説明

シートを開閉自在に植栽構造体へ被着する方法とシート開閉自在な植栽ハウス

【課題】ハウスに被着するシートを、簡単にハウスの構造体に被着でき、且つそのシートを開閉できるようにし、さらに、これに伴う材料費を低く抑えることができるシートを開閉自在に植栽構造体へ被着する方法を提供する。
【解決手段】シート1を所望の形状に裁断し(a)、そのシート1の所望の部位を折り返して折り返し部11を形成し(b)、その折り返し部11の所望の対向面を両面テープ3によって接着固定(c)し、さらに、折り返し部11とシート1面に片面テープ4を貼り付け(d)、そして、折り返し部11に通孔2を開けると共にその通孔2にリング5aを係合し、植栽構造体に被着するシート1を完成させる。そして、そのシート1に設けられたリング5aを植栽構造体すなわちハウスの水平支持部材に遊嵌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを開閉自在に植栽構造体へ被着する方法に関し、特にそのシートをカーテンの如く開閉できるようにした被着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、作物を保護するために設置される構造体としては、構造体の上方や側方を透明ビニールやメッシュ等の保護部材で被覆した所謂ビニールハウスが多く用いられている。また、これも大規模なものから数メートル四方の極めて小型のものまで様々な形態のものがあり、生産者によって所望のものが用いられている。
【0003】
その小型のハウスにおいては、アーチ状の支柱が作物を中央にして且つ適当な間隔を空けて複数立設され、且つその支柱間には棒状の支持部材が水平方向に架設されてハウスの強度が確保されている。
そして、透明ビニールやメッシュ等の保護部材が支柱と支持部材の上に被せられ、また、そのシートは風によって飛ばされないように、紐等によって支柱と支持部材に強固に固定されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、強風が吹いた際は、強固に固定されている保護部材を素早く取り外すことが困難なので、仕方なく強風にさらしているのである。このため、多くの小型ハウスでは保護部材すなわちビニールシートやメッシュシートが強風を受け、ハウスが破損したりまた破壊されてしまうのである。
その後、ハウスを修理また再建して作物の生産を続けたり、あるいは、経費の増大を考慮して生産を中止したりまた他の作物に切り替えている。
【0005】
勿論、ハウスの破損や破壊の防止には大型ハウスのように保護部材(ビニールシートやメッシュシート等)を開閉できるようにすればよいのであるが、小型ハウスを用いる生産者の多くは小規模農家であることから容易に設備投資をすることができないのが現状である。
小規模農家の収益は天候に左右されやすく、収益の向上が見込まれる作物(果物)が在ると知りながらも、安易にその作物(果物)の生産に踏み切れないのである。
【0006】
従って、本発明は上述した問題点に鑑みてなされたもので、保護部材であるビニールシートやメッシュシート等のシート部材を、簡単にハウスの構造体に被着でき、且つそのシートを開閉できるようにし、さらに、これに伴う材料費を低く抑えることができるシートを開閉自在に植栽構造体へ被着する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨とするところは、シート部材の所定の部位をある程度の長さを以って少なくとも1回以上折り返し、その折り返しによって形成された折り返し部にそれを貫通する通孔を設け、その通孔に環状部材を係合し、その環状部材の開口を植栽構造体に有する水平方向に設けられている水平支持部材に遊嵌することを特徴とするシートを開閉自在に植栽構造体へ被着する方法である。
【0008】
本発明のシートの植栽構造体への被着方法を詳しく説明すると、植栽構造体とは、作物の保護あるいは作物に適した温度環境等を確保するために設けられる構造物であり、その植栽構造体にシート部材を披着する方法で、特に小型の植栽構造体への応用が適している。
植栽構造体の形態も様々であるが、少なくとも地面に立設された複数の支柱(アーチ状や十字架状等)とそれらの支柱を支持するために水平方向に取り付けられた支持部材(水平支持部材)を有しており、支柱と支持部材が固定されて植栽構造体の強度が確保されている。
【0009】
シート部材とは、少なくとも人の手によって折り畳むことができる素材あるいは厚みからなる部材であり、所望により防水性または通気性のあるものを選択すればよい。具体的には、透明や半透明のビニール樹脂からなるシートや化学繊維から織られたメッシュシート(網)等である。
また、シート部材は、植栽構造体の形態に合わせて適当な大きさや形状に整形して使用すればよい。勿論、シート部材には本発明に係わる環状部材の他、植栽に必要となる部材あるいはシート部材の固定や取り扱いに必要となる部材等が設けられていてもよい。
【0010】
折り返すシート部材の所定の部位は、植栽構造体の支柱また支持部材に係合する環状部材をどこに設置するかによってその部位は変化するものである。すなわち、環状部材をシート部材のどこに設置するかによってシート部材の折り返す部位を決定すればよい。
また、その折り返す長さは、シート一辺と同じ長さを折り返すようにするのがよい。勿論、シート一辺と同じ長さより短くてもよい。
【0011】
折り返しとは、同一側面の所望の部位を、折曲線を境にして対向するように折り合わせることである。その折り返しは、1回または2回あるいは3回以上折り返してもよく、シートの強度等を考慮して決定すればよい。
その折り返しによって同一面が合わされた部分が折り返し部である。また、折り返し部の少なくとも通孔が形成される部位の折り合せ部分の対向面を両面テープや接着材等の固定手段によって貼り合わせてもよい。さらに、折り返し部の外面上または折り返し部を越えるシート面にかけて片面テープを貼り付けてもよい。
【0012】
そして、折り返し部の所定の部位にそれを貫通する通孔を開けるのであるが、その通孔は、少なくともそこに係合する環状部材のアーム(環状部)となる部位が通過できる径としなければならない。また、環状部材の開口は、少なくとも植栽構造体の支柱および/または水平支持部材に遊嵌できる径(開口径)とする。
環状部材とは、シート部材を植栽構造体の支柱また支持部材に装着するためのものである。その環状部材は、ナイロン等の樹脂素材からなる紐状体を任意の方法で環状に形成するようにしたり、あるいは、可塑性を有する例えば金属/合金等からなる素材を環状に形成するようにしてもよい。
また、リング体(環状部)の一部が任意の部材や方法によって開閉自在に構成されている市販のものを用いてもよいが、使用者が自分自身で可塑性を有する針状部材を環状に整形してもよい。そして、環状部材の形態としては、1本の針状部材の両端面を接触させるように曲げ整形して輪(リング)を形成するものであっても、1本の針状部材をコイル状に曲整形してコイルの開口側から見た時に見かけ上の輪(リング)を形成するものであってもよい。
【0013】
上述したように、使用者が自分自身で針状部材を環状に整形する方法の具体的一例としては、可塑性を有する針状部材を所定の径を有する棒状体にコイル状に巻き付けて整形し、その整形した針状部材を少なくとも巻回数が2巻以上となる部位で順次切断して製造してもよい。
棒状体は、針状部材の巻き付けの際の巻回力すなわち針状部材がコイル状に整形される際に棒状体に加わる力であり、その力に耐え得る強度を持った素材からなるものを用いればよい。棒状体は、針状部材の硬さによって木材や金属また樹脂等の素材からなるものを選定して用いればよい。
【0014】
コイル状に整形した針状部材の切断は、棒状体から取り外した状態でまた巻回した状態のまま切断してもよい。棒状態に巻回した状態で切断する場合、棒状体の素材は切断具の刃によって傷付かない素材からなるものを使用するのがよい。
そして、使用者が自分自身で針状部材を環状に整形するのに適した針状部材の素材はアルミニウムがよい。勿論、他の素材でもよく、その場合は、人手によって巻き付けできる素材がよい。その素材も、素材が有する特徴によって人手で棒状体に巻回できるもの、あるいは、何らかの金属素材(例えば銅)を焼き入れ等の処理によって人手でも棒状体に巻き付けできるように処理したものでもよい。
【0015】
そして、本被着方法が応用されたシート部材と、そのシート部材を被着可能に形成された植栽構造体から植栽ハウスを構成してもよい。すなわち、所望のシート部材の所定の部が少なくとも1回以上折り返され、その折り返し部に穿孔された通孔に所定の環状部材が嵌着されたシート部材と、そのシート部材の少なくとも環状部材が遊嵌できる水平方向に設けられた水平支持部材を有する任意の形状の構造体から構成されているシート開閉自在な植栽ハウスである。
シート部材を被着するための植栽構造体の具体的な例としては、トンネル入口のようなアーチ形状の複数の支柱と、その支柱の水平方向に取り付けられた水平支持部材から構成してもよい。勿論、植栽構造体は他の形態でもよく、例えば、十字架状の支柱と、その十字架の先端に水平方向に取り付けられた水平支持部材から構成してもよい。
【0016】
従って、本発明のシートを開閉自在に植栽構造体へ被着する方法は以上のようになっているので、シート部材を植栽構造体の被装着部位の形態に合わせて裁断し、そして、環状部材を設置する位置のシート部材を少なくとも1回以上折り返し、その折り返しによって形成された折り返し部にそれを貫通する通孔を設け、その通孔に環状部材を係合し、その環状部材の開口を植栽構造体に有する水平方向に取り付けられた水平支持部材に遊嵌させる。そして、折り返し部の強度をより向上させるには、その折り返し部の少なくとも通孔が形成される部位の折り合せ部分の対向面を両面テープで固定する。また、それ以上に強度を向上させるには、折り返し部の外面上と共にその折り返し部を越えるシート面にかけて粘着テープを貼る。
【0017】
そして、植栽構造体の水平支持部材に遊嵌状態で被着されたシート部材の環状部材は、その水平支持部材をガイド(レール)としてその部材上を動くことができる。従って、環状部材を移動させることによってシート部材も環状部材と共に動くので、シート部材の植栽構造体への被着状態を変化させることができる。すなわち、所望によってシート部材で植栽構造体を覆うことも、また、その覆いを解除することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシートを開閉自在に植栽構造体へ被着する方法とシート開閉自在な植栽ハウスは以上のようになっているので、所望のビニールシートやメッシュシートを植栽構造体すなわち作物のハウスの骨組みに簡単に被着でき、且つ強風の際は、被着したビニールシートやメッシュシートをハウスの所定の部位、例えばハウスの端部に畳み寄せることができるので、従来のように、ビニールシートやメッシュシートが強風を受けることによるハウスの破損また破壊が防止できる。また、本被着方法が応用される部材は、ホームセンター等の店舗で容易に且つ安価に入手できるので、小規模農家でも費用負担を気にすることなく容易に実施できる。
【0019】
そして、ビニールシートやメッシュシートが開閉できることで、ハウス内の温度管理や通風管理も容易にでき、また、収益が見込まれるものの雨水の付着によって著しく外観や品質が低下する作物(果物)等も容易に生産できる。
また、本発明による植栽ハウスは高齢の生産者でも容易に取り扱うことができる優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
そ本発明のシートを開閉自在に植栽構造体へ被着する方法とシート開閉自在な植栽ハウスを以下図面に従って説明すると、図1は、被着シートの形成方法を示す工程図であり、本図は、シート1にリング5aを取り付けるまでの工程を示すものである。また、図の折り返し部11でのシート1の折り返しは、図を見易くするため無理に隙間を開けて作図している。折り返し部11を設ける間隔は、植栽構造体の形態によって変化する。
1は透明ビニール等のシート、11は折り返し部、2は折り返し部11を貫通する通孔、3は両面テープ、4は片面テープ、5aはリング、5bはリング5aの自由端である。
先ず、シート1を所望の形状に裁断し(a)、そのシート1の所望の部位を折り返して折り返し部11を形成し(b)、その折り返し部11の所望の対向面を両面テープ3によって接着固定(c)し、さらに、折り返し部11とシート1面に片面テープ4を貼り付け(d)、そして、折り返し部11にそれを貫通する通孔2を開けると共にその通孔2にリング5aを係合し、植栽構造体に被着するシート1を完成させる。そのシート1に設けられたリング5aを植栽構造体すなわちハウスの水平方向に取り付けられている水平支持部材に遊嵌する。
【0021】
図2は、図1(c)図の折り返し部の拡大図であり、折り返し部11の所望の対向面が両面テープ3によって接着固定されて折り返し部11のバラケを防止している。
また、図の折り返し部11でのシート1の折り返しは、図を見易くするため無理に隙間を開けて作図している。
【0022】
図3は、折り返し部の他の形態を示す図であり、(a)図は、折り返し部11形成のためにシート1を3回折り返し、その折り返したシート1の対向する面の全てを両面テープ3によって接着固定した形態を示すものである。(b)図は、折り返し部11形成のためにシート1を1回折り返し、その折り返したシート1の対向する面を両面テープ3によって接着固定した形態を示すものである。
折り返し部11の強度が確保できるのであれば、(a)図または(b)図の何れであってもよい。さらには、シート1を3回以上折り返してもよい。
また、図の折り返し部11でのシート1の折り返しは、図を見易くするため無理に隙間を開けて作図している。
【0023】
図4は、図1(d)図の折り返し部の拡大図であり、折り返し部11とシート面が片面テープ4によって接着固定されて折り返し部11の強度が確保されている。
また、図の折り返し部11でのシート1の折り返しは、図を見易くするため無理に隙間を開けて作図している。
【0024】
図5は、リングの製造方法を示す工程図であり、本図は、ロール状にされたアルミニウム素材の針状部材5からリング5aを製造する方法を示すものである。
先ず、アルミニウム素材の針状部材5を(a)、円柱形状の整形棒6の周囲に巻き付けて整形し(b)、その針状部材5を巻回数が2巻のところとなる部位で切断具7によって順次切断する(c)。そして、切断した針状部材5を整形棒6から取り外すことでリング5aが出来上がる(d)。
また、5bは切断によって生じたリング5aの端部であり、この端部5bから折り返し部11に形成されている通孔2に通すことによってリング5aが装着される。
【0025】
図6は、ハウスの斜視図である。(a)図は、シート1を植栽構造体へ被着した状態を示すものである。植栽構造体、すなわちハウスの支柱8(支柱8a/支柱8b)および支持部材8cに、シート1の折り返し部11に設けられたリング5aが遊嵌されている。また、図は通常使用される状態を示すもので、シート1は植栽構造体の屋根を成している。被着したシート1の両端すなわち植栽構造体の両端に位置する部位は、支柱に固定解除可能に係止してもよい。本図では示していないが、シート1の下方の空間に必要に応じて他の防水シートやメッシュシートが固定的にあるいは本発明に係わる方法によって取り付けられている場合もある。(b)図は、植栽構造体へ被着したシート1を、中央の支柱8aの方向に寄せた状態を示すものである。すなわち、強風下でも図のようにシート1を寄せることによって植栽構造体は風の影響を受けることがない。
【0026】
図7は、ハウスの他の一例を示す斜視図である。本図のハウスは、天井部に本発明に係わるシート1を被着したものである。
8dは水平支持部材であり、また、所望によりこの水平支持部材8dにメッシュシートやビニールシート等を取り付けてもよい。
そして、本図は、天井部のシート1の開閉をロープ9の引き回しによって行うようにしたものである。勿論、ロープ9の引き回しは手動によって行ってもまたモーター等を用いた駆動装置によって行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】被着シートの形成方法を示す工程図
【図2】図1(c)図の折り返し部の拡大図
【図3】折り返し部の他の形態を示す図
【図4】図1(d)図の折り返し部の拡大図
【図5】リングの製造方法を示す工程図
【図6】ハウスの斜視図
【図7】ハウスの他の一例を示す斜視図
【符号の説明】
【0028】
1−シート,11−折り返し部,2−通孔,3−両面テープ,4−片面テープ,5−針状部材,5a―リング、5b−端部、6−整形棒,7−切断具,8−支柱,8a−支柱、8b−支柱,8c−水平支持部材,8d−水平支持部材,9−ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート部材の所定の部位をある程度の長さを以って少なくとも1回以上折り返し、その折り返しによって形成された折り返し部にそれを貫通する通孔を設け、その通孔に環状部材を係合し、その環状部材の開口を植栽構造体に有する水平方向に設けられている水平支持部材に遊嵌することを特徴とするシートを開閉自在に植栽構造体へ被着する方法
【請求項2】
折り返し部の少なくとも通孔が形成される部位の折り合せ部分の対向面が貼り合され、および/または、少なくとも折り返し部の外面上に粘着テープが貼り付けられていることを特徴とする請求項1のシートを開閉自在に植栽構造体へ被着する方法
【請求項3】
環状部材は、可塑性を有する針状部材を所定の径の棒状体にコイル状に巻き付けて整形し、その整形した針状部材を少なくとも巻回数が2巻以上となる部位で順次切断することによって製造することを特徴とする請求項1のシートを開閉自在に植栽構造体へ被着する方法
【請求項4】
針状部材の素材がアルミニウムであると共に、針状部材が棒状体に巻き付けられた状態で切断具によって順次切断されることを特徴とする請求項3のシートを開閉自在に植栽構造体へ被着する方法
【請求項5】
請求項1記載の被着方法が応用されたシート部材と、そのシート部材を被着可能に形成された植栽構造体から構成されていることを特徴とするシート開閉自在な植栽ハウス

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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