シンボル情報読み取り装置
【課題】検出した信号のバラツキの補正と、高速読み出しの両方の機能を装置全体を複雑かつ大型化することなしに実現したシンボル情報読み取り装置を提供する。
【解決手段】反射率の異なる符号で表記したシンボルに対してビーム光を照射しつつ走査することにより検出された電気信号を増幅する増幅手段を含み、この増幅手段は、検出された電気信号を固定された利得で増幅する固定利得増幅回路(増幅回路13)と、検出された電気信号を、その大きさに応じて可変される利得で増幅する自動利得制御回路(利得制御増幅回路11、増幅回路13)と、シンボルの高速読み取り時においては固定利得増幅回路により増幅を行ない、シンボルの通常読み取り時においては自動利得制御回路により増幅が行なわれるように動作を切り替える動作切り替え手段32とを含む。
【解決手段】反射率の異なる符号で表記したシンボルに対してビーム光を照射しつつ走査することにより検出された電気信号を増幅する増幅手段を含み、この増幅手段は、検出された電気信号を固定された利得で増幅する固定利得増幅回路(増幅回路13)と、検出された電気信号を、その大きさに応じて可変される利得で増幅する自動利得制御回路(利得制御増幅回路11、増幅回路13)と、シンボルの高速読み取り時においては固定利得増幅回路により増幅を行ない、シンボルの通常読み取り時においては自動利得制御回路により増幅が行なわれるように動作を切り替える動作切り替え手段32とを含む。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はシンボル情報読み取り装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】シンボル情報読み取り装置の一つとしてバーコード情報読み取り装置が従来より知られている。このようなバーコード情報読み取り装置においてはバーコードの読み取り精度を向上するために種々の提案がなされている。例えば米国特許第5557093号は、光源からの光ビームを光走査手段により走査方向が異なる複数の走査ビームとして順次出射させることにより、操作者がバーコードの貼り付け方向を意識せずに、バーコードがどの方向に貼り付けられていても読み取れるようにしたバーコード情報読み取り装置を開示している。
【0003】この種のバーコード情報読み取り装置としては、比較的大型の据置型バーコード情報読み取り装置と、操作者が手に持って移動できる比較的小型の手持ち式のバーコード情報読み取り装置とがある。据置型バーコード情報読み取り装置は、物品を手動あるいは自動で移送してバーコードを読み取ることが出来る。例えば、操作者が手に持てない、あるいは物品の自動搬送に設置出来ない比較的大きい物品や重い物品については、バーコードの読み取りが出来ないことから、手持ち式バーコード情報読み取り装置と組み合わせて用いる場合もある。
【0004】また、手持ち式バーコード情報読み取り装置のみを用いる使用態様としては、例えばスキャナ本体を所定のホルダに保持した状態で、操作者により物品を手に持ってそのバーコードが付された面をスキャナ本体の読み取り用の窓に臨ませることによりバーコードを読み取り、また、操作者が手に持てないような比較的大きな物品に対しては、操作者によりスキャナ本体をホルダから取り外して手に持って移動させ、その読み取り用の窓を物品のバーコードが付された面に臨ませることによりバーコードを読み取ることができる。
【0005】バーコードを読み取る現場においては、バーコードを貼り付けられない物品のアイテムコードを認識させるために、物品とは別にバーコードの一覧を作成し、そのバーコード一覧から物品に応じてバーコードを操作者によって選択して読み取ることがしばしば行われる。
【0006】この場合、上述した手持ち式のバーコード情報読み取り装置でバーコード一覧の所望のバーコードを読み取ろうとすると、スキャナからは操作方向の異なる複数の走査ビームが順次出射されるために、隣接する他のバーコードを読みとってしまうという問題が生じる。
【0007】このような問題を解決する方法として、例えば特開平9−91368号公報に記載されているように、据置型読み取り装置と手持ち式読み取り装置を兼用させ、走査範囲を広くし複数の走査線が出射される第一の走査パターンと、ごく狭い範囲のみを読み取り対象とした単一の走査線が出射される第二の走査パターンを有する読み取り装置が提案されている。
【0008】また、特願平9−181122号明細書には、複数の光学系を用いることなく、出射し得る複数の走査ビーム本数よりも少ない本数に選択的に切り換える走査ビーム切り替え手段を有するバーコード情報読み取り装置が提案されている。
【0009】図4(a)〜(d)は、従来のバーコード情報読み取り装置における信号の流れを示す図である。また、図5は、バーコード情報を読み取るバーコード情報読み取り装置1の構成を示す図である。図5に示すバーコード情報読み取り装置1は、バーコード記号10上を走査して得られる光の反射光を受けるフォトセンサ2、フォトセンサ2の出力電流を電圧に変換する電流電圧変換手段3、増幅手段4、2値化手段5、デコード手段6、ミラー走査駆動回路8により駆動されるミラー7、および光源9で構成されており、装置から離れて存在するバーコード記号10を読み取るものである。
【0010】以下、図4(a)〜(d)および図5を用いてバーコード記号10の読み取りについて説明する。バーコード情報読み取り装置1の光源9、ミラー7、ミラー走査駆動回路8により作り出される光は、図4(a)に示すようにバーコード記号10に直交するように走査される。バーコード記号10上に光を走査する事で得られる反射光は、図4(b)に示すように印刷の濃(黒)い部分で小さく、淡(白)い部分では大きいので、この反射光をフォトセンサ2で検出すると、図4(c)に示すバーパターンの濃淡が電気信号の大小に置き換わったものとなる。得られた電流信号は電流電圧変換手段3、増幅手段4を経て2値化手段5に加えられてデジタル信号に変換され、デコード手段6により符号として読み出される。
【0011】ここで、バーコード情報読み取り装置1が当該装置1から離れた位置に配置されたバーコード記号10を読み取る場合には、・装置とバーコード間の距離・バーコードに入射(走査)される光と周囲の光の比・バーコードの信号の濃淡の差等によりフォトセンサ2で検出する信号の大きさ、および信号に含まれるノイズ成分が大きく変化する。このように条件により大きく異なる信号をそのまま2値化手段5に加え、デコード手段6で符号の復元を行うと、2値化すべき信号に含まれるノイズ成分や、同信号の歪みで生じる誤差が復元した符号データに混入し、読み取り精度が低下してしまう。
【0012】これらの問題を解決する技術として特開平7−302299号公報は自動利得制御(Automatic Gain Control :AGC)に関する技術を開示している。すなわち、この特開平7−302299号公報では、フォトセンサ2と2値化手段5の間に挿入する増幅手段4をAGC回路とし、フォトセンサ2による検出信号が小さければ増幅手段4の利得を大きく、フォトセンサ2による検出信号が大きければ増幅手段4の利得が小さくなるように制御を行なうことによって、復元される符号データの精度低下の抑制を実現している。
【0013】図6はAGC回路の一構成例を示す図であり、利得制御増幅回路11と、利得がAである増幅回路13と、振幅検出回路14とから構成され、利得制御増幅回路11の出力を増幅回路13の入力に、増幅回路13の出力を振幅検出回路14の入力に、この振幅検出回路14の出力を利得制御増幅回路11の利得制御端子Vcntに接続する事で、増幅回路13の出力の振幅が一定となるように制御を行なうネガティブフィードバック回路を構成している。ここで参照番号30は入力端子であり、31は出力端子である。同AGC回路の正常状態は増幅率で決まり、その過渡特性は主に振幅検出回路14の周波数特性で決まる。
【0014】図7(a)は利得制御増幅回路11の利得特性を示す図であり、図7(b)は振幅検出回路14の特性を示す図である。
【0015】ここで、利得制御増幅回路11の利得Gvは、 Gv=Gm−k* Vcnt 式1で表わされ、Gm:利得制御増幅回路11の最大利得k:利得制御係数Vcnt:利得制御電圧である。
【0016】また、振幅検出回路14の特性は、 DET(Vo)=Amplitude(Vo) 式2で表わされ、DET(Vo):振幅検出回路14の出力、Amplitude(x):信号xの振幅、Vo:AGC回路の出力、である。
【0017】図8はAGC回路の定常状態の特性を示す図であり、入力Vi、利得制御増幅回路11の利得Gv、出力Vo、振幅検出回路14の出力DET(Vo)の波形を示している。
【0018】さらに、増幅回路13の出力は、上記した式1及び式2と、以下の式3および式4から式5のように表現できる。
【0019】
Det(Vo)=Vcnt 式3 Vo=(Gv+A)* Vi 式4 Vo=(Gm+A)/((1/Vi)+k) 式5式5はAGC回路の特性を示す一般式であり、入力Viと利得制御係数kの大小関係(この境界は図8中に図示)から式6と式7に分けて考えられることができる。
【0020】
Vo=(Gm+A)/k 式6 k>>(1/Vi)
Vo=0 式7 k<<(1/Vi)
入力Viが小さい範囲では、利得制御増幅回路11の利得制御端子Vcntに加わる電圧がゼロ(DET(0))となりその利得は最大値Gmとなるが、利得制御増幅回路11の出力がゼロである一方、Viが大きくなると、利得制御増幅回路11の出力は式8に示すように、入力Viに依らず一定となる。
【0021】
Vo2/Vo1≒1<<Vi2/Vi1 式8 (k>>(1/Vi1),(1/Vi2))
次に振幅検出回路14の周波数特性により決まるAGC回路の過渡特性について説明する。
【0022】図9は、入力が小→大(式6と式7の境界をまたいで)と変化した際のAGC回路の特性を示している。図9でdtとして示した時間は出力Voが式7で表現される値から式6で表現される値に変化するまでの時間であり、AGC回路の立ち上がり時に起こる遅延時間を表す。
【0023】以下に、このdtと振幅検出回路14の周波数特性との関係を、図10を参照して振幅検出の例で説明する。
【0024】図10に示す回路はピークホールド回路と呼ばれるものであり、非反転端子を入力Viの入力端子、反転端子を出力Voの出力端子とするとともに、出力端子を、カソード端子が出力Voの出力端子に接続されたダイオード16のアノード端子に接続したコンパレータ15と、出力Voの出力端子とGND間に接続されたホールド用容量17と放電用抵抗18とから構成されており、基準電圧(GND)と入力信号のピークの差DET(Vi)を検出する振幅検出回路としての機能を有している。
【0025】本ピークホールド回路の入力信号Viが基準(GND)に対して対称であれば、出力は入力信号の振幅の1/2となる。このピークホールド回路を構成するコンパレータがホールド用容量17を充電する際の出力インピーダンスをRoとすると、振幅検出回路(ピークホールド回路)の帯域fcは式9で示される。この値の大小はネガティブフィードバック回路となっている。AGC回路の安定性を決め、その値が小さければAGC回路はより安定して働く。一方この値は先に説明した遅延時間dtと式10の関係に有る(時間dtは振幅検出回路14の帯域に反比例する)。
【0026】
fc=k* Ro* Cp 式9 (k1:比例定数)
dt=k2* (1/fc) 式10 (k2:比例定数)
図11は従来技術によるバーコード情報読み取り装置の増幅手段により実際に得られる信号を示している。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、複数の走査ビームによるバーコードの全方向読み取りによれば、走査者がバーコードの貼り付け方向を意識せずに、容易にかつ瞬時に読み取りが可能である。また走査ビーム方向と同一方向に複数のバーコードが存在する場合においてその中から任意のバーコードを読み取る時、複数の走査ビームよりも少ない本数に選択的に切り換えて読み取ることは、非常に有効な選択方法である。
【0028】手持ち式バーコード読取装置においてさらに好ましい使い方は、バーコードの読み取り距離が近距離側から遠距離側に渡って広いことである。しかしながら、走査パターンの切り換え、たとえば全方向読み取り(オムニ走査)と双方向読み取り(シングル走査)のモードの切り換え機能を有するバーコード情報読み取り装置においては、走査モードの形態に応じて読み取り回路の最適設定が必要になる。
【0029】全方向読み取りでは、複数の走査パターンにより走査エリアを大きくして読み取るため、回路の応答性を考慮して固定利得部の設定利得を大きく取る反面、走査パターンの違いにより安定したAGC制御がし難くなるため、通常はAGC制御を非動作として使用する。
【0030】一方、双方向読み取りに於いては、全方向読み取りとは逆に、読み取り距離(深度)を拡大したいという要求から、回路の固定利得部の設定利得を小さくし、主にAGC回路の動作を有効に働かせることにより、回路のダイナミックレンジを得ている。従って、それぞれの用途によって回路の特性が異なってしまう。
【0031】また、バーコード記号の読み取り装置では、ビーム光をバーコード記号上に操作する事でデータの読み込みを始めるが、フォトセンサにより検出した信号の増幅手段にAGC回路を用いると、読み取り開始から先に説明した遅延時間dtの間、2値化手段の入力がノイズや歪みを含みデコード手段で復元したデータに誤差が含まれるため、正確な読み込みを行うためには、読み取り開始から時間dt後にデータを読み始めなければならない。
【0032】この遅延時間dtを短くする方法の一つが式10に基づき、振幅検出回路14の帯域を上げることであるが、帯域を上げるとAGC回路の動作が不安定になるため、帯域には上限が存在する。このようにバーコード情報読み取り装置の増幅手段に用いるAGC回路は、装置とバーコード間の距離、バーコード記号と濃淡の差により生じるフォトセンサで検出した信号のバラツキの補正と高速読み出しの両方の機能を満たすものではない。
【0033】本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、高速読み取り時には読み取り遅れの生じない固定利得増幅回路として機能し、通常の読み取り時には安定性を損なわず遅延を小さくしたAGC回路として機能する増幅手段を備えることにより、検出した信号のバラツキの補正と高速読み出しの両方の機能を装置全体を複雑かつ大型化することなしに実現したシンボル情報読み取り装置を提供することにある。
【0034】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、第1の発明に係るシンボル情報読み取り装置は、反射率の異なる符号で表記したシンボルに含まれる情報を読み取るシンボル情報読み取り装置であって、前記シンボルに対してビーム光を照射しつつ走査して、その反射光の強弱を電気信号として検出する検出手段と、この検出手段により検出された電気信号を増幅する増幅手段と、この増幅手段により増幅された電気信号に基づいて符号の復元を行なう復元手段とを具備し、前記増幅手段は、検出された電気信号を固定された利得で増幅する固定利得増幅回路と、検出された電気信号を、その大きさに応じて可変される利得で増幅する自動利得制御回路と、シンボルの高速読み取り時においては前記固定利得増幅回路により増幅を行ない、シンボルの通常読み取り時においては前記自動利得制御回路により増幅が行なわれるように動作を切り替える動作切り替え手段とを含む。
【0035】また、第2の発明に係るシンボル情報読み取り装置は、第1の発明に係るシンボル情報読み取り装置において、前記自動利得制御回路は前記固定利得増幅回路をその構成要素として含み、前記固定利得増幅回路は、検出された電気信号を固定された利得で増幅するときに用いられる第1の利得と、検出された電気信号を可変の利得で増幅するときに用いられる第2の利得とを有し、前記第1の利得は前記第2の利得よりも大きい。
【0036】また、第3の発明に係るシンボル情報読み取り装置は、第1又は第2の発明に係るシンボル情報読み取り装置において、前記固定利得制御回路は演算増幅回路を用いた増幅回路により構成されている。
【0037】
【発明の実施の形態】まず、本発明の実施形態の概略を説明する。本発明が適用されるバーコード情報読み取り装置は、任意の情報を反射率の異なる符号で表記するバーコードに対してビーム光を照射しつつ走査して、その反射光の強弱をフォトセンサにより検出して情報を読み取るものである。ここではフォトセンサにより検出した電気信号を増幅するための増幅手段を、利得制御増幅回路、スイッチ回路、及び固定利得増幅回路で構成し、動作切り替え手段により前記スイッチ回路と、固定利得増幅回路の利得とを切り替える。すなわち、バーコードの高速読み出し時には、動作切り替え手段からの制御信号によりスイッチ回路を制御して、利得がA1の固定利得増幅回路のみを動作させることで読み取りの遅れをなくし、通常読み取り時には、動作切り替え手段からの制御信号によりスイッチ回路を制御して、利得をA2(A2<A1)に設定した固定利得増幅回路と、利得制御増幅回路とを動作させることにより、安定性を損なわずに遅延を減じたAGC回路として働く増幅手段を提供する。
【0038】以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0039】(第1実施形態)図1は本発明の第1実施形態の構成を示す図であり、第1実施形態の増幅手段は、利得制御増幅回路11と、スイッチ(SW)回路12と、増幅回路13と、振幅検出回路14と、動作切り替え手段32とで構成される。
【0040】利得制御増幅回路11は、増幅手段の入力端子30に接続された端子と利得制御端子Vcntとの2つの入力端子を有する。スイッチ回路12の一方の入力端子はこの利得制御増幅回路11の出力端子に接続され、他方の入力端子は入力端子30に接続されている。スイッチ回路11の出力端子は2つの異なる利得A1,A2を有する増幅回路13の入力に接続されている。スイッチ回路12は動作切り替え手段32からの制御信号によりその動作が制御される。また、増幅回路13は動作切り替え手段32からの制御信号により、その利得がA1あるいはA2に切り替えられる。
【0041】さらに増幅回路13の出力端子には増幅振幅回路14が接続され、その出力が利得制御増幅回路11の利得制御端子Vcntに接続され、増幅回路13の出力端子と振幅検出回路14の入力端子の接続点を増幅手段の出力端子31としている。
【0042】以下に上記した構成を有する増幅手段の動作について説明する。
【0043】(高速読み取り)この場合は、動作切り替え手段32からの制御信号により、SW回路12を切り替えて増幅手段の入力端子30に接続するとともに、同制御信号によりその利得をA1とした増幅回路13に接続する。このような構成にすることで本実施形態の増幅手段は、利得がA1なる固定利得増幅回路として動作する。
【0044】(通常の読み取り)この場合は、動作切り替え手段32からの制御信号によりSW回路12を切り替えて利得制御増幅回路11の出力に接続するとともに、同制御信号によりその利得をA2とした増幅回路13に接続する。このような構成にすることで本実施形態の増幅手段は、その特性を式6、式7で示したAGC回路として動作する。AGC回路で生じる遅延は式10で振幅検出回路14で決まる事を示したが、図11に示す特性から導かれる式12で表現する事も出来る。
【0045】
dt=k* DET(Vo)= k* DET((Gm+A2)/k) 式13式13はAGC回路で得られる出力信号を小さくするべく、増幅回路13の利得A2を小さく設定すると、遅延時間dtが小さくなる事を示しており、通常読み取り時に増幅回路13の利得A2を式14のように設定すると遅延時間dtを減じたAGC回路を実現することができる。
【0046】
A1>A2 式14高速読み取りと通常読み取りで増幅回路13の利得を切り替える手法は、式10に示した振幅検出回路14の帯域を上げる手段と異なり、AGC回路の安定性を損なわずに遅延時間dtを減ずることができる。
【0047】図2は、増幅回路13の利得の設定により、自動利得制御回路の遅延が変化するようすを示しており、増幅回路13の利得を25と8とした際の遅延時間dtの差を示している。
【0048】(第2実施形態)図3は本発明の第2実施形態の構成を示す図である。これは上記した第1実施形態の増幅回路13を演算増幅回路を用いた反転増幅回路により構成したものである。図3において、増幅回路13は容量20,23,30、抵抗19,21,24、演算増幅回路22とから構成される。また、振幅検出回路14は、コンパレータ15と、ダイオード16と、ホールド用容量17と、放電抵抗18とから構成される。
【0049】上記した構成において、動作切り替え手段32からの制御信号により次の設定が可能である。
【0050】(高速読み取り)この場合は、第1実施形態で説明した固定増幅回路として動作する。その利得はR24/R19となる。
【0051】(通常読み取り)この場合は、自動利得制御回路として動作する。その際、増幅回路13で構成する反転増幅回路の利得はR24/R21(R21>R19)となる。
【0052】なお、第2実施形態の回路は、利得が切り替え可能な増幅回路を演算増幅回路1つで構成しているが、この部分を複数の演算増幅回路を組み合わせて実現する事も可能である。また第2実施形態のように抵抗24に並列に容量23を接続すれば、増幅回路13は増幅機能とフィルターの機能を併せ持つ事になる。
【0053】上記した実施形態によれば、動作切り替え手段32からの制御信号によりスイッチ回路12を適宜切り替えることにより、高速読み取り時には本実施形態の増幅手段を、読み取り遅れの生じない固定利得増幅回路として機能させ、通常の読み取り時には本実施形態の増幅手段を、安定性を損なわず遅延を小さくしたAGC回路として機能させるようにしたので、検出した信号のバラツキの補正と高速読み出しの両方の機能を装置全体を複雑かつ大型化することなしに実現することができる。
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、高速読み取り時には読み取り遅れの生じない固定利得増幅回路として機能し、通常の読み取り時には安定性を損なわず遅延を小さくしたAGC回路として機能する増幅手段を備えたので、検出した信号のバラツキの補正と高速読み出しの両方の機能を装置全体を複雑かつ大型化することなしに実現したシンボル情報読み取り装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るバーコード情報読み取り装置の増幅手段の構成例を示す図である。
【図2】増幅回路13の利得の設定により自動利得制御回路の遅延が変わる事を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るバーコード情報読み取り装置の増幅手段の構成例を示す図である。
【図4】従来技術によるバーコード情報読み取り装置の基本動作を説明するための図である。
【図5】従来技術によるバーコード情報読み取り装置の構造を示す図である。
【図6】従来技術によるバーコード情報読み取り装置の増幅手段の構成例を示す図である。
【図7】(a)は利得制御増幅回路の利得特性を示す図であり、(b)は振幅検出回路14の特性を示す図である。
【図8】従来技術によるバーコード情報読み取り装置の増幅手段の理想的な動作を示す図である。
【図9】従来技術によるバーコード情報読み取り装置の増幅手段を構成する振幅検出回路の動作を示す図である。
【図10】ピークホールド回路の構成を示す図である。
【図11】従来技術によるバーコード情報読み取り装置の増幅手段で実際に得られる信号を示す図である。
【符号の説明】
1…バーコード情報読み取り装置、
2…フォトセンサ、
3…電流電圧変換手段、
4…増幅手段、
5…2値化手段、
6…デコード手段、
7…ミラー、
8…ミラー走査駆動回路、
9…光源、
10…バーコード記号、
11…利得制御増幅回路、
12…スイッチ回路、
13…増幅回路、
14…振幅検出回路、
15…コンパレータ、
16…ダイオード、
17…ホールド用容量、
18…放電抵抗、
19,21,24…抵抗、
20,23,30…容量、
22…演算増幅回路、
32…動作切り替え手段。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はシンボル情報読み取り装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】シンボル情報読み取り装置の一つとしてバーコード情報読み取り装置が従来より知られている。このようなバーコード情報読み取り装置においてはバーコードの読み取り精度を向上するために種々の提案がなされている。例えば米国特許第5557093号は、光源からの光ビームを光走査手段により走査方向が異なる複数の走査ビームとして順次出射させることにより、操作者がバーコードの貼り付け方向を意識せずに、バーコードがどの方向に貼り付けられていても読み取れるようにしたバーコード情報読み取り装置を開示している。
【0003】この種のバーコード情報読み取り装置としては、比較的大型の据置型バーコード情報読み取り装置と、操作者が手に持って移動できる比較的小型の手持ち式のバーコード情報読み取り装置とがある。据置型バーコード情報読み取り装置は、物品を手動あるいは自動で移送してバーコードを読み取ることが出来る。例えば、操作者が手に持てない、あるいは物品の自動搬送に設置出来ない比較的大きい物品や重い物品については、バーコードの読み取りが出来ないことから、手持ち式バーコード情報読み取り装置と組み合わせて用いる場合もある。
【0004】また、手持ち式バーコード情報読み取り装置のみを用いる使用態様としては、例えばスキャナ本体を所定のホルダに保持した状態で、操作者により物品を手に持ってそのバーコードが付された面をスキャナ本体の読み取り用の窓に臨ませることによりバーコードを読み取り、また、操作者が手に持てないような比較的大きな物品に対しては、操作者によりスキャナ本体をホルダから取り外して手に持って移動させ、その読み取り用の窓を物品のバーコードが付された面に臨ませることによりバーコードを読み取ることができる。
【0005】バーコードを読み取る現場においては、バーコードを貼り付けられない物品のアイテムコードを認識させるために、物品とは別にバーコードの一覧を作成し、そのバーコード一覧から物品に応じてバーコードを操作者によって選択して読み取ることがしばしば行われる。
【0006】この場合、上述した手持ち式のバーコード情報読み取り装置でバーコード一覧の所望のバーコードを読み取ろうとすると、スキャナからは操作方向の異なる複数の走査ビームが順次出射されるために、隣接する他のバーコードを読みとってしまうという問題が生じる。
【0007】このような問題を解決する方法として、例えば特開平9−91368号公報に記載されているように、据置型読み取り装置と手持ち式読み取り装置を兼用させ、走査範囲を広くし複数の走査線が出射される第一の走査パターンと、ごく狭い範囲のみを読み取り対象とした単一の走査線が出射される第二の走査パターンを有する読み取り装置が提案されている。
【0008】また、特願平9−181122号明細書には、複数の光学系を用いることなく、出射し得る複数の走査ビーム本数よりも少ない本数に選択的に切り換える走査ビーム切り替え手段を有するバーコード情報読み取り装置が提案されている。
【0009】図4(a)〜(d)は、従来のバーコード情報読み取り装置における信号の流れを示す図である。また、図5は、バーコード情報を読み取るバーコード情報読み取り装置1の構成を示す図である。図5に示すバーコード情報読み取り装置1は、バーコード記号10上を走査して得られる光の反射光を受けるフォトセンサ2、フォトセンサ2の出力電流を電圧に変換する電流電圧変換手段3、増幅手段4、2値化手段5、デコード手段6、ミラー走査駆動回路8により駆動されるミラー7、および光源9で構成されており、装置から離れて存在するバーコード記号10を読み取るものである。
【0010】以下、図4(a)〜(d)および図5を用いてバーコード記号10の読み取りについて説明する。バーコード情報読み取り装置1の光源9、ミラー7、ミラー走査駆動回路8により作り出される光は、図4(a)に示すようにバーコード記号10に直交するように走査される。バーコード記号10上に光を走査する事で得られる反射光は、図4(b)に示すように印刷の濃(黒)い部分で小さく、淡(白)い部分では大きいので、この反射光をフォトセンサ2で検出すると、図4(c)に示すバーパターンの濃淡が電気信号の大小に置き換わったものとなる。得られた電流信号は電流電圧変換手段3、増幅手段4を経て2値化手段5に加えられてデジタル信号に変換され、デコード手段6により符号として読み出される。
【0011】ここで、バーコード情報読み取り装置1が当該装置1から離れた位置に配置されたバーコード記号10を読み取る場合には、・装置とバーコード間の距離・バーコードに入射(走査)される光と周囲の光の比・バーコードの信号の濃淡の差等によりフォトセンサ2で検出する信号の大きさ、および信号に含まれるノイズ成分が大きく変化する。このように条件により大きく異なる信号をそのまま2値化手段5に加え、デコード手段6で符号の復元を行うと、2値化すべき信号に含まれるノイズ成分や、同信号の歪みで生じる誤差が復元した符号データに混入し、読み取り精度が低下してしまう。
【0012】これらの問題を解決する技術として特開平7−302299号公報は自動利得制御(Automatic Gain Control :AGC)に関する技術を開示している。すなわち、この特開平7−302299号公報では、フォトセンサ2と2値化手段5の間に挿入する増幅手段4をAGC回路とし、フォトセンサ2による検出信号が小さければ増幅手段4の利得を大きく、フォトセンサ2による検出信号が大きければ増幅手段4の利得が小さくなるように制御を行なうことによって、復元される符号データの精度低下の抑制を実現している。
【0013】図6はAGC回路の一構成例を示す図であり、利得制御増幅回路11と、利得がAである増幅回路13と、振幅検出回路14とから構成され、利得制御増幅回路11の出力を増幅回路13の入力に、増幅回路13の出力を振幅検出回路14の入力に、この振幅検出回路14の出力を利得制御増幅回路11の利得制御端子Vcntに接続する事で、増幅回路13の出力の振幅が一定となるように制御を行なうネガティブフィードバック回路を構成している。ここで参照番号30は入力端子であり、31は出力端子である。同AGC回路の正常状態は増幅率で決まり、その過渡特性は主に振幅検出回路14の周波数特性で決まる。
【0014】図7(a)は利得制御増幅回路11の利得特性を示す図であり、図7(b)は振幅検出回路14の特性を示す図である。
【0015】ここで、利得制御増幅回路11の利得Gvは、 Gv=Gm−k* Vcnt 式1で表わされ、Gm:利得制御増幅回路11の最大利得k:利得制御係数Vcnt:利得制御電圧である。
【0016】また、振幅検出回路14の特性は、 DET(Vo)=Amplitude(Vo) 式2で表わされ、DET(Vo):振幅検出回路14の出力、Amplitude(x):信号xの振幅、Vo:AGC回路の出力、である。
【0017】図8はAGC回路の定常状態の特性を示す図であり、入力Vi、利得制御増幅回路11の利得Gv、出力Vo、振幅検出回路14の出力DET(Vo)の波形を示している。
【0018】さらに、増幅回路13の出力は、上記した式1及び式2と、以下の式3および式4から式5のように表現できる。
【0019】
Det(Vo)=Vcnt 式3 Vo=(Gv+A)* Vi 式4 Vo=(Gm+A)/((1/Vi)+k) 式5式5はAGC回路の特性を示す一般式であり、入力Viと利得制御係数kの大小関係(この境界は図8中に図示)から式6と式7に分けて考えられることができる。
【0020】
Vo=(Gm+A)/k 式6 k>>(1/Vi)
Vo=0 式7 k<<(1/Vi)
入力Viが小さい範囲では、利得制御増幅回路11の利得制御端子Vcntに加わる電圧がゼロ(DET(0))となりその利得は最大値Gmとなるが、利得制御増幅回路11の出力がゼロである一方、Viが大きくなると、利得制御増幅回路11の出力は式8に示すように、入力Viに依らず一定となる。
【0021】
Vo2/Vo1≒1<<Vi2/Vi1 式8 (k>>(1/Vi1),(1/Vi2))
次に振幅検出回路14の周波数特性により決まるAGC回路の過渡特性について説明する。
【0022】図9は、入力が小→大(式6と式7の境界をまたいで)と変化した際のAGC回路の特性を示している。図9でdtとして示した時間は出力Voが式7で表現される値から式6で表現される値に変化するまでの時間であり、AGC回路の立ち上がり時に起こる遅延時間を表す。
【0023】以下に、このdtと振幅検出回路14の周波数特性との関係を、図10を参照して振幅検出の例で説明する。
【0024】図10に示す回路はピークホールド回路と呼ばれるものであり、非反転端子を入力Viの入力端子、反転端子を出力Voの出力端子とするとともに、出力端子を、カソード端子が出力Voの出力端子に接続されたダイオード16のアノード端子に接続したコンパレータ15と、出力Voの出力端子とGND間に接続されたホールド用容量17と放電用抵抗18とから構成されており、基準電圧(GND)と入力信号のピークの差DET(Vi)を検出する振幅検出回路としての機能を有している。
【0025】本ピークホールド回路の入力信号Viが基準(GND)に対して対称であれば、出力は入力信号の振幅の1/2となる。このピークホールド回路を構成するコンパレータがホールド用容量17を充電する際の出力インピーダンスをRoとすると、振幅検出回路(ピークホールド回路)の帯域fcは式9で示される。この値の大小はネガティブフィードバック回路となっている。AGC回路の安定性を決め、その値が小さければAGC回路はより安定して働く。一方この値は先に説明した遅延時間dtと式10の関係に有る(時間dtは振幅検出回路14の帯域に反比例する)。
【0026】
fc=k* Ro* Cp 式9 (k1:比例定数)
dt=k2* (1/fc) 式10 (k2:比例定数)
図11は従来技術によるバーコード情報読み取り装置の増幅手段により実際に得られる信号を示している。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、複数の走査ビームによるバーコードの全方向読み取りによれば、走査者がバーコードの貼り付け方向を意識せずに、容易にかつ瞬時に読み取りが可能である。また走査ビーム方向と同一方向に複数のバーコードが存在する場合においてその中から任意のバーコードを読み取る時、複数の走査ビームよりも少ない本数に選択的に切り換えて読み取ることは、非常に有効な選択方法である。
【0028】手持ち式バーコード読取装置においてさらに好ましい使い方は、バーコードの読み取り距離が近距離側から遠距離側に渡って広いことである。しかしながら、走査パターンの切り換え、たとえば全方向読み取り(オムニ走査)と双方向読み取り(シングル走査)のモードの切り換え機能を有するバーコード情報読み取り装置においては、走査モードの形態に応じて読み取り回路の最適設定が必要になる。
【0029】全方向読み取りでは、複数の走査パターンにより走査エリアを大きくして読み取るため、回路の応答性を考慮して固定利得部の設定利得を大きく取る反面、走査パターンの違いにより安定したAGC制御がし難くなるため、通常はAGC制御を非動作として使用する。
【0030】一方、双方向読み取りに於いては、全方向読み取りとは逆に、読み取り距離(深度)を拡大したいという要求から、回路の固定利得部の設定利得を小さくし、主にAGC回路の動作を有効に働かせることにより、回路のダイナミックレンジを得ている。従って、それぞれの用途によって回路の特性が異なってしまう。
【0031】また、バーコード記号の読み取り装置では、ビーム光をバーコード記号上に操作する事でデータの読み込みを始めるが、フォトセンサにより検出した信号の増幅手段にAGC回路を用いると、読み取り開始から先に説明した遅延時間dtの間、2値化手段の入力がノイズや歪みを含みデコード手段で復元したデータに誤差が含まれるため、正確な読み込みを行うためには、読み取り開始から時間dt後にデータを読み始めなければならない。
【0032】この遅延時間dtを短くする方法の一つが式10に基づき、振幅検出回路14の帯域を上げることであるが、帯域を上げるとAGC回路の動作が不安定になるため、帯域には上限が存在する。このようにバーコード情報読み取り装置の増幅手段に用いるAGC回路は、装置とバーコード間の距離、バーコード記号と濃淡の差により生じるフォトセンサで検出した信号のバラツキの補正と高速読み出しの両方の機能を満たすものではない。
【0033】本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、高速読み取り時には読み取り遅れの生じない固定利得増幅回路として機能し、通常の読み取り時には安定性を損なわず遅延を小さくしたAGC回路として機能する増幅手段を備えることにより、検出した信号のバラツキの補正と高速読み出しの両方の機能を装置全体を複雑かつ大型化することなしに実現したシンボル情報読み取り装置を提供することにある。
【0034】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、第1の発明に係るシンボル情報読み取り装置は、反射率の異なる符号で表記したシンボルに含まれる情報を読み取るシンボル情報読み取り装置であって、前記シンボルに対してビーム光を照射しつつ走査して、その反射光の強弱を電気信号として検出する検出手段と、この検出手段により検出された電気信号を増幅する増幅手段と、この増幅手段により増幅された電気信号に基づいて符号の復元を行なう復元手段とを具備し、前記増幅手段は、検出された電気信号を固定された利得で増幅する固定利得増幅回路と、検出された電気信号を、その大きさに応じて可変される利得で増幅する自動利得制御回路と、シンボルの高速読み取り時においては前記固定利得増幅回路により増幅を行ない、シンボルの通常読み取り時においては前記自動利得制御回路により増幅が行なわれるように動作を切り替える動作切り替え手段とを含む。
【0035】また、第2の発明に係るシンボル情報読み取り装置は、第1の発明に係るシンボル情報読み取り装置において、前記自動利得制御回路は前記固定利得増幅回路をその構成要素として含み、前記固定利得増幅回路は、検出された電気信号を固定された利得で増幅するときに用いられる第1の利得と、検出された電気信号を可変の利得で増幅するときに用いられる第2の利得とを有し、前記第1の利得は前記第2の利得よりも大きい。
【0036】また、第3の発明に係るシンボル情報読み取り装置は、第1又は第2の発明に係るシンボル情報読み取り装置において、前記固定利得制御回路は演算増幅回路を用いた増幅回路により構成されている。
【0037】
【発明の実施の形態】まず、本発明の実施形態の概略を説明する。本発明が適用されるバーコード情報読み取り装置は、任意の情報を反射率の異なる符号で表記するバーコードに対してビーム光を照射しつつ走査して、その反射光の強弱をフォトセンサにより検出して情報を読み取るものである。ここではフォトセンサにより検出した電気信号を増幅するための増幅手段を、利得制御増幅回路、スイッチ回路、及び固定利得増幅回路で構成し、動作切り替え手段により前記スイッチ回路と、固定利得増幅回路の利得とを切り替える。すなわち、バーコードの高速読み出し時には、動作切り替え手段からの制御信号によりスイッチ回路を制御して、利得がA1の固定利得増幅回路のみを動作させることで読み取りの遅れをなくし、通常読み取り時には、動作切り替え手段からの制御信号によりスイッチ回路を制御して、利得をA2(A2<A1)に設定した固定利得増幅回路と、利得制御増幅回路とを動作させることにより、安定性を損なわずに遅延を減じたAGC回路として働く増幅手段を提供する。
【0038】以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0039】(第1実施形態)図1は本発明の第1実施形態の構成を示す図であり、第1実施形態の増幅手段は、利得制御増幅回路11と、スイッチ(SW)回路12と、増幅回路13と、振幅検出回路14と、動作切り替え手段32とで構成される。
【0040】利得制御増幅回路11は、増幅手段の入力端子30に接続された端子と利得制御端子Vcntとの2つの入力端子を有する。スイッチ回路12の一方の入力端子はこの利得制御増幅回路11の出力端子に接続され、他方の入力端子は入力端子30に接続されている。スイッチ回路11の出力端子は2つの異なる利得A1,A2を有する増幅回路13の入力に接続されている。スイッチ回路12は動作切り替え手段32からの制御信号によりその動作が制御される。また、増幅回路13は動作切り替え手段32からの制御信号により、その利得がA1あるいはA2に切り替えられる。
【0041】さらに増幅回路13の出力端子には増幅振幅回路14が接続され、その出力が利得制御増幅回路11の利得制御端子Vcntに接続され、増幅回路13の出力端子と振幅検出回路14の入力端子の接続点を増幅手段の出力端子31としている。
【0042】以下に上記した構成を有する増幅手段の動作について説明する。
【0043】(高速読み取り)この場合は、動作切り替え手段32からの制御信号により、SW回路12を切り替えて増幅手段の入力端子30に接続するとともに、同制御信号によりその利得をA1とした増幅回路13に接続する。このような構成にすることで本実施形態の増幅手段は、利得がA1なる固定利得増幅回路として動作する。
【0044】(通常の読み取り)この場合は、動作切り替え手段32からの制御信号によりSW回路12を切り替えて利得制御増幅回路11の出力に接続するとともに、同制御信号によりその利得をA2とした増幅回路13に接続する。このような構成にすることで本実施形態の増幅手段は、その特性を式6、式7で示したAGC回路として動作する。AGC回路で生じる遅延は式10で振幅検出回路14で決まる事を示したが、図11に示す特性から導かれる式12で表現する事も出来る。
【0045】
dt=k* DET(Vo)= k* DET((Gm+A2)/k) 式13式13はAGC回路で得られる出力信号を小さくするべく、増幅回路13の利得A2を小さく設定すると、遅延時間dtが小さくなる事を示しており、通常読み取り時に増幅回路13の利得A2を式14のように設定すると遅延時間dtを減じたAGC回路を実現することができる。
【0046】
A1>A2 式14高速読み取りと通常読み取りで増幅回路13の利得を切り替える手法は、式10に示した振幅検出回路14の帯域を上げる手段と異なり、AGC回路の安定性を損なわずに遅延時間dtを減ずることができる。
【0047】図2は、増幅回路13の利得の設定により、自動利得制御回路の遅延が変化するようすを示しており、増幅回路13の利得を25と8とした際の遅延時間dtの差を示している。
【0048】(第2実施形態)図3は本発明の第2実施形態の構成を示す図である。これは上記した第1実施形態の増幅回路13を演算増幅回路を用いた反転増幅回路により構成したものである。図3において、増幅回路13は容量20,23,30、抵抗19,21,24、演算増幅回路22とから構成される。また、振幅検出回路14は、コンパレータ15と、ダイオード16と、ホールド用容量17と、放電抵抗18とから構成される。
【0049】上記した構成において、動作切り替え手段32からの制御信号により次の設定が可能である。
【0050】(高速読み取り)この場合は、第1実施形態で説明した固定増幅回路として動作する。その利得はR24/R19となる。
【0051】(通常読み取り)この場合は、自動利得制御回路として動作する。その際、増幅回路13で構成する反転増幅回路の利得はR24/R21(R21>R19)となる。
【0052】なお、第2実施形態の回路は、利得が切り替え可能な増幅回路を演算増幅回路1つで構成しているが、この部分を複数の演算増幅回路を組み合わせて実現する事も可能である。また第2実施形態のように抵抗24に並列に容量23を接続すれば、増幅回路13は増幅機能とフィルターの機能を併せ持つ事になる。
【0053】上記した実施形態によれば、動作切り替え手段32からの制御信号によりスイッチ回路12を適宜切り替えることにより、高速読み取り時には本実施形態の増幅手段を、読み取り遅れの生じない固定利得増幅回路として機能させ、通常の読み取り時には本実施形態の増幅手段を、安定性を損なわず遅延を小さくしたAGC回路として機能させるようにしたので、検出した信号のバラツキの補正と高速読み出しの両方の機能を装置全体を複雑かつ大型化することなしに実現することができる。
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、高速読み取り時には読み取り遅れの生じない固定利得増幅回路として機能し、通常の読み取り時には安定性を損なわず遅延を小さくしたAGC回路として機能する増幅手段を備えたので、検出した信号のバラツキの補正と高速読み出しの両方の機能を装置全体を複雑かつ大型化することなしに実現したシンボル情報読み取り装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るバーコード情報読み取り装置の増幅手段の構成例を示す図である。
【図2】増幅回路13の利得の設定により自動利得制御回路の遅延が変わる事を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るバーコード情報読み取り装置の増幅手段の構成例を示す図である。
【図4】従来技術によるバーコード情報読み取り装置の基本動作を説明するための図である。
【図5】従来技術によるバーコード情報読み取り装置の構造を示す図である。
【図6】従来技術によるバーコード情報読み取り装置の増幅手段の構成例を示す図である。
【図7】(a)は利得制御増幅回路の利得特性を示す図であり、(b)は振幅検出回路14の特性を示す図である。
【図8】従来技術によるバーコード情報読み取り装置の増幅手段の理想的な動作を示す図である。
【図9】従来技術によるバーコード情報読み取り装置の増幅手段を構成する振幅検出回路の動作を示す図である。
【図10】ピークホールド回路の構成を示す図である。
【図11】従来技術によるバーコード情報読み取り装置の増幅手段で実際に得られる信号を示す図である。
【符号の説明】
1…バーコード情報読み取り装置、
2…フォトセンサ、
3…電流電圧変換手段、
4…増幅手段、
5…2値化手段、
6…デコード手段、
7…ミラー、
8…ミラー走査駆動回路、
9…光源、
10…バーコード記号、
11…利得制御増幅回路、
12…スイッチ回路、
13…増幅回路、
14…振幅検出回路、
15…コンパレータ、
16…ダイオード、
17…ホールド用容量、
18…放電抵抗、
19,21,24…抵抗、
20,23,30…容量、
22…演算増幅回路、
32…動作切り替え手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 反射率の異なる符号で表記したシンボルに含まれる情報を読み取るシンボル情報読み取り装置であって、前記シンボルに対してビーム光を照射しつつ走査して、その反射光の強弱を電気信号として検出する検出手段と、この検出手段により検出された電気信号を増幅する増幅手段と、この増幅手段により増幅された電気信号に基づいて符号の復元を行なう復元手段とを具備し、前記増幅手段は、検出された電気信号を固定された利得で増幅する固定利得増幅回路と、検出された電気信号を、その大きさに応じて可変される利得で増幅する自動利得制御回路と、シンボルの高速読み取り時においては前記固定利得増幅回路により増幅を行ない、シンボルの通常読み取り時においては前記自動利得制御回路により増幅が行なわれるように動作を切り替える動作切り替え手段と、を含むことを特徴とするシンボル情報読み取り装置。
【請求項2】 前記自動利得制御回路は前記固定利得増幅回路をその構成要素として含み、前記固定利得増幅回路は、検出された電気信号を固定された利得で増幅するときに用いられる第1の利得と、検出された電気信号を可変の利得で増幅するときに用いられる第2の利得とを有し、前記第1の利得は前記第2の利得よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のシンボル情報読み取り装置。
【請求項3】 前記固定利得制御回路は演算増幅回路を用いた増幅回路により構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のシンボル情報読み取り装置。
【請求項1】 反射率の異なる符号で表記したシンボルに含まれる情報を読み取るシンボル情報読み取り装置であって、前記シンボルに対してビーム光を照射しつつ走査して、その反射光の強弱を電気信号として検出する検出手段と、この検出手段により検出された電気信号を増幅する増幅手段と、この増幅手段により増幅された電気信号に基づいて符号の復元を行なう復元手段とを具備し、前記増幅手段は、検出された電気信号を固定された利得で増幅する固定利得増幅回路と、検出された電気信号を、その大きさに応じて可変される利得で増幅する自動利得制御回路と、シンボルの高速読み取り時においては前記固定利得増幅回路により増幅を行ない、シンボルの通常読み取り時においては前記自動利得制御回路により増幅が行なわれるように動作を切り替える動作切り替え手段と、を含むことを特徴とするシンボル情報読み取り装置。
【請求項2】 前記自動利得制御回路は前記固定利得増幅回路をその構成要素として含み、前記固定利得増幅回路は、検出された電気信号を固定された利得で増幅するときに用いられる第1の利得と、検出された電気信号を可変の利得で増幅するときに用いられる第2の利得とを有し、前記第1の利得は前記第2の利得よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のシンボル情報読み取り装置。
【請求項3】 前記固定利得制御回路は演算増幅回路を用いた増幅回路により構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のシンボル情報読み取り装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
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【図10】
【図11】
【公開番号】特開2000−163504(P2000−163504A)
【公開日】平成12年6月16日(2000.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−337036
【出願日】平成10年11月27日(1998.11.27)
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成12年6月16日(2000.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成10年11月27日(1998.11.27)
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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