説明

シートによる仮設外郭構造

【課題】 仮設屋根や間仕切りなどをシートを使用して簡単に施工できるようにするとともに、シートからなる屋根を開閉できるようにして資材の搬送の便を図れるようにした。
【解決手段】 長方形のシート2aの対向する両端辺にシート芯棒2bを取付けてシート部材2を形成し、2つのシート部材2のシート芯棒2bの部分を、シート連結材3の両側に着脱可能に連結し、シート連結材3の両端に設けた車輪8が、平行な2本のレール1に案内されて移動できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建設途上の建物に防雨や直射日光を避けるためにシートを屋根状に仮設したり、壁部や間仕切りをシートで仮設できるようにした仮設外郭構造に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、建設現場において作業効率の向上と作業環境の改善を目的に、建設途上の建物でも仮設で屋根を掛け全天候作業を可能とする例が増えている。これら仮設の屋根は、主に単管パイプや簡易なトラス鋼材で骨組みし、これに帆布を掛けて屋根としている場合が多い。その他、最近の例としてビル自動化施工方式による仮設屋根があり、その場合の多くが骨組みと板材により仮設屋根を建物の所定位置に組立て、建物施工の進行とともに仮設屋根を揚重機械等と一緒に作業工程に合わせて上昇させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の仮設屋根のうち単管パイプと帆布を使用したものは、建設工程の進行に従って仮設屋根を上方に移動させなくてはならず、そのために仮設屋根の組立て、解体を繰り返す必要があった。また、揚重機械の使用時に、仮設屋根が邪魔になって資材を必要な位置に移動させられないことがあり、その場合は別途に資材を横移動させる必要があり、作業性が悪いものであった。
【0004】また、自動化施工方式は、仮設屋根を揚重機械等と一緒に上昇させていく工法であるので、高層の建物の施工には適しているといえるが、低中層建物の施工の場合は、仮設屋根を上昇させるための設備が必要であり、経済的ではないとともに、上昇設備の配置と除去に工数を要し作業効率に問題があった。そこで本発明は、建築途上の作業場や資材置場にたいして、風雨や日射を防ぐ仮設屋根や間仕切りをシートで簡単に施工できるようにするとともに、シートからなる屋根や間仕切りを開閉可能にして、資材の移動で屋根などが邪魔になる場合は、屋根を構成するシートを移動してそれが邪魔にならないようにすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成したシートによる仮設外郭構造であり、それは構造物の適所に2本のレールを平行に設けて、そのレールに案内させてシートを移動できるようにした。その仮設外郭構造は、長方形シートの対向する両端辺に沿って長いシート芯棒を取付けたシート部材と、シート部材のシート芯棒部分を嵌合させる長い係合穴を両側に有する直線状に長いシート連結材と、シート連結材の長手方向の両端に取付けられて前記レールに案内される車輪と、で構成される。シート連結材には長い補強用鋼材を取付けて、シート連結材の下に照明器具を取付けることができる。またシート部材を屋根状に配置する場合は、レールを断面コ字形に形成して、その開口を上向きに配置する。
【0006】上記ではシート連結材の両端に車輪を設けていたが、その車輪を設けなくてもよい。その場合のシートによる仮設外郭構造は、直線状に長くて両側に長い係合穴を有するシート連結材を、平行な2本の梁材の間に適宜間隔で連結し、長方形のシートの対向する両端辺にそれぞれシート芯棒を取付けてシート部材を形成し、シート部材の両端のシート芯棒の部分をそれぞれ隣合うシート連結材のそれぞれの係合穴に係合して、シートを平面状に張れることを特徴とする。この場合、シート連結材に吊りボルトを取付け、2本の梁材の端部に位置するシート連結材の外側のシート係合穴に、シート部材の端部に取付けたシート芯棒の部分を係合させてシートを下に降ろして壁状にすることができる。さらに、梁材の下面にカーテンレールを設けることにより、梁材の下にシートやカーテンを吊すことができる。
【0007】上記のシートによる仮設外郭構造では、シート連結材の両側のそれぞれの係合穴に2つのシート部材の端辺に設けたシート芯棒部分を嵌合することにより両シートが連結され、しかもシートはその端辺に長いシート芯棒が取付けられているので、シートの両端を引っ張り状態にすれば撓むことなく屋根状あるいは壁や間仕切り状に保持できる。また、シート連結材の両端には、車輪が取付けられて、それがレールに案内されるので、容易にシートを移動できる。そして全てのシートを張り状態にすることで屋根などの全面を覆うことができる。さらにシートを、その両端のシート芯棒が接するまで近付けることでシートを二重に折り畳むことができ、全てのシートをそのように二重に折り畳むことで屋根などを開放状態にすることができる。また、シート連結材の両端に車輪を設けない場合は、平行な2本の梁材の間に適宜間隔でシート連結材を連結し、シート部材の両端のシート芯棒の部分を、隣合うシート連結材のそれぞれの係合穴に係合させることでシートを平面状に張ることができ、またその係合を外すことでシート部材を取り外すことができる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明のシートによる仮設外郭構造の第1実施例を図1、2により説明する。この実施例は仮設外郭構造を仮設屋根に適用したものであり、2本のレール1を建築物の適所に平行に設け、そのレール1にシート部材2の両端を案内させて移動できるようにしたものである。シート部材2は、長方形のシート2aの対向する両端の辺に沿ってシート芯棒2bが取付けられており、シート2aは帆布や合成樹脂のシートで形成されている。シート芯棒2bは、直線状に長い金属棒で形成され、シート2aの端部を折り曲げて縫い付けた穴内に挿入され、後記するシート連結材3に連結される。またレール1は、断面コ字形に形成されて、その開口が上向きに配置され、図示を省略した吊りボルトや支柱により支持されている。
【0009】シート部材2で建物の屋根全体を覆うために、複数のシート部材2はシート連結材3により連結されている。シート連結材3は、およそ2つのパイプを平行に接合した直線状に長い形状であり、その両側にシート部材2のシート芯棒2bの部分を嵌合させる長い係合穴3aを有するとともに、その係合穴3aは外側に直線状に長い溝を有していてそこからシート芯棒2bの部分を出し入れできるようになっている。そして、図1(b)に示すようにシート連結材3の両側の係合穴3aにそれぞれ、2つのシート部材2のそれぞれのシート芯棒2bの部分を挿入して連結できるようになっている。なおシート連結材3の係合穴3aの長い溝開口縁部は少し撓みが可能であり、シート芯棒2b部分を係合穴3a内に押し込んだり出したりできるようになっている。
【0010】シート連結材3の上側に、断面コ字形で長い補強用鋼材4がボルト、ナット5により取付けられて、シート連結材3を直線状に保てるように補強している。そして、適宜位置のシート連結材3の中央部の下に照明器具6をボルトなどにより取付けている。なお、シート連結材3を肉厚あるいは断面形状を考慮して曲がりにくく形成すれば、補強用鋼材4を取付ける必要はない。シート連結材3の長手方向の両端に、ブラケット7を介して車輪8が取付けられ、その車輪8は前記のレール1に案内されて移動できるようになっている。そして、図2(a)に示すように各シート部材2の両端のシート芯材2bの間のシート2aを引っ張る状態に車輪8を移動すれば、屋根全面をシートで覆うことができ、また図2(b)に示すように各シート部材2のシート芯材2bを設けた両端部を接合するように車輪8を移動すれば、各シート部材2のシート2aが2つに折り畳まれて屋根を開放状態にすることができる。
【0011】次に第2実施例のシートによる仮設外郭構造を図3〜5により説明する。この実施例では、シート連結材3の両端に車輪8を設けていない点で前記の第1実施例と異なる。この場合のシートによる仮設外郭構造は、直線状に長くて両側に長い係合穴3aを有するシート連結材3を、平行な2本の梁材11の間に適宜間隔で連結し、隣合う2つのシート連結材3の間にシート部材2を平面状に保持できるようになっている。
【0012】シート連結材3は、前記の第1実施例と同様に直線状に長くて両側に長い係合穴3aを有しており、図3の状態では補強材を有しないが、図1の実施例のように補強用鋼材4を設けてもよい。梁材11は、直線状に長い形状であり、図3(b)に示すようにその下面にカーテンレール11aを有していて、カーテンレール11aに案内される吊り金具12にカーテンあるいはシートを吊れるようになっている。またシート連結材3は図4に示すように、数カ所が吊りボルト13の下端に連結されて吊られるようになっており、シート連結材3の両端が梁材11にボルト20などで連結されることにより、梁材11とシート連結材3とが一体に吊られるようになっている。
【0013】シート部材2は、前記の第1実施例と同様に、長方形のシート2aの両端辺にシート芯棒2bが取付けられ、両端のシート芯棒の部分が、隣合うシート連結材3の係合穴3aに係合されることでシート部材2を平面状に保持できる。また、2本の梁材11の端部に位置するシート連結材3の外側のシート係合穴3aに、シート14の端部に取付けたシート芯棒14aの部分を係合させてシート14を下に降ろして壁として形成できるようになっている。なお下に降ろしたシート14の下部には、適宜間隔で結束孔15が設けられてそれに結束線16が通され、単管パイプ17などを結束して、下に降ろしたシート14を平面状に張れるようにしている。
【0014】またシート連結材3の下に照明器具6を取付けており、図5に示すように、シート連結材3の中央下面に取付け具18をネジ19あるいはボルトなどにより取付け、その取付け具18の下に照明器具6をボルト、ナット19などにより取付けている。なお、取付け具18の代わりにカーテンレールを取付けて、それに照明器具6を取付けたり、あるいはカーテンやシートを吊って、それを間仕切りにしてもよい。また仮設外郭構造の内部にエアコン装置を設ける場合は、シート部材の適所に孔を設け、その孔に、室内機と屋外機とを連通する配管を通すようにする。
【0015】
【発明の効果】本発明によれば、シートを屋根や壁とした仮設外郭構造とすることができ、レールにシートの両端を支持させて屋根や壁にすることができるので、仮設屋根などを容易に組立てられると共に容易に分解でき、作業性がよい。またシートは、レールに案内させて移動することにより開閉できるようにしたり、シート部材の一端をシート連結材から取り外して折り畳めるので、資材の搬送に屋根や壁が邪魔になる時はシートを開放あるいは取り外せばよいので資材の搬送が容易である。さらに、シートを使用した仮設外郭構造でも照明器具を取付けることができ、夜間作業や地下工事又は資材置場などに適用しても、その中での作業性がよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例のシートによる仮設外郭構造の部分斜視図(a)と、シート連結材の断面図(b)と、シート連結材の端部に車輪を取付けた部分の側面図(c)および正面図(d)である。
【図2】第1実施例におけるシート部材を張った状態の説明図(a)と、シート部材を折り畳んだ状態の説明図である。
【図3】第2実施例のシートによる仮設外郭構造の概略斜視図(a)と、梁材の断面図(b)である。
【図4】図3におけるシール連結材の端部位置を吊りボルトで吊っている部分の拡大図である。
【図5】図3におけるシール連結材の中央位置を吊りボルトで吊っている部分の拡大図である。
【符号の説明】
1 レール
2 シート部材
3 シート連結材
6 照明器具
8 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】 構造物の適所に2本のレールを平行に設けて、そのレールに案内させてシートを移動可能に設ける仮設外郭構造であって、長方形シートの対向する両端辺に沿って長いシート芯棒を取付けたシート部材と、シート部材のシート芯棒部分を嵌合させる長い係合穴を両側に有する直線状に長いシート連結材と、シート連結材の長手方向の両端に取付けられて前記レールに案内される車輪と、を有することを特徴とするシートによる仮設外郭構造。
【請求項2】 シート連結材に、長い補強用鋼材が取付けられ、シート連結材の下に照明器具を取付けたことを特徴とする請求項1に記載のシートによる仮設外郭構造。
【請求項3】 レールは、断面コ字形に形成されて、その開口が上側に配置され、シート部材を屋根状に配置できることを特徴とする請求項1又は2に記載のシートによる仮設外郭構造。
【請求項4】 直線状に長くて両側に長い係合穴を有するシート連結材を、平行な2本の梁材の間に適宜間隔で連結し、長方形のシートの対向する両端辺にそれぞれシート芯棒を取付けてシート部材を形成し、シート部材の両端のシート芯棒の部分がそれぞれ隣合うシート連結材のそれぞれの係合穴に係合されて、シートが平面状に張られることを特徴とするシートによる仮設外郭構造。
【請求項5】 シート連結材に吊りボルトが取付けられ、2本の梁材の端部に位置するシート連結材の外側のシート係合穴に、シートの端部に取付けたシート芯棒の部分が係合されてシートが下に降ろされて壁状に設けられることを特徴とする請求項4に記載のシートによる仮設外郭構造。
【請求項6】 梁材の下面にカーテンレールが設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載のシートによる仮設外郭構造。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図5】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate