組基準クロック(PCR)が変更されないことである。代わりに、本発明のIPエッジマルチプレクサ60は、TSパケットがIPネットワークから受信された割合から導き出されたタイミングに依存する。換言すると、TSパケットはIPネットワーク16から適正なタイミングで入力されると考えられる。そして、7個のTSパケットからなる各グループがIPエッジマルチプレクサ60に受信時と同じ順序で与えられることから及び入力と出力の間の信号の遅延時間が大幅に減少したことから、番組基準クロックの再計算が不要となる。したがって、番組データの処理能力が高いこと及びTSパケットがIPエッジマルチプレクサ60に受信時と同じ順序でのみ供給されて出てくるという事実により、同じ番組SPTSに関するパケットにわたって各々のタイミングが維持される。
【0029】
MPTSテーブルビルダー74は、7個のTSパケットからなるグループをファーストイン・ファーストアウト(FIFO)バッファ76内に置く。FIFOバッファ76は、従来のエッジ装置に用いられた多重バッファと比べると、比較的小さなランダムアクセスメモリ内で定義されてもよく、連続的メモリアクセス(DMA)内の位置で例示化されたバッファはリングバッファとして実現されてもよい。バッファコンテンツが「最高水位点」を超えたならば、優先度の低いパケットが廃棄されそのバッファには入らない。トランスポートストリームフィールドヘッダ内の優先部分は、非優先パケットと優先パケットを区別する。さらに、もしFIFOバッファ76が満杯になりルータ70がそのバッファを超過しようとしたならば、入ってくるパケットがドロップされ、入力源ストリームのタイミングが誤りであることを意味するエラー状態となる。
【0030】
データは出力段78によって一定割合でFIFOバッファ76を出る時刻を記録される。もしFIFOバッファ内にデータが存在しなければヌルパケットが作成されて出る時刻が記録される。これにより、同じSPTSからの7個のTSパケットからなるグループを含むMPTSが作成され、前記グループは必要に応じてヌルパケットにより結合されてMPTSについて一定データ割合を提供する。出力段78は、その後、MPTS内のデータを用いて各出力信号についての変調プロトコルに応じてRFキャリアを変調する。ATSCテレビ信号の場合、出力段78はMPTSを用いて標準RFチャンネルキャリアを直交振幅変調する。結合部79は、関連するテレビチャンネルについての得られたRF信号を他のチャンネル回路72からのチャンネル信号と結合し、IPエッジマルチプレクサ60からの出力信号を作成してこれをRFネットワーク20に送る。例示の番組分配システム10において出力段が直交振幅変調(QAM)を用いているが、その他の変調技法及び異なる出力信号形式プロトコルを採用することもできる。
【0031】
異なる番組についての多重入力SPTSの多重化は、各SPTSについての7個のTSパケットからなるグループがFIFO76の入力において到着する順序に基づいて行われる。例えば、TSパケットからなるグループは第一SPTSから到着し、その後ヌルパケットが作成される間一時停止する。次に、第二のSPTS即ち別番組からの7個のパケットからなるグループが同じチャンネル回路72に到着して同様にしてFIFOバッファ76及び出力段78に送られる。
【0032】
本発明のインターネットプロトコルエッジマルチプレクサ60は、TSパケットがファーストイン・ファーストアウトの様式で時間が記録されるよう構成されたバッファとして固定サイズのバッファを採用することにより、これらのパケットの処理において一定で且つ確定した遅延時間を提供する。さらに、信号処理は、IPネットワークからTSパケットが受信された割合から導き出されたタイミングに依存し、そのTSパケットをこのTSパケットが受信された順序と同じ順序で処理することによって同じ番組SPTSに関するパケットにわたって発生タイミングを維持する。後者の特徴により、従来のエッジマルチプレクサでは必要とされたTSパケットについての番組基準クロックの再計算が不要となる。記載された例示のIPエッジマルチプレクサでは、各イーサネット(登録商標)フレームから抽出された7個のTSパケットがグループとして処理される。これらの特徴により、従来のエッジマルチプレクサに比べて処理遅延が大幅に減少し、これによりユーザによる入力と双方向システムの表示の変更の間の反応時間がより速くなる。
【0033】
本明細書の記載は主に本発明の好ましい実施形態に向けられている。本発明の範囲内の様々な変更についていくつか記載したものの、当業者は本発明の実施形態の開示から明らかとなったさらなる変更を認識すると思われる。したがって、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲から決定され、上記した開示によって限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシングルプログラムトランスポートストリーム(SPTS)をマルチプログラムトランスポートストリーム(MPTS)に多重化するための装置において、
各シングルプログラムトランスポートストリームは所定数のデータパケットからなる一連のグループにより形成され、
各前記データパケットにはパケット識別子が含まれ、
前記各シングルプログラムトランスポートストリームには、前記各シングルプログラムトランスポートストリームに関連するパケット識別子を識別する番組マップテーブルが含まれ、
前記マルチプログラムトランスポートストリームには、該マルチプログラムトランスポートストリームに多重化される前記複数のシングルプログラムトランスポートストリームについての前記番組マップテーブルを識別する番組関連テーブルが含まれ、
前記装置には、入力バッファとMPTSテーブルビルダーとファーストイン・ファーストアウトバッファとが設けられ、
前記入力バッファは、前記複数のシングルプログラムトランスポートストリームのデータパケットを受信するとともにどの任意時点でも所定数のデータパケットのみを保持するよう構成され、
前記MPTSテーブルビルダーは、前記入力バッファからデータパケットを受信して各シングルプログラムトランスポートストリームからの前記データパケットに一組のユニークなパケット識別子を再割り当てし、前記シングルプログラムトランスポートストリームの各々についての前記一組のユニークな識別子を用いて前記データパケット内の各番組マップテーブルを再構成し、前記複数のシングルプログラムトランスポートストリームについての前記番組マップテーブルを識別する番組関連テーブルを作成するよう構成され、
前記MPTSテーブルビルダーは前記データパケット内の番組参照クロックを変更せずに維持するよう構成され、
前記ファーストイン・ファーストアウトバッファは、前記MPTSテーブルビルダーから受信したデータパケットを結合させてマルチプログラムトランスポートストリームとするよう操作可能に接続されている
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ファーストイン・ファーストアウトバッファがリングバッファであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置には、ネットワークからデータを受信して所定のシングルプログラムトランスポートストリームからのデータパケットのみを前記入力バッファに送るよう構成されたパケットフィルタが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記装置には、前記所定のシングルプログラムトランスポートストリームを特定する情報を有する構成データベースが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
所定数のデータパケットからなるグループの各々についてのデジタルデータがイーサネット(登録商標)フレーム内に収容され、前記装置には、前記所定数のデータパケットからなるグループを前記イーサネット(登録商標)フレームから取り出して該グループを前記入力バッファに送るよう構成されたパケット抽出部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記装置には、前記マルチプログラムトランスポートストリームを受信して該マルチプログラムトランスポートストリームを用いてキャリア信号を変調するよう構成された出力段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記キャリア信号がテレビチャンネルに関連していることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
複数のシングルプログラムトランスポートストリーム(SPTS)をマルチプログラムトランスポートストリーム(MPTS)に多重化するための装置において、
各シングルプログラムトランスポートストリームは所定数のデータパケットからなる一連のグループにより形成され、
各前記データパケットにはパケット識別子が含まれ、
前記各シングルプログラムトランスポートストリームには、前記各シングルプログラムトランスポートストリームに関連するパケット識別子を識別する番組マップテーブルが含まれ、
前記マルチプログラムトランスポートストリームには、該マルチプログラムトランスポートストリームに多重化される前記複数のシングルプログラムトランスポートストリームについての前記番組マップテーブルを識別する番組関連テーブルが含まれ、
前記装置には、入力バッファと、各々が異なる出力信号チャンネルと関連する複数のチャンネル回路と、ルータと、が設けられ、
前記入力バッファは、前記複数のシングルプログラムトランスポートストリームのデータパケットを受信するとともにどの任意時点でも所定数のデータパケットのみを保持するよう構成され、
各前記チャンネル回路には、MPTSテーブルビルダー及びファーストイン・ファーストアウトバッファが設けられ、
前記MPTSテーブルビルダーは、前記入力バッファからデータパケットを受信して各シングルプログラムトランスポートストリームからの前記データパケットに一組のユニークなパケット識別子を再割り当てし、前記シングルプログラムトランスポートストリームの各々についての前記一組のユニークな識別子を用いて前記データパケット内の各番組マップテーブルを再構成し、前記複数のシングルプログラムトランスポートストリームについての前記番組マップテーブルを識別する番組関連テーブルを作成するよう構成され、
前記MPTSテーブルビルダーは前記データパケット内の番組参照クロックを変更せずに維持するよう構成され、
前記ファーストイン・ファーストアウトバッファは、前記MPTSテーブルビルダーから受信したデータパケットを結合させてマルチプログラムトランスポートストリームとするよう操作可能に接続され、
前記ルータは、前記入力バッファからデータパケットを受信して、該データパケットを前記複数のチャンネル回路のうち受信された各データパケットに対応する前記シングルプログラムトランスポートストリーム用に指定された一つのチャンネル回路に送るよう、操作可能に接続されている
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
前記装置には前記ルータに接続された構成データベースが設けられ、該構成データベースは、前記複数のチャンネル回路のうちの何れが各前記データパケットを受信するかを特定する情報を有することを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記装置には、前記装置の出力において前記複数のチャンネル回路からのマルチプログラムトランスポートストリームを結合する信号結合部が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記ファーストイン・ファーストアウトバッファがリングバッファであることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記装置には、ネットワークからデータを受信して所定のシングルプログラムトランスポートストリームからのデータパケットのみを前記入力バッファに送るよう構成されたパケットフィルタが設けられていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記装置には、前記所定のシングルプログラムトランスポートストリームを特定する情報を有する構成データベースが設けられていることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
所定数のデータパケットからなるグループの各々についてのデジタルデータがイーサネット(登録商標)フレーム内に収容され、前記装置には、前記所定数のデータパケットからなるグループを前記イーサネット(登録商標)フレームから取り出して該グループを前記入力バッファに送るよう構成されたパケット抽出部が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項15】
前記装置には、前記マルチプログラムトランスポートストリームを受信して該マルチプログラムトランスポートストリームを用いてキャリア信号を変調するよう構成された出力段が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項16】
前記キャリア信号がテレビチャンネルに関連していることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
複数のシングルプログラムトランスポートストリーム(SPTS)をマルチプログラムトランスポートストリーム(MPTS)に多重化する方法において、
各シングルプログラムトランスポートストリームは所定数のデータパケットからなる一連のグループにより形成され、
各前記データパケットにはパケット識別子が含まれ、
前記各シングルプログラムトランスポートストリームには、前記各シングルプログラムトランスポートストリームに関連するパケット識別子を識別する番組マップテーブルが含まれ、
前記マルチプログラムトランスポートストリームには、該マルチプログラムトランスポートストリームに多重化される前記複数のシングルプログラムトランスポートストリームについての前記番組マップテーブルを識別する番組関連テーブルが含まれ、
前記方法は、
前記複数のシングルプログラムトランスポートストリームのデータパケットを入力バッファ内に置く工程と、ここで該入力バッファはどの任意時点でも所定数のデータパケットのみを保持するよう構成されており、
前記入力バッファからのデータパケットを読み取る工程と、
前記入力バッファから読み取られたデータパケットについて、
(1)各シングルプログラムトランスポートストリームからの前記データパケットに、一組のユニークなパケット識別子を再割り当てし、
(2)前記シングルプログラムトランスポートストリームの各々についての前記一組のユニークな識別子を用いて、前記データパケット内の各番組マップテーブルを再構成し、
(3)前記複数のシングルプログラムトランスポートストリームについての前記番組マップテーブルを識別する番組関連テーブルを作成し、
(4)前記データパケット内の番組参照クロックを変更せずに維持する工程と、
前記データパケットを、該データパケットを結合させてマルチプログラムトランスポートストリームとするファーストイン・ファーストアウトバッファ内に置く工程と、を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記方法が、ネットワークからデータを受信して、所定のシングルプログラムトランスポートストリームからのデータパケットのみを前記入力バッファに送る工程を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ネットワークから受信されたデータは、所定数のデータパケットからなるグループを含むイーサネット(登録商標)フレームを有し、
前記所定のシングルプログラムトランスポートストリームからのデータパケットのみを前記入力バッファに送る工程が、所定数のデータパケットからなるグループを前記イーサネット(登録商標)フレームから取り出して該グループを前記入力バッファ内に置くことを含む
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、前記マルチプログラムトランスポートストリームを用いてキャリア信号を変調する工程を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−147437(P2012−147437A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−3756(P2012−3756)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【出願人】(512009584)ビデオプロパルション インタラクティブ、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】