説明

シートベルト保持構造

【課題】ベルト保持具をルーフリンフォースに仮止めする場合に、ベルト保持具が落下しにくいシートベルト保持構造を提供する。
【解決手段】ルーフパネル10と天井パネル11との間を通り、天井開口部110から車室17内に垂下するシートベルト2を備える。また、シートベルト2が通るベルト挿通孔40を備えたベルト保持具4を備える。ベルト保持具4はルーフリンフォース3に固定されている。ルーフリンフォース3は、板状部材30に貫通形成した仮止孔31を有する。ベルト保持具4は複数個のクリップ片部5を有する。ベルト保持具4をルーフリンフォース3に固定する際に、クリップ片部5aを仮止孔31に差し入れ、クリップ片部5a〜5cを用いて板状部材30を板厚方向に挟持することにより、ベルト保持具4を仮止めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のルーフパネルと天井パネルとの間を通り、天井パネルに形成した天井開口部から車室内に垂下するシートベルトを、天井開口部付近において保持するシートベルト保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の天井パネルに形成した天井開口部からシートベルトを車室内に垂下させ、このシートベルトを用いて座席に着座する乗員を固定するシートベルト装置が知られている(下記特許文献1参照)。このシートベルト装置の、天井開口部付近の断面を図13に示す。
【0003】
同図に示すごとく、車両の上部外壁をなすルーフパネル91と、車室96の天井をなす天井パネル92との間にシートベルト97が通っている。このシートベルト97は、車両後方Rに配置したベルト巻取り装置(図示しない)から延出しており、2個のアンカー93a,93bを有する。シートベルト97は、ベルト保持具94のベルト挿通孔940に挿通されている。ベルト保持具94は、ボルト(図示しない)によってルーフリンフォース95に締結されている。
【0004】
シートベルト97を使用しない場合は、2個のアンカー93a,93bは収納ケース98内に収納されている。シートベルト97を使用する場合は、乗員は収納ケース98からアンカー93a,93bを取り出し、天井開口部920から車室96内にシートベルト97を垂下させる。そして、座席の一方の側部に設けた第1バックル(図3参照)に第1アンカー93aを取り付け、反対側の側部に設けた第2バックルに第2アンカー93bを取り付ける。これにより、座席に着座する乗員をシートベルト97で固定する。
【0005】
一方、図12に示すごとく、シートベルト保持構造90を製造する際には、作業者は、ベルト挿通孔940にシートベルト97を挿通した状態で、ベルト保持具94の係止部941をルーフリンフォース95のフランジ部950に引っ掛ける。シートベルト97は、上述したベルト巻取り装置の巻き取り力よって車両後方Rに引っ張られている。この巻き取り力があるため、係止部941がフランジ部950に引っ掛かった状態のまま、ベルト保持具94は落下しなくなり、作業者は手を離すことが可能になる。このようにベルト保持具94を仮止めした状態で、作業者はボルト等を取り出し、ベルト保持具94をルーフリンフォース95に締結する作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−199307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のシートベルト保持構造90は、ベルト巻取り装置の巻き取り力を利用してベルト保持具94を仮止めしているため、巻き取り力が弱い場合にはベルト保持具94が落下することがあった。そのため、ベルト保持具94をルーフリンフォースに締結する作業を行いにくくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、ベルト保持具をルーフリンフォースに仮止めする場合に、ベルト保持具が落下しにくいシートベルト保持構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車両後方に配置されたベルト巻取り装置から延出し、上記車両の上部外壁をなすルーフパネルと、車室の天井をなす天井パネルとの間を通るとともに、該天井パネルに形成された天井開口部から上記車室内に垂下するシートベルトと、
折り曲げた板状部材からなり、上記ルーフパネルと上記天井パネルとの間に、車両横幅方向を向くよう設けられたルーフリンフォースと、
上記天井開口部と上記ルーフパネルとの間に位置し、上記ルーフリンフォースに固定されるとともに、上記シートベルトが通るベルト挿通孔を有し、該ベルト挿通孔を通って上記天井開口部から上記車室内に垂下する上記シートベルトを保持するベルト保持具とを備え、
上記シートベルトは、先端部に設けられた第1アンカーと、該第1アンカーよりも上記ベルト巻取り装置側に設けられた第2アンカーとを有し、上記天井開口部の下方に位置する座席の側部に取り付けられた第1バックルに上記第1アンカーを固定するとともに、該第1バックルとは反対側の側部に取り付けられた第2バックルに上記第2アンカーを固定することにより、上記座席に着座する乗員を固定するよう構成されており、
上記ルーフリンフォースは、上記板状部材に貫通形成した仮止孔を有し、
上記ベルト保持具は複数個のクリップ片部を有し、該ベルト保持具を上記ルーフリンフォースに固定する際に、上記複数個のクリップ片部のうち少なくとも一個のクリップ片部を上記仮止孔に差し入れ、該複数個のクリップ片部を用いて上記板状部材を板厚方向に挟持することにより上記ベルト保持具を仮止めするよう構成されており、その仮止めした位置において、締結部材を用いて上記ベルト保持具を上記ルーフリンフォースに締結可能となるよう構成されていることを特徴とするシートベルト保持構造にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の作用効果について説明する。
本発明では、ベルト保持具に複数個のクリップ片部を設けた。また、ルーフリンフォースを構成する板状部材に仮止孔を貫通形成した。そして、ベルト保持構造を製造する際に、複数個のクリップ片部のうち、少なくとも1個のクリップ片部を仮止孔に差し入れ、複数個のクリップ片部で板状部材を板厚方向に挟持することにより、ベルト保持具をルーフリンフォースに仮止めするよう構成した。
このようにすると、ベルト巻取り装置の巻き取り力を利用しなくても、クリップ片部だけを用いて、ベルト保持具をルーフリンフォースに仮止めできる。そのため、ベルト巻取り装置の巻き取り力が弱い場合でもベルト保持具をルーフリンフォースに安定して仮止めでき、ベルト保持具が落下する等の不具合が生じにくくなる。これにより、作業者はベルト保持具から安心して手を離すことができるようになり、また、ボルト等を用いてベルト保持具をルーフリンフォースに締結する作業を安定して行えるようになる。
【0011】
以上のごとく、本発明によれば、ベルト保持具をルーフリンフォースに仮止めする場合に、ベルト保持具が落下しにくいシートベルト保持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例における、シートベルト保持構造の分解斜視図。
【図2】実施例における、シートベルトの使用状態説明図。
【図3】図2に続く図。
【図4】実施例における、ベルト保持具をルーフリンフォースに取り付ける工程を説明するための断面図。
【図5】図4に続く図。
【図6】図5に続く図であって、ベルト保持具をルーフリンフォースに仮止めした状態の断面図。
【図7】実施例における、ベルト保持具と、アンカー収納用カバーと、収納ケースを分解した状態の斜視図。
【図8】実施例における、シートベルトの2個のアンカーをアンカー収納ケース内に収納した状態の、シートベルト保持構造の断面図。
【図9】実施例における、シートベルト使用時の、シートベルト保持構造の断面図。
【図10】実施例における、車体とベルト巻取り装置の位置関係を示す平面図。
【図11】実施例における、ベルト巻取り装置の斜視図。
【図12】従来例における、ベルト保持具をルーフリンフォースに固定する工程を説明するための断面図。
【図13】従来例における、シートベルト保持構造の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記ルーフリンフォースは、上記仮止孔よりも上方において車両前方に突出するフランジ部を有しており、上記ベルト保持具を上記ルーフリンフォースに固定する際に、上記車室から上記天井開口部に上記ベルト保持具を差し入れ、上記クリップ片部を上記フランジ部に当接させた後、上記クリップ片部の先端を上記ルーフリンフォースの側面に沿って摺動させることにより、該クリップ片部を上記仮止孔に導入できるよう構成されており、上記クリップ片部が上記フランジ部に当接した当接位置から、上記ベルト保持具が仮止めされた仮止位置までの間において、上記ベルト保持具の描く軌跡が上記ルーフパネルの下面よりも車両下側に存在するよう構成されていることが好ましい(請求項2)。
このようにすると、ベルト保持具をルーフリンフォースに仮止めする作業を行っても、その作業中にベルト保持具の描く軌跡がルーフパネルの下面よりも車両下側に存在するため、ベルト保持具がルーフパネルに接触しなくなる。そのため、作業中にベルト保持具がルーフパネルに接触して傷付く等の不具合を防止できる。
【0014】
また、上記ルーフリンフォースを構成する上記板状部材に貫通孔が形成されており、上記ベルト保持具は、上記ルーフリンフォースに仮止めした状態において上記貫通孔に係合する突部を有することが好ましい(請求項3)。
このようにすると、ベルト保持具を仮止めした状態で上記突部が上記貫通孔に係合するため、仮止孔に入ったクリップ片部を中心軸として、ベルト保持具が軸線周りに回転することを、上記突部によって防止できる。そのため、ベルト保持具を安定して仮止めできる。これにより作業者は、ボルト等を使ってベルト保持具をルーフリンフォースに締結する作業を楽に行うことが可能になる。
【0015】
また、上記ベルト保持具は、上記ベルト挿通孔が形成された板状本体部と、該板状本体部に立設したクリップ基幹部とを有し、該クリップ基幹部から3本の上記クリップ片部が延出しており、該3本のクリップ片部は、中央に位置する1本の中央クリップ片部と、該中央クリップ片部の両側部に設けられた2本の側部クリップ片部とからなり、上記中央クリップ片部を上記仮止孔に差し入れ、該中央クリップ片部と2本の上記側部クリップ片部とで上記板状部材を挟持することにより、上記ベルト保持具を仮止めするよう構成されていることが好ましい(請求項4)。
このようにすると、仮止孔に入れた1本の中央クリップ片部と、仮止孔に入れていない2本の側部クリップ片部との、合計3本のクリップ片部によって板状部材を挟持するため、ベルト保持具をルーフリンフォースにしっかりと仮止めでき、ぐらつきにくくなる。これにより作業者は、ボルト等を使ってベルト保持具をルーフリンフォースに締結する作業を楽に行うことが可能になる。
【実施例】
【0016】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるシートベルト保持構造1につき、図1〜図11を用いて説明する。
図1に示すごとく、本例のシートベルト保持構造1は、車両後方に配置されたベルト巻取り装置20から延出するシートベルト2を備える。このシートベルト2は、図9に示すごとく、車両の上部外壁をなすルーフパネル10と、車室17の天井をなす天井パネル11との間を通っている。また、シートベルト2は使用時に、天井パネル11に形成された天井開口部110から車室17内に垂下するよう構成されている。
【0017】
図1、図9に示すごとく、本例のシートベルト保持構造1は、ルーフリンフォース3とベルト保持具4を備える。ルーフリンフォース3は折り曲げた板状部材30からなり、ルーフパネル10と天井パネル11との間に、車両横幅方向を向くよう設けられている。
また、ベルト保持具4は、天井開口部110とルーフパネル10との間に位置し、ルーフリンフォース3に固定されている。ベルト保持具4は、シートベルト2が通るベルト挿通孔40を有する。そしてベルト保持具4は、図9に示すごとく、ベルト挿通孔40を通って天井開口部110から車室17内に垂下するシートベルト2を保持している。
【0018】
図1、図2に示すごとく、シートベルト2は、先端部に設けられた第1アンカー12aと、第1アンカー12aよりもベルト巻取り装置20側に設けられた第2アンカー12bとを有する。そして図3に示すごとく、天井開口部110の下方に位置する座席13の側部に取り付けられた第1バックル14aに第1アンカー12aを固定するとともに、第1バックル14aとは反対側の側部に取り付けられた第2バックル14bに第2アンカー12bを固定することにより、座席13に着座する乗員16を固定するよう構成されている。
【0019】
図1に示すごとく、ルーフリンフォース3は、板状部材30に貫通形成した仮止孔31を有する。
また、ベルト保持具4は複数個のクリップ片部5を有する。図6に示すごとく、ベルト保持具4をルーフリンフォース3に固定する際に、複数個のクリップ片部5のうち少なくとも一個のクリップ片部5aを仮止孔31に差し入れ、複数個のクリップ片部5a〜5cを用いて板状部材30を板厚方向に挟持することによりベルト保持具4を仮止めするよう構成されている。そして図1に示すごとく、仮止めした位置において、締結部材15(ボルト)を用いてベルト保持具4をルーフリンフォース3に締結するよう構成されている。
以下、詳説する。
【0020】
図7に示すごとく、ベルト保持具4は、ベルト挿通孔40が形成された板状本体部44と、該板状本体部44に立設したクリップ基幹部45とを有する。このクリップ基幹部45から3本のクリップ片部5が延出している。3本のクリップ片部5は、中央に位置する1本の中央クリップ片部5aと、該中央クリップ片部5aの両側部に設けられた2本の側部クリップ片部5b,5cとからなる。そして図6に示すごとく、中央クリップ片部5aを仮止孔31に差し入れ、中央クリップ片部5aと2本の側部クリップ片部5b,5cとで板状部材30を挟持することにより、ベルト保持具4を仮止めするよう構成されている。
【0021】
一方、図7に示すごとく、ベルト保持具4は2個の締結部43を備える。締結部43は、板状本体部44の側部から立設する第1部分43aと、該第1部分43aの先端から車両横幅方向へ突出する第2部分43bと、該第2部分43bに貫通形成したボルト挿通孔43cとを備える。また、図1に示すごとく、ルーフリンフォース3は2個のボルト締結孔35を有する。ベルト保持具4をルーフリンフォース3に仮止めすると、ベルト保持具4のボルト挿通孔43cと、ルーフリンフォース3のボルト締結孔35とが重なり合う。この状態で、ボルト挿通孔43cとボルト締結孔35とにボルト15(締結部材)を挿入する。これにより、ベルト保持具4がルーフリンフォース3に締結される。
【0022】
また、図1に示すごとく、ルーフリンフォース3を構成する板状部材30に貫通孔33が形成されている。また、ベルト保持具4は、ルーフリンフォース3に仮止めした状態において貫通孔33に係合する突部41を有する。
【0023】
また、図1に示すごとく、ルーフリンフォース3は、仮止孔31よりも上方において車両前方に突出するフランジ部32を有する。本例では図4に示すごとく、ベルト保持具4をルーフリンフォース3に固定する際に、車室17から天井開口部110にベルト保持具4を差し入れ、クリップ片部5をフランジ部32に当接させる。その後、図5に示すごとく、車両横幅方向を向く回転軸線Aを中心としてベルト保持具4を軸線周りに回転しつつ、クリップ片部5の先端をルーフリンフォース3の側面に沿って摺動させる。これにより、図6に示すごとく、クリップ片部5を仮止孔31に導入できるよう構成されている。
そして、クリップ片部5がフランジ部32に当接した当接位置(図4参照)から、ベルト保持具4が仮止めされた仮止位置までの間(図5、図6参照)において、ベルト保持具4の描く軌跡がルーフパネル10の下面よりも車両下側に存在するよう構成されている。
【0024】
一方、図9に示すごとく、ルーフリンフォース3にベルト保持具4を締結した後、アンカー収納用カバー6および収納ケース7を天井開口部110に入れて、アンカー収納用カバー6をベルト保持具4に固定する。すなわち、図7に示すごとく、ベルト保持具4はカバー取付部42を有しており、このカバー取付部42に貫通形成したクランプ挿入孔42aに、アンカー収納用カバー6に形成したクランプ部60を挿入することにより、アンカー収納用カバー6をベルト保持具4に固定する。
【0025】
なお、アンカー収納用カバー6と収納ケース7は、天井開口部110(図9参照)に入れる際に、予め一体化しておく。すなわち、図7に示すごとく、アンカー収納用カバー6は第1ケース係合爪61及び第2ケース係合爪62を備えており、収納ケース7をアンカー収納用カバー6に取り付けると、収納ケース7に貫通形成した係合孔71に第1ケース係合爪61が係合するとともに、収納ケース7に形成した切欠部70に第2ケース係合爪62が係合する。これにより、収納ケース7をアンカー収納用カバー6に固定し、一体化するよう構成されている。
【0026】
図8に示すごとく、乗員がシートベルト2を使用しない場合は、2個のアンカー12a,12bを収納ケース7内に収納しておく。収納ケース7の上壁部73には、ケース内側に凹む凹部72が形成されている。この凹部72によってアンカー12a,12bを下方に押圧して保持している。また、アンカー収納用カバー6のアンカー取出口600付近には、ルーフパネル10側に向けて突出する突出部63が形成されており、この突出部63に、アンカー12bが引っ掛かるようになっている。これら凹部72、突出部63により、車両の走行中に振動等が発生しても、アンカー12a,12bが収納ケース7から容易に出ないようになっている。
なお、シートベルト2を使用する際は、図9に示すごとく、2個のアンカー12a,12bを収納ケース7から取り出して、天井開口部110から車内17に垂下させる。
【0027】
図10に示すごとく、ベルト巻取り装置20は、車両のコーナー部100に配置されている。図11に、ベルト巻取り装置20の斜視図を示す。コーナー部100のボディパネル18には開口部19が形成されており、この開口部19の付近にベルト巻取り装置20が取り付けられている。ベルト巻取り装置20は回動クランプ部21と、締結部22,23を備える。回動クランプ部21は、ベルト巻取り装置20を回動可能に保持するクランプ部である。ベルト巻取り装置20を車体に取り付ける際には、まず回動クランプ部21を車体のクランプ挿入孔(図示しない)に差し込む。その後、作業者が手を離すと、ベルト巻取り装置20の自重により、回動クランプ部21を中心軸として、ベルト巻取り装置20が図11の矢印B方向へ回動する。そして、ベルト巻取り装置20に形成した爪部24が開口部19の内側面190に当接する。この状態で、締結部22,23のボルト挿入孔(図示しない)と、車体に形成したボルト挿通孔(図示しない)が重なり合うようになっている。この後、作業者はボルト25を取り出して、これらのボルト挿通孔にボルト25を挿入し、ベルト巻取り装置20を車体に締結する。これにより、締結作業において、作業者はベルト巻取り装置20から手を離した状態でボルト25の締結作業を行えるようになる。そのため、重いベルト巻取り装置20を手で支えながら締結作業を行わなくてすみ、作業者の負担を軽減することが可能となる。
【0028】
本例の作用効果について説明する。
本例では、図1に示すごとく、ベルト保持具4に複数個のクリップ片部5を設けた。また、ルーフリンフォース3を構成する板状部材30に仮止孔31を貫通形成した。そして図6に示すごとく、ベルト保持構造1を製造する際に、複数個のクリップ片部5のうち、少なくとも1個のクリップ片部5aを仮止孔31に差し入れ、複数個のクリップ片部5a〜5cで板状部材30を板厚方向に挟持することにより、ベルト保持具4をルーフリンフォース3に仮止めするよう構成した。
このようにすると、ベルト巻取り装置20の巻き取り力を利用しなくても、クリップ片部5だけを用いて、ベルト保持具4をルーフリンフォース3に仮止めできる。そのため、ベルト巻取り装置20の巻き取り力が弱い場合でもベルト保持具4をルーフリンフォース3に安定して仮止めでき、ベルト保持具4が落下する等の不具合が生じにくくなる。これにより、作業者はベルト保持具4から安心して手を離すことができるようになり、また、ボルト等を用いてベルト保持具4をルーフリンフォース3に締結する作業を安定して行えるようになる。
【0029】
また、本例では、車室17から天井開口部110にベルト保持具4を差し入れ、クリップ片部5をフランジ部32に当接させた後(図4参照)、クリップ片部5の先端をルーフリンフォース3の側面に沿って摺動させることにより(図5参照)、クリップ片部5を仮止孔31に導入する(図6参照)よう構成されている。そして、クリップ片部5がフランジ部32に当接した当接位置(図4参照)から、ベルト保持具4が仮止めされた仮止位置までの間(図5、図6参照)において、ベルト保持具4の描く軌跡がルーフパネル10の下面よりも車両下側に存在している。
このようにすると、ベルト保持具4をルーフリンフォース3に仮止めする作業を行っても、その作業中にベルト保持具4の描く軌跡がルーフパネル10の下面よりも車両下側に存在するため、ベルト保持具4がルーフパネル10に接触しなくなる。そのため、作業中にベルト保持具4がルーフパネル10に接触して傷付く等の不具合を防止できる。
【0030】
また、本例では図1に示すごとく、ルーフリンフォース3を構成する板状部材30には貫通穴33が形成されており、ベルト保持具4は、ルーフリンフォース3に仮止めした状態において貫通穴33に係合する突部41を有する。
このようにすると、ベルト保持具4を仮止めした状態で突部41が貫通孔33に係合するため、仮止孔31に入ったクリップ片部5aを中心軸として、ベルト保持具4が軸線周りに回転することを、突部41によって防止できる。そのため、ベルト保持具4を安定して仮止めできる。これにより作業者は、締結部材15を使ってベルト保持具4をルーフリンフォース3に締結する作業を楽に行うことが可能になる。
【0031】
また、本例では図1に示すごとく、ベルト保持具4は1本の中央クリップ片部5aと、該中央クリップ片部5aの両側部に設けられた2本の側部クリップ片部5b,5cとの合計3本のクリップ片部5を備える。そして図6に示すごとく、中央クリップ片部5aを仮止孔31に差し入れ、中央クリップ片部5aと2本の側部クリップ片部5b,5cとで板状部材30を挟持することにより、ベルト保持具4を仮止めするよう構成されている。
このようにすると、仮止孔31に入れた1本の中央クリップ片部5aと、仮止孔31に入れていない2本の側部クリップ片部5b,5cとの、合計3本のクリップ片部5によって板状部材30を挟持するため、ベルト保持具4をルーフリンフォース3にしっかりと仮止めでき、ぐらつきにくくなる。これにより作業者は、締結部材15を使ってベルト保持具4をルーフリンフォース3に締結する作業を楽に行うことが可能になる。
【0032】
以上のごとく、本例によれば、ベルト保持具4をルーフリンフォース3に仮止めする場合に、ベルト保持具4が落下しにくいシートベルト保持構造1を提供することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 シートベルト保持構造
10 ルーフパネル
11 天井パネル
12a 第1アンカー
12b 第2アンカー
13 座席
2 シートベルト
3 ルーフリンフォース
30 板状部材
31 仮止孔
4 ベルト保持具
5 クリップ片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後方に配置されたベルト巻取り装置から延出し、上記車両の上部外壁をなすルーフパネルと、車室の天井をなす天井パネルとの間を通るとともに、該天井パネルに形成された天井開口部から上記車室内に垂下するシートベルトと、
折り曲げた板状部材からなり、上記ルーフパネルと上記天井パネルとの間に、車両横幅方向を向くよう設けられたルーフリンフォースと、
上記天井開口部と上記ルーフパネルとの間に位置し、上記ルーフリンフォースに固定されるとともに、上記シートベルトが通るベルト挿通孔を有し、該ベルト挿通孔を通って上記天井開口部から上記車室内に垂下する上記シートベルトを保持するベルト保持具とを備え、
上記シートベルトは、先端部に設けられた第1アンカーと、該第1アンカーよりも上記ベルト巻取り装置側に設けられた第2アンカーとを有し、上記天井開口部の下方に位置する座席の側部に取り付けられた第1バックルに上記第1アンカーを固定するとともに、該第1バックルとは反対側の側部に取り付けられた第2バックルに上記第2アンカーを固定することにより、上記座席に着座する乗員を固定するよう構成されており、
上記ルーフリンフォースは、上記板状部材に貫通形成した仮止孔を有し、
上記ベルト保持具は複数個のクリップ片部を有し、該ベルト保持具を上記ルーフリンフォースに固定する際に、上記複数個のクリップ片部のうち少なくとも一個のクリップ片部を上記仮止孔に差し入れ、該複数個のクリップ片部を用いて上記板状部材を板厚方向に挟持することにより上記ベルト保持具を仮止めするよう構成されており、その仮止めした位置において、締結部材を用いて上記ベルト保持具を上記ルーフリンフォースに締結可能となるよう構成されていることを特徴とするシートベルト保持構造。
【請求項2】
請求項1において、上記ルーフリンフォースは、上記仮止孔よりも上方において車両前方に突出するフランジ部を有しており、上記ベルト保持具を上記ルーフリンフォースに固定する際に、上記車室から上記天井開口部に上記ベルト保持具を差し入れ、上記クリップ片部を上記フランジ部に当接させた後、上記クリップ片部の先端を上記ルーフリンフォースの側面に沿って摺動させることにより、該クリップ片部を上記仮止孔に導入できるよう構成されており、上記クリップ片部が上記フランジ部に当接した当接位置から、上記ベルト保持具が仮止めされた仮止位置までの間において、上記ベルト保持具の描く軌跡が上記ルーフパネルの下面よりも車両下側に存在するよう構成されていることを特徴とするシートベルト保持構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、上記ルーフリンフォースを構成する上記板状部材に貫通孔が形成されており、上記ベルト保持具は、上記ルーフリンフォースに仮止めした状態において上記貫通孔に係合する突部を有することを特徴とするシートベルト保持構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項において、上記ベルト保持具は、上記ベルト挿通孔が形成された板状本体部と、該板状本体部に立設したクリップ基幹部とを有し、該クリップ基幹部から3本の上記クリップ片部が延出しており、該3本のクリップ片部は、中央に位置する1本の中央クリップ片部と、該中央クリップ片部の両側部に設けられた2本の側部クリップ片部とからなり、上記中央クリップ片部を上記仮止孔に差し入れ、該中央クリップ片部と2本の上記側部クリップ片部とで上記板状部材を挟持することにより、上記ベルト保持具を仮止めするよう構成されていることを特徴とするシートベルト保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−195064(P2011−195064A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65340(P2010−65340)
【出願日】平成22年3月22日(2010.3.22)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】