説明

シートを通気する方法

本発明は、シート部分を有するインサートを備える通気シートであって、インサートは、第1の穴及び第2の穴を有する流量制御層と、インレー及び本体部を有するスペーサと、第1の流体バリアとを有し、流体密封境界によってインレーが本体部から実質的に隔離される、通気シートに関する。本発明はまた、シート部分を有するインサートを備える通気シートであって、インサートは、少なくとも1つの穴を有する第1の流量制御層と、第1のスペーサ及び第2のスペーサと、少なくとも1つの穴を備える流体バリアとを有する、通気シートに関する。本発明はまた、通気シートであって、シート部分を有し、且つシート部分に穴及び複数の流通孔を有する流量制御層、スペーサ、及び流体バリアを有するインサートと、流量制御層のシート部分に隣接して位置する複数の流通孔を有する少なくとも1つの導管とを備える、通気シートに関する。シートは、スペーサと流体連通するファンと、流体調整装置とを含んでもよい。本発明はまた、シートを通気する方法に関する。本方法は、熱電素子(TED)を設けること、TEDで空気を調整して加熱又は冷却を提供すること、及びその調整された空気をインサートを通して押し出すか又はインサートから吸い出すことでインサートを通して調整された空気を伝えることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、概して、シートに加熱、冷却、通気、又はそれらの組み合わせを提供するインサート及びシステムに関し、より詳細には、自動車用のインサート及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[優先権の主張]
本願は、2003年9月25日に出願された米国仮出願第60/505,806号及び2003年12月1日に出願された米国仮出願第60/525,959号の利益を主張する。
【0003】
[発明の背景]
輸送業界は長年にわたり、シートに座っている乗員の快適性を高める自動車用シートの設計に取り組んできた。座り心地のよさの提供に関する種々の革新が、米国特許第6,064,037号、第5,921,314号、第5,403,065号、第6,048,024号、及び第6,003,950号に記載されており、これらは全て参照により本明細書に特に援用される。さらに、座り心地のよさの提供に関する他の革新が、2000年7月19日に出願された「Ventilated Seat Having a Pad Assembly and a Distribution Device」と題する米国特許出願第09/619,171号、2001年1月5日に出願された「Ventilated Seat」と題する米国出願公開第2002/0096931号、2003年10月7日に発行された「Portable Ventilated Seat」と題する米国特許第6,629,724号、2003年5月9日に出願された「Automotive Vehicle Seat Insert」と題する米国特許出願第10/434,890号、2003年1月17日に出願された「Automotive Vehicle Seating Comfort System」と題する米国特許出願第10/463,052号、及び2003年10月8日に出願された「Automotive Vehicle Seating Comfort System」と題する米国特許出願第10/681,555号に記載されており、これらそれぞれはあらゆる目的で参照により本明細書に特に援用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような革新を継続するために、本発明は、自動車シート内で又は自動車シートの一部として用いるのに適していることが好ましく、且つシートに座っている乗員の快適性の制御を行うのに役立つ、シート用の改良型のインサート及びシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[発明の概要]
本発明は、シート部分を有するインサートを備える通気シートであって、インサートは、第1の穴及び第2の穴を有する流量制御層と、インレー及び本体部を有するスペーサと、第1の流体バリアとを有し、流体密封境界によってインレーが本体部から実質的に隔離される、通気シートに関する。本発明はまた、シート部分を有するインサートを備える通気シートであって、インサートは、少なくとも1つの穴を有する第1の流量制御層と、第1のスペーサ及び第2のスペーサと、少なくとも1つの穴を備える流体バリアとを有する、通気シートに関する。本発明はまた、通気シートであって、シート部分を有するインサートを備え、この通気シートは、シート部分に穴及び複数の流通孔を有する流量制御層、スペーサ、及び流体バリア、および、流量制御層のシート部分に隣接して位置する複数の流通孔を有する少なくとも1つの導管を備える。このシートはまた、スペーサと流体連通するファン及び流体調整装置を含んでもよい。
【0006】
本発明はまた、シートを通気させる方法に関する。この方法は、熱電素子(TED)を設けること、TEDで空気を調整して加熱又は冷却を提供すること、及びその調整された空気をインサートを通して押し出すか又はインサートから吸い出すことでインサートを通して調整された空気を伝えることを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[詳細な説明]
本発明は、シート内又はシート上に配置されてシート乗員に加熱(heating:暖房)、冷却(cooling:冷房)、通気、又はそれらの組み合わせを提供するのに適したインサートを含む。インサートは、少なくとも1つの層を含むが、複数(例えば3つ)の層を含むことが好ましく、層はそれぞれ単層であっても複数の層(例えば積層板)であってもよい。複数の層は、互いに貼り合わせられている必要はないがその方が好ましい。より好ましくは、層は、少なくとも縁部が互いに貼り合わせられ、縁部がシールされた袋を形成する。インサートの層は通常、同じ大きさであるが、場合によっては他の層又はインサートと同じ大きさではない部分層が適しているかもしれない。
【0008】
インサート及びインサートを構成する層は通常、シート部分及び延長部を有する。その名が示唆するように、シート部分は概して、シート乗員が座っているシートの領域に加熱、冷却、通気、又はそれらの組み合わせを提供する、インサートの領域である。延長部により、インサートを含むシステムの部品をシート部分から遠隔に配置することができる。これにより、シートの快適性を妨げないように部品を適宜位置付けることができる。延長部は、通常はシートの後部に位置付けられるが、左右に位置付けてもよく、シートの前部に位置付けてもよく、又は全くなくてもよい。複数の延長部をインサートで用いることもできる。
【0009】
通常、インサートはシートクッション又は背もたれクッションによって支持される。シートクッション又は背もたれクッションは、クッション内の一部又は全体に延びる1つ又は複数の管を含んでいてもよく、又はクッション内に延びる管がなくてもよい。好ましいクッションは、成形又は切り抜きによる流体分配管路網を有さないことが好ましい成形プラスチックフォームであるが、クッションの片側から別の側まで延長部を通す溝又は開口部を有するようになっていてもよい。シートクッション及び/又は背もたれクッションはさらに、シートフレームによって支持され得る。1つのシート又は背もたれクッションに複数のインサートを用いてもよく、その場合、インサートは同じ機能を果たしても異なる機能を果たしてもよい(例えば、1つのインサートは冷却のみを行うことができ、別のインサートは加熱及び冷却の両方を提供することができる)。
【0010】
1つ又は複数の異なる種類の層を用いて、インサートを構成することができる。例えば、インサートは、インサート内に中空部を設けるように1つ又は複数のスペーサを含むことができる。インサートの1つ又は複数の層間、インサートとシートの残りの部分との間、又はインサートと周囲との間に流体を選択的に流すために、1つ又は複数の流量制御層を含んでもよい。1つ又は複数の流体バリアを含んでもよい。他のオプションの層は、ヒータ、クーラ、1つ又は複数の付加的なスペーサ、1つ又は複数の被覆層、及び/又はインサートの製造に役立つ1つ又は複数の層を含む、層を含む。
【0011】
スペーサは、流体が材料を通って流れるのを可能にするとともにシート乗員にある程度の支持も与える、任意の構造、材料、又は材料及び/又は構造の組み合わせであり得る。スペーサは、シート乗員の重量下で潰れてはならず、スペーサにおける流体連通を維持すべきである。一例として、スペーサは、ゴム、フォームプラスチック等を含み得る。一態様では、スペーサは、網状フォーム又はばねを含み得る。
【0012】
スペーサは、クッション及び支持を与えるほど互いに十分に近いままで互いの間に中空部を設けるように互いに離間していることが好ましい、複数の部材又は繊維を含み得る。1つの好ましいスペーサは、対向するハニカム構造(例えば、織物パネル)を提供するように織り合わせられるポリマー(例えば、ポリエステル)ストランド材料から形成され、このハニカム構造は、クッション及び支持を与えたままで構造間に中空部を設けるように、いくつかのさらなるポリマーストランド材料によって相互接続される。一例として、1つの好ましい材料は、3MESH(商標)という商品名で販売されており、ミュラー・テクステイル有限会社(Muller Textil GmbH)(ドイツ)又はミュラー・テクステイルズ社(Muller Textiles, Inc.)(ロードアイランド州、米国)から市販されている。
【0013】
別の好ましいスペーサは、2つの材料シート間に保持された螺旋状のポリマー材料から形成される。好ましくは、材料シートにこの螺旋を取り付けるための拡大領域を螺旋に設けるために、螺旋は長円形である。螺旋は、螺旋の隣接コース同士が接触するようにきつく巻かれてもよく、又は螺旋の隣接コース同士が接触しないように緩く巻かれてもよい。通常、複数の螺旋がスペーサを形成するために互いに隣接して(当接するか又は他の形で)配置される。例示的な螺旋状材料は、いずれも2004年3月17日に出願された国際出願PCT/DE04/000540及びPCT/DE04/000541に記載されており、これらはいずれも参照により援用される。
【0014】
別の好ましいスペーサ材料は、溝付き材料である。溝付き材料は複数の山及び谷を含み、山は貫通孔を含む。溝付き材料は、成形又は整形フォーム又はプラスチック等、任意の適当な材料を含むことができる。流通孔は、山及び谷の前に作っても、山及び谷と同時に作っても、又は山及び谷の後に作ってもよい。
【0015】
上述の材料の組み合わせを用いて、スペーサを得ることができる。
【0016】
流量制御層は通常、熱に曝されると軟化又は溶融することでインサートの1つ又は複数の他の層への接着を助ける、プラスチック材料又はポリマー材料から形成される。代替的に、流量制御層は、布、織布材料(例えば、Goretex(商標)又はマイクロファイバー)、ナイロン、クローズドポアフォーム(closed pore foam)、又は他のもの等から形成され得る。好ましくは、流量制御層の少なくとも一部は、複数の貫通孔を除いて、流体、特に空気を通さない。この層は、いかなる流体又は空気も実質的に通さないという必要はない。例示的な貫通孔は、通常は延長部に位置付けられる穴(例えば、入口及び/又は出口)、及び通常はシート部分に位置付けられる流通孔を含む。
【0017】
寸法的には、流量制御層に関しては、フィルムの厚みは約0.1mm〜約2.0mmの厚みであることが好ましく、約0.7mm〜約1.0mmの厚みであることがより好ましい。当然ながら、流量制御層は可変の厚みを有してもよく、上記の範囲外であってもよいことが意図される。
【0018】
流体バリアは、流量制御層と同様であってもよく、流量制御層と同じ材料を含んでいても異なる材料を含んでいてもよい。好ましくは、流体バリアは、流量制御層と同様の組成及び寸法を有する。流量制御層のように、流体バリアは、通常はインサートの延長部に1つ又は複数の穴を含み得る。流量制御層とは異なり、流体バリアは流通孔を備えない。また、流量制御層のように、流体バリアの少なくとも一部は、穴を除いて、流体、特に空気を通さない。流体バリアは、いかなる流体又は空気も実質的に通さないという必要はない。
【0019】
穴及び流通孔は概して、流体バリア及び流量制御層に流体連通を与える。流通孔は概して、インサートのシート部分に位置付けられる。各流量制御層の流通孔のパターンは、同じであっても異なっていてもよい。1つの好ましいレイアウトでは、流通孔のサイズは、インサートのシート部分の端から端にかけて徐々に変化する。通常、流通孔は、シートの後部よりもシートの前部付近の方が大きいが、実際には必ずしもそうとは限らない。このようにサイズを漸変させることにより、流量制御層を通る流体の流れを種々の場所で選択的に変えることができる。別の好ましいレイアウトでは、流通孔は、乗員がシートと接触することになるシートの領域に概ね対応する。
【0020】
例示的なオプションの層には、ヒータを有するものが含まれる。様々な異なるタイプのヒータが自動車のシートに組み込むのに適しており、このようなヒータのいずれを本発明のインサートに組み込んでもよいことが意図される。このようなヒータは通常、薄く、平坦で、目立たず、又はそれらの組み合わせであることが好ましい、可撓性の発熱体を組み込む。例えば、通常は裏地(例えば、布又は織物タイプの裏地)で支持された、ワイヤ敷設型ヒータ(lay wire heater)、カーボンファイバヒータ、正温度係数(PCT)ヒータ、熱電ヒータ等を、インサート内で用いることができる。好ましい一実施形態では、ヒータは裏地(例えば、不織層)を有するカーボンファイバタイプのヒータである。1つの例示的な好ましいヒータは、CARBOTEX(商標)という商品名で販売されており、ドイツのW.E.Tオートモーティブ・システムズ社(W.E.T. Automotive Systems, Inc.)及び/又はFTGフレイザー・テクニック有限会社(FTG Fraser-Technik GmbH)から市販されている。このようなヒータの一例は、2000年5月16日に発行された米国特許第6,064,037号に開示されており、これはあらゆる目的で参照により本明細書に特に援用される。可撓性のTEDシートの形態のヒータ/クーラの組み合わせが、適したオプションの層であり得る。可撓性のTEDシートとしては、参照により援用される米国特許第6,700,052号に記載されているものが挙げられる。他のクーラとしては、参照により援用される2003年9月25日に出願された米国仮出願第60/505,806号に記載されているものが挙げられ得る。
【0021】
オプションの付加的なスペーサは、インサートの他の部分のスペーサで用いられるものと同じ材料であっても異なる材料であってもよい。好ましいオプションの付加的なスペーサは、網状フォームを含む。
【0022】
適したオプションの被覆層は、インサートの一部であるか又はインサートとは別個であるシートカバーを含むが、概してインサートをシート乗員から隔てるものである。シートカバーは、少なくとも1つの剛性材料、天然材料(例えば、羊毛、革、又は他のもの)、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、任意の適当な材料であり得る。一実施形態では、シートカバーは、着座面の少なくとも一部にわたって、空気又は他の流体を通すことができる穿孔を含む。別の実施形態では、カバーは穿孔を実質的に有さない。例えば、穿孔された、又は穿孔されていない革を用いて、シート乗員をインサートから隔てることができ、インサートの一部としてフリース材料を用いて、吸湿を高めるか又は他の方法で保護層を提供することができる。
【0023】
付加的なスペーサ及びシートカバーの面積は、インサートと同じ大きさであってもよく、又はインサートの面積よりも大きくても小さくてもよい。
【0024】
1つ又は複数の接着層を用いて、インサートの組み立てを補助することができる。接着層は、ホットメルト接着剤からで形成されることが好ましいが、必ずしもそうである必要はない。接着剤は、ウェブとして又は他の形で設けることができ、一続きであっても断続的であってもよい(例えば、滴下、塗布等で施してもよい)。接着副次層は、ポリアミド、ポリエステル、エラストマー、ウレタン、オレフィンポリマー、又はそれらの組み合わせを含むことができる。さらに、接着剤は、特定の処理パラメータ又は条件に望まれるように配合することができる。好ましくは、接着副次層は、アンチブロッキング溶液、発泡用添加剤(blowing additives)、処理過程で生成される汚染物質等、接着性能を妨げ得るものを実質的に含まない。一例として、1つの適したホットメルト接着剤は、SPUNFAB(商標)という商品名の不織布ウェブとしてスパンファブ社(Spunfab, Ltd.)(175 Muffin Lane, Cuyahoga Falls, OH 44223)から市販されている。
【0025】
本発明のインサートは、シートクッションとシートカバーとの間の空間で組み立てられる別個のユニットであるか、シートクッション内に一体形成されるか、シートカバー内に一体形成されるか、又はそれらの任意の組み合わせであることができる。
【0026】
インサートに加えて、本発明は、加熱、冷却、通気、又はそれらの組み合わせを提供するシステムを含む。このシステムは、インサート及びインサートの動作を容易にする1つ又は複数の異なる部品を有する。例えば、このシステムは、ファン、流体調整装置、1つ又は複数の取り付け部品、1つ又は複数の弁、1つ又は複数のセンサ、及び/又は1つ又は複数の制御部を含むことができる。さらに、1つ又は複数の導管を用いて、ファンとインサートとの間、又はインサートと流体調整装置との間等、システムの部品間を流体連通させてもよい。
【0027】
ファンは、空気(調整空気、周囲空気、押し出された空気、吸い出された空気、及びそれらの組み合わせのいずれであるかに関係なく)をインサートに通すための原動力を提供する。ファンを用いて、インサートに空気を押し出すか、又はインサートから空気を吸い出すことができる。ファンを用いて、空気の押し出し及び吸い出しの両方を行うこともできる。例えば、少なくとも2組のファン翼(例えば、逆方向を向いた翼を有する)が、共通の軸を共有し、空気の押し出し及び吸い出しの両方を行うことができる2機能ファン(binary fan)を形成する。複数のファンを用いることもできる。ファンは、環状入口を含むこともできるが、環状入口を含まないファンも意図される。ファンの定義には、インペラ(双方向インペラを含む)、ブロワ等が含まれる。ファンは、他の流体(例えば、液体)をインサートに通すための原動力を提供する装置も指す。ファンは、定常流体流、脈動流体流、振動流体流等をもたらすことができる。
【0028】
流体調整装置は、流体を加熱又は冷却するいかなる装置であってもよい。この装置は、1つの部品が加熱を行い別の部品が冷却を行う装置の組み合わせであってもよい。好ましくは、1つの装置又はシステムが加熱及び冷却の両方を行う。この装置は、シートが位置付けられる建物又は車両内のHVACシステム等の外部装置であってもよく、又はシートが位置付けられる建物又は車両に装置が(電源以外に)接続されないことを意味する内部装置であってもよい。温度調整を行うことに加えて、流体調整装置は流体(例えば、空気)の除湿を行うこともできる。
【0029】
好ましくは、流体調整装置は、空気の冷却及び加熱の両方を行う内蔵型又は固体装置である。最も好ましい装置は、ペルチェ素子又は熱電素子(TED)である。TEDは、装置に電気を通すことによって固体加熱及び冷却を行う市販の装置である。TEDは、廃熱側(waste side:放熱側)及び能動側(active side:冷却側)を含み、これらは暖かい調整空気が望まれるか冷たい調整空気が望まれるかに応じた相対的な呼び方である。いずれのTED供給業者も、本発明で用いられるのに適した装置を提供することができるであろうが、テルレックス(Tellurex)製のTED(テルル化合物、CO)が好ましい。TEDは、任意の有用な放熱装置、例えば、ヒートシンク、熱交換器、ファン、ヒートパイプ等と組み合わせてもよい。
【0030】
取り付け部品は、ファン、流体調整装置、導管、又は他の部品をインサートに取り付けるための場所を画定することが好ましいフレーム部材である。フレーム部材は、様々な構成(例えば、環状、矩形、正方形、多角形、又は他の形状)をとることができ、好ましい様々な硬質又は半硬質の材料(例えば、金属、プラスチック等)から形成することができることが意図される。いくつかの態様では、取り付け部品は穴を画定するのにも役立つ。好ましい一実施形態では、取り付け部品は、ファン、流体調整装置、又は他の部品上の構造及び/又は材料(例えば、スナップ嵌めファスナ)と協働して、装置又は部品を取り付け部品に接続する。
【0031】
1つ又は複数の弁を用いてシステム内の流体の流れの向きを変えることで、流体中の未使用エネルギー(すなわち、流体の温度が周囲よりも高い)又はエネルギー容量(すなわち、流体の温度が周囲よりも低い)を利用することができる。例えば、弁を用いて流体を周囲に逃がすことで、流体中に蓄積されている不要なエネルギーを処分することができる。弁を用いて、流体をシステムの部品(例えば、流体調整装置)に向け直すことで、このような部品の加温及び冷却を行うこともできる。さらに、弁を用いて、場合によってはシステム内で流体を再循環させることで、密閉系又は部分密閉系を形成することができる。
【0032】
温度センサ、湿度センサ、電流センサ、乗員検出センサ、重量センサ等、様々なセンサをシステムに含むことができる。センサはシステム全体に配置してもよい。例えば、温度センサは、スペーサ内、スペーサ間、スペーサと付加的なオプションの層(例えば、網状フォーム又はシートカバー)との間、流体調整装置付近、ファン付近、及びそれらの組み合わせに配置することができる。
【0033】
1つ又は複数のコントローラを用いて、センサ又は用いられる制御装置からの入力を受け取り、ファン及び流体調整装置に命令を発し、且つ/又は他の方法でシステムの動作を調整することができる。
【0034】
以下で説明するインサート及びシステムの実施形態は、インサート及び/又はシステム内に通される温度調整された流体として、空気を利用する。しかしながら、他のガス及び/又は液体の流体もこれらの実施形態で利用することができることを理解されたい。
【0035】
図1に見られるように、インサート10の第1の実施形態は概して、シート部分12及び延長部14を含む。インサートは、第1の流量制御層16、第1のスペーサ18、第2の流量制御層20、第2のスペーサ22、及び第1の流体バリア24も含む。この場合、スペーサは、ポリマーストランド材料から成る。好ましい一実施形態では、これらの層は、少なくとも縁部が互いにシールされて、縁部がシールされた袋を形成する。
【0036】
第1の流量制御層16及び第1の流体バリア24はいずれも、少なくとも1つの穴26及び28をそれぞれ含む。穴は概して、インサートの延長部に位置付けられ、スペーサへのアクセスを可能にする。穴28は、第1の流体バリアではなく、第2のスペーサ層の側方に位置付けられてもよい。この態様では、穴は、第2の流量制御層及び第1の流体バリアの延長部によって画定される。別の態様では、穴は、第2の流量制御層20に位置付けられ得る。この場合、第2の流量制御層20の首部を第1のスペーサ18の首部から隔てるために、部分的な流体バリア30(仮想線で示す)が必要である。
【0037】
流量制御層は、複数の流通孔32を含む。流通孔は概して、インサートのシート部分に位置付けられる。各流量制御層の流通孔のパターンは、同じであっても異なっていてもよい。
【0038】
別の態様では、第1の流量制御層を、延長部に穴のある第2の流体バリアで置き換えてもよい。これにより、シート乗員に空気を吹き付けることもシート乗員から空気を引き出すこともないインサートが提供される。さらに別の態様では、第1の流量制御層を、シート部分の網状フォームと延長部の流体バリアとの組み合わせで置き換えてもよい。流体バリアは穴を含む。
【0039】
第1の実施形態のインサートを含むシステムでは、ファンは、インサートの穴の1つに取り付けられる。代替的に、導管がファンをインサートの2つの穴のいずれかに接続する。このような取り付けは、取り付け部品によって容易にすることができる。ファンは、インサートから空気を吸い出すか又はインサートに空気を押し込むように構成することができる。
【0040】
インサートの第1の実施形態を含むシステムはまた、TEDの形態の流体調整装置を含むことが好ましい。TEDは、インサート及びファンから遠隔に位置付けてもよいが、必ずしもそうとは限らない。実際には、TEDは、インサートに隣接して配置されるか、又は取り付け部品を用いてインサートに取り付けられることが好ましいであろう。TEDは、空気流がTEDの放熱側及び冷却側の両方を通ることが1つのファンを用いて可能であるように配置されることが好ましい。さらに、TEDは、TEDの冷却側からの調整空気がスペーサに押し出されるか又はスペーサから吸い出されるように、ファンに対して配置することができる。導管を用いて、所望の空気流を得ることができる。
【0041】
好ましい一実施形態では、図2に概略的に示すように、インサート10は、2つの流量制御層16及び20を含み、ファン34は、TED38の冷却側36を越えてスペーサ18、22を通して空気を吸い出し、TEDの放熱側40を越えて同様に空気を吸い出す。この態様は、オプションの付加的なスペーサ42を用いて示されている。空気流は、図2において矢印で概略的に示されている。代替例では、ファンは、放熱側を越えて空気を押し出すことができる。好ましい一実施形態では、TEDの冷却側は、ファンによって引き出される空気を冷却しており、TEDの放熱側からは、ファンによって熱が排出されている。温度調整された空気は、スペーサを通して送られて、シート乗員に清涼感を与える。
【0042】
一態様では、第2の流量制御層は、周囲空気(すなわち、流体調整装置によって調整されていない空気)をシート乗員付近からファンによって引き出させて、さらなる通気及び冷却を提供する。このような構成は図2に示されており、図2の矢印は、空気がインサートの上部から引き込まれることを示す。別の態様では、第2の流体バリアが第1の流量制御層の代わりに用いられ、シート乗員付近から外気が引き出されるのを防止する。
【0043】
図3に見られるように、第2の実施形態に係るインサート100は、第1の実施形態と同様であるが、第1のスペーサ102が溝付き材料104を含む。溝付き材料を用いることで、第1の流量制御層106(仮想線で示す)の使用がオプションになる。インサートは、第2のスペーサ108及び流体バリア110も含む。溝付き材料104は、複数の山112及び谷114を含み、山は複数の流通孔116を含む。図3に示す態様では、溝付き材料は第1のスペーサの一部のみを構成し、別のスペーサ材料(例えば、ポリマーストランド材料)が第1のスペーサの残りの部分を構成する。代替的に、第1のスペーサは、完全に溝付き材料から構成されてもよい。ほぼ平行な山及び谷が好ましいが、山及び谷の他の構成が適している場合もある。通常、第1のスペーサの全体が溝付き材料である場合、谷はシート部分から延長部の穴領域まで延びる。この態様では、流通孔は、インサートのシート部分の山にのみ位置付けることができる。この実施形態では、スペーサのシート部分を通る空気流を促すために、スペーサの延長部間に部分流体バリア118が必要であり得る。
【0044】
インサートの第1の実施形態を含むシステムのように、第2の実施形態のインサートを含むシステムは、同様にファン及びTEDを利用する。上述のように、ファン及びTEDは、システム内で様々な方法で組み合わせることができる。
【0045】
システムの好ましい一実施形態では、図4に概略的に示すように、ファン120が、TED124の冷却側122を越えて、第2のスペーサ108及び流通孔116を通して谷114を下り、ファンに向かってTEDの放熱側126を越えて、空気を引き出すように配置され、この空気流は矢印で示される。このとき、流体バリアを用いて、ファンが周囲空気をシート乗員付近から引き出すのを防止することができる。この態様は、オプションの付加的なスペーサ128を用いて示されている。
【0046】
図5に見られるように、第3の実施形態に係るインサート200は、概して、シート部分202及び延長部204を含む。インサートは、流量制御層206、スペーサ208、及び流体バリア210も含む。流量制御層206の代わりに第2の流体バリアを用いてもよい。
【0047】
スペーサ208は、内部に切欠部214のある本体部212を含む。インレー216が、切欠部214内に収まるようになっている。代替的な一実施形態では、本体部及びインレーの相対位置は、インレーが少なくとも部分的に本体部を囲むように逆になっている。この実施形態は、導管がスペーサ材料から成る第4の実施形態(下記)と同様である。
【0048】
本体部及びインレーは、互いに同じ材料であっても異なる材料であってもよく、これらの材料は通常、上述のスペーサ材料から選択される。
【0049】
インレー216が本体部212と組み立てられると(すなわち、本体部に嵌め込まれると)、スペーサの本体部212とインレー216との間の流体連通を防止する流体密封境界を少なくとも部分的に形成する、流体バリア218ができる。
【0050】
通常、組み立てられると、インレーはインサートの延長部及びシート部分の両方に跨る。図5では分岐していないように示されているが、インレーは、Y字形等の様々な分岐形状を取ることができ、Y字形の場合、Yの腕部がシート部分にあたり、尾部分がインサートの延長部にあたる。「分岐がさらに分岐した(branches-on-branches)」構成が適している場合もある。概して、インレーは1つだけであることが好ましいが、複数のインレーが適している場合がある。
【0051】
流体バリアは、インレーの上又はインレーの周りで本体部に位置付けられてもよく、又は本体部及びインレーの両方と別個の部品であってもよい。好ましい一態様では、流体バリアはインレーに含まれる。
【0052】
インレーは、インレーの内部との流体連通を提供する穴220を流体バリアに含む。穴は通常、インレーのうちインサートの首部にある領域に位置付けられる。インレーはまた、インレーのうちインサートのシート部分にある領域に複数の流通孔222を含むことが好ましい。これらの流通孔は、インサートの平面と平行に位置合わせしてもよく、インサートの平面に対して垂直に位置合わせしてもよく、又は他の何らかの角度で位置合わせしてもよい。流量制御シートは、本体部と位置合わせされて本体部の内部との流体連通を提供する穴223を含む。
【0053】
一態様では、インレーは、ストランド材料、溝付き材料、又は網状フォーム材料から成っていてもよい。溝付き材料の場合、インレーの上又は周りで流体バリアを利用する必要はない場合がある。
【0054】
インサートの第1の実施形態及び第2の実施形態を含むシステムのように、第3の実施形態のインサートを含むシステムは、同様にファン及びTEDを利用する。上述のように、ファン及びTEDは、システム内で様々な方法で組み合わせることができる。
【0055】
システムの好ましい一実施形態では、図6に概略的に示すように、インサート200はファン224を含み、ファン224は、TED228の冷却側226を越えてインレー216を通して本体部212又はオプションの付加的なスペーサ230に、流通孔を介して空気を吸い出す。ファンはまた、TEDの放熱側232を越えて空気を押し出す。代替例では、ファンは、放熱側を越えて空気を吸い出してもよい。好ましい一実施形態では、TEDの冷却側は、ファンによって引き出される空気を冷却しており、TEDの放熱側からは、ファンによって熱が排出されている。温度調整された空気は、スペーサのインレー及び本体部を通して送られて、シート乗員に冷却感を与える。
【0056】
図7に見られるように、第4の実施形態に係るインサート300は、概して、シート部分302及び延長部304を含む。インサートは、流量制御層306、スペーサ308、流体バリア310、及び少なくとも1つの導管312も含む。好ましくは、複数の導管が用いられる。一実施形態では、流量制御層306の代わりに第2の流体バリアを用いてもよい。
【0057】
導管は、インサートのシート部分に対する流体連通を提供する。好ましくは、導管は概して、インサートのシート部分又は延長部の縁部に沿って位置付けられる。代替例では、導管はインサートのシート部分内に延びることができる。
【0058】
導管は、導管のシート部分に位置付けられる1つ又は複数の流通孔314を備える。流通孔は、1つ又は複数の方向を有することができ、すなわち、インサートの場所に対してほぼ垂直、インサートの平面とほぼ同じ平面上、又はこれらの間の任意の角度とすることができる。導管は、インサート内に保持されてもよく(インサートが密封された袋状のインサートであるか否かに関係なく)、インサートの外部に取り付けられてもよく、又はインサートの一部として形成されてもよい。好ましい一実施形態では、導管は、流量制御層の下でインサートの平面上に位置付けられる。図8に見られるように、導管は、流量制御層の上に位置付けられてもよい。
【0059】
導管は、スペーサの材料とは異なるフレキシブルチューブ材料でできていることが好ましいが、実際には必ずしもそうとは限らない。適したフレキシブルチューブ材料としては、約1/64インチ〜約1インチ以上の範囲の肉厚を有するチューブが挙げられる。適したチューブの材料は、低い熱容量を与えるように選択することができ、これは、チューブが優れた断熱性を有さないことを意味する。導管は、流体密封バリアによってインサートから区切られるスペーサ材料から成ることもできる。導管は一般にはインサートの一部であるが、シートの他の部品と交換するために(例えば、フロント又はサイドボルスタとして)用いてもよく、又はシートの他の部品(例えば、付加的なスペーサ層)の強度を増大させるために用いてもよい。
【0060】
インサートの他の実施形態を含むシステムのように、第4の実施形態のインサートを含むシステムは、同様にファン及びTEDを利用する。上述のように、ファン及びTEDは、システム内で様々な方法で組み合わせることができる。ファン用の穴316は概して、インサートの延長部に位置付けられるが、TEDはインサートの延長部と同じ場所に位置付けられることが好ましく、より好ましくは延長部に取り付けられる。
【0061】
システムの好ましい一実施形態では、図8に概略的に示すように、インサート300はファン318を含み、ファン318は、導管312の流通孔からスペーサ308及び/又は付加的なスペーサ320を通して空気を吸い出す。ファンは、TED324の冷却側322を越えて、マニホルドを通して導管の流通孔に空気を吸い出す。ファンはまた、TEDの放熱側326を越えて空気を押し出す。代替例では、第2のファンを用いて、TEDの冷却側を越えてマニホルドを通して導管の流通孔に空気を押し出す。
【0062】
好ましい一実施形態では、TEDの冷却側は、ファンによって引き出される空気を冷却しており、TEDの放熱側からは、ファンによって熱が排出されている。温度調整された空気は、スペーサを通して送られて、シート乗員に清涼感を与える。
【0063】
導管及び通流孔の場所に応じて、温度調整された空気は、導管からスペーサに直接流れることができる。代替的に、空気は、導管とスペーサとの間の別の材料を通って流れることができる。このように、温度調整された空気は、インサートの表面を越えて吸い出される(及び/又は押し出される)。例えば、空気は、付加的なスペーサ(例えば、網状フォーム)又はカバー(例えば、穿孔された革)等、上述のオプションの層のいずれかを通って、又はその上を流れることができる。
【0064】
好ましい一実施形態では、温度調整された空気が付加的なスペーサに流れ込み、周囲空気がシートカバーを通ってこの付加的なスペーサに流れ込み、そこで空気が混ざり合う。混合空気は、ファンによって吸い出されることでインサートのスペーサ材料に流れ込む。別の好ましい実施形態では、混合空気は流れない。これは、システムで用いるファン(複数可)のサイズ及び電力を選択することによって達成することができる。ファンが1つのシステムでは、ファンは付加的なスペーサにおいて負圧を生成するはずである。ファンが2つ以上あるシステムでは、マニホルドを通して導管の流通孔に空気を押し出すいずれかのファンが、インサートを通して空気を吸い出すファンによって生成される負圧よりも低い正圧を生成するはずである。
【0065】
オプションの一実施形態では、弁(図示せず)を利用して、温度調整された空気がスペーサを通って流れる前にその空気の向きを変える。インサートが所望の温度に達しているため、このように向きを変えられた空気は外気に逃がすことができる。このように向きを変えられた空気をTEDの放熱側に逸らすことで、無駄なエネルギーを散逸させるのを助けることもできる。
【0066】
別のオプションの実施形態では、弁を利用して、温度調整された空気がスペーサを通って流れた後で、その空気を再循環させる。このような再循環空気は、周囲空気の温度よりも所望の温度に近い温度を有し得る。例えば、TEDが冷却モードである場合、再循環空気は周囲空気よりも低温であり得る。したがって、周囲空気を冷却するよりも、再循環空気を所望の温度に冷却する方が効率的であろう。
【0067】
別の実施形態では、本発明は、シート乗員を支持する穿孔された着座面と、着座面の下に位置付けられて周囲空気を冷却流体と組み合わせる混合領域とを有する、通気シートを備える。ファンを用いて、周囲空気を混合領域に送ってもよい。ファンは、冷却流体を混合領域に送るか又は混合された周囲空気及び冷却流体を混合領域から除去する機能も果たすことができる。上述のように、流体調整装置を用いて流体の温度を変更する(すなわち、低下させる)ことができる。
【0068】
一実施形態では、制御システムを用いて、一定の温度に達したとき又は一定の時間後にTEDに供給される電力を自動的に変えることが意図される。あまり好ましくはないが、システムが感知した温度及び一定の時間の両方の組み合わせに基づいて電力を自動的に変えることも可能である。これに関して、本発明の一システムは、TEDに送られる電力の量又はファンの動作速度等のうちの1つのみを自動的に調節して、所望の冷却温度を得ることが好ましい。しかしながら、一実施形態は、TEDに送られる電力の量及びファンの動作速度の両方を自動的に調節することも意図する。本発明のシステムの動作は、乗員検出センサがある場合でもそこからのいかなる信号とも無関係に行われることが好ましい。しかしながら、ユーザの存在を検出するとシステムを自動的に動作させるために、制御システムと通信する乗員検出センサを用いることが可能である。
【0069】
本発明は、加熱、冷却、通気、又はそれらの組み合わせを提供する方法にも関する。一方法は、TEDの冷却側を越えて、1つ又は複数のスペーサを通して、TEDの放熱側を越えて空気を吸い出すことを含む。別の方法は、TEDの冷却側を越えて、インレー及びスペーサの本体部を通して、TEDの放熱側を越えて空気を吸い出すことを含む。さらに別の方法は、TEDの冷却側を越えて、導管及びスペーサを通して、TEDの放熱側を越えて空気を吸い出すことを含む。これらの方法の全てにおいて、TEDの放熱側を越えて空気を押し出してもよい。さらに、全体的に空気を吸い出す代わりに、空気の押し出しを利用してもよい。上記の方法では、TEDに加えて他の流体調整装置を用いてもよく、空気以外の流体をファンによって移動させてもよいことが認識されるであろう。
【0070】
別の実施形態では、方法は、輸送車両シートの着座面を通してシートの混合領域に周囲空気を引き込むことを含む。混合区域において、周囲空気は、熱電素子によって冷却された空気と混合され、混合領域に供給される。一実施形態では、混合領域の圧力は周囲圧力よりも低いため、得られる混合気の実質的に全ては着座面を通過しない。別の実施形態では、冷却空気は混合領域に吹き込まれるが、得られる混合気の実質的に全ては着座面を通過しない。いずれの実施形態でも、得られる混合気は混合領域から除去される。一実施形態では、混合領域はインサート内に位置付けられる。別の実施形態では、混合領域はインサートと着座面との間に配置される。
【0071】
好ましい一実施形態では、本発明は、約100℃を上回る温度からの冷却を提供し、より好ましくは約80℃からの冷却を提供する。また、本発明は、約37℃未満への、より好ましくは約27℃未満への、最も好ましくは約25℃未満への冷却を提供する。これらの温度は、インサート内の空気温度、システム内の任意の場所の空気温度、又はシート表面若しくはその付近の温度を指し得る。好ましい一実施形態では、本発明は、約5℃/分を上回る速度、約10℃/分を上回る速度、約15℃/分を上回る速度、約20℃/分を上回る速度、約25℃/分を上回る速度、及び約35℃/分を上回る速度での冷却を提供する。
【0072】
好ましくは、インサート及びシステムは、輸送車両で用いられるシート(例えば、輸送車両シート)に含むことができるが、インサート及びシステムは、デスクチェア、ラウンジチェア等、様々な他のシートで用いてもよい。
【0073】
概して、本発明によるインサートを形成するために、上述のようなインサートの種々の層を様々な順序で、且つ様々なプロトコル及び技法に従って組み合わせてもよいことが意図される。したがって、種々の層及び副次層を組み合わせる順序及び組み合わせる技法は、そのような順序又は技法が特許請求の範囲に具体的に記載されていない限り、本発明をいかなる方法でも限定すべきではない。さらに、層はより多くてもより少なくてもよく、各層が含む副次層はより多くてもより少なくてもよいことも意図される。
【0074】
概して、インサートの層を組み立てるにはラミネーションプロセスが好ましい。2003年5月9日に出願された米国特許出願第10/434,890号(参照により本明細書に援用される)は、本発明によるインサートの層を組み立てるのに適した1つの技法の説明を含んでいる。
【0075】
インサート又はシステムをシートに組み立てるために、インサートは、カバー(例えば、穿孔された革カバー)等のシートの一部に、又はシートのシートクッション若しくは背もたれクッション(例えば、フォーム)に固定される(例えば、縫い付け、接着、又は他の方法により取り付けられる)ことが好ましい。一実施形態では、インサートがまずシートカバーに固定され、次にシートカバーがシートに固定される。例えば、インサートの縁部がシートカバーに接合されてもよく、又はインサートの縁部に沿った場所以外の場所がシートカバーに接合されてもよい。
【0076】
別の実施形態では、シートカバーは、インサートを収めるポケットを含むように構成することができる。代替的に、面ファスナ(hook and loop fasteners)を利用して、インサートをシートの各部分(例えば、カバー、フレーム、シートクッション、又は背もたれクッション)に取り付けてもよい。縫い付け、接着剤、スナップ嵌めファスナ、又は合わせピン等、他の技法を用いて、インサートをシートに組み立ててもよい。さらに、インサートは、シートフレーム等、シートの他の部品に取り付けることができる。
【0077】
システムの部品のほぼ全てを本発明のシート外ではなくシート内にまとめることによって、製造及び組み立ての簡便性等、種々の利点を実現することが可能である。例えば、全ての機能部品を遠隔の組み立て現場で組み立てた後で、シートを自動車組み立てラインに輸送し、そこでシートが単にボディインホワイトに搭載されて、車両の電気系統に接続されることが可能である。これとは反対に、他のシステムは、冷却空気をシートに供給することをシートの外部に位置付けられる冷却装置に依存するであろう。このようなシステムは、本発明の特定の実施形態の範囲内にあるが、あまり好ましくはない。
【0078】
複数の部品又はステップの機能又は構造を組み合わせて1つの部品又はステップにしてもよく、又は1ステップ又は1部品の機能又は構造を複数のステップ又は部品に分けてもよいことが、さらに理解されるであろう。本発明は、これらの組み合わせの全てを意図する。別段の指示がない限り、本明細書に示される種々の構造の寸法及び幾何学的形状は、本発明を限定する意図はなく、他の寸法又は幾何学的形状が可能である。複数の構造部品又はステップは、1つの統合された構造又はステップで提供することができる。代替的に、1つの統合された構造又はステップを、別個の複数の部品又はステップに分けてもよい。さらに、本発明の特徴は、例示された実施形態の1つのみに関して説明されていたかもしれないが、このような特徴は、任意の所与の用途で他の実施形態の1つ又は複数の他の特徴と組み合わせてもよい。上記のことから、本明細書中の特有の構造の作製又はその動作もまた本発明による方法を構成することも理解されるであろう。
【0079】
本明細書に示す説明及び例示は、本発明、その原理、及びその実際の用途を当業者に教示することを意図している。当業者は、本発明を特定の用途の要件に最適であり得るように多くの形態で改造及び適用することができる。したがって、記載された本発明の具体的な実施形態は、本発明を網羅又は限定することを意図しない。したがって、本発明の範囲は、上記の説明を基準として判断されるのではなく、当該特許請求の範囲がカバーする等価物の全範囲とともに添付の特許請求の範囲を基準として判断されるべきである。特許出願及び出願公開を含む全ての文献及び引例の開示は、あらゆる目的で参照により援用される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】インサートの第1の実施形態の分解図を示す。
【図2】インサートの第1の実施形態を含むシステムの概略図を示す。
【図3】インサートの第2の実施形態の分解図を示す。
【図4】インサートの第2の実施形態を含むシステムの概略図を示す。
【図5】インサートの第3の実施形態の分解図を示す。
【図6】インサートの第3の実施形態を含むシステムの概略図を示す。
【図7】インサートの第4の実施形態の分解図を示す。
【図8】インサートの第4の実施形態を含むシステムの概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを組み立てる方法であって、
シートクッション又は背もたれクッションとシートカバーとの間にインサートを位置付けるステップ、
前記インサートにファンを流体的に接続するステップ、及び
前記インサートに流体調整装置を流体的に接続するステップ
を含み、前記ファン及び前記流体調整装置は、前記インサートを介して互いに流体的に接続される、シートを組み立てる方法。
【請求項2】
前記インサートと前記シートカバーとの間に付加的なスペーサを位置付けるステップをさらに含む、請求項1に記載のシートを組み立てる方法。
【請求項3】
前記インサートを位置付けるステップは、前記インサートを前記背もたれクッションの前記シートクッションに取り付けることを含む、請求項1に記載のシートを組み立てる方法。
【請求項4】
前記インサートを位置付けるステップは、前記インサートを前記シートカバーに取り付けることを含む、請求項1に記載のシートを組み立てる方法。
【請求項5】
前記ファンを流体的に接続するステップは、前記ファンを前記インサートの取り付け部品に取り付けることを含む、請求項1に記載のシートを組み立てる方法。
【請求項6】
前記流体調整装置を流体的に接続するステップは、熱電素子(TED)を前記インサートに流体的に接続することを含む、請求項1に記載のシートを組み立てる方法。
【請求項7】
前記流体調整装置を流体的に接続するステップは、前記TEDを前記インサートの取り付け部品に取り付けることを含む、請求項6に記載のシートを組み立てる方法。
【請求項8】
第2のファンを前記TEDに流体的に接続するステップをさらに含む、請求項7に記載のシートを組み立てる方法。
【請求項9】
前記位置付けるステップは、前記ファンを接続するステップ又は前記流体調整装置を接続するステップの前に行われる、請求項1に記載のシートを組み立てる方法。
【請求項10】
インサートを作製する方法であって、
少なくとも流量制御層、スペーサ、及び流体バリア層を備えるとともに、第2のスペーサ、第2の流量制御層、インレーを有するスペーサ、及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを備える複数の層を互いにラミネートするステップ
を含む、請求項1に記載のインサートを作製する方法。
【請求項11】
前記ラミネートするステップは、1つ又は複数の接着剤を前記複数の層に塗布するステップをさらに含む、請求項11に記載のインサートを作製する方法。
【請求項12】
シートを通気する方法であって、
インサートに流体的に接続される熱電素子(TED)を設けるステップ、
該TEDで空気を温度調整するステップ、及び
前記TEDによって調整された空気を前記インサートを通して吸い出すステップ
を含む、シートを通気する方法。
【請求項13】
前記インサートを通して周囲空気を吸い出すステップをさらに含む、請求項12に記載のシートを通気する方法。
【請求項14】
前記吸い出すステップは、シートカバーを通して周囲空気を吸い出すステップを含まない、請求項12に記載のシートを通気する方法。
【請求項15】
前記シートカバーは、非穿孔材料である、請求項14に記載のシートを通気する方法。
【請求項16】
前記吸い出すステップは、前記TEDによって調整された空気及び周囲空気を付加的なスペーサにおいて混合するステップを含む、請求項12に記載のシートを通気する方法。
【請求項17】
前記TEDによって調整された空気を導管を通して吸い出すステップをさらに含む、請求項12に記載のシートを通気する方法。
【請求項18】
前記TEDによって調整された空気をインレーを通して吸い出すステップをさらに含む、請求項12に記載のシートを通気する方法。
【請求項19】
前記TEDによって調整された空気を少なくとも2つのスペーサを備えるインサートを通して吸い出すステップをさらに含む、請求項12に記載のシートを通気する方法。
【請求項20】
前記インサートを通して空気を押し出すステップをさらに含む、請求項12に記載のシートを通気する方法。
【請求項21】
前記吸い出すステップは、第1のファンを利用するステップを含み、前記押し出すステップは、TEDの冷却側を越えて空気を押し出す第2のファンを利用するステップを含む、請求項20に記載のシートを通気する方法。
【請求項22】
弁を用いて空気を逃がすステップ、または、弁を用いて空気を再循環させるステップをさらに含む、請求項12に記載のシートを通気する方法。
【請求項23】
周囲空気、温度調整された空気、循環空気、前記付加的なスペーサ層、及びそれらの組み合わせの温度を感知するステップ、前記ファン、前記TED、及びそれらの組み合わせの動作を時間又は温度に基づいて制御するステップ、空気を除湿するステップ、前記TEDで空気を冷却するステップ、前記TEDで空気を加熱するステップ、及びそれらの組み合わせの1つ又は複数をさらに含む、請求項12に記載のシートを通気する方法。
【請求項24】
輸送車両のシートを冷却する方法であって、
輸送車両シートの表面を通して前記シートの混合領域に周囲空気を吸引するステップ、
前記吸引された周囲空気を前記混合領域に供給された冷却流体と混合するステップ、及び
得られた混合気を前記混合領域から除去するステップ
を含む、輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項25】
熱電素子を用いて冷却流体を供給するステップをさらに含む、請求項24に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項26】
前記得られた混合気の実質的に全てが前記着座面を通過しないように、前記混合領域の圧力を周囲圧力未満に維持するステップをさらに含む、請求項25に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項27】
前記冷却流体は、前記得られた混合気の実質的に全てが前記着座面を通過しないようにしつつ、前記混合領域に冷却空気を吹き込むステップによって供給される、請求項25に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項28】
前記輸送車両は自動車であり、前記冷却流体は空気である、請求項24に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項29】
熱交換器に空気を通過させることによって空気を冷却するステップ、および、前記空気を前記混合領域に送出するステップをさらに含む、請求項28に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項30】
前記熱交換器は、熱電素子を含み、前記空気は、ファンによって送出される、請求項29に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項31】
前記混合領域の少なくとも一部は、インサート内に配置される、請求項24に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項32】
前記混合領域の少なくとも一部は、インサートと前記着座面との間に配置される、請求項24に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項33】
前記インサートのうち周囲空気が引き出される複数の流通孔を有する空間に、前記混合領域を画定することをさらに含む、請求項32に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項34】
前記混合領域は、インサート内に封入される、請求項24に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項35】
前記インサートのうち周囲空気が引き出される複数の流通孔を有する空間に、前記混合領域を画定することをさらに含む、請求項34に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項36】
前記インサートは、前記ファンと流体連通するように取り付けられる、請求項35に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項37】
前記ファン及び前記熱電素子は、前記シートの内部に固定される、請求項36に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項38】
前記シートは、前記インサートの上に配置されて着座面を画定するシートカバーを備える、請求項36に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項39】
前記シートカバーは、合成材料、天然材料、又はそれらの組み合わせから選択される材料でできており、前記カバーは、織布材料、不織布材料、穿孔材料、不透過性材料、又はそれらの任意の組み合わせから選択され、前記シートは、少なくとも1つのフォームシート又はブラケットクッションをさらに含む、請求項38に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項40】
前記冷却流体は、前記得られた混合気の実質的に全てが前記着座面を通過しないようにしつつ、前記混合領域に冷却空気を吹き込むことによって供給される、請求項39に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項41】
前記得られた混合気の実質的に全てが前記着座面を通過しないように、前記混合領域の圧力を周囲圧力未満に維持することをさらに含む、請求項39に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項42】
前記得られた混合気の少なくとも一部を周囲空気に排出するステップをさらに含む、請求項39に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項43】
前記除去された得られた混合気の少なくとも一部を前記混合領域に戻して再循環させるステップをさらに含む、請求項40に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項44】
前記得られた混合気の実質的に全てが前記着座面を通過しないように、前記混合領域の圧力を周囲圧力未満に維持するステップをさらに含む、請求項40に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項45】
前記冷却流体は、前記得られた混合気の実質的に全てが前記着座面を通過しないようにしつつ、前記混合領域に冷却空気を吹き込むことによって供給される、請求項40に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項46】
前記着座面は、合成材料、天然材料、又はそれらの組み合わせから選択される材料でできているカバーを含み、該カバーは、織布材料、不織布材料、穿孔材料、不透過性材料、又はそれらの任意の組み合わせから選択され、前記シートは、フォームシートクッションをさらに含む、請求項24に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項47】
前記得られた混合気の少なくとも一部を周囲空気に排出するステップをさらに含む、請求項24に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項48】
前記除去された得られた混合気の少なくとも一部を前記混合領域に戻して再循環させるステップをさらに含む、請求項47に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項49】
前記得られた混合気の実質的に全ての混合気が前記着座面を通過しないように、前記混合領域の圧力を周囲圧力未満に維持することをさらに含む、請求項24に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。
【請求項50】
前記冷却流体は、前記得られた混合気の実質的に全てが前記着座面を通過しないようにしつつ、前記混合領域に冷却空気を吹き込むことによって供給される、請求項24に記載の輸送車両のシートを冷却する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−506523(P2007−506523A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528229(P2006−528229)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/031418
【国際公開番号】WO2005/073021
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(504135893)べー.エー.テー. オートモーティブ システムズ アーゲー (10)
【Fターム(参考)】