説明

シンチレータ材料及びそれを用いた放射線検出器

【課題】発光強度の向上したシンチレータ材料が求められていた。
【解決手段】本発明は、アルカリ元素:銅元素:ハロゲン元素=3:2:5で表わされる基本構造を有する材料に、特定の元素を添加することにより、新規なシンチレータ材料を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンチレータ材料に関するものである。特に放射線を可視光に変換するシンチレータ材料及びそれを用いた放射線検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線診断用画像検出器として、照射されたX線を検出することにより、X線撮影像をデジタル信号として得るものが用いられている。この放射線検出器には、大きく分けて直接型X線検出器と、間接型X線検出器がある。間接型X線検出器とは、X線を蛍光体により可視光に変化させ、この可視光をアモルファスシリコン(a−Si)フォトダイオードや単結晶シリコン(c−Si)フォトダイオード、CCD(charge couple device)などの光電変換素子で電荷信号に変換させて画像を取得する検出器である。
【0003】
間接型X線検出器の光電変換素子としてa−Siを使用する場合、アモルファスシリコンは450nmから650nmの波長帯域に感度を有することから、450nmから650nm程度の波長帯域に発光を示す蛍光体が求められる。また、光電変換素子としてc−Siを使用する場合には、a−Siよりもさらに波長の長い領域に感度を有することから、これに応じた波長領域に発光を示す蛍光体が求められる。
【0004】
発光強度が大きいことは蛍光体材料に求められる性能の一つとして極めて重要であるが、別の側面として、環境に対しての安定性も大切な必要要件である。この安定性とは、具体的には空気中の水蒸気で溶解することがないか、或いは溶解し難いといった耐潮解性に優れる特性を意味している。
【0005】
従来では、特許文献1に記載されているように、ヨウ化セシウムとヨウ化銅混晶体よりなるシンチレータ材料が耐潮解性に優れることが知られている。特許文献1にはCsCuで表わされる構造が確認されており、このヨウ化セシウムとヨウ化銅混晶体とからなるシンチレータ材料が2.8eVの光子エネルギーを持つ発光を示すことが記載されている。この混晶体はヨウ化セシウムとは結晶構造が異なるものである。
【0006】
また、特許文献2に記載されているように、添加剤として、ヨウ化セシウムに対して、ヨウ化銅とヨウ化タリウムを0.01mol%以上添加した原材料として用いることにより、耐湿性が向上することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−147343号公報
【特許文献2】特開2007−205970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまでに説明したように、シンチレータ材料には、より一層の発光強度の向上が求められる。さらに、シンチレータ材料を放射線画像検出器に用いる場合には、上述の如く、使用する光電変換素子の感度特性に好適な発光波長を有すること、耐潮解性に優れることが重要である。
【0009】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、発光強度の向上したシンチレータ材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、一般式CsCuとMを含む組成物を有するシンチレータ材料を提供するものである。ここで、Mは、In、Tlより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。Mの添加量をモル分量で表わすと、Cs及びCuとからなる陽イオン元素の総和に対して0mol%より大きく2mol%以下である。
【0011】
本発明は、一般式[Cs1−xCuとMを含む組成物を有するシンチレータ材料を提供するものである。ここで、一般式は、0<x≦0.2を満たす。Aは、Rb、Kより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。Mは、In、Tlより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。Mの添加量をモル分量で表わすと、Cs、A及びCuからなる陽イオン元素の総和に対して0mol%より大きく2mol%以下である。
【0012】
本発明は、一般式CsCu[I1−yBrとMを含む組成物を有するシンチレータ材料を提供するものである。ここで、一般式は、0<y≦0.6を満たす。Mは、In、Tlより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。Mの添加量をモル分量で表わすと、CsとCuとからなる陽イオン元素の総和に対して0mol%より大きく2mol%以下である。
【0013】
本発明は、一般式[Cs1−xCu[I1−yBrとMを含む組成物を有するシンチレータ材料である。ここで、一般式は、0<x≦0.2、0<y≦0.6を満たす。Aは、Rb、Kより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。Mは、In、Tlより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。Mの添加量をモル分量で表わすと、Cs、A及びCuとからなる陽イオン元素の総和に対して0mol%より大きく2mol%以下である。
【0014】
本発明は、一般式CsCu[I1−y―zBrClz]とMを含む組成物を有するシンチレータ材料を提供するものである。ここで、一般式は、0≦y、0≦z、0≦y+z≦1、4z−y≦3の条件を満たす。ただし、z=0かつ0≦y≦0.6を同時に満たすことはない。Mは、In、Tlより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。Mの添加量をモル分量で表わすと、CsとCuとからなる陽イオンの元素の総和に対して0mol%より大きく2mol%以下である。
【0015】
本発明は、一般式[Cs1−x]Cu[I1−y―zBrClz]とMを含む組成物を有するシンチレータ材料を提供するものである。ここで、一般式は、0<x≦0.2、0≦y、0≦z、0≦y+z≦1、4z−y≦3を満たす。ただし、z=0かつ0≦y≦0.6を同時に満たすことはない。Aは、Rb、Kより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。Mは、In、Tlより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。Mの添加量をモル分量で表わすと、Cs、A及びCuとからなる陽イオン元素の総和に対して0mol%より大きく2mol%以下である。
【0016】
さらに、本発明は、シンチレータ材料を用いた放射線検出器やシンチレータ材料の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、発光強度の向上したシンチレータ材料を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1のシンチレータ材料において、添加剤としてTlを用いた場合の、添加量と発光強度との関係を示す図である。
【図2】本発明の実施例1のシンチレータ材料において、添加剤としてTlを用いた場合の、添加量とX線励起発光波長スペクトルとの関係を示す図である。
【図3】本発明の実施例2のシンチレータ材料において、添加剤としてInを用いた場合の、添加量と発光強度との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施例2のシンチレータ材料において、添加剤としてInを用いた場合の、添加量とX線励起発光波長スペクトルとの関係を示す図である。
【図5】アモルファスシリコン(a−Si)フォトダイオード及び単結晶シリコン(c−Si)フォトダイオードの受光感度の波長依存性を示す図である。
【図6】本発明の実施例3のシンチレータ材料において、添加剤としてTlを0.5mol%用いた場合における、Rbの置換量xと発光強度との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施例3のシンチレータ材料において、添加剤としてTlを0.5mol%用いた場合における、Rbの置換量xとX線励起発光波長スペクトルとの関係を示す図である。
【図8】添加剤としてTlを0.5mol%用いた場合における、Rbの置換がないものと、置換量xがx=0.2の場合のX線回折パターンを示す図である。
【図9】本発明の実施例4のシンチレータ材料において、添加剤としてTlを0.5mol%用いた場合における、Kの置換量xと発光強度との関係を示す図である。
【図10】本発明の実施例4のシンチレータ材料において、添加剤としてTlを0.5mol%用いた場合における、Kの置換量xとX線励起発光波長スペクトルとの関係を示す図である。
【図11】本発明の実施例5のシンチレータ材料において、添加剤としてTlを0.5mol%用いた場合における、Brの置換量yと発光強度との関係を示す図である。
【図12】本発明の実施例5のシンチレータ材料において、添加剤としてTlを0.5mol%用いた場合における、Brの置換量yとX線励起発光波長スペクトルとの関係を示す図である。
【図13】本発明の実施例6のシンチレータ材料において、CsCu、CsCuBrおよびCsCuCl組成による三角組成図である。
【図14】本発明の第5の実施形態にて記した放射線検出器の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の特徴は、Cs、Rb、またはKなどのアルカリ元素と、銅元素と、I、Br、またはClなどのハロゲン元素との三元系元素から構成され、その組成比率がアルカリ元素:銅元素:ハロゲン元素=3:2:5で表わされる基本構造を有したシンチレータ材料において、In、Tlより選ばれた1種類以上の元素又は元素群を含んでいる組成物を含むことにある。In、Tlより選ばれた1種類以上の元素又は元素群の添加量をモル分量で表わすと、Csなどのアルカリ元素と銅元素とからなる陽イオン元素の総和(1mol)に対して2mol%以下である。
【0020】
なお、シンチレータ材料としては、本発明の組成からなる前記組成物を全重量に対して90重量%以上100重量%以下含めばよく、より好ましくはシンチレータ材料全体が本発明の組成で構成されていることである。
【0021】
最も基本となる一般式は、アルカリ元素がCsで、かつ、ハロゲン元素がIであり、CsCuで表される。M(Inまたは/およびTl)がさらに含まれる。これを第1の実施形態として以下に述べる。Mは、InまたはTlの元素単独でもいいが、InとTlの両方が含まれる元素群でもよい。
【0022】
また、アルカリ元素であるCsの一部を同じくアルカリ元素であるA(Rbまたは/およびK)で部分的に置換することも可能であり、第2の実施形態として後述する。ここで、Aは、RbまたはKの元素単独でもいいが、RbとKの両方が含まれる元素群でもよい。
【0023】
また、ハロゲン元素であるIの一部を同じくハロゲン元素であるBrで部分的に置換することも可能であり、これを第3の実施形態として後述する。その中で、第3の実施形態の変形例としてアルカリ元素であるCsの一部を同じくアルカリ元素であるRb、Kで部分的に置換するものもある。
【0024】
また、ハロゲン元素であるIの一部または全てを、BrおよびClから選ばれた1種類以上のハロゲン元素で置換することも可能であり、これを第4の実施形態として後述する。その中で、第4の実施形態の変形例としてアルカリ元素であるCsの一部を同じくアルカリ元素であるRb、Kで部分的に置換するものもある。
【0025】
なお、後述するいずれの実施形態における材料も、
アルカリ元素:銅元素:ハロゲン元素=3:2:5
で表わされる基本構造を有しており、共通した特徴として耐潮解性に優れる特徴を具備している。
【0026】
実施形態5では、これらのシンチレータ材料を用いた放射線検出器について述べる。
【0027】
そこで、下記実施形態においては主として発光強度の向上、あるいはa−Siまたはc−Siフォトダイオード光電変換素子の感度を考慮した発光強度の向上に関して述べる。
【0028】
(第1の実施形態)
本実施形態では、母材であるCsCuに添加剤MとしてIn、Tlを所定量添加することにより、発光強度を増大させつつ、かつ発光波長を長波長側にシフトさせうるシンチレータ材料について詳細に述べる。なお、本実施形態において、In、Tlの添加量はCsなどのアルカリ元素とCuとからなる陽イオン元素の総和(1mol)に対してのモル分量で表現する。
【0029】
また、シンチレータ材料としては、CsCuとMとからなる組成物をシンチレータ材料の全重量に対して90重量%以上100重量%以下含めばよく、より好ましくはシンチレータ材料全体を構成していることである。
【0030】
試料より発せられる可視光をアモルファスシリコン(a−Si)フォトダイオードや単結晶シリコン(c−Si)フォトダイオードなどの光電変換素子で電荷信号に変換させて画像を取得する検出器として使用する場合には、a−Siやc−Siの感度の波長依存性が重要になる。この場合には、X線励起発光スペクトルが上述の感度の波長依存性と可能な限り合致していることが望ましい。
【0031】
図2は添加剤としてTlを用いた場合の、添加量とX線励起発光スペクトルとの関係を示している。図2で細線は母材であるCsCuのX線励起発光スペクトルを示しており、太線はTlの添加量が0.5mol%の場合を、破線はTlの添加量が2mol%の場合をそれぞれ示している。いずれも試料の面積で規格化しているので、図2の波長に対する積分値は発光強度として比較することが可能である。
【0032】
図1は添加剤としてTlを用いた場合の、添加量と発光強度の関係を示す図である。図1の線は先述した如くX線励起発光スペクトルの積分値として求めたものであり、X線励起発光強度を示している。ここで、X線励起発光強度は、母材であるCsCuの発光強度で規格化した、母体からの上昇度で示している。
【0033】
図1において、実線で示すX線励起発光強度は、Tlの添加量が2mol%以下で母材の強度よりも上昇していることがわかる。これは、適切な量のTlを添加することにより、発光強度を増大させうることを示すものである。Tlの添加量が2mol%ではやや低下傾向にあるが、これはTlの添加量が少ない領域では透明であった結晶が、添加量が2mol%では着色を呈するようになることに起因するものと思われる。このように、添加量には上限値が存在し、着色による発光強度の低下が制限を与える。具体的には2mol%以下とすることが好ましい。
【0034】
図1において点線はc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度を示している。また、破線はa−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度を示している。これらのc−Siならびにa−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度は、図5に示す波長依存性を示すものを用いた場合であり、図2のX線励起発光スペクトルとそれぞれの受光感度との積により各々求められる。ここで、各々の発光強度は、母材であるCsCuでの値で規格化した、母体からの上昇度で示している。
【0035】
図1において実線で示すX線励起発光強度よりも、点線で示すc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度及び、破線で示すa−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度の方が母材に対する上昇度合いが大きくなっているが、その理由は、X線励起発光スペクトルが長波長側にシフトしたことに起因している。この場合、c−Siのような長波長領域で感度に優れるものと組み合わせることで一層効果を発揮し、より大きな電荷信号を得られる点で好ましいことがわかる。
【0036】
Tlの添加によって、母材よりも長波長側にピークがシフトする点について述べる。図2において、母材に見られる波長がおよそ440nmのピークが、Tlの添加量が2mol%では、およそ505nmへと長波長側に変化している。Tlの添加量が0.5mol%においては、母材とTlの添加量が2mol%の場合との間で、X線励起発光強度が最大となっている。この波長のシフトに関して、Tlの添加によって新たにおよそ505nmに最大強度を有するピークが出現して、母材で見られるおよそ440nmのピークに重畳してスペクトルが形成されるものと解釈することが可能である。Tlの添加量が2mol%では母材に見られた440nmのピークはほぼ消失している。
【0037】
なお、Tlの添加量の下限値であるが、a−Siやc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度が母材よりも上回る量の添加がなされれば良く、換言すれば、母材に見られたおよそ440nmのピークよりも長波長側で発光強度が増すだけの添加がなされればよい。
【0038】
以上述べたように、添加剤としてTlを用いる場合には0.5mol%程度が特に好ましく、2mol%以下が好適である。2mol%を超えると先に述べたように、結晶の着色が見られるようになり、光透過性が悪化するので望ましくない。
【0039】
次に、添加剤にInを用いた場合について述べる。
【0040】
図4は添加剤としてInを用いた場合の、添加量とX線励起発光スペクトルとの関係を示す図である。図4で細線は母材であるCsCuのX線励起発光スペクトルを示しており、太線はInの添加量が0.2mol%の場合を、破線はInの添加量が2mol%の場合をそれぞれ示している。いずれも試料の面積で規格化しているので、図4の波長に対する積分値は発光強度として比較することが可能である。
【0041】
図3は添加剤としてInを用いた場合の、添加量と発光強度との関係を示す図である。図3の実線は先述した如くX線励起発光スペクトルの積分値として求めたものあり、X線励起発光強度を示している。ここで、X線励起発光強度は、母材であるCsCuの発光強度で規格化した、母体からの上昇度で示している。
【0042】
図3において、実線で示すX線励起発光強度は、Inの添加によって母材の強度よりも上昇した後に、Inの添加量が0.2mol%で最大となっている。これは、適切な量のInを添加することにより、発光強度を増大させうることを示すものである。Inの添加が0.5mol%以上ではやや低下傾向にあるが、この点はTlを添加した場合と同様に、着色を呈することにも起因するものと思われる。
【0043】
図3において点線はc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度を示している。このc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度は、図5に示す波長依存性を示すものを用いた場合であり、図2のX線励起発光スペクトルとc−Siの受光感度との積により求められる。ここで、c−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度は、母材であるCsCuでの値で規格化した、母体からの上昇度で示している。
【0044】
図4のX線励起発光スペクトルにおいて、Inの添加により、母材よりも長波長側に新たにピークが出現することがわかる。母材でピークの波長がおよそ440nmであったものが、Inの添加量が2mol%では、およそ640nmへと長波長側に変化している。Inの添加量が0.2mol%においては、母材とInの添加量が2mol%の場合の両方のピークが重畳して観測される。図3において、実線で示す発光強度よりも点線で示すc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度の方が母材に対する上昇度合いが著しく大きいが、これはX線励起発光スペクトルの長波長成分が増加したことによる。この場合は2mol%以下の添加量で母材よりも上回る。
【0045】
以上述べたように、添加剤としてInを用いる場合にはTlを用いる場合よりもさらに長波長側に発光強度を持つようになり、2mol%以下でc−Siと組み合わせることにより母材を上回ることが出来、好適である。なお、2mol%を超えると先に述べたように、結晶の着色が顕著に見られるので好ましくない。
【0046】
また、Inの添加量の下限値であるが、c−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度が母材よりも上回る量の添加がなされれば良く、換言すれば、母材に見られた440nmのピークよりも長波長側で発光強度が増すだけの添加がなされればよい。
【0047】
(第2の実施形態)
本実施形態は、母材であるCsCuのアルカリ元素であるCsの一部を、同じくアルカリ元素であるRb、Kで置換して、かつ添加剤としてIn、Tlを所定量添加したシンチレータ材料であり、一般式[Cs1−xCuとMで表される。これにより、CsCuと比較して発光強度を増大させつつ、かつ発光波長を長波長側にシフトさせることが可能となる。なお、本実施形態において、In、Tlの添加量はCs、A及びCuからなる陽イオン元素の総和(1mol)に対してのモル分量で表現する。以下詳細に述べる。
【0048】
シンチレータ材料としては、第1の実施形態と同様に[Cs1−xCuとMとからなる組成物をシンチレータ材料の全重量に対して90重量%以上100重量%以下含めばよく、より好ましくはシンチレータ材料全体を構成していることである。他の実施形態においても、同様である。
【0049】
図6は、A=Rbであり、且つ、添加剤としてTlを0.5mol%添加した場合のCsに対するRbの置換量xと発光強度との関係を示す図である。図6で実線はX線励起発光強度を示し、点線はc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度を示している。共に母材であるCsCuの発光強度で規格化した、母体からの上昇度で示している。Rbの置換量がゼロに対応する組成物はCsCu:Tl(0.5mol%)と表され、CsCuにTl(0.5mol%)が添加されたものである。母体であるCsCuではない。つまり、x=0の場合におけるyの値は、y=(CsCu+添加剤あり)/(CsCu)になっている。このため、y切片の値は1ではないことに注意を要する。なお、c−Siの受光感度は図5に示す波長依存性を示すものである。
【0050】
図7はRbの置換量とX線励起発光スペクトルとの関係を示す図である。図7で細実線はRbの置換がない場合、すなわちCsCuにTl(0.5mol%)を添加した場合のX線励起発光スペクトルを示しており、破線はRbの置換量xがx=0.05の場合を、太線はRbの置換量xがx=0.2の場合をそれぞれ示している。図7の波長に対する積分値が図6の実線で示す発光強度に対応するものである。また、図7のX線励起発光スペクトルに、図5に示すc−Siの受光感度の波長依存性を考慮したものが、図6の点線で示すc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度に対応するものである。
【0051】
図6より、Rbの置換量の増加に伴って実線で示すX線励起発光強度は減少する傾向にあることが分かる。また、点線で示すc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度においては、置換量xがx=0.05の場合に最大を示し、x=0.2では母材よりも上回り、x>0.2では減少傾向にあり、x=1では母材を下回ることが分かる。
【0052】
図7のX線励起発光スペクトルにおいて、Rbの置換量xがx=0.05、0.2の場合には、置換しない場合と比較してピークの位置が長波長側にシフトしている。このようなRbの部分置換によって長波長側にシフトする効果により、c−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度において、置換量xがx=0.05の場合に最大を示すようになる。なお、このようなピーク位置のシフトは、Csの一部がRbで部分的に置換されることにより、結晶に変化、例えば格子定数の変化によってもたらされているものと推測される。
【0053】
図8はRbの置換がない場合、すなわちCsCu:Tl(0.5mol%)と、Rbの置換量xがx=0.2におけるX線回折パターンである。いずれも結晶構造は斜方晶系に属している。図8において、Rbで置換していないCsCu:Tl(0.5mol%)については主な面指数を書き記している。図8から、Rbの置換量xがx=0.2ではピークが広角側に移動しており、これは格子定数が小さく変化していることを示すものである。これはCsよりもイオン半径の小さなRbで部分的に置換された結果もたらされた変化だと考えられる。
【0054】
以上述べたように、CsをRbで部分的に置換する場合には置換量xはx=0.05程度が最も好適であり、x≦0.2が好ましい。x>0.2では発光強度の低下が大きく、置換量の大きい領域ではc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度においても母材よりも低下してしまい好ましくない。
【0055】
また、Rbではなく同じアルカリ元素であるKで部分的に置換することも可能であり、RbとKが両方含まれる形で置換されていてもよい。
【0056】
図9は、添加剤としてTlを0.5mol%添加した場合のCsに対するKの置換量xと発光強度との関係を示す図である。図9で実線はX線励起発光強度を示し、点線はc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度を示している。共に母材であるCsCuの発光強度で規格化した、母体からの上昇度で示している。Kの置換量がゼロに対応する組成物はCsCu:(Tl0.5mol%)で表わされ、母体であるCsCuではない。つまり、x=0の場合におけるyの値は、y=(CsCu+添加剤あり)/(CsCu)になっている。このため、y切片の値は1ではないことに注意を要する。
【0057】
図10はKの置換量とX線励起発光スペクトルとの関係を示す図である。図10で細線はKの置換がない場合、すなわちCsCu:Tl(0.5mol%)のX線励起発光スペクトルを示しており、太線はKの置換量xがx=0.05の場合を、破線はKの置換量xがx=0.2の場合をそれぞれ示している。図10の波長に対する積分値が図9の実線で示す発光強度に対応するものである。また、図10のX線励起発光スペクトルに、図5に示すc−Siの受光感度の波長依存性を考慮したものが、図9の点線で示すc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度に対応するものである。図9より、Kの置換量の増加に伴ってX線励起発光強度は減少する傾向にあることが分かる。また、図10より、Kの置換量xがx=0.05、0.2の場合には、置換しない場合と比較してピークの位置がわずかに長波長側にシフトすることがわかる。これは、Rbの部分置換と同様に、Kの部分置換においても長波長側にシフトする効果が得られることを示すものである。しかしながら、c−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度においても置換量が多くなるに従って単調に減少する傾向が見られることから、Rbで部分的に置換する場合と同様に、CsをKで部分的に置換する場合にも置換量xはx≦0.2であることが好ましい。
【0058】
(第3の実施形態)
本実施形態は、母材であるCsCuのハロゲン元素であるIの一部を、同じくハロゲン元素であるBrで置換して、かつ添加剤MとしてIn、Tlを所定量添加した化合物であり、一般式CsCu[I1−yBrとMで表される。これにより、CsCuと比較して、発光強度を増大させつつ、かつ発光波長を長波長側にシフトさせることが可能となる。なお、本実施形態において、In、Tlの添加量はCsとCuとからなる陽イオン元素の総和(1mol)に対してのモル分量で表現する。以下詳細に述べる。
【0059】
図11は、添加剤としてTlを0.5mol%添加した場合のIに対するBrの置換量yと発光強度との関係を示す図である。図11で実線はX線励起発光強度を示し、点線はc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度を示している。共に母材であるCsCuの発光強度で規格化した、母体からの上昇度で示している。Brの置換量yがゼロに対応する組成物はCsCu:Tl(0.5mol%)で表わされ、母体であるCsCuではない。つまり、x=0の場合におけるyの値は、y=(CsCu+添加剤あり)/(CsCu)になっている。このため、y切片の値は1ではないことに注意を要する。なお、c−Siの受光感度は図5に示す波長依存性を示すものである。
【0060】
図12はBrの置換量とX線励起発光スペクトルとの関係を示す図である。図12で太線はBrの置換がない場合、すなわちCsCu:Tl(0.5mol%)のX線励起発光スペクトルを示しており、細線はBrの置換量yがy=0.6の場合を示している。図12の波長に対する積分値が図11の実線で示す発光強度に対応するものである。また、図12のX線励起発光スペクトルに、図5に示すc−Siの受光感度の波長依存性を考慮したものが、図11の点線で示すc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度に対応するものである。図11より、Brの置換量yの増加によりX線励起発光強度は減少する傾向にあることが分かる。また、c−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度においても、置換量が多くなるにつれて減少傾向にある。しかしながら、そもそも母材からの上昇度が大きいため、Brの置換量yがy=0.6においては、母材よりも上回っている。図12のX線励起発光スペクトルにおいて、Brの置換量yがy=0.6の場合には、置換しない場合と比較してもピークの位置がほとんど変化していない。これはIがBrによって部分的に置換されても長波長側にシフトする効果を維持可能であることを示すものである。このように、必要に応じてIの一部を同じハロゲン元素であるBrで部分的に置換しても構わないことが分かる。
【0061】
以上述べたように、IをBrで部分的に置換する場合にも、母体であるCsCuよりも大きな発光強度を得ることが可能であり、IをBrで部分的に置換する置換量yはy≦0.6であることが好ましい。
【0062】
なお、第2の実施形態で述べたアルカリ元素であるCsのRb、Kによる部分置換と、本実施形態で示したハロゲン元素であるIのBrによる部分置換を組み合わせた[Cs1−xCu[I1−yBr:Mで表される化合物によっても、本発明の目的は達成できる。
【0063】
(第4の実施形態)
本実施形態は、CsCuのハロゲン元素であるIの一部または全てを、BrまたはClから選ばれた一つ以上のハロゲン元素で置換して、かつ添加剤MとしてIn、Tlを所定量添加した化合物であり、一般式CsCu[I1−y―zBrClとMで表される。これにより、ハロゲン元素の置換量は等しいが添加剤を含まない化合物(CsCu[I1−y―zBrCl)と比較して、c−Siの受光感度を考慮した場合の受光強度を増加させることが可能になる。なお、本実施形態において、In、Tlの添加量はCsとCuとからなる陽イオン元素の総和(1mol)に対してのモル分量で表現する。以下詳細に述べる。
【0064】
表1は、添加剤としてTlを0.5mol%添加し、かつ、Iに対するBr置換量がy、そしてClの置換量がzである各化合物に対する、X線励起発光のc−Si受光強度比を示している。表1におけるc−Si受光強度比は、c−Siの受光感度を考慮している。また、c−Si受光強度比は、添加剤を含まない化合物CsCu[I1−y―zBrClのc−Si受光強度に対する、ハロゲン元素置換量は同じだが添加材を含む化合物のc−Si受光強度の比である。この比の値は、添加剤により、c−Si受光強度がどの程度向上するかを示すものである。
【0065】
【表1】

【0066】
置換量がz=0かつ0≦y≦1の範囲において、受光強度比が1を超えている。これは、前記置換量の範囲において、添加剤によりc−Si受光強度が増加することを示している。
【0067】
置換量がy+z=1かつ0≦z≦0.8の範囲において、受光強度比が1を超えている。これは、前記置換量の範囲において、添加剤によりc−Si受光強度が増加することを示している。
【0068】
置換量がy+z=1かつ0.8<z≦1の範囲においては、得られた化合物の単結晶が大気中にて不安定であるため、好ましくない。
【0069】
置換量がy=0かつ0≦z≦0.75の範囲において、zが増加すると、c−Si受光強度比は、減少する傾向にあるものの、1を超えている。これは、前記置換量の範囲において、添加剤によりc−Si受光強度が増加することを示している。
【0070】
置換量がy=0かつ0.75<z≦1の範囲においては、得られた化合物の単結晶が大気中にて不安定であるため、好ましくない。
【0071】
また、以上で述べたような、c−Si受光強度比が1を超える化合物同士を任意に組み合わせて得られる新たな化合物の組成は、そのハロゲン元素置換量yまたはzに対し、
0≦yかつ
0≦zかつ
0≦y+z≦1かつ
4z−y≦3
という条件を満たし、これも本発明の目的を達成できる。
【0072】
図13は、化合物CsCu、CsCuBrおよびCsCuClの各組成を、正三角形の各頂点に置いた場合の三角組成図である。ただし、全組成域において添加剤を含んでいるものとする。図13における黒丸は、表1にて示した、c−Si受光強度比が1を超える組成点である。図13における射線域は、前記条件を満たす組成域である。
【0073】
なお、第2の実施形態で述べたアルカリ元素であるCsのRbまたは/およびKによる部分置換と、本実施形態で示したハロゲン元素であるIのBrまたは/およびClによる置換を組み合わせた[Cs1−xCu[I1−y―zBrCl:Mで表される化合物によっても、本発明の目的を達成できる。
【0074】
(第5の実施形態)
本実施形態の特徴は、放射線検出器であり、これまで述べたシンチレーション材料を用いたシンチレータ材料層を含み構成されている。以下より詳細に述べる。
【0075】
図14は、放射線検出器の構成を示す図である。図14における放射線検出器は、基体10の一方の面に対して、順に、光電変換素子アレイを含む光検出層11、シンチレータ材料層12、そして保護層13で構成されている。ここで、光検出層11とシンチレータ材料層12との間に、シンチレータ材料の劣化を防ぐための保護層、またはシンチレーション光を制御して取出すための光取出層が存在してもよい。また、光検出層11とシンチレータ材料層12を接着させるための接着層が、存在してもよい。ここで、保護層13のうち、シンチレータ材料層12に接している面とは対向する面上に、シンチレーション光を反射、散乱、または吸収させるための光学材料層が存在してもよい。
【0076】
本実施形態にて構成されている放射線検出器に対して放射線が入射すると、シンチレータ材料層12が、放射線を吸収し、図1にみられる発光スペクトルに応じた光を発する。その発光は、直接光検出層11に、または保護層13の界面もしくは内部にて反射もしくは散乱して光検出層11に、入射する。光検出層11は、感度に応じて入射した光の一部もしくは全てを吸収し電荷信号に変換する。以上により、本実施形態において構成される放射線検出器は、放射線を検出することが可能となる。
【実施例1】
【0077】
本実施例は、上記実施形態1に対応した実施例であり、一般式CsCuに添加剤としてTlを用いたCsCu:Tlで表されるシンチレータ材料を製造する例である。ヨウ化セシウム(CsI)、ヨウ化銅(CuI)、及びヨウ化タリウム(TlI)を、一般式CsCu:Tlの組成となるように秤量して混合した。ここで、Tlの添加量は、CsとCuとからなる陽イオン元素の総和に対して0.1mol%、0.5mol%、2mol%となるようにTlIを添加し混合した。また、比較のためにTlを添加していないものも準備した。上記試料を石英管内に真空状態で封止したのち、600℃で30分間溶融し、その溶融工程後に1時間当たり20℃の割合で温度を下げることにより、溶融物を固化させてシンチレータ材料である試料を作製した。その後石英管内の試料を取り出して、各々の試料を厚さが1mm程度の板状に切りだした。次いで研磨した後に、板面の面積を各々測定した。次に板面に略垂直にX線を照射して、X線励起発光スペクトルを計測した。具体的には、積分球を用いて、積分球内に置かれたサンプルにX線を照射して、励起される発光を分光器により計測した。
【0078】
図2に、Tlの添加がない母材、Tlの添加が0.5mol%、2mol%の各々の試料において観測されたX線励起発光スペクトルを示す。図2でスペクトルの強度は、各々の試料板面の面積で規格化してあるので、波長に対して積分した値はX線励起発光強度とみなすことができる。
【0079】
図1は添加剤としてTlを用いた場合の、添加量と発光強度との関係を示す図である。図1で実線はX線励起発光強度を示し、点線はc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度を示している。また、破線はa−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度を示している。ここで、各々の発光強度は、母材であるCsCuの発光強度で規格化した、母体からの上昇度で示している。なお、c−Siならびにa−Siの受光感度は図5に示す波長依存性を示すものを用いた場合である。
【0080】
図1から、Tlの添加によって実線で示す発光強度が母体よりも大きくなっていることが分かる。また、点線で示すc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度、ならびに破線で示すa−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度のいずれも、母材よりも著しく大きな出力を得ることが可能であった。これは図2に示すように、Tlの添加によって、母材であるCsCuよりも長波長側の強度が大きくなったことによるものである。
【0081】
以上の結果より、Tlの添加量が2%以下の場合には、母体であるCsCuよりもX線励起発光強度、c−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度、a−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度のいずれにおいても、上回ることが明らかとなった。
【0082】
これらの結果から、添加剤としてTlを用いる場合には0.5mol%程度が特に好ましく、2mol%以下が好適であることが示された。2mol%を超えると結晶の着色が顕著になり、光透過性が悪化するので好ましくない。
【0083】
続いて、本実施例の試料について大気中での安定性を調べた。
【0084】
具体的には、大気中に3カ月間放置して、形状変化の有無、および発光強度の変化を放置前後で比較した。その結果、目立った形状の変化は見られず、また、発光強度においても経時的な劣化を示すような優位差は見られなかった。これは、本発明のシンチレータ材料がいずれも耐潮解性に優れていることを示すものである。
【実施例2】
【0085】
本実施例は、上記実施形態1に対応した実施例であり、一般式CsCuに添加剤としてInを用いたCsCu:Inで表されるシンチレータ材料を作製する例である。ヨウ化セシウム(CsI)、ヨウ化銅(CuI)、及びヨウ化インジウム(InI)を、一般式CsCu:Inの組成となるように秤量して混合した。ここで、Inの添加量は、CsとCuとからなる陽イオン元素の総和に対して0.1mol%、0.2mol%、0.5mol%、2mol%となるようにInIを添加し混合した。上記試料を石英管内に真空状態で封止したのち、600℃で30分間溶融し、その後1時間当たり20℃の割合で温度を下げることにより、溶融物を固化させて試料を作製した。その後石英管内の試料を取り出して、各々の試料を厚さが1mm程度の板状に切りだした。次いで研磨した後に、板面の面積を各々測定した。次に板面に略垂直にX線を照射して、X線励起発光スペクトルを計測した。具体的には、積分球を用いて、積分球内に置かれたサンプルにX線を照射して、励起される発光を分光器により計測した。
【0086】
図4に、Inの添加がない母材、Inの添加が0.2mol%、2mol%の各々の試料において観測されたX線励起発光スペクトルを示す。なお、Inの添加がない母材については実施例1のものと同じである。図4でスペクトルの強度は、各々の試料板面の面積で規格化してあるので、波長に対して積分した値はX線励起発光強度とみなすことができる。
【0087】
図3は添加剤としてInを用いた場合の、添加量と発光強度との関係を示す図である。図3で実線はX線励起発光強度を示し、点線はc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度を示している。
【0088】
図3から、Inの添加によって実線で示すX線励起発光強度が、0.5mol%以下の範囲で母体よりも大きくなっていることが分かる。より詳細には、Inの添加量が0.2mol%で最大となり、それよりも多くなるとやや下降傾向にあり、2mol%では母体であるCsCuよりも下回っている。しかしながら、図4に示すように、発光波長において母材であるCsCuよりも長波長側の強度が大きいことから、c−Siセンサの出力が向上する。その結果、図3の点線で示すc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度は、Inの添加量が0.5mol%で最大となり、2mol%以下で母材よりも著しく大きな出力を得ることが可能となる。
【0089】
以上述べたように、添加剤としてInを用いる場合には0.2mol%乃至0.5%mol%程度が特に好ましく、2mol%以下が好適である。2mol%を超えると結晶の着色が顕著になり、光透過性が悪化するので好ましくない。
【0090】
続いて、本実施例の試料の大気中での安定性を調べた。
【0091】
具体的には、大気中に3カ月間放置して、形状変化の有無、および発光強度の変化を放置前後で比較した。その結果、目立った形状の変化は見られず、また、発光強度においても経時的な劣化を示すような優位差は見られなかった。これは、本発明のシンチレータ材料がいずれも耐潮解性に優れていることを示すものである。
【実施例3】
【0092】
本実施例は、上記実施形態2に対応した実施例であり、母材であるCsCuのアルカリ元素であるCsの一部を、同じくアルカリ元素であるRbで置換して、かつ添加剤としてTlを添加したシンチレータ材料を作製する例である。一般式は[Cs1−xRbCu:Tlで表され、Tlの添加量はアルカリ元素であるCs及びRbとCuとからなる陽イオン元素の総和に対して0.5mol%とした。
【0093】
ヨウ化セシウム(CsI)、ヨウ化ルビジウム(RbI)、ヨウ化銅(CuI)、及びヨウ化タリウム(TlI)を、一般式[Cs1−xRbCu:Tlの組成となるように秤量して混合した。ここで、Tlの添加量はCsおよびRbのアルカリ元素とCuとからなる陽イオン元素の総和に対して0.5mol%となるように固定して、Rbの置換量xをx=0.05、0.2、1.0となるように混合した。上記試料を石英管内に真空状態で封止したのち、600℃で30分間溶融し、その後1時間当たり20℃の割合で温度を下げることにより、溶融物を固化させて試料を作製した。
【0094】
その後石英管内の試料を取り出して、各々の試料を厚さが1mm程度の板状に切りだした後に研磨して、板面の面積を各々測定した。その後に板面に略垂直にX線を照射して、X線励起発光スペクトルを計測した。具体的には、積分球を用いて、積分球内に置かれたサンプルにX線を照射して、励起される発光を分光器により計測した。
【0095】
図7に、Rbによる置換がないCsCu:Tlと、Rbによる置換量xがx=0.05、0.2の試料において観測されたX線励起発光スペクトルを示す。なお、Rbによる置換がないCsCu:Tlについては実施例1のものと同じである。図7でスペクトルの強度は、各々の試料板面の面積で規格化してあるので、波長に対して積分した値はX線励起発光強度とみなすことができる。
【0096】
図6は添加剤としてTlを用いた場合の、Rbの置換量xと発光強度との関係を示す図である。図6で実線はX線励起発光強度を示し、点線はc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度を示している。
【0097】
図6から、Rbの置換量xがx=0.05では、実線で示す発光強度は1よりも大きく、母体であるCsCuを上回っている。置換量xがx≧0.2では母体であるCsCuよりも下回っている。しかしながら、図7に示すように、母材であるCsCuよりも長波長側の強度が大きいことに加えてさらに、Rbによる置換のないCsCu:Tlよりもさらに長波長側へシフトすることから、c−Siセンサの出力がより向上する場合がある。その結果、図6の点線で示すc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度は、Rbによる置換量xがx=0.05で最大となり、x≦0.2の範囲で母材よりも大きな出力となる。この結果から、Rbによる置換量xはx=0.05が特に好ましく、x≦0.2が好適であることがわかる。
【0098】
続いて、本実施例の試料の大気中での安定性を調べた。
【0099】
具体的には、大気中に3カ月間放置して、形状変化の有無、および発光強度の変化を放置前後で比較した。その結果、目立った形状の変化は見られず、また、発光強度においても経時的な劣化を示すような優位差は見られなかった。これは、本発明のシンチレータ材料がいずれも耐潮解性に優れていることを示すものである。
【実施例4】
【0100】
本実施例は、上記実施形態2に対応した実施例であり、母材であるCsCuのアルカリ元素であるCsの一部を、同じくアルカリ元素であるKで置換して、かつ添加剤としてTlを添加したシンチレータ材料を作製する例である。一般式は[Cs1−xCu:Tlで表され、Tlの添加量はアルカリ元素であるCsおよびKとCuとからなる陽イオン元素の総和に対して0.5mol%とした。
【0101】
ヨウ化セシウム(CsI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化銅(CuI)、及びヨウ化タリウム(TlI)を、一般式[Cs1−xCu:Tlの組成となるように秤量して混合した。ここで、Tlの添加量はアルカリ元素であるCsおよびKとCuとからなる陽イオン元素の総和に対して0.5mol%となるように固定して、Kの置換量xをx=0.05、0.2となるように混合した。上記試料を石英管内に真空状態で封止したのち、600℃で30分間溶融し、その後1時間当たり20℃の割合で温度を下げることにより、溶融物を固化して試料を作製した。
【0102】
その後石英管内の試料を取り出して、各々の試料を厚さが1mm程度の板状に切りだした後に研磨して、板面の面積を各々測定した。その後に板面に略垂直にX線を照射して、X線励起発光スペクトルを計測した。具体的には、積分球を用いて、積分球内に置かれたサンプルにX線を照射して、励起される発光を分光器により計測した。
【0103】
図10に、Kによる置換がないCsCu:Tlと、Kによる置換量xがx=0.05、0.2の試料において観測されたX線励起発光スペクトルを示す。なお、Kによる置換がないCsCu:Tlについては実施例1のものと同じである。図10でスペクトルの強度は、各々の試料板面の面積で規格化してあるので、波長に対して積分した値はX線励起発光強度とみなすことができる。
【0104】
図9は添加剤としてTlを用いた場合の、Kの置換量と発光強度との関係を示す図である。図9で実線はX線励起発光強度を示し、点線はc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度を示している。
【0105】
図9から、Kの置換量xがx≦0.2では、実線で示すX線励起発光強度が母体であるCsCuよりも大きくなっていることが分かる。
【0106】
また、本実施例のシンチレータ材料は図10に示すように、母材であるCsCuよりも長波長側の強度が大きい。Kによる置換のないCsCu:Tlと比較して長波長側へのシフトはほとんど見られないものの、c−Siセンサの出力は母材よりも向上する。その結果、x≦0.2の範囲で母材よりも大きな出力となる。この結果から、Kによる置換量xはx≦0.2が好適である。
【0107】
続いて、本実施例の試料の大気中での安定性を調べた。
【0108】
具体的には、大気中に3カ月間放置して、形状変化の有無、および発光強度の変化を放置前後で比較した。その結果、目立った形状の変化は見られず、また、発光強度においても経時的な劣化を示すような優位差は見られなかった。これは、本発明のシンチレータ材料がいずれも耐潮解性に優れていることを示すものである。
【実施例5】
【0109】
本実施例は、上記実施形態3に対応した実施例であり、母材であるCsCuのハライド元素であるIの一部を、同じくハライド元素であるBrで置換して、かつ添加剤としてTlを添加したシンチレータ材料を作製する例である。一般式はCsCu[I1−yBr:Tlで表され、Tlの添加量はCsとCuとからなる陽イオン元素の総和に対して0.5mol%とした。
【0110】
ヨウ化セシウム(CsI)、臭化銅(CuBr)、及びヨウ化タリウム(TlI)を、一般式CsCu[I1−yBr:Mの組成となるように秤量して混合した。ここで、Tlの添加量はCsとCuとからなる陽イオン元素の総和に対して0.5mol%となるように固定して、Brの置換量yがy=0.6となるように混合した。上記試料を石英管内に真空状態で封止したのち、600℃で30分間溶融し、その後1時間当たり20℃の割合で温度を下げることにより、溶融物を固化させて試料を作製した。
【0111】
その後石英管内の試料を取り出して、各々の試料を厚さが1mm程度の板状に切りだした後に研磨して、板面の面積を各々測定した。その後に板面に略垂直にX線を照射して、X線励起発光スペクトルを計測した。具体的には、積分球を用いて、積分球内に置かれたサンプルにX線を照射して、励起される発光を分光器により計測した。
【0112】
図12に、Brによる置換がないCsCu:Tlと、Brによる置換量yがy=0.6の各々の試料において観測されたX線励起発光スペクトルを示す。なお、Brによる置換がないCsCu:Tlについては実施例1のものと同じである。図12でスペクトルの強度は、各々の試料板面の面積で規格化してあるので、波長に対して積分した値はX線励起発光強度とみなすことができる。
【0113】
図11は添加剤としてTlを用いた場合の、Brの置換量と発光強度との関係を示す図である。図11で実線はX線励起発光強度を示し、点線はc−Siの受光感度を考慮した場合の発光強度を示している。
【0114】
図11から、Brの置換量yがy=0.6では、実線で示す発光強度が母体であるCsCuよりも小さくなっていることがわかる。
【0115】
しかしながら、本実施例のシンチレータ材料は図12に示すように、母材であるCsCuよりも長波長側の強度が大きい。Brによる置換のないCsCu:Tlと比較して長波長側へのシフトは見られないものの、c−Siセンサの出力は母材よりも向上する。その結果、Brによる置換量yがy=0.6において母材よりも大きな出力となる。この結果から、Brによる置換量yの適正な範囲はy≦0.6である。
【0116】
続いて、本実施例の試料の大気中での安定性を調べた。
【0117】
具体的には、大気中に3カ月間放置して、形状変化の有無、および発光強度の変化を放置前後で比較した。その結果、目立った形状の変化は見られず、また、発光強度においても経時的な劣化を示すような優位差は見られなかった。これは、本発明のシンチレータ材料がいずれも耐潮解性に優れていることを示すものである。
【実施例6】
【0118】
本実施例は、上記第4の実施形態に対応した実施例であり、母材であるCsCuのハロゲン元素であるIの一部または全部を、同じくハロゲン元素であるBrまたはClで置換して、かつ添加剤としてTlを添加したシンチレータ材料を作製する例である。一般式はCsCu[I1−y―zBrCl:Tlで表され、Tlの添加量はCsとCuとからなる陽イオン元素の総和に対して0.5mol%とした。
【0119】
ヨウ化セシウム(CsI)、臭化セシウム(CsBr)、塩化セシウム(CsCl)、ヨウ化銅(CuI)、臭化銅(CuBr)、塩化銅(CuCl)、ヨウ化タリウム(TlI)、及び臭化タリウム(TlBr)の原料粉末の中から任意に選択し、一般式CsCu[I1−y―zBrCl:Tlの組成となるように秤量して混合した。ここで、Tlの添加量はCsとCuとからなる陽イオン元素の総和に対して0mol%もしくは0.5mol%の2水準で固定して、(Brの置換量y:Clの置換量z)が(0:0)、(0.6:0)、(1:0)、(0.5:0.5)、(0.2:0.8)、または(0:0.75)となるように混合した。前記混合粉末試料を石英管内に真空状態で封止したのち、600℃で30分間溶融し、その後1時間当たり20℃の割合で温度を下げることにより、溶融物を固化させて試料を作製した。
【0120】
ここで、固化させた試料に着色が見られる化合物については、あらかじめ混合粉末を純化した。具体的には、0.1Pa以下の真空雰囲気を維持したまま、混合粉末試料を溶融し、融液の状態を保ったまま1時間以上加熱し続けた後、一旦放冷し固化させる。得られた固化物から着色部分を取り除き、残りの部分を粉末化し、これを用いて石英管内に封止し、上記と同様にして試料を作製した。
【0121】
その後石英管内の試料を取り出して、各々の試料を厚さが1mm程度の板状に切りだした後に研磨して、板面の面積を各々測定した。その後に板面に略垂直にX線を照射して、X線励起発光スペクトルを計測した。具体的には、積分球を用いて、積分球内に置かれたサンプルにX線を照射して、励起される発光を分光器により計測した。
【0122】
表1に、各種試料のX線励起によるc−Si受光強度比を示す。c−Si受光強度比は、c−Siの受光感度を考慮している。また、c−Si受光強度比は、添加剤であるTlを含まない化合物のc−Si受光強度に対する、ハロゲン元素置換量は同じだが添加材であるTlを0.5mol%含む化合物のc−Si受光強度の比である。この比の値は、添加剤により、c−Si受光強度がどの程度向上するかを示すものである。
置換量がz=0かつ0≦y≦1の範囲において、受光強度比が1を超えた。
置換量がy+z=1かつ0≦z≦0.8の範囲において、zが増加するにつれて、受光強度比は、減少する傾向にあるものの、1を超えた。
【0123】
置換量がy=0かつ0≦z≦0.75の範囲において、zが増加すると、c−Si受光強度比は、減少する傾向にあるものの、1を超えた。
【0124】
続いて、本実施例の試料の大気中での安定性を調べた。
【0125】
具体的には、大気中に3カ月間放置して、形状変化の有無、および発光強度の変化を放置前後で比較した。その結果、目立った形状の変化は見られず、また、発光強度においても経時的な劣化を示すような有意差は見られなかった。これは、本発明のシンチレータ材料がいずれも耐潮解性に優れていることを示すものである。
【実施例7】
【0126】
本実施例は、上記第5の実施形態に対応した実施例である。上記実施例1から実施例6にて作製した各化合物による板状の単結晶を、シンチレータ材料層として用いた。a−Si光電変換素子アレイを含む光検出層と基体が一体となったCCD光検出器の受光面上に、両面接着シートでもって、シンチレータ材料を張り合わせた。さらに、シンチレータ材料層の上に、両面粘着性の保護膜シートでもってアルミ反射膜を張り合わせることで、放射線検出器を作製した。これに対してX線チャートを介してX線を入射させ、放射線検出器から画像データを抽出すると、X線チャートの形状を反映した明暗のラインを確認することができた。これは、本発明における第5の実施形態の実効性を示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明のシンチレータ材料は、放射線により可視光を発光し、この可視光をアモルファスシリコン(a−Si)フォトダイオードや単結晶シリコン(c−Si)フォトダイオードなどの光電変換素子で電荷信号に変換させて画像を取得する光検出器と組み合わせて用いることで放射線検出器として有用である。特に、X線等の放射線を用いた医療用・産業用・高エネルギー物理用・宇宙用の計測装置等に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0128】
10・・・基体
11・・・光検出層
12・・・シンチレータ材料層
13・・・保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式CsCuとMとからなる組成物を有することを特徴とするシンチレータ材料。
(ここで、
Mは、In、Tlより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。
Mの添加量をモル分量で表わすと、CsとCuとからなる陽イオン元素の総和に対して0mol%より大きく2mol%以下である。)
【請求項2】
一般式[Cs1−xCuとMとからなる組成物を有することを特徴とするシンチレータ材料。
(ここで、
一般式は、0<x≦0.2を満たす。
Aは、Rb、Kより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。
Mは、In、Tlより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。
Mの添加量をモル分量で表わすと、Cs、A及びCuからなる陽イオン元素の総和に対して0mol%より大きく2mol%以下である。)
【請求項3】
一般式CsCu[I1−yBrとMとからなる組成物を有することを特徴とするシンチレータ材料。
(ここで、
一般式は、0<y≦0.6を満たす。
Mは、In、Tlより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。
Mの添加量をモル分量で表わすと、CsとCuとからなる陽イオン元素の総和に対して0mol%より大きく2mol%以下である。)
【請求項4】
一般式[Cs1−xCu[I1−yBrとMとからなる組成物を有することを特徴とするシンチレータ材料。
(ここで、
一般式は、0<x≦0.2、0<y≦0.6を満たす。
Aは、Rb、Kより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。
Mは、In、Tlより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。
Mの添加量をモル分量で表わすと、Cs、A及びCuよりなる陽イオン元素の総和に対して0mol%より大きく2mol%以下である。)
【請求項5】
一般式CsCu[I1−y―zBrClとMとからなる組成物を有することを特徴とするシンチレータ材料。
(ここで、
一般式は、0≦y、0≦z、0≦y+z≦1、4z−y≦3の条件を満たす。ただし、z=0かつ0≦y≦0.6を同時に満たすことはない。
Mは、In、Tlより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。
Mの添加量をモル分量で表わすと、CsとCuとからなる陽イオンの元素の総和に対して0mol%より大きく2mol%以下である。)
【請求項6】
一般式[Cs1−xCu[I1−y―zBrClとMとからなる組成物を有することを特徴とするシンチレータ材料。
(ここで、
一般式は、0<x≦0.2、0≦y、0≦z、0≦y+z≦1、4z−y≦3の条件を満たす。ただし、z=0かつ0≦y≦0.6を同時に満たすことはない。
Aは、Rb、Kより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。
Mは、In、Tlより選ばれた1種類以上の元素又は元素群である。
Mの添加量をモル分量で表わすと、CsとAとCuとからなる陽イオンの元素の総和に対して0mol%より大きく2mol%以下である。)
【請求項7】
前記組成物を全重量に対して90重量%以上100重量%以下含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシンチレータ材料。
【請求項8】
前記組成物のみからなる請求項1から5のいずれか1項に記載のシンチレータ材料。
【請求項9】
光検出層の上に請求項1から7のいずれか1項に記載されたシンチレータ材料を設けたことを特徴とする放射線検出器。
【請求項10】
前記光検出層は、光電変換素子アレイから構成されることを特徴とする請求項8記載の放射線検出器。
【請求項11】
シンチレータ材料の製造方法であって、
ヨウ化セシウム、ヨウ化銅、並びにヨウ化タリウムまたは/およびヨウ化インジウムを溶融する工程と、
溶融した溶融物を固化し前記シンチレータ材料を形成する工程と、を有するシンチレータ材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−14753(P2013−14753A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128556(P2012−128556)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】