説明

シングル丸編地およびそれで縫製した衣料品

【課題】ストレッチ性を維持しながら、洗濯耐久性に優れたシングル丸編地を効率的に低コストで提供する。
【解決手段】少なくとも1コースが、編み目Aと、編み目Aよりカバーファクターの大きな編み目Bで構成され、編み目Aと編み目Bの比率が1:1〜5:1の割合にて一定周期で出現するシングル丸編地であって、JISL−1018(1999年版)に記載のF2中温ワッシャー法で洗濯、乾燥した後の寸法変化率が+1.0%〜−3.5%の範囲にあることを特徴とするシングル丸編地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業洗濯耐久性のあるシングル丸編地および該シングル丸編地を使って縫製した衣料品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シングル丸編地は薄く、軽量でかつストレッチ性を有することから、Tシャツ、ポロシャツなどのシャツ類に多く使用されているが、物理的に不安定で、特に洗濯すると寸法変化率が大きく、幅方向や丈方向に縮んで長期間着用できなくなることが多かった。さらにユニフォームとして採用され、クリーニング業者へ洗濯を委託する場合、高温での洗濯や乾燥により寸法変化が助長され、激しく型崩れを起こすことが問題となっていた。このため、スポーツシャツやワーキングユニフォームなどには、ストレッチ性に欠けるものの、生地のボリューム感があり、物性的に安定している両面丸編地が使用されているのが実状で、シングル丸編地での工業洗濯対応商品の展開は困難であった。
【0003】
一方、従来の技術として、表糸と裏糸で構成される二重構造シングル丸編地(特許文献1参照)、スパンデックスおよび硬質糸を含む丸編弾性生地の製造方法(特許文献2参照)、エラストマー材料を用いた丸編弾性糸および相当する布の製造方法(特許文献3参照)、セルロース繊維で構成された洗濯耐久性のある肌着(特許文献4参照)、立体的鹿子目の編成方法(特許文献5参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3923135号公報
【特許文献2】特表2008−537574号公報
【特許文献3】特表2008−524468号公報
【特許文献4】特開2005−314840号公報
【特許文献5】特開平4−163348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の表糸と裏糸で構成される二重構造シングル丸編地はすべてのコースが表糸と裏糸から構成されている二重構造であり、地厚で表面変化に乏しいものであった。
【0006】
一方、特許文献2,3にはスパンデックスを含む伸縮性に富む弾性素材を使用した丸編地が記載されているが、家庭洗濯や工業洗濯を行った後にタンブラー乾燥機で乾燥させると、スパンデックスの耐熱性が劣るために脆化してスパンデックスの端末が露出したり、スパンデックスの白粉が出たりして強力低下、外観低下することがあった。また、特許文献4にはセルロース繊維に仮撚加工を施し、高クリンプを出現させた糸を使ったタンブラー乾燥対応可能な肌着が提案され、寸法変化率が−8.0〜+4.0%であると効果を謳っているが、例えば50cmの着丈の肌着が洗濯1回で4cm近く寸法が小さくなるということは、耐久性のある肌着であるとはいえないことを示している。また、特許文献5には寸法安定性の良い立体的鹿子目の編成方法が記載されているが、鹿子目以外では全く効果がなく、編み目の表面変化、バリエーションに欠けるものであった。
【0007】
そこで本発明の課題は、従来のシングル丸編地に比べ、工業洗濯、タンブラー乾燥した後でもシングル丸編地のストレッチ性を維持しながら、寸法変化率を小さく抑えることができる衣料用のシングル丸編地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るシングル丸編地は、少なくとも1コースが、編み目Aと、編み目Aよりカバーファクターの大きな編み目Bで構成され、前記編み目Aと前記編み目Bの比率が1:1〜5:1の割合にて一定周期で出現するシングル丸編地であって、JISL−1018(1999年版)に記載のF2中温ワッシャー法で洗濯、乾燥した後の寸法変化率が+1.0%〜−3.5%の範囲にあることを特徴とするものからなる。
【0009】
このような本発明に係るシングル丸編地においては、上記編み目Aと上記編み目Bのカバーファクターの差が0.2〜1.0であることが好ましい。また、上記編み目Aと上記編み目Bをあわせもつコースが少なくとも2コース以上連続して出現し、かつ前記編み目Bがウエル方向に並んで出現することも好ましい形態である。さらに、少なくとも表糸と裏糸から構成され、該表糸と裏糸の仮撚方向が互いに逆転していることも好ましい形態である。
【0010】
本発明に係る衣料品は、上記のようなシングル丸編地で縫製したものからなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るシングル丸編地は、従来のシングル丸編地に比べ、工業洗濯、タンブラー乾燥した後でもシングル丸編地のストレッチ性を維持しながら、寸法変化率が著しく小さく抑えられる。したがって、形態安定性に優れ、効率的に低コストで製造可能な衣料用のシングル丸編地が得られ、所望の工業洗濯耐性に優れた衣料品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施態様に係るシングル丸編地の1コース目のモデル図、該シングル丸編地を表面からみたイメージ図と該シングル丸編地の組織図である。
【図2】本発明の別の実施態様に係るシングル丸編地の1コース目のモデル図、該シングル丸編地を表面からみたイメージ図と該シングル丸編地の組織図である。
【図3】本発明のさらに別の実施態様に係るシングル丸編地の1コース目のモデル図、該シングル丸編地を表面からみたイメージ図と該シングル丸編地の組織図である。
【図4】本発明のさらに別の実施態様に係るシングル丸編地の1コース目のモデル図、該シングル丸編地を表面からみたイメージ図と該シングル丸編地の組織図である。
【図5】従来のシングル丸編地の一態様のモデル図、それを表面からみたイメージ図とその組織図である。
【図6】従来のシングル丸編地の別の態様のモデル図、それを表面からみたイメージ図とその組織図である。
【図7】従来の二層構造シングル丸編地の一態様の1コース目のモデル図、それを表面からみたイメージ図とその組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示す一形態を参照しつつ、本発明のシングル丸編地を詳細に説明する。
図1、2、3、4は本発明に係るシングル編地の1コース目のモデル図、該シングル丸編地を表面からみたイメージ図と該シングル丸編地の組織図を例示しており、図5は従来のシングル丸編地である天竺組織、図6は従来のシングル丸編地である鹿ノ子組織、図7は従来の二層構造シングル丸編地のイメージ図とその組織図を示したものである。
【0014】
本発明のシングル丸編地は、図1〜4に示すように、少なくとも1コースが、編み目Aと、編み目Aよりカバーファクターの大きな編み目Bで構成される。図1、図2では、1つの編み目が表糸1のみで構成される編み目Aと、表糸1と裏糸2の2本で構成される編み目Bとが一定周期で繰り返されて1コースが形成される。図1では編み目Bがウエル方向に1列に並び、図2では何コースか決めて横方向にずれている場合を示す。
【0015】
また、図3では編み目Aが編み目Bより細い糸を使用し、編み目Aと編み目Bが一定周期で繰り返されて1コースが形成される。また、図4では、編み目Aと編み目Bが交互に出現するシングル丸編地が形成されている。
【0016】
一方、図5は従来からの代表的なシングル丸編地である天竺組織を示し、1種類のみの構成糸で1コースを形成する一層構造シングル丸編地である。この編目においては、1コース中の1編み目すべてが同じカバーファクターとなり、洗濯により編み目が均一に収縮し、寸法変化率を抑えることはできない。
【0017】
また、図6に示す鹿ノ子組織は、カバーファクターの小さい編み目と大きい編み目が存在するものの同一コース上には存在しない。そのため、洗濯時にカバーファクターの小さい編み目の収縮を大きい編み目が止めることができず、寸法変化率を抑えることはできない。
【0018】
図7の組織は、従来からある表糸と裏糸が存在する二層構造シングル丸編地である。この編地は、カバーファクターの違う編み目Aと編み目Bが同一コース上に交互に存在するが、編み目Bが同一ウエルでないため、洗濯時に編み目Aの収縮を止めることができず、寸法変化率を抑えることはできない。また、地厚な生地である。
【0019】
本発明の図1〜4に示すシングル丸編地は、いずれも編み目Aより編み目Bの方がカバーファクターが大きく、その出現する比率をA:B=1:1〜5:1とすることにより、カバーファクターの小さい編み目Aが洗濯やタンブラー乾燥により収縮しようとする現象を、カバーファクターの大きい編み目Bが阻止する役割を果たすことができる。より好ましい範囲は、3:1〜4:1である。かかる編み目のカバーファクターとは、編地中に占める被覆面積を編地の粗密を表す指数であり、詳細な計算方法については後述する実施例に記載する。
【0020】
この編み目Aの出現比率をA:B=1:1より小さくした場合、寸法安定性には優れるが、シングル丸編地の最大の特徴である伸度を抑制し、伸びにくい素材、衣料品となり、好ましくない。さらにこの場合、カバーファクターの大きい編み目が多く出現するため、地厚となり、外観品位も低下する。一方、編み目Aの出現比率をA:B=5:1より大きくした場合、編み目Bの出現が少なくなるため寸法安定性にも劣るものとなる。
【0021】
上記編み目Aと編み目Bのカバーファクターの差について、好ましくは0.2〜1.0とすることにより、洗濯やタンブラー乾燥した後の寸法変化率を小さく抑えることができる。より好ましい範囲は0.3〜0.7である。この差が0.2より小さいとほぼ均一な表面形状となり、寸法変化率を小さくする効果も少なくなる。反対にこの差が1.0を越えると、表面形状の凹凸が大きい編地となり、洗濯やタンブラー乾燥により凹凸がさらに助長される場合があり、その結果、寸法変化率および外観変化の大きい編地となることがある。
【0022】
さらに、上記編み目Aと編み目Bをあわせもつコースが少なくとも2コース以上連続して出現し、なおかつ編み目Bがウエル方向に並んで出現すると、洗濯による寸法安定性に有効となる。2コース以上連続しない場合は長さ方向の寸法変化を止める効果は減少し、さらに編み目Bがウエル方向に並んで出現しない場合は、幅方向の寸法変化を止める効果が減少する。
【0023】
本発明においては、このようなシングル丸編地における、JISL−1018(1999年版)に記載のF2中温ワッシャー法で洗濯、乾燥した後の寸法変化率を、+1.0%〜−3.5%の範囲に規定してる。寸法変化率の+とは伸びを、−とは収縮を示す。−3.5%以下であるということは、例えば50cmの着丈のTシャツを洗濯、タンブラー乾燥しても1.75cm以下の収縮に抑えられることであり、この場合は着用耐久性があるといえる。洗濯中温ワッシャー法とは一般的に工業洗濯、業者洗濯と呼ばれる洗濯方法で、洗濯時の湯温は60℃、すすぎも40℃から段階的に常温へ下げて処理する。乾燥方法としては、家庭にあるような回転式のタンブラー型乾燥機や業者洗濯で使用するような衣料品をハンガーにかけて温度と蒸気により乾燥、セットするガーメントフィニッシャーなどの種類がある。いずれにしても乾燥時の温度は80℃〜約120℃まで上昇するため、繊維にとってはかなり過酷な条件である。
【0024】
さらに、シングル丸編地は薄くて伸縮性が大きいため、非常に変形しやすい。シングル丸編機は、一方向に編み進むため、編み目がウエル方向に揃わず、ななめ方向にずれて変形することがある。本発明では表糸と裏糸の仮撚方向を逆転させることにより、この問題を解消することができる。
【0025】
本発明では、本発明に係るシングル丸編地を使い洗濯耐久性のある衣料品を提供することができる。衣料品としては、Tシャツ、パジャマ、ポロシャツ等従来シングル丸編地を使用していた服種に本発明の編地を使用することもできるし、寸法安定性がよいので、これまで織物や経編地で展開していたような用途、例えばユニフォームやドレスシャツ、ズボンやスカートなどにも使用することができる。中でもクリーニング業者へ洗濯を委託するレンタルユニフォームの用途に使用しても寸法安定性の良い形態安定性の高い特徴を発揮することができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例および比較例において用いたシングル丸編地の品質評価は次の方法で実施した。
【0027】
(測定方法)
(1)編み目カバーファクターの求め方
編み目のカバーファクターは、JIS L 1018(1999年版)8.10.編目長さ及びカバーファクターの計算方法に準じて計算した(下記数1)。
【0028】
【数1】

【0029】
(2)洗濯、乾燥処理
洗濯処理方法はJIS L 1909(1999年版)のF−2法(中温ワッシャー法)に準じた洗濯方法で処理し、乾燥機で乾燥させる。すなわち、湯温60℃で30分洗濯、新しい40℃の湯に替えて5分間すすぎ、再び新しい40℃の湯に替えて10分間すすぎ、排水後、脱水し、タンブラー型乾燥機(実測温度100℃)、もしくはガーメントフィニッシャー(セット温度120℃)で乾燥させる。
【0030】
(3)寸法変化率
寸法変化率はJIS L 1018(1999年版)に準じた方法でサンプル作成する。すなわち、タテヨコ約50cm四方のサンプルを3枚採取し、タテヨコそれぞれ3カ所に300mmの試長で印を付け、前記洗濯、乾燥処理を行い、洗濯前後の試長を計測し、その寸法差より求める(下記数2)。
【0031】
【数2】

【0032】
(4)外観変化(シワ)の評価
外観変化はJIS L 1018(1999年版)に準じた方法で、シワの判定を行う。すなわち、しわの判定標準見本は「AATCC−124 6段階(5、4、3.5、3、2、1)レプリカ」を使用し、外観変化を等級付けする。
【0033】
(5)外観変化(型崩れ)の評価
シングル丸編地を使った縫製品については、洗濯前後の形態変化の官能評価を男女10名で実施した。評価は3段階とし、評価基準は3が形態変化は全くなく優れている、1が形態変化が著しい、2がその中間とする。
【0034】
(6)ストレッチ性の評価
シングル丸編地の洗濯前後のストレッチ性については、洗濯前後のストレッチ性変化の官能評価を男女10名で実施した。評価は3段階とし、評価基準は3が洗濯前後で変化がない、1がストレッチ性の変化が著しく、ストレッチ性が極めて低下した、2がその中間とする。
【0035】
(実施例1)
図1のF1、F3、F5、F7、F9に110T48フィラメントのポリエステル仮撚加工糸(Z撚り)を、F2、F4、F6、F8、F10に84T36フィラメントのポリエステル仮撚加工糸(S撚り)を使用し、36ゲージの丸編機で図1に示す組織のシングル丸編地を作成した。すなわち、110Tの糸のみループさせた編み目A連続3ウエルと、110Tが表糸で84Tが裏糸になるように2本の糸を一緒にループさせた編み目B1ウエルが、交互に出現するコースを4コース連続形成するシングル丸編地を作成した。また、連続した4コースの編み目Bは同一ウエルである。この時の編み目Aのカバーファクターは1.65、編み目Bのカバーファクターは2.18、その差は0.53であった。この編地を使ってレンタルユニフォーム用食品白衣を縫製し、工業洗濯方法(F−2ワッシャー法)で洗濯、120℃のガーメントフィニッシャーで乾燥する処理工程を10回繰り返した。洗濯試験結果は表1に示すとおり、寸法変化率は小さく、型崩れもほとんどなかった。
【0036】
(実施例2)
図3のF1、F3、F5に84T36フィラメントのポリエステル仮撚加工糸(Z撚り)を、F2、F4、F6、F7に167T48フィラメントのポリエステル仮撚加工糸(S撚り)を使用し、28ゲージの丸編機で図3に示す組織のシングル丸編地を作成した。すなわち、84Tの糸をループさせた編み目A連続3ウエルと、167Tの糸をループさせた編み目B1ウエルが、交互に出現するコースを3コース連続形成するシングル丸編地を作成した。また、連続した3コースの編み目Bは同一ウエルである。この時の編み目Aのカバーファクターは1.20、編み目Bのカバーファクターは1.70、その差は0.50であった。この編地を、工業洗濯方法(F−2ワッシャー法)で洗濯し、100℃のタンブラー型乾燥機で乾燥する処理工程を10回繰り返した。洗濯試験結果は表1に示すとおり、寸法変化率は小さく、外観変化(シワ)の発生もなかった。
【0037】
(実施例3)
図4のF1、F3に110T48フィラメントのポリエステル仮撚加工糸(Z撚り)をF2、F4に84T48フィラメントのポリエステル仮撚加工糸(S撚り)を使用し、36ゲージの丸編機で図4に示す組織のシングル丸編地を作成した。すなわち110Tの糸のみループさせた編み目A1ウエルと、110Tが表糸で84Tが裏糸になるように2本の糸を一緒にループさせた編み目B1ウエルが交互に出現するシングル丸編地を作成した。また、編み目Bは同一ウエル上に連続で出現する。この時の編み目Aのカバーファクターは1.57、編み目Bのカバーファクターは2.09、その差は0.52であった。この編地を、工業洗濯方法(F−2ワッシャー法)で洗濯し、100℃のタンブラー型乾燥機で乾燥する処理工程を10回繰り返した。洗濯試験結果は表1に示すとおり、寸法変化率は小さく、外観変化(シワ)の発生もなかった。
【0038】
(比較例1)
40番の綿糸を使用し、28ゲージの丸編機で図5に示す天竺編地を作成した。この編地のカバーファクターは全て1.60であった。この編地を用いてTシャツを縫製し、工業洗濯方法(F−2ワッシャー法)で洗濯、100℃のタンブラー型乾燥機で乾燥する処理工程を10回繰り返した。洗濯試験結果は表1に示すとおり、寸法変化率は大きく、形状変化が著しく劣った。
【0039】
(比較例2)
図6のF1、F3に167T48フィラメントのポリエステル仮撚加工糸(S撚り)を、F2、F4に30番の綿糸を使用し、28ゲージの丸編機で図6に示す組織の鹿ノ子編地を作成した。この編地のカバーファクターは1.80と1.55と1.48の3種類あり、図5の表面イメージ図のような編み目になっていた。この編地でユニフォーム用のポロシャツを縫製し、工業洗濯方法(F−2ワッシャー法)で洗濯、120℃のガーメントフィニッシャーで乾燥する処理工程を10回繰り返した。洗濯試験結果は表1に示すとおり、寸法変化率は大きく、形状変化が著しく劣った。
【0040】
(比較例3)
84T72フィラメントのポリエステル仮撚加工糸(Z撚り)を使用し、36Gの丸編機で図7に示す組織のシングル丸編地を作成した。すなわち、84Tの糸を1本ループさせた編み目A1ウエルと、84Tが表糸と裏糸になるように2本の糸を一緒にループさせた編み目B1ウェルが、交互に出現するコースを繰り返すシングル丸編地を作成した。ただし、編み目Bは毎コースごとに1ウエルずれている。この時の編み目Aのカバーファクターは0.90、編み目Bのカバーファクターは2.05、その差は1.15であった。この編地を用いてTシャツを縫製し、工業洗濯方法(F−2ワッシャー法)で洗濯、100℃のタンブラー型乾燥機で乾燥する処理工程を10回繰り返した。洗濯試験結果は表1に示すとおり、寸法変化率は大きく、形状変化が著しく劣った。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、ストレッチ性を維持しながら、洗濯耐久性に優れたシングル丸編地を効率的に低コストで提供することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 表糸
2 裏糸
A 編み目A
B 編み目B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1コースが、編み目Aと、編み目Aよりカバーファクターの大きな編み目Bで構成され、前記編み目Aと前記編み目Bの比率が1:1〜5:1の割合にて一定周期で出現するシングル丸編地であって、JISL−1018(1999年版)に記載のF2中温ワッシャー法で洗濯、乾燥した後の寸法変化率が+1.0%〜−3.5%の範囲にあることを特徴とするシングル丸編地。
【請求項2】
前記編み目Aと前記編み目Bのカバーファクターの差が0.2〜1.0であることを特徴とする請求項1に記載のシングル丸編地。
【請求項3】
前記編み目Aと前記編み目Bをあわせもつコースが少なくとも2コース以上連続して出現し、かつ前記編み目Bがウエル方向に並んで出現することを特徴とする請求項1または2に記載のシングル丸編地。
【請求項4】
少なくとも表糸と裏糸から構成され、該表糸と裏糸の仮撚方向が互いに逆転していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシングル丸編地。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のシングル丸編地で縫製した衣料品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−102458(P2011−102458A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229313(P2010−229313)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(597052053)ミツカワ株式会社 (14)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】