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シートおよび該シートを用いた容器
説明

シートおよび該シートを用いた容器

【課題】石油由来樹脂の使用を減少させることができ、マイクロ波加熱に対し耐熱性を有し、実用的にも優れた剛性と耐衝撃性を有するシートを提供すること。
【解決手段】ポリ乳酸樹脂:20〜60質量%、ポリオレフィン系樹脂:10〜60質量%、および無機充填剤:20〜50質量%、を少なくとも含有する樹脂組成物Aにより形成された基材層の両面に、ポリオレフィン系樹脂:40〜100質量%を少なくとも含有する樹脂組成物Bにより形成された外層が積層されることにより、マイクロ波加熱に対し耐熱性を示すシートを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のシートに関する。より詳しくは、マイクロ波加熱に対し耐熱性を示すシートおよび該シートを熱成形してなる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題及び石油資源枯渇問題から、植物由来のプラスチックであるポリ乳酸樹脂が非常に注目されている。このポリ乳酸樹脂は、生分解性であり、微生物によって最終的に二酸化炭素へ分解されて大気中に放出されるという性質を持つ。そして、ポリ乳酸樹脂の原料である植物が大気中の二酸化炭素を吸収してデンプンを合成しているため、トータルで見ると、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の量をほとんど増やすことがなく、カーボンニュートラルな新規素材であるとして、ポリ乳酸樹脂は、市場性が益々拡大している。
【0003】
しかしながらポリ乳酸樹脂は、成形品として使用する場合に実用的な耐熱性や耐衝撃強度面で欠点を有し、特に、マイクロ波加熱を用いる電子レンジ用途に使用される使い捨ての包装用容器には、ほとんど使用されていない。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリ乳酸樹脂などの基材フィルムとヒートシール性ポリブチレンサクシネート樹脂フィルムとを積層し、これらの層の間に、高温軟化性樹脂層を設けた積層材を使用した電子レンジ調理用袋が開示されている。このレンジ調理用袋は、レンジで加熱した際、高温軟化性樹脂層が軟化し、ポリ乳酸樹脂フィルムとポリブチレンサクシネート樹脂フィルムが層間剥離を起こすことにより、内部蒸気を外部へ開放することで、袋体の爆破・破裂を防止するように設計されているが、ポリ乳酸樹脂層自体の耐熱性や強度を向上させている技術ではないため、積層材自体の強度は、まだまだ不十分であるという問題があった。
【0005】
また、本技術分野は、環境面でも資源面でも最も考慮すべき分野であり、普及のためには経済性も大変重要である。即ち、より経済的かつ効果的にポリ乳酸樹脂を利用する必要がある。
【0006】
ポリ乳酸樹脂の耐熱性を向上させる技術としては、結晶核剤を添加し結晶化させる方法や、石油由来樹脂を混合する方法が報告されている。一方、石油由来樹脂とポリ乳酸樹脂とのポリマーアロイを製造する技術については、その相容化のために各種の相容化方法が報告されている。
【0007】
ポリ乳酸樹脂を用いたシート分野において、特許文献2には、結晶核剤を添加し結晶化により耐熱性を改良する方法が記載されている。しかしながら、実施例に見られる記載によると耐熱性は向上するものの、耐熱性を有する基準が実用評価方法では60℃での評価であり、電子レンジでの評価や100℃を越す耐熱性についての効果は記されておらず期待できない。
【0008】
また、同じくポリ乳酸樹脂を用いたシート分野において、特許文献3には、ポリ乳酸樹脂にポリメチルメタクリレート樹脂を配合して耐熱性を改良する方法が記載されている。しかし、この場合でも実施例に見られるように耐熱性は80℃の熱風乾燥機での評価であり、電子レンジでの評価や100℃を越す耐熱性についての効果は期待できない。
【0009】
特許文献4および5には、ポリ乳酸樹脂とポリオレフィン系樹脂との混合物において耐熱性が向上する例が記載されている。これらは射出成形品により加熱変形温度で耐熱性を評価しているがいずれも100℃以下であり、電子レンジで使用に耐える耐熱性は得られていない。
【0010】
特許文献6には、ポリ乳酸と結晶核剤と柔軟性樹脂の混合組成物からなる射出成形品について、耐熱性の評価として加熱変形温度が131℃まで向上する旨の記載がある。しかしながら、この方法では射出成形において結晶化を促進させるため、金型を少なくとも90℃以上にし、且つ金型内で一定時間成形品を保持する必要があるので、経済的にも実用的ではなく、シートを熱成形して容器を得る方法には全く適していない方法である。
【0011】
特許文献7には、特定のポリ乳酸樹脂とポリオレフィン系等の樹脂を混合して耐熱性等を向上させる方法が記されている。この文献内では、特定のポリ乳酸樹脂とポリカーボネート樹脂との混合で140℃の耐熱性が得られているが、ポリ乳酸樹脂とポリオレフィン系との混合においては、耐熱性は100℃を超えていない。また、高価な特定のポリ乳酸樹脂の使用やポリカーボネート樹脂との混合において耐熱性を得る方法なので、経済的にも好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−78845号公報
【特許文献2】特開2004−189833号公報
【特許文献3】特開2006−328368号公報
【特許文献4】特開2010−265444号公報
【特許文献5】特開2005−307157号公報
【特許文献6】特開2008−201863号公報
【特許文献7】特開2008−239857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のように、ポリ乳酸樹脂を用いたシート分野において、その耐熱性や強度を向上させる技術は、まだまだ十分とは言えないのが実情である。
【0014】
そこで、本発明では、石油由来樹脂の使用を減少させることができ、マイクロ波加熱に対し耐熱性を有し、実用的にも優れた剛性と耐衝撃性を有するシートを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明者らはかかる状況に鑑み、ポリ乳酸樹脂を用いることによって石油由来樹脂の使用を極力抑えながら、かつ、耐熱性、剛性および耐衝撃性を向上させる技術について鋭意研究を行った結果、耐熱性、剛性および耐衝撃性を向上させ得る樹脂組成物の配合組成およびシートの積層構造を新規に見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
即ち、本発明ではまず、ポリ乳酸樹脂:20〜60質量%、ポリオレフィン系樹脂:10〜60質量%、および無機充填剤:20〜50質量%、を少なくとも含有する樹脂組成物Aにより形成された基材層の両面に、
ポリオレフィン系樹脂:40〜100質量%を少なくとも含有する樹脂組成物Bにより形成された外層が積層されることにより、
マイクロ波加熱に対し耐熱性を示すシートを提供する。
本発明に係るシートは、基材層をポリ乳酸樹脂に所定の配合でポリオレフィン樹脂および無機充填剤を配合した樹脂組成物で形成し、かつ、この基材層を、少なくともポリオレフィン系樹脂からなる外層で挟み込むことにより、耐熱性、剛性および耐衝撃性の向上を実現している。
本発明に係るシートを構成する前記樹脂組成物Bには、ポリ乳酸樹脂を20質量%以下更に含有させることが可能である。
また、前記樹脂組成物Bには、無機充填剤を50質量%以下更に含有させることも可能である。
本発明に係るシートにおける前記基材層の厚みは、本発明の効果を損なうことがなければ自由に設計することができるが、本発明では特に、構成比率で40〜90%に設計することが好ましい。
本発明に係るシートに用いる前記ポリオレフィン樹脂は、本発明の効果を損なうことがなければ、既存のポリオレフィン樹脂を1種または2種以上、自由に選択して用いることが可能であるが、本発明では特に、少なくともポリプロピレン樹脂を含有させることが好ましい。
この場合、前記ポリオレフィン樹脂に、ポリエチレン樹脂を更に含有させることも可能である。
本発明に係るシートに用いる前記無機充填剤は、本発明の効果を損なうことがなければ、既存の前記無機充填剤を1種または2種以上、自由に選択して用いることが可能であるが、本発明では特に、少なくともタルクを含有させることが好ましい。
本発明に係るシートを構成する前記樹脂組成物Aおよび/または前記樹脂組成物Bには、ビニル芳香族化合物と共役ジエンからなるブロック共重合体を更に含有させることも可能である。
【0017】
本発明に係るシートは、これを熱成形することにより、容器に好適に用いることができる。
本発明に係る容器は、マイクロ波加熱に対し耐熱性を示すシートから構成されているが、その用途は限定されず、あらゆる目的の容器として用いることができるが、特に、電子レンジ加熱用に好適に用いることが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るシートは、植物由来かつ生分解性を有するが耐熱性の低いポリ乳酸樹脂を用いているにも関わらず、マイクロ波加熱に対し耐熱性を有し、実用的にも優れた剛性と耐衝撃性を有する。
【0019】
また、本発明に係るシートは、特殊な高価な結晶核剤などの物質を用いず、比較的安価な物質で構成しており、更に熱成形においても高温度に加熱した金型は必要なく、金型内に一定時間保持する必要もないため、経済的および生産性に優れたシートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための好適な形態について、詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0021】
<1.シート>
本発明に係るシートは、少なくともポリ乳酸樹脂、ポリオレフィン系樹脂、および無機充填剤を、それぞれ所定量含有する樹脂組成物Aにより形成された基材層の両面に、少なくともポリオレフィン系樹脂を所定量含有する樹脂組成物Bにより形成された外層を積層した多層シートである。
【0022】
本発明に係るシートの前記基材層を構成する前記樹脂組成物Aは、ポリ乳酸樹脂:20〜60質量%、ポリオレフィン系樹脂:10〜60質量%、および無機充填材:20〜50質量%、を少なくとも含有する。
【0023】
前記樹脂組成物Aにおいて、ポリ乳酸樹脂を20質量%以上とすることで、本発明に係るシートの剛性を向上させることができ、60質量%以下にすることで、本発明に係るシートの耐衝撃性を向上させることができる。前記樹脂組成物Aにおけるポリ乳酸樹脂の含有量は、20〜60質量%であれば本発明の効果を十分に達成することが可能であるが、本発明に係るシートの剛性と耐衝撃性をより向上させるためには、30質量%〜50質量%とすることがより好ましい。
【0024】
前記樹脂組成物Aにおいて、ポリオレフィン系樹脂を10質量%以上とすることで、本発明に係るシートの耐衝撃性を向上させることができ、60質量%以下とすることで、剛性を向上させることができる。
【0025】
前記樹脂組成物Aにおいて、無機充填材を20質量%以上とすることで、本発明に係るシートの剛性および耐熱性を向上させることができ、50質量%以下とすることで、本発明に係るシートの耐衝撃性を向上させることができる。
【0026】
以上説明した樹脂組成物Aの組成比率は、後述する樹脂組成物Bの組成比率や、基材層と外層との厚み比率、その他本発明に係るシートの用途や目的に応じて、前記範囲内で自由に設計することができる。
【0027】
本発明に係るシートの前記外層を構成する前記樹脂組成物Bは、ポリオレフィン系樹脂:40〜100質量%、を少なくとも含有する。必要に応じて、ポリ乳酸樹脂や無機充填剤などを、更に含有させることも可能である。
【0028】
前記樹脂組成物Bにおいて、ポリオレフィン系樹脂を40質量%以上とすることで、本発明に係るシートの耐衝撃性を向上させることができる。なお、前記樹脂組成物Bは、ポリオレフィン系樹脂を40質量%以上少なくとも含有していれば、本発明の目的を達成することができ、後述するポリ乳酸樹脂や無機充填材との量比や、基材層と外層の厚み比率、その他本発明に係るシートの用途や目的に応じて、ポリオレフィン系樹脂の含有量を、前記範囲内で自由に設計することができる。
【0029】
前記樹脂組成物Bにポリ乳酸樹脂を含有させる場合、その含有量は、20質量%以下とすることが好ましい。ポリ乳酸樹脂を20質量%以下とすることで、本発明に係るシートの耐衝撃性を向上させることができ、また、シートを製造する際のメヤニの発生を低下させ、より安定した製造を行うことができる。前記樹脂組成物Bにポリ乳酸樹脂を含有させる場合、その含有量を20質量%以下とすれば本発明の効果を十分に達成することが可能であるが、本発明に係るシートの耐衝撃性をより向上させ、また、シートを製造時のメヤニの発生をより確実に低下させ、製造安定性を向上させるためには、10質量%以下とすることがより好ましい。
【0030】
前記樹脂組成物Bに無機充填材を含有させる場合、その含有量は、50質量%以下とすることが好ましい。無機充填材を50質量%以下とすることで、シートを製造する際のメヤニの発生を低下させ、より安定した製造を行うことができる。前記樹脂組成物Bに無機充填材を含有させる場合、その含有量を50質量%以下とすれば本発明の効果を十分に達成することが可能であるが、シートを製造時のメヤニの発生をより確実に低下させ、製造安定性を向上させるためには、20〜35質量%とすることがより好ましい。
【0031】
以上説明した本発明に係るシートを構成する(1)ポリ乳酸樹脂、(2)ポリオレフィン系樹脂、および(3)無機充填剤、その他更に含有させることが可能な(4)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体、(5)添加剤などについて、以下詳細に説明する。
【0032】
(1)ポリ乳酸樹脂
本発明に係るシートで用いることができるポリ乳酸樹脂は、本発明の効果を損なわない限り、既存の樹脂製シートに用いることが可能なポリ乳酸樹脂を1種または2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、L−乳酸、D−乳酸、L−乳酸とD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーを挙げることができる。また、これら乳酸以外の共重合成分である多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどを含んでいても本発明に用いることは可能である。このようなポリ乳酸樹脂は、乳酸の重縮合や乳酸の環状二量体であるラクチドの開環重合などによって合成することが可能である。
【0033】
ポリ乳酸の分子量や分子量分布についても、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されるものではないが、一般的な重量平均分子量を挙げると、10〜30万である。
【0034】
(2)ポリオレフィン系樹脂
本発明に係るシートに用いることができるポリオレフィン系樹脂は、本発明の効果を損なわない限り、既存の樹脂製シートに用いることが可能なポリオレフィン系樹脂を1種または2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、脂肪族α−オレフィンや芳香族オレフィンを主成分とする重合体を挙げることができる。この際、脂肪族の炭素数も、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、本発明においては特に、炭素数2〜20の脂肪族α−オレフィンを主成分とする重合体が好ましく、炭素数2〜10のα−オレフィンを主成分とする重合体がより好ましい。
【0035】
本発明において特に好ましいポリオレフィン系樹脂の具体例としては、ポリプロピレン樹脂またはポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂の混合物が挙げられる。
【0036】
本発明に係るシートに用いることができるポリプロピレン樹脂としては、エチレンとのブロック共重合体やランダム共重合体などの共重合体も含まれる。また、本発明に係るシートに用いることができるポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン樹脂をはじめ、これらの共重合体も含まれる。
【0037】
本発明に係るシートにおいて、ポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂との混合物を用いる場合の両者の配合比率は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、自由に設計することができる。本発明では特に、ポリプロピレン樹脂を60〜95質量%、ポリエチレン樹脂を5〜40質量%とすることが好ましい。ポリエチレン樹脂を5質量%以上配合することにより、熱成形時において加熱によりシートがドローダウン現象を起こすのを防止し、シートの成形性を向上させることができる。また、ポリプロピレン樹脂を60質量%以上配合することにより、剛性を向上させることができる。
【0038】
(3)無機充填剤
本発明に係るシートに用いることができる無機充填剤は、本発明の効果を損なわない限り、既存の樹脂製シートに用いることが可能な無機充填剤を1種または2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、タルク、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタンなどが挙げられる。この中でも本発明においては特に、タルクを選択することが好ましい。タルクを選択する場合、その粒径や粒度分布も、本発明の効果を損なわない限り、自由に設計することが可能である。無機充填剤を配合することにより、剛性及び耐熱性を向上させることができる。
【0039】
(4)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体
本発明に係るシートには、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体を更に含有させることができる。ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体を含有させることで、ポリ乳酸樹脂とポリオレフィン系樹脂との相容性を向上させ、シート製造時のメヤニを防止したり、得られたシートの耐衝撃強度、耐折強度、耐引き裂き性などの機械的特性を向上させることが可能である。
【0040】
本発明に係るシートに用いることができるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体は、本発明の効果を損なわない限り、既存の樹脂製シートに用いることが可能な前記ブロック共重合体を1種または2種以上自由に選択して用いることができる。本発明では特に、スチレン−ブタジエンブロック共重合体が好ましく、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)やSBSの二重結合を水素添加したSEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)、SBBS(スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン)がより好ましい。なお、本発明に係るシートに用いることができる前記ブロック共重合体には、これらをカルボン酸などの酸変性した樹脂や更に末端をアミン変性した樹脂も含まれる。
【0041】
本発明に係るシートにビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体を含有させる場合、その添加量は、本発明の効果を損なわない限り、形成するシートの性能や原材料費などの価格のバランスなどを考慮して、シートの用途、目的などに応じて自由に設計することができる。本発明では特に、前記樹脂組成物Aおよび前記樹脂組成物Bそれぞれ100重量部に対して、前記ブロック共重合体の添加量を2〜15重量部とすることが好ましく、2〜10重量部とすることがより好ましい。前記ブロック共重合体を2重量部以上添加することにより、ポリ乳酸樹脂とポリオレフィン系樹脂との相容性の向上、シート製造時のメヤニの防止、得られるシートの耐衝撃強度や耐折強度などの機械的特性を向上させることが可能である。また、前記ブロック共重合体の添加量を15重量部以下とすることにより、シートの剛性を向上させ、成形品として荷重を受けたときに座屈する強度を向上させることができる。また、これらの共重合体は価格が高いため、添加量を15重量部以下とすることにより、経済的な効果も生じる。
【0042】
なお、前記樹脂組成物Aと前記樹脂組成物Bとにおいて、添加するビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体は、その種類が異なっていても良く、2種以上を添加することも可能である。
【0043】
(5)添加剤など
本発明に係るシートを形成する前記樹脂組成物Aおよび前記樹脂組成物Bには、各種の添加剤や顔料などを更に含有させることができる。本発明に係るシートに含有させることができる添加剤としては、本発明の効果を損なわない限り、既存の樹脂製シートに添加可能な添加剤を、1種または2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、滑剤、帯電防止剤、安定剤、発泡剤、紫外線吸収剤、メヤニ防止剤などが挙げられる。また、前記樹脂組成物Aによって構成する基材層には、本発明に係るシートの製造時に生ずる端部をトリミングして再生した前記樹脂組成物Aおよび前記樹脂組成物Bを混合した組成物を添加することも可能である。
【0044】
以上説明した前記樹脂組成物Aおよび前記樹脂組成物Bは、その組成に特徴を有し、その製造方法については、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、自由な方法で製造することが可能である。例えば、二軸押出機を用いて全組成物を一括押出してコンパウンドとする方法、無機充填材を予めポリオレフィン系樹脂で高濃度のマスターバッチとしておき、このマスターバッチとポリ乳酸樹脂、その他配合する物質を、多層シートを製造する工程において混合しながらシートにする方法が挙げられる。本発明では特に、経済面を考慮すると、前記マスターバッチを作製する方法がより好ましい。
【0045】
本発明に係るシートにおいて、前記樹脂組成物Aからなる基材層と前記樹脂組成物Bからなる外層との厚み構成比率については、本発明の効果を損なわない限り、形成するシートの用途や目的に応じて、自由に設計することが可能である。本発明では特に、基材層を40〜90%、その両側に位置する外層を合計で10〜60%の厚み構成比率で構成することが好ましい。基材層を40%以上とすることで、本発明に係るシートの剛性を向上させることができ、基材層を90%以下、即ち、外層の合計を10%以上とすることで、耐衝撃強度および耐折強度を向上させることができる。特に好ましい構成比率は、外層/基材層/外層の3層において10〜25%/80〜50%/10〜25%である。
【0046】
なお、基材層の両側に位置する外層の厚みは、両側で対称形となるような比率にする必要はなく、例えば、外層/基材層/外層において、10%/60%/30%でも20%/60%/20%などと設計することも可能である。
【0047】
このように、本発明に係るシートは、前記基材層とこの両側に位置する前記外層の少なくとも3層構成を呈することを特徴とするが、その他の構成として、例えば、ガスバリア性を付加する目的でエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂層や、該層を接着するための接着樹脂層を更に加えることも可能である。また、本発明に係るシートには、その表面に、装飾の目的で予め印刷を施した、例えば、ポリプロピレンフィルムなどをラミネートすることにより、更に層を増加させることも可能である。この際、例えば、本発明に係るシートを食品の包装に用いる場合、食品と接触する面には印刷を行うことを避けることが望ましいため、食品と接触しない面に印刷を施したフィルムをラミネートすることが好ましい。
【0048】
本発明に係るシートの総厚みは、本発明の効果を損なわない限り、成形するシートの用途や目的に応じて、自由に設計することが可能である。例えば、容器に用いる場合、一般的には、0.18mm〜1.2mmの厚みに設計することが好ましく、最も汎用的な範囲としては、0.3mm〜0.8mmの厚みに設計することがより好ましい。
【0049】
以上説明した本発明に係るシートは、その組成および積層構造に特徴があり、その製造方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、自由な方法で製造することができる。本発明に係るシートの場合、単独に各層の組成のシートを作成しておきラミネートなどの手段で多層化する方法も可能ではあるが、基材層の組成を単独でシート化することが難しいことから、技術的に困難な場合がある。そのため、本発明では特に、共押出し法を用いて製造することが好ましい。
【0050】
共押出し法を用いて本発明に係るシートを製造する場合、その共押出し方法については特に限定されず、フィードブロック法やマルチマニホールド法などを用いることができ、シートの製造は通常のTダイ方式が好ましい。
【0051】
即ち、本発明に係るシートを製造する具体的実施様態としては、前記樹脂組成物Aを押出す押出機と、前記樹脂組成物Bを押出す押出機一台または二台の合計2または3台の押出機を用い、各押出機から各々の組成物を180〜220℃程度の温度範囲で溶融させフィードブロックを通じて3層の構成とし、その後Tダイを用いてシート状とした溶融物を30〜60℃程度に温度制御した2本の冷却ロールにはさみながら冷却し第3ロールに搬送し、その後複数のガイドロールを経て巻取機にてロール状に巻き取る方法にて製造可能である。
【0052】
前記樹脂組成物Aを押出す押出機としては、ベントタイプが好ましく、真空ポンプにて材料中に含まれる水分を吸引して除去することが好ましい。また、樹脂組成物AおよびBともに、押出し前に80℃程度で4時間程度乾燥しておくことが望ましい。
【0053】
<2.容器>
本発明に係るシートは、その優れた耐熱性、剛性、および耐衝撃性を利用して、容器に好適に用いることができる。具体的には、前述した本発明に係るシートを熱成形することにより容器として用いることができる。
【0054】
本発明に係る容器は、優れた耐熱性、剛性、および耐衝撃性を有しているため、様々な用途に用いることができる。例えば、弁当容器、各種トレー、加熱調理容器、パスタやカレーなど食品用容器、特に、本発明に係る容器は、マイクロ波加熱に対し耐熱性を示すシートから構成されているため、電子レンジ加熱用の容器に好適に用いることが可能である。
【0055】
また、食品用容器の他に、例えば、電子レンジを用いて加熱する保温剤など食品以外を収容するための容器にも好適に用いることができる。
【0056】
本発明に係る容器は、前記樹脂シートを熱成形して製造する。本発明に係る容器の製造において、その熱成形の方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、自由な方法で熱成形することができる。例えば、加熱したシートを型の上部に置き型内の真空孔から空気を引いて軟化したシートを型に密着させて成形する真空成形、同じく加熱したシートを密閉した空間に入れ型上部から圧力空気を入れて軟化したシートを型に押し付けると同時に型内に設けた真空孔から空気を引いて成形する圧空成形などが挙げられる。
【0057】
前記本発明に係るシートは、100〜160℃の温度で軟化し成形可能となる。本発明に係る容器の製造に金型を用いる場合、その金型温度は、30〜50℃程度に冷却しておくだけで良く、高温度に保持しておく必要は無い。即ち、汎用の装置と条件がそのまま適用できるので非常に経済的である。
【実施例】
【0058】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するとともに、本発明の効果を検証する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0059】
<シートの作製>
以下に示す方法で、実施例1〜13、比較例1〜11に係るシートを作製した。
使用した原材料は、以下の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂:浙江海正生物材料股イ分有限公司製 REVODE 110
(2)ポリプロピレン樹脂:日本ポリプロ株式会社 EA9
(3)高密度ポリエチレン樹脂:京葉ポリエチレン株式会社 B5802
(4)タルク:浅田製粉製タルクマスター タルク含有量80%
(5)スチレン−ブタジエンブロック共重合体:JSR株式会社製TR2000
(6)スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン樹脂:旭化成株式会社製タフテックMP−10
【0060】
[実施例1〜13]
後述する表7の実施例1〜13に示すそれぞれの樹脂組成物Aをシートの基材層とし、各樹脂組成物Bを両外層とし、同じく表7に示す厚み比率とした多層シートを製作した。これらの組成物は予めペレット状態で混合しておき、シートを製作する際に直接押出機のホッパーに投入した。
【0061】
基材層の作製には、65mm押出機を用いて樹脂組成物Aを押出し、外層の作製には40mm押出機を2台使用して樹脂組成物Bを押出し、フィードブロックを用いて外層/基材層/外層の3層とし、幅700mmのTダイにてシート状として、3本ロールを用いて冷却しその後、巻取機にて巻き取った。
【0062】
押出しの条件としては、押出機のシリンダーの設定温度は、180〜210℃に設定し、ダイ温度は210℃に設定した。冷却ロールはそれぞれ50℃に温調した媒体を通して冷却した。スクリュー回転数は基材層の65mm押出機を60回転/分とし、それぞれの厚み比率を得るように各外層の押出機のスクリュー回転数を設定した。
【0063】
なお、シートの厚みは、総厚みで0.5mmとした。
【0064】
[比較例1〜5]
比較例1〜5として、単層シートを作製した。これらは前記実施例1〜13に係るシートの作製において基材層の作製で用いた押出機を用いて、後述する表8に示す樹脂組成物aを押出しシート化したものであり、Tダイをはじめ、他の設備は実施例1〜13に係るシートの作製において用いたものと同様の設備を用いた。
【0065】
[比較例6〜11]
比較例6〜11として、後述する表8に示す樹脂組成物aおよび樹脂組成物bを用いて、前記実施例1〜13と同様の方法にてシートを作製した。
【0066】
<評価>
作製した実施例1〜13、比較例1〜11に係るシートについて、(1)シート外観、(2)メヤニの発生、(3)耐熱性:130℃、150℃、(4)耐熱性:電子レンジ、(5)剛性、(6)耐衝撃性について、それぞれ下記に示す評価基準に従って評価を行った。
【0067】
(1)シート外観
作製したシートを肉眼にて表面の平滑性を評価することと合わせて、部分的に切り出したシートの表面状態を写真にて撮影した上で、拡大画像化し目視にて表1に示す評価基準に従って評価を行った。
【0068】
【表1】

【0069】
(2)メヤニの発生
シートを作製する際、ダイリップ出口から析出してくるメヤニの状態を観察して、下記表2の評価基準に従って評価を行った。
【0070】
【表2】

【0071】
(3)耐熱性:130℃、150℃
まず、前記で作製したそれぞれの樹脂シートから、真空成形機を用い、長手180mm、短手130mm、高さ25mmのトレー型の容器を成形した。なお、真空成形の条件としては、加熱によるシートの表面温度:120〜150℃、金型温度40℃の条件下で真空成形をおこなった。
【0072】
成形した各容器を、130℃および150℃に設定した熱風循環式オーブンに10分間入れた後、外観を目視にて観察し、同時に形状の寸法変化として容器高さを測定し、下記表3に示す評価基準に従って評価を行った。
【0073】
【表3】

【0074】
(4)耐熱性:電子レンジ
前記耐熱性:130℃、150℃と同様の方法で成形した各容器に、レトルトカレー70gを入れ、ポリオレフィン系ラップフィルムで包装し、出力600W30秒(品温として100℃超える)の加熱を行い、容器外観(容器の内面及び容器全体)の変化を観察し、下記表4に示す評価基準に従って評価を行った。
【0075】
【表4】

【0076】
(5)剛性
作製したシートについて、JIS−K7127(試験片:タイプ5)の方法で引張り試験を実施し、引張り弾性率を測定した。測定した弾性率を元に、下記表5に示す評価基準に基づいて評価を行った。
【0077】
【表5】

【0078】
(6)耐衝撃性
作製したシートについて、JIS−K7128−3に従い、引裂き試験(直角形引裂法)により引裂き強さを求めた。測定した引裂き強さを元に、下記表6に示す評価基準に基づいて評価を行った。
【0079】
【表6】

【0080】
上記の方法で評価した結果を、実施例1〜13については表7に、比較例1〜11については表8にそれぞれ示す。なお、表7および表8中、PLAはポリ乳酸樹脂を、タルクは80重量%のタルクを含むポリプロピレン樹脂として配合された樹脂中のタルクを、PPはポリプロピレン樹脂を、HDPEは高密度ポリエチレン樹脂を、SBSはスチレン−ブタジエンブロック共重合体を、SEBSはスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン樹脂を、それぞれ表す。
【0081】
【表7】

【0082】
【表8】

【0083】
表7に示すように、本発明の実施例1〜13に係るシートは、植物由来のポリ乳酸樹脂を一定量以上含有するにも関わらず、各構成/配合とも概ね諸性能を満たし、実用的に使用が可能であった。特に、樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bの両方に、SBSまたはSEBSを配合した実施例4、8、10、11及び13に係るシートは、メヤニ防止効果および耐衝撃性が優れることが分かった。
【0084】
一方、表8に示すように、植物由来樹脂を全く含有しない比較例1に係るシートだけは、諸性能を満たし、実用的に使用が可能であったが、植物由来のポリ乳酸樹脂を含有する比較例2〜11に係るシートについては、諸特性を満足するものはなかった。
【0085】
具体的に分析すると、比較例2、8及び9に係るシートは、樹脂組成物aにおけるポリ乳酸樹脂の含有量が少ないために、耐衝撃性が劣ることが分かった。そもそも、比較例2に係るシートは植物由来樹脂の含有量が少ないため、本発明の石油由来樹脂の使用量を減少させるという目的に反するものである。
【0086】
比較例3および比較例4に係るシートは、樹脂組成物aの組成配合は本発明の範囲内であるが、外層を有さない単層構造であるために、シート外観、耐衝撃性が劣ることが分かった。また、製造時におけるメヤニ発生も認められた。
【0087】
比較例5に係るシートは、植物由来樹脂100%で作製されたシートであり、環境には非常に優しいものではあるが、耐熱性が非常に劣り、実用的な使用は不可能であることが分かった。
【0088】
比較例6および比較例7に係るシートは、基材層を形成する樹脂組成物aにおける無機充填剤の含有量が少ないために、剛性が劣ることが分かった。
【0089】
比較例10および比較例11に係るシートは、基材層を形成する樹脂組成物aにおいてポリ乳酸樹脂を80%以上含有し、外層を形成する樹脂組成物bにおいてポリ乳酸樹脂及びタルクを含まずポリオレフィン系樹脂のみで形成した場合であるが、耐熱性及び耐衝撃性が非常に劣ることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
環境に与える負荷を減少させる観点と石油資源を消費しない観点から、石油由来樹脂量の使用量を少なくすることが望ましい中で、本発明に係るシートは、植物由来のポリ乳酸樹脂、無機充填材およびポリオレフィン系樹脂を併用し、特定の多層構造とすることで、従来の石油由来樹脂からなるシートと同等の耐熱性、剛性および耐衝撃性を持たせることに成功した。
【0091】
この本発明に係るシートの優れた耐熱性等を利用することで、電子レンジにも使用可能で、かつ、環境問題及び石油資源枯渇問題を解決し得る包装容器を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂:20〜60質量%、ポリオレフィン系樹脂:10〜60質量%、および無機充填剤:20〜50質量%、を少なくとも含有する樹脂組成物Aにより形成された基材層の両面に、
ポリオレフィン系樹脂:40〜100質量%を少なくとも含有する樹脂組成物Bにより形成された外層が積層されることにより、
マイクロ波加熱に対し耐熱性を示すシート。
【請求項2】
前記樹脂組成物Bが、ポリ乳酸樹脂を20質量%以下更に含有したものである請求項1記載のシート。
【請求項3】
前記樹脂組成物Bが、無機充填剤を50質量%以下更に含有したものである請求項1または2に記載のシート。
【請求項4】
前記基材層の厚みが、構成比率で40〜90%である請求項1から3のいずれか一項に記載のシート。
【請求項5】
前記ポリオレフィン樹脂が、少なくともポリプロピレン樹脂を含有したものである請求項1から4のいずれか一項に記載のシート。
【請求項6】
前記ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン樹脂を更に含有したものである請求項5記載のシート。
【請求項7】
前記無機充填剤が、少なくともタルクを含有したものである請求項1から6のいずれか一項に記載のシート。
【請求項8】
前記樹脂組成物Aおよび/または前記樹脂組成物Bが、ビニル芳香族化合物と共役ジエンからなるブロック共重合体を更に含有したものである請求項1から7のいずれか一項に記載のシート。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のシートを熱成形してなる容器。
【請求項10】
電子レンジ加熱用に用いられる請求項9記載の容器。

【公開番号】特開2013−103438(P2013−103438A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249696(P2011−249696)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】