説明

シンチレータおよび地下検出器

【課題】シンチレータを封入するための保護シンチレータパッケージを提供する。
【解決手段】パッケージの少なくとも1つの構成要素が少なくとも部分的に粘弾性材料から形成される。保護パッケージは、弾性材料と粘弾性材料の双方からなり、1つの構成要素に双方が含まれていてもよく、異なる構成要素であってもよい。更に、このようなシンチレータパッケージだけでなく、検層ツールを用いる放射線検出器、および石油探査方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年5月20日に出願の米国仮特許出願第61/179,911号の優先権を主張する。
背景
NaI(Tl)、LaBr3等を含む多くの有効なシンチレータ材料は、放射線検出器に組み立てられ得る前にさまざまな環境応力からの保護を必要とする。このことは、シンチレータ結晶を高温高圧、または機械的衝撃や機械的振動に曝すことになる、シンチレーション検出器が坑井検層、または他の地下使用に適用される場合には特にあてはまる。多くのシンチレータについて、このことは、米国特許第4,764,677号明細書に記載されているように、シンチレータを気密密閉された容器に封入することによって空気に直接曝すことから保護することを含む。通常の弾性材料の使用は、米国特許第4,158,773号明細書に記載されているように、この用途に周知である。
典型的な密封シンチレータパッケージアセンブリを図1に示す。シンチレータ結晶101は、好ましくはフルオロカーボンポリマーから形成される好ましくは拡散反射面106シートの1つ以上の層によって包まれているかあるいは取り囲まれている。永久に密封されたシンチレータパッケージ100は、一端に密封光学窓104が装着された管状金属ハウジング102からなり得る。窓材料は、管状ハウジング102に溶接される得る金属スリーブに密封してロウ付けされるサファイヤであり得る。あるいは、適切なガラス窓を使ってもよい。この技術は、当業者に既知である。包まれた結晶101は、光学窓104がすでに装着されていてもよい気密密閉されたハウジング102に挿入され得る。米国特許第4,360,733号明細書に述べられているように、窓104は、サファイヤでもガラスでもよい。その場合、ハウジング102は、結晶101とハウジング104の内径の間の空間をうめるシリコーン(RTV)で充填され得る。シンチレータ結晶101とハウジング102の窓104の間のオプティカルコンタクトは、透明なシリコーンゴムディスクからなる内部光結合パッド108を用いて与える。波形スプリング110と圧力板112は、窓104の反対側の端部を密封する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【図1】図1は、密封包装されたシンチレータのブロック図である。
【図2】図2は、本発明の密封包装されたシンチレータの図である。
【図3】図3は、シンチレータおよび対応する光電子増倍管が粘弾性材料を用いて衝撃から保護されている本発明のシンチレーション検出器の図である。
【0003】
詳細な説明
以下の説明には、本開示を理解するように多くの詳細が示されている。しかしながら、本発明がこれらの詳細を含まずに実施され得ることおよび記載されている実施態様から多くの変更または修正が可能であることを当業者は理解するであろう。
本明細書に用いられるこれらの用語は、以下の意味を有する:
用語粘弾性のおよび粘弾性は、応力が加えられたときに粘稠特性と弾性特性の双方を示す材料の特性を意味する。弾性材料は、応力が加えられたときに即座に変形し、応力が取り除かれたときに元の状態(形状)に戻る。粘弾性材料は、粘性特性と弾性特性双方の要素を有する。弾性変形は、結晶構造における結合の長さの変化の結果である。しかしながら、原子は、格子内の位置を変えない。それ故、応力が解除されたときには、結合を戻し、同じ場所にすべての原子を有するもとの長さに戻る。粘弾性は、応力が加えられたときの物質の原子または分子の相対位置の変化の結果である。結果として、応力を加えたことに関連した形状の変化は、少なくとも部分的に永久である。すなわち、物質はヒステリシスを示す。力学的エネルギー(例えば、衝撃や振動)を他の形(典型的には熱)に変換するので、機械的応力の影響を低下させることを企図する場合には、このような変形は望ましい。物質が機械的エネルギーを散逸するので、これはショックアブソーバとして作用する。変形が弾性である場合には、機械的エネルギーは運動エネルギーからポテンシャルエネルギーに変わるだけであるので、応力が解除されるにつれて逆に変わる。
用語プラストマー、およびプラストマー類は新世代の高性能ポリマーを意味し、狭い組成物分布と狭い分子量分布の特徴を有する。これにより、極めて靭性で例外的に透明になり、良好な封着性を与える。
用語“構成要素”、“要素”、および“構造”は、本明細書において同じ意味で用いられる。
【0004】
シンチレータベースの放射線検出器は、油田におけるボアホールを包囲している形成解析に適用される。シンチレータ構成要素は、この環境において極度の機械的な力を受け、保護が必要とされる。保護は、シンチレータに対する物理的損傷を防止するだけでなく、測定の品質を改善する働きもする。シンチレータを衝撃から保護する新規な方法が本明細書に記載される。
ボアホール解析に適用されるある有効なシンチレーション材料には、NaI(Tl)、CsI(Tl)、CsI(Na)、LaBr3:Ce、LaCl3:Ce、BGO、GSO:Ce、(LuAlO3)LuAP:Ce、(Lu3Al5O12)LuAG:Pr、LuYAP:Ce、(YAlO3)YAP:Ceが含まれる。最初の5つの材料は、空気および空気が含有する湿気から保護するために気密な包装を必要とする。述べた材料の全てが衝撃に影響されやすい。シンチレータを衝撃や振動の悪影響から保護するためにある準備を必要とする。従来技術においては、シンチレータとハウジングの内壁の間に簡単なエラストマー層が加えられている。カバリングは、衝撃荷重を分配する手段を与えるが、機械的加速を伴うエネルギーをほとんど散逸させない。ここで開示されるように、カバリングに対する構成要素には、好ましくは粘弾性要素が含まれる。
図2に示される一実施態様において、粘弾性要素または構造は、シンチレータの長さに沿って2つの場所にシンチレータ101を取り囲んでいる別々のリング200として示されている。エラストマーリングまたはプラストマーリング200は、1つ以上の高温ポリマー、例えばペルフルオロエラストマーから形成され得る。有効な粘弾性のポリマーには、適切な粘弾性特性を有するセルラーシリコーン化合物の、E.I DuPont de Nemoursから入手可能なViton(登録商標)またはKalrez(登録商標)フルオロエラストマー等が含まれ得る。Viton(登録商標)フルオロエラストマーは、FKMのASTM D1418 & ISO 1629指定によって分類される。この種類のエラストマーは、ヘキサフルオロプロピレンヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDF(登録商標)またはVF2)のコポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VDF(登録商標))とヘキサフルオロプロピレン(HFP)または特性を有するペルフルオロメチルビニルエーテルのターポリマーからなる系統群である。最も一般的なViton(登録商標)グレードのフッ素含量は、66〜70%に変動する。
【0005】
粘弾性支持リング要素は、円形かまたは正方形の断面を有し得る。2つの粘弾性構成要素のみが図2の図に示されているが、本発明はシンチレータを支持するかまたは取り囲むために追加の粘弾性構成要素を企図する。粘弾性材料と弾性材料は、シートの形で適用されて、本質的に円筒状シンチレータを包むことができる。
図2は、弾性特性と粘弾性特性双方がシンチレータパッケージ構成における材料であることを示すために粘弾性であるとして別々の構成要素を示す図である。実施態様において、媒体が実質的に連続であるように、粘弾性相をシンチレータカバリングに組み込むことが可能である。弾性構成要素は、最初は1または2部の液体であるRTVシリコーンであり得る。このタイプのシリコーンには、Dow Corning Corporationから入手可能なSYLGARDTM 184またはSYLGARDTM 186、またはShin-Etsu Silicones、Rhodia Group、Wacker Chemieから入手可能な類似の組成物が含まれる。他の有効なシリコーン組成物は、一好適実施態様である、Gelest, Inc.から入手可能なGelest“PP2-OE41”である。液相は、適切な量の粘弾性ポリマーで小さい部分の形に充填され得る。粘弾性ポリマーが液体RTVに分散されると、特定の化合物に適切であるように、室温で長時間注意深く加熱するかまたは硬化を可能にすることによって混合物を固体に処理する。
更に他の実施態様において、粘弾性要素は、プラストマー、例えば、対象の温度範囲において粘弾性特性を示すように交差結合されているポリエチレンプロピレンコポリマーからなってもよい。最高動作温度が粘弾性材料の通常の作動点を超えても、シンチレータを収容するために用いられる気密パッケージが内部包装要素を粘弾性構成要素の酸化崩壊から保護する。
【0006】
記載された実施態様のいずれにおいても、粘弾性要素または構成要素は、粘弾性化合物/組成物がシンチレータと気密ハウジングの光学窓との整列を維持することができる場合には、単独で、すなわち、弾性カバリングを含まずに使用し得る。弾性カバリングを含まずに粘弾性要素を用いる欠点は、このような構成によって材料の選択が所望の動作温度範囲より安定な弾性特性と制動(粘弾性)特性を有するものに制限されることである。異なる材料の特性を組み合わせると、より剛性の材料とポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイミドまたはポリカーボネートのような粘弾性材料とを組み合わせる場合のように、シンチレータ支持システムを最適化して、機械的に誘導された分解からの排除能力を最適化するより大きな機会が与えられる。異なる温度範囲を超える以外は全て、粘弾性特性を有する。
適切な機械的システムが形成されると、ポットシンチレータと取付けられたリングが管状金属ハウジングに挿入されかつ当業者に知られているように融接またはロウ付けによって密封され得る。
他の実施態様において、粘弾性材料または構造は、気密シンチレータパッケージの境界の外側に適用され得る。このことは、特に、シンチレータ材料と化学的に適合しない場合がある粘弾性材料の使用を可能にする。この構成を図3に概略図で示す。シンチレータパッケージと光検出器が共通の内部ハウジング304内に組み立てられるときに、核検出器を形成するように、構成要素の整列が確実にされる。次に、内側ハウジング304は、内側ハウジング304より実質的に大きい内径を有する外側ハウジング306に入れられる。粘弾性支持要素308(あるいは分散された粘弾性支持体)は、内側ハウジング304と外側ハウジング306の間の環状空間に適用され得る。内側ハウジング304と外側ハウジング306の間の環状空間に適用された粘弾性要素308を適用すると、剛性でなくゼラチン特性を有する粘弾性材料が適用される。Dow CorningのSylgardTM 527ゲル、“Q2-6635”、“Q2-6575”、ShinEtsu SifelTMシリコーンのような材料がこのようにして適用され得る。材料は、内側ハウジング304と外側ハウジング306の間の定位置にプレキャストフォームまたはキャストとして適用され得る。
本発明を限定数の実施態様に関して開示してきたが、本開示から利益を得る、当業者は、そこから多くの修正変更を理解するであろう。添付の請求の範囲は、本発明の真の精神と範囲に含まれるような修正変更を包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンチレーション結晶、およびシンチレーション結晶に設けられた保護パッケージを備えるシンチレータであって、保護パッケージが機械的衝撃、振動、および酸化崩壊の少なくとも1つを保護し、前記保護パッケージが粘弾性材料から形成される少なくとも1つの要素を備えている、前記シンチレータ。
【請求項2】
保護パッケージが、弾性材料または粘弾性材料またはこれらの組み合わせから形成される1つ以上の構成要素または構造を更に備えている、請求項1に記載のシンチレータ。
【請求項3】
保護パッケージが、弾性材料と粘弾性材料双方からなり、双方が1つの構成要素に含まれてもよく、異なる構成要素であってもよい、請求項2に記載のシンチレータ。
【請求項4】
シンチレータ結晶が少なくとも片面や一端で弾性材料によって取り囲まれ、シンチレータ結晶が粘弾性材料で支持されている、請求項1に記載のシンチレータ。
【請求項5】
粘弾性材料が、シンチレータ結晶の周りに少なくとも2つの異なる軸方向位置に2つ以上のリングとして設けられている、請求項4のシンチレータ。
【請求項6】
粘弾性材料がシンチレータ結晶の軸方向に少なくとも3つのリブとして設けられ、このことにより、少なくとも3つの異なる方位でシンチレータ結晶を支持している、請求項1に記載のシンチレータ。
【請求項7】
粘弾性材料が、軸方向衝撃吸収および半径方向衝撃吸収またはこれらの双方より選ばれる衝撃吸収を示す、請求項1に記載のシンチレータ。
【請求項8】
粘弾性材料がシンチレータ結晶の周りに螺旋として設けられる、請求項1に記載のシンチレータ。
【請求項9】
保護パッケージが、リングやリブを備えている複数の支持要素を備えている、請求項1に記載のシンチレータ。
【請求項10】
粘弾性材料が、フルオロエラストマーまたはセルラーシリコーンからなる、請求項1に記載のシンチレータ。
【請求項11】
シンチレータ結晶が、セルラーシリコーンによって少なくとも部分的に取り囲まれている、請求項1に記載のシンチレータ。
【請求項12】
シンチレータ結晶が、セルラーシリコーンによって実質的に完全に取り囲まれている、請求項11に記載のシンチレータ。
【請求項13】
シンチレーション結晶が、NaI(Tl)、LaBr3:CeおよびLaCl3:Ce、Laハロゲン化物およびLa混合ハロゲン化物からなる群より選ばれる、請求項1に記載のシンチレータ。
【請求項14】
内側ハウジングにおいて光電子増倍管に作用的に結合されたシンチレータ結晶であって、内側ハウジングが実質的に粘弾性要素によって取り囲まれている、前記シンチレータ結晶を含む、放射線検出器。
【請求項15】
粘弾性材料が、シンチレータ結晶の周りに少なくとも2つの異なる軸方向位置で2つ以上のリングからなる、請求項14に記載の放射線検出器。
【請求項16】
粘弾性材料が、少なくとも3つの異なる方位でシンチレータ結晶を支持しているシンチレータ結晶に相対する軸方向に少なくとも3つのリブからなる、請求項14に記載の放射線検出器。
【請求項17】
粘弾性材料が、シンチレータ結晶の周りに螺旋からなる、請求項14に記載の放射線検出器。
【請求項18】
粘弾性材料が、リングとリブの組み合わせからなる、請求項14に記載の放射線検出器。
【請求項19】
粘弾性材料が、フルオロエラストマーまたはセルラーシリコーンからなる、請求項14に記載の放射線検出器。
【請求項20】
シンチレータ結晶が、セルラーシリコーンによって少なくとも部分的に取り囲まれている、請求項14に記載の放射線検出器。
【請求項21】
シンチレータ結晶が、セルラーシリコーンによって実質的に完全に取り囲まれている、請求項20に記載の放射線検出器。
【請求項22】
内部ハウジングが、粘弾性材料に取り付けられている、請求項14に記載の放射線検出器。
【請求項23】
シンチレーション結晶が、NaI(Tl)、LaBr3:CeおよびLaCl3:Ce、Laハロゲン化物およびLa混合ハロゲン化物からなる群より選ばれる、請求項14に記載の放射線検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−527619(P2012−527619A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511954(P2012−511954)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/035221
【国際公開番号】WO2010/135301
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(500177204)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】Schlnmberger Holdings Limited
【Fターム(参考)】