説明

シートパッド用ポリウレタンフォーム

【課題】共振周波数と共振倍率を同時に低減することができ、乗り心地性能を向上させた車両用シートパッドに最適なシートパッド用ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】シートパッド用ポリウレタンフォームであって、該ポリウレタンフォームを形成するセルの平均径が550〜1,000μm、セル一つ当たりが有する穴個数が10以下、及びセルを形成するリブの平均厚みが90〜200μmであることを特徴とするシートパッド用ポリウレタンフォームである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッド用ポリウレタンフォームに関し、さらに詳しくは共振周波数と共振倍率を同時に低減することができ、乗り心地性能を向上させた車両用シートパッドに最適なシートパッド用ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、用途に応じて、機械的特性、断熱性及び振動吸収性等の様々な特性が求められているが、とりわけ車両用のシートパッド等においては高い反発弾性や座り心地感等の快適性が求められている。このような快適性の向上を目指し、一般に人体の内臓の共振点といわれる6Hz付近(約4〜8Hz)の振動吸収特性を高めるため、ポリウレタン発泡原料の主成分の構造や充填材等の副原料について見直しが図られ、得られるポリウレタンフォームの共振周波数及び共振倍率を下げる試みがなされてきた。
シートパッドの乗り心地性能として、振動特性は非常に重要な特性であり、振動特性向上では、上記のように共振周波数と共振倍率を下げることが求められるが、これらは二律背反の関係にあり、同時に低くすることは困難である。
【0003】
一方、近年の環境負荷軽減に対する意識の高まりから、車両においては燃費向上が求められ、その一環として構成部品に対する軽量化が図られてきた。軽量化に対する試みは車両の外装や内装等のあらゆる構成部品に及び、シートパッド等についても例外ではない。しかし、軽量化の観点から発泡材の低密度化を実現しようとすると、快適性に影響する振動吸収特性が低下するという問題があり、低密度化と振動吸収特性の両立が困難であった。そのため、乗り心地感、燃費向上などのニーズから軽量且つ適度な反発力及び良好な振動吸収特性を有するシートやクッション材が求められていた。
このような要求に対し、出願人は、ポリオール成分とイソシアネート成分とを主成分とするポリウレタン発泡原液を発泡成形してなるポリウレタンフォームにおいて、前記ポリオールとして分子量が3,000〜12,000、不飽和度が0.03ミリ当量/g以下であり、且つ分子量/官能基数が1,000〜3,000であるポリエーテルポリオールを用いると共に、有機化処理された無機充填材を配合することを特徴とするポリウレタンフォームを提案した(特許文献1参照)。ここで提案されたポリウレタンフォームは、軽量且つ振動吸収特性に優れたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−127514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるポリウレタンフォームは、共振周波数4Hz以下、共振倍率3倍以下という優れた振動特性を有しているが、このような振動特性は、ポリウレタンフォームの成形に用いる発泡原液において、特定のポリオールを用い、かつ水の配合量を特定することで、さらには成形方法として、時限圧力開放(Timed Pressure Release、以下「TPR」と記載することがある。)を用いることで、得られたものであって、シートパッドのセル構造を規定することにより、乗り心地性能を向上させる技術ではない。なお、このような技術は、これまで知られていないのが実状である。
本発明は、このような状況下になされたもので、共振周波数と共振倍率を同時に低減することができ、乗り心地性能を向上させた車両用シートパッドに最適なシートパッド用ポリウレタンフォームを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリウレタンフォームのセル構造を規定することにより、その課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1]シートパッド用ポリウレタンフォームであって、該ポリウレタンフォームを形成するセルの平均径が550〜1,000μm、セル一つ当たりが有する穴個数が10以下、及びセルを形成するリブの平均厚みが90〜200μmであることを特徴とするシートパッド用ポリウレタンフォーム、
[2](A)ポリオール成分、(B)ポリイソシアネート成分、(C)水、及び(D)触媒を含有する発泡原液を発泡成形してなる、上記[1]に記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム、
[3](A)ポリオール成分として、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの開環重合により得られ、エチレンオキシドとプロピレンオキシドに由来する繰り返し単位のモル比が10/90〜25/75であり、かつ数平均分子量が6,000〜12,000であるポリエーテルポリオールを含むものを用いる、上記[2]に記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム、
[4](A)ポリオール成分中のポリエーテルポリオールの含有量が40質量%以上である、上記[3]に記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム、
[5](B)ポリイソシアネート成分が、トリレンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートから選択される少なくとも1種を含む、上記[2]〜[4]のいずれかに記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム、
[6]発泡原液における(C)水の含有量が、(A)ポリオール成分100質量部に対して2.0質量部以上である、上記[2]〜[5]のいずれかに記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム、
[7]発泡原液中に(B)ポリイソシアネート成分を、該ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基と、前記発泡原液中の活性水素基とのモル比が60:100〜120:100になるように含む、上記[2]〜[6]のいずれかに記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム、
[8]さらに、発泡原液中に(E)整泡剤及び(F)架橋剤から選択される少なくとも1種を含む、上記[2]〜[7]のいずれかに記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム、及び
[9]発泡成形が、発泡原液を金型内に形成されたキャビティ内に供給する工程、及びゲルタイムより20〜50秒間経過した後に、金型内の圧力を0.15〜0.25MPa低下させる工程を有する、上記[2]〜[8]のいずれかに記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリウレタンフォームのセル構造を規定することにより、共振周波数と共振倍率を同時に低減することができ、乗り心地性能を向上させた車両用シートパッドに最適なシートパッド用ポリウレタンフォームを提供することができる。
このようなセル構造を有するポリウレタンフォームは、例えばポリオール成分、ポリイソシアネート成分、水及び触媒を含有する発泡原液を発泡成形することにより、作製することができる。特に、ポリオール成分として、エチレンオキシド(EO)及びプロピレンオキシド(PO)の開環重合により得られ、EOとPO由来の繰り返し単位のモル比、及び数平均分子量が、それぞれ特定の範囲にあるポリエーテルポリオールを含むものを用いることにより、所望のセル構造を有するポリウレタンフォームが効果的に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のシートパッド用ポリウレタンフォームは、当該ポリウレタンフォームを形成するセルの平均径が550〜1,000μm、セル一つ当たりが有する穴個数が10以下、及びセルを形成するリブの平均厚みが90〜200μmであることを特徴とする。
【0010】
[ポリウレタンフォームのセル構造]
ポリウレタンフォームにおいて、フォームを形成するセルの平均径、セルの一つ当たりが有する穴個数、及びセルを形成するリブの平均厚みが、それぞれ上記範囲にあれば、該ポリウレタンフォームは、共振周波数と共振倍率を同時に低減することができ、乗り心地性能を向上させたシートパッド用ポリウレタンフォームとなる。
この場合、共振周波数は、通常3〜3.5Hz程度であり、共振倍率は、通常2.8〜3.5倍程度である。
【0011】
前記セルの平均径が550μm未満では低通気となり過ぎるため、共振倍率が下がるが、共振周波数が高くなり、両立できない。1,000μmを超えると高通気となり過ぎるため、共振周波数が低くなるが共振倍率が上がり、両立できない。この観点から、セルの平均径は、好ましくは580〜800μm、より好ましくは580〜750μmである。
前記セル一つ当たりが有する穴個数が10を超えると高通気となる。この観点から、該穴個数は、好ましくは8個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下である。また、該穴個数の下限値は、通常好ましくは2個、より好ましくは3個である。
前記セルを形成するリブの平均厚みが90μm未満では高通気となり過ぎ、共振周波数が低くなるが共振倍率が上がり、両立できない。一方、200μmを超えると低通気となり過ぎるため、共振倍率が下がるが、共振周波数が高くなり、両立できない。この観点から、リブの平均厚みは、好ましくは90〜150μm、より好ましくは90〜130μmである。
なお、本発明において、セルを形成する「リブ」とは、セルを形成する柱の部分、つまり、セルからセル穴を除いた部分を指す。
【0012】
ポリウレタンフォームのセル構造を決定するリブの平均厚み、セルの個数、セルの平均径、セル一つ当たりが有する穴個数、膜の破れ度合いは、表1に示すようにポリウレタンフォームの作製において、原料の一つとして用いる後述のポリエーテルポリオールの数平均分子量と相関関係にある。
なお、上記各特性値の測定方法については、後で説明する。
【0013】
【表1】

【0014】
したがって、ポリウレタンフォームの作製に用いるポリエーテルポリオールの数平均分子量を変動させることが、該ポリウレタンフォームのセル構造を制御する手段の一つとなり得る。
【0015】
本発明のポリウレタンフォームは、前述したセル構造を有することにより、共振周波数と共振倍率を同時に低減することができ、乗り心地性能を向上させた車両用シートパッドに適するものとなる。
このようなポリウレタンフォームを形成させる方法としては、前記のセル構造を有するポリウレタンフォームを形成し得る方法であればよく、特に制限されず、例えば(A)ポリオール成分、(B)ポリイソシアネート成分、(C)水、及び(D)触媒を含有する発泡原液を発泡成形する方法を採用することができる。
次に、当該発泡原液における各成分について詳述する。
【0016】
[(A)ポリオール成分]
(A)ポリオール成分としては、エチレンオキシド(以下「EO」と記載する。)及びプロピレンオキシド(以下「PO」と記載する。)の開環重合により得られ、EOとPOに由来する繰り返し単位のモル比が10/90〜25/75(EO/PO)であり、かつ数平均分子量が6,000〜12,000であるポリエーテルポリオールを含むものが好ましい。このポリエーテルポリオールは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0017】
(ポリエーテルポリオール)
このポリエーテルポリオールにおけるEO/POモル比は、所望のセル構造を有するポリウレタンフォームを形成し得る観点から、10/90〜25/75が好ましく、16/84〜25/75がより好ましく、18/82〜25/75がさらに好ましい。
一方、前記数平均分子量は、得られるポリウレタンフォームのセル構造に大きな影響を与え、例えば該数平均分子量が大きくなると、(1)セルの個数は少なくなって、セル径が大きくなる、(2)セル穴の個数が多くなって、リブの太さが大きくなる、(3)膜の破れ度合いが多くなり、通気性が高くなる、などの傾向が見られる。なお、本発明のポリウレタンフォームのセル構造における膜の破れ度合いは、通常、好ましくは65〜85%である。
ポリエーテルポリオールの数平均分子量が大きくなると、上述のようなセル構造をもたらす傾向が見られ、その結果、振動特性は、共振周波数及び共振倍率が共に低下する効果を奏する。
本発明において、(A)ポリオール成分として用いられるポリエーテルポリオールの数平均分子量としては、前記効果及び製造上の容易さなどの観点から、6,000〜12,000の範囲にあることが好ましく、6,000〜11,000の範囲にあることがより好ましい。
なお、本発明において数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC法)によりポリスチレン換算値として算出した値である。
【0018】
本発明において用いられる上記ポリエーテルポリオールの一分子中に含まれるヒドロキシル基の数としては、通常2〜4個、特に3個であることが好ましい。ヒドロキシル基の数が多すぎると当該発泡原液の粘度が上昇する場合があり、少なすぎると所望物性が低下する場合がある。
【0019】
上記ポリエーテルポリオールとしては、不飽和度の小さなものを用いることが好ましい。より具体的には、不飽和度として通常0.03ミリ当量/g以下であることが好ましい。ポリエーテルポリオール中の不飽和度が0.03ミリ当量/g以下であると、本発明のポリウレタンフォームの耐久性や硬度が損なわれにくい。なお、本発明において「不飽和度」とは、JIS K 1557−1970に準拠し、試料中の不飽和度結合に酢酸第二水銀を作用させて遊離する酢酸を水酸化カリウムで滴定する方法にて測定した、総不飽和度(ミリ当量/g)を意味するものである。
【0020】
本発明においては、(A)ポリオール成分中の当該ポリエーテルポリオールの含有量は、得られるポリウレタンフォームの共振周波数と共振倍率を同時に低減させ、車両用シートパッドとしての乗り心地性を向上させる観点から、40質量%以上が好ましく、40〜70質量%がより好ましく、40〜60質量%がさらに好ましい。
【0021】
(ポリマーポリオール)
本発明における上記(A)成分として、必要に応じて上記ポリエーテルポリオールとポリマーポリオールを併用しても良い。ポリマーポリオールとしては、ポリウレタン発泡成形体用として汎用のポリマーポリオールを用いることが可能である。より具体的には、例えば、ポリアルキレンオキシドからなる好ましくは平均分子量が3,000〜8,000、より好ましくは4,000〜7,000のポリエーテルポリオールにポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のポリマー成分をグラフト共重合させたポリマーポリオール等が挙げられる。ポリアルキレンオキシドの原料となるアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシドを含むことが好ましく、プロピレンオキシド単独のもの、又はプロピレンオキシド及びエチレンオキシドを共に含むものであることが特に好ましい。また、上記ポリマーポリオール中に占める上記のようなポリマー成分の割合としては、通常25〜50質量%である。
【0022】
上記(A)成分としてポリエーテルポリオールとポリマーポリオールとの混合物を用いる場合、その両者の配合比としては、ポリエーテルポリオール/ポリマーポリオール(質量比)として、通常、好ましくは30/70〜100/0、より好ましくは40/60〜80/20、さらに好ましくは40/60〜60/40である。両者の配合比が上記範囲を逸脱すると、所望物性が得られにくかったり、反応不具合を生じたりする場合がある。
【0023】
本発明において上記(A)成分としては、粘度((A)成分として複数種のポリオールを混合して使用する場合には、その混合したポリオール全体の粘度)が液温25℃において3,000mPa・s以下、特に1,800mPa・s以下となる粘度範囲が好ましい。このような粘度範囲のポリオール成分を用いることにより、ポリウレタン発泡原液の増粘速度を抑制することが可能となって攪拌効率が上昇し、イソシアネート基とヒドロキシル基とがより均一に反応することが可能となるため、従来に比べて発生ガスの発生効率が増加するのみならず、その発生ガスの発生箇所としても、ポリウレタン発泡原液内で均一に発生することとなり、軽量かつ均質なポリウレタン発泡成形体を得ることが可能となる。なお、本発明において「粘度」とは、JIS Z 8803−1991に準拠し、液温25℃において、毛細管粘度計を用いて測定した粘度を意味する。
【0024】
[(B)ポリイソシアネート成分]
ポリイソシアネート成分としては、公知の各種多官能性の脂肪族、脂環族および芳香族のイソシアネートを用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、オルトトルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等を挙げることができ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いても良い。
本発明においては、得られるフォームの密度の観点から、トリレンジイソシアネート(TDI)及びジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0025】
上記(B)成分のポリイソシアネート(2種以上のイソシアネートを併用する場合には、その総量)が、上記ポリウレタン発泡原液中に占める割合としては、特に制限されるものではないが、その目安としてのイソシアネート当量(上記ポリウレタン発泡原液中の活性水素量(モル)を100とした時の、イソシアネート基の当量(モル)比)値として通常60以上、好ましくは70以上、上限として通常120以下、好ましくは115以下である。イソシアネート当量が60未満であると、攪拌不良が起こる場合があり、120を超えるとフォームダウンする場合がある。
【0026】
[(C)水]
本発明においては、発泡剤として水を用いる。水はポリイソシアネートと反応して炭酸ガスを発生させることから、本発明において発泡剤として用いることができる。
水の配合量は、(A)ポリオール成分100質量部に対して、2.0質量部以上であることが好ましい。水の配合量が2.0質量部未満であると、ぐらつきを抑制する十分な効果が得られない。一方、上限値については、本発明の効果を奏する範囲であれば、特に限定されず、例えば、ポリオール成分100質量部に対して、15質量部程度配合することができる。
【0027】
[(D)触媒]
本発明における上記ポリウレタン発泡原液は、発泡成形の際の反応性の観点から触媒を含むことが好ましい。(D)成分の触媒としては、ポリウレタンフォームの製造において汎用のものを用いることができ、用途や要求に応じて1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。具体的には、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス−(ジメチルアミノエチル)エーテル、テトラメチルプロピレンジアミン、トリメチルアミノエチルピペラジン、テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミン、メチルモルフォリン、エチルモルフォリン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン等のアミン触媒や、スタナスオクテート、ジブチルチンジラウレート等の錫系触媒を挙げることができる。上記(D)成分の触媒としては市販品を用いることができ、例えばトリエチレンジアミン(TEDA−L33:東ソー(株)製)、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル(TOYOCAT−ET:東ソー(株)製)等を好適に用いることができる。
なお、ポリウレタン発泡原液中の(D)成分の配合量としては、上記(A)成分のポリオール100質量部に対して通常0.1〜5質量部であり、より好ましくは0.2〜1質量部である。
【0028】
[任意成分]
当該発泡原液には、任意成分として(E)整泡剤及び/又は(F)架橋剤を配合することができる。さらに必要に応じて各種添加剤を配合することができ、例えば、顔料等の着色剤、鎖延長剤、炭酸カルシウム等の充填材、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、カーボンブラック等の導電性物質、抗菌剤などを配合することができる。この場合、これらの添加剤の配合量は、通常使用される範囲で差し支えない。
【0029】
((E)整泡剤)
この(E)成分の整泡剤としては、ポリウレタン発泡成形体用のものとして汎用のものを用いることができ、例えば、各種シロキサン−ポリエーテルブロック共重合体等のシリコーン系整泡剤を用いることができる。
ポリウレタン発泡原液中の整泡剤の配合量としては、上記(A)成分のポリオール100質量部に対して通常0.5〜5質量部、特に0.5〜3質量部とすることが好ましい。5質量部を超えても特に性能的に問題ないがコストが上がり、0.5質量部未満であるとポリオール成分とイソシアネート成分の攪拌性が低下し、所望のウレタンフォームが得られないおそれがあり好ましくない。
なお、この整泡剤として、高活性の整泡剤、例えば東レ・ダウコーニング社製「SZ1325」を使用することにより、低活性の整泡剤、例えばモメンティブ社製「L−3623」を使用する場合に比べて、得られるポリウレタンフォームの通気性が低減し、共振倍率が低くなるので、好ましい。
【0030】
((F)架橋剤)
この(F)成分の架橋剤としては、ポリウレタン発泡成形体用のものとして汎用のものを用いることができる。なお、当該架橋剤は、本発明においては、(A)ポリオール成分に含まれる。
ポリウレタン発泡原液中の架橋剤の配合量としては、上記(A)のポリオール成分中の含有量が、通常0.5〜10質量%の範囲にあることが好ましい。0.5質量%以上であると、架橋剤の効果が十分に得られ、一方、10質量%以下であると独立気泡性が適度であり、成形性が確保できるとともに、フォームダウンすることがない。
【0031】
[発泡原液の調製]
本発明における発泡原液の調製方法としては、特に限定されるものではないが、前記(B)成分を除いた残りの各成分からなる混合物(以下、「ポリオール混合物」と略記することがある。)を調製し、その後(B)成分と混合する。
該ポリオール混合物の調製は、水と触媒とをなるべく接触させないという観点から、上記(A)ポリオール成分に対して、上記(D)触媒を配合し、次いで上記(E)整泡剤、(F)架橋剤などその他の成分を配合し、最後に発泡成分である上記(C)水を配合することが好適である。
本発明において、ポリオール混合物の液温25℃における粘度としては、2,400mPa・s以下が好ましい。該ポリウレタン発泡原液の攪拌効率を良好とし、発泡が均一且つ十分となって所望のポリウレタン発泡成形体が得られるためである。以上の観点から、ポリオール混合物の液温25℃における粘度は、1,800mPa・s以下が好ましい。
【0032】
[ポリウレタンフォームの発泡成形]
ポリウレタンフォームを発泡成形する方法としては、金型内に形成されたキャビティ内にポリウレタン発泡原液を注入し、発泡成形する従来公知の方法を採用し得るが、時限圧力解放(TPR;Timed Pressure Release)を併用することが好ましい。
本発明におけるTPRは、金型内の圧力を低下させ、気泡の連通化を生じさせるものである。より具体的には、発泡原液を、金型内に形成されたキャビティ内に供給する工程の後に、ゲルタイムより20〜50秒経過した後に金型内の圧力を、0.15〜0.25MPa低下させる工程を有することが好ましい。
ここでゲルタイムとは、ポリオールとイソシアネートが混合され、増粘が起こってゲル強度が出始める時間をいう。
【0033】
ポリウレタン発泡原液の各成分の分離を防止する観点から、金型キャビティ内に上記ポリウレタン発泡原液を注入する直前に、上述の各成分を混合してポリウレタン発泡原液を調製することが好ましい。この際、上記原液の液温は通常10〜50℃、好ましくは20〜40℃、更に好ましくは25〜35℃である。ここで、ポリウレタン発泡原液を調製する前に不必要な粘度の上昇を抑制する観点から、少なくとも前記(A)成分のポリオールと、前記(B)成分のイソシアネートとが、最後に混合されることが好ましい。次いで、上記原液の調製直後にこれをキャビティ内の減圧が可能な金型のキャビティに大気圧下にて注入し、注入し終えた直後に減圧を開始する。その後、金型内にて発泡・硬化させ、脱型し、本発明品とする。型温は通常40〜80℃、好ましくは50〜70℃、更に好ましくは60〜65℃である。
【0034】
このようにして得られた本発明のポリウレタンフォームは、フォームを形成するセルの平均径が550〜1,000μm、セル一つ当たりが有する穴個数が10以下、及びセルを形成するリブの平均厚みが90〜200μmであるセル構造を有し、その特性として、車酔いを低減し、座り心地を良くする観点から、共振周波数が4Hz以下であることが好ましく、3.5Hz以下であることがより好ましい。4Hzを超えると、車酔いに影響する6Hz時の伝達率(倍率)が高くなり、車酔いし易くなる傾向にある。共振倍率は通常好ましくは3.5倍以下であり、3.3倍以下であることがより好ましい。3.5倍を超えると、シートに座ったからだの上下の揺れが大きくなり、座り心地が悪くなるおそれがある。本発明のシートパッド用ポリウレタンフォームは、共振周波数と共振倍率を共に低減することができており、具体的には、共振周波数を2.5〜4Hz(より詳細には2.8〜3.5Hz)に、共振倍率を2.5〜3.5倍(より詳細には2.7〜3.3倍)にまで低減されている。
【実施例】
【0035】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
各実施例及び比較例にて製造されたウレタンフォームについて、以下の方法にて評価した。
<セル構造>
X線CTと走査型電子顕微鏡(SEM)により、ポリウレタンフォームのセル構造を観察し、セルの平均径、セル一つ当たりが有する穴個数、セルを形成するリブの平均厚みを求めた。
なお、SEMとしては、日立ハイテク株式会社製、機種名「S−3000N」を用い、倍率30〜200倍にてセル構造を観察した。
【0036】
<共振周波数(Hz)及び共振倍率>
JASO B 407に準拠して測定した。測定は、ウレタンフォームの硬さが25%硬度で226N(23kgf)になるように調整したサンプルで行った。サンプルに402N(41kg)の加圧板を載せ、周波数を1〜10Hzまで加振させた。最大の伝達率を示した時の周波数を共振周波数(Hz)、共振周波数の伝達率を共振倍率とした。なお、25%硬度とは、ウレタンフォームを25%圧縮するのに要する荷重をいう。
【0037】
<ポリエーテルポリオールの特性値>
(1)数平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
(2)EO単位/PO単位モル比
1H−NMRスペクトル測定により得られるプロトンシグナルの積分値に基づいて算出した。
(3)官能基数
13C−NMRスペクトル測定により得られるピークから開始剤を決定し、官能基数を決定した。
(4)不飽和度
JIS K 1557−1970に準拠し、試料中の不飽和度結合に酢酸第二水銀を作用させて遊離する酢酸を水酸化カリウムで測定する方法にて測定した、総不飽和度(ミリ当量/g)を意味する。
【0038】
実施例1、2及び比較例1〜6
表2に示した配合処方に従って、発泡原液を調製した。調製に際しては、(B)ポリイソシアネート成分以外の各成分からなるポリオール混合物を調製し、その後(B)ポリイソシアネート成分を配合することで行った。ポリオール組成物は、まず、(A)ポリオール成分と、(D)触媒を混合し、次いで整泡剤、架橋剤を配合して、最後に(C)水を混合して調製した。その時、ポリウレタン発泡原液の液温としては、実施例1及び比較例1〜3、5は30℃とし、実施例2及び比較例4、6は40℃とした。次いで、上記原液の調製直後にこれを、設定温度60℃のキャビティ内の減圧が可能な金型のキャビティに大気圧下にて注入し、注入し終えた直後に減圧を開始した。その後、金型内にて発泡・硬化させ、ゲルタイムより30秒経過した時に、金型内の圧力を、0.2MPa低下させた。その後、脱型し、ポリウレタンフォームを得た。得られたポリウレタンフォームを上記方法にて評価した。評価結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
[注]
1)ポリエーテルポリオールA:EO/POモル比16/84、数平均分子量7,000、官能基数3、不飽和度0.04ミリ当量/g
2)ポリエーテルポリオールB:EO/POモル比20/80、数平均分子量7,000、官能基数3、不飽和度0.007ミリ当量/g
3)ポリエーテルポリオールC:EO/POモル比20/80、数平均分子量10,000、官能基数3、不飽和度0.007ミリ当量/g
4)ポリマーポリオール:EO/POモル比15/85、数平均分子量5,000、官能基数3
5)架橋剤:ポリエーテルポリオール(EO/POモル比100/0、数平均分子量400、官能基数4)
6)触媒A:トリエチレンジアミン[東ソー(株)製]
7)触媒B:ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル10〜30質量%のジプロピレングリコール溶液(東ソー社製)
8)触媒C:ジエタノールアミン
9)シリコーン整泡剤A:[東レ・ダウコーニング社製、商品名「SZ1325」]
10)シリコーン整泡剤B:[モメンティブ社製、商品名「L−3623」]
11)TDI:「T−80」(三井化学ポリウレタン株式会社製)、MDI:「MR−200HR」(日本ポリウレタン株式会社製)
12)[NCO基]/[発泡原液中の活性水素基]モル比
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のシートパッド用ポリウレタンフォームは、共振周波数と共振倍率を同時に低減することができ、乗り心地性能を向上させた車両用シートパッドとして最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートパッド用ポリウレタンフォームであって、該ポリウレタンフォームを形成するセルの平均径が550〜1,000μm、セル一つ当たりが有する穴個数が10以下、及びセルを形成するリブの平均厚みが90〜200μmであることを特徴とするシートパッド用ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
(A)ポリオール成分、(B)ポリイソシアネート成分、(C)水、及び(D)触媒を含有する発泡原液を発泡成形してなる、請求項1に記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
(A)ポリオール成分として、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの開環重合により得られ、エチレンオキシドとプロピレンオキシドに由来する繰り返し単位のモル比が10/90〜25/75であり、かつ数平均分子量が6,000〜12,000であるポリエーテルポリオールを含むものを用いる、請求項2に記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
(A)ポリオール成分中のポリエーテルポリオールの含有量が40質量%以上である、請求項3に記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
(B)ポリイソシアネート成分が、トリレンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートから選択される少なくとも1種を含む、請求項2〜4のいずれかに記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
発泡原液における(C)水の含有量が、(A)ポリオール成分100質量部に対して2.0質量部以上である、請求項2〜5のいずれかに記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。
【請求項7】
発泡原液中に(B)ポリイソシアネート成分を、該ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基と、前記発泡原液中の活性水素基とのモル比が60:100〜120:100になるように含む、請求項2〜6のいずれかに記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。
【請求項8】
さらに、発泡原液中に(E)整泡剤及び(F)架橋剤から選択される少なくとも1種を含む、請求項2〜7のいずれかに記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。
【請求項9】
発泡成形が、発泡原液を金型内に形成されたキャビティ内に供給する工程、及びゲルタイムより20〜50秒間経過した後に、金型内の圧力を0.15〜0.25MPa低下させる工程を有する、請求項2〜8のいずれかに記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2013−18919(P2013−18919A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155182(P2011−155182)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】