説明

シンボル認識装置及びその制御プログラム

【課題】二次元シンボルを最適な光量で照明でき、効率的に二次元シンボルを認識するシンボル認識装置を提供すること。
【解決手段】撮像対象である被写体3を複数の領域に分けて部分的に照明する光源30をシンボル認識装置に設ける。光源30が照明した被写体3をイメージセンサ32で撮像し、撮像結果たる画像からデコーダ33がQRコードをデコードする。そして、デコーダ33によるデコードが失敗したとき、階調計測部23により画像データ中の複数のエリアの平均階調を計測し、その結果に基づいて制御部21により光源30を構成する各LED光源101〜104への通電時間を決定する。かくして決定された通電時間に従って、光源駆動回路22が各LED光源101〜104を制御し、被写体3を照明して、再度の撮像及びデコードを試みる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、QRコード(登録商標)等の二次元シンボルを撮像手段で撮像し、この画像から前記二次元シンボルを認識するスキャナ等のシンボル認識装置及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物品やカード媒体、チラシ等に付されるバーコード等のシンボルを認識するシンボル認識装置は、レーザ光をスキャニングさせるレーザ方式が主流である。しかしその一方で、近年では、シンボルが付された物品の二次元画像を撮像手段で撮像し、この画像からシンボルを認識する方式、いわゆるカメラ撮像方式が開発されている。この種のシンボル認識装置は、結像レンズを介してシンボル像をイメージセンサに導いてアナログ信号に変換し、該アナログ信号を2値化回路で2値化出力に変換した後、デコーダにてデコードした数値を出力するようになっている。
【0003】
カメラ撮像方式のシンボル認識装置において、被写体の光量の過剰又は不足が生じると、シンボルが正確に読み取れないことがある。このような問題を解決すべく、種々の発明がなされている。例えば特許文献1に開示されたバーコード読取装置は、バーコードの撮像により得られる映像信号のレベルや読取率に応じてバーコードへの配光を部分的に制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−153106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、一次元にバーパターンを配列したバーコードよりもサイズの大きい情報を表現可能な、QRコード等の二次元シンボルが普及しつつある。二次元シンボルを認識するシンボル認識装置は、一般的に前記カメラ撮像方式を採用している。したがって、前記したような被写体への光量の過剰又は不足に関する問題が生じ得る。二次元シンボルは、マトリクス状に配置された多数のシンボルを同時に認識するものであるため、特許文献1に開示されたような、一次元的な部分照明を制御する技術に対してさらなる改良を加える必要がある。
【0006】
本発明は、上記のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、二次元シンボルを最適な光量で照明でき、効率的に二次元シンボルを認識するシンボル認識装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、次のような手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の視点は、被写体を複数の領域に分けて部分的に照明する照明手段と、この照明手段により照明された前記被写体を撮像し、画像データを生成する撮像手段と、この撮像手段により生成された画像データに含まれる二次元シンボルをデコードするデコード手段と、このデコード手段によるデコードが失敗したとき、前記撮像手段により生成された画像データから、前記照明手段によって照明される前記複数の領域毎の階調情報を計測する階調計測手段と、この階調計測手段により計測された前記複数の領域毎の階調情報に基づいて、前記照明手段が前記複数の領域のそれぞれを照明する配光量を補正する補正手段と、この補正手段により補正された配光量に従って前記照明手段を駆動し、前記複数の領域のそれぞれを照明させる照明駆動手段とを備えたシンボル認識装置である。
【0009】
本発明の第2の視点は、前記シンボル認識装置の制御プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
かかる手段を講じた本発明によれば、二次元シンボルを最適な光量で照明でき、効率的に二次元シンボルを認識するシンボル認識装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態におけるシンボル認識装置の使用状態を示す図。
【図2】同シンボル認識装置の要部構成を示すブロック図。
【図3】同シンボル認識装置が扱う画像データの分割例を示す図。
【図4】図1に示したシンボル認識装置のA−A断面を示す概略図。
【図5】図1に示したシンボル認識装置のB−B断面を示す概略図。
【図6】同シンボル認識装置がQRコードを認識する手順を示すフローチャート。
【図7】同シンボル認識装置が各LED光源の通電時間を補正する手順を説明するための図。
【図8】同シンボル認識装置によるLED光源の制御例を説明するための図。
【図9】同シンボル認識装置によるLED光源の制御例を説明するための図。
【図10】同シンボル認識装置によるLED光源の制御例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、この実施形態は、QRコードを読み取るスキャナであるシンボル認識装置に本発明を適用した一例である。
【0013】
図1は、シンボル認識装置1の使用状態を示す模式図である。シンボル認識装置1は、情報処理端末2の側面に設けられている。情報処理端末2は、例えば小売店等でチェックアウト業務に使用されるPOS(Point Of Sales)端末や、POS端末に接続されてレジカウンタ上に設けられる商品情報の登録装置等である。
【0014】
シンボル認識装置1は、直方体状のケース10に、光透過性のガラス部材11を嵌め込んで形成されている。このガラス部材11に被写体3に付されたQRコード4を翳すと、シンボル認識装置1がQRコード4を認識し、QRコード4にて示される情報を情報処理端末2の制御回路に入力する。情報処理端末2は、シンボル認識装置1から入力された情報を用いて所定の情報処理を行う。
【0015】
図2は、シンボル認識装置1の要部構成を示すブロック図である。シンボル認識装置1は、メイン制御ボード20と、光源30と、レンズ31と、イメージセンサ32と、デコーダ33とを備えている。
【0016】
前記光源30は、本実施形態における照明手段として機能するものであり、ガラス部材11に翳された被写体3を部分的に照明する4つのLED光源101〜104にて構成されている。
【0017】
前記メイン制御ボード20は、CPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成された制御部21と、光源駆動回路22と、階調計測部23と、配光記憶部24とを備えている。
【0018】
前記光源駆動回路22は、本実施形態における照明駆動手段として機能するものであり、LED光源101〜104の点灯/消灯をそれぞれ独立して制御する。特に本実施形態では、各LED光源101〜104への通電時間を選択的に変化させることで被写体への配光量を調整する。
【0019】
前記レンズ31は、光源30から照射され、被写体3に反射して戻る反射光をイメージセンサ32に結像させる。
【0020】
前記イメージセンサ32は、本実施形態における撮像手段として機能するものであり、CCD(Charge Coupled Diode)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子により構成され、レンズ31によって結像された光学像を光電変換することにより多階調の画像データDを生成する。生成された画像データDは、デコーダ33及び制御部21に出力される。
【0021】
デコーダ33は、本実施形態におけるデコード手段として機能するものであり、イメージセンサ32から入力された画像データDに含まれるQRコード4をデコードする。さらに、デコーダ33は、QRコード4のデコードに成功したならばデコードしたデータを情報処理端末2に出力し、QRコード4のデコードに失敗したならばその旨及びデコードの過程で検出できた切り出しシンボルの数を制御部21に通知する。
【0022】
デコーダ33によるQRコード4のデコードは、QRコードの特徴を利用して次のように行われる。
QRコード4は、縦横に並ぶ白黒のセルにて構成されており、3隅に設けられた位置決定用シンボルである切り出しシンボル(図2に示したM)を有している。QRコード4をデコードする際には、先ずこの切り出しシンボルを検出する。各切り出しシンボルは、走査方向によらない特定の比率(例えば、黒1:白1:黒3:白1:黒1)のパターンである。したがって、画像データDからこの特定の比率を検出すれば、各切り出しシンボルを検出することができる。これら切り出しシンボルを検出すると、QRコード4の位置,大きさ,傾きを決定し、画像データDの背景からQRコード4部分を切り出す。そして、QRコード4を構成する各セルの中心位置を求め、QRコード4のビットマトリクスを得る。また、QRコード4は、リード・ソロモン符号等を用いた誤り検出・訂正用のビットパターンが含まれており、このビットパターンを用いた周知の手順により、誤り検出・訂正が可能である。
【0023】
前記階調計測部23は、本実施形態における階調計測手段として機能するものであり、イメージセンサ32から制御部21を介して入力される画像データDを予め定められた複数のエリアに分割し、各エリアの平均階調(階調情報)を算出する。算出した各エリアの平均階調は、制御部21及び配光記憶部24に出力される。本実施形態においては、図3に示したように画像データDを、LED光源101が照明するエリア101aと、LED光源102が照明するエリア102aと、LED光源103が照明するエリア103aと、LED光源104が照明するエリア104aとに分割し、各エリア101a〜104aの平均階調を階調計測部23が算出する。
【0024】
配光記憶部24は、制御部21から出力される各LED光源101〜104の通電時間を記憶する。
【0025】
前記制御部21は、シンボル認識装置1の制御回路を構成する各部を制御する。また、制御部21は、ソフトウェアを用いた情報処理により、本実施形態における補正手段としての機能を実現する。すなわち、階調計測部23により計測されたエリア101a〜104aの平均階調に基づいて、光源30がエリア101a〜104aのそれぞれを照明する配光量を補正する。このとき、エリア101a〜104aの平均階調の差分量が小さくなるように、エリア101a〜104aのそれぞれを照明する配光量を補正する。配光量は、各LED光源101〜104への通電時間を調整することで補正される。
【0026】
図4は、図1に示したシンボル認識装置1のA−A断面を示す概略図であり、図5は、図1に示したシンボル認識装置1のB−B断面を示す概略図である。
図4に示したように、トップカバー12とボトムカバー13とによって前記ケース10が形成され、このケース10に前記メイン制御ボード20,前記光源30,前記レンズ31,前記イメージセンサ32,及び前記デコーダ33が収納されている。
【0027】
トップカバー12の天面12aには、縁を矩形とする擂鉢状の凹部12bが形成されている。ガラス部材11は、天面12aの凹部12bを塞ぎ、かつ天面12aと面一となるように、トップカバー12に嵌め込まれている。レンズ31は、その中心軸がトップカバー12の凹部12bの中心を通るように、イメージセンサ32に固定されている。
【0028】
メイン制御ボード20は、ガラス部材11とレンズ31との間に設けられている。メイン制御ボード20には、被写体像がレンズ31に届くように、レンズ31の中心軸の延長線を中心とした円形の開口部20aが形成されている。
【0029】
LED光源101〜104は、調整可能な光量幅を広く確保するために、それぞれ2つのLEDで構成されている。LED光源101は開口部20aの左側上部に、LED光源102は開口部20aの左側下部に、LED光源103は開口部20aの右側上部に、LED光源104は開口部20aの右側下部にそれぞれ位置決めされて、メイン制御ボード20に固定されている。
【0030】
次に、シンボル認識装置1の動作について説明する。
図6は、シンボル認識装置1がQRコードを認識する手順を示すフローチャートである。
情報処理端末2からシンボル認識装置1に撮像開始のコマンドが入力されると、先ず制御部21が配光記憶部24に記憶された各LED光源101〜104への通電時間をデフォルト(通電時間t ms)にリセットする(ステップS1)。さらに、制御部21が光源駆動回路22に照明開始を指示するとともに、イメージセンサ32に被写体の撮像を指示する。
【0031】
制御部21から照明開始の指示を受けた光源駆動回路22は、配光記憶部24に記憶された各LED光源101〜104の通電時間に従って各LED光源101〜104を駆動し、被写体を照明する。LED光源101〜104が被写体を照明したことに同期して、イメージセンサ32がレンズ31によって結像された前記照明の反射光を光電変換し、画像データDを生成して制御部21及びデコーダ33に出力する(ステップS2)。デコーダ33は、イメージセンサ32から出力された画像データDに含まれるQRコードのデコードを試みる(ステップS3)。
【0032】
デコーダ33がQRコードのデコードに成功すると、デコードした情報を情報処理端末2に出力するとともに、制御部21にデコードの成功を通知する。情報処理端末2は、シンボル認識装置1から出力された情報を用いて既定の情報処理を行う。デコードの成功が制御部21に通知されたとき(ステップS4のYes)、制御部21は、配光記憶部24に記憶された各LED光源101〜104の通電時間をデフォルトにリセットする(ステップS1)。その後、次にガラス部材11に翳される被写体のイメージセンサ32による撮像及び撮像された画像に含まれるQRコードのデコーダ33によるデコード等が繰り返される(ステップS2,S3等)。
【0033】
一方、デコーダ33は、QRコード4のデコードに失敗すると(ステップS4のNo)、その旨及びQRコードをデコードする過程で検出に成功した切り出しシンボルの数を、制御部21に通知する。この通知を受けた制御部21は、デコーダ33からの通知に基づいて切り出しシンボルの検出数を判定する(ステップS5)。
【0034】
デコーダ33が切り出しシンボルを1つも検出していないならば(ステップS5の“検出数0”)、QRコードが読取位置に翳されていないこと等が想定される。このような場合には、LED光源101〜104の光量を調整する必要が少ない。したがって、制御部21は、配光記憶部24に記憶された各LED光源101〜104の通電時間を全てデフォルトに設定する(ステップS1)。その後、光源駆動回路22によるLED光源101〜104の駆動、イメージセンサ32による被写体3の撮像及びデコーダ33によるQRコードのデコード等が繰り返される(ステップS2,S3等)。
【0035】
一方、デコーダ33が切り出しシンボルを3つ全て検出しているならば(ステップS5の“検出数3”)、現在のLED光源101〜104の光量にてQRコードの認識が可能であるが、QRコードの一部が操作者の指で隠されていたり極度に歪曲してる等の理由で、QRコードの全体を認識することができていないことが想定される。このような場合には、各LED光源101〜104の光量を調整する必要が少ない。したがって、制御部21は、配光記憶部24に記憶された各LED光源101〜104の通電時間を変更しない。その後、イメージセンサ32による被写体の撮像及びデコーダ33によるQRコードのデコード等が繰り返される(ステップS2,S3等)。
【0036】
一方、デコーダ33が1つ又は2つの切り出しシンボルを検出しているならば(ステップS5の“検出数1or2”)、被写体がガラス部材11に対して傾けられた状態で翳されている等の理由により、QRコードの一部が十分に照明されていないこと等が想定される。このような場合には、各LED光源101〜104の光量を調整する必要がある。したがって、制御部21は、画像データDを階調計測部23に出力し、画像データD中のエリア101aの平均階調G1、エリア102aの平均階調G2、エリア103aの平均階調G3、及びエリア104aの平均階調G4を計測させる(ステップS6)。
【0037】
しかる後、制御部21は、階調計測部23により計測された平均階調G1〜G4に基づいて、各LED光源101〜104への通電時間を補正する(ステップS7)。制御部21によって補正された各LED光源101〜104の通電時間は、配光記憶部24に記憶される。かくして新たな通電時間が配光記憶部24に設定された後、光源駆動回路22が変更後の通電時間にて各LED光源101〜104を駆動し、イメージセンサ32による被写体の撮像及びデコーダ33によるQRコードのデコード等が繰り返される(ステップS2,S3等)。
【0038】
続いて、ステップS7の処理における各LED光源101〜104の光量の補正手順について、図7を用いて説明する。
制御部21を構成するROM等には、各平均階調G1〜G4の差分量に基づいて通電時間を算出するための比例関数Fが記憶されている。この関数は、例えば差分量の最大値Gmax〜最小値Gminの範囲内で、階調差分量の増大に伴い通電時間が減少する1次関数である。
【0039】
各LED光源101〜104の光量レベルを決定するに当たって、先ず各平均階調G1〜G4の中からデコーダ33により正常にデコード可能な階調の範囲の中間値に最も近い1つを基準値として選定し、選定した基準値と他の平均階調との差分量を算出する。そして、算出された各差分量に対応する通電時間を前記関数Fに基づいて算定する。このように算定した通電時間を、各差分量の算出に用いた平均階調のうちの前記基準値でない一方のエリアを照明するLED光源の通電時間として決定する。前記基準値として選定された平均階調に対するエリアの光量は変更する必要が少ないので、当該エリアを照明するLED光源の通電時間は、現在配光記憶部24に記憶されている通電時間に決定する。かくして決定された各LED光源101〜104の通電時間にて、配光記憶部24に記憶された各LED光源101〜104の通電時間が補正される。このとき、基準値として選定された平均階調と他の平均階調との差分量が小さくなる。
【0040】
通常、平均階調が低いエリアは光源の光量が不足しており、平均階調が高いエリアは光源の光量が過剰である。上記のように平均階調の差分量が小さくなるように各LED光源101〜104の光量を決定すれば、基準値とした平均階調よりも階調が低いエリアに対して長い通電時間が設定され、基準値とした平均階調よりも階調が高いエリアに対して短い通電時間が設定されるので、光量の不足又は過剰が解消される。
【0041】
上記のような方法で通電時間を補正した場合における、各LED光源101〜104の制御例を図8,図9及び図10に示している。
図8の例では、被写体の被読取面が、エリア101a,102a側がガラス部材11に近接し、エリア103a,104a側がガラス部材11から離間した状態で傾いている。その結果、エリア101a,102aを照明する光量は適度であるが、エリア103a,104aを照明する光量は不足している。この状態において上記のような手順で通電時間を補正した結果、エリア101a,102aを照明するLED光源101,102の通電時間がデフォルトのt msに補正され、エリア103a,104aを照明するLED光源103,104の通電時間がデフォルトよりも長いt1 ms(t1>t)に補正されたとする。
【0042】
この場合、光源駆動回路22は、被写体の撮像時に各LED光源101〜104に通電を開始した後、LED光源101,102については時間t msが経過するまで通電を継続し、LED光源103,104については時間t1 msが経過するまで通電を継続する。このようにLED光源103,104への通電時間を増大させることで、エリア103a,104aをより明るく照明することができる。
【0043】
図9の例では、被写体の被読取面が、エリア103a側がガラス部材11に最も近接し、エリア102a側がガラス部材11から最も離間した状態で傾いている。その結果、エリア103aを照明する光量は適度であるが、エリア101a,104aを照明する光量はやや不足しており、エリア102aを照明する光量はエリア101a,104aを照明する光量以上に不足している。この状態において上記のような手順で光量レベルを補正した結果、エリア103aを照明するLED光源103の通電時間がデフォルトのt msに補正され、エリア101a,104aを照明するLED光源101,104の通電時間がデフォルトよりも長いt2 ms(t2>t)に補正され、エリア102aを照明するLED光源102の通電時間がt2 msよりもさらに長いt3 ms(t3>t2)に補正されたとする。
【0044】
この場合、光源駆動回路22は、被写体の撮像時に各LED光源101〜104に通電を開始した後、LED光源101,104については時間t2 msが経過するまで通電を継続し、LED光源102については時間t3 msが経過するまで通電を継続し、LED光源103については時間t msが経過するまで通電を継続する。このようにLED光源101,102,104への通電時間を増大させることで、エリア101a,102a,104aをより明るく照明することができる。
【0045】
図10の例では、被写体の被読取面が、エリア101a,102a側がガラス部材11に近接し、エリア103a,104a側がガラス部材11から離間した状態で傾いている。そして、外光の影響を受けてエリア103a付近が過度に照明されている。その結果、エリア102aを照明する光量は適度であるが、エリア101a,104aを照明する光量はやや過剰であり、エリア103aを照明する光量はエリア101a,104aを照明する光量以上に過剰である。この状態において上記のような手順で通電時間を補正した結果、エリア102aを照明するLED光源102の通電時間がデフォルトのt msに補正され、エリア101a,104aを照明するLED光源101,104の通電時間がデフォルトよりも短いt4 ms(t4<t)に補正され、エリア103aを照明するLED光源103の通電時間が通電時間t4 msよりもさらに短いt5 ms(t5<t4)に補正されたとする。
【0046】
この場合、光源駆動回路22は、被写体の撮像時に各LED光源101〜104に通電を開始した後、LED光源102については時間t msが経過するまで通電を継続し、LED光源101,104については時間t4 msが経過するまで通電を継続し、LED光源103については時間t5 msが経過するまで通電を継続する。このようにLED光源101,103,104への通電時間を短縮することで、エリア101a,103a,104aをより暗く照明することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係るシンボル認識装置1は、被写体を複数のエリアに分けて部分的に照明する。そして、デコーダ33がQRコードをデコードできなかった場合、画像データD中の各エリアの平均階調に基づいて各エリアの配光量(通電時間)を調整する。このようにすることで、被写体を最適な光量で照明でき、効率的にQRコードを認識することができる。
【0048】
また、本実施形態に係るシンボル認識装置1は、QRコードが有する切り出しシンボルのデコーダ33による検出数を用いて、各LED光源101〜104の通電時間を変更するか否かを判定している。このように制御することで、QRコードの特性を踏まえた最適な配光量を決定できる。
【0049】
なお、本発明は前記実施形態に開示した内容そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0050】
例えば、前記実施形態では、QRコードの認識に特化したシンボル認識装置に本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、データマトリクス(Data Matrix),PDF417,マキシコード(Maxi Code)等の他の形式の二次元シンボルを認識するシンボル認識装置に本発明を適用してもよい。その場合には、各二次元シンボルの特性に応じてステップS5の処理等を変更すればよい。
【0051】
また、前記実施形態では、縦横の二次元に設定された4つのエリアをLED光源101〜104で照明する場合について説明した。しかしながら、より少数或いは多数のLED光源を用いて被写体を照明し、各LED光源への通電時間を制御してもよい。また、LED以外の光源を採用し、通電時間に変えて光源に供給する電圧等を調整することで、各エリアの配光量を制御してもよい。
【0052】
また、前記実施形態では、各LED光源101〜104の配光量(通電時間)を、各エリア101a〜104aの平均階調G1〜G4の差分量と関数Fとを用いて決定するとして説明した。しかしながら、関数Fに代えて平均階調の差分量毎にLED光源への通電時間を関連付けたテーブルを用いる等して、平均階調G1〜G4の差分量に比例する各LED光源101〜104の通電時間を算出してもよい。
【0053】
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、前記実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、要旨を逸脱しない範囲内で前記実施形態に示される全構成要素に周知技術や慣用技術を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…シンボル認識装置、2…情報処理端末、3…被写体、4…QRコード、10…ケース、11…ガラス部材、20…メイン制御ボード、21…制御部、22…光源駆動回路、23…階調計測部、24…配光記憶部、30…光源、31…レンズ、32…イメージセンサ、33…デコーダ、101〜104…LED光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を複数の領域に分けて部分的に照明する照明手段と、
この照明手段により照明された前記被写体を撮像し、画像データを生成する撮像手段と、
この撮像手段により生成された画像データに含まれる二次元シンボルをデコードするデコード手段と、
このデコード手段によるデコードが失敗したとき、前記撮像手段により生成された画像データから、前記照明手段によって照明される前記複数の領域毎の階調情報を計測する階調計測手段と、
この階調計測手段により計測された前記複数の領域毎の階調情報に基づいて、前記照明手段が前記複数の領域のそれぞれを照明する配光量を補正する補正手段と、
この補正手段により補正された配光量に従って前記照明手段を駆動し、前記複数の領域のそれぞれを照明させる照明駆動手段と、
を備えていることを特徴とするシンボル認識装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記複数の領域毎の平均階調の差分量が小さくなるように前記複数の領域のそれぞれを照明する配光量を補正することを特徴とする請求項1に記載のシンボル認識装置。
【請求項3】
前記照明手段は、被写体を縦横の二次元に設定された複数のエリアに分割して部分的に照明する複数の光源で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシンボル認識装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記複数の光源への通電時間を変更することで前記配光量を補正し、
前記照明駆動手段は、前記補正手段により補正された通電時間従って前記複数の光源に通電することを特徴とする請求項3に記載のシンボル認識装置。
【請求項5】
前記二次元シンボルは、QRコードであることを特徴とする請求項1に記載のシンボル認識装置。
【請求項6】
被写体を複数の領域に分けて部分的に照明する照明部と、この照明部により照明された前記被写体を撮像し、画像データを生成する撮像部と、この撮像部により生成された画像データに含まれる二次元シンボルをデコードするデコード部とを備えたシンボル認識装置の制御プログラムであって、
前記デコード部によるデコードが失敗したとき、前記撮像部により生成された画像データから、前記照明部によって照明される前記複数の領域毎の階調情報を計測する階調計測機能と、
この階調計測機能により計測された前記複数の領域毎の階調情報に基づいて、前記照明部が前記複数の領域のそれぞれを照明する配光量を補正する補正機能と、
この補正機能により補正された配光量に従って前記照明部を駆動し、前記複数の領域のそれぞれを照明させる照明駆動機能と、
を実現させるための制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−61999(P2013−61999A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−2489(P2013−2489)
【出願日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【分割の表示】特願2009−269109(P2009−269109)の分割
【原出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】