シース型熱電対
【課題】 重油ボイラーや焼却炉などの重油燃焼が行われる高温雰囲気で用いられるシース型熱電対は、シースの材が重油に含まれるバナジウムにより浸食されて、短期間のうちにシースが破損し、絶縁材の絶縁劣化により測定誤差が生じるという問題があり、このような雰囲気で使用しても、シースが長期間健全で、測定誤差が生じないシース型熱電対が求められている。
【解決手段】 金属製のシース内に無機絶縁材を介在させて熱電対芯線を収容したシース型熱電対において、シースを2重管とし、外側のシースをHR160、内側のシースをSUS310Sにより作製したシース型熱電対とした。
【解決手段】 金属製のシース内に無機絶縁材を介在させて熱電対芯線を収容したシース型熱電対において、シースを2重管とし、外側のシースをHR160、内側のシースをSUS310Sにより作製したシース型熱電対とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重油ボイラーや焼却炉で用いられるシース型熱電対に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシース型熱電対を図3、図4に示す。
【0003】
101は金属製のシース、102は酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al2 O3 )等の無機絶縁材、103は(+)側熱電対芯線、104は(−)側熱電対芯線、105は無機絶縁材102へ湿分が侵入し絶縁が劣化することを防ぐためのエポキシ樹脂等によるシールである。105の末端部には、さらに、熱電対素線と補償導線の接続部を収納するスリーブや、補償導線との接続のための端子台を収納した端子箱が設けられる場合もある。113は感温部である。
【0004】
熱電対芯線については、例えば、K熱電対では(+)側熱電対芯線にニッケル及びクロムを主とした合金、(−)側熱電対芯線にニッケルを主とした合金を用いる。
【0005】
従来、このシース型熱電対を、800℃を超える高温雰囲気で使用する場合、シースの材料として、高温において優れた強度と耐酸化性を持つハステロイX(ヘインズインターナショナル社の金属材料名)やSUH446などが用いられているが、いずれも、重油ボイラーやゴミ焼却炉などの重油燃焼が行われる炉内の800℃以上の高温雰囲気中で使用すると、重油に含まれるバナジウムによるバナジウムアタックという高温腐食によってシースが浸食されて、短いものでは数カ月のうちにシースが破損し、絶縁材の絶縁劣化により測定誤差が生じるという問題がある。
【0006】
重油ボイラーや焼却炉において配管などの表面温度を計測するシース型熱電対の具体的使用例を、図5、図6に示す。106は図3、図4に示したシース型熱電対、107は端子箱、108は配管に溶接されたパッドで、熱電対先端の感温部がパッド108に挿入されている。109はシース型熱電対の留具、110は測定対象の配管である。シース型熱電対のシース材は、高温の燃焼雰囲気にさらされるので、前記のハステロイXという耐熱耐腐食合金を用いていた。ところが重油に含まれるバナジウムアタックによって、シースはせいぜい2、3カ月しか持たないで破損する。
【特許文献1】特開2002−005749
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高温用シース型熱電対のシース材料としては、高温において優れた強度と耐酸化性を持つハステロイXやSUH446などが用いられているが、このシース型熱電対を、重油ボイラーやゴミ焼却炉などの重油燃焼が行われる高温雰囲気で使用すると、重油に含まれるバナジムによるバナジウムアタックという高温腐食によってシースが浸食されて、短期間のうちにシースが破損し、絶縁材の絶縁劣化により測定誤差が生じるという問題があり、このような雰囲気で使用しても、長期間健全で、測定誤差が生じないシース型熱電対が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、金属製のシース内に無機絶縁材を介在させて熱電対芯線を収容したシース型熱電対について、重油ボイラーや焼却炉などの重油燃焼が行われる高温雰囲気で用いても長期間健全性を保ち、測定誤差の生じないものとするために、シースを二重管として外側のシース材をHR160(ヘインズインターナショナル社の金属材料名)、内側のシースをSUS310Sにより作製したシース型熱電対とした。
【0009】
また、本発明は、金属製のシース内に無機絶縁材を介在させて熱電対芯線を収容したシース型熱電対において、シースを2重管とし、外側のシースをHR160、内側シースをSUS316、SUS304またはNCF600により作製したシース型熱電対とした。
【発明の効果】
【0010】
HR160(ヘインズインターナショナル社の金属材料名)は、高温雰囲気中においても優れた強度と耐酸化性を持つ耐高温性の材料であるが、これを図3、図4に示す従来構造のシース型熱電対のシース材として用いた場合、高温雰囲気中で使用すると短期間で測定誤差が生じるようになる。従来、HR160が高温用のシース型熱電対のシース材として用いられなかったのはこのためである。誤差原因の調査のために分析を行ったところ、シース材であるHR160の成分が高温により蒸発、拡散して熱電対芯線に付着して、反応しており、これによる熱電対芯線の熱起電力の変化が誤差原因であった。
【0011】
一方、このHR160をシース材とする熱電対を、重油が燃焼する炉内の高温雰囲気中で使用しても、従来のハステロイXやSUH446等を材料とするシース型熱電対に比べて、シースがバナジュウムアタックにより浸食されることは少なく、シースの外部雰囲気に対する境界壁としての機能は長期間健全であった。
【0012】
本発明は、金属製のシース内に無機絶縁材を介在させて熱電対芯線を収容したシース型熱電対において、シースを2重管とし、外側のシースをHR160、内側のシースをSUS310Sにより作製したシース型熱電対としたので、重油ボイラーや焼却炉などの重油燃焼が行われる高温雰囲気で用いても、外側のHR160のシースがバナジュウムアタックによる浸食を受けることが少ないため、外部雰囲気に対する境界壁としての機能を長期間維持し、また、内側シースを設けているために、HR160の高温における蒸発成分が内側シースより内部に拡散することはなく、したがって、HR160の拡散成分と熱電対芯線が反応して測定誤差を生じることはない。
【0013】
さらに、内側シースのSUS310Sは、高温においてその蒸発成分が拡散して熱電対芯線に付着しても反応せず、付着による測定誤差の発生はない。
【0014】
以上のように、シースを2重管とし、外側シースにバナジュウムアタックに強いHR160を使用し、内側シースにSUS310Sを使用したため、重油燃焼が行われる高温雰囲気で長期間用いてもシースは損傷することなく健全で、測定誤差の生じないシース型熱電対とすることができた。
【0015】
また本発明は、金属製のシース内に無機絶縁材を介在させて熱電対芯線を収容したシース型熱電対において、シースを2重管とし、外側のシースをHR160、内側シースをSUS316、SUS304またはNCF600により作製したシース型熱電対とした。これらの内側シースはSUS310Sと同様に、高温においてその蒸発成分が拡散して熱電対芯線に付着しても反応せず、付着による測定誤差を生じさせないため、重油燃焼が行われる高温雰囲気で長期間用いてもシースは破損することなく健全で、測定誤差の生じないシース型熱電対とすることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明によるシース型熱電対を、図1、図2に示す。
【0017】
本発明のシース型熱電対は、シースを二重管とし、外側シース11の材質をHR160とし、内側シース12の材質をSUS310Sとしたものである。
【0018】
2は酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al2 O3 )等の無機絶縁材、3は(+)側熱電対芯線、4は(−)側熱電対芯線、5は無機絶縁材へ湿分侵入し絶縁が劣化することを防ぐためのエポキシ樹脂等によるシールである。13は感温部である。
【0019】
図3、図4のシース型熱電対のシース101をHR160とし、シース101内に熱電対芯線103、104を挿入して、無機絶縁材102としてマグネシア粉を硬く充填して絶縁した状態としても、高温においてHR160の金属蒸気が無機絶縁体であるマグネシア粉の粒子の隙間を経由して、熱電対芯線103、104に拡散して熱起電力を狂わせる。
【0020】
それを防止するため、図1、図2に示す通り、シースを2重として、外側シース11をHR160、内側シース12をSUS310Sとすることにより、SUS310Sの層がHR160の金属蒸気を熱電対芯線3、4に拡散することを防止することが可能となる。
【0021】
また、内側シース12のSUS310Sの成分が拡散して熱電対芯線に付着しても反応せず、測定誤差は生じない。
【0022】
なお、重油ボイラーや焼却炉において、配管などの表面温度を計測するシース型熱電対について、従来の具体例を図5、図6に示したが、ここに本発明による2重管シース熱電対を使用しても、図5の構成は変わらず、図中のシース型熱電対106の内部構成とシース材が上記のとおり変わるのみである。
【0023】
図1、図2に示すシース型熱電対は、前記の重油が燃焼する炉内の高温雰囲気中で使用しても、従来のハステロイXやSUH446等を一重でシース材とする高温用シース型熱電対に比べて長期間にわたってシースは健在であり、測定精度の低下もないことを確認した。
【0024】
以下、この効果について説明する。
【0025】
HR160は、高温雰囲気中においても優れた強度と耐酸化性を持つ耐高温性の材料であるが、これを図3、図4に示す従来構造のシース型熱電対のシース材として用いた場合、高温雰囲気中で使用すると短期間で測定誤差が生じるようになる。従来、HR160が高温用のシース型熱電対のシース材として用いられなかったのはこのためである。誤差原因の調査のために分析を行ったところ、シース材であるHR160の成分が高温により蒸発、拡散して熱電対芯線に付着、反応し、このために熱電対芯線の熱起電力が変化して誤差が生じていることが分かった。
【0026】
一方、このHR160をシース材とする熱電対を、重油が燃焼する炉内の高温雰囲気中で使用しても、従来のハステロイXやSUH446等を材料とするシース型熱電対に比べて、シースが浸食されることは少なく、シースは長期間健全であった。
【0027】
これらより、HR160をシース材とするシース型熱電対において、HR160のシース内部への侵入を防ぐ構成とすることによって、重油が燃焼する炉内の高温雰囲気中で使用しても、長期間にわたってシースが健全でかつ測定精度の低下のないものが得られることが分かった。
【0028】
以上に基づき、図1と図2に示す本発明のシース型熱電対は、外側シース材をHR160とし、シース材内部への侵入を防ぐために、内側にSUS310Sを材料とするシースを設けて、シースを2重にしたものである。SUS310Sを使用したのは、HR160の高温における蒸発成分が拡散して熱電対芯線に付着しても反応せず、測定誤差が生じないためである。SUS310Sと同様の性質を持つSUS316、SUS304またはNCF600を内側シースの材料としてもよい。副次的に、これら内側シースはHR160外側シースと同じく、外部の雰囲気に対する境界壁としての役割も兼ねる。即ち、HR160外側シースが破損した場合でも、内側シースの外部雰囲気に対するシール性、即ち境界壁としての機能が健全であれば、測定を正常に続けることができる。なお、内側シースに、熱電対芯線に付着しても測定誤差を生じないハステロイXやSUH446を使用することも可能であるが、これは高価な材料であるため、採用する利点はない。
【0029】
このような構成により、重油が燃焼する炉内の高温雰囲気中で使用しても、長期間にわたってシースが健全で、かつ測定精度の低下のないシース型熱電対を実現した。
【0030】
実際にも重油が燃焼する高温雰囲気中での図5の構成による使用において、外側シース材をHR160、内側シース材をSUS310Sとしたシース熱電対は、従来の高温用シース型熱電対に比べて、長期間、シースは健全性を保ち、正常な測定を行っている。
【0031】
例えば、重油が燃焼する焼却炉での使用において、従来のハステロイXを使用した1重シースのものは、バナジュウムアタックにより2、3カ月程度でシースが破損し、測定誤差を生じたが、本発明のものは、1年間使用しても二重シースは共に健全で、正常な測定を続けている。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のシース型熱電対は、重油ボイラーや焼却炉で用いられるが、シース材が蒸発、拡散して熱電対芯線に付着、反応し、熱電対芯線の熱起電力が変化して誤差が生じる高温の箇所で使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のシース型熱電対の縦断面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】従来のシース型熱電対の縦断面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】従来のシース型熱電対を、重油ボイラーや焼却炉の配管に、その表面温度を計測するために装着した平面図である。
【図6】図5の側面図である。
【符号の説明】
【0034】
2…無機絶縁材
11…外側シース
12…内側シース
【技術分野】
【0001】
本発明は、重油ボイラーや焼却炉で用いられるシース型熱電対に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシース型熱電対を図3、図4に示す。
【0003】
101は金属製のシース、102は酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al2 O3 )等の無機絶縁材、103は(+)側熱電対芯線、104は(−)側熱電対芯線、105は無機絶縁材102へ湿分が侵入し絶縁が劣化することを防ぐためのエポキシ樹脂等によるシールである。105の末端部には、さらに、熱電対素線と補償導線の接続部を収納するスリーブや、補償導線との接続のための端子台を収納した端子箱が設けられる場合もある。113は感温部である。
【0004】
熱電対芯線については、例えば、K熱電対では(+)側熱電対芯線にニッケル及びクロムを主とした合金、(−)側熱電対芯線にニッケルを主とした合金を用いる。
【0005】
従来、このシース型熱電対を、800℃を超える高温雰囲気で使用する場合、シースの材料として、高温において優れた強度と耐酸化性を持つハステロイX(ヘインズインターナショナル社の金属材料名)やSUH446などが用いられているが、いずれも、重油ボイラーやゴミ焼却炉などの重油燃焼が行われる炉内の800℃以上の高温雰囲気中で使用すると、重油に含まれるバナジウムによるバナジウムアタックという高温腐食によってシースが浸食されて、短いものでは数カ月のうちにシースが破損し、絶縁材の絶縁劣化により測定誤差が生じるという問題がある。
【0006】
重油ボイラーや焼却炉において配管などの表面温度を計測するシース型熱電対の具体的使用例を、図5、図6に示す。106は図3、図4に示したシース型熱電対、107は端子箱、108は配管に溶接されたパッドで、熱電対先端の感温部がパッド108に挿入されている。109はシース型熱電対の留具、110は測定対象の配管である。シース型熱電対のシース材は、高温の燃焼雰囲気にさらされるので、前記のハステロイXという耐熱耐腐食合金を用いていた。ところが重油に含まれるバナジウムアタックによって、シースはせいぜい2、3カ月しか持たないで破損する。
【特許文献1】特開2002−005749
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高温用シース型熱電対のシース材料としては、高温において優れた強度と耐酸化性を持つハステロイXやSUH446などが用いられているが、このシース型熱電対を、重油ボイラーやゴミ焼却炉などの重油燃焼が行われる高温雰囲気で使用すると、重油に含まれるバナジムによるバナジウムアタックという高温腐食によってシースが浸食されて、短期間のうちにシースが破損し、絶縁材の絶縁劣化により測定誤差が生じるという問題があり、このような雰囲気で使用しても、長期間健全で、測定誤差が生じないシース型熱電対が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、金属製のシース内に無機絶縁材を介在させて熱電対芯線を収容したシース型熱電対について、重油ボイラーや焼却炉などの重油燃焼が行われる高温雰囲気で用いても長期間健全性を保ち、測定誤差の生じないものとするために、シースを二重管として外側のシース材をHR160(ヘインズインターナショナル社の金属材料名)、内側のシースをSUS310Sにより作製したシース型熱電対とした。
【0009】
また、本発明は、金属製のシース内に無機絶縁材を介在させて熱電対芯線を収容したシース型熱電対において、シースを2重管とし、外側のシースをHR160、内側シースをSUS316、SUS304またはNCF600により作製したシース型熱電対とした。
【発明の効果】
【0010】
HR160(ヘインズインターナショナル社の金属材料名)は、高温雰囲気中においても優れた強度と耐酸化性を持つ耐高温性の材料であるが、これを図3、図4に示す従来構造のシース型熱電対のシース材として用いた場合、高温雰囲気中で使用すると短期間で測定誤差が生じるようになる。従来、HR160が高温用のシース型熱電対のシース材として用いられなかったのはこのためである。誤差原因の調査のために分析を行ったところ、シース材であるHR160の成分が高温により蒸発、拡散して熱電対芯線に付着して、反応しており、これによる熱電対芯線の熱起電力の変化が誤差原因であった。
【0011】
一方、このHR160をシース材とする熱電対を、重油が燃焼する炉内の高温雰囲気中で使用しても、従来のハステロイXやSUH446等を材料とするシース型熱電対に比べて、シースがバナジュウムアタックにより浸食されることは少なく、シースの外部雰囲気に対する境界壁としての機能は長期間健全であった。
【0012】
本発明は、金属製のシース内に無機絶縁材を介在させて熱電対芯線を収容したシース型熱電対において、シースを2重管とし、外側のシースをHR160、内側のシースをSUS310Sにより作製したシース型熱電対としたので、重油ボイラーや焼却炉などの重油燃焼が行われる高温雰囲気で用いても、外側のHR160のシースがバナジュウムアタックによる浸食を受けることが少ないため、外部雰囲気に対する境界壁としての機能を長期間維持し、また、内側シースを設けているために、HR160の高温における蒸発成分が内側シースより内部に拡散することはなく、したがって、HR160の拡散成分と熱電対芯線が反応して測定誤差を生じることはない。
【0013】
さらに、内側シースのSUS310Sは、高温においてその蒸発成分が拡散して熱電対芯線に付着しても反応せず、付着による測定誤差の発生はない。
【0014】
以上のように、シースを2重管とし、外側シースにバナジュウムアタックに強いHR160を使用し、内側シースにSUS310Sを使用したため、重油燃焼が行われる高温雰囲気で長期間用いてもシースは損傷することなく健全で、測定誤差の生じないシース型熱電対とすることができた。
【0015】
また本発明は、金属製のシース内に無機絶縁材を介在させて熱電対芯線を収容したシース型熱電対において、シースを2重管とし、外側のシースをHR160、内側シースをSUS316、SUS304またはNCF600により作製したシース型熱電対とした。これらの内側シースはSUS310Sと同様に、高温においてその蒸発成分が拡散して熱電対芯線に付着しても反応せず、付着による測定誤差を生じさせないため、重油燃焼が行われる高温雰囲気で長期間用いてもシースは破損することなく健全で、測定誤差の生じないシース型熱電対とすることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明によるシース型熱電対を、図1、図2に示す。
【0017】
本発明のシース型熱電対は、シースを二重管とし、外側シース11の材質をHR160とし、内側シース12の材質をSUS310Sとしたものである。
【0018】
2は酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al2 O3 )等の無機絶縁材、3は(+)側熱電対芯線、4は(−)側熱電対芯線、5は無機絶縁材へ湿分侵入し絶縁が劣化することを防ぐためのエポキシ樹脂等によるシールである。13は感温部である。
【0019】
図3、図4のシース型熱電対のシース101をHR160とし、シース101内に熱電対芯線103、104を挿入して、無機絶縁材102としてマグネシア粉を硬く充填して絶縁した状態としても、高温においてHR160の金属蒸気が無機絶縁体であるマグネシア粉の粒子の隙間を経由して、熱電対芯線103、104に拡散して熱起電力を狂わせる。
【0020】
それを防止するため、図1、図2に示す通り、シースを2重として、外側シース11をHR160、内側シース12をSUS310Sとすることにより、SUS310Sの層がHR160の金属蒸気を熱電対芯線3、4に拡散することを防止することが可能となる。
【0021】
また、内側シース12のSUS310Sの成分が拡散して熱電対芯線に付着しても反応せず、測定誤差は生じない。
【0022】
なお、重油ボイラーや焼却炉において、配管などの表面温度を計測するシース型熱電対について、従来の具体例を図5、図6に示したが、ここに本発明による2重管シース熱電対を使用しても、図5の構成は変わらず、図中のシース型熱電対106の内部構成とシース材が上記のとおり変わるのみである。
【0023】
図1、図2に示すシース型熱電対は、前記の重油が燃焼する炉内の高温雰囲気中で使用しても、従来のハステロイXやSUH446等を一重でシース材とする高温用シース型熱電対に比べて長期間にわたってシースは健在であり、測定精度の低下もないことを確認した。
【0024】
以下、この効果について説明する。
【0025】
HR160は、高温雰囲気中においても優れた強度と耐酸化性を持つ耐高温性の材料であるが、これを図3、図4に示す従来構造のシース型熱電対のシース材として用いた場合、高温雰囲気中で使用すると短期間で測定誤差が生じるようになる。従来、HR160が高温用のシース型熱電対のシース材として用いられなかったのはこのためである。誤差原因の調査のために分析を行ったところ、シース材であるHR160の成分が高温により蒸発、拡散して熱電対芯線に付着、反応し、このために熱電対芯線の熱起電力が変化して誤差が生じていることが分かった。
【0026】
一方、このHR160をシース材とする熱電対を、重油が燃焼する炉内の高温雰囲気中で使用しても、従来のハステロイXやSUH446等を材料とするシース型熱電対に比べて、シースが浸食されることは少なく、シースは長期間健全であった。
【0027】
これらより、HR160をシース材とするシース型熱電対において、HR160のシース内部への侵入を防ぐ構成とすることによって、重油が燃焼する炉内の高温雰囲気中で使用しても、長期間にわたってシースが健全でかつ測定精度の低下のないものが得られることが分かった。
【0028】
以上に基づき、図1と図2に示す本発明のシース型熱電対は、外側シース材をHR160とし、シース材内部への侵入を防ぐために、内側にSUS310Sを材料とするシースを設けて、シースを2重にしたものである。SUS310Sを使用したのは、HR160の高温における蒸発成分が拡散して熱電対芯線に付着しても反応せず、測定誤差が生じないためである。SUS310Sと同様の性質を持つSUS316、SUS304またはNCF600を内側シースの材料としてもよい。副次的に、これら内側シースはHR160外側シースと同じく、外部の雰囲気に対する境界壁としての役割も兼ねる。即ち、HR160外側シースが破損した場合でも、内側シースの外部雰囲気に対するシール性、即ち境界壁としての機能が健全であれば、測定を正常に続けることができる。なお、内側シースに、熱電対芯線に付着しても測定誤差を生じないハステロイXやSUH446を使用することも可能であるが、これは高価な材料であるため、採用する利点はない。
【0029】
このような構成により、重油が燃焼する炉内の高温雰囲気中で使用しても、長期間にわたってシースが健全で、かつ測定精度の低下のないシース型熱電対を実現した。
【0030】
実際にも重油が燃焼する高温雰囲気中での図5の構成による使用において、外側シース材をHR160、内側シース材をSUS310Sとしたシース熱電対は、従来の高温用シース型熱電対に比べて、長期間、シースは健全性を保ち、正常な測定を行っている。
【0031】
例えば、重油が燃焼する焼却炉での使用において、従来のハステロイXを使用した1重シースのものは、バナジュウムアタックにより2、3カ月程度でシースが破損し、測定誤差を生じたが、本発明のものは、1年間使用しても二重シースは共に健全で、正常な測定を続けている。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のシース型熱電対は、重油ボイラーや焼却炉で用いられるが、シース材が蒸発、拡散して熱電対芯線に付着、反応し、熱電対芯線の熱起電力が変化して誤差が生じる高温の箇所で使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のシース型熱電対の縦断面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】従来のシース型熱電対の縦断面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】従来のシース型熱電対を、重油ボイラーや焼却炉の配管に、その表面温度を計測するために装着した平面図である。
【図6】図5の側面図である。
【符号の説明】
【0034】
2…無機絶縁材
11…外側シース
12…内側シース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のシース内に無機絶縁材を介在させて熱電対芯線を収容したシース型熱電対において、シースを2重管とし、外側のシースをHR160、内側シースをSUS310Sにより作製したシース型熱電対。
【請求項2】
金属製のシース内に無機絶縁材を介在させて熱電対芯線を収容したシース型熱電対において、シースを2重管とし、外側のシースをHR160、内側シースをSUS316、SUS304またはNCF600により作製したシース型熱電対。
【請求項1】
金属製のシース内に無機絶縁材を介在させて熱電対芯線を収容したシース型熱電対において、シースを2重管とし、外側のシースをHR160、内側シースをSUS310Sにより作製したシース型熱電対。
【請求項2】
金属製のシース内に無機絶縁材を介在させて熱電対芯線を収容したシース型熱電対において、シースを2重管とし、外側のシースをHR160、内側シースをSUS316、SUS304またはNCF600により作製したシース型熱電対。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2006−78373(P2006−78373A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263559(P2004−263559)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000140454)株式会社岡崎製作所 (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000140454)株式会社岡崎製作所 (34)
【Fターム(参考)】
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