説明

シンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物、ポッティング材、およびポッティング方法

【課題】耐熱性が良好で、かつ、シンジオタクチックポリスチレンとの接着性やシール性に優れるポッティング用液状重合体組成物、前記組成物を硬化してなるシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材用のポッティング材、およびシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング方法を提供することを目的とする。
【解決手段】水酸基含有液状ポリイソプレン系重合体の水素化物からなるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物からなるシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物。さらに必要に応じて、前記以外のポリオール化合物および/またはポリアミン化合物を含んでもよい。また、前記液状重合体組成物を硬化してなるポッティング材。および前記液状重合体組成物を、シンジオタクチックポリスチレンをハウジング材とする電気・電子材料、産業構造剤、家電品等の部品に注入し、それを硬化させるポッティング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物、ポッティング材、およびポッティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シンジオタクティシチーの高いスチレン系重合体であるシンジオタクチックポリスチレン、及びこの重合体に他の成分を配合した組成物は、特許文献に報告されている(特許文献1〜3参照)。このシンジオタクチック構造を有するポリスチレン、あるいはその組成物は、アタクチック構造のスチレン系重合体やその組成物に比べて、機械的強度、耐熱性、耐溶剤性、および電気特性等に優れているため、コネクターやプリント基板等の電気・電子部品のハウジング材として、産業構造材、自動車部品、および家電品等の分野で使用されている。
このような電気・電子部品には、接点部材周辺の絶縁保護や水の浸入を防止するためにポッティング材が用いられている。
シンジオタクチックポリスチレンは高い耐熱性を有しているので、部品周辺が高温となる環境で使用されることが多い。この場合には、ポッティング材にも高い耐熱性が要求されるので、汎用のポリウレタン系ポッティング材は耐熱性に劣るため使用不可能であった。
そのため、シンジオタクチックポリスチレンをハウジング材とする電気・電子部品用のポッティング材としては、シリコーン系のポッティング材が使用される場合が多くなっている(特許文献4〜6参照)。
しかし、シンジオタクチックポリスチレンとシリコーン系ポッティング材との接着性が低いため、シンジオタクチックポリスチレンの表面を紫外線照射により改質する等の手段で、予め接着性を改善させる必要があった。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−104818号公報
【特許文献2】特開昭62−257948号公報
【特許文献3】特開昭62−257950号公報
【特許文献4】特公平8−6039号公報
【特許文献5】特許第2966257号公報
【特許文献6】特許第3158903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、耐熱性が良好で、かつ、シンジオタクチックポリスチレンとの接着性とシール性に優れるポッティング用液状重合体組成物、前記組成物を硬化してなるシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材用のポッティング材、およびシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定のポリイソプレン系重合体の水素化物とポリイソシアネート化合物を用いることにより、上記課題が達成されることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は以下を含むものである。
1.水酸基含有液状ポリイソプレン系重合体の水素化物からなるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物からなるシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物。
2.前記水素化物の数平均分子量が300〜25000である前記1に記載のシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物。
3.前記水素化物の水素化率が50%以上である前記1または2に記載のシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物。
4.前記1〜3のいずれかに記載の液状重合体組成物100質量部に対し、さらに200質量部以下の、前記1記載以外のポリオール化合物および/またはポリアミン化合物を含む前記1に記載のシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物。
5.前記ポリオール化合物が、低分子量ポリオール、重合型ポリオールまたはヒマシ油系ポリオールである前記4に記載のシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物。
6.さらに老化防止剤、触媒、および消泡剤を含む前記1〜5のいずれかに記載のシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物。
7.前記1〜6のいずれかに記載の液状重合体組成物を硬化してなるシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材用のポッティング材。
8.前記1〜6のいずれかに記載の液状重合体組成物を電気・電子部品に注入して硬化させることを特徴とするシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐熱性が良好で、かつ、シンジオタクチックポリスチレンとの接着性やシール性に優れるポッティング用液状重合体組成物、前記組成物を硬化してなるシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材用のポッティング材、およびシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、水酸基含有液状ポリイソプレン系重合体の水素化物からなるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物からなる、シンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物と、前記液状重合体組成物を硬化してなるシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング材に関する。
以下、シンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材から、ポッティング用液状重合体に使用される水酸基含有液状ポリイソプレン系重合体の水素化物、ポッティング材、およびポッティング方法に至るまで、順次説明する。
【0008】
[シンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材]
本発明の対象とするハウジング材は、メタロセン触媒を用いてスチレン系モノマーを重合させて得られたシンジオタクチックポリスチレンを含むものである。
ここで、シンジオタクチックポリスチレンは、重合度が10〜100000であり、かつそのタクティシティーが 13C−NMRにより、ダイアッドで75%以上、好ましくは85%以上、またはペンタッドで30%以上、好ましくは50%以上であるシンジオタクチック構造のスチレン系重合体を言う。
スチレン系重合体として、ポリスチレンやポリアルキルスチレン、ポリハロゲン化スチレン等が挙げられる。また、本発明に使用されるシンジオタクチックポリスチレンは、必ずしも単一の重合体である必要は無く、構造や分子量が異なるものの混合物であってもよい。
このようなシンジオタクチックポリスチレンを用いて、各種の成形法により、ハウジング材が成形される。
【0009】
[水酸基含有液状ポリイソプレン系重合体の製造例]
本発明に使用される水酸基含有液状イソプレン系重合体は公知であるか、または公知の手法により容易に製造することができる。
例えばイソプレンモノマーを、過酸化水素、水酸基を有するアゾ化合物(例えば、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕等)、または水酸基を有するパーオキシド(例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド等)を重合開始剤としてラジカル重合することにより、水酸基含有液状ポリイソプレンを得ることができる。
重合開始剤の使用量は、イソプレンモノマー100gに対して、例えばH22では1.0〜50g程度、好ましくは2.0〜30g、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕では5.0〜100g程度、好ましくは10〜50g、シクロヘキサノンパーオキサイドでは5.0〜100g程度、好ましくは10〜50gが適当である。
重合は無溶媒で行うことも可能であるが、反応の制御の容易さ等のため、溶媒を用いるのが好ましい。溶媒としてはエタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等が用いられ、反応温度は80〜150℃程度、好ましくは100〜140℃、反応時間は0.5〜15時間程度、好ましくは1〜10時間が適当である。
【0010】
また、ナフタレンジリチウム等の触媒を用いてイソプレンモノマーをアニオン重合させてイソプレンリビングポリマーを製造し、さらにモノエポキシ化合物等を反応させることによっても水酸基含有液状ポリイソプレンを得ることができる。
重合は無溶媒で行うことも可能であるが、ラジカル重合の場合と同様の観点から溶媒を用いるのが好ましい。溶媒としてはヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素が用いられ、反応温度は50〜100℃程度、好ましくは70〜100℃、反応時間は1〜10時間程度、好ましくは2〜7時間が適当である。また重合時にイソプレンに対し50mol%以下の割合で、炭素数2〜22の付加重合性モノマー(ブテン、ペンテン、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸およびそのエステル、メタクリル酸およびそのエステル、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリルアミド等)、炭素数4〜22のジエンモノマー(ブタジエン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン等)等のモノマーを添加することも出来る。
反応終了後に溶液を減圧下で蒸留すれば溶剤が除去され、水酸基含有液状イソプレン系重合体が得られる。
この水酸基含有液状イソプレン系重合体の数平均分子量は、300〜25000程度、好ましくは500〜10000であり、水酸基含有量は0.1〜10mol/kg、好ましくは0.3〜7mol/kgである。また、構造的にはシス−1,4構造、およびトランス−1,4構造の合計が70%以上、好ましくは70〜95%を占めることが好ましい。
水酸基は分子鎖末端、分子鎖内部のいずれにあっても良いが、分子鎖末端にあるものが望ましい。
水酸基含有液状イソプレン系重合体は1種に限られず、2種以上を使用してもよい。
【0011】
[水酸基含有液状イソプレン系重合体の水素化物の製造例]
水酸基含有液状イソプレン系重合体の水素化物は、公知であるか、または均一系触媒、不均一系触媒等を用いる公知の手法により、上記のごとく製造した水酸基含有液状イソプレン系重合体を水素化することにより得ることができる。
均一系触媒を用いる場合、水素添加反応は、ヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を溶媒とし、常温〜150℃程度、好ましくは50〜150℃の反応温度で、常圧〜50kg/cm2G程度、好ましくは5〜50kg/cm2Gの水素圧下で行われる。
均一系触媒としては、遷移金属ハライドとアルミニウム、アルカリ土類金属もしくはアルカリ金属等のアルキル化物との組合せによるチーグラー触媒等を、ポリマーの2重結合あたり0.01〜0.1mol%程度、好ましくは0.02〜0.1mol%使用する。反応は通常1〜24時間程度、好ましくは1〜10時間で終了する。
一方、不均一系触媒等を用いる場合、水素添加反応は、ヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素やベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン等のエーテル類、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、あるいはこれらの混合系等を溶媒とし、常温〜200℃程度、好ましくは50〜190℃の反応温度で、常圧〜100kg/cm2G程度、好ましくは5〜95kg/cm2Gの水素圧下で行われる。
不均一系触媒としてはニッケル、コバルト、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の触媒を単独で、あるいはシリカ、ケイソウ土、アルミナ、活性炭等の担体に担持して用い、その使用量はポリマー重量に対し、0.05〜10質量%程度、好ましくは1〜10質量%が適当である。これらの触媒は、混合して用いても良い。反応は通常1〜48時間程度、好ましくは1〜24時間で終了する。
反応終了後に触媒をろ別して溶液を減圧下で蒸留すれば、溶剤が除去され、水酸基含有液状イソプレン系重合体の水素化物が得られる。
この水酸基含有液状イソプレン系重合体の水素化物の数平均分子量は300〜25000程度、好ましくは500〜10000であり、水酸基含有量は0.1〜10mol/kg程度、好ましくは0.3〜5mol/kgであるものが望ましい。
【0012】
水素化反応後における重合体中の不飽和二重結合の水素化の割合(水素化率)は、下記の臭素価を測定することによって算定できる。
臭素価の測定法(日本工業規格(JIS K2605)):一定量の試料を四塩化炭素に溶解し、メタノール、酢酸および硫酸を加える。この溶液を0℃〜5℃に保ち、これに0.5N臭化カリウム−臭素酸カリウム標準液を滴下して滴定を行う。滴定の終点は遊離臭素によって滴定系中の分極電流が急激に変化したときとし、この点をデッドストップ電気滴定装置で検出する。得られた値を、試料100gあたりに付加できる臭素の質量として表す。
臭素価の測定を水素化前後の重合体について測定することにより、下式で求められる。
水素化率(%)=[(A−B)/A ] × 100
ここで、A:水素化前の重合体の臭素価、B:水素化後の重合体の臭素価を表わす。
本発明に使用される前記重合体の水素化物の水素化率は50%以上、好ましくは70%以上である。
本発明においては、2種以上の水酸基含有液状イソプレン系重合体の水素化物を混合して使用してもよいし、水酸基含有液状イソプレン系重合体と水素化物を混合して使用してもよい。
なお、良好な物性の硬化体を得るための、水酸基含有液状イソプレン系重合体の水素化物の一分子当たりの平均水酸基数は、好ましくは1.7以上、さらに好ましくは2.0以上である。
【0013】
[併用することのできるその他のポリオール化合物]
本発明で用いる前記液状重合体組成物の機械的物性をさらに向上させるため、上記で説明したポリオール化合物以外のポリオール化合物(以下、「その他のポリオール化合物」と言うことがある。)を用いることも可能である。ここで、その他のポリオール化合物とは、1分子中に2個、またはそれ以上の水酸基を有する化合物である。
併用することができるその他のポリオール化合物としては、低分子量ポリオール、重合型ポリオール、およびヒマシ油系ポリオール等が挙げられる。
・低分子量ポリオール
低分子量ポリオールとしては、1級ポリオール、2級ポリオール、3級ポリオールのいずれを用いてもよい。具体的には、たとえば、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、グリセリン、N,N−ビス−2−ヒドロキシプロピルアニリン、N,N’−ビスヒドロキシイソプロピル−2−メチルピペラジン、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等の、少なくとも1個の二級炭素に結合した水酸基を含有する低分子量ポリオールが挙げられる。
さらに、ポリオールとして二級炭素に結合した水酸基を含有しないエチレングリコール、ジエチレングリコール、1.3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等を用いることもできる。
低分子量ポリオールの分子量は、50〜500程度、好ましくは60〜450である。
【0014】
・重合型ポリオール
本発明の主旨を損わない範囲で、本発明に使用される重合型ポリオールとして、ポリウレタン原料として用いられる下記のポリオールを用いることができる。
ポリエーテルポリオール、及びその変性体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフラン/アルキレンオキサイド共重合ポリオール、エポキシ樹脂変性ポリオール、ポリエステルポリオール、トリメチロールアルカンの部分エステル交換物、ポリジエン系ポリオール、および部分ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体。
これらの重合型ポリオールの数平均分子量は通常500〜10000程度、好ましくは
500〜5000である。
・ヒマシ油系ポリオール
本発明に使用することができるヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油、水素化ヒマシ油、およびヒマシ油エステル交換物が挙げられる。
以上、これらのポリオール化合物は、2種以上を混合して用いることもできる。
【0015】
[ポリアミン化合物]
本発明においては、前記のその他のポリオール化合物に加えて、または前記のその他のポリオール化合物に替えて、ポリアミン化合物を使用してもよい。ここで、ポリアミン化合物は、1分子中に2個、またはそれ以上の活性水素を有するアミノ基を持つ化合物である。
ポリアミン化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンポリアミン等の脂肪族ポリアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂環族ポリアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5’−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン等の芳香族ポリアミン等を挙げることができる。
【0016】
これらの、その他のポリオール化合物やポリアミン化合物の配合割合は、前記した水酸基含有液状イソプレン系重合体の水素化物100質量部に対して、その他のポリオール化合物および/またはポリアミン化合物を、通常は200質量部以下、好ましくは100質量部以下の割合である。
【0017】
[ポリイソシアネート化合物]
この発明に使用されるポリイソシアネート化合物とは、1分子中に2個またはそれ以上のイソシアネート基を有する有機化合物であって、それらイソシアネート基は、前記水酸基含有液状イソプレン系重合体の水素化物の水酸基に対する反応性を有するものである。
このポリイソシアネート化合物の例としては、通常の芳香族、脂肪族、および脂環族のものを挙げることができる。具体的には、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−と2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物(全てMDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートを例示することができる。また、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の脂肪族−芳香族ポリイソシアネート(分子中に、芳香族環と直接結合したイソシアネート基を有さないポリイソシアネートを言う。)を挙げることができる。
【0018】
さらに、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートや、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートを挙げることができる。
【0019】
その他、前記ポリイソシアネート化合物の環化三量体(イソシアヌレート変性体)、ビューレット変性体、ならびにエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、水添ダイマー酸ジイソシアネート、ポリアルカジエンポリオール、ポリアルカジエンポリオールの水素化物、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、およびヒマシ油系ポリオール等のポリオール化合物と前記ポリイソシアネート化合物との付加反応物等を用いることもできる。
また、これらポリイソシアネート化合物は2種以上を混合して用いることもでき、さらに、これらポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をフェノール類、オキシム類、イミド類、メルカプタン類、アルコール類、ε−カプロラクタム、エチレンイミン、α−ピロリドン、マロン酸ジエチル、亜硫酸水素ナトリウム、ホウ酸等のブロック剤でブロックした、いわゆるブロックイソシアネート化合物も用いることができる。
【0020】
[粘度調整剤]
本発明においては、液状重合体組成物の粘度を調整するために、必要に応じて、1−デセンオリゴマーの水素化物、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、オレフィンオリゴマー、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルエタン、アルキルジフェニル、シリコーンオイル、流動パラフィン、およびパラフィン系オリゴマーなどの粘度調整剤を添加することができる。
【0021】
[触媒]
本発明においては、前記水酸基含有液状ポリイソプレン系重合体の水素化物とポリイソシアネート化合物の反応を促進するために、必要に応じて触媒を添加することができる。
用いることのできる触媒は、トリエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノ)エチルピペラジン、ジアザビシクロウンデセン等の三級アミン;スタナスオクトエート、スタナスラウレート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマーカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンジマレエート、ジオクチルチンジアセテート、ジオクチルチンマーカプチド、ジオクチルチンチオカルボキシレート、フェニル水銀プロピオン酸塩、オクテン酸鉛等の有機金属化合物;および前記3級アミンのカルボン酸塩などが挙げられる。
前記触媒の添加量は、水酸基含有液状ポリイソプレン系重合体の水素化物100質量部に対し、最大10質量部、好ましくは最大5質量部とする。なお10質量部を超えると、硬化促進効果が頭打ちとなるばかりでなく、局部的な異常反応(ゲル化)の危険性が大きくなるので、好ましくない。
【0022】
[その他の添加剤]
本発明においては、耐熱性、耐候性等の向上を目的として、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール等の老化防止剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;リン化合物、ハロゲン化合物、酸化アンチモン等の難燃剤;シリコーン化合物等の消泡剤;ゼオライト、生石灰等の発泡抑制剤等を所望により適宜配合することができる。
【0023】
[硬化体の一般的製造方法]
本発明においては、前記で説明した液状重合体組成物を硬化して、シンジオタクチックポリスチレン用のポッティング材を得るものであるが、次に硬化体について説明を行う。
前記の各種成分を所定の割合で配合して液状重合体組成物を調製する。
この組成物の調製にあたっては、混合装置や混練装置等を用い、0〜120℃程度、好ましくは15〜100℃の温度で、0.5秒〜8時間程度、好ましくは1秒〜5時間攪拌混合を行う。
前記組成物の調製方法としては、通常、ワンショット法と呼ばれる方法、または、プレポリマー法と呼ばれる方法が用いられる。
・ワンショット法
まず、配合成分のうち、少なくともポリイソシアネート化合物を除く成分を配合して、前記の温度、時間で混合し、混合物を得る。次いで、この混合物にポリイソシアネート化合物、および先の混合で用いなかった添加剤成分を添加し、前記の温度、時間で混合し、液状重合体組成物を得る。このとき、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基(−NCO)と反応する水酸基(−OH)及び/又はアミノ基(−NH2)を有する化合物を配合する場合の該化合物の水酸基とアミノ基に対するイソシアネート基の好ましい割合[−NCO/(−OH + −NH2)]は、モル比で0.5〜2.5、好ましくは0.7〜1.5である。
【0024】
・プレポリマー法(1)
当量比[−NCO/(−OH + −NH2)]が1.7〜2.5、好ましくは2.0〜2.5の範囲で、水酸基含有液状イソプレン系重合体組成物の水素化物(ポリオール化合物、ポリアミン化合物および所望成分)とポリイソシアネート化合物とを、その他の添加剤の一部、または全部の存在下、あるいは非存在下、反応させてプレポリマーを得る。反応の温度は上記と同様であり、時間は通常0.1〜10時間程度、好ましくは0.5〜8時間である。このプレポリマーに残りの成分を上記の温度、時間で混合し、液状重合体組成物を得る。このときの好ましい当量比[−NCO/(−OH + −NH2)]は、0.5〜2.5、好ましくは0.7〜1.5である。
・プレポリマー法(2)
当量比[−NCO/(−OH + −NH2)]が1.7〜2.5、好ましくは2.0〜2.5の範囲で、配合全成分を配合し、反応させてプレポリマーを得る。反応温度は上記と同様であり、時間は通常0.1〜10時間程度、好ましくは0.5〜8時間である。このプレポリマーを空気中の湿度(水)と反応させる。
【0025】
以上のようにして調整された液状ポリイソプレン系重合体水素化物の組成物は、シンジオタクチックポリスチレンをハウジングとする電気・電子部品に注入され、硬化処理することにより、様々な形態のポッティング材を与えることができる。前記組成物やそれを硬化させたポッティング材は、耐熱性とシンジオタクチックポリスチレンとの接着性やシール性が大幅に改善されているため、従来のように、シンジオタクチックポリスチレンの表面を予め紫外線照射等で改質して接着性を改善する必要性をなくすことができる。
【実施例】
【0026】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
なお、本実施例と比較例の評価は下記の方法により行った。
[H型剥離強度試験]
図1に示すように50mm×50mmのシンジオタクチックポリスチレンを10mm間隔に並べ、その間に10mm×10mm×50mmの空間ができるようにスペーサーを挿入し、空間部に実施例1〜5、比較例1、2で使用した液状重合体組成物を注入し、80℃で15時間硬化させ、試験片を得た。
試験片を室温で24時間養生後と、150℃ × 5日間加熱した後に引張り試験機を用いて剥離強度を測定した。引張り速度は50mm/minで実施した。
【0027】
実施例1〜5、比較例1
表1に示す組成物のうち、ポリイソシアネート化合物を除く原料を配合し、60℃で2時間混合攪拌し、25℃まで冷却して液状重合体を得た。これにポリイソシアネート化合物を表1に示す割合で加え、25℃で2分間混合攪拌し、液状重合体組成物を得た。この硬化体を用いた評価結果を表1に示す。
【0028】
比較例2
RTVシリコーンを室温で硬化させた。評価結果を同じく表1に示す。
【0029】
【表1】

1) エポール (出光興産社製:数平均分子量2500、水素化率98%、水酸基含有量0.90mol/kg、シス1,4構造+トランスー1,4構造=88%)
2) デスモジュールW (住化バイエルウレタン工業社製、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)
3) Millionate MTL (日本ポリウレタン社製、変性ジフェニルメタンジイソシアネート)
4) OKオール (岡畑産業社製)
5) Poly bd R-45HT (出光興産社製、数平均分子量2800、水酸基含有量0.83mol/kg、シス1,4構造+トランスー1,4構造=80%)
6) Durasyn-128 (イネオス社製、α-オレフィンオリゴマー水素化物)
7) TINUVIN B-75 (チバ・ジャパン社製、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン)
8) ジブチルチンジラウレート
9) KS-66 (信越シリコーン社製、シリコーン)
10) SE9187L (東レ・ダウコーニング社製)
11) 加熱試験後に剥離が見られたため、測定不可
【0030】
表1から、以下がわかる。
・比較例1から、ポリオールとして水酸基含有液状ポリブタジエン系重合体を用いても、それを水素化していない場合には、初期シール性が発揮されても、加熱すると、耐熱性に乏しいために剥離してしまい、まったくシール性がなくなる。
・比較例2から、従来、ポッティング材として使用されていたシリコーン系のポッティングでは、本発明に比べて、初期シール性、および加熱後のシール性共に高くない。
・実施例1、2と実施例3〜5を比較すると、水酸基含有液状ポリブタジエン系重合体の水素化物以外のポリオール系化合物をさらに配合することにより、特に加熱後のシール性が顕著に向上する。
以上から、本発明により提供されるシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材用ポッティング材は、耐熱性と、シンジオタクチックポリスチレンとの接着性やシール性に優れたポッティング材であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、特に耐熱性と、シンジオタクチックポリスチレンとの接着性やシール性に優れた、シンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物や、それを硬化してなるポッティング材、およびポッティング方法が提供されるので、シンジオタクチックポリスチレンをハウジング材とする電気・電子材料(コネクターやプリント配線等)、産業構造材、自動車部品、家電品等の部品のポッティングに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例、比較例で用いたH型剥離試験片を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有液状ポリイソプレン系重合体の水素化物からなるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物からなる、シンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物。
【請求項2】
前記水素化物の数平均分子量が300〜25000である請求項1に記載のシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物。
【請求項3】
前記水素化物の水素化率が50%以上である請求項1または2に記載のシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の液状重合体組成物100質量部に対し、さらに200質量部以下の、請求項1記載以外のポリオール化合物および/またはポリアミン化合物を含む請求項1に記載のシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物。
【請求項5】
前記ポリオール化合物が、低分子量ポリオール、重合型ポリオールまたはヒマシ油系ポリオールである請求項4に記載のシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物。
【請求項6】
さらに老化防止剤、触媒、および消泡剤を含む請求項1〜5のいずれかに記載のシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング用液状重合体組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の液状重合体組成物を硬化してなるシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材用のポッティング材。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の液状重合体組成物を電気・電子部品に注入して硬化させることを特徴とするシンジオタクチックポリスチレン製ハウジング材のポッティング方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−106196(P2010−106196A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281744(P2008−281744)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】