説明

シートクリップ

【課題】従来のシートクリップでは、シートの保持力が充分であるとは言い難い面があると共に、シートに損傷を与えることがあるという問題点があった。
【解決手段】 壁等の竪面Fに対向するベース部1を有する第1部材P1と、軟質樹脂製の第2部材P2を備え、第1部材P1は、回動するレバー2と、レバー2をベース部側の回動位置で拘束するロック手段を備えると共に、ベース部1に、第2部材P2の取付け孔3を有し、第2部材P2は、取付け孔に嵌合する軸部14と、膨出部15と、竪面Fへの固定部である吸盤16を有し、第1部材P1のレバー2と第2部材P2の膨出部15との間でシートSを挟持するシートクリップC1とすることで、構造が簡単になり、シートSの充分な保持力を確保すると共に、シートSの損傷も防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁、掲示板、及び什器等の竪面において、ポスターなどのシート類を挟んで保持しておくのに用いられるシートクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、壁等の竪面にポスターなどのシート類を貼り付けるには、画鋲、粘着テープ、及びマグネット等を使用するのがごく普通である。その一方で、広告宣伝用品を取扱う業界においては、シート類を体裁良く保持するために、様々な工夫を凝らしたものが提案されている。例えば、特許文献1に記載されているように、板ばねで連結した一対の部材によってシートを挟持するようにしたピンチ状のものや、特許文献2に記載されているように、吸盤と画鋲とを組み合わせたものなどがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−329470号公報
【特許文献2】特開平11−022717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような従来のシートクリップにおいて、一対の部材でシートを挟持するピンチ状のものでは、とくに、シートがポスター等の滑らかな紙である場合に、シートとの間に滑りが生じやすく、シートの保持力が充分であるとは言い難い面があり、これを解消するために挟持部分に滑り止めを設ければ、構造がより複雑になって製造コストの増大が確実である。また、滑り止めとしてシートに食い込む爪状部分を一体的に形成することも考えられるが、この場合には、画鋲や粘着テープ等と同様にシートに損傷を与えるという問題点がある。
【0005】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、構造が簡単であり、シート類の充分な保持力を有すると共に、シート類の損傷を防ぐことができるシートクリップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わるシートクリップは、請求項1として、壁等の竪面にシート類を保持するのに用いるシートクリップであって、竪面に対向するベース部を有する第1部材と、軟質樹脂製の第2部材を備え、第1部材は、ベース部に対して近接離間する方向に回動するレバーと、このレバーをベース部側の回動位置で拘束するためのロック手段を備えると共に、ベース部に、第2部材の取付け孔を有しており、第2部材は、取付け孔に嵌合する軸部の一端部に、レバー側への膨出部を有すると共に、軸部の他端側に、竪面への固定部を有しており、ベース部側の回動位置で拘束した第1部材のレバーと第2部材の膨出部との間でシート類を挟持する構成としており、上記構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【0007】
また、本発明に係わるシートクリップは、請求項2として、第1部材が、ベース部に相対向する保持片を備えると共に、この保持片に前記レバーが回動自在に設けてあり、ロック手段が、レバー及び保持片のいずれか一方に設けた係止爪と、他方側において前記係止爪が係脱自在な係止部を備えていることを特徴としており、請求項3として、第2部材の固定部が、吸盤を備えていることを特徴とし、請求項4として、第2部材の固定部が、マグネットを備えていることを特徴とし、請求項5として、第2部材の固定部が、粘着シートを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係わるシートクリップによれば、構造が簡単になり、シート類の充分な保持力を得ることができると共に、シート類の損傷を防ぐこともできる。また、構造の簡略化に伴って、小型軽量化や製造コストの低減にも貢献することができる。
【0009】
本発明の請求項2に係わるシートクリップによれば、請求項1と同様の効果を得ることができるうえに、外観体裁が良好になるうえに、ロック手段の構成も非常に簡単なものとなり、構造のさらなる簡略化や小型軽量化を実現することができる。
【0010】
本発明の請求項3に係わるシートクリップによれば、吸盤の採用により、平滑な竪面に対して自由に着脱することができる。また、本発明の請求項4に係わるシートクリップによれば、マグネットの採用により、磁性体から成る壁面に対して自由に着脱することができる。さらに、本発明の請求項5に係わるシートクリップによれば、粘着シートの採用により、各種の壁面に対して自由に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係わるシートクリップの一実施形態を説明するシート解放状態の断面説明図(A)、及びシート挟持状態の断面説明図(B)である。
【図2】図1に示すシートクリップの平面図(A)、第1部材の側面図(B)、及び第1部材の底面図(C)である。
【図3】図1に示すシートクリップでシートを保持している状態を示す正面図である。
【図4】本発明に係わるシートクリップの他の実施形態を説明する断面説明図である。
【図5】本発明に係わるシートクリップのさらに他の実施形態を説明する断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜図3は、本発明に係わるシートクリップの一実施形態を説明する図である。図1及び図2に示すシートクリップC1は、壁、掲示板、及び什器等の竪面において、ポスターなどのシート類を保持しておくのに用いるものであって、竪面に対向するベース部1を有する第1部材P1と、軟質樹脂製の第2部材P2を備えている。
【0013】
第1部材P1は、例えば、ポリカーボネート等の適宜の樹脂から成り、基本構成として、前記ベース部1と、ベース部1に対して近接離間する方向に回動するレバー2と、このレバー2をベース部1側の回動位置で拘束するためのロック手段を備えている。また、ベース部1には、第2部材P2の取付け孔3が形成してある。
【0014】
この実施形態における第1部材P1は、ベース部1が円板状を成していて、このベース部1に所定間隔をおいて相対向する概略円板状の保持片4を有している。ベース部1と保持片4は、円周上の一箇所において、連接部5により互いに一体化してある。連接部5の内側中央には、シート類の角部を受けるための断面三角形状の溝部6が形成してある。
【0015】
保持片4には、とくに図2(A)に示すように、連接部5とは反対側に開放した切欠部7と、切欠部7の奥部両側に配置した軸保持部8,8が形成してあり、この切欠部7内にレバー2が回動自在に装着してある。
【0016】
レバー2は、図1中で右側となる回動中心側の両端部に、保持片4の軸保持部8,8に対して回動自在に係合する回動軸9,9を有すると共に、両回動軸9,9間に、ベース部1側へ突出する半円柱状の膨出部10を有している。また、レバー2は、とくに図2(B)に示すように、回動先端側の両端部に、係止爪11,11を有している。この係止爪11,11は、保持片4の切欠部7における開放部の両側裏面を係止部12,12として、この係止部12,12に対して係脱自在である。
【0017】
ロック手段は、レバー2をベース部1側の回動位置で拘束するものであって、具体的には、レバー2及び保持片4のいずれか一方に設けた係止爪と、他方側において前記係止爪が係脱自在な係止部を備えており、この実施形態では、上記したように、一方側であるレバー2の係止爪11と、他方側である保持片4の係止部12とで構成してある。
【0018】
ここで、前記レバー2は、回動中心側及び回動先端側の夫々両側近傍にスリット20が形成してあり、これにより、回動中心側においては、保持片4の軸保持部8,8に対して回動軸9,9を弾性的に係合可能にし、他方、回動先端側においては、保持片4の係止部12,12に対して係止爪11,11を弾性的に係脱可能にしている。また、レバー2は、回動先端部に、係止爪11よりも僅かに突出した先端縁部13を有しており、ロック手段を解除して回動させる際に指先を引掛け易くしてある。
【0019】
ベース部1における取付け孔3は、とくに図2(C)に示すように、連接部5とは反対側に配置した大径孔3Aと、ベース部1の中心に配置した小径孔3Bとを一部で連続させたものであって、双方の連続部分は小径孔3Bの直径よりも狭くなっている。
【0020】
第2部材P2は、取付け孔3の小径孔3Bに嵌合する軸部14を有し、この軸部14の一端部に、レバー2側への膨出部15を有すると共に、軸部14の他端側に、竪面への固定部を有している。この実施形態における第2部材P2は、膨出部15が、取付け孔3の大径孔3Aよりも小径の略半球状を成していると共に、固定部が、吸盤16によって構成されている。
【0021】
前記第2部材P2は、先述の如く軟質樹脂製であって、上記の軸部14、膨出部15及び吸盤16を同軸状に一体成形したものである。そして、前記第2部材P2は、第1部材P1に対して、取付け孔3の大径孔3Aに膨出部15を通した後、軸部14を横にずらせて小径孔3Bに嵌入させるだけで、組み立てが完了する。この際、取付け孔3は、大径孔3Aと小径孔3Bとの連続部分が軸部14の直径よりも狭いので、第2部材P2が不用意に外れることはない。
【0022】
上記構成を備えたシートクリップC1は、図1(A)に示すように、レバー2をベース部1から離間する方向(図中上側方向)に回動させると、レバー2の膨出部10と第2部材P2の膨出部15との間に隙間を形成する。この状態において、シート(例えばポスター)Sを隙間に挿入し、シートSの角部を溝部6に合わせる。
【0023】
その後、シートクリップC1は、レバー2をベース部1に近接する方向に回動させ、係止爪11,11を係止部12,12に係合させると、図1(B)に示すように、レバー2が拘束されると同時に、レバー2の膨出部10と第2部材P2の膨出部15との間でシートSを挟持する。このようにして、図3に示すように、シートSの四隅にシートクリップC1を取付けると共に、各シートクリップC1の吸盤16を竪面Fに吸着させることで、同竪面Fに対してシートSを体裁よく保持することとなる。
【0024】
なお、予め竪面FにシートクリップC1を吸着させておいてから、シートSを取付けることも勿論可能であるし、シートSの角部を溝部6に合わせずに、シートSの一辺を挟持するようにしても良い。
【0025】
上記実施形態のシートクリップC1は、第1部材P1と第2部材P2から成る簡単な構造であって、小型軽量化であると共に、比較的安価に製造することが可能であり、組み立ても非常に簡単である。そして、シートクリップC1は、第1部材P1と軟質樹脂から成る第2部材P2を備えると共に、ロック手段により拘束したレバー2と軟質部材製の第2部材P2の膨出部15との間でシートSを挟持するので、シートSがポスター等の滑らかな紙であっても、膨出部15とシートSとの間では滑りが生じ難く、シートSの充分な保持力を得ることができる。
【0026】
また、シートクリップC1は、充分な保持力が得られるにも関わらず、シートSを挟持するだけの構造であるから、シートSに損傷を与える心配も全く無く、レバー2を回動させるだけで、シートSの挟持を簡単に解除することができる。
【0027】
さらに、シートクリップC1は、保持片4を備えると共に、この保持片4にレバー2を回動可能に設けた構成としたので、外観体裁が良好であると共に、一実施形態として係止爪11及び係止部12を例示したように、ロック手段の構成を簡単なものにすることができる。そしてさらに、上記実施形態のシートクリップC1は、固定部としての吸盤16を採用したことにより、平滑な竪面Fに対して自由に着脱することができる。
【0028】
図4は、本発明に係わるシートクリップの他の実施形態を説明する図である。なお、先の実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0029】
図示のシートクリップC2は、第2部材P2の固定部が、シート状部26と、シート部26に接着したマグネット27を備えている。このマグネット27には、固形状の磁石だけでなく、可撓性を有するマグネットシートを用いることもできる。この実施形態のシートクリップC2にあっても、先の実施形態のものと同等の作用及び効果を得ることができ、とくに、固定部としてのマグネット27を採用したことにより、磁性体から成る竪面に対して自由に着脱することができる。
【0030】
図5は、本発明に係わるシートクリップの他の実施形態を説明する図である。なお、先の実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0031】
図示のシートクリップC3は、第2部材P2の固定部が、シート状部26と、シート部26に接着した粘着シート28を備えている。この粘着シート28としては、例えば、両面テープのように剥離紙を有するものを採用することができる。この実施形態のシートクリップC2にあっても、先の実施形態のものと同等の作用及び効果を得ることができ、とくに、固定部としての粘着シート28を採用したことにより、様々な壁面に自由に固定することができる。
【0032】
上記の各実施形態では、いずれも保持片を有すると共に、この保持片に対してレバーを回動可能に設けた場合を説明したが、ベース部に対して直接的にレバーを取付けた構成にすることも可能である。レバーのロック手段にあっても、第1部材やレバーの構成に応じて変更することが可能である。例えば、周知のIDカードホルダー等のクリップに見られるように、レバーの回動と拘束解除とを連動させる操作部を設け、操作部によりレバーを回動させて、拘束したレバーの適当な部位と第2部材の膨出部とでシートを挟持する構成(レバーを間接的に拘束解除する構成)にすることもできる。
【0033】
本発明に係わるシートクリップは、その構成が上記の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の構成部位の形状等を変更することが可能であると共に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において構成の細部を適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
F 竪面
C1〜C3 シートクリップ
P1 第1部材
P2 第2部材
S シート
1 ベース部
2 レバー
3 取付け孔
4 保持片
11 係止爪(ロック手段)
12 係止部(ロック手段)
14 軸部
15 膨出部
16 吸盤(固定部)
26 シート状部(固定部)
27 マグネット(固定部)
28 粘着シート(固定部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁等の竪面にシート類を保持するのに用いるシートクリップであって、
竪面に対向するベース部を有する第1部材と、軟質樹脂製の第2部材を備え、
第1部材は、ベース部に対して近接離間する方向に回動するレバーと、このレバーをベース部側の回動位置で拘束するためのロック手段を備えると共に、ベース部に、第2部材の取付け孔を有しており、
第2部材は、取付け孔に嵌合する軸部の一端部に、レバー側への膨出部を有すると共に、軸部の他端側に、竪面への固定部を有しており、
ベース部側の回動位置で拘束した第1部材のレバーと第2部材の膨出部との間でシート類を挟持することを特徴とするシートクリップ。
【請求項2】
第1部材が、ベース部に相対向する保持片を備えると共に、この保持片に前記レバーが回動自在に設けてあり、
ロック手段が、レバー及び保持片のいずれか一方に設けた係止爪と、他方側において前記係止爪が係脱自在な係止部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のシートクリップ。
【請求項3】
第2部材の固定部が、吸盤を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシートクリップ。
【請求項4】
第2部材の固定部が、マグネットを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシートクリップ。
【請求項5】
第2部材の固定部が、粘着シートを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシートクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−63667(P2012−63667A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208970(P2010−208970)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(591135657)ワヨー株式会社 (29)
【Fターム(参考)】